(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001766
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】振れ止め装置及び工作装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 1/76 20060101AFI20241226BHJP
B23B 25/00 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
B23Q1/76 S
B23B25/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101419
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】田代 匡憲
(72)【発明者】
【氏名】須永 智也
【テーマコード(参考)】
3C045
3C048
【Fターム(参考)】
3C045HA10
3C048EE06
(57)【要約】
【課題】簡単な構成でワークの振れを抑制可能な振れ止め装置を実現する。
【解決手段】本開示の一形態に係る振れ止め装置(3)は、振れ止め装置(3)を移動させる移動機構に固定されるアーム部(9)と、アーム部(9)の先端部に配置され、ワーク(W)の側及びワーク(W)の側に対して逆側にスライド可能なスライド機構(10)と、スライド機構(10)の先端部に配置され、ワーク(W)に接触する2本のローラと、振れ止め装置(3)が接触姿勢の状態で2本のローラをワーク(W)の側に付勢する付勢機構(13)と、2本のローラの位置を固定する固定機構(14)と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機のワーク主軸に支持されたワークを加工する際の前記ワークの振れを抑制するための振れ止め装置であって、
前記ワークを間にして当該ワークを加工するための工具が配置される側に対して逆側から前記振れ止め装置が前記ワークに接触する接触姿勢に前記振れ止め装置を移動させる移動機構に固定されるアーム部と、
前記アーム部の先端部に配置され、前記振れ止め装置が前記接触姿勢の状態で前記ワークの側及び当該ワークの側に対して逆側にスライド可能なスライド機構と、
前記スライド機構の先端部に配置され、前記振れ止め装置が前記接触姿勢の状態で前記ワークに接触する2本のローラと、
前記振れ止め装置が前記接触姿勢の状態で前記2本のローラを前記ワークの側に付勢する付勢機構と、
前記2本のローラの位置を固定する固定機構と、
を備える、振れ止め装置。
【請求項2】
前記振れ止め装置が前記接触姿勢の状態で前記2本のローラは夫々、前記ワークの中心軸と平行に配置される回転軸を中心に回転可能であり、
前記振れ止め装置が前記接触姿勢の状態で、前記ワークの径方向から見て、前記2本のローラにおける一方のローラが前記ワークにおける当該ワークの中心軸を間にして一方の領域に接触し、他方のローラが前記ワークにおける当該ワークの中心軸を間にして他方の領域に接触する、請求項1に記載の振れ止め装置。
【請求項3】
前記工作機は、ターニングセンタを含む複合工作機であり、
前記移動機構は、前記工作機の旋回式の刃物台であり、
前記刃物台は、前記工作機が前記ワークを支持した状態で当該ワークの中心軸と平行な回転軸を中心に旋回可能である、請求項1又は2に記載の振れ止め装置。
【請求項4】
前記刃物台は、前記振れ止め装置が前記接触姿勢の状態で前記スライド機構がスライド可能な方向に、移動不能である、請求項3に記載の振れ止め装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の振れ止め装置と、
前記移動機構を有する工作機と、
を備える、工作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、振れ止め装置及び工作装置に関し、例えば、工作機のワーク主軸に支持されたワークを加工する際の当該ワークの振れを抑制するための振れ止め装置及び工作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機に支持されたワークを加工する場合、ワークを加工するための工具によって当該ワークが押し込まれ、ワークに撓みが生じる。そのため、ワークの加工精度を確保するために、ワークを加工する際の当該ワークの振れを抑制することが好ましい。
【0003】
例えば、特許文献1の振れ止め装置は、第1の回転ローラを支持し、カム部材が通された第1の支持部材、第2のローラを支持し、カム部材に接触する受動ローラが設けられた第2の支持部材、第3のローラを支持し、カム部材に接触する受動ローラが設けられた第3の支持部材、及び第1の支持部材並びにカム部材を上下方向に移動させる駆動機構を備えている。
