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  • 特開-積層シート及び食品包装容器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017583
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】積層シート及び食品包装容器
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/20 20060101AFI20250130BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20250130BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
B32B27/20 Z
B32B27/32 Z
B32B27/32 E
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023120721
(22)【出願日】2023-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】坂(穂坂) 桃香
(72)【発明者】
【氏名】神巻 恵理
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕卓
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BA35
3E086BB41
3E086BB42
3E086BB85
3E086CA01
3E086DA06
4F100AA01A
4F100AA03
4F100AA03A
4F100AA04
4F100AA04A
4F100AA07
4F100AA07A
4F100AA08
4F100AA08A
4F100AA17A
4F100AA18
4F100AA20
4F100AA34A
4F100AA37A
4F100AB00
4F100AB00A
4F100AB09
4F100AG00
4F100AK01A
4F100AK04B
4F100AK04C
4F100AK05
4F100AK05B
4F100AK06B
4F100AK07
4F100AK07B
4F100AK07C
4F100AK62B
4F100AK63B
4F100AK64B
4F100AK66B
4F100AL01B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100CA00
4F100CA00A
4F100CA00B
4F100CA23
4F100EA05
4F100EH17
4F100EH20
4F100EJ17
4F100EJ24
4F100EJ42
4F100EJ50
4F100GB15
4F100GB23
4F100JA04
4F100JA06
4F100JA13
4F100JB16A
4F100JJ03
4F100JJ03B
4F100JK01
4F100JK10
4F100JK15
4F100JL01
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】外観不良が改善された積層シートを提供すること。
【解決手段】層(A)と、層(A)の一方面側に設けられた層(B)と、を備える積層シートであって、層(B)は、積層シートの一方の表面を構成し、層(A)は、無機物質及び熱可塑性樹脂を含み、層(B)は、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂を含み、ポリエチレン樹脂は、高密度ポリエチレンを含む、積層シート。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
層(A)と、前記層(A)の一方面側に設けられた層(B)と、を備える積層シートであって、
前記層(B)は、前記積層シートの一方の表面を構成し、
前記層(A)は、無機物質及び熱可塑性樹脂を含み、
前記層(B)は、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂を含み、
前記ポリエチレン樹脂は、高密度ポリエチレンを含む、積層シート。
【請求項2】
前記ポリエチレン樹脂は、低密度ポリエチレンを更に含む、請求項1に記載の積層シート。
【請求項3】
前記低密度ポリエチレンの含有量に対する前記高密度ポリエチレンの含有量の質量比が、1以上3以下である、請求項2に記載の積層シート。
【請求項4】
前記ポリエチレン樹脂の含有量に対する前記ポリプロピレン樹脂の含有量の質量比が、60/40以上80/20以下である、請求項1に記載の積層シート。
【請求項5】
前記無機物質の含有量が、前記積層シートの全質量を基準として、30質量%以上である、請求項1に記載の積層シート。
【請求項6】
前記積層シートの厚みが350μm以上450μm以下である、請求項1に記載の積層シート。
【請求項7】
前記層(A)の他方面側に設けられ、前記積層シートの他方の表面を構成する層(C)を更に備え、
前記層(C)は、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂を含む、請求項1に記載の積層シート。
【請求項8】
食品包装容器の成形に用いられる、請求項1~7のいずれか一項に記載の積層シート。
【請求項9】
