(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017581
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 30/56 20200101AFI20250130BHJP
G02B 5/124 20060101ALI20250130BHJP
H04N 13/302 20180101ALI20250130BHJP
【FI】
G02B30/56
G02B5/124
H04N13/302
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023120718
(22)【出願日】2023-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】村田 瑛友
【テーマコード(参考)】
2H042
2H199
【Fターム(参考)】
2H042EA03
2H199BA32
2H199BA63
2H199BB18
2H199BB20
(57)【要約】
【課題】 空中映像の視認性やコントラストを改善した表示装置を提供する。
【解決手段】 本発明の空中映像表示装置100は、ディスプレイ等の光源110と、入射する光を一定の割合で透過光と反射光に分離するビームスプリッター120と、山形形状を有する再帰反射部材130とを含んで構成される。再帰反射部材130によって再帰反射された光Laによって空中映像140が表示され、他方、正反射された光Lbは、空中映像140から離れる方向に向けられる。これにより、ユーザーが正反射の光Lbによる疑似空中映像を観察することが抑制され、空中映像140の視認性およびコントラストが改善される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再帰反射を利用して空中映像を表示可能な表示装置であって、
映像を出力する光源と、
入射した光を一定の割合で反射光と透過光に分離する光学部材と、
前記光学部材から入射した光を反射する再帰反射部材とを含み、
前記映像を表す光が前記光学部材を介して前記再帰反射部材に入射され、前記再帰反射部材によって反射された光によって前記空中映像が表示され、
前記再帰反射部材は、前記光学部材から入射した光の一部の正反射による光が前記空中映像から離れる方向を向くように、傾斜している、表示装置。
【請求項2】
前記再帰反射部材は、第1の反射面と当該第1の反射面と一定の角度で交差した第2の反射面とを含む、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記再帰反射部材は、前記光学部品の主面に対し傾斜している、請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記再帰反射部材は、前記光学部材から入射した光の一部の正反射による光がユーザーの視野から外れるように、傾斜している、請求項1に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再帰反射を利用して空中に像を表示する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
再帰反射を用いた空中表示(Aerial Imaging by Retro-Reflection:AIRR)が知られている。例えば、特許文献1は、空中に形成される像をより広い角度から観察可能とするため、2つの再帰反射部材を用いた表示装置を開示している。また、特許文献2は、再帰反射部材で正反射された光が観察範囲に入らないように光源および再帰反射部材が位置決めすることで、コントラストや視認性の低下を抑制した表示装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-107165号公報
【特許文献2】特開2022-150245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1は、従来の空中映像表示装置の構成を示す概略断面図である。空中映像表示装置10は、光源(例えば、映像を出力するディスプレイ)20、入射光を所定の割合で反射光と透過光に分離するビームスプリッター30、および再帰反射部材40を含んで構成される。
【0005】