【0004】
このような特許文献1の振れ止め装置は、ワークの下端部に第1のローラが接触するように、油圧ポンプから加圧される作動油によって駆動機構を動作させ、第1の支持部材及びカム部材を上側に移動させると共に、カム部材を介して第2のローラ及び第3のローラがワークを把持するように動作させる構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願人は、以下の課題を見出した。特許文献1の振れ止め装置は、油圧ポンプから加圧される作動油によって駆動機構が動作する構成であり、振れ止め装置の構成が複雑である課題を有する。
【0007】
本開示は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構成でワークの振れを抑制可能な振れ止め装置及び工作装置を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る振れ止め装置は、工作機のワーク主軸に支持されたワークを加工する際の前記ワークの振れを抑制するための振れ止め装置であって、
前記ワークを間にして当該ワークを加工するための工具が配置される側に対して逆側から前記振れ止め装置が前記ワークに接触する接触姿勢に前記振れ止め装置を移動させる移動機構に固定されるアーム部と、
前記アーム部の先端部に配置され、前記振れ止め装置が前記接触姿勢の状態で前記ワークの側及び当該ワークの側に対して逆側にスライド可能なスライド機構と、
前記スライド機構の先端部に配置され、前記振れ止め装置が前記接触姿勢の状態で前記ワークに接触する2本のローラと、
前記振れ止め装置が前記接触姿勢の状態で前記2本のローラを前記ワークの側に付勢する付勢機構と、
前記2本のローラの位置を固定する固定機構と、
を備える。
【0009】
上述の振れ止め装置において、前記振れ止め装置が前記接触姿勢の状態で前記2本のローラは夫々、前記ワークの中心軸と平行に配置される回転軸を中心に回転可能であり、
前記振れ止め装置が前記接触姿勢の状態で、前記ワークの径方向から見て、前記2本のローラにおける一方のローラが前記ワークにおける当該ワークの中心軸を間にして一方の領域に接触し、他方のローラが前記ワークにおける当該ワークの中心軸を間にして他方の領域に接触することが好ましい。
【0010】
上述の振れ止め装置において、前記工作機は、ターニングセンタを含む複合工作機であり、
前記移動機構は、前記工作機の旋回式の刃物台であり、
前記刃物台は、前記工作機が前記ワークを支持した状態で当該ワークの中心軸と平行な回転軸を中心に旋回可能であることが好ましい。
【0011】
上述の振れ止め装置において、前記刃物台は、前記振れ止め装置が前記接触姿勢の状態で前記スライド機構がスライド可能な方向に、移動不能であることが好ましい。
【0012】
本開示の一態様に係る工作装置は、
上述の振れ止め装置と、
前記移動機構を有する工作機と、
を備える。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、簡単な構成でワークの振れを抑制可能な振れ止め装置及び工作装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態の工作装置の構成の代表例を説明するための図である。
【
図2】実施の形態の振れ止め装置をY軸-側から見た図である。
【
図3】実施の形態の振れ止め装置のスライド機構、付勢機構及び固定機構の構成を説明するための部分断面図である。
【
図4】実施の形態の工作装置を用いてワークを加工する際に、ワークの振れを抑制するためにワークに振れ止め装置を接触させる流れを説明するための図である。
【
図5】実施の形態の工作装置を用いてワークを加工する際に、ワークの振れを抑制するためにワークに振れ止め装置を接触させる流れを説明するための図である。
【
図6】実施の形態の工作装置を用いてワークを加工する際に、ワークの振れを抑制するためにワークに振れ止め装置を接触させる流れを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本開示が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0016】
先ず、本実施の形態の工作装置の構成の代表例を説明する。
図1は、本実施の形態の工作装置の構成の代表例を説明するための図である。ここで、以下の説明では、説明を明確にするために、三次元(XYZ)座標系を用いて説明する場合がある。
【0017】
なお、X軸+側が工作装置の前側であり、X軸-側が工作装置の後側である。Y軸+側が工作装置の左側であり、Y軸-側が工作装置の右側である。Z軸+側が工作装置の上側であり、Z軸-側が工作装置の下側である。
