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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025176776
(43)【公開日】2025-12-05
(54)【発明の名称】情報処理装置及びプロセス条件予測方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20251128BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20251128BHJP
   C23C 16/52 20060101ALI20251128BHJP
【FI】
H01L21/31 B
H01L21/02 Z
C23C16/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024083079
(22)【出願日】2024-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(72)【発明者】
【氏名】山口 達也
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4K030KA05
4K030KA41
5F045AA06
5F045AD01
5F045AE01
5F045BB03
5F045BB10
5F045DP19
5F045DP28
5F045DQ05
5F045EF03
5F045EF09
5F045EK06
5F045GB12
5F045GB13
5F045GB17
(57)【要約】
【課題】より少ない枚数のウエハに対する成膜結果に基づいて、所望の膜厚とする為のプロセス条件を予測する技術を提供すること。
【解決手段】処理容器に高さ方向に複数の領域を形成し、領域ごとにガスの状態を制御可能な基板処理装置のプロセス条件を予測する情報処理装置であって、プロセス条件を予測する第1のウエハを処理容器において第1のレイアウトで成膜処理した第1の成膜結果を取得する取得部と、第1の成膜結果と、加工前の第2のウエハを処理容器において第1のレイアウトで成膜処理した第2の成膜結果とに基づき、第1のウエハ及び第2のウエハの膜厚の変化を計算する計算部と、第1のレイアウトよりも多い枚数の第2のウエハを処理容器において第2のレイアウトで成膜処理した第3の成膜結果と、計算した第1のウエハ及び第2のウエハの膜厚の変化とに基づき、第1のウエハを第2のレイアウトで成膜処理するときに所望の膜厚とする為のプロセス条件を予測する予測部と、を有する。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器に高さ方向に複数の領域を形成し、前記領域ごとにガスの状態を制御可能な基板処理装置のプロセス条件を予測する情報処理装置であって、
前記プロセス条件を予測する第1のウエハを前記処理容器において第1のレイアウトで成膜処理した第1の成膜結果を取得する取得部と、
前記第1の成膜結果と、加工前の第2のウエハを前記処理容器において前記第1のレイアウトで成膜処理した第2の成膜結果とに基づき、前記第1のウエハ及び前記第2のウエハの膜厚の変化を計算する計算部と、
前記第1のレイアウトよりも多い枚数の前記第2のウエハを前記処理容器において第2のレイアウトで成膜処理した第3の成膜結果と、計算した前記第1のウエハ及び前記第2のウエハの膜厚の変化とに基づき、前記第1のウエハを前記第2のレイアウトで成膜処理するときに所望の膜厚とする為の前記プロセス条件を予測する予測部と、
を有する情報処理装置。
【請求項2】
前記計算部は、前記第1のウエハ及び前記第2のウエハの膜厚の差分から、前記第1のウエハ及び前記第2のウエハの膜厚が同一となる為に必要な、前記第1のウエハを成膜処理するときの前記ガスの流量と前記第2のウエハを成膜処理するときの前記ガスの流量との関係を算出し、
前記予測部は、前記計算部により算出された前記関係を、前記第3の成膜結果に反映させることで、前記第1のウエハを前記第2のレイアウトで成膜処理するときに所望の膜厚とする為の前記ガスの流量を予測する
請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記予測部は、前記第1のレイアウトよりも多い枚数の前記第2のウエハを前記処理容器において第2のレイアウトで成膜処理した第3の成膜結果と、計算した前記第1のウエハ及び前記第2のウエハの膜厚の変化とに基づき、前記第1のウエハを前記第2のレイアウトで成膜処理するときの前記ガスの流量と前記第1のウエハの膜厚とを対応付けるモデルを作成し、前記モデルを用いて所望の膜厚とする為の前記ガスの流量を予測する
請求項2記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記第1のレイアウトは、前記処理容器に収容され、基板保持具に1枚以上のモニタウエハのみが保持された状態である
請求項1乃至3の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記基板処理装置は、前記処理容器の側面から前記第1のウエハ又は前記第2のウエハの面内方向に沿ってガスを供給するガス供給部を有する
請求項1乃至3の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記基板処理装置は、前記ガス供給部に対向する前記処理容器の側面から前記ガスを排気するガス排気部を更に有する
請求項5記載の情報処理装置。
【請求項7】
処理容器に高さ方向に複数の領域を形成し、前記領域ごとにガスの状態を制御可能な基板処理装置のプロセス条件を情報処理装置が予測するプロセス条件予測方法であって、
前記プロセス条件を予測する第1のウエハを前記処理容器において第1のレイアウトで成膜処理した第1の成膜結果を取得することと、
前記第1の成膜結果と、加工前の第2のウエハを前記処理容器において前記第1のレイアウトで成膜処理した第2の成膜結果とに基づき、前記第1のウエハ及び前記第2のウエハの膜厚の変化を計算することと、
前記第1のレイアウトよりも多い枚数の前記第2のウエハを前記処理容器において第2のレイアウトで成膜処理した第3の成膜結果と、計算した前記第1のウエハ及び前記第2のウエハの膜厚の変化とに基づき、前記第1のウエハを前記第2のレイアウトで成膜処理するときに所望の膜厚とする為の前記プロセス条件を予測することと、
