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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001771
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】害虫忌避組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 55/10 20060101AFI20241226BHJP
   A01P 17/00 20060101ALI20241226BHJP
   A01N 61/00 20060101ALI20241226BHJP
   A01N 25/04 20060101ALI20241226BHJP
   A01M 29/34 20110101ALI20241226BHJP
【FI】
A01N55/10 500
A01P17/00
A01N61/00 D
A01N25/04 103
A01M29/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101430
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 要
(72)【発明者】
【氏名】藤井 亮介
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 浩之
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーデマン ビアンカ モニカ
【テーマコード(参考)】
2B121
4H011
【Fターム(参考)】
2B121AA12
2B121CC21
2B121CC35
2B121FA13
4H011AC06
4H011BB16
4H011BB19
4H011DA17
4H011DH07
(57)【要約】
【課題】害虫に対する忌避持続効果が向上した害虫忌避組成物及び害虫の忌避方法を提供する。
【解決手段】〔1〕シリコーン化合物(A)を含む害虫忌避組成物であって、レオメータを用いた方法による、せん断速度10-1-1におけるせん断粘度ηLowに対するせん断速度10-1におけるせん断粘度ηHighの比(ηHigh/ηLow)が0.9以下であり、前記せん断粘度ηHighが450mPa・s以下であり、前記せん断粘度ηLowが150mPa・s以上である、害虫忌避組成物、及び、〔2〕前記〔1〕に記載の害虫忌避組成物を皮膚表面に塗布する工程を含む、害虫の忌避方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン化合物(A)を含む害虫忌避組成物であって、
レオメータを用いた下記方法1による、せん断速度10-1-1におけるせん断粘度ηLowに対するせん断速度10-1におけるせん断粘度ηHighの比(ηHigh/ηLow)が0.9以下であり、前記せん断粘度ηHighが450mPa・s以下であり、前記せん断粘度ηLowが150mPa・s以上である、害虫忌避組成物。
(方法1)
コーンプレート(直径50mm、角度0.1rad)を用いて、25℃、せん断速度範囲:10-3~10-1、プレート間距離:1mmの条件でせん断粘度(mPa・s)を測定する
【請求項2】
前記シリコーン化合物(A)が変性シリコーン(A1)を含む、請求項1に記載の害虫忌避組成物。
【請求項3】
前記変性シリコーン(A1)が、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、シリコーン変性多糖類、アミノ変性シリコーン及びカルボキシ変性シリコーンからなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項2に記載の害虫忌避組成物。
【請求項4】
前記変性シリコーン(A1)が、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)変性シリコーン及びポリエーテル変性シリコーンからなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項2に記載の害虫忌避組成物。
【請求項5】
前記シリコーン化合物(A)が、未変性シリコーン(A2)を含む、請求項1~4のいずれかに記載の害虫忌避組成物。
【請求項6】
前記未変性シリコーン(A2)中の不揮発性シリコーンの含有量が65質量%以上である、請求項5に記載の害虫忌避組成物。
【請求項7】
前記未変性シリコーン(A2)がジメチルポリシロキサンを含む、請求項5又は6に記載の害虫忌避組成物。
【請求項8】
揮発性成分の含有量が30質量%以下である、請求項1~7のいずれかに記載の害虫忌避組成物。
【請求項9】
皮膜形成性ポリマー(ただし、前記シリコーン化合物(A)に該当するものを除く)の含有量が0.5質量%未満である、請求項1~8のいずれかに記載の害虫忌避組成物。
【請求項10】
