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  • 特開-位相測定方法 図1
  • 特開-位相測定方法 図2
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  • 特開-位相測定方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001765
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】位相測定方法
(51)【国際特許分類】
   B23F 23/12 20060101AFI20241226BHJP
   B23Q 17/22 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
B23F23/12
B23Q17/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101418
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】須永 智也
(72)【発明者】
【氏名】田代 匡憲
【テーマコード(参考)】
3C025
3C029
【Fターム(参考)】
3C025HH01
3C029AA04
3C029AA29
(57)【要約】
【課題】ワークのギヤ部の回転位相の測定精度の向上に寄与する位相測定方法を実現する。
【解決手段】本開示の位相測定方法は、プローブ(P)を移動させてギヤ部(G)に接触させる第1の工程と、プローブ(P)の移動量が閾値以上となるまで、ワーク(W)を回転させて第1の工程を繰り返す第2の工程と、プローブ(P)の先端部を規定位置に移動させる第3の工程と、ワーク(W)を回転させ、プローブ(P)をギヤ部(G)の一方の歯面に接触させた際のワーク(W)の第1の回転位相を取得する第4の工程と、ワーク(W)を回転させ、プローブ(P)をギヤ部(G)の他方の歯面に接触させた際のワーク(W)の第2の回転位相を取得する第5の工程と、ワーク(W)の第1の回転位相とワーク(W)の第2の回転位相とに基づいて、ギヤ部(G)の歯底(s3)の中心の回転位相とする第6の工程と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機のワーク主軸に回転可能に支持されたワークのギヤ部の回転位相を前記工作機に支持されたプローブによって測定する方法であって、
前記プローブを予め設定された基準位置から前記ワークの径方向に移動させて前記プローブの先端部を前記ワークのギヤ部に接触させる第1の工程と、
前記プローブの先端部における前記ワークの径方向への移動量が予め設定された閾値以上となるまで、前記ワークを予め設定された回転量で回転させて前記第1の工程を繰り返し、前記プローブの先端部を前記ワークのギヤ部における向かい合う歯面と歯底とから成る溝部内に配置する第2の工程と、
前記プローブの先端部における前記ワークの径方向への移動量が予め設定された規定量となる前記ワークにおけるギヤ部の溝部内における当該ワークの径方向の規定位置に前記プローブの先端部を移動させる第3の工程と、
前記第3の工程が終了後に、前記ワークを一方に回転させ、前記プローブの先端部を前記ワークのギヤ部における一方の歯面に接触させた際の前記規定位置に対する前記ワークの第1の回転位相を取得する第4の工程と、
前記第3の工程が終了後に、前記ワークを他方に回転させ、前記プローブの先端部を前記ワークのギヤ部における他方の歯面に接触させた際の前記規定位置に対する前記ワークの第2の回転位相を取得する第5の工程と、
前記ワークの第1の回転位相と前記ワークの第2の回転位相とを足し合わせ、足し合わせた回転位相を2で割った値を前記ワークのギヤ部の歯底の中心の回転位相とする第6の工程と、
を備える、位相測定方法。
【請求項2】
前記規定量は、前記閾値に対して小さい、請求項1に記載の位相測定方法。
【請求項3】
前記規定位置は、前記ワークにおけるギヤ部の基準円に対して当該ワークの径方向外側に配置されている、請求項1又は2に記載の位相測定方法。
【請求項4】
前記プローブは、前記ワークに対して上側に配置し、前記基準位置から下側に移動させることで前記ワークのギヤ部に接触させる、請求項1又は2に記載の位相測定方法。