真空成形に用いられる、請求項1~7のいずれか一項に記載の積層シート。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一項に記載の積層シートを成形してなる、食品包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層シート及び食品包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、樹脂製品において、バイオマス由来素材での代替えや、減容化により、石油由来樹脂成分の使用量を減らし、焼却時の二酸化炭素排出量を低減する試みが行われている。このような試みの一つとして、炭酸カルシウム等の無機物質を従来よりも多く配合することが提案されている。炭酸カルシウム等の無機物質はバイオマス由来素材に比べ安価に入手が可能である上に、例えば、無機物質を50%以上含有したシートにより形成された容器包装は、容器包装リサイクル法で定められたプラスチック製容器包装に分類されず、可燃ごみ又は不燃ごみとして廃棄できるため、廃棄コストが低い。
【0003】
例えば、特許文献1には、中間層と、前記中間層の表面と裏面にそれぞれ形成された表面層とを備える多層構造の樹脂製のシート材であって、前記表面層が、ポリプロピレン系樹脂よりなる樹脂層であり、前記中間層が、炭酸カルシウムと樹脂を含み、引張伸び率が500%~600%であるシート材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-112862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの検討によれば、上記特許文献1に記載のような積層シートでは、積層シートの製造時に気泡が混入し、当該気泡による外観不良が生じる場合がある。そこで、本発明の一側面は、外観不良が改善された積層シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、検討を重ねた結果、積層シートの最表層がポリプロピレン樹脂からなる場合、積層シートの製造時に、シート成形用部品(例えばロール)にシートが張り付くことがあり、このことが、積層シートに気泡が混入する一因となっていることを見出した。そして、最表層において、ポリプロピレン樹脂と高密度ポリエチレンとを組み合わせて用いることによって、シートのロールへの張り付きを低減でき、その結果、気泡の混入が抑制され、外観不良も改善できることを見出した。
【0007】
本発明は、いくつかの側面において、以下の[1]~[10]を提供する。
[1]層(A)と、層(A)の一方面側に設けられた層(B)と、を備える積層シートであって、層(B)は、積層シートの一方の表面を構成し、層(A)は、無機物質及び熱可塑性樹脂を含み、層(B)は、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂を含み、ポリエチレン樹脂は、高密度ポリエチレンを含む、積層シート。
[2]ポリエチレン樹脂は、低密度ポリエチレンを更に含む、[1]に記載の積層シート。
[3]低密度ポリエチレンの含有量に対する高密度ポリエチレンの含有量の質量比が、1以上3以下である、[2]に記載の積層シート。
[4]ポリエチレン樹脂の含有量に対するポリプロピレン樹脂の含有量の質量比が、60/40以上80/20以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の積層シート。
[5]無機物質の含有量が、積層シートの全質量を基準として、30質量%以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の積層シート。
[6]積層シートの厚みが350μm以上450μm以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の積層シート。
[7]層(A)の他方面側に設けられ、積層シートの他方の表面を構成する層(C)を更に備え、層(C)は、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の積層シート。
[8]食品包装容器の成形に用いられる、[1]~[7]のいずれかに記載の積層シート。
[9]真空成形に用いられる、[1]~[8]のいずれかに記載の積層シート。
[10][1]~[9]のいずれかに記載の積層シートを成形してなる、食品包装容器。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一側面によれば、外観不良が改善された積層シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】積層シートの一実施形態を示す模式断面図である。
図2】積層シートの他の一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0011】
図1は、積層シートの一実施形態を示す模式断面図である。図1に示される積層シート1は、層(A)11と、層(A)11の一方面側に設けられた層(B)12と、を備えている。積層シート1では、層(B)12が積層シート1の一方の表面を構成している。
【0012】
<層(A)>
層(A)11は、無機物質及び熱可塑性樹脂を含む。層(A)11において、無機物質は、熱可塑性樹脂中に分散されていてよい。
【0013】
無機物質の例としては、金属の塩、酸化物、水酸化物、及びこれらの水和物、並びに金属の単体が挙げられる。金属は、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、バリウム、アルミニウム、チタン、鉄、亜鉛、モリブデン等であってよい。
【0014】