前記害虫が飛翔害虫である、請求項1~9のいずれかに記載の害虫忌避組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の害虫忌避組成物を皮膚表面に塗布する工程を含む、害虫の忌避方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫忌避組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
害虫、例えば、蚊、ハエ等の飛翔害虫は、人等の動物に病原体を媒介して感染症を引き起こしたり、皮膚炎を引き起こしたりする要因となっている。特に、一部の蚊は、デング熱、ジカ熱、黄熱病、脳炎、マラリア等の病原体を媒介することから、衛生学的に非常に有害な昆虫である。
従来、このような飛翔害虫から身を守るために、殺虫剤を散布する方法や皮膚表面に忌避剤を塗布する方法が汎用されており、代表的な忌避剤として、DEET(N,N-ジエチルトルアミド)が一般的に使用されている。
【0003】
蚊等の害虫は、動物の体温を感知する温熱受容体、体臭等の揮発性物質を感知する嗅覚受容体、二酸化炭素を感知する二酸化炭素受容体等の化学受容システムを保有しており、これにより動物を探知するが、DEETは、かかる害虫が有する化学受容システムに変調を与えて害虫の認知感覚を無力化することにより、害虫を忌避する。
しかし、DEETには不快臭があり、また、十分な忌避持続効果を発揮するためには一定量以上の配合が必要となる。更に、人によってはアレルギーや肌荒れを引き起こすことが知られており、幼児や皮膚の敏感な人に対しては使用量や使用回数が制限されるという問題がある。
【0004】
そこで、忌避成分として天然精油の利用が検討されている。シトロネラ油、レモンユーカリ油、レモングラス油、オレンジ油、カシア油等の天然精油はキャンドルやアロマローションにも使用されており、人体への安全性は高い。しかし、それらの害虫に対する忌避効果は十分ではなく、その実用性に問題がある。
【0005】
その他、従来から、害虫用の忌避剤や忌避組成物については、種々の提案がなされている。
特許文献1には、25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による23℃における粘度が400mPa・s以下である、シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールからなる群から選ばれる1種以上の不揮発性液状油性成分40質量%以上99.5質量%以下及び皮膜形成性ポリマー0.5質量%以上15質量%以下を含有する、害虫忌避組成物が記載されている。
【0006】
特許文献2には、フッ素・ポリエーテル共変性シリコーンと昆虫忌避成分を配合してなる皮膚保護剤が記載されている。
特許文献3には、特定の式で示される側鎖を有する1種以上のシリコーン誘導体と油性成分と水とを含有するエマルジョンが記載されている。
【0007】
特許文献4には、(a)脱臭活性材料、消臭活性材料、発汗抑制活性材料、日焼け止め材料、防虫若しくは駆虫剤及び抗菌剤から選択でき、機能的効果を発揮するのに十分な量の活性化粧用材料、及び、(b)固形化粧用組成物を提供するのに十分な量で化粧用組成物中に含まれるオルガノポリシロキサン材料及びオルガノポリシロキサン材料がゲル形成できる量で化粧用組成物中に含まれる揮発性シリコン材料を含み、前記活性化粧用材料を有するシリコンゲル材料、を含む化粧用組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2020-109078号公報
【特許文献2】特開平8-59447号公報
【特許文献3】特開2014-73971号公報
【特許文献4】特表2000-511184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
害虫忌避剤のうち、皮膚に施用されるものについては、初期の害虫忌避効果のみならず忌避効果の持続性に優れることが望まれる。
本発明は、害虫に対する忌避持続効果が向上した害虫忌避組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の〔1〕及び〔2〕に関する。
〔1〕シリコーン化合物(A)を含む害虫忌避組成物であって、
レオメータを用いた下記方法1による、せん断速度10-1-1におけるせん断粘度ηLowに対するせん断速度10-1におけるせん断粘度ηHighの比(ηHigh/ηLow)が0.9以下であり、前記せん断粘度ηHighが450mPa・s以下であり、前記せん断粘度ηLowが150mPa・s以上である、害虫忌避組成物。
(方法1)
コーンプレート(直径50mm、角度0.1rad)を用いて、25℃、せん断速度範囲:10-3~10-1、プレート間距離:1mmの条件でせん断粘度(mPa・s)を測定する
〔2〕前記〔1〕に記載の害虫忌避組成物を皮膚表面に塗布する工程を含む、害虫の忌避方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、害虫に対する忌避持続効果が向上した害虫忌避組成物及び害虫の忌避方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[害虫忌避組成物]