【0018】
工作装置1は、
図1に示すように、工作機2及び振れ止め装置3を備えている。工作機2は、例えば、ターニングセンタなどを含む複合工作機で構成することができ、工具主軸4、第1のワーク主軸5、第2のワーク主軸6、及び刃物台7を備えている。
【0019】
工具主軸4、第1のワーク主軸5、第2のワーク主軸6、及び刃物台7は夫々、例えば、制御装置によって制御される各々の駆動機構の駆動力によって、一般的な複合工作機と略同様の動作を行う構成とされている。
【0020】
工具主軸4は、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能である。工具主軸4は、工具やプローブなどを支持可能である。なお、
図1の図示例では、工具主軸4が工具8を支持している。工具8は、例えば、後述するようにX軸-側からワークWに接触して当該ワークWを加工するための工具であり、
図1では簡略化して示している。
【0021】
第1のワーク主軸5は、Y軸回りに回転可能である。第1のワーク主軸5は、例えば、
図1に示すように、チャック5aによってY軸方向に延在するワークWのY軸+側の端部を支持可能である。ここで、ワークWは、ギヤ部などが形成されていない円柱部を少なくとも一部に有する形状とされている。
【0022】
第2のワーク主軸6は、
図1に示すように、第1のワーク主軸5とY軸方向で対向するように配置されている。第2のワーク主軸6は、Y軸回りに回転可能である。第2のワーク主軸6は、例えば、チャック6aによってワークWのY軸-側の端部を支持可能である。
【0023】
刃物台7は、例えば、一般的なタレットであるとよく、刃物台7の周面に複数の工具や振れ止め装置3を支持可能な構成とされている。刃物台7は、Y軸回りに回転(旋回)可能であると共に、例えば、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能である。
【0024】
このとき、第1のワーク主軸5及び第2のワーク主軸6にワークWが支持された状態で、刃物台7がワークWに対してZ軸-側に配置され、Z軸方向から見て、刃物台7の回転軸AX1は、ワークWの中心軸AX2と略重なるように配置される(
図4を参照)。つまり、Z軸方向から見て、刃物台7の回転軸AX1は、第1のワーク主軸5及び第2のワーク主軸6の回転軸と略重なるように配置されている。
【0025】
振れ止め装置3は、ワークWを工具8で加工する際に当該ワークWの振れを抑制する。
図2は、本実施の形態の振れ止め装置をY軸-側から見た図である。
図3は、本実施の形態の振れ止め装置のスライド機構、付勢機構及び固定機構の構成を説明するための部分断面図である。
【0026】
ここで、
図2及び
図3では、後述するように、振れ止め装置3が第1のワーク主軸5及び第2のワーク主軸6に支持されたワークWにX軸+側から接触する接触姿勢での状態を示している。そして、以下の振れ止め装置3の構成の説明は、
図2及び
図3の状態を前提として説明する。
【0027】
振れ止め装置3は、
図2及び
図3に示すように、アーム部9、スライド機構10、第1のローラ11、第2のローラ12、付勢機構13及び固定機構14を備えている。アーム部9は、Y軸方向から見て、アーム部9のX軸+側の部分がZ軸+側に折れ曲がった屈曲形状である。
【0028】
アーム部9は、例えば、
図2及び
図3に示すように、Y軸方向から見て、略X軸方向に延在する第1の部分9a、第1の部分9aのX軸+側の端部からX軸+側に向かうのに従ってZ軸+側に向かって傾斜する第2の部分9b、及び第2の部分9bのX軸+側の端部からX軸+側に延在する第3の部分9cを備えており、XY断面形状が略矩形状である。
【0029】
スライド機構10は、
図2及び
図3に示すように、スライド部10a及びガイド部10bを備えている。スライド部10aは、ローラ支持部10c及びスライドアーム部10dを備えている。ローラ支持部10cは、例えば、Z軸方向から見て、X軸-側が開放された略C字形状であり、Z軸方向に延在している。
【0030】
スライドアーム部10dは、例えば、
図3に示すように、略矩形柱形状であり、X軸方向に延在している。スライドアーム部10dのX軸-側の端部は、ローラ支持部10cのX軸+側の端部に固定されている。そして、スライドアーム部10dには、スライドアーム部10dのX軸+側の端部からX軸-側に延在するガイド穴10eが形成されている。
【0031】
ガイド部10bは、
図2及び
図3に示すように、略矩形柱形状であり、X軸方向に延在している。そして、ガイド部10bは、アーム部9の第3の部分9cのZ軸+側の面に固定されている。ガイド部10bのZ軸-側の面には、ガイド部10bのX軸-側の端部からX軸+側に延在するガイド溝10fが形成されている。