金属の塩の例としては、金属の炭酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、及びホウ酸塩、並びにチタン酸塩が挙げられる。金属の炭酸塩の例としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、及びハイドロタルサイトが挙げられる。金属の硫酸塩の例としては、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸バリウム、及び硫酸アルミニウムが挙げられる。金属の亜硫酸塩の例としては、亜硫酸カルシウムが挙げられる。金属のケイ酸塩の例としては、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、タルク、クレー、ベントナイト、カオリン、ゼオライト、セリサイト、及び雲母が挙げられる。金属のリン酸塩の例としては、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウムが挙げられる。チタン酸塩の例としては、チタン酸カリウム、及びチタン酸カルシウムが挙げられる。
【0015】
金属の酸化物の例としては、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化チタン、及び酸化亜鉛が挙げられる。金属の水酸化物の例としては、水酸化マグネシウム、及び水酸化アルミニウムが挙げられる。
【0016】
無機物質の他の例としては、シリカ(珪砂)、珪藻土、軽石、シラス、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス繊維、ボロン繊維、炭素繊維、カーボンブラック、黒鉛等が挙げられる。層(A)11は、上述した無機物質のうち、1種のみを含んでいてよく、2種以上を含んでもよい。
【0017】
無機物質は、例えば粒子状であってよい。粒子状の無機物質の平均粒子径は、0.1μm以上、0.3μm以上、又は0.5μm以上であってよく、15μm以下、13μm以下、10μm以下、又は8μm以下であってよい。なお、本明細書において、平均粒子径は、レーザー回折法により測定されたメジアン径を意味する。
【0018】
無機物質の含有量は、層(A)11の全質量を基準として、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、又は60質量%以上であってよく、90質量%以下、85質量%以下、又は80質量%以下であってよい。
【0019】
熱可塑性樹脂の例としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。層(A)11における熱可塑性樹脂は、これらのうち1種のみを含んでいてよく、2種以上を含んでもよい。ポリオレフィン系樹脂の例としては、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂が挙げられる。層(A)11における熱可塑性樹脂は、好ましくはポリプロピレン樹脂を含む。層(A)11におけるポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂としては、層(B)12におけるポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂として後述するものを特に制限なく用いることができる。
【0020】
層(A)11における熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂を含む場合、ポリプロピレン樹脂の含有量は、層(A)11に含まれる熱可塑性樹脂の合計100質量部に対して、80質量部以上、90質量部以上、95質量部以上、又は98質量部以上であってよく、100質量部以下であってよい。
【0021】
層(A)11における熱可塑性樹脂の含有量は、層(A)11の全質量を基準として、10質量%以上、20質量%以上、又は25質量%以上であってよく、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、又は35質量%以下であってよい。
【0022】
層(A)11は、無機物質及び熱可塑性樹脂以外のその他の成分を含んでいてよい。その他の成分としては、着色剤、潤滑剤、分散剤、静電防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0023】
層(A)11において、その他の成分の含有量は、層(A)11の全質量を基準として、例えば、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、又は1質量%以下であってよい。
【0024】
層(A)11の厚みは、100μm以上、150μm以上、200μm以上、230μm以上、250μm以上、又は270μm以上であってよく、500μm以下、450μm以下、400μm以下、又は350μm以下であってよい。なお、本明細書において、積層シートを構成する層及び積層シート全体の厚みは、JIS K7130:1999に従い、マイクロメーターを用いて測定される値を意味する。
【0025】
層(A)11の厚みは、積層シート全体の厚みを100%として、50%以上、60%以上、65%以上、又は70%以上であってよく、99%以下、95%以下、90%以下、80%以下、又は75%以下であってよい。
【0026】
<層(B)>
