(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025176828
(43)【公開日】2025-12-05
(54)【発明の名称】蓄熱体及び加熱装置
(51)【国際特許分類】
C09K 5/06 20060101AFI20251128BHJP
F28D 20/02 20060101ALI20251128BHJP
C01B 33/06 20060101ALI20251128BHJP
【FI】
C09K5/06 Z
F28D20/02 D
C01B33/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024083178
(22)【出願日】2024-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 淳二
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 一幸
【テーマコード(参考)】
4G072
【Fターム(参考)】
4G072AA20
4G072BB05
4G072DD03
4G072GG01
4G072GG03
4G072HH02
4G072MM02
4G072MM28
4G072TT01
4G072UU30
(57)【要約】
【課題】より広い温度域において被加熱物の温度を維持することが可能な蓄熱体を提供する。
【解決手段】蓄熱体は、粒子径D50が異なる2種類以上の蓄熱粒子を備え、2種類以上の蓄熱粒子はいずれも、固液相変化を利用した蓄熱及び放熱が可能な相変化型蓄熱物質を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子径D50が異なる2種類以上の蓄熱粒子を備え、前記2種類以上の蓄熱粒子はいずれも、固液相変化を利用した蓄熱及び放熱が可能な相変化型蓄熱物質を有する蓄熱体。
【請求項2】
粒子径D50が最も大きい前記蓄熱粒子の粒子径D50をD1とし、粒子径D50が2番目に大きい前記蓄熱粒子の粒子径D50をD2とすると、D1とD2の比D1/D2が1.5以上15以下である請求項1に記載の蓄熱体。
【請求項3】
前記2種類以上の蓄熱粒子の粒子径D50がいずれも10μm以上300μm以下である請求項1又は請求項2に記載の蓄熱体。
【請求項4】
前記相変化型蓄熱物質が金属単体又は合金である請求項1又は請求項2に記載の蓄熱体。
【請求項5】
前記合金がアルミニウムケイ素合金である請求項4に記載の蓄熱体。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の蓄熱体を備える加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蓄熱体及び加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固液相変化を利用した蓄熱及び放熱が可能な相変化型の蓄熱体が知られている。例えば特許文献1には、融点が異なる2種類以上の相変化型蓄熱物質を備える蓄熱体が開示されている。特許文献1に開示の蓄熱体は、融点が異なる2種類以上の相変化型蓄熱物質を備えるため、放熱が生じる温度域を複数有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の蓄熱体は、放熱が生じる温度域を複数有するので、放熱が生じる温度域が単数である場合よりも、広い温度域において被加熱物の温度を維持することが可能である。しかしながら、より広い温度域において被加熱物の温度を維持することが可能な蓄熱体が望まれていた。
本発明は、より広い温度域において被加熱物の温度を維持することが可能な蓄熱体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る蓄熱体は、粒子径D50が異なる2種類以上の蓄熱粒子を備え、前記2種類以上の蓄熱粒子はいずれも、固液相変化を利用した蓄熱及び放熱が可能な相変化型蓄熱物質を有することを要旨とする。