光源20から出射された映像は、ビームスプリッター30で反射され、その反射光が再帰反射部材40に進む。再帰反射部材40は、入射した光と同じ方向に光を反射する光学部材であり、例えば、コーナーキューブ型再帰反射素子、三角錐型再帰反射素子、ビーズ型再帰反射素子などによって構成される。再帰反射部材40で反射された光は、再びビームスプリッター30に進み、ビームスプリッター30を透過した光が、収束後再度拡散し、観察者の目の前に空中映像50として結像される。空中映像50は、ビームスプリッター30の面に関し、光源20と対称の位置に形成される。ユーザーが観察できる空中映像50は、ユーザーの視点からビームスプリッター30を介して再帰反射部材40を見ることができる範囲に限られる。
【0006】
図2(A)は、コーナーキューブ型の再帰反射部材の上面図、
図2(B)は、1つのコーナーキューブを示す上面図、
図2(C)は、再帰反射部材の概略断面図である。1つのコーナーキューブは、
図2(B)に示すように、3つの直角二等辺三角形の直角頂点を結合した凹形を有する(直角頂点が最深部)。入射光Linは、コーナーキューブの各面で3回反射し、反射光Loutは、入射光Linと同じ方向に出射される。このとき、入射光Linと反射光Loutとの間には光路差Dが生じる。
【0007】
図3(A)は、再帰反射部材の具体的な構成例を示す断面図である。再帰反射部材40は、光透過性の材料から形成されたパターン成形部42と、パターン成形部42の傾斜面に形成された反射層44(例えば、Alなど)と、パターン成形部42の上面に塗布された接着剤46と、接着剤46上に形成された位相板(例えば、λ/4板)48とを含んで構成される。反射層44は、反射層として機能し、接着剤46と位相板48とを含む厚さは、概ね1mm以下である。
【0008】
再帰反射部材40に入射した光は、反射層44によって複数回反射され、
図3(B)に示すように、反射光Loutは、入射光Linと同じ方向に出射される。このような再帰反射部材40の光学的特性に従って再帰反射された反射光Laは、意図した光(または望ましい光)である。
【0009】
一方、再帰反射部材40に入射した光の一部は、例えば、位相板48の表面で反射される(反射光L1)。このような反射光L1は、
図3(C)に示すように、入射角θ=反射角θの関係で反射される正反射の光であり、これは、再帰反射部材40の光学的特性に依存しない光、つまり意図しない光Lbである。
【0010】
図4は、従来の空中映像表示装置の課題を説明する図である。上記したように、再帰反射部材40によって正反射による意図しない反射光Lbが生じると、正反射Lbに起因した疑似空中映像が発生し、ユーザーが空中映像60を観察する範囲内に疑似空中映像が映り込んでしまい、空中映像60の視認性やコントラストが低下してしまう。
【0011】
本発明は、このような従来の課題を解決し、空中映像の視認性やコントラストを改善した表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る表示装置は、再帰反射を利用して空中映像を表示可能なものであって、映像を出力する光源と、入射した光を一定の割合で反射光と透過光に分離する光学部材と、前記光学部材から入射した光を反射する再帰反射部材とを含み、前記映像を表す光が前記光学部材を介して前記再帰反射部材に入射され、前記再帰反射部材によって反射された光によって前記空中映像が表示され、前記再帰反射部材は、前記光学部材から入射した光の一部の正反射による光が前記空中映像から離れる方向を向くように、傾斜している。
【0013】
ある態様では、前記再帰反射部材は、第1の反射面と当該第1の反射面と一定の角度で交差した第2の反射面とを含む。ある態様では、前記再帰反射部材は、前記光学部品の主面に対し傾斜している。ある態様では、前記再帰反射部材は、前記光学部材から入射した光の一部の正反射による光がユーザーの視野から外れるように、傾斜している。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、再帰反射部材は、光学部材から入射した光の一部の正反射による光が空中映像から離れる方向を向くように、傾斜しているため、ユーザーが空中映像を観察する範囲内に正反射による疑似空中映像を観察することが抑制され、これにより、空中映像の視認性およびコントラストが改善される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】従来の再帰反射を利用した空中映像表示装置の構成例を示す図である。
【
図2】コーナーキューブ型の再帰反射部材の光学的性質を説明する図である。
【
図3】
図3(A)は、再帰反射部材の構成例を示す断面図、
図3(B)は、ミラー等における入射光と反射光との関係を模式的に示す図、