層(B)12は、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂を含む。積層シートの表面を構成する層がポリプロピレン樹脂のみを含む場合、積層シートの製造時に、シート成形用部品にシートが張り付くことがある。より具体的には、積層シートの製造時には、押出機からシート状に押し出した溶融状態の層構成材料を複数のロール間に通しながら冷却し、所定の厚みに成形されたシートを得る過程で、ロールにシートが張り付くことがある。しかし、層(B)12は、ポリプロピレン樹脂に加えてポリエチレン樹脂を含む。これにより、層(B)12がポリプロピレン樹脂のみを含む場合と比べて、積層シート1の表面(層(B)12により構成される表面)の表面粗さが大きくなっている。特に、層(B)におけるポリエチレン樹脂は高密度ポリエチレンを含むため、層(B)におけるポリエチレン樹脂が高密度ポリエチレンを含まず、低密度ポリエチレンを含む場合と比べても、積層シート1の表面の表面粗さが大きくなっている。そのため、積層シート1を製造する際の、シート成形用部品(ロール等)へのシートの張り付きが抑えられる。その結果、積層シート1への気泡の混入が抑えられ、積層シート1の外観不良が改善される。また、層(B)12がポリプロピレン樹脂に加えてポリエチレン樹脂を含むことにより、層(B)12がポリプロピレン樹脂のみを含む場合と比べて、積層シート1は耐寒性にも優れる。
【0027】
ポリプロピレン樹脂は、モノマー単位として主にプロピレンを含む重合体である。ポリプロピレン樹脂の融点は、150℃以上であってよく、160℃以上であることがより好ましい。ポリプロピレン樹脂は、プロピレンの単独重合体であってよく、プロピレンと、プロピレンと共重合可能な他のモノマーとの共重合体(ポリプロピレン共重合体)であってもよい。
【0028】
プロピレンと共重合可能な他のモノマーの例としては、プロピレン以外のα-オレフィンが挙げられる。プロピレン以外のα-オレフィンは、例えば、炭素数2のα-オレフィン(エチレン)であってよく、炭素数4~10のα-オレフィンであってよい。炭素数4~10のα-オレフィンの例としては、1-ブテン、イソブチレン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、3,4-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、3-メチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-ノネン、及び1-デセンが挙げられる。
【0029】
ポリプロピレン共重合体は、例えば、二元共重合体又は三元共重合体であってよい。二元共重合体の例としては、エチレン-プロピレン共重合体が挙げられる。三元共重合体の例としては、エチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体が挙げられる。これらの共重合体は、ランダム共重合体であってよく、ブロック共重合体であってもよい。
【0030】
ポリプロピレン樹脂におけるプロピレン(プロピレン単位)の含有量は、ポリプロピレン樹脂の全質量を基準として、50質量%超であってよい。ポリプロピレン樹脂におけるプロピレン(プロピレン単位)の含有量は、ポリプロピレン樹脂の全質量を基準として、積層シート(及び積層シートを成形してなる食品包装容器)が剛性及び耐熱性に優れる観点から、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、又は99質量%以上であってよい。ポリプロピレン樹脂は、特に、プロピレンの単独共重合体であることが好ましい。
【0031】
ポリプロピレン樹脂のメルトマスフローレイト(MFR)は、1.0g/10分以上、1.4g/10分、又は1.6g/10分以上であってよく、3.0g/10分以下、又は2.5g/10分以下であってよい。本明細書において、MFRは、JIS K7210-1:2014 A法に従い、試験温度:230℃、公称荷重:2.16kgで測定される値を意味する。
【0032】
ポリプロピレン樹脂の210℃における溶融張力は、10mN以上、15mN以上、又は20mN以上であってよく、60mN以下、50mN以下、40mN以下、30mN以下、又は25mN以下であってよい。本明細書において、210℃における溶融張力(以下、単に「溶融張力」ともいう。)は、キャピログラフ(例えば、(株)東洋精機製作所、1D)を用いて、試験温度:210℃、シリンダー押し出し速度:20mm/分、引き取り速度:5m/分で測定される値を意味する。
【0033】
層(B)12におけるポリプロピレン樹脂の含有量は、層(B)12の全質量を基準として、積層シート(及び積層シートを成形してなる食品包装容器)が剛性及び耐熱性に優れる観点から、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、又は55質量%以上であってよく、積層シートを成形してなる食品包装容器の耐衝撃強度向上の観点から、99質量%以下、95質量%以下、92質量%以下、又は90質量%以下であってよい。
【0034】
ポリエチレン樹脂は、モノマー単位として主にエチレンを含む重合体である。ポリエチレン樹脂の融点は、150℃未満であってよく、140℃以下であることがより好ましい。ポリエチレン樹脂の例としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が挙げられる。層(B)12におけるポリエチレン樹脂は、少なくとも、高密度ポリエチレン(HDPE)を含む。
【0035】