本発明の他の態様に係る加熱装置は、上記一態様に係る蓄熱体を備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、より広い温度域において被加熱物の温度を維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施例及び比較例の蓄熱体の熱分析の結果を示す図である。
【
図2】比較例の蓄熱体の熱分析の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態について以下に説明する。なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。また、本実施形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。
【0009】
本実施形態に係る蓄熱体は、粒子径D50が異なる2種類以上の蓄熱粒子を備え、2種類以上の蓄熱粒子はいずれも、固液相変化を利用した蓄熱及び放熱が可能な相変化型蓄熱物質を有する。
粒子径D50が異なる蓄熱粒子は異なる温度域で放熱を生じるので、本実施形態に係る蓄熱体を使用して、例えば、温度降下時の被加熱物の加熱を行えば、複数の温度域で蓄熱体から放熱が生じて被加熱物が加熱される。そのため、被加熱物の温度が降下しても、より広い温度域において被加熱物の温度低下を抑制することが可能である。
【0010】
より広い温度域において被加熱物の温度低下を抑制するためには、より多くの温度域で蓄熱体から放熱が生じることが好ましいので、粒子径D50が異なる蓄熱粒子の種類はより多いことが好ましい。すなわち、粒子径D50が異なる蓄熱粒子の種類は、2種類でも差し支えないが、3種類以上であることが好ましく、4種類以上であることがより好ましく、5種類以上であることがさらに好ましい。
【0011】
また、より広い温度域において被加熱物の温度低下を抑制するためには、異なる種類の蓄熱粒子においては、放熱が生じる温度域が一部重複していることが好ましい。そうすれば、温度降下時の被加熱物が断続的に加熱されるのではなく、温度降下時の被加熱物が連続して加熱される状態が生じるため、被加熱物の温度低下がより抑制されやすい。
【0012】
相変化型蓄熱物質の種類を選択することによって、蓄熱粒子から放熱が生じる温度域が一部重複するようにすることが可能であるが、相変化型蓄熱物質の種類が同一であっても、蓄熱粒子の粒子径D50を選択することによって、蓄熱粒子から放熱が生じる温度域が一部重複するようにすることが可能である。
なお、粒子径D50とは、体積基準の積算粒子径分布において小粒径側からの積算粒子体積が全粒子体積の50%となる粒子径である。
【0013】
粒子径D50が最も大きい蓄熱粒子の粒子径D50をD1とし、粒子径D50が2番目に大きい蓄熱粒子の粒子径D50をD2とすると、蓄熱粒子から放熱が生じる温度域が一部重複するようにするためには、D1とD2の比D1/D2が1.5以上15以下であることが好ましく、1.9以上7.5以下であることがより好ましい。
【0014】
また、蓄熱粒子の粒子径D50は特に限定されるものではないが、2種類以上の蓄熱粒子の粒子径D50は、いずれも10μm以上300μm以下であることが好ましく、いずれも20μm以上100μm以下であることがより好ましい。蓄熱粒子の粒子径D50が小さいほど、蓄熱粒子の融解速度及び凝固速度が高速となるので、本実施形態に係る蓄熱体による蓄熱及び放熱を短時間で行うことが可能である(すなわち、蓄熱速度及び放熱速度が高速となりやすい)。
【0015】
このような本実施形態に係る蓄熱体の用途は特に限定されるものではないが、例えば、触媒の温度低下の抑制に利用することができる。用途の一例を挙げる。排ガスを浄化するための触媒が自動車に搭載されているが、エンジンの停止時に触媒の温度が低下するので、これを抑制するために本実施形態に係る蓄熱体を使用することができる。本実施形態に係る蓄熱体からの放熱によって、自動車に搭載されている触媒を加熱すれば、電気エネルギーを使用することなく、触媒の温度を触媒が活性化する温度(例えば300~400℃)に保持することができる。本実施形態に係る蓄熱体を備える加熱装置を自動車に搭載し、加熱装置によって触媒を加熱可能な構成とすればよい。
以下に、本実施形態に係る蓄熱体について、さらに詳細に説明する。
