(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017662
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
G05F 1/56 20060101AFI20250130BHJP
【FI】
G05F1/56 310E
G05F1/56 310C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023120811
(22)【出願日】2023-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】桐生 敏樹
(72)【発明者】
【氏名】尾形 冬馬
(72)【発明者】
【氏名】矢山 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】下川 豊弘
【テーマコード(参考)】
5H430
【Fターム(参考)】
5H430BB01
5H430BB09
5H430BB11
5H430EE04
5H430FF02
5H430FF13
5H430GG04
5H430GG05
5H430GG17
5H430HH03
5H430LA21
5H430LA22
5H430LB02
5H430LB04
5H430LB06
(57)【要約】
【課題】電圧ノイズの影響を抑制しつつ、基準電圧に基づいて生成される電源電圧の調整範囲を広げる。
【解決手段】
半導体装置100は、基準電圧を生成する基準電圧生成回路120と、基準電圧に基づく電源電圧を生成するレギュレータ140と、基準電圧を基準電圧生成回路120からレギュレータ140に伝達するバッファ130と、制御信号を生成する電圧制御回路180とを備える。基準電圧生成回路120は、基準電圧を調整可能に構成される。レギュレータ140は、制御信号に基づいて、基準電圧に対する電源電圧の出力比を変更可能に構成される。半導体装置100は、出力比を切り替える電圧制御信号をレギュレータ140に出力する電圧制御回路180をさらに備える。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準電圧を生成する基準電圧生成回路と、
前記基準電圧に基づく電源電圧を生成するレギュレータと、
前記基準電圧を前記基準電圧生成回路から前記レギュレータに伝達するバッファと
を備えた半導体装置であって、
前記基準電圧生成回路は、前記基準電圧を調整可能に構成され、
前記レギュレータは、前記基準電圧に対する前記電源電圧の出力比を変更可能に構成され、
前記半導体装置は、前記出力比を切り替える電圧制御信号を前記レギュレータに出力する電圧制御回路をさらに備える
半導体装置。
【請求項2】
前記基準電圧を調整するために用いられるトリミングコードを記憶する不揮発性メモリブロックと、
前記不揮発性メモリブロックから読み出された前記トリミングコードを前記基準電圧生成回路に供給するトリミングコード供給回路と
をさらに備える請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記電源電圧が第1の閾値を上回ったことが検知された後、前記出力比が、第1の出力比から前記第1の出力比より小さい第2の出力比に切り替えられる
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記不揮発性メモリブロックが、前記電圧制御信号を供給するタイミングを前記電圧制御回路へ通知する
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
クロック信号を生成する発振器と
前記クロック信号のパルス数をカウントするカウンタと
を備え、
前記カウンタは、前記パルス数に基づいて、前記電圧制御信号を供給するタイミングを前記電圧制御回路へ通知する
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記電源電圧が前記第1の閾値を上回ったことを検知する電圧検知回路を備える
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記基準電圧生成回路は、
BGR(Bandgap Reference)電圧を生成するBGR回路と、
オペアンプと、