【請求項5】
前記工作機は、前記ワークの軸方向の両端部を回転可能に前記ワーク主軸によって支持する、請求項4に記載の位相測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、位相測定方法に関し、例えば、工作機のワーク主軸に回転可能に支持されたワークのギヤ部の回転位相を工作機に支持されたプローブによって測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、工作機に支持されたワークを加工する場合、ワークに形成されたギヤ部の回転位相に対して、当該ワークに加工される孔の位置などが重要な場合がある。そのため、工作機に支持されたワークのギヤ部の回転位相が測定されている。
【0003】
例えば、特許文献1の歯車の位相測定方法は、ワークの側方から当該ワークにプローブの先端部を近付けて、ワークのギヤ部の周方向の第1の角度を有する第1の検出位置で当該ギヤ部が検出されたか否かを示す第1の判定結果を取得し、ワークの側方から当該ワークにプローブの先端部を近付けて、ワークのギヤ部の周方向の第2の角度を有する第2の検出位置で、第1の判定結果と異なる第2の判定結果を取得する。
【0004】
そして、特許文献1の歯車の位相測定方法は、第1の角度と第2の角度との間の第3の角度を取得し、ワークの側方から当該ワークにプローブの先端部を近付けて、ワークのギヤ部の周方向の第3の角度を有する第3の検出位置で当該ギヤ部が検出されたか否かを示す第3の判定結果を取得する。
【0005】
さらに、特許文献1の歯車の位相測定方法は、第3の判定結果と第1の判定結果とが同じであれば、第1の角度を第3の角度に置き換え、第3の判定結果と第1の判定結果とが異なれば、第2の角度を第3の角度に置き換え、第1の角度から第2の角度までの角度に基づいて、ワークのギヤ部の回転位相を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6466633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願人は、以下の課題を見出した。特許文献1の歯車の位相測定方法は、第1の角度又は第2の角度を第3の角度に置き換えることを繰り返し、第1の角度と第2の角度との差が閾値以下の場合、第1の角度又は第2の角度をワークのギヤ部の回転位相としている。つまり、特許文献1の歯車の位相測定方法は、ワークのギヤ部の歯面にプローブを接触させて当該ギヤ部の回転位相を測定していない。そのため、特許文献1の歯車の位相測定方法は、ワークのギヤ部の回転位相を正確に測定することが難しい課題を有する。
【0008】
本開示は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、ワークのギヤ部の回転位相の測定精度の向上に寄与する位相測定方法を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る位相測定方法は、工作機のワーク主軸に回転可能に支持されたワークのギヤ部の回転位相を前記工作機に支持されたプローブによって測定する方法であって、
前記プローブを予め設定された基準位置から前記ワークの径方向に移動させて前記プローブの先端部を前記ワークのギヤ部に接触させる第1の工程と、
前記プローブの先端部における前記ワークの径方向への移動量が予め設定された閾値以上となるまで、前記ワークを予め設定された回転量で回転させて前記第1の工程を繰り返し、前記プローブの先端部を前記ワークのギヤ部における向かい合う歯面と歯底とから成る溝部内に配置する第2の工程と、
前記プローブの先端部における前記ワークの径方向への移動量が予め設定された規定量となる前記ワークにおけるギヤ部の溝部内における当該ワークの径方向の規定位置に前記プローブの先端部を移動させる第3の工程と、
前記第3の工程が終了後に、前記ワークを一方に回転させ、前記プローブの先端部を前記ワークのギヤ部における一方の歯面に接触させた際の前記規定位置に対する前記ワークの第1の回転位相を取得する第4の工程と、
前記第3の工程が終了後に、前記ワークを他方に回転させ、前記プローブの先端部を前記ワークのギヤ部における他方の歯面に接触させた際の前記規定位置に対する前記ワークの第2の回転位相を取得する第5の工程と、
