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  • 特開-金属鋳造用給湯装置 図1
  • 特開-金属鋳造用給湯装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017658
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】金属鋳造用給湯装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/30 20060101AFI20250130BHJP
【FI】
B22D17/30 C
B22D17/30 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023120807
(22)【出願日】2023-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006943
【氏名又は名称】リョービ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003742
【氏名又は名称】弁理士法人海田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 弘隆
(57)【要約】
【課題】簡易な改良でラドルが掬う金属溶湯の注湯量を不具合なく適切に制御する。
【解決手段】金属鋳造用給湯装置10は、保持炉5に溶けた状態で保持される金属溶湯をダイカストが行われる射出スリーブ6に注湯するための装置であり、ラドル12と、湯面検知手段13と、駆動アーム11と、を備える。そして、この金属鋳造用給湯装置10では、湯面検知手段13を構成するアース棒15における金属溶湯の湯面と接触する部位を平板状の板部材17とするとともに、当該板部材17が金属溶湯の湯面に浸漬する方向に対して傾斜した傾斜平面部17aを有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持炉に溶けた状態で保持される金属溶湯をダイカストが行われる射出スリーブに注湯するための金属鋳造用給湯装置であって、
前記保持炉で保持される金属溶湯を掬って前記射出スリーブに注湯するラドルと、
前記ラドルが前記保持炉で保持される金属溶湯を掬う際に、当該保持炉内の金属溶湯に先に浸漬されるアース棒と、当該アース棒に続いて前記保持炉内の金属溶湯に浸漬される湯面検知棒とを有することにより、前記アース棒と前記湯面検知棒のいずれもが金属溶湯に浸漬して電気的に短絡させることで前記保持炉内の金属溶湯の湯面に対する前記ラドルの浸漬量を制御するための湯面検知手段と、
前記ラドルを前記保持炉と前記射出スリーブとの間で移動させるとともに、前記湯面検知手段を構成する前記アース棒と前記湯面検知棒とが設置される駆動アームと、
を備え、さらに、
前記アース棒における金属溶湯の湯面と接触する部位を平板状の板部材とするとともに、当該板部材が金属溶湯の湯面に浸漬する方向に対して傾斜した傾斜平面部を有することを特徴とする金属鋳造用給湯装置。
【請求項2】
請求項1に記載の金属鋳造用給湯装置であって、
前記湯面検知棒の直下に前記傾斜平面部が配置されることで、金属溶湯の湯面に前記湯面検知棒が接触する前に前記傾斜平面部が金属溶湯の湯面を均して平滑な湯面にすることを特徴とする金属鋳造用給湯装置。
【請求項3】
請求項2に記載の金属鋳造用給湯装置であって、
前記傾斜平面部の平面視中央位置が前記湯面検知棒の直下に配置されることを特徴とする金属鋳造用給湯装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の金属鋳造用給湯装置であって、
前記傾斜平面部は、前記アース棒を構成する前記板部材が金属溶湯の湯面に浸漬する方向に対して45度から60度の角度で傾斜したものであることを特徴とする金属鋳造用給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属鋳造用給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、保持炉に溶けた状態で保持される金属溶湯をダイカストが行われる射出スリーブに注湯するための金属鋳造用給湯装置が知られている。この種の金属鋳造用給湯装置では、射出スリーブに注湯される金属溶湯を適切な量に制御する必要がある。