前記オペアンプの出力端子とグランドとの間に配置されたラダー抵抗と、
前記ラダー抵抗上の複数のノードの中から1つのノードを選択し、前記1つのノードの電圧を前記オペアンプに入力するセレクタと
を備え、
前記BGR電圧が、前記オペアンプに入力され、
前記基準電圧は、前記セレクタにより調整される
請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1の閾値は、前記複数のノードに含まれる所定のノードの電圧であり、
前記所定のノードの電圧が、前記電圧検知回路に供給される
請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記電圧検知回路は、前記電源電圧が前記第1の閾値を上回ることを検知した場合、電圧保証信号を出力し、前記電源電圧が前記第1の閾値より小さい第2の閾値以下になったことを検知した場合、前記電圧保証信号の出力を終了する
請求項6に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記電源電圧は、前記不揮発性メモリブロックに供給される
請求項2に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MCU(Micro Controller Unit)に搭載された電源回路は、パワーオンリセットが解除された後、基準電圧に基づく電源電圧VDDを生成する。特許文献1および特許文献2は、基準電圧をトリミングすることで電源電圧を調整する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-319034号公報
【特許文献2】特開2007-193933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電圧ノイズの影響を抑制しつつ、基準電圧に基づいて生成される電源電圧の調整範囲を広げることが望まれている。
【0005】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態による半導体装置は、基準電圧を生成する基準電圧生成回路と、基準電圧に基づく電源電圧を生成するレギュレータと、基準電圧を基準電圧生成回路からレギュレータに伝達するバッファとを備える。基準電圧生成回路は、基準電圧を調整可能に構成される。レギュレータは、前記基準電圧に対する前記電源電圧の出力比を変更可能に構成される。半導体装置は、出力比を切り替える電圧制御信号をレギュレータに出力する電圧制御回路をさらに備える
【発明の効果】
【0007】
前記一実施の形態によれば、電圧ノイズの影響を抑制しつつ、基準電圧に基づいて生成される電源電圧の調整範囲を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】比較例にかかる半導体装置の構成を説明する図である。
【
図2】比較例における電源電圧と電圧保証信号の関係を説明する図である。
【
図3】比較例における電源電圧および電圧検知値の変動範囲を説明する図である。
【
図4】比較例にかかる半導体装置の動作を説明する図である。
【
図5】比較例にかかる半導体装置の課題を説明する図である。
【
図6】比較例にかかる半導体装置の課題を説明する図である。
【
図7】検討例にかかる半導体装置の構成を説明する図である。
【
図8】検討例にかかる半導体装置の課題を説明する図である。
【
図9】実施形態1にかかる半導体装置の構成を説明する図である。
【
図10】実施形態1にかかる半導体装置における電圧ノイズを表す図である。
【
図11】実施形態1にかかるレギュレータの動作を説明する図である。
【
図12】実施形態1における電源電圧および電圧検知値の変動範囲を説明する図である。
【
図13】実施形態1にかかる半導体装置の動作を説明する図である。
【
図14】実施形態1の実施例1にかかる半導体装置の構成を説明する図である。
【
図15】実施形態1の実施例2にかかる半導体装置の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、および簡略化がなされている。また、様々な処理を行う機能ブロックとして図面に記載される各要素は、ハードウェア的には、CPU、メモリ、その他の回路で構成することができ、ソフトウェア的には、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。したがって、これらの機能ブロックがハードウェア、ハードウェア上で動作するソフトウェア、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0010】