前記ワークの第1の回転位相と前記ワークの第2の回転位相とを足し合わせ、足し合わせた回転位相を2で割った値を前記ワークのギヤ部の歯底の中心の回転位相とする第6の工程と、
を備える。
【0010】
上述の位相測定方法において、前記規定量は、前記閾値に対して小さいことが好ましい。
【0011】
上述の位相測定方法において、前記規定位置は、前記ワークにおけるギヤ部の基準円に対して当該ワークの径方向外側に配置されていることが好ましい。
【0012】
上述の位相測定方法において、前記プローブは、前記ワークに対して上側に配置し、前記基準位置から下側に移動させることで前記ワークのギヤ部に接触させることが好ましい。
【0013】
上述の位相測定方法において、前記工作機は、前記ワークの軸方向の両端部を回転可能に前記ワーク主軸によって支持することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、ワークのギヤ部の回転位相の測定精度の向上に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態の位相測定方法が実施される工作機の構成の代表例を説明するための図である。
図2】実施の形態の位相測定方法の流れを示すフローチャート図である。
図3】(a)は、プローブの先端部がワークのギヤ部に接触した状態をY軸-側から見た図であり、(b)は、プローブの先端部が閾値以上移動した状態をY軸-側から見た図であり、(c)は、プローブの先端部が規定位置に配置された状態をY軸-側から見た図である。
図4】(a)は、ワークを一方に回転させてプローブの先端部をワークのギヤ部の一方の歯面に接触させた状態をY軸-側から見た図であり、(b)は、ワークを他方に回転させてプローブの先端部をワークのギヤ部の他方の歯面に接触させた状態をY軸-側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本開示が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0017】
先ず、本実施の形態の位相測定方法が実施される工作機の構成の代表例を説明する。図1は、本実施の形態の位相測定方法が実施される工作機の構成の代表例を説明するための図である。
【0018】
ここで、以下の説明では、説明を明確にするために、三次元(XYZ)座標系を用いて説明する。なお、X軸+側が工作機の前側であり、X軸-側が工作機の後側である。Y軸+側が工作機の左側であり、Y軸-側が工作機の右側である。Z軸+側が工作機の上側であり、Z軸-側が工作機の下側である。
【0019】
工作機1は、例えば、ターニングセンタなどで構成することができ、図1に示すように、工具主軸2、第1のワーク主軸3、第2のワーク主軸4、及び刃物台5を備えている。工具主軸2、第1のワーク主軸3、第2のワーク主軸4、及び刃物台5は夫々、例えば、制御装置によって制御される各々の駆動機構の駆動力によって、一般的なターニングセンタなどと同様の動作を行う構成とされている。
【0020】
工具主軸2は、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能である。工具主軸2は、工具やプローブなどを支持可能である。なお、図1の図示例では、工具主軸2がプローブPを支持している。プローブPは、例えば、後述するようにワークWとの接触を検出する。
【0021】
第1のワーク主軸3は、Y軸回りに回転可能である。第1のワーク主軸3は、例えば、図1に示すように、チャック3aによってY軸方向に延在するワークWのY軸+側の端部を支持可能である。
【0022】
第2のワーク主軸4は、図1に示すように、第1のワーク主軸3とY軸方向で対向するように配置されている。第2のワーク主軸4は、Y軸回りに回転可能である。第2のワーク主軸4は、例えば、チャック4aによってワークWのY軸-側の端部を支持可能である。なお、図1の図示例では、第1のワーク主軸3及び第2のワーク主軸4がY軸方向に延在する軸状部材の周面にギヤ部Gが形成されたワークWを支持している。
【0023】
刃物台5は、例えば、一般的なタレットであるとよく、刃物台5の周面に複数の工具を支持可能な構成とされている。刃物台5は、Y軸回りに回転(旋回)可能であると共に、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能である。