を有するプロセス条件予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置及びプロセス条件予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ(以下、ウエハと呼ぶ)に対して成膜処理を行うバッチ式の基板処理装置が知られている。バッチ式の基板処理装置は、効率的にウエハを成膜処理することができるが、成膜結果の均一性を確保することが難しい。例えば特許文献1には、ガスの流量を調整し、ウエハの表面に成膜される膜厚の均一性を確保できる処理システム及び処理方法について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4464979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、より少ない枚数のウエハに対する成膜結果に基づいて、所望の膜厚とする為のプロセス条件を予測する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、処理容器に高さ方向に複数の領域を形成し、前記領域ごとにガスの状態を制御可能な基板処理装置のプロセス条件を予測する情報処理装置であって、前記プロセス条件を予測する第1のウエハを前記処理容器において第1のレイアウトで成膜処理した第1の成膜結果を取得する取得部と、前記第1の成膜結果と、加工前の第2のウエハを前記処理容器において前記第1のレイアウトで成膜処理した第2の成膜結果とに基づき、前記第1のウエハ及び前記第2のウエハの膜厚の変化を計算する計算部と、前記第1のレイアウトよりも多い枚数の前記第2のウエハを前記処理容器において第2のレイアウトで成膜処理した第3の成膜結果と、計算した前記第1のウエハ及び前記第2のウエハの膜厚の変化とに基づき、前記第1のウエハを前記第2のレイアウトで成膜処理するときに所望の膜厚とする為の前記プロセス条件を予測する予測部と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、より少ない枚数のウエハに対する成膜結果に基づいて、所望の膜厚とする為のプロセス条件を予測する技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る基板処理システムの一例の構成図である。
図2】コンピュータの一例のハードウェア構成図である。
図3】本実施形態に係る基板処理装置の一例のハードウェア構成図である。
図4】本実施形態に係る基板処理装置の一例のハードウェア構成図である。
図5】基板処理装置の一例の模式図である。
図6図5に示した処理容器内のガス濃度及びガス分解の状態が面間方向で一様でない基板処理装置において、フルチャージされたデバイスウエハを成膜処理で所望の膜厚とするためのガスの流量を予測する場合の課題を説明する一例の図である。
図7】処理容器内のガス濃度及びガス分解の状態が面間方向で一様でない基板処理装置において、フルチャージされたデバイスウエハを成膜処理で所望の膜厚とするためのガスの流量を予測する場合の課題を説明する一例の図である。
図8】処理容器内のガス濃度及びガス分解の状態が面間方向で一様である基板処理装置において、フルチャージされたデバイスウエハを成膜処理で所望の膜厚とするためのガスの流量を予測する場合について説明する一例の図である。
図9】ガスの流量に対する膜厚のウエハの依存性の解消について説明する一例の図である。
図10】ガスの流量に対する膜厚のウエハのレイアウトの依存性の解消について説明する一例の図である。
図11】ガスの流量に対する膜厚のウエハの依存性の解消について説明する一例の図である。
図12】本実施形態に係る装置コントローラの一例の機能ブロック図である。
図13】ガスの流量と成膜結果の膜厚とを対応付けるモデルの一例について説明する図である。
図14】本実施形態に係る基板処理システムの処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本開示の限定的でない例示の実施形態について説明を行う。
【0009】
<システム構成>
図1は、本実施形態に係る基板処理システム1の一例の構成図である。図1の基板処理システム1は、基板処理装置10、装置コントローラ12、測定装置14、サーバ装置16、及び作業者端末18を有する。基板処理装置10、装置コントローラ12、及び測定装置14は、製造工場2に設置されている。サーバ装置16及び作業者端末18は、製造工場2に設置されてもよいし、製造工場2以外に設置されてもよい。
【0010】
作業者端末18は、製造工場2に設置された基板処理装置10の装置担当者などの作業者により操作されるPC(Personal Computer)又はスマートフォンなどの情報処理端末である。
【0011】
基板処理装置10、装置コントローラ12、測定装置14、サーバ装置16、及び作業者端末18は、インターネット又はLAN(Local Area Network)などのネットワーク20及び22を介して通信可能に接続されている。
【0012】
基板処理装置10は、基板製造プロセスの各工程(成膜、エッチング、アッシング、クリーニングなど)に応じた処理を行う。基板処理装置10は、例えば半導体製造装置、熱処理装置、又は成膜装置であってもよい。基板処理装置10は、例えば装置コントローラ12から出力された制御命令(プロセス条件)に従って、基板製造プロセスの各工程に応じた処理を実行する。
【0013】
プロセス条件は、基板製造プロセスの条件である。プロセス条件は、基板処理装置10の制御対象(制御ノブ)を制御(調整)するパラメータの組み合わせである。プロセス条件には、ガスの流量を調整するパラメータが含まれる。
【0014】
装置コントローラ12は、基板処理装置10に対する指示を作業者から受け付けると共に、基板処理装置10に関する情報を作業者に提供するマンマシンインタフェースの機能を有する。装置コントローラ12は、基板処理装置10に設置されている複数のセンサから出力されたセンサデータを受信する。装置コントローラ12は、プロセス条件を基板処理装置10に出力する。
【0015】
図1の装置コントローラ12は、基板処理装置10ごとに設けられているが、複数台の基板処理装置10ごとに設けられていてもよい。装置コントローラ12は、基板処理装置10の筐体内に設けられていてもよいし、筐体の外に設けられていてもよい。