また、上述したプログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、Random Access Memory(RAM)、Read Only Memory(ROM)、フラッシュメモリ、Solid State Drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、Digital Versatile Disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0011】
(実施形態に至る検討)
図1は、比較例にかかる半導体装置100の構成を図である。半導体装置100は、リセット生成回路110、基準電圧生成回路120、バッファ130、レギュレータ140、電圧検知回路150、発振器160、およびトリミング回路170を備える。リセット生成回路110は、トリミング回路170等にパワーオンリセットを出力する。
【0012】
基準電圧生成回路は、基準電圧VREFを生成する回路であり、基準電圧VREFを調整可能に構成される。基準電圧生成回路120は、BGR(Bandgap Reference)121、オペアンプ122、p型のFET(Field Effect Transistor)123、直列型のラダー抵抗124、およびセレクタ125を備える。BGR121は、BGR電圧VBGRを生成する。BGR電圧VBGRは、オペアンプ122の負入力端子に入力される。オペアンプ122の出力端子は、FET123のゲート端子に接続される。FET123のソース端子は、電源電圧VCCを供給する電源ラインに接続され、FET123のドレイン端子は、ラダー抵抗124を介してグランドに接続される。電源電圧VCCは一次電源とも言われる。後述する電源電圧VDDは、二次電源とも言われる。セレクタ125は、後述するトリミングコードに基づいて、ラダー抵抗124上の複数のノードの中から1つのノードを選択し、選択された1つの接続ノードの電圧(帰還ループ電圧VFB1と言われる)をオペアンプ122の正入力端子に入力する。ラダー抵抗124上の複数のノードに含まれる所定のノードの電圧(電圧検知値HDETと言われる)は、電圧検知回路150に供給される。基準電圧生成回路120は、FET123とラダー抵抗124との間のノードの電圧を基準電圧VREFとして出力する。
【0013】
バッファ130は、基準電圧生成回路120が生成した基準電圧VREFをレギュレータ140に伝達する。バッファ130に含まれる素子の特性は、トリミングコードに基づいて調整される。バッファ130は、例えば、オペアンプを含むボルテージフォロワ回路であってもよい。
【0014】
レギュレータ140は、オペアンプ141、p型のFET142、抵抗R0、および抵抗R1を備える。オペアンプ141の負入力端子は、バッファ130の出力端子に接続される。オペアンプ141の出力端子は、FET142のゲート端子に接続される。FET142のソース端子は、電源電圧VCCを供給する電源ラインに接続される。FET142のドレイン端子は、抵抗R1の一端に接続される。抵抗R1の他端は抵抗R0の一端に接続される。抵抗R0の他端はグランドに接続される。抵抗R0と抵抗R1との間のノードの電圧が、オペアンプ141の正入力端子に入力される。レギュレータ140は、FET142と抵抗R1との間のノードの電圧を電源電圧VDDとして出力する。電源電圧VDDは二次電源とも言われる。後述する不揮発性メモリブロック172には電源電圧VDDが供給され、それ以外の回路には電源電圧VCCが供給される。
【0015】
電圧検知回路150は、電源電圧VDDが電圧検知値HDETを上回ったことを検知する回路および電源電圧VDDが電圧検知値LDETを上回ったことを検知する回路を備える。電圧検知値LDETは、電圧検知値HDETと同様、基準電圧生成回路120から供給されてもよい。電圧検知値LDETは、電圧検知値HDETより低い。電圧検知回路150は、電源電圧VDDが電圧検知値HDETを上回った場合、トリミング回路170に電圧保証信号を出力する。