【0024】
このような工作機1を用いてギヤ部Gが形成されたワークWを加工する場合、例えば、一度、ワークWを熱処理するために第1のワーク主軸3及び第2のワーク主軸4から取り外し、熱処理後に再度、ワークWを第1のワーク主軸3及び第2のワーク主軸4に取り付ける場合がある。
【0025】
このとき、ワークWのギヤ部Gの回転位相に対して予め設定された位置に孔や他のギヤ部などを加工するために、ワークWのギヤ部Gの回転位相を測定する必要が生じる場合がある。
【0026】
そこで、本実施の形態の位相測定方法は、以下のように、工作機1の第1のワーク主軸3及び第2のワーク主軸4に支持されたワークWのギヤ部Gの歯底の中心の回転位相を測定する。なお、以下のワークWのギヤ部Gの歯底の中心の回転位相を測定する処理は、工作機1の制御装置などがプログラムを実行することで実現することができる。
【0027】
図2は、本実施の形態の位相測定方法の流れを示すフローチャート図である。図3(a)は、プローブの先端部がワークのギヤ部に接触した状態をY軸-側から見た図であり、図3(b)は、プローブの先端部が閾値以上移動した状態をY軸-側から見た図であり、図3(c)は、プローブの先端部が規定位置に配置された状態をY軸-側から見た図である。図4(a)は、ワークを一方に回転させてプローブの先端部をワークのギヤ部の一方の歯面に接触させた状態をY軸-側から見た図であり、図4(b)は、ワークを他方に回転させてプローブの先端部をワークのギヤ部の他方の歯面に接触させた状態をY軸-側から見た図である。
【0028】
先ず、プローブPの中心軸C1が、ワークWの中心軸を通り、且つZ軸方向に延在する基準軸AX1上に略配置されつつ、プローブPのZ軸-側の端部(即ち、先端部)がワークWのギヤ部Gに対してZ軸+側に配置されるように、工具主軸2を移動させる(S1)。
【0029】
このような状態で、工具主軸2を移動させてプローブPを予め設定されたZ軸方向の高さの基準位置からZ軸-側に移動させ、図3(a)に示すように、プローブPのZ軸-側の端部をワークWのギヤ部Gに接触させる(S2)。そして、Z軸方向において、基準位置からプローブPのZ軸-側の端部がワークWのギヤ部Gに接触した状態となるまでの当該プローブPのZ軸-側の端部の移動量が、予め設定された閾値以上か否かを判定する(S3)。
【0030】
プローブPのZ軸-側の端部の移動量が閾値未満の場合(S3のNO)、第1のワーク主軸3及び第2のワーク主軸4を回転させてワークWを予め設定された回転量で回転させ(S4)、S2の工程に戻る。つまり、プローブPのZ軸-側の端部の移動量が閾値以上となるまで、S2~S4の工程を繰り返す。
【0031】
プローブPのZ軸-側の端部の移動量が閾値以上の場合(S3のYES)、図3(b)に示すように、プローブPのZ軸-側の端部は、Y軸方向から見て、ワークWのギヤ部Gにおける周方向で隣接する歯部g1と歯部g2との間の溝部g3の内部に配置される。溝部g3は、歯部g1の歯面s1と、歯部g1と隣接する歯部g2の歯面s2と、歯部g1と歯部g2との間の歯底s3と、で形成されている。
【0032】
次に、プローブPのZ軸-側の端部の移動量が予め設定された規定量となるように、図3(c)に示すように、工具主軸2を移動させてプローブPの先端部をワークWのギヤ部Gの溝部g3内におけるZ軸方向の規定位置に移動させる(S5)。このとき、規定量は、上述の閾値に対して小さいとよい。
【0033】
そのため、規定位置は、プローブPのZ軸-側の端部の移動量が閾値以上で当該プローブPのZ軸-側の端部がワークWのギヤ部Gに接触した状態でのプローブPのZ軸-側の端部におけるZ軸方向の高さ位置に対して、ワークWのギヤ部Gの歯先側に配置されることになる。ここで、詳細な機能は後述するが、規定位置は、図3(c)に示すように、ワークWにおけるギヤ部Gの基準円R1に対して(但し、基準円R1上を含む)当該ワークWの径方向外側に配置されているとよい。
【0034】
次に、プローブPの先端部が規定位置に配置された状態で、第1のワーク主軸3及び第2のワーク主軸4を回転させてワークWを一方に回転させ、図4(a)に示すように、プローブPのZ軸-側の端部を歯部g2の歯面s2に接触させ、その状態での規定位置からのワークWの第1の回転位相を取得する(S6)。