【0016】
測定装置14は、膜厚測定器、シート抵抗測定器、パーティクル測定器など、基板処理装置10がプロセス条件に従って成膜処理した成膜結果を測定する測定器である。例えば測定装置24は、基板処理装置10がプロセス条件に従って成膜処理したウエハ等の基板上の膜の付き具合(膜厚)を成膜結果の一例として測定する。成膜結果は、屈折率、不純物濃度、ラフネス、及び電気特性結果(比抵抗)等であってもよい。
【0017】
サーバ装置16は、後述するように、プロセス条件に従って成膜処理を実行した基板処理装置10のプロセス条件のデータと成膜結果のデータとを受信し、プロセスログとしてプロセスを行うごと(Runごと)に保存してもよい。サーバ装置16は、測定装置14から成膜結果のデータを受信してもよい。なお、プロセス条件に従って成膜処理を実行した基板処理装置10のプロセス条件のデータと成膜結果のデータとは、装置コントローラ12又は作業者端末18が受信し、プロセスログとしてRunごとに保存してもよい。装置コントローラ12又は作業者端末18は、測定装置14から成膜結果のデータを受信してもよい。
【0018】
装置コントローラ12、サーバ装置16、又は作業者端末18は、保存しているプロセスログを利用することで、後述するように、ガスの消費量などが未知のウエハ(第1のウエハの一例)を成膜処理するときに所望の膜厚とする為のガスの流量などのプロセス条件を予測する。ガスの消費量などが未知のウエハは、例えばデバイスウエハ(製品ウエハの一例)である。
【0019】
装置コントローラ12及びサーバ装置16は、基板処理装置10に関する情報を作業者端末18に表示してもよいし、電子メール等を利用して作業者端末18の作業者に通知してもよい。また、装置コントローラ12、サーバ装置16、及び作業者端末18の少なくとも一つは、ウエハボートに積載されたデバイスウエハのレイアウトに基づき、そのレイアウトで成膜処理するときに所望の膜厚とする為の基板処理装置10のプロセス条件を後述のように予測する機能を有している。ウエハボートに積載されたデバイスウエハのレイアウトは、例えばウエハボートに積載されたデバイスウエハの枚数であってもよいし、ウエハボートに積載されたデバイスウエハの配置であってもよい。図1の装置コントローラ12、サーバ装置16、及び作業者端末18は、本実施形態に係る情報処理装置の一例である。
【0020】
なお、図1の基板処理システム1は一例であり、用途や目的に応じて様々なシステム構成例があることは言うまでもない。図1の基板処理装置10、装置コントローラ12、測定装置14、サーバ装置16、及び作業者端末18のような装置の区分は一例である。
【0021】
例えば基板処理システム1は、基板処理装置10、装置コントローラ12、測定装置14、サーバ装置16、及び作業者端末18の2つ以上が一体化された構成や、更に分割された構成など、様々な構成が可能である。
【0022】
<ハードウェア構成>
《装置コントローラ、サーバ装置、及び作業者端末》
図1に示す装置コントローラ12、サーバ装置16、及び作業者端末18は、例えば図2に示すハードウェア構成のコンピュータにより実現してもよい。図2は、コンピュータ500の一例のハードウェア構成図である。
【0023】
図2のコンピュータ500は、入力装置501、出力装置502、外部I/F(インタフェース)503、RAM(Random Access Memory)504、ROM(Read Only Memory)505、CPU(Central Processing Unit)506、通信I/F507、及びHDD(Hard Disk Drive)508などを備え、それぞれがバスBで相互に接続されている。入力装置501及び出力装置502は、必要なときに接続して利用する形態であってもよい。
【0024】
入力装置501は、キーボードやマウス、タッチパネルなどであり、作業者が操作信号を入力する為に用いられる。出力装置502は、ディスプレイ等であり、コンピュータ500による処理結果を表示する。通信I/F507は、コンピュータ500を図1に示したネットワーク20及び22に接続するインタフェースである。HDD508は、プログラムやデータを格納している不揮発性の記憶装置の一例である。
【0025】
外部I/F503は、外部装置とのインタフェースである。コンピュータ500は、外部I/F503を介してSD(Secure Digital)メモリカードなどの記録媒体503aの読み取りを行うことができる。外部I/F503は、外部I/F503を介してSDメモリカードなどの記録媒体503aへの書き込みを行うことができてもよい。
【0026】
ROM505は、プログラム及びデータが格納された不揮発性の半導体メモリ(記憶装置)の一例である。RAM504は、プログラム及びデータを一時保持する揮発性の半導体メモリ(記憶装置)の一例である。CPU506は、ROM505又はHDD508などの記憶装置からプログラム及びデータをRAM504上に読み出し、処理を実行することで、コンピュータ500全体の制御及び機能を実現する演算装置である。
【0027】
図1に示した基板処理システム1の装置コントローラ12、サーバ装置16、及び作業者端末18は、図2のコンピュータ500でプログラムを実行することにより、後述の各種機能を実現する。
【0028】
《基板処理装置》
図1に示す基板処理装置10は、例えば図3に示すハードウェア構成の基板処理装置10Aにより実現してもよい。図3は、本実施形態に係る基板処理装置10Aの一例のハードウェア構成図である。基板処理装置10は、例えば、2種類以上の処理ガスを交互に供給してALD(Atomic Layer Deposition)法により、ウエハ等の基板Wに膜を形成する成膜装置である。
【0029】
基板処理装置10Aは、下端が開口された有天井の円筒体状の反応管などの処理容器110を有する。処理容器110の全体は、例えば石英により形成されている。
【0030】
処理容器110の下端の開口には、円筒体状に成形された金属製のフランジ部120がOリング等のシール部材(図示せず)を介して気密に接続されている。また、フランジ部120は、処理容器110の下端を支持する。
【0031】