【0016】
図2は、電源電圧VDDと電圧保証信号の関係を説明する図である。最上段のグラフでは、電源電圧VDDが実線で示され、電圧検知値HDETが一点鎖線で示され、電圧検知値LDETが二点鎖線で示されている。電圧検知値HDETは第1の閾値とも言われ、電圧検知値LDETは第2の閾値とも言われる。電源起動時には、電源電圧VDDが電圧検知値HDETを上回ったとき、電圧保証信号(Lレベル)が出力される。通常動作時には、電源電圧VDDが電圧検知値LDETを上回る限り、電圧保証信号の出力が継続される。電圧検知回路150は、電源電圧VDDが電圧検知値LDET以下になったことを検知した場合、電圧保証信号の出力を終了する。電圧保証信号の出力動作がヒステリシスを持つことで、電源電圧VDDのドロップに対して余裕度が生まれる。
【0017】
図1を参照し、発振器160は、基準電圧V
REFに基づくクロック信号を生成する。トリミング回路170は、トリミング制御回路171、不揮発性メモリブロック172、およびトリミングコード供給回路173を備える。トリミング制御回路171は、パワーオンリセットを受信した場合、リセット動作を行う。トリミング制御回路171は、電圧保証信号を受信した場合、不揮発性メモリブロック172にトリミング開始要求を出力する。そして、トリミング制御回路171は、トリミングコード供給回路173によるトリミングコードの供給を制御する信号(トリミングデータ供給制御と言われる)をトリミングコード供給回路173に出力する。不揮発性メモリブロック172は、基準電圧V
REFを調整するために用いられる情報(トリミングコードと言われる)を記憶している。トリミングコードは、バッファ130に含まれる素子の特性を調整する情報を含んでいてもよい。不揮発性メモリブロック172は、トリミング開始要求を受信した場合、トリミングコードを含むリセット転送情報をトリミングコード供給回路173に出力する。トリミングコード供給回路173は、トリミングデータ供給制御に従って、不揮発性メモリブロック172から読み出されたトリミングコードをセレクタ125およびバッファ130に出力する。
【0018】
図3は、BGR電圧V
BGRのばらつきΔV
BGRに対する電源電圧VDDおよび電圧検知値HDETの変動範囲を説明する図である。左図は、トリミング前の電源電圧VDDおよび電圧検知値HDETの変動範囲を表す。右図は、トリミング後の電源電圧VDDおよび電圧検知値HDETの変動範囲を表す。横軸はΔV
BGRを表し、縦軸は電圧を表す。
【0019】
基準電圧生成回路120は、BGR電圧VBGRに基づいて基準電圧VREFを生成する。そして、電源電圧VDDおよび電圧検知値HDETは、基準電圧VREFに基づいて生成される。したがって、定常状態では、電源電圧VDDはBGR電圧VBGRに比例し、かつ、電圧検知値HDETはBGR電圧VBGRに比例する。したがって、ΔVBGRに対して線形なばらつきが、電源電圧VDDおよび電圧検知値HDETに伝搬する。
【0020】
各図の上側の実線は電源電圧VDDを表し、下側の実線は電圧検知値HDETを表す。上側の両側矢印は、ΔVBGRが固定されたときの電源電圧VDDのばらつきを表す。電源電圧VDDのばらつきの上限値および下限値の変化が点線で示されている。下側の両側矢印は、ΔVBGRが固定されたときのHDETのばらつきを表す。電圧検知値HDETのばらつきの上限値および下限値の変化が点線で示されている。BGR電圧VBGRのばらつきΔVBGRにより、電源電圧VDDの変動範囲は、VDD(min)以上VDD(max)以下の範囲となる。同様に、BGR電圧VBGRのばらつきΔVBGRにより、電圧検知値HDETの変動範囲は、HDET(min)以上HDET(max)以下の範囲となる。右図を参照し、トリミング後の電源電圧VDDの変動範囲は、トリミング前の電源電圧VDDの変動範囲よりも狭い。同様に、トリミング後の電圧検知値HDETの変動範囲は、トリミング前の電圧検知値HDETの変動範囲よりも狭い。
【0021】
電源電圧VDDの変動の主要因は、レギュレータ140に含まれるオペアンプ141の差動ミスマッチである。電圧検知値HDETの変動の主要因は、電圧検知回路150に含まれる図示しないオペアンプ等の差動ミスマッチである。レギュレータ140および電圧検知回路150の製造ばらつきは互いに独立であるため、電源電圧VDDおよび電圧検知値HDETは互いに独立に変動する。