【0035】
次に、第1のワーク主軸3及び第2のワーク主軸4を他方に回転させて、再び、プローブPの先端部を規定位置に配置する。そして、第1のワーク主軸3及び第2のワーク主軸4を回転させてワークWを他方に回転させ、図4(b)に示すように、プローブPのZ軸-側の端部を歯部g1の歯面s1に接触させ、その状態での規定位置からのワークWの第2の回転位相を取得する(S7)。
【0036】
次に、ワークWの第1の回転位相及びワークWの第2の回転位相に基づいて、ワークWのギヤ部Gの歯底s3の中心C2の回転位相を取得する(S8)。例えば、ワークWの第1の回転位相とワークWの第2の回転位相とを足し合わせ、足し合わせた回転位相を2で割った値をワークWのギヤ部Gの歯底s3の中心C2の回転位相とする。
【0037】
詳細には、例えば、Y軸-側から見て、図3(c)の状態においてワークWの中心軸を中心として規定位置を0degとし、時計回りを負の向きとし、反時計回りを正の向きとする。そして、図3(c)の状態から図4(a)の状態として、ワークWの第1の回転位相として+2.4degを取得し、再度、図3(c)の状態に戻してからワークWを図4(b)の状態として、ワークWの第2の回転位相として-5.4degを取得した場合、((+2.4)+(-5.4))÷2=-1.5degがワークWのギヤ部Gの歯底s3の中心C2の回転位相となる。これにより、規定位置に対するワークWのギヤ部Gの歯底s3の中心C2の回転位相を取得することができる。
【0038】
このとき、上述のように、規定位置がワークWにおけるギヤ部Gの基準円R1に対して当該ワークWの径方向外側に配置されている場合、ワークWのギヤ部Gにおける隣接する歯部g1の歯面s1と歯部g2の歯面s2との間隔が、歯底s3の側に対して広い箇所で、ワークWの第1の回転位相及び第2の回転位相を取得することができ、ワークWのギヤ部Gの歯底s3の中心C2の回転位相の測定精度を向上させることができる。
【0039】
その後、例えば、予め取得したワークWのギヤ部Gの諸元データと、ワークWのギヤ部Gの歯底s3の中心C2の回転位相を示すデータと、に基づいて、当該ギヤ部Gの回転位相に対して孔や他のギヤ部などを加工する位置を算出し、算出した位置に孔や他のギヤ部などが加工されるように、第1のワーク主軸3、第2のワーク主軸4及び刃物台5を動作させると、ワークWを加工することができる。
【0040】
このように本実施の形態の位相測定方法は、プローブPのZ軸-側の端部を隣接する歯部g1の歯面s1と歯部g2の歯面s2とに接触させて、歯部g1と歯部g2との間の歯底s3の中心C2の回転位相を取得する。そのため、本実施の形態の位相測定方法は、特許文献1の歯車の位相測定方法に比べて、ワークWのギヤ部Gの回転位相を正確に測定することができる。
【0041】
しかも、本実施の形態の位相測定方法は、プローブPをワークWの径方向から近付けて当該ワークWのギヤ部Gの歯底s3の中心C2の回転位相を取得している。そのため、上述のようにワークWのY軸方向の両端部が第1のワーク主軸3及び第2のワーク主軸4に支持されている場合、例えば、特許文献1の歯車の位相測定方法のようにワークのギヤ部の側方からプローブを当該ギヤ部に接触させることは難しいが、本実施の形態の位相測定方法は、ワークWのギヤ部GにプローブPを容易に接触させることができる。
【0042】
なお、本実施の形態では、プローブPをZ軸方向に移動させてワークWのギヤ部Gの歯底s3の中心C2の回転位相を取得しているが、プローブPをワークWの径方向に移動させてワークWのギヤ部Gの歯底s3の中心C2の回転位相を取得すればよい。
【0043】
また、本実施の形態では、ワークWが第1のワーク主軸3及び第2のワーク主軸4に支持されているが、ワークWが第1のワーク主軸3又は第2のワーク主軸4の一方に支持されていても、同様に実施することができる。
【0044】
本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 工作機
2 工具主軸
3 第1のワーク主軸、3a チャック
4 第2のワーク主軸、4a チャック
5 刃物台
AX1 基準軸
C1 ワークの中心軸
C2 ワークのギヤ部の歯底の中心
G ギヤ部
g1、g2 歯部
g3 溝部
P プローブ
R1 基準円
s1、s2 歯面
s3 歯底
W ワーク
図1
図2
図3
図4