本発明の害虫忌避組成物(以下、「本発明の組成物」ともいう)は、シリコーン化合物(A)(以下、「成分(A)」ともいう)を含む害虫忌避組成物であって、レオメータを用いた下記方法1による、せん断速度10-1-1におけるせん断粘度ηLowに対するせん断速度10-1におけるせん断粘度ηHighの比(ηHigh/ηLow)が0.9以下であり、せん断粘度ηHighが450mPa・s以下であり、せん断粘度ηLowが150mPa・s以上である。
(方法1)
コーンプレート(直径50mm、角度0.1rad)を用いて、25℃、せん断速度範囲:10-3~10-1、プレート間距離:1mmの条件でせん断粘度(mPa・s)を測定する。
【0013】
本発明の組成物は、害虫、特に飛翔害虫に対する忌避持続効果が向上した組成物である。本発明の組成物は特に制限はないが、皮膚に対して塗布して用いることがより効果的である。
【0014】
本発明において「害虫に対する忌避効果」には、害虫が対象物へ接触しても停留せずに直ぐに離れていくこと(停留抑制効果)が含まれ、害虫を対象物へ寄せ付けないこと及び害虫を駆除することの1つ以上がさらに含まれてもよい。
本発明において「害虫に対する忌避持続効果」とは、本発明の組成物を対象物に塗布後、時間が経過しても上記忌避効果が持続することを意味する。
なお、本実施形態において、「害虫に対する忌避効果」を単に「忌避効果」とも表記し、害虫に対する忌避持続効果を単に「忌避持続効果」とも表記する。
【0015】
本発明の組成物において、害虫、特に飛翔害虫に対する忌避持続効果が向上した理由は定かではないが、以下のように考えられる。
まず、害虫は、肢に濡れが生じた際に、降着面から生じる引力を避けるため、肢が濡れる表面への停留を避ける性質を有する。蚊等の虫の肢は疎水性であるため、シリコーン化合物を含む組成物と害虫の肢との親和性が高く、肢に濡れが生じ、その際、降着面から生じる引力を避け、降着地点に停留せずに飛び去ると考えられる。
ここで、高せん断領域での害虫忌避組成物の粘度が低いほど、害虫と害虫忌避組成物との接触時に、短時間で肢との接触面積が十分に大きくなり、降着しないか又は降着しても直ぐに、例えば1秒間以内に飛び去ると考えられる。すなわち、害虫忌避組成物の前記せん断粘度ηHighが低いほど、害虫に対する忌避効果を向上できると考えられる。
また、シリコーン化合物を含む組成物は一般的に皮膚との親和性が高く、短時間で組成物が皮膚上に濡れ広がるため、忌避持続効果が落ちやすいと考えられる。しかし、低せん断領域での害虫忌避組成物の粘度が高いと、皮膚上での組成物の移動を抑制できるため、害虫忌避組成物の前記せん断粘度ηLowが高いほど、害虫忌避組成物の皮膚上での濡れ広がりを防止できると考えられる。
以上から、ηHigh/ηLow、せん断粘度ηHigh及びせん断粘度ηLowを上記範囲内に設定することによって、害虫に対する忌避効果を良好に保ちながら、害虫忌避組成物の皮膚上での濡れ広がりを防止できるため、害虫に対する忌避持続効果が向上したと考えられる。
【0016】
本発明の組成物において、前記ηHigh/ηLowは0.9以下であるが、忌避効果及び忌避持続効果をより向上させる観点から、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.7以下、更に好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.55以下、更に好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.45以下、更に好ましくは0.35以下、更に好ましくは0.25以下であり、同様の観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上、更に好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.08以上、更に好ましくは0.10以上である。
【0017】
本発明の組成物において、前記せん断粘度ηHighは450mPa・s以下であるが、皮膚に塗布した際の漏れ広がりにくさを向上させる観点、並びに、忌避効果及び忌避持続効果をより向上させる観点から、好ましくは430mPa・s以下、より好ましくは400mPa・s以下、更に好ましくは390mPa・s以下、更に好ましくは370mPa・s以下、更に好ましくは345mPa・s以下、更に好ましくは320mPa・s以下、更に好ましくは295mPa・s以下、更に好ましくは280mPa・s以下、更に好ましくは250mPa・s以下、更に好ましくは150mPa・s以下であり、同様の観点から、好ましくは50mPa・s以上、より好ましくは80mPa・s以上、更に好ましくは100mPa・s以上である。
【0018】
本発明の組成物において、前記せん断粘度ηLowは150mPa・s以上であるが、皮膚に塗布した際の漏れ広がりにくさを向上させる観点、並びに、忌避効果及び忌避持続効果をより向上させる観点から、好ましくは250mPa・s以上、より好ましくは350mPa・s以上、更に好ましくは450mPa・s以上、更に好ましくは480mPa・s以上、更に好ましくは500mPa・s以上、更に好ましくは515mPa・s以上、更に好ましくは540mPa・s以上、更に好ましくは580mPa・s以上、更に好ましくは620mPa・s以上、更に好ましくは680mPa・s以上、更に好ましくは750mPa・s以上、更に好ましくは850mPa・s以上、更に好ましくは950mPa・s以上、更に好ましくは1050mPa・s以上であり、同様の観点から、好ましくは5000mPa・s以下、より好ましくは3000mPa・s以下、更に好ましくは2000mPa・s以下、更に好ましくは1500mPa・s以下、更に好ましくは1300mPa・s以下、更に好ましくは1200mPa・s以下である。