フランジ部120の下方から多数枚(例えば25~150枚)の基板Wを多段に載置できるウエハボート130が処理容器110内に挿入される。ウエハボート130は、基板保持具の一例である。このように処理容器110内には、上下方向に沿って間隔を有して多数枚の基板Wが略水平に収容できる。ウエハボート130は、例えば石英により形成されている。ウエハボート130は、例えば3本のロッド131を有し、ロッド131に形成された溝(図示せず)により多数枚の基板Wを支持できる。
【0032】
フランジ部120の下方側には、フランジ部120の下端の開口を開閉する金属製の蓋体132が設けられている。この蓋体132は、図示しないボートエレベータなどの昇降機構(図示せず)により、ウエハボート130と共に昇降自在に構成されている。蓋体132の周辺部とフランジ部120の下端との間には、処理容器110内の気密性を保持するためのシール部材(図示せず)が設けられている。
【0033】
ウエハボート130と蓋体132との間には、石英により形成された断熱体133が設けられている。回転機構134は、回転軸135を介してウエハボート130及び断熱体133を鉛直軸周りに回転させる。回転軸135は、蓋体132を気密に貫通し、回転機構134と断熱体133とを接続する。
【0034】
このように、ウエハボート130と蓋体132とは、昇降機構によって一体として昇降し、処理容器110内に対して挿脱される。また、ウエハボート130は、回転機構134によって鉛直軸周りに回転される。基板処理装置10Aは、ウエハボート130を回転させることなく基板Wの処理を行うようにしてもよい。
【0035】
処理容器110の周囲には、円筒体状の加熱機構140が設けられている。処理容器110、フランジ部120、及び加熱機構140は、水平方向に伸びるベースプレート143によって支持される。
【0036】
加熱機構140は、下端が開口された有天井の円筒体状の断熱部材141と、断熱部材141の内周面に配置されたヒータ142と、を有する。加熱機構140は、ヒータ142からの輻射熱及び熱対流によって処理容器110を加熱する。加熱機構140は、処理容器110の温度が所望の温度となるように制御する。これにより、処理容器110内の基板Wは、処理容器110の壁面からの輻射熱等で加熱される。加熱機構140は、処理容器110及び基板Wを所望の温度に加熱する。
【0037】
また、基板処理装置10Aは、処理容器110内へガスを供給するガス供給部150Aと、処理容器110内からガスを排気するガス排気部160Aを有する。
【0038】
ここで、処理容器110は、有天井の円筒体状の処理容器本体111と、ガス供給室112と、供給側配管である配管113と、フランジ114と、を有する。処理容器本体111は、有天井の円筒体状であって、ウエハボート130が挿入される。
【0039】
ガス供給室112は、処理容器本体111の側面の一端側が処理容器本体111の長さ方向に沿って外側に膨らむように形成されている。ガス供給室112の内部空間は、処理容器本体111の内部空間と連通するように形成されている。
【0040】
配管113は、一端がガス供給室112と連通し、水平方向(処理容器本体111の径方向)に延び、他端が加熱機構140よりも外周側まで延びる。また、配管113の他端には、フランジ114が設けられている。
【0041】
ガス供給室112及び配管113には、インジェクタ1200が配置される。ガス供給部150Aは、ガス供給室112と、配管113と、インジェクタ1200と、ガス供給源151と、流量調整部152と、開閉弁153と、供給路154と、ガスインジェクタヒータ(図示せず)と、を有する。
【0042】
ガス供給源151は、ガスを供給する。流量調整部152は、例えばマスフローコントローラであって、ガス供給源151から供給されるガスの流量を調整する。開閉弁153は、ガス供給源151から処理容器110内へのガスの供給または停止を切り替える。供給路154は、ガス供給源151と配管113とを接続し、その途中に流量調整部152及び開閉弁153が配置されている。
【0043】
供給路154と配管113とは、加熱機構140よりも外側で接続される。また、供給路154と配管113との接続部は、Oリング等のシール部材155を介して気密に接続されている。インジェクタ1200は、ガス供給室112及び配管113にわたって配置される。インジェクタ1200は、供給路154からガスが供給され、供給されたガスを処理容器110内に吐出する。ガスインジェクタヒータは、配管113を加熱する。
【0044】
ガス排気部160Aは、フランジ部120の側壁に設けられた排気管125と、真空ポンプ161と、圧力調整部162と、排気路163と、を有する。これにより、処理容器110内のガスは、ガス排気部160Aによって、処理容器110外に排気される。圧力調整部162は、処理容器110内の圧力を、所望の圧力に調整する。
【0045】
インジェクタ1200は、吐出部1210Aを有する。吐出部1210Aは、ガスが通流可能な内部空間を有し、上端及び下端が閉塞された円筒形状を有する。基板処理装置10Aにインジェクタ1200が取り付けられた際、吐出部1210Aは、ガス供給室112内に配置され、処理容器110の高さ方向に延びる配管である。
【0046】
吐出部1210Aには、内部空間と連通するガス吐出孔が設けられている。ガス吐出孔は、吐出部1210Aにおいて、処理容器110の高さ方向に複数設けられている。吐出部1210Aは、円筒形状であるものとして説明したが、例えば断面積が楕円の筒形状であってもよく、断面積が多角形の筒形状等であってもよい。このように、ガス供給源151から供給されたガスは、吐出部1210Aのガス吐出孔から処理容器110内に供給される。
【0047】
また、処理容器本体111の高さ方向に配置される複数の配管113には、同種のガスが供給される。一方、処理容器本体111の周方向に配置される配管113のそれぞれには、異なるガスが供給されてもよい。
【0048】
また、配管113を側面から水平方向に設けることにより、インジェクタ1200内のガスが処理容器本体111からの熱によって加熱されることを低減することができる。これにより、ガス吐出孔から吐出されるガスの温度の温度制御性が向上する。
【0049】
また、1つのガスに対して、複数の配管113から処理容器110内にガスを供給することにより、ガスの流量及び/又はガスの温度を高さ方向において、制御できる。このように、基板処理装置10Aは、高さ方向の領域(ゾーン)ごとに、ガスの流量及び/又はガスの温度を制御できるため、処理容器110内のガス濃度及びガス分解の状態を面間方向で揃えることができる。