【0032】
ガイド部10bのガイド溝10fとアーム部9の第3の部分9cとで形成される空間には、
図3に示すように、スライド機構10におけるスライド部10aのスライドアーム部10dがX軸方向にスライド可能に挿入されている。これにより、スライド部10aは、ガイド部10bに対してX軸方向にスライド可能である。
【0033】
ガイド部10bのX軸+側の側壁部には、
図3に示すように、当該側壁部をX軸方向に貫通する貫通孔10gが形成されている。貫通孔10gは、スライド機構10におけるスライド部10aのガイド穴10eとX軸方向で略連続するように形成されている。
【0034】
第1のローラ11は、
図2及び
図3に示すように、Y軸方向に延在する略円柱形状であり、スライド部10aのローラ支持部10cの開放部内に配置された状態で、Y軸回りに回転可能に当該ローラ支持部10cに支持されている。
【0035】
第2のローラ12は、
図2及び
図3に示すように、Y軸方向に延在する略円柱形状であり、第1のローラ11に対してZ軸-側に配置されている。第2のローラ12は、スライド部10aのローラ支持部10cの開放部内に配置された状態で、Y軸回りに回転可能に当該ローラ支持部10cに支持されている。
【0036】
付勢機構13は、スライド部10aをX軸-側に付勢する。付勢機構13は、
図3に示すように、コイルバネなどの弾性体を備えており、スライド機構10におけるガイド部10bの貫通孔10gを介して、当該貫通孔10g及びスライド部10aのガイド穴10eに挿入されている。
【0037】
そして、
図3に示すように、スライド機構10におけるガイド部10bの貫通孔10gがX軸+側から蓋部材15で塞がれており、付勢機構13は、蓋部材15とスライド機構10におけるスライド部10aのガイド穴10eのX軸-側の端部との間で、収縮した状態で配置されている。
【0038】
固定機構14は、第1のローラ11及び第2のローラ12のX軸方向の位置を固定する。固定機構14は、
図3に示すように、ボルトを備えており、スライド機構10におけるガイド部10bのZ軸+側の天井部をZ軸方向に貫通する雌ねじ部10hにねじ込まれている。
【0039】
このとき、雌ねじ部10hのZ軸-側の端部は、スライド機構10におけるガイド部10bのガイド溝10fに到達している。これにより、固定機構14をスライド機構10におけるガイド部10bの雌ねじ部10hにねじ込むと、固定機構14のZ軸-側の端部がスライド機構10におけるスライド部10aのスライドアーム部10dに接触して当該スライド部10aのX軸方向への移動が拘束される。
【0040】
一方、固定機構14をスライド機構10におけるガイド部10bの雌ねじ部10hで緩めると、固定機構14のZ軸-側の端部がスライド機構10におけるスライド部10aのスライドアーム部10dと非接触状態となり、スライド部10aのX軸方向への移動が許容される。
【0041】
このような振れ止め装置3は、アーム部9の第1の部分9aが刃物台7に固定されることで、Y軸回りに回転可能であると共に、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能である。
【0042】
次に、本実施の形態の工作装置1を用いてワークWを加工する際に、ワークWの振れを抑制するためにワークWに振れ止め装置3を接触させる流れを説明する。
図4から
図6は、本実施の形態の工作装置を用いてワークを加工する際に、ワークの振れを抑制するためにワークに振れ止め装置を接触させる流れを説明するための図である。
【0043】
ここで、振れ止め装置3は、工作装置1の第1のワーク主軸5及び第2のワーク主軸6に支持されたワークWに対してX軸+側に配置された状態とされている。そして、振れ止め装置3の固定機構14は緩められた状態とされている。つまり、振れ止め装置3のスライド機構10のスライド部10aは、ガイド部10bに対してスライド可能な状態である。
【0044】
また、後述するように、工作装置1の刃物台7がY軸回りに回転して振れ止め装置3の第1のローラ11及び第2のローラ12がワークWの円柱部に接触するように、刃物台7がY軸方向に移動した状態とされている。
【0045】
このような状態で、先ず、
図4に示すように、刃物台7をZ軸+側に移動させ、工作装置1の刃物台7がY軸回りに回転した際に、振れ止め装置3の第1のローラ11及び第2のローラ12がワークWに接触するZ軸方向の高さ位置に刃物台7を配置する。
【0046】
次に、
図5に示すように、Y軸-側から見て、工作装置1の刃物台7を反時計回りに回転させる。そして、
図6に示すように、X軸+側からワークWに第1のローラ11及び第2のローラ12を接触させる。つまり、工作装置1の刃物台7は、X軸+側から振れ止め装置3がワークWに接触する接触姿勢に当該振れ止め装置3を移動させる移動機構として機能する。