【0022】
図4は、半導体装置100の動作を説明する図である。電源電圧VCCが閾値を超えると、パワーオンリセットが解除される。そして、電源電圧VDDが電圧検知値HDETを超えると電圧保証信号(Lレベル)が出力される。そして、トリミング制御回路171がトリミング開始要求(Hレベル)を出力し、不揮発性メモリブロック172がリセット転送情報を出力する。そして、トリミングコード供給回路173が、トリミングコードを初期値から補正値に変更する。
【0023】
次に、半導体装置100について本発明者が新たに見出した課題について説明する。半導体装置100では電源電圧VDDと電圧検知値HDETが互いに独立にばらつくため、MCUの低電圧化が進むことで、トリミング前の電源電圧VDDが電圧検知値HDETより低くなる可能性がある。
図5は、電源電圧VDDが低い場合の電源電圧VDDおよび電圧検知値HDETの変動範囲を説明する図である。
図3と同様、左図はトリミング前の変動範囲を表し、右図はトリミング後の変動範囲を表す。左図を参照すると、電源電圧VDDの最小値VDD(min)が、電圧検知値HDETの最大値HDET(max)より低い。したがって、電源電圧VDDが電圧検知値HDETより低くなる恐れがある。
【0024】
トリミング前の電源電圧VDDが電圧検知値HDETより低い場合、電圧検知回路150は、トリミング制御回路171に電圧保証信号を出力しない。そして、トリミング制御回路171は、不揮発性メモリブロック172にトリミング要求を出力しない。したがって、半導体装置100は、基準電圧V
REFを調整できない。
図6は、電源電圧VDDが電圧検知値HDETより低い場合の半導体装置100の動作を説明する図である。電源電圧VDDが電圧検知値HDETを上回らないため、電圧保証信号(Lレベル)が出力されない。トリミングコードは初期値のままであり、基準電圧V
REFはトリミングされない。
【0025】
本発明者は、上記課題を解決するため、下方にばらついた電源電圧VDDが電圧検知値HDETより高くなるように、初期の電源電圧VDDを通常動作時の電源電圧VDDよりも高くすることを検討した。
図7は、検討例にかかる半導体装置200の構成を説明する図である。リセット生成回路110、発振器160、およびトリミング回路170の図示は省略されている。
図1と
図7を比較すると、基準電圧生成回路120が基準電圧生成回路120aに置き換わっている。基準電圧生成回路120aは、セレクタ126をさらに備えている。セレクタ126は、基準電圧生成回路120aの外部から供給される電圧制御信号に基づいて、バッファ130に出力される基準電圧V
REFの高さを切り替える機能を持つ。セレクタ126は、セレクタ125と比べて、基準電圧V
REFを粗く調整するとも言える。半導体装置200は、電源起動時の基準電圧V
REFを高くすることで、電源電圧VDDが電圧検知値HDETと比べて低い場合にも基準電圧V
REFをトリミングできる。
【0026】
次に、半導体装置200の課題について説明する。セレクタ126が基準電圧V
REFの高さを切り替えると、選択されたノードからの電荷移動が生じる。したがって、帰還ループ電圧V
FB1と電圧検知値HDETに過渡的なスイッチングノイズが伝搬する。点線矢印は、スイッチングノイズが伝搬する経路を表している。帰還ループ電圧V
FB1に発生した電圧ノイズは、オペアンプ122の差動増幅回路に含まれる容量結合を介してBGR121に伝搬する。BGR121に伝搬した電圧ノイズはBGR電圧V
BGRの精度を悪化させ、電圧検知回路150に伝搬した電圧ノイズは電圧検知値HDETの精度を悪化させる。
図8は、電圧制御信号を用いて基準電圧V
REFの高さを切り替えたときの基準電圧V
REF、帰還ループ電圧V
FB1、電圧検知値HDET、およびBGR電圧V
BGRの時間変化を表す。電源電圧VDDの精度が低下する場合、電源電圧VDDを介して発振器の周波数精度が低下する場合もある。
【0027】
本発明者は、以上の検討内容に基づき以下の実施形態に想到した。
【0028】
実施形態1
図9は、実施形態1にかかる半導体装置300の構成を示す回路図である。
図1と
図9とを比較すると、レギュレータ140がレギュレータ140aに置き換わっている。そして、半導体装置300は、電圧制御回路180をさらに備えている。