【0016】
(1)相変化型蓄熱物質について
相変化型蓄熱物質の種類は、固液相変化を利用した蓄熱及び放熱が可能であれば、特に限定されるものではないが、金属単体又は合金が相変化型蓄熱物質として好適である。金属単体の具体例としては、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、鉛(Pb)、錫(Sn)、インジウム(In)が挙げられる。また、合金の具体例としては、アルミニウム合金、亜鉛合金、マグネシウム合金、錫合金、インジウム合金が挙げられる。
【0017】
アルミニウム合金は、ケイ素(Si)、マグネシウム、銅(Cu)、亜鉛等のうち少なくとも1種を合金成分として含有し、アルミニウムを最多成分とする合金である。亜鉛合金は、アルミニウム、銅、マグネシウム等のうち少なくとも1種を合金成分として含有し、亜鉛を最多成分とする合金である。マグネシウム合金は、アルミニウム、亜鉛等のうち少なくとも1種を合金成分として含有し、マグネシウムを最多成分とする合金である。
【0018】
なお、これら合金の合金組成比は特に限定されるものではないが、共晶点を有する合金組成比であることが好ましい。共晶点を有する合金は、繰り返し相変化させても(融解と凝固を繰り返し行っても)、結晶組織に変化が生じにくいので、蓄熱体としての性能が劣化しにくい。
【0019】
アルミニウム合金の種類は特に限定されるものではないが、例えば、合金成分としてケイ素を含有する4000系アルミニウム合金(アルミニウムケイ素合金)、合金成分としてマグネシウムを含有する5000系アルミニウム合金、合金成分としてケイ素、マグネシウムを含有する6000系アルミニウム合金、合金成分として亜鉛、マグネシウムを含有する7000系アルミニウム合金が挙げられる。アルミニウムケイ素合金の合金組成比は特に限定されるものではないが、アルミニウム60原子%以上99原子%以下、ケイ素1原子%以上40原子%以下が好ましい。例えば、アルミニウム88原子%、ケイ素12原子%のアルミニウムケイ素合金は、共晶点を有する合金であるので好適である。
【0020】
相変化型蓄熱物質として用いる金属単体、合金の融点は特に限定されるものではないが、300℃以上600℃以下であることが好ましく、350℃以上400℃以下であることがより好ましい。合金組成比がアルミニウム88原子%、ケイ素12原子%であるアルミニウムケイ素合金の融点は、573℃である。
【0021】
(2)蓄熱粒子について
蓄熱粒子はいずれも、固液相変化を利用した蓄熱及び放熱が可能な相変化型蓄熱物質を有するが、相変化型蓄熱物質が溶融した際に隣接する蓄熱粒子が混合してしまうことを抑制するために、蓄熱粒子は包摂材で包まれていてもよい。例えば、蓄熱粒子は、包摂材の内部に分散した状態で保持されていてもよい。その際には、粒子径D50が異なる2種類以上の蓄熱粒子が、1つの包摂材の内部に分散していてもよい。あるいは、蓄熱粒子の種類ごとに、異なる包摂材の内部に分散していてもよい。すなわち、一の種類の蓄熱粒子が一の種類の包摂材の内部に分散しており、別の種類の蓄熱粒子は別の種類の包摂材の内部に分散していてもよい。
【0022】
包摂材の材質は、蓄熱粒子を分散した状態で保持することが可能であれば特に限定されるものではないが、無機化合物が使用可能である。包摂材は、1種類の無機化合物で形成されていてもよいし、複数種の無機化合物で形成されていてもよい。
無機化合物の例としては、炭化ケイ素(SiC)、無機酸化物、無機窒化物、金属塩等が挙げられる。無機酸化物の具体例としては、アルミナ(Al2O3)、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)等の金属酸化物が挙げられる。アルミナは、α-アルミナの含有率が高い方が好ましい。α-アルミナは熱伝導率が高いので、包摂材中のα-アルミナの含有率が高いほど熱の伝達が効率良く行われ、蓄熱及び放熱を短時間で行うことが可能である。
【0023】
また、相変化型蓄熱物質が金属単体又は合金である場合は、金属単体又は合金で形成された蓄熱粒子が、金属の酸化物で形成された被膜で覆われていてもよい。このような構成であれば、金属の酸化物で形成された被膜が上記の包摂材と同様の作用を奏することとなるので、相変化型蓄熱物質が溶融した際に隣接する蓄熱粒子が混合してしまうことが抑制される。