HDPEは、0.942g/cm以上の密度を有するポリエチレンである。MDPEは、0.930g/cm以上0.942g/cm未満の密度を有するポリエチレンである。LDPEは、0.910g/cm以上0.930g/cm未満の密度を有し、長鎖分岐構造を有するポリエチレンである。LLDPEは、0.911g/cm以上0.940g/cm未満の密度を有し、長鎖分岐構造を有さないポリエチレンである。なお、ポリエチレンの密度は、JIS K7112:1999 A法に従い、標準状態にて測定した比重により求められるものである。
【0036】
LDPEの融点は、95℃以上であってよく、115℃以下であってよい。また、LLDPEの融点は、115℃以上であってよく、125℃以下であってよい。LDPEは、炭素数が6以上の側鎖を有していてよく、LLDPEは、炭素数が6以上の側鎖を有さなくてよい。炭素数が6以上の側鎖の有無は13C-NMR測定により確認することができる。
【0037】
HDPEのMFRは、0.1g/10分以上、0.2g/10分以上、又は0.3g/10分以上であってよく、1.5g/10分以下、1.0g/10分以下、0.8g/10分以下、又は0.6g/10分以下であってよい。
【0038】
HDPEの溶融張力は、40mN以上、50mN以上、又は60mN以上であってよく、110mN以下、100mN以下、90mN以下、80mN以下、又は70mN以下であってよい。
【0039】
LDPEのMFRは、0.3g/10分以上、0.5g/10分以上、又は0.8g/10分以上であってよく、2.0g/10分以下、1.5g/10分以下、又は1.0g/10分以下であってよい。
【0040】
LDPEの溶融張力は、100mN以上、110mN以上、又は115mN以上であってよく、140mN以下、130mN以下、又は125mN以下であってよい。
【0041】
ポリエチレン樹脂(HDPE、LDPE等のそれぞれ)は、エチレンの単独重合体であってよく、エチレンと、エチレンと共重合可能な他のモノマーとの共重合体(ポリエチレン共重合体)であってもよい。
【0042】
エチレンと共重合可能な他のモノマーの例としては、エチレン以外のα-オレフィン、及び酢酸ビニルが挙げられる。α-オレフィンは、例えば、炭素数3~10のα-オレフィンであってよい。炭素数3~10のα-オレフィンの例としては、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、3,4-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、3-メチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-ノネン、及び1-デセンが挙げられる。
【0043】
ポリエチレン共重合体の例としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-4メチル-1-ペンテン共重合体、及びエチレン-1-オクテン共重合体が挙げられる。
【0044】
層(B)12におけるHDPEの含有量は、層(B)12の全質量を基準として、積層シート(及び積層シートを成形してなる食品包装容器)の耐衝撃強度向上の観点から、5質量%以上、8質量%以上、10質量%以上、又は12質量%以上であってよく、積層シート(及び積層シートを成形してなる食品包装容器)が剛性及び耐熱性に優れる観点から、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、又は23質量%以下であってよい。
【0045】
層(B)12におけるポリエチレン樹脂は、HDPEのみを含んでもよく、HDPE以外の他のポリエチレン樹脂を更に含んでもよい。HDPE以外の他のポリエチレン樹脂の例としては、上述したLDPE、MDPE、及びLLDPEが挙げられる。
【0046】
一実施形態において、層(B)12におけるポリエチレン樹脂は、LDPEを更に含んでいてよい。当該LDPEのMER及び溶融張力は、それぞれ、層(A)11に含まれ得るLDPEのMER及び溶融張力として上述した数値範囲内であってよい。一実施形態において、層(B)12におけるポリエチレン樹脂は、HDPE及びLDPEのみを含んでいてよい(すなわち、MDPE及びLLDPEを含まなくてよい)。
【0047】
層(B)12におけるLDPEの含有量は、層(B)12の全質量を基準として、積層シートの厚みの均一性と、容器成形時の成形性とを向上させる観点から、5質量%以上、8質量%以上、10質量%以上、又は12質量%以上であってよく、積層シート(及び積層シートを成形してなる食品包装容器)が剛性及び耐熱性に優れる観点から、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、又は23質量%以下であってよい。
【0048】
層(B)12において、LDPEの含有量に対するHDPEの含有量の質量比(HDPEの含有量/LDPEの含有量)は、積層シートの厚みの均一性と、容器成形時の成形性とを向上させる観点から、0.8以上、0.9以上、又は1以上であってよく、例えば、5以下、4以下、3以下、又は2.5以下であってよい。
【0049】
層(B)12におけるポリエチレン樹脂の含有量(複数種のポリエチレンを含む場合、それらの合計含有量)は、層(B)12の全質量を基準として、積層シートを成形してなる食品包装容器の耐衝撃強度向上の観点から、10質量%以上、14質量%以上、18質量%以上、22質量%以上、又は25質量%以上であってよく、積層シート(及び積層シートを成形してなる食品包装容器)が剛性及び耐熱性に優れる観点から、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、又は35質量%以下であってよい。