【0019】
<成分(A):シリコーン化合物>
本発明の組成物は、成分(A)として、忌避効果及び忌避持続効果をより向上させる観点、並びに、ηHigh/ηLowを適切な範囲に調整する観点から、好ましくは変性シリコーン(A1)(以下、「成分(A1)」ともいう)を含有する。
変性シリコーン(A1)としては、忌避効果及び忌避持続効果をより向上させる観点から、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、シリコーン変性多糖類、アミノ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、アミノ誘導体シリコーン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、脂肪族アルコール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、及びアルキル変性シリコーンからなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、シリコーン変性多糖類、アミノ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン及びグリセリン変性シリコーンからなる群から選択される少なくとも一種を含むことがより好ましく、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、シリコーン変性多糖類、アミノ変性シリコーン及びカルボキシ変性シリコーンからなる群から選択される少なくとも一種を含むことが更に好ましく、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)変性シリコーン及びポリエーテル変性シリコーンからなる群から選択される少なくとも一種を含むことが更に好ましく、皮膚に塗布した際の漏れ広がりにくさを向上させる観点、並びに、忌避効果及び忌避持続効果をより向上させる観点から、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)変性シリコーンを含むことが更に好ましい。
さらに、変性シリコーン(A1)としては、皮膚に塗布した際の漏れ広がりにくさを向上させる観点、並びに、忌避効果及び忌避持続効果をより向上させる観点から、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)変性シリコーン及びポリエーテル変性シリコーンの両方を含むことが好ましい。
これらの変性シリコーン(A1)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
本発明の成分(A1)中のポリ(N-アシルアルキレンイミン)変性シリコーンの含有量は、忌避効果及び忌避持続効果をより向上させる観点、並びに、ηHigh/ηLowを適切な範囲に調整する観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは12質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、同様の観点から、好ましくは100質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
【0021】
〔ポリ(N-アシルアルキレンイミン)変性シリコーン〕
ポリ(N-アシルアルキレンイミン)変性シリコーンは、具体的には、主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントのケイ素原子の少なくとも2つに、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して、下記一般式(1)で表される繰り返し単位からなるポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントが結合してなるオルガノポリシロキサンである。
【0022】
【化1】

〔式中、Rは水素原子、炭素数1以上22以下のアルキル基、炭素数7以上22以下のアラルキル基、又は炭素数6以上22以下のアリール基を示し、nは2又は3を示す。〕
【0023】
ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントは、オルガノポリシロキサンセグメントを構成する任意のケイ素原子に、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して少なくとも2つ結合することが可能であるが、両末端を除く1以上のケイ素原子に上記アルキレン基を介して結合していることが好ましく、両末端を除く2以上のケイ素原子に上記アルキレン基を介して結合していることがより好ましい。