そこで、従来技術では、様々な手法を用いて注湯量を制御することが行われていた。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、保持炉で保持される金属溶湯を掬って射出スリーブに注湯するラドルと、ラドルが保持炉で保持される金属溶湯を掬う際に、当該保持炉内の金属溶湯に先に浸漬されるアース棒と、当該アース棒に続いて保持炉内の金属溶湯に浸漬される湯面検知棒とを有することにより、アース棒と湯面検知棒のいずれもが金属溶湯に浸漬して電気的に短絡させることで保持炉内の金属溶湯の湯面に対するラドルの浸漬量を制御するための湯面検知手段と、ラドルを保持炉と射出スリーブとの間で移動させるとともに、湯面検知手段を構成するアース棒と湯面検知棒とが設置される駆動アームと、を備えた金属鋳造用給湯装置が開示されている。
【0004】
特許文献1に開示された金属鋳造用給湯装置では、アース棒と湯面検知棒という2本の湯面検知手段を用いることで、ラドルが掬う金属溶湯の注湯量の制御が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6435313号公報
【特許文献2】実開平6-77963号公報
【特許文献3】特開2015-186821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ラドルによって金属溶湯を掬う方式の金属鋳造用給湯装置では、保持炉に溶けた状態で保持された金属溶湯の湯面に小バリ等の浮遊物が浮遊していることがあった。このような場合に、例えば湯面検知棒が湯面に接触する前に浮遊物に接触してしまうと、ラドルが適正な位置より高い箇所で停止してしまうこととなるので、ラドルが適正量の溶湯を掬うことができなかったり、ラドルが溶湯を全く掬えずにカラ打ち鋳造が発生してしまったりする虞が存在していた。
【0007】
この種の不具合を解決する従来技術には、例えば、上記特許文献2、3等が存在していた。すなわち、特許文献2に開示された装置では、金属溶湯の湯面に浮かぶ酸化被膜等の浮遊物をラドル内に侵入させないためにワイパーを設置しており、特許文献3に開示された装置では、ラドルが金属溶湯を掬う際にノロカキの動作を加える制御が行われるものであった。
【0008】
しかしながら、上記特許文献2、3等に開示された従来技術は、いずれも構成や制御が複雑になってしまうものであり、改良の余地が残されていた。
【0009】
本発明は、上述した従来技術に存在する課題に鑑みて成されたものであって、その目的は、既存の金属鋳造用給湯装置に簡易な改良を加えるだけで、ラドルが掬う金属溶湯の注湯量を適切に制御できるとともに、ラドルが溶湯を全く掬えずにカラ打ち鋳造が発生してしまうなどの不具合の発生を適切に防止することのできる金属鋳造用給湯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照番号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0011】
本発明に係る金属鋳造用給湯装置(10)は、保持炉(5)に溶けた状態で保持される金属溶湯をダイカストが行われる射出スリーブ(6)に注湯するための金属鋳造用給湯装置(10)であって、前記保持炉(5)で保持される金属溶湯を掬って前記射出スリーブ(6)に注湯するラドル(12)と、前記ラドル(12)が前記保持炉(5)で保持される金属溶湯を掬う際に、当該保持炉(5)内の金属溶湯に先に浸漬されるアース棒(15)と、当該アース棒(15)に続いて前記保持炉(5)内の金属溶湯に浸漬される湯面検知棒(16)とを有することにより、前記アース棒(15)と前記湯面検知棒(16)のいずれもが金属溶湯に浸漬して電気的に短絡させることで前記保持炉(5)内の金属溶湯の湯面に対する前記ラドル(12)の浸漬量を制御するための湯面検知手段(13)と、前記ラドル(12)を前記保持炉(5)と前記射出スリーブ(6)との間で移動させるとともに、前記湯面検知手段(13)を構成する前記アース棒(15)と前記湯面検知棒(16)とが設置される駆動アーム(11)と、を備え、さらに、前記アース棒(15)における金属溶湯の湯面と接触する部位を平板状の板部材(17)とするとともに、当該板部材(17)が金属溶湯の湯面に浸漬する方向に対して傾斜した傾斜平面部(17a)を有することを特徴とするものである。
【0012】