【0050】
層(B)12において、ポリエチレン樹脂の含有量に対するポリプロピレン樹脂の含有量の質量比(ポリプロピレン樹脂の含有量/ポリエチレン樹脂の含有量)は、積層シート(及び積層シートを成形してなる食品包装容器)が剛性及び耐熱性に優れる観点から、50/50以上、55/45以上、60/40以上、64/36以上、又は67/33以上であってよく、積層シートを成形してなる食品包装容器の耐衝撃強度向上、及び積層シート(及び積層シートを成形してなる食品包装容器)の外観不良の更なる改善の観点から、90/10以下、80/20以下、75/25以下、又は72/28以下であってよい。
【0051】
層(B)12は、ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂以外のその他の熱可塑性樹脂を含んでいてよい。その他の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂以外のオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。
【0052】
層(B)12がポリエチレン樹脂、及びポリプロピレン樹脂以外のその他の熱可塑性樹脂を含む場合、当該その他の熱可塑性樹脂の含有量は、層(B)12の全質量を基準として、例えば、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、又は1質量%以下であってよい。
【0053】
層(B)12は、熱可塑性樹脂からなっていてよく、熱可塑性樹脂以外のその他の成分を含んでいてよい。その他の成分の例としては、着色剤、潤滑剤、分散剤、静電防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0054】
その他の成分の含有量は、層(B)12の全質量を基準として、例えば、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、又は1質量%以下であってよい。
【0055】
層(B)12は、無機物質を含まなくてもよい。層(B)12が無機物質を含まないとは、層(B)12が全く無機物質を含まないか、又は層(B)12が不可避的不純物としての無機物質のみを含むことを意味する。層(B)12は、無機物質を含んでもよい。層(B)12における無機物質の含有量は、積層シート(及び積層シートを成形してなる食品包装容器)の耐酸性及び安全性をより向上させる観点から、層(B)12の全質量を基準として、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、又は1質量%以下であってよい。
【0056】
層(B)12の厚みは、2μm以上、5μm以上、10μm以上、20μm以上、30μm以上、40μm以上、又は50μm以上であってよく、100μm以下、80μm以下、70μm以下、又は60μm以下であってよい。
【0057】
層(B)12の厚みは、積層シート全体の厚みを100%として、1%以上、2%以上、3%以上、5%以上、10%以上、又は13%以上であってよく、50%以下、40%以下、30%以下、又は20%以下であってよい。
【0058】
図1に示される積層シート1は、層(A)と、層(A)の一方面上に設けられた層(B)との2層から構成されるが、積層シートの構成はこれに限られない。積層シートは、3層以上の層から構成されていてもよい。
【0059】
図2は、積層シートの他の一実施形態を示す模式断面図である。図2に示される積層シート2は、層(A)11と、層(A)11の一方面側に設けられた層(B)12と、層(A)11の他方面側に設けられた層(C)13と、を備えている。積層シート2では、層(B)12が積層シート2の一方の表面を構成しており、層(C)13が積層シート2の他方の表面を構成している。
【0060】
層(C)13の組成及び厚みは、特に制限されない。層(C)13は、例えば、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂を含む層であってよい。ポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂としては、層(B)12におけるポリプロピレン樹脂及びポリプロピレン樹脂として上述したものを特に制限なく用いることができる。層(C)13は、無機物質を含まなくてよく、含んでもよい。層(C)13は、上記層(B)12と同じ組成及び厚みを有していてもよい。
【0061】
層(C)13は、また、熱可塑性樹脂及び無機物質を含有する層であってもよい。熱可塑性樹脂及び無機物質の詳細は、層(A)11に含まれる熱可塑性樹脂及び無機物質として上述したものと同様であってよい。この場合、層(C)13は、層(A)11と異なる組成(熱可塑性樹脂及び無機物質の種類や含有量)を有してよい。層(C)13における熱可塑性樹脂は、例えば、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂を含んでもよい。
【0062】