【0050】
基板処理装置10Aによれば、処理容器110に供給するガスを調整できる。即ち、基板処理装置10Aは、処理容器110の高さ方向において、複数の領域(ゾーン)を形成する。そして、各領域には、それぞれインジェクタ1200が対応する。基板処理装置10Aによれば、図3に示すように、高さ方向の各配管113に供給するガスの流量を流量調整部152によって個別に制御できる。これにより、基板処理装置10Aは、複数の領域ごとに供給するガスの流量を制御できる。
【0051】
また、基板処理装置10Aによれば、高さ方向の各配管113に対応して設けられたガスインジェクタヒータを個別に制御することにより、供給するガスの温度を個別に制御できる。これにより、基板処理装置10Aは、複数の領域ごとに供給するガスの温度を制御できる。
【0052】
また、インジェクタ1200に対向するインナーチューブの側面には、排気スリット2000が配置されている。よって、吐出部1210Aのガス吐出孔から処理容器110内に供給されたガスは、ウエハボート130に支持された基板Wの間を排気スリット2000に向かって通過し、排気管125を介して処理容器110外へと排気される。これにより、基板処理装置10Aは、サイドフローによって供給されるガスの流量及び温度の均一性を向上させることができ、基板処理の均一性を向上させることができる。
【0053】
図1に示す基板処理装置10は、例えば図4に示すハードウェア構成の基板処理装置10Bにより実現してもよい。図4は、本実施形態に係る基板処理装置10Bの一例のハードウェア構成図である。なお、図4に示す基板処理装置10Bは、一部を除いて図3に示した基板処理装置10Aと同様であるため、適宜説明を省略する。
【0054】
基板処理装置10Bは、処理容器110内へガスを供給するガス供給部150Aと、処理容器110内からガスを排気するガス排気部160Bとを有する。ガス供給部150Aは、図3のガス供給部150Aと同様である。処理容器110は、有天井の円筒体状の処理容器本体111と、ガス供給室112と、配管113と、フランジ114と、ガス排気室115と、排気側配管である配管116と、フランジ117と、を有する。
【0055】
ガス排気室115は、処理容器本体111の側面の他端側が処理容器本体111の長さ方向に沿って外側に膨らむように形成されている。ガス排気室115の内部空間は、処理容器本体111の内部空間と連通するように形成されている。
【0056】
配管116は、一端がガス排気室115と連通し、水平方向(処理容器本体111の径方向)に延びて加熱機構140の側面を貫通し、他端が加熱機構140よりも外周側まで延びる。また、配管116の他端にはフランジ117が設けられている。ガス排気室115及び配管116には、エジェクタ1300が配置される。
【0057】
ガス排気部160Bは、ガス排気室115と、配管116と、真空ポンプ161と、圧力調整部162と、排気路163と、エジェクタ1300と、を有する。処理容器110内のガスは、ガス排気部160Bによって、処理容器110外に排気される。圧力調整部162は、処理容器110内の圧力を、所望の圧力に調整する。配管116と排気路163とは、加熱機構140よりも外側で接続される。また、配管116と排気路163との接続部は、Oリング等のシール部材165を介して気密に接続されている。エジェクタ1300は、ガス排気室115及び配管116にわたって配置される。
【0058】
エジェクタ1300は、吸込部1310を有する。吸込部1310は、ガスが通流可能な内部空間を有し、上端及び下端が閉塞された円筒形状を有する。基板処理装置10Bにエジェクタ1300が取り付けられた際、吸込部1310は、ガス排気室115内に配置され、処理容器110の高さ方向に延びる配管である。吸込部1310には、内部空間と連通するガス吸込孔が設けられている。ガス吐出孔は、吸込部1310において、処理容器110の高さ方向に複数設けられている。なお、吸込部1310は、円筒形状であるものとして説明したが、例えば断面積が楕円の筒形状であってもよく、断面積が多角形の筒形状等であってもよい。
【0059】
搬送部1320は、ガスが通流可能な内部空間を有する配管であって、一端が吸込部1310とガスが通流可能に接続され、他端が吐出部とガスが通流可能に接続される。基板処理装置10Bにエジェクタ1300が取り付けられた際、搬送部1320は、配管116内に配置される。搬送部1320は、円筒形状であるものとして図示しているが、例えば断面積が楕円の配管であってもよく、断面積が多角形の配管等であってもよい。
【0060】
搬送部1320は、直管形状に形成されている。これにより、吸込部1310のガス吸込孔から吸い込まれたガスは、直管形状の搬送部1320を通過して、速やかに吐出部へと排気される。吐出部は、排気路163と接続される接続部であって、排気路163へとガスを排気する。このように、処理容器110内のガスは、エジェクタ1300のガス吸込孔から吸込部1310、搬送部1320、吐出部の順番で流れ、排気路163に排気される。
【0061】
基板処理装置10Bによれば、処理容器110に供給するガス及び処理容器110から排気するガスの流量を調整できる。即ち、基板処理装置10Bは、処理容器110の高さ方向において、複数の領域(ゾーン)を形成する。各領域には、それぞれインジェクタ1200及びエジェクタ1300が対応する。基板処理装置10Bによれば、図4に示すように、高さ方向の各配管113に供給するガスの流量を流量調整部152によって個別に制御できると共に、高さ方向の各配管116から排出するガスの流量をエジェクタ1300によって制御できる。また、エジェクタ1300は着脱可能となっている。形状等が異なるエジェクタ1300と交換することによって、基板処理装置10Bは、複数の領域ごとに排出するガスの流量を制御できる。
【0062】
よって、吐出部1210Aのガス吐出孔から処理容器110内に供給されたガスは、ウエハボート130に支持された基板Wの間を通過し、吸込部1310のガス吸込孔を介して処理容器110外へと排気される。基板処理装置10Bは、サイドフローによって供給されるガスの流量及び温度の均一性を向上させることができ、基板処理の均一性を向上させることができる。
【0063】
図1に示す基板処理装置10は、従来、例えば図5に模式的に示すハードウェア構成の基板処理装置10Cにより実現されてきた。図5は、基板処理装置10Cの一例の模式図である。図5の基板処理装置10Cは、図3に示した基板処理装置10A及び図4に示した基板処理装置10Bと同様な部分について簡略化して図示している。