【0024】
(3)蓄熱体の使用方法について
本実施形態に係る蓄熱体を使用する方法は特に限定されるものではないが、例えば下記の方法によって使用することができる。本実施形態に係る蓄熱体の使用方法の一例を説明する。
【0025】
本実施形態に係る蓄熱体を加熱して、蓄熱粒子を形成する相変化型蓄熱物質の融点以上の温度に昇温する。このとき、蓄熱粒子が融解するので、吸熱が起こる(すなわち、蓄熱体が蓄熱する)。次に、加熱された本実施形態に係る蓄熱体を冷却して、蓄熱粒子を形成する相変化型蓄熱物質の融点以下の温度に降温する。このとき、融解している蓄熱粒子が凝固するので、発熱が起こる(すなわち、蓄熱体が放熱する)。
【0026】
次に、本実施形態に係る蓄熱体を、自動車の排ガスを浄化するための触媒の温度低下の抑制に利用する場合を例に、その使用方法をより具体的に説明する。
自動車に搭載されている触媒の近傍に、本実施形態に係る蓄熱体又は上記加熱装置を設置する。自動車のエンジンを稼働させると、触媒の温度が上昇すると共に蓄熱体の温度も上昇する。このとき、蓄熱粒子が融解し、蓄熱体が蓄熱する。次に、自動車のエンジンを停止させると、触媒及び蓄熱体の温度は低下するが(エンジン停止時の触媒及び蓄熱体の温度の低下速度は、例えば5℃/min以上100℃/min以下である)、蓄熱粒子が凝固する際に、蓄熱体が放熱する。この放熱によって触媒の温度低下が抑制され、電気エネルギーを使用することなく、触媒の温度を触媒が活性化する温度に保持することができる。
【実施例0027】
以下に実施例及び比較例を示して、本発明をより具体的に説明する。
〔実施例1〕
ヒカリ素材工業株式会社製のアルミニウムケイ素合金の球状粉末Al-12Siを分級して、粒径58μm以下の粒子からなる粉末を得た。そして、この分級した粉末を、目開き38μmの篩を用いてさらに分級し、篩上に残った粉末と、篩を通過した粉末とに分けた。
【0028】
粒子径D50をレーザー回折式の粒度分布装置で測定した結果、篩上に残った粉末の粒子径D50は59μmであり、篩を通過した粉末の粒子径D50は31μmであった。
なお、この球状粉末Al-12Siは、アトマイズ法によって製造された粉末である。また、上記アルミニウムケイ素合金の合金組成比は、アルミニウム88質量%、ケイ素12質量%である。
【0029】
同質量の「篩上に残った粉末(粒子径D50は59μm)」と「篩を通過した粉末(粒子径D50は31μm)」とを秤取り混合して、混合粉末を得た。そして、この混合粉末5mgを試料として、示差熱分析を行った。示差熱分析は、流速100mL/分の空気気流下で行い、600℃に昇温して30分間保持した後に、10℃/分の降温速度で降温させながら、電圧変化を測定した。結果を
図1に示す。このD1/D2は、1.903である。
【0030】
〔比較例1〕
実施例1において使用した「篩を通過した粉末(粒子径D50は31μm)」を試料として、示差熱分析を行った。示差熱分析の条件は、実施例1と同じである。結果を
図1に示す。
【0031】
〔比較例2〕
実施例1において使用した「篩上に残った粉末(粒子径D50は59μm)」を試料として、示差熱分析を行った。示差熱分析の条件は、実施例1と同じである。結果を
図1に示す。
【0032】
〔比較例3〕
ヒカリ素材工業株式会社製の亜鉛アルミニウム合金の球状粉末Zn-10Alを用意した。粒子径D50を粒度分布装置で測定した結果、31μmであった。なお、この球状粉末Zn-10Alは、アトマイズ法によって製造された粉末である。また、上記亜鉛アルミニウム合金の合金組成比は、亜鉛90質量%、アルミニウム10質量%である。
【0033】
亜鉛アルミニウム合金の球状粉末Zn-10Alと、実施例1において使用した「篩を通過した粉末(粒子径D50は31μm)」とを、同質量秤取り混合して、混合粉末を得た。そして、この混合粉末5mgを試料として、示差熱分析を行った。示差熱分析の条件は、実施例1と同じである。結果を
図2に示す。
【0034】