3層で構成される積層シートは、図2に示す積層シート2に限られない。例えば、3層で構成される積層シートにおいては、層(B)が積層シートの一方の表面を構成し、層(A)が積層シートの他方の表面を構成していてもよい。この場合、積層シートは、中間層と、中間層の一方面上に設けられた層(B)と、中間層の他方面上に設けられた層(A)と、を備える。中間層は、例えば、ポリプロピレン樹脂からなる層、又は、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、及び無機物質を含む層であってもよい。中間層が、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、及び無機物質を含む層である場合、当該中間層は、層(A)11と異なる組成(樹脂及び無機物質の種類や含有量)を有してよい。ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、及び無機物質の詳細は、層(A)11に含まれる熱可塑性樹脂及び無機物質として上述したものと同様であってよい。
【0063】
他の一実施形態において、積層シートは、4層以上の層から構成されていてもよい。これらの場合、積層シートは、層(A)、及び、積層シートの一方の表面を構成する層(B)に加えて、その他の層を複数備える。
【0064】
4層構成の積層シートの具体例としては、層(A)と、層(A)の一方面上に設けられ、積層シートの一方の表面を構成する層(B)と、層(A)の他方面上に設けられた層(D)と、層(D)の層(A)側とは反対側の面上に設けられ、積層シートの他方の表面を構成する層(C)とを備える積層シートが挙げられる。この積層シートにおける層(D)は、例えば、熱可塑性樹脂及び無機物質を含有してよい。熱可塑性樹脂及び無機物質の詳細は、層(A)に含まれる熱可塑性樹脂及び無機物質として上述したものと同様であってよい。層(D)は、層(A)と異なる組成(熱可塑性樹脂及び無機物質の種類や含有量)を有してよい。
【0065】
上記の各実施形態の積層シートにおいて、無機物質の含有量は、積層シートの全質量を基準として、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、又は50質量%以上であってよく、80質量%以下、70質量%以下、又は65質量%以下であってよい。
【0066】
上記の各実施形態の積層シートの厚みは、200μm以上、300μm以上、又は350μm以上であってよく、500μm以下、又は450μm以下であってよい。
【0067】
上記の各実施形態の積層シートの密度は、1.0g/cm以上、又は1.2g/cm以上であってよく、2.0g/cm以下、又は1.8g/cm以下であってよい。
【0068】
上記の各実施形態の積層シートの耐衝撃強度は、3.0J/mm以上、3.5J/mm以上、又は4.0J/mm以上であってよく、10.0J/mm以下、8.0J/mm以下、又は6.0J/mm以下であってよい。本明細書において、積層シートの耐衝撃強度は、ASTM-D3420に従って求められる値を意味する。
【0069】
以上説明した積層シートは、例えば、多層Tダイ法により製造することができる。具体的には、層(A)の材料、層(B)の材料、及び必要に応じて層(C)等の他の層の材料をそれぞれ準備する工程と、各層の材料をそれぞれ溶融させ、共押出しすることにより積層シートを得る工程と、を含む方法により製造することができる。
【0070】
一実施形態に係る積層シートは、無機物質を含む層(A)を備えるため、積層シート(及び積層シートを成形してなる食品包装容器)の廃棄時の環境負荷が少ない。また、積層シートの少なくとも一方の表面は、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂を含む層(B)により構成されているため、外観不良が改善されている。そのため、一実施形態に係る積層シートは、食品包装容器等の食品包装用材料として特に好適である。積層シートは、食品包装容器の成形に用いられるものであってよい。
【0071】
本発明の別の一実施形態は、積層シートを成形してなる、食品包装容器である。積層シートから食品包装容器を製造する方法としては公知の方法を採用することができ、例えば、真空成形法、圧空成形法等の熱成形方法を用いることができる。積層シートは、真空成形に用いられるものであってよい。
【実施例0072】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0073】
[積層シートの製造]
<材料>
実施例及び比較例では、以下に示す材料を用いた。
炭酸カルシウム:炭酸カルシウム粒子(平均粒子径:0.7~6.0μm)
PP:ホモポリプロピレン樹脂(ペレット状、MFR:1.8g/10分、溶融張力:22mN)
HDPE:高密度ポリエチレン(ペレット状、密度:0.96g/cm、MFR:0.4g/10分、溶融張力:64mN)
LDPE:低密度ポリエチレン(ペレット状、密度:0.92g/cm、融点:110℃、MFR:0.9g/10分、溶融張力:120mN)
なお、MFR及び溶融張力は、以下の方法で測定した。
【0074】
(メルトマスフローレイト(MFR)の測定)
メルトインデックサ((株)東洋精機製作所製、G-02)を用いて、JIS K7210-1:2014 A法に従い、試験温度:230℃、公称荷重:2.16kgでMFRを測定した。
【0075】
(溶融張力の測定)
キャピログラフ((株)東洋精機製作所、1D)を用いて溶融張力を測定した。測定には、直径が2.0mmかつ長さが20mm(L/D=20/2)であるキャピラリーと、口径が9.55mmであるシリンダーを用いた。また、試験温度は210℃とし、シリンダー押し出し速度は20mm/分とし、引き取り速度は5m/分とした。
【0076】
<マスターバッチの作製>