【0029】
レギュレータ140aは、基準電圧VREFに対する電源電圧VDDの出力比を変更可能に構成される。例えば、抵抗R1が可変抵抗Rctとして構成されていてもよい。オペアンプ141の出力電圧VOUTは、VOUT=(1+Rct/R0)VREFと表される。または、電源電圧VDDを出力する電源ラインとグランドの間に直列型のラダー抵抗(不図示)が配置され、複数のノードの中から1つのノードを選択するセレクタ(不図示)が設けられていてもよい。選択された1つのノードの電圧が、オペアンプ141の負入力端子に入力される。オペアンプ141の負入力端子に入力される電圧は、帰還ループ電圧VFB2と言われる。
【0030】
電圧制御回路180は、基準電圧VREFに対する電源電圧VDDの出力比を切り替えるための電圧制御信号をレギュレータ140aに出力する。具体的には、電圧制御回路180は、外部からの通知(トリミングリード完了通知と言われる)に基づいて、トリミング前の設定値(VDD設定値1)またはトリミング後の設定値(VDD設定値2)を電圧制御信号として出力する。電圧制御回路180は、電圧制御トリミングリード完了通知が入力されていない場合、高い電源電圧VDDを出力するための設定値(例:「0」)をレギュレータ140aに出力する。電圧制御回路180は、トリミング完了通知が入力されている場合、低い電源電圧VDDを出力するための設定値(例:「1」)をレギュレータ140aに出力する。「0」はLレベルを表し、「1」はHレベルを表す。トリミングリード完了通知は、不揮発性メモリブロック172から送信されてもよく、図示しないカウンタから送信されてもよい。電圧制御回路180は、例えば、電源電圧VDDを0.1V程度変化させてもよい。
【0031】
検討例と同様に電源電圧VDDの変動により電圧ノイズが発生するが、BGR121や電圧検知回路150に伝搬する電圧ノイズは小さい。電圧ノイズが、バッファ130を経由して伝搬するためである。従って、半導体装置300は、BGR電圧V
BGRおよび電圧検知値HDETへの電圧ノイズの影響を抑制できる。
図10は、電圧検知値HDETおよびBGR電圧V
BGRの時間的な変化を表すグラフである。電圧制御信号の切り替えに応じて電源電圧VDDおよび帰還ループ電圧V
FB2が変動するが、電圧検知値HDETおよびBGR電圧V
BGRに伝搬する電圧ノイズは小さい。
【0032】
図11は、レギュレータ140aの動作を説明する図である。上図は、基準電圧V
REFをトリミングする前のレギュレータ140aの動作を表す。下図は、基準電圧V
REFをトリミングした後のレギュレータ140aの動作を表す。レギュレータ140aは、ラダー抵抗143およびセレクタ144を備えている。直列型のラダー抵抗143が、電源電圧VDDを供給する電源ラインとグランドの間に配置されている。セレクタ144は、電圧制御信号に基づいて、ラダー抵抗143上の2つのノードの中から1つのノードを選択する。セレクタ144は、1または複数のスイッチにより構成されていてもよい。選択された1つのノードの電圧が、帰還ループ電圧V
FB2としてオペアンプ141に入力される。セレクタ144は、トリミング前は低い帰還ループ電圧V
FB2をオペアンプ141に入力し、トリミング後は高い帰還ループ電圧V
FB2をオペアンプ141に入力する。
【0033】
図12は、半導体装置100における電源電圧VDDおよび電圧検知値HDETの変動範囲を説明する図である。左図を参照すると、電源電圧VDDの最小値VDD(min)が電源電圧HDETの最大値HDET(max)より高くなるように、電源電圧VDDが高く設定されている。右図を参照すると、トリミング後の電源電圧VDDは、低い値に設定されている。
【0034】
半導体装置100では、電源電圧VDDが電圧検知値HDET(第1の閾値)を上回った後、基準電圧VREFに対する電源電圧VDDの出力比が、第1の出力比から第1の出力比より小さい第2の出力比に切り替えられる。これにより、半導体装置100は、確実に基準電圧VREFをトリミングできる。
【0035】
図13は、半導体装置300の動作を説明する図である。電源電圧VDDが電圧検知値HDETを上回ると、電圧保証信号(Lレベル)が出力される。そして、トリミング開始要求(Hレベル)が出力され、リセット転送情報の送信が開始される。そして、トリミングコードが初期値から補正値に変更され、基準電圧V