図1から、実施例1の蓄熱体が放熱している時間の長さは、1.8分間であることが分かる。同様に、比較例1の蓄熱体が放熱している時間の長さは、0.9分間であり、比較例2の場合は0.3分間である。このように、実施例1の蓄熱体は、比較例1、2の蓄熱体よりも長い時間連続して放熱を行うことが可能であった。すなわち、実施例1の蓄熱体は、比較例1、2の蓄熱体よりも広い温度域において連続して放熱を行うことが可能であった。
【0035】
よって、実施例1の蓄熱体は、比較例1、2の蓄熱体よりも広い温度域において被加熱物の温度低下を抑制することが可能であるので、より広い温度域において被加熱物の温度を維持することが可能である。なお、示差熱分析において測定された電圧変化が5μV以上であった時間の長さを、蓄熱体が放熱している時間の長さとした。
【0036】
また、
図2から、比較例3の蓄熱体は2つの温度域で放熱を行うが、連続して放熱を行うことができず、比較例3の蓄熱体が放熱している時間の長さは、0.9分間と0.5分間であることが分かる。2つの放熱の間に放熱がない時間(温度域)が存在するので、被加熱物の温度低下を十分に抑制することができないと考えられる。
【0037】
なお、実施例1の蓄熱体において生じた2つの放熱のうち低温側の放熱が生じた温度域と、比較例2の蓄熱体において放熱が生じた温度域とを比べると、同じ蓄熱粒子による放熱であるにもかかわらず温度域が異なり、実施例1の蓄熱体はより低温で放熱している。これは、実施例1の蓄熱体において生じた2つの放熱のうち高温側の放熱が生じたことにより、低温側の放熱を生じさせる蓄熱粒子が加熱されるため、放熱が生じる温度域に冷却されるのが遅れたためと考えられる。
【0038】
また、実施例1の蓄熱体と比較例1の蓄熱体とで、放熱している時間の長さを同じにするためには、比較例1の蓄熱体を、実施例1の蓄熱体の2倍量使用する必要がある。よって、実施例1の蓄熱体は、比較例1の蓄熱体の50%の量で、被加熱物の温度低下を抑制することが可能であるので、コストを50%低減することができる。
【0039】
〔実施例2〕
ヒカリ素材工業株式会社製のアルミニウムケイ素合金の球状粉末Al-12Siを、篩を用いて分級し、篩上に残った粉末と、篩を通過した粉末とに分けた。粒子径D50をレーザー回折式の粒度分布装置で測定した結果、篩上に残った粉末の粒子径D50は31μmであり、篩を通過した粉末の粒子径D50は20μmであった。
【0040】
同質量の「篩上に残った粉末(粒子径D50は31μm)」と「篩を通過した粉末(粒子径D50は20μm)」とを秤取り混合して、混合粉末を得た。そして、この混合粉末5mgを試料として、示差熱分析を行った。示差熱分析の条件は、実施例1と同じである。このD1/D2は、1.55である。また、前述の定義により、実施例2の蓄熱体の放熱時間は1.0分間であった。
【0041】
〔比較例4〕
実施例2において使用した「篩を通過した粉末(粒子径D50は31μm)」を試料として、示差熱分析を行った。示差熱分析の条件は、実施例1と同じである。前述の定義により、比較例4の蓄熱体の放熱時間は0.3分間であった。
【0042】
〔比較例5〕
実施例2において使用した「篩を通過した粉末(粒子径D50は20μm)」を試料として、示差熱分析を行った。示差熱分析の条件は、実施例1と同じである。前述の定義により、比較例5の蓄熱体の放熱時間は0.2分間であった。
【0043】
実施例1の蓄熱体が放熱している時間の長さは、1.8分間であることが分かる。同様に、比較例1の蓄熱体が放熱している時間の長さは、0.9分間であり、比較例2の場合は0.3分間である。このように、実施例1の蓄熱体は、比較例1、2の蓄熱体よりも長い時間連続して放熱を行うことが可能であった。すなわち、実施例1の蓄熱体は、比較例1、2の蓄熱体よりも広い温度域において連続して放熱を行うことが可能であった。
【0044】
実施例2の蓄熱体が放熱している時間の長さは、1.0分間である。同様に、比較例4の蓄熱体が放熱している時間の長さは、0.3分間であり、比較例5の場合は0.2分間である。このように、実施例2の蓄熱体は、比較例4、5の蓄熱体よりも長い時間連続して放熱を行うことが可能であった。すなわち、実施例2の蓄熱体は、比較例4、5の蓄熱体よりも広い温度域において連続して放熱を行うことが可能であった。