オルガノポリシロキサンセグメントとポリ(N-アシルアルキレンイミン)との結合において介在するヘテロ原子を含むアルキレン基としては、窒素原子、酸素原子及び/又はイオウ原子を1~3個含む、炭素数2以上20以下のアルキレン基が挙げられる。その具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0024】
【化2】
【0025】
ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントを構成するN-アシルアルキレンイミン単位は前記一般式(1)で表されるものである。
前記一般式(1)のRにおける、炭素数1以上22以下のアルキル基としては、例えば、炭素数1以上22以下の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が例示され、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ドコシル基等が例示される。これらの中でも、好ましくは炭素数1以上10以下、より好ましくは炭素数1以上6以下、更に好ましくは炭素数1以上4以下のアルキル基である。
【0026】
前記一般式(1)のRにおける、炭素数7以上22以下のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、トリチル基、ナフチルメチル基、アントラセニルメチル基等が例示される。これらの中でも、好ましくは炭素数7以上14以下、より好ましくは炭素数7以上10以下のアラルキル基である。
【0027】
前記一般式(1)のRにおける、炭素数6以上22以下のアリール基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基、フェナントリル基等が例示される。これらの中でも、好ましくは炭素数6以上12以下、より好ましくは炭素数6以上9以下のアリール基である。
【0028】
は、好ましくは炭素数1以上22以下、より好ましくは炭素数1以上10以下、更に好ましくは炭素数1以上6以下、更に好ましくは炭素数1以上4以下のアルキル基である。
【0029】
好ましいポリ(N-アシルアルキレンイミン)変性シリコーンしては、例えば、ポリ(N-ホルミルエチレンイミン)オルガノシロキサン、ポリ(N-アセチルエチレンイミン)オルガノシロキサン、及びポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)オルガノシロキサン等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を用いることができる。
上記の中でも、忌避効果及び忌避持続効果をより向上させる観点から、ポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)オルガノシロキサンが好ましい。
【0030】
〔シリコーン変性多糖類〕
シリコーン変性多糖類としては、例えば、側鎖にシリコーン構造を有するプルランが挙げられ、具体的には、忌避持続効果をより向上させる観点から、プルラン中のOH基の水素原子の少なくとも一部が下記一般式(4)で表される基で置換されたシリコーン変性プルランが好ましい。
【0031】
【化3】

式中、Zは単結合又は2価の有機基である。R22はそれぞれ独立に炭素数1以上12以下のアルキル基であり、Xは下記式(i)で表される基である。aは1以上3以下の整数である。組成物の忌避効果及び忌避持続効果を向上させる観点からは、R22はメチル基、エチル基、n-プロピル基、ブチル基、又はペンチル基が好ましく、組成物を皮膚に塗布した際の漏れ広がりにくさを向上させる観点からはメチル基がより好ましい。汎用性の観点から、Xは好ましくはトリメチルシロキシ基、aは好ましくは3である。
【0032】
【化4】

式中、R21はそれぞれ独立に炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、組成物を皮膚に塗布した際の漏れ広がりにくさを向上させる観点、並びに、忌避効果及び忌避持続効果を向上させる観点から、好ましくは炭素数1以上12以下のアルキル基又は炭素数6以上12以下のアリール基であり、より好ましくは炭素数1以上12以下のアルキル基又はフェニル基、更に好ましくは炭素数1以上3以下のアルキル基、更に好ましくはメチル基である。dは1以上5以下の整数であり、汎用性の観点から、d=1が好ましい。
【0033】
一般式(4)において、忌避効果及び忌避持続効果を向上させる観点から、Zは2価の有機基であることが好ましく、下記一般式(5)又は(6)で表される2価の基がより好ましく、下記一般式(6)で表される2価の基がより好ましい。
【0034】
【化5】

式中、R31は炭素数1以上10以下のアルキレン基であり、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が例示される。忌避効果及び忌避持続効果を向上させる観点から、これらの中でもエチレン基、トリメチレン基、プロピレン基が好ましく、トリメチレン基又はプロピレン基がより好ましい。