本発明に係る金属鋳造用給湯装置(10)では、前記湯面検知棒(16)の直下に前記傾斜平面部(17a)が配置されることで、金属溶湯の湯面に前記湯面検知棒(16)が接触する前に前記傾斜平面部(17a)が金属溶湯の湯面を均して平滑な湯面にすることができる。
【0013】
また、本発明に係る金属鋳造用給湯装置(10)では、前記傾斜平面部(17a)の平面視中央位置を前記湯面検知棒(16)の直下に配置することができる。
【0014】
さらに、本発明に係る金属鋳造用給湯装置(10)において、前記傾斜平面部(17a)は、前記アース棒(15)を構成する前記板部材(17)が金属溶湯の湯面に浸漬する方向に対して45度から60度の角度で傾斜したものであることが好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、既存の金属鋳造用給湯装置に簡易な改良を加えるだけで、ラドルが掬う金属溶湯の注湯量を適切に制御できるとともに、ラドルが溶湯を全く掬えずにカラ打ち鋳造が発生してしまうなどの不具合の発生を適切に防止することのできる金属鋳造用給湯装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る金属鋳造用給湯装置の全体構成を説明するための概略図である。
図2】本実施形態に係る金属鋳造用給湯装置の要部であるアース棒と湯面検知棒を拡大して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0018】
図1は、本実施形態に係る金属鋳造用給湯装置の全体構成を説明するための概略図である。図1では、紙面右側を後方側(すなわち、保持炉5が設置された側)、紙面左側を前方側(すなわち、射出スリーブ6が設置された側)として説明する。また、図1では、実線で示した状態が金属鋳造用給湯装置の初期状態を示しており、さらに本実施形態に係る金属鋳造用給湯装置は、破線で示した状態に移動できることが示されている。
【0019】
図1で示すように、本実施形態に係る金属鋳造用給湯装置10は、後方側に保持炉5が設けられるとともに、前方側にダイカストが行われる射出スリーブ6が設けられ、これら保持炉5と射出スリーブ6との間の位置に配置される装置である。なお、保持炉5には、溶けた状態の金属溶湯が保持されており、本実施形態では、アルミニウム合金の溶湯が保持されていることを想定して以下の説明を行うこととする。また、射出スリーブ6は、不図示のダイカストマシンに接続する部材であり、射出スリーブ6に金属溶湯が注湯された後に不図示のダイカストマシンが有するキャビティに当該金属溶湯が鋳込まれることで、所望の金属鋳造製品が製造されることとなる。
【0020】
さて、本実施形態に係る金属鋳造用給湯装置10は、上述したように、保持炉5に溶けた状態で保持される金属溶湯をダイカストが行われる射出スリーブ6に注湯するための装置であり、駆動アーム11とラドル12と湯面検知手段13とを有している。
【0021】
駆動アーム11は、金属鋳造用給湯装置10のベース部材14に設置されるロボットアームであり、リンク機構によって後述するラドル12を保持炉5から射出スリーブ6へと移動し、さらに、射出スリーブ6から保持炉5へと移動できるように構成されている。
【0022】
この駆動アーム11のアーム先端には、ラドル12が設置されている。本実施形態に係るラドル12は、保持炉5で保持される金属溶湯を掬って射出スリーブ6に注湯する部材であり、かかる機能を発揮するために、高温の金属溶湯内に繰返し浸漬したとしても耐え得るような耐火物によって形成されている。なお、ラドル12の構成材料については、耐火物のほか、鋳物に耐火材をコーティングしたものを用いてもよい。また、ラドル12は、駆動アーム11のアーム先端部で傾動可能に設けられており、保持炉5で保持される金属溶湯を掬って射出スリーブ6に注湯する動作を好適に実施可能となっている。
【0023】