【0047】
このとき、
図6に示すように、X軸+側から見て、第1のローラ11は、ワークWの中心軸AX2に対してZ軸+側の領域に接触し、第2のローラ12は、ワークWの中心軸AX2に対してZ軸-側の領域に接触するとよい。
【0048】
また、ワークWが撓んでいても、回転するワークWが第1のローラ11及び第2のローラ12に接触した状態を維持することができるように、ワークWの撓みがX軸-側に向かって凸状に配置されるように、ワークWを回転させた状態で、第1のローラ11及び第2のローラ12をワークWに接触させるとよい。
【0049】
そして、スライド機構10のスライド部10aは、付勢機構13によってX軸-側に付勢されているので、第1のローラ11及び第2のローラ12は、ワークWに押し付けられるように接触する。
【0050】
この状態で固定機構14を締め込んで、スライド機構10のスライド部10aのX軸方向への移動を拘束する。これにより、第1のローラ11及び第2のローラ12がワークWに接触した状態に固定することができる。
【0051】
その後、ワークWを回転させつつ、X軸-側から工具8をワークWに接触させて当該ワークWが加工されるように、工具主軸4、第1のワーク主軸5及び第2のワーク主軸6を動作させる。これにより、ワークWを加工することができる。
【0052】
このように本実施の形態の工作装置1及び振れ止め装置3は、工具8によってワークWを加工する際に、ワークWを間にして工具8が配置されるX軸-側に対して逆側のX軸+側から振れ止め装置3の第1のローラ11及び第2のローラ12をワークWに接触させることができる。そのため、工具8によってワークWを加工する際の当該ワークWの振れを抑制することができる。
【0053】
このとき、本実施の形態の工作装置1及び振れ止め装置3は、振れ止め装置3の第1のローラ11及び第2のローラ12をワークWに接触させる際に、付勢機構13の付勢力によってスライド機構10のスライド部10aをX軸-側に押し込んで、第1のローラ11及び第2のローラ12をワークWに接触させることができる。そのため、本実施の形態の工作装置1及び振れ止め装置3は、特許文献1の振れ止め装置に比べて、簡単な構成でワークWの振れを抑制することができる。
【0054】
また、例えば、本実施の形態の工作装置1のような刃物台7がX軸方向に移動不可能な構成とされていても、振れ止め装置3の付勢機構13の付勢力によってスライド機構10を介して第1のローラ11及び第2のローラ12をX軸-側に移動させることができる。そのため、工作装置1が刃物台7をX軸方向に移動させる機構を備えていなくても、振れ止め装置3の第1のローラ11及び第2のローラ12をワークWに良好に接触させることができる。
【0055】
また、振れ止め装置3の第1のローラ11及び第2のローラ12がワークWに接触した際に、X軸方向から見て、第1のローラ11をワークWの中心軸AX2に対してZ軸+側の領域に接触させ、第2のローラ12をワークWの中心軸AX2に対してZ軸-側の領域に接触させる場合、加工中のワークWを安定させることができる。
【0056】
なお、本実施の形態の振れ止め装置3は、工作装置1の刃物台7に支持されているが、X軸+側から振れ止め装置3がワークWに接触する接触姿勢に当該振れ止め装置3を移動させることができればよく、工作機2に限らずに他の移動機構に支持されていてもよい。
【0057】
また、本実施の形態の振れ止め装置3のスライド機構10の構成は、代表例であり、第1のローラ11及び第2のローラ12をワークWに対して近接及び離間する方向に移動させることができる構成であればよい。
【0058】
また、本実施の形態の振れ止め装置3の固定機構14の構成も、代表例であり、第1のローラ11及び第2のローラ12の位置を固定することができる構成であればよい。
【0059】
また、本実施の形態の工作装置1の構成も、代表例であり、例えば、刃物台7がX軸方向に移動可能な構成とされていてもよい。
【0060】
本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 工作装置
2 工作機
3 振れ止め装置
4 工具主軸
5 第1のワーク主軸、5a チャック
6 第2のワーク主軸、6a チャック
7 刃物台
8 工具
9 アーム部、9a 第1の部分、9b 第2の部分、9c 第3の部分
10 スライド機構、10a スライド部、10b ガイド部、10c ローラ支持部、10d スライドアーム部、10e ガイド穴、10f ガイド溝、10g 貫通孔、10h 雌ねじ部
11 第1のローラ
12 第2のローラ
13 付勢機構
14 固定機構
15 蓋部材
AX1 刃物台の回転軸
AX2 ワークの中心軸
W ワーク