【0064】
図5では、処理容器110を、アウターチューブ110aとインナーチューブ110bとに分けて図示している。また、図5の基板処理装置10Cでは、インジェクタ1200がトップインジェクタ1200aとセンタートップインジェクタ1200bとセンターインジェクタ1200cとセンターボトムインジェクタ1200dとボトムインジェクタ1200eとに分かれている。さらに、基板処理装置10Cは、インナーチューブ110b内のトップインジェクタ1200a、センタートップインジェクタ1200b、センターインジェクタ1200c、センターボトムインジェクタ1200d、及びボトムインジェクタ1200eに対向するインナーチューブ110bの側面に排気スリット2000が配置されている。
【0065】
基板処理装置10Cによれば、処理容器110に供給するガス及び処理容器110から排気するガスの流量を調整できる。即ち、基板処理装置10Cは、処理容器110の高さ方向において、複数の領域(ゾーン)を形成する。各領域には、トップインジェクタ1200a、センターインジェクタ1200b、ボトムインジェクタ1200c、及び排気スリット2000が対応する。
【0066】
基板処理装置10Cは、図5に示すように、インナーチューブ110bの高さ方向に供給するガスの流量をトップインジェクタ1200a、センタートップインジェクタ1200b、センターインジェクタ1200c、センターボトムインジェクタ1200d、ボトムインジェクタ1200eによって個別に制御し、供給されたガスが排気スリット2000に向かってウエハW上を流れていくように制御する。
【0067】
よって、トップインジェクタ1200a、センタートップインジェクタ1200b、センターインジェクタ1200c、センターボトムインジェクタ1200d、ボトムインジェクタ1200eから処理容器110内に供給されたガスは、ウエハボート130に支持された基板Wの間を通過し、排気スリット2000を介して処理容器110外へと排気される。しかしながら、基板処理装置10Cは、各ゾーンのインジェクタ1200の長さが異なるため、各ゾーンのガスの状態が異なる場合があった。
【0068】
<発明の概要>
本実施形態では、加工前のウエハ(第2のウエハの一例)がベア(Bare)ウエハであり、ガスの消費量などが未知のウエハ(第1のウエハの一例)がデバイス(Device)ウエハである例を説明する。デバイスウエハは、表面形状及び表面膜種などによってガスの消費量が変わり、ベアウエハに成膜したときと成膜結果が異なる。また、デバイスウエハは、ウエハボート130に積載されたデバイスウエハのレイアウトによってもガスの消費量が変わり、ベアウエハに成膜したときと成膜結果が異なる。
【0069】
例えば、ウエハボート130に最大枚数のデバイスウエハが積載されたデバイスウエハのレイアウト(第2のレイアウトの一例)と、ウエハボート130に最大枚数よりも少ない枚数のデバイスウエハが積載されたデバイスウエハのレイアウト(第1のレイアウトの一例)と、では、ガスの消費量が変わり、成膜結果が異なる。以下では、ウエハボート130に最大枚数のベアウエハ又はデバイスウエハを積載することをフルチャージと呼ぶ。
【0070】
図6は、図5に示した処理容器110内のガス濃度及びガス分解の状態が面間方向で一様でない基板処理装置において、フルチャージされたデバイスウエハを成膜処理で所望の膜厚とするためのガスの流量を予測する場合の課題を説明する一例の図である。
【0071】
例えば、作業者は、図6(A)に示すように、ウエハボート130にベアウエハをフルチャージしたときに、ベアウエハを目標の膜厚(5nm)にするためのガスの流量が、高さ方向の領域(ゾーン)ごとに、事前に分かっているものとする。
【0072】
しかしながら、図6(B)に示すように、ウエハボート130にデバイスウエハをフルチャージしたときに、デバイスウエハを目標の膜厚(5nm)にするためのガスの流量を予測することは、表面形状及び表面膜種などによってベアウエハとデバイスウエハとでガスの消費量が変わるため、困難であった。
【0073】
例えば、処理容器110内のガス濃度及びガス分解の状態が面間方向で一様でない基板処理装置では、以下の第1~第3の要因が合わさることにより、ウエハボート130にデバイスウエハをフルチャージしたときに、デバイスウエハを目標の膜厚(5nm)にするためのガスの流量を予測が困難となる。
【0074】
第1の要因は、インジェクタ1200内のガスの滞留時間がゾーンで異なることなどにより処理容器110内のガスの状態の分布が一様でないことである。第2の要因は、ベアウエハとデバイスウエハとでガスの消費量が異なることである。第3の要因は、ウエハボート130に積載されたウエハのレイアウトによりガスの消費量が異なることである。
【0075】
したがって、ウエハボート130にデバイスウエハをフルチャージしたときに、デバイスウエハを目標の膜厚(5nm)にするためのガスの流量を予測するためには、デバイスウエハをフルチャージして成膜処理を行い、その成膜結果を得る必要があった。
【0076】
図7は、処理容器110内のガス濃度及びガス分解の状態が面間方向で一様でない基板処理装置において、フルチャージされたデバイスウエハを成膜処理で所望の膜厚とするためのガスの流量を予測する場合の課題を説明する一例の図である。
【0077】
例えば、作業者は、図7(A)に示すように、ウエハボート130にデバイスウエハをフルチャージして成膜処理を行い、その成膜結果が目標の膜厚(5nm)となるようにガスの流量を高さ方向の領域(ゾーン)ごとに調整していた。したがって、作業者は、ウエハボート130にフルチャージしたデバイスウエハを目標の膜厚(5nm)にするためのガスの流量を予測するために、ウエハボート130にフルチャージしたデバイスウエハの成膜処理を繰り返す必要があった。
【0078】
例えば、デバイスウエハは、高価であることが多く、プロセス条件を予測するために大量に消費することはできない。また、デバイスウエハは、例えば開発段階において枚数が少なく、プロセス条件を予測するために大量に消費することはできない。
【0079】
したがって、ウエハボート130にフルチャージしたデバイスウエハを目標の膜厚(5nm)にするためのガスの流量を予測する場合は、できるだけ少ない枚数のデバイスウエハを使用して、プロセス条件を予測することが望まれている。