REFがトリミングされる。これにより、電源電圧VDDが微調整される。基準電圧V
REFがトリミングされた後、トリミングリード完了通知(Lレベル)が出力され、電源電圧VDDが低い値に変化する。
【0036】
実施形態1にかかる半導体装置300は、電圧ノイズの発生による影響を抑えつつ、電源電圧VDDの調整範囲を広げることができる。半導体装置300は、電圧ノイズがBGR121、電圧検知回路150等に伝搬し、電源電圧VDDおよび電圧検知値HDETの精度が低下することを防止できる。また、半導体装置300は、電源電圧VDDの調整範囲を広げることで、基準電圧のトリミングが行われないことを防止できる。
【0037】
実施例1
次に、実施形態1の具体例である実施例1にかかる半導体装置300aについて説明する。
図14は、実施例1にかかる半導体装置300aの構成を説明する図である。
図9と
図14とを比較すると、レギュレータ140aが、DCDCコンバータとして構成されている。また、発振器160により生成されたクロック信号CLKは、トリミング制御回路171および不揮発性メモリブロック172に供給される。不揮発性メモリブロックは、例えば、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)であってもよく、フラッシュメモリであってもよい。トリミング制御回路171は、トリミング開始要求の他に、メモリリセットを不揮発性メモリブロック172に出力する。
【0038】
レギュレータ140aは、パルスジェネレータ145、p型のMOSFET146、n型のMOSFET147、ダイオード148、インダクタL、およびキャパシタCをさらに備えている。MOSFET146のソース端子は、電源電圧VCCを供給する電源ラインに接続される。MOSFET146のドレイン端子とMOSFET147のドレイン端子とが相互に接続される。MOSFET147のソース端子は、グランドGNDに接続される。パルスジェネレータ145は、オペアンプ141の出力電圧およびクロック信号CLKに基づいて、MOSFET146および147のオンオフを切り替える。MOSFET146と147との間のノードの電圧は、インダクタLを介して電源電圧VDDとして出力される。ダイオード148のアノード端子はグランドGNDに接続される。ダイオード148のカソード端子は、MOSFET147とインダクタLとの間のノードに接続される。キャパシタCは、電源電圧VDDを出力する電源ラインとグランドGNDとの間に配置される。
【0039】
バッファ130およびレギュレータ140aを囲む点線は、これらの回路に電源電圧VCCが供給されることを表す。トリミング制御回路171、トリミングコード供給回路173、および電圧制御回路180を囲む点線は、これらの回路に電源電圧VCCが供給されることを表す。また、リセット生成回路110、基準電圧生成回路120、電圧検知回路150、および発振器160には、電源電圧VCCが供給される。不揮発性メモリブロック172には、レギュレータ140で生成された電源電圧VDDが供給される。
【0040】
実施例1にかかる半導体装置300aの動作について説明する。電源投入後、電源電圧VCCが閾値以上になると、リセット生成回路110はパワーオンリセットを解除し、発振器160が発振を開始する。パワーオンリセットの解除および発振の開始に平行して、レギュレータ140aは、電圧制御回路180で生成された電圧制御信号に従って、電源電圧VCCに基づく電源電圧VDDを生成する。そして、電圧検知回路150が、電源電圧VDDが電圧保証範囲内であること、つまり電源電圧VDDが電圧検知値HDETを上回ったことを検出し、電圧保証信号をトリミング制御回路171に出力する。そして、トリミング制御回路171は、不揮発性メモリブロック172にメモリリセットおよびトリミング開始要求を出力する。なお、トリミング制御回路171のパワーオンリセットは解除され、トリミング制御回路171に発振器160からクロックが供給されている。そして、不揮発性メモリブロック172からトリミングコードを含むリセット転送情報が読み出され、トリミングコードがトリミングコード供給回路173に格納される。そして、基準電圧生成回路120により生成される基準電圧VREFが微調整される。そして、不揮発性メモリブロック172が、トリミングリード完了通知を電圧制御回路180に出力する。トリミングコード完了通知を受信すると、電圧制御回路180は、レギュレータ140aに電圧制御信号を出力することで電源電圧VDDを変更する。電源電圧VDDは高い電圧(例:0.9V)から低い電圧(例:0.8V)へ変更される。