【0035】
市販のシリコーン変性プルランとしては、例えば、信越化学工業株式会社の「TSPL-30-ID」(トリ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルカルバミド酸プルランのイソドデカン溶液)、「TSPL-30-D5」(トリ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルカルバミド酸プルランのシクロペンタシロキサン溶液)等が挙げられる。
【0036】
本発明の成分(A)中の成分(A1)の含有量は、忌避効果及び忌避持続効果をより向上させる観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、更に好ましくは4質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、更に好ましくは6質量%以上であり、忌避効果及び忌避持続効果をより向上させる観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、更に好ましくは12質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0037】
本発明の組成物は、成分(A)として、忌避効果及び忌避持続効果をより向上させる観点、並びに、ηHigh/ηLowを適切な範囲に調整する観点から、好ましくは未変性シリコーン(A2)(以下、「成分(A2)」ともいう)を含有し、より好ましくは成分(A1)及び成分(A2)の両方を含有する。
未変性シリコーン(A2)としては、忌避効果及び忌避持続効果をより向上させる観点から、ジメチルポリシロキサンを含むことが好ましく、直鎖状ジメチルポリシロキサン及び環状ジメチルポリシロキサンから選択される少なくとも一種を含むことがより好ましく、直鎖状ジメチルポリシロキサンを含むことが更に好ましい。
直鎖状ジメチルポリシロキサンとしては、忌避効果及び忌避持続効果をより向上させる観点から、25℃における粘度は、好ましくは1cSt以上、より好ましくは3cSt以上、更に好ましくは5cSt以上であり、忌避効果及び忌避持続効果をより向上させる観点から、好ましくは60cSt以下、より好ましくは40cSt以下、更に好ましくは20cSt以下、より更に好ましくは10cSt以下である。
また、直鎖状ジメチルポリシロキサンの市販品例としては、信越化学工業株式会社のKF-96シリーズ、ダウ・東レ株式会社のSH200Cシリーズ、「2-1184 Fluid」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社の「Silsoft DML」、「Element14 PDMS 5-JC」、「Element14 PDMS 10-JC」、「Element14 PDMS 20-JC」等が挙げられる。
これらの未変性シリコーン(A2)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
本発明の組成物において、忌避効果及び忌避持続効果をより向上させる観点から、未変性シリコーン(A2)中の不揮発性シリコーンの含有量は、好ましくは65質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは85質量%以上、更に好ましくは88質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。未変性シリコーン(A2)中の不揮発性シリコーンの含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは100質量%以下である。
ここで、不揮発性シリコーンとは、例えば、常温(25℃)、常圧下で10Pa未満の蒸気圧を有するシリコーン化合物をいう。
【0039】
本発明の成分(A)中の成分(A2)の含有量は、忌避効果及び忌避持続効果をより向上させる観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは85質量%以上、更に好ましくは88質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、忌避効果及び忌避持続効果をより向上させる観点から、好ましくは99.5質量%以下、より好ましくは99質量%以下、更に好ましくは98質量%以下、更に好ましくは97質量%以下、更に好ましくは96質量%以下、更に好ましくは95質量%以下、更に好ましくは94質量%以下である。
【0040】
本発明の成分(A)中の成分(A1)と成分(A2)との質量比[(A1)/(A2)]は、組成物を皮膚に塗布した際の漏れ広がりにくさを向上させる観点、並びに、忌避効果及び忌避持続効果をより向上させる観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、更に好ましくは0.03以上、更に好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.06以上、更に好ましくは0.07以上であり、同様の観点から、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.2以下、更に好ましくは0.15以下、更に好ましくは0.1以下である。