図3(C)は、再帰反射板における入射光と反射光との関係を模式的に示す図である。
【
図4】従来の空中映像表示装置の課題を説明する図である。
【
図5】本発明の第1の実施例に係る空中映像表示装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図6】従来の空中映像表示装置の各部と光路との関係を模式的に示す図である。
【
図7】本発明の第1の実施例に係る空中映像表示装置の各部と光路との関係を模式的に示す図である。
【
図10】本発明の第2の実施例に係る空中映像表示装置の各部と光路との関係を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る表示装置は、AIRR方式により空中に映像を表示する。本発明の表示装置は、空中映像を利用したユーザー入力インターフェースに適用することができる。以下の実施例の説明で参照する図面は、発明の理解を容易にするために誇大した表示を含んでおり、実際の製品の形状やスケールをそのまま表したものではないことに留意すべきである。
【実施例0017】
次に、本発明の実施例について図面を参照して詳細に説明する。
図5は、本発明の第1の実施例に係る空中映像表示装置の構成を示す斜視図である。同図に示すように、本実施例の空中映像表示装置100は、映像を表示するディスプレイ等の光源110、入射光を一定の割合で透過光と反射光に分離するビームスプリッター(またはハーフミラー)120、山形形状の再帰反射部材130を含んで構成され、AIRR方式により光源110に出力された映像の空中映像140を表示する。
【0018】
本実施例において特徴的な構成は、再帰反射部材130が平坦な面を提供するのではなく、山形形状を有することで、再帰反射部材130によって生じる意図しない反射光Lbが空中映像140の視野内にできるだけ入らないようにすることである。
【0019】
図6は、
図4に示す従来の空中映像表示装置の各部と入射光/反射光との関係を模式的に示した斜視図、正面図、上面図、側面図であり、
図7は、第1の実施例の空中映像表示装置の各部と入射光/反射光との関係を模式的に示した斜視図、正面図、上面図、側面図であり、
図8(A)は、
図7(C)のY-Y線断面図である。これらの図を参照しながら本実施例の空中映像表示装置の動作を説明する。
【0020】
図6に示すように、従来の空中映像表示装置10では、ビームスプリッター30の下方に、光源20および再帰反射部材40がそれぞれ配置される。再帰反射部材40は、概ね平坦な主面を有しており、入射光と同じ方向に反射する光Laによって空中映像50が表示される。一方、再帰反射部材40によって正反射された光Lbは、再帰反射部材40の主面が平坦であるため、空中映像50の方向に進む。正反射された光Lbが、ユーザーが空中映像50を観察することができる範囲(視野)内に入ると、疑似空中映像が見えてしまう。
【0021】
これに対し、本実施例の空中映像表示装置100では、
図7に示すように、再帰反射部材130が山形形状の反射面を有する。再帰反射部材130の構成を除き、他の構成は、従来の空中映像表示装置10と同様である。
【0022】
ここで、ビームスプリッター120は、その主面がXY平面と平行に配置されるものとする。ビームスプリッター120は、
図7(C)に示すように、XY平面において矩形状であり、X方向の第1の辺120Xと、Y方向の第2の辺120Yとを有する。また、光源110、例えば、ディスプレイの表示面の法線方向を光軸としたとき、光軸をXY平面に投影したときの方向は、X方向であり、第1の辺120Xと平行である。
【0023】
ある態様では、再帰反射部材130は、概ね平坦な矩形状の第1の反射面130Aと、概ね平坦な矩形状の第2の反射面130Bと、第1の反射面130Aと第2の反射面130Bとが交差する頂辺130Cとを有する。第1の反射面130Aと第2の反射面130とは、1つの再帰反射部材を折り曲げることによって形成されてもよいし、2つの再帰反射部材を接着剤等によって結合することによって形成されてもよい。また、第1の反射面130Aと第2の反射面130Bは、例えば、頂辺130Cに関し対称となるように構成されてもよいし、あるいは、非対称となるように構成されてもよい。
【0024】
再帰反射部材130は、頂辺130CをXY平面に投影した方向がX方向、すなわちXY平面における光軸と平行に、かつ、頂辺130Cがビームスプリッター120の主面に対してZ方向に傾斜するように配置される。その結果、