【0080】
そこで、本実施形態では、図3図4に示したように、処理容器110内のガス濃度及びガス分解の状態を面間方向で揃えることができる基板処理装置10A~10Bを用いることを前提としている。処理容器110内のガス濃度及びガス分解の状態を面間方向で揃えることができる基板処理装置10A~10Bを用いることにより、上記した第1の要因は解消される。
【0081】
図8は、処理容器110内のガス濃度及びガス分解の状態が面間方向で一様である基板処理装置10A~10Bにおいて、フルチャージされたデバイスウエハを成膜処理で所望の膜厚とするためのガスの流量を予測する場合について説明する一例の図である。
【0082】
例えば、作業者は、図8(A)に示すように、ウエハボート130にベアウエハをフルチャージしたときに、ベアウエハを目標の膜厚(5nm)にするためのガスの流量が、高さ方向の領域(ゾーン)ごとに、事前に分かっているものとする。処理容器110内のガス濃度及びガス分解の状態が面間方向で一様である基板処理装置10A~10Bを用いたことにより、ガスの流量は「1slm」と揃っている。
【0083】
本実施形態では、図8(B)に示すように、ウエハボート130にデバイスウエハをフルチャージしたときに、デバイスウエハを目標の膜厚(5nm)にするためのガスの流量を予測する。本実施形態では、処理容器110内のガス濃度及びガス分解の状態が面間方向で一様である基板処理装置10A~10Bを用いることにより、予測するガスの流量が各領域(ゾーン)で揃う。
【0084】
上記した第2の要因は、ベアウエハ及びデバイスウエハのガスの流量に対する膜厚の差を例えば図9に示すように求めることで解消する。図9は、ガスの流量に対する膜厚のウエハの依存性の解消について説明する一例の図である。
【0085】
例えば、作業者は、図9(A)に示すように、ウエハボート130にベアウエハをモニタのみチャージ(フルチャージよりも少ない枚数のベアウエハをウエハボート130に積載)したときに、ベアウエハを目標の膜厚(6nm)にするためのガスの流量が「1slm」と揃っていることが、事前に分かっているものとする。
【0086】
また、作業者は、図9(B)に示すように、ウエハボート130にデバイスウエハをモニタのみチャージ(フルチャージよりも少ない枚数のデバイスウエハをウエハボート130に積載)して、図9(A)と同じガスの流量で成膜処理を行い、その成膜結果である膜厚「4nm」を得る。
【0087】
図9の場合、作業者は、ガスの流量が「1slm」のときの図9(A)に示すベアウエハの膜厚「6nm」と図9(B)に示すデバイスウエハの膜厚「4nm」とから、デバイスウエハのガスの流量に対する膜厚の感度が、ベアウエハの2/3倍であることを算出できる。したがって、作業者は、ガスの流量に対する膜厚のデバイスウエハの依存性を求めることができる。
【0088】
上記した第3の要因は、図10に示すように、ウエハボート130にデバイスウエハをフルチャージしたときに、デバイスウエハを目標の膜厚(5nm)にするためのガスの流量を予測することで解消する。図10は、ガスの流量に対する膜厚のウエハのレイアウトの依存性の解消について説明する一例の図である。
【0089】
図10(A)は、ウエハボート130にベアウエハをフルチャージしたときに、ベアウエハを目標の膜厚(5nm)にするためのガスの流量が、高さ方向の領域(ゾーン)ごとに「1slm」と揃っていることを示している。
【0090】
図9を用いて説明したように、デバイスウエハのガスの流量に対する膜厚の感度が、ベアウエハの2/3倍である。図9及び図10の場合、作業者は、ウエハボート130にデバイスウエハをフルチャージしたときに、デバイスウエハを目標の膜厚(5nm)にするためのガスの流量を、ベアウエハを目標の膜厚(5nm)にするためのガスの流量「1slm」を1.5倍した「1.5slm」と算出できる。
【0091】
なお、図9に示したウエハボート130にベアウエハ又はデバイスウエハをモニタのみチャージした状態は、一例である。上記した第2の要因は、ベアウエハ及びデバイスウエハのガスの流量に対する膜厚の差を例えば図11に示すように求めることで解消してもよい。図11は、ガスの流量に対する膜厚のウエハの依存性の解消について説明する一例の図である。
【0092】
例えば、作業者は、図11(A)に示すように、ウエハボート130にベアウエハを1枚のモニタのみチャージしたときに、ベアウエハを目標の膜厚(6nm)にするためのガスの流量が「1slm」と揃っていることが、事前に分かっているものとする。
【0093】
また、作業者は、図11(B)に示すように、ウエハボート130にデバイスウエハを1枚のモニタのみチャージして、図11(A)と同じガスの流量で成膜処理を行い、その成膜結果である膜厚「4nm」を得る。
【0094】
図11の場合、作業者は、ガスの流量が「1slm」のときの図11(A)に示すベアウエハの膜厚「6nm」と図11(B)に示すデバイスウエハの膜厚「4nm」とから、デバイスウエハのガスの流量に対する膜厚の感度が、ベアウエハの2/3倍であることを算出できる。したがって、作業者は、ガスの流量に対する膜厚のデバイスウエハの依存性を求めることができる。
【0095】
<機能構成>
本実施形態に係る基板処理システム1の装置コントローラ12は、例えば図12に示すような機能ブロックで実現される。図12は、本実施形態に係る装置コントローラ12の一例の機能ブロック図である。なお、図12の機能ブロック図は、本実施形態の説明に不要な構成について図示を省略している。また、図12の機能ブロック図は、サーバ装置16又は作業者端末18で実現してもよい。
【0096】
図12の装置コントローラ12は、プログラムを実行し、取得部30、計算部32、予測部34、出力部36、及びデータ記憶部38を実現する。データ記憶部38は、成膜結果記憶部40及びモデル記憶部42を実現する。
【0097】
取得部30は、プロセス条件を予測するデバイスウエハを処理容器110内において例えば図9又は図11のレイアウトで成膜処理した成膜結果(第1の成膜結果の一例)を取得する。例えば、取得部30は、図9又は図11のレイアウトで成膜処理した成膜結果の入力を作業者から受け付けることで、図9又は図11のレイアウトで成膜処理した成膜結果を取得してもよい。
【0098】