【0041】
本発明の組成物中の成分(A)の含有量は、忌避効果及び忌避持続効果をより向上させる観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、忌避効果及び忌避持続効果をより向上させる観点から、好ましくは100質量%以下である。
【0042】
本発明の組成物中の成分(A1)の含有量は、忌避効果及び忌避持続効果をより向上させる観点から、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、更に好ましくは4.0質量%以上、更に好ましくは6.0質量%以上、更に好ましくは7.5質量%以上、更に好ましくは8.0質量%以上、更に好ましくは8.45質量%以上であり、忌避効果及び忌避持続効果をより向上させる観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは13.5質量%以下、更に好ましくは13.0質量%以下である。
【0043】
本発明の組成物中の揮発性成分の含有量は、忌避効果及び忌避持続効果をより向上させる観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、更に好ましくは実質0質量%である。
ここで、揮発性成分とは、例えば、常温(25℃)、常圧下で10Pa以上の蒸気圧を有する化合物をいい、例えば、水、低級アルコール、揮発性炭化水素油、揮発性エステル油、揮発性シリコーン化合物等が挙げられる。
【0044】
本発明の組成物は、べたつき感をより抑制する観点から、皮膜形成性ポリマーの含有量が少ない方が好ましい。
本発明の組成物中の皮膜形成性ポリマー(ただし、シリコーン化合物(A)に該当するものを除く)の含有量としては、好ましくは0.5質量%未満であり、より好ましくは0.1質量%未満、更に好ましくは0.07質量%以下、更に好ましくは0.05質量%以下、更に好ましくは0.01質量%以下である。
皮膜形成性ポリマーとしては、例えば、シリコーン構造含有ポリマー、ビニル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、多糖類系ポリマー等が挙げられる。このような皮膜形成性ポリマーとしては、例えば、特開2020-109078号公報の段落0038~0064に記載のポリマーのうち、前記シリコーン化合物(A)に該当するポリマー以外のポリマーが挙げられる。
【0045】
<成分(C):シリコーン化合物(A)以外の不揮発性液状油性成分>
本発明の組成物は、成分(C)として、シリコーン化合物(A)以外の不揮発性液状油性成分を含有してもよいが、本発明の組成物中の成分(C)の含有量は、組成物を皮膚に塗布した際の漏れ広がりにくさを向上させる観点、並びに、忌避効果及び忌避持続効果をより向上させる観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは12質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。シリコーン化合物(A)以外の不揮発性液状油性成分としては、例えば、特開2020-109078号公報の段落0023~0035に記載されたエステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、多価アルコール等が挙げられる。
【0046】
<その他の成分>
本発明の組成物は、発明の効果を損なわない範囲で、前記以外の成分、例えば、溶媒、増粘剤、界面活性剤、防腐剤、着色剤、保湿剤、香料、pH調整剤等を適宜含有することができる。また、ビタミン類、血行促進剤、活性酸素消去剤、抗炎症剤、美白剤、殺菌剤等の薬効成分や生理活性成分を含有することもできる。なお、例えば香料を殺菌剤として用いる等、他の用途としても用いることができる。
【0047】
本発明の組成物は、害虫忌避に対して、成分(A)を忌避成分として含有し、それ以外の害虫忌避剤を有効量含まないことが、使用者のアレルギーや肌荒れを防止するといった観点から好ましい。
【0048】
ここで、成分(A)以外の害虫忌避剤を「有効量含まない」とは、一般的には、成分(A)以外の既存の害虫忌避剤の含有量が、本発明の組成物中、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、更に好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下であることを意味する。
既存の害虫忌避剤の有効量は、例えば、各忌避剤製品の製造会社等により公表されている最小有効量等を参考にすることができる。
より具体的には、後述する既存の害虫忌避剤であるDEET:N,N-ジエチルトルアミドの有効量は4質量%以上、好ましくは10質量%以上であり、イカリジン:1-メチルプロピル-2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートの有効量は4質量%以上、IR3535:3-(アセチルブチル)アミノプロピオン酸エチルエステルの有効量は4質量%以上、シトロネラ油の有効量は10質量%以上である。