図8(A)のY-Y線断面に示すうように、第1の反射面130Aと第2の反射面130Bは、頂辺130Cから側方に向けてビームスプリッター120の主面から遠ざかるように傾斜している。また、第1の反射面130Aと第2の反射面130Bとの交差角αは、正反射された光Lbの全てまたはその一部が、ユーザーが空中映像140を観察できる範囲から外れる方向を向くように設定される。
【0025】
光源110が映像を出力すると、その映像を表す光が光軸方向に出射され、その光は、ビームスプリッター120、再帰反射部材130でそれぞれ反射され、次いでビームスプリッター120を透過して空中映像140を表示する。再帰反射部材130は、山形形状に折り曲げられた反射面130A、130Bを有するが、その光学的性質上、反射光は、入射光と同じ方向に出射される。つまり、再帰反射部材130によって再帰反射された反射光La、つまり意図された反射光Laは、
図6に示す従来の空中映像表示装置10の再帰反射部材40と同様に空中映像140を生成する。
【0026】
一方、ビームスプリッター120から入射した光の一部は、再帰反射部材130で正反射されるが、第1および第2の反射面130A、130Bが頂辺130Cから側方に向けて傾斜しているため、第1および第2の反射面130A、130Bに入射する光の入射角は、第1および第2の反射面130A、130Bが側方に傾斜していないときと比較して、大きくなる。このため、第1および第2の反射面130A、130Bにおける正反射による反射光Lbの反射角が大きくなり、正反射による意図しない光Lbは、空中映像140から離れる方向に向けられる。その結果、ユーザーが空中映像140を観察する範囲内に、正反射による疑似空中映像が観察され難くなり、空中映像140の視認性およびコントラストを改善することができる。
【0027】
上記実施例では、XY平面に投影した頂辺130Cの方向がX方向、つまり光源110の光軸の方向と同じ方向である例を示したが、この再帰反射部材130を、例えば、水平方向に90度回転させるようにしてもよい。この場合、
図9に示す空中映像表示装置100Aでは、頂辺130CをXY平面に投影したときの方向は、Y方向であり、光源110の光軸の方向と直交する。このような構成でも、再帰反射部材130により正反射された光Lbが、空中映像140から離れる方向に向けられ、これにより、疑似空中映像がユーザーによって観察され難くなる。
【0028】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。
図10は、第2の実施例に係る空中映像表示装置100Bの構成を示す図であり、
図7に示す第1の実施例と同一の構成については同一の参照番号を付している。
【0029】
第2の実施例では、再帰反射部材150は、概ね平坦な主面を提供するが、
図8(B)のY1-Y1線断面に示すように、再帰反射部材150は、ビームスプリッター120の主面に対し角度αで傾斜している。傾斜の向きは反対であってもよい。言い換えれば、再帰反射部材150は、第1の実施例のときの第1の反射面130Aまたは第2の反射面130Bのいずれか一方に対応する。角度αは、ビームスプリッター120から入射した光の一部が再帰反射部材150によって正反射されたとき、正反射による光Lbが空中映像140の視野から離れる方向に向かうように設定される。これにより、空中映像140の視認性およびコントラストが改善される。
【0030】
このように本実施例によれば、再帰反射部材による正反射の光が空中映像から離れるようにしたので、ユーザーが空中映像を観察する範囲内に正反射による疑似空中映像を観察することが抑制され、これにより、空中映像の視認性およびコントラストが改善される。
【0031】
上記実施例で示したビームスプリッターや再帰反射部材の形状やサイズは一例であり、他の形状やサイズであってもよい。また、再帰反射部材は、第1および第2の反射面を有する山形形状の例を示したが、例えば、三角錐や四角錐のように3つ以上の反射面を持つように構成されてもよい。さらに、再帰反射部材の山形形状の角度や再帰反射部材の傾斜角αは、空中映像の光学設計において適宜選択される。
【0032】
本実施例の空中映像表示装置は、ユーザーインターフェースに適用することができ、例えば、空中映像は、コンピュータ装置、車載用電子機器、銀行等のATM、駅等のチケットの購入機、エレベータの入力ボタンなどに適用することができる。
【0033】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲において、種々の変形、変更が可能である。