本実施形態に係る湯面検知手段13は、アース棒15と湯面検知棒16とによって構成されており、これらアース棒15と湯面検知棒16からなる湯面検知手段13は、駆動アーム11に対して設置されている。また、アース棒15と湯面検知棒16との位置関係については、アース棒15の先端位置よりも湯面検知棒16の先端位置の方が僅かに上方に位置するように配置されている。したがって、ラドル12が保持炉5で保持される金属溶湯を掬う際には、当該保持炉5内の金属溶湯に対して先にアース棒15が浸漬され、その後、当該アース棒15に続いて保持炉5内の金属溶湯に湯面検知棒16が浸漬するように構成されている。アース棒15と湯面検知棒16のいずれもが金属溶湯に浸漬すると、湯面検知手段13は電気的に短絡することになるので、この短絡によって保持炉5内の金属溶湯の湯面に対するラドル12の浸漬量を制御することが可能となる。さらに、駆動アーム11に対して傾動自在に設置されるラドル12については、駆動アーム11に対するラドル12の傾動角度を制御することが可能となっており、かかる傾動角度の制御と前記した湯面検知手段13によるラドル12の金属溶湯の湯面に対する浸漬量の制御とによって、ラドル12と湯面検知手段13とが協働してラドル12による金属溶湯の掬い量を調節可能となっている。つまり、本実施形態に係る湯面検知手段13では、湯面検知棒16の先端位置とラドル12の傾動角度によって、ラドル12が掬う金属溶湯の量を制御することが行われている。
【0024】
以上、本実施形態に係る金属鋳造用給湯装置10の主要な構成部材を説明した。次に、図2を参照図面に加えて、本実施形態に係る金属鋳造用給湯装置10の特徴的な構成を説明する。ここで、図2は、本実施形態に係る金属鋳造用給湯装置の要部であるアース棒と湯面検知棒を拡大して示した図である。
【0025】
図2に示すように、本実施形態に係る金属鋳造用給湯装置10が備えるアース棒15は、金属溶湯の湯面と接触する部位が平板状の板部材17として構成されており、さらに、当該板部材17については、金属溶湯の湯面に浸漬する方向に対して傾斜した傾斜平面部17aを有して構成されている。
【0026】
本実施形態では、傾斜平面部17aを含む板部材17は、平板状からなるステンレス鋼の板材を折り曲げることで形成されている。また、アース棒15と湯面検知棒16との位置関係は、図2にて示されるように、湯面検知棒16の直下に傾斜平面部17aが配置されるとともに、傾斜平面部17aの平面視中央位置が湯面検知棒16の直下に配置されるように構成されている。かかる構成を有することで、本実施形態では、金属溶湯の湯面に湯面検知棒16が接触する前に、アース棒15を構成する板部材17の傾斜平面部17aが金属溶湯の湯面を均して平滑な湯面にすることができるので、たとえ金属溶湯の湯面に小バリや酸化被膜等の浮遊物が浮遊している場合であっても、傾斜平面部17aが浮遊物を除けて湯面検知棒16が金属溶湯の正しい湯面の位置を検知することが可能となっている。
【0027】
なお、発明者による研究努力によって、本実施形態の傾斜平面部17aについては、アース棒15を構成する板部材17が金属溶湯の湯面に浸漬する方向に対して45度から60度の角度で傾斜させることが浮遊物を除ける上で好適であることが明らかとなっている。
【0028】
また、本実施形態では、板部材17を折り曲げて形成される傾斜平面部17aの折り曲げ方向については、図2で示すように、板部材17の長手方向に対して斜めに折り目が付くように折り曲げてある。このように、湯面検知棒16の直下に位置する傾斜平面部17aが斜め方向の角度をもって配置されることで、金属溶湯の湯面に浮遊する浮遊物を好適に除けることが可能となる。
【0029】
以上説明した本実施形態に係る金属鋳造用給湯装置10によれば、既存の金属鋳造用給湯装置に簡易な改良を加えるだけで、ラドル12が掬う金属溶湯の注湯量を適切に制御できるとともに、ラドル12が溶湯を全く掬えずにカラ打ち鋳造が発生してしまうなどの不具合の発生を適切に防止することができる。
【0030】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0031】
例えば、板部材17を折り曲げて形成される傾斜平面部17aの折り曲げ方向については、図2で示した形態例に限られるものではなく、上述した実施形態と同様の作用効果を発揮できる範囲内において、任意の方向および任意の角度に折り曲げることができる。
【0032】
また、湯面検知手段13を構成するアース棒15と湯面検知棒16を保護するために、湯面検知手段13の周囲に保護壁板を設けるなど、上述した本実施形態に付加部材を加えることも、本発明の範囲に含まれている。
【0033】
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0034】
5 保持炉、6 射出スリーブ、10 金属鋳造用給湯装置、11 駆動アーム、12 ラドル、13 湯面検知手段、15 アース棒、16 湯面検知棒、17 板部材、17a 傾斜平面部。
図1
図2