PP(20.0質量%)及び炭酸カルシウム粒子(80.0質量%)を二軸混練機(芝浦機械(株)製、TEM-35B)によって230℃の条件にて溶融混練し、ストランド状に押出してペレット化することにより、マスターバッチを作製した。得られたマスターバッチについて、上記方法で測定したMFRは0.2g/10分であった。また、(株)東洋精機製作所製キャピログラフにより、直径が2.0mmかつ長さが20mmであるキャピラリーと、口径が9.55mmであるシリンダーとを用いて、測定温度:230℃、シリンダー押出速度:10mm/分の条件で溶融粘度を測定したところ、11.4kPa・sであった。
【0077】
<実施例1~6及び比較例1、3、4>
層(A)の材料として、PPと炭酸カルシウムとの配合比が表1に示す値となるように、マスターバッチとPPとをハンドブレンドしたものを準備した。例えば、実施例1では、マスターバッチ87.5質量%とPP12.5質量%とをハンドブレンドした。また、層(B)及び層(C)の材料として、表1に示す配合比で各成分をハンドブレンドしたものを準備した。層(A)を製造する40mmφ単軸押出機、層(B)及び層(C)を製造する40mmφ単軸押出機、並びに2種3層用フィードブロックを用いて、溶融した各材料を積層させ、コートハンガーダイによって、3層共押出成形を行うことで、層(B)、層(A)、及び層(C)がこの順に積層されてなる積層シートを製造した。なお、各層の厚みの比は、各層を製造する押出機のスクリュー回転数を調整することにより調整した。得られた積層シート全体の厚みは400μmであった。また、層(A)の厚みは280μm(積層シート全体の厚みの70%)であり、層(B)及び層(C)の厚みは、それぞれ60μm(積層シート全体の厚みの15%)であった。積層シートの全質量を基準とした炭酸カルシウムの含有量は、表1に示すとおりであった。
【0078】
<実施例7>
層(A)の材料として、PPと炭酸カルシウムとの配合比が表1に示す値となるように、マスターバッチとPPとをハンドブレンドしたものを準備した。また、層(B)の材料として、表1に示す配合比で各成分をハンドブレンドしたものを準備した。2種3層用フィードブロックに代えて2種2層用フィードブロックを用いて、上記実施例1等と同様の手順によって、層(B)及び層(A)がこの順に積層されてなる積層シートを製造した。なお、各層の厚みの比は、各層を製造する押出機のスクリュー回転数を調整することにより調整した。得られた積層シート全体の厚みは400μmであった。また、層(A)の厚みは280μm(積層シート全体の厚みの70%)であり、層(B)の厚みは120μm(積層シート全体の厚みの30%)であった。積層シートの全質量を基準とした炭酸カルシウムの含有量は、表1に示すとおりであった。
【0079】
<実施例8及び比較例2、5>
層(A)及び層(D)の材料として、PPの含有量及び炭酸カルシウムの含有量が表1に示す値となるように、マスターバッチとPPとをハンドブレンドしたものを準備した。また、層(B)及び層(C)の材料として、表1に示す配合比で各成分をハンドブレンドしたものを準備した。2種3層用フィードブロックに代えて4種4層フィードブロックを用いて、上記実施例1等と同様の手順によって、層(B)、層(A)、層(D)、及び層(C)がこの順に積層されてなる積層シートを製造した。なお、各層の厚みの比は、各層を製造する押出機のスクリュー回転数を調整することにより調整した。得られた積層シート全体の厚みは400μmであった。また、層(B)の厚みは、56μm(積層シート全体の厚みの14%)であり、層(A)の厚みは280μm(積層シート全体の厚みの70%)であり、層(D)の厚みは56μm(積層シート全体の厚みの14%)であり、層(C)の厚みは8μm(積層シート全体の厚みの2%)であった。積層シートの全質量を基準とした炭酸カルシウムの含有量は、表1に示すとおりであった。
【0080】
<密度の測定>
JIS K7112:1999 A法に従い、JIS K 7100:1999に規定される標準状態にて、実施例1~8及び比較例1~5の積層シートの密度を測定した。結果を表1に示す。
【0081】
<外観不良(表面粗さ)の評価>
実施例1~8及び比較例1~5の積層シートそれぞれの表面観察を共焦点レーザー走査型顕微鏡(オリンパス(株)製、OLS4000)により、0.95mm×0.95mmの範囲で実施した。カットオフ周期λc=0.8mm、λs=2.5μmとして得られた粗さ曲線において、その平均線の方向に基準長さ(L)だけ抜き取り、抜き取り部分の平均線の方向にx軸を、縦倍率の方向にy軸を取って、粗さ曲線をy=f(x)で表し、下記式によって算術平均粗さRaを算出した。なお、基準長さ(L)は1mmとした。
【数1】

Raの値に基づいて、以下の評価基準に沿って評価した。結果を表1に示す。なお、Raが0.2μm以上0.5μm未満の場合は、Raが0.2μm未満の場合と比べ、外観不良が抑えられており、Raが0.5μm以上の場合は、Raが0.2μm以上0.5μm未満の場合と比べ、外観不良が更に抑えられていることを確認した。Raが0.5μm以上(A評価)の場合に、外観不良が改善していると判断した。
A:Raが0.5μm以上
B:Raが0.2μm以上0.5μm未満
C:Raが0.2μm未満
【0082】
【表1】
【0083】
<耐衝撃強度の測定>
実施例1~8の積層シートについて、耐衝撃強度の測定を行った。実施例1~8の積層シートを、それぞれ70mm×70mmに切り出すことにより、測定サンプルを作製した。フィルムインパクトテスターを用いて、ASTM-D3420に従って、各測定サンプルの耐衝撃強度を測定した。結果を表2に示す。
【0084】
【表2】
【符号の説明】
【0085】
1,2…積層シート、11…層(A)、12…層(B)、13…層(C)。
図1
図2