また、取得部30は、ベアウエハを処理容器110内において例えば図9又は図11のレイアウトで成膜処理した成膜結果(第2の成膜結果の一例)を取得する。なお、ベアウエハを処理容器110内において例えば図9又は図11のレイアウトで成膜処理した成膜結果は、成膜結果記憶部40に予め記憶しておいてもよい。
【0099】
計算部32は、例えば図9又は図11のレイアウトでデバイスウエハを成膜処理した成膜結果と、図9又は図11のレイアウトでベアウエハを成膜処理した成膜結果とに基づいて、デバイスウエハ及びベアウエハの膜厚の変化(ベアウエハを基準としたデバイスウエハのガスの流量に対する膜厚の感度)を計算する。
【0100】
より具体的に、計算部32は、デバイスウエハ及びベアウエハの膜厚の差分から、デバイスウエハ及びベアウエハの膜厚が同一となる為に必要な、デバイスウエハを成膜処理するときのガスの流量とベアウエハを成膜処理するときのガスの流量との関係(ガス流量の変化と膜厚の変化との関係;感度)を算出する。
【0101】
予測部34は、例えば図9又は図11のレイアウトよりも多い枚数のベアウエハがウエハボート130に積載された特定のレイアウト(第2のレイアウトの一例)で成膜処理した成膜結果(第3の成膜結果の一例)と、計算部32が計算したデバイスウエハ及びベアウエハの膜厚の変化とに基づき、デバイスウエハを第2のレイアウトで成膜処理するときに所望の膜厚とする為のガス流量などのプロセス条件を予測する。フルチャージは、第2のレイアウトの一例である。
【0102】
より具体的に、予測部34は、計算部32により算出された関係を、第3の成膜結果に反映させることで、デバイスウエハを第2のレイアウトで成膜処理するときに所望の膜厚とする為のガスの流量を予測する。
【0103】
また、予測部34は、ベアウエハを処理容器110において第2のレイアウトで成膜処理した第3の成膜結果と、計算したデバイスウエハ及びベアウエハの膜厚の変化とに基づいて、デバイスウエハを第2のレイアウトで成膜処理するときのガスの流量と膜厚とを対応付ける例えば図13に示すようなモデルを作成し、モデルを用いて所望の膜厚とする為のガスの流量を予測する。
【0104】
図13は、ガスの流量と成膜結果の膜厚とを対応付けるモデルの一例について説明する図である。図13(A)は、処理容器110内のガス濃度及びガス分解の状態が面間方向で一様でない基板処理装置のモデルの一例である。図13(A)は、BASE条件での膜圧を基準に各ゾーンのインジェクタのガスの流量を「0.1slm」ずつ増やしたときの膜厚の変化量から作成される。図13(A)のモデルは、インジェクタ1200の長さの違いによりゾーン間でのガスの状態が変わり、ゾーン間で成膜量が揃わないため、精度が出せない。
【0105】
図13(B)は、処理容器110内のガス濃度及びガス分解の状態が面間方向で一様である基板処理装置10A~10Bのモデルの一例である。図13(B)のモデルは、サイドフローにより、ガスの流量と成膜結果の膜厚との関係が対角化される。図13(B)のモデルは、ゾーン間でのガスの状態が変わらず、ゾーン間で成膜量が揃うため、計算の精度も高くなる。図13(B)のモデルは、例えばモデル記憶部42に記憶されている。
【0106】
出力部36は、予測部34が予測したデバイスウエハを第2のレイアウトで成膜処理するときに所望の膜厚とする為のガス流量などのプロセス条件を出力する。プロセス条件の出力は、例えば出力装置502に表示することで行う。
【0107】
<処理>
図14は、本実施形態に係る基板処理システム1の処理の一例を示すフローチャートである。
【0108】
例えば、処理容器110内のガス濃度及びガス分解の状態が面間方向で一様である基板処理装置10A~10Bを用いて、様々なレイアウト(第1のレイアウト及び第2のレイアウトを含む)でベアウエハを成膜処理した成膜結果が成膜結果記憶部40に記憶されているものとする。また、成膜結果記憶部40に記憶されている成膜結果の図13(B)のモデルがモデル記憶部42に記憶されているものとする。
【0109】
ステップS10において、取得部30は、プロセス条件を予測するデバイスウエハを処理容器110内において例えば図9又は図11のレイアウトで成膜処理した成膜結果(第1の成膜結果の一例)を取得し、計算部32に送信する。
【0110】
ステップS12において、計算部32は、ベアウエハを処理容器110内において例えば図9又は図11のレイアウトで成膜処理した成膜結果(第2の成膜結果の一例)を成膜結果記憶部40から取得する。
【0111】
ステップS14において、計算部32は、例えば図9又は図11のレイアウトでデバイスウエハを成膜処理した成膜結果と、図9又は図11のレイアウトでベアウエハを成膜処理した成膜結果とに基づいて、デバイスウエハとベアウエハとの膜厚の変化を計算する。
【0112】
ステップS16において、予測部34は、ベアウエハを処理容器110内において例えば図10のレイアウトで成膜処理した成膜結果(第3の成膜結果の一例)を成膜結果記憶部40から取得する。
【0113】
ステップS18において、予測部34は、第3の成膜結果と、計算部32が計算したデバイスウエハ及びベアウエハの膜厚の変化とに基づき、デバイスウエハを第2のレイアウトで成膜処理するときに所望の膜厚とする為のガス流量などのプロセス条件を予測する。
【0114】
ステップS20において、出力部36は、予測部34が予測したデバイスウエハを第2のレイアウトで成膜処理するときに所望の膜厚とする為のガス流量などのプロセス条件を出力する。
【0115】
本実施形態によれば、より少ない枚数のデバイスウエハに対する成膜処理の成膜結果に基づき、所望の膜厚とする為のプロセス条件を予測する技術を提供できるので、大量に消費することのできないウエハを目標の膜厚にするためのガスの流量を、精度よく予測することができる。
【0116】
今回開示された各実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。上記の各実施形態は、添付の請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0117】
1 基板処理システム
10 基板処理装置
12 装置コントローラ
14 測定装置
16 サーバ装置
18 作業者端末
30 取得部
32 計算部
34 予測部
36 出力部
38 データ記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14