【0041】
なお、
図13では、レギュレータ140aが降圧型のDCDCコンバータを構成しているが、レギュレータ140aは昇圧型のDCDCコンバータやリニアレギュレータで構成してもよい。
【0042】
実施例1にかかる半導体装置300aでは、トリミングコードを記憶する不揮発性メモリブロック172が、電源電圧VDDを切り替える適切なタイミングを電圧制御回路180に通知できる。
【0043】
実施例2
次に、実施形態1の具体例である実施例2にかかる半導体装置300bについて説明する。
図15は、実施例2にかかる半導体装置300bの構成を説明する図である。
図14と
図15とを比較すると、半導体装置300bは、カウンタ190をさらに備えている。カウンタ190には、電源電圧VCCが供給される。トリミング制御回路171は、不揮発性メモリブロック172およびカウンタ190にメモリリセットを出力する。カウンタ190は、メモリリセットを受信してからカウントを開始する。そして、カウント数が、基準電圧V
REFがトリミングされるまでの期間に相当する所定数に達した場合、カウンタ190は、電圧制御回路180にトリミングリード完了通知を送信する。これにより、メモリリセットが出力されてからトリミングリード完了通知が出力されるまでの期間(トリミングリード期間と言われる)として十分な期間が確保される。トリミングリード完了通知は、電圧制御信号を出力するタイミングを通知するとも言える。
【0044】
半導体装置300bの動作について説明する。電源投入後、電源電圧VCCが閾値以上になると、リセット生成回路110はパワーオンリセットを解除し、発振器160が発振を開始する。トリミング制御回路171が、不揮発性メモリブロック172にメモリリセットおよびトリミング開始要求を出力したとき、カウンタ190が、発振器160で生成されたクロック信号のパルス数のカウントを開始する。カウンタ190は、トリミングリード期間の長さを保証できる。そして、不揮発性メモリブロック172からトリミングコードが読み出され、トリミングコードがトリミングコード供給回路173に格納される。そして、カウンタ190は、カウントされたパルス数が所定数に達した場合、トリミングリード完了通知を電圧制御回路180に出力し、電圧制御回路180は電源電圧VDDを変更する。なお、実施例1と同様、レギュレータ140aは昇圧型のDCDCコンバータやリニアレギュレータで構成してもよい。
【0045】
実施例2にかかる半導体装置300bでは、カウンタ190が、電源電圧VDDを切り替える適切なタイミングを電圧制御回路180に通知できる。
【0046】
最後に、実施形態1にかかる半導体装置300が奏する効果について説明する。半導体装置300は、回路面積を大きく変えずに、電圧検知値HDETおよび電源電圧VDDの両方の精度を保ちつつ、電源電圧VDDの調整範囲を拡大できる。
【0047】
半導体装置300により、MCUの通常動作時の動作電圧は、トリミング前の電源電圧VDDのばらつき幅によらず、トリミング後の電源電圧VDDのばらつき幅と、プロセスにおける電気特性との関係に基づき決定され得る。したがって、半導体装置300は、MCUの動作電圧の低電圧化に貢献できる。
【0048】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0049】
100、200、300、300a、300b 半導体装置
110 リセット生成回路
120、120a 基準電圧生成回路
121 BGR
122、141 オペアンプ
123、142 FET
124、143 ラダー抵抗
125、126、144 セレクタ
130 バッファ
140、140a レギュレータ
R0、R1 抵抗
145 パルスジェネレータ
146、147 MOSFET
148 ダイオード
150 電圧検知回路
160 発振器
170 トリミング回路
171 トリミング制御回路
172 不揮発性メモリブロック
173 トリミングコード供給回路
180 電圧制御回路
190 カウンタ
L インダクタ
C キャパシタ