【0049】
なお、本発明の組成物は、既存の害虫忌避剤を有効量含まなくても忌避効果及び忌避持続効果を有することから、むしろ、成分(A)以外の害虫忌避剤を実質的に含有しないことが好ましい。本発明の組成物中の成分(A)以外の害虫忌避剤の含有量は、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.01質量%以下、更により好ましくは実質0質量%である。
【0050】
成分(A)以外の既存の害虫忌避剤としては、DEET、イカリジン、ジメチルフタレート、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、p-メンタン-3,8-ジオール、カラン-3,4-ジオール、ジ-n-ブチルサクシネート、ヒドロキシアニソール、ロテノン、3-(アセチルブチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、シトロネロール、ユーカリプトール、α-ピネン、ゲラニオール、シトロネラール、カンファー、リナロール、2-ウンデカノン等の公知の害虫忌避化合物の他、シトロネラ油、レモングラス油等の忌避精油等が挙げられる。「忌避精油」とは、植物に含まれる成分を抽出、蒸留、又は圧搾等により得られる精油(エッセンシャルオイル)のうち害虫忌避効果を有するものを意味する。
【0051】
本発明の組成物は、有機粉体、無機粉体等の粉体を含有してもよい。粉体の含有量は、害虫忌避効果の観点から、好ましくは30質量%未満、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、より更に好ましくは15質量%以下である。また、10質量%以下、5質量%以下であってよい。
【0052】
本発明の組成物は、常法により製造できる。例えば、成分(A)及び必要に応じその他の成分を配合し、公知の装置を用いて撹拌することにより製造することができる。
【0053】
本発明の組成物が忌避対象とする害虫に特に制限はないが、飛翔害虫に対してより効果的である。
「飛翔害虫」とは、飛行しながら人等の動物に近づき、その皮膚から吸血する害虫、吸血はしなくても飛翔しながら病原細菌等を媒介する害虫、飛行すること自体が人間に対し不快感を与える害虫等をいう。
飛翔害虫の具体例としては、アカイエカ、コガタアカイエカ、チカイエカ、ネッタイイエカ等のイエカ、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ、シナハマダラカ、トウゴウヤブカ、ガンビエハマダラカ、ステフェンスハマダラカ等の蚊;セスジユスリカ、アカムシユスリカ等のユスリカ;クロオオブユ、キアシオオブユ、アオキツメトゲブユ等のブユ;イエバエ、オオイエバエ、ヒメイエバエ、クロバエ、ニクバエ、タネバエ、タマネギバエ、ミバエ、ショウジョウバエ、チョウバエ、チェチェバエ、サシバエ等のハエ;シクロアブ、ウシアブ、メクラアブ、ゴマフアブ等のアブ;トクナガクロヌカカ、オオシマヌカカ、ニワトリヌカカ等のヌカカ;キイロスズメバチ、セグロアシナガバチ、ミツバチ等のハチ等が挙げられる。
本発明の組成物は、これらの中でも、特に蚊に対する忌避持続効果が優れている。前述した蚊の中でも、アカイエカ、コガタアカイエカ、チカイエカ、ネッタイイエカ、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカに対する忌避持続効果に優れる。
【0054】
[害虫の忌避方法]
本発明の害虫の忌避方法は、本発明の害虫忌避組成物を皮膚表面に塗布する工程を含む。
ここで、「皮膚表面に塗布する」とは、皮膚表面に手などで組成物を直接塗布することだけでなく、噴霧等により組成物を皮膚表面に付着させることを含む。
皮膚表面に塗布する組成物の量は、忌避効果及び忌避持続効果を向上させる観点から、1cmあたり、好ましくは0.1mg以上であり、より好ましくは0.2mg以上、更に好ましくは0.25mg以上であり、べたつき抑制及び経済性の観点から、1cmあたり、好ましくは10mg以下、より好ましくは7mg以下、更に好ましくは5mg以下である。
【0055】
上述の実施形態に関し、本発明は更に以下の実施態様を開示する。
【0056】
<1>
シリコーン化合物(A)を含む害虫忌避組成物であって、
レオメータを用いた下記方法1による、せん断速度10-1-1におけるせん断粘度ηLowに対するせん断速度10-1におけるせん断粘度ηHighの比(ηHigh/ηLow)が0.9以下であり、前記せん断粘度ηHighが450mPa・s以下であり、前記せん断粘度ηLowが150mPa・s以上である、害虫忌避組成物。
(方法1)
コーンプレート(直径50mm、角度0.1rad)を用いて、25℃、せん断速度範囲:10-3~10-1、プレート間距離:1mmの条件でせん断粘度(mPa・s)を測定する
<2>
前記ηHigh/ηLowが、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.7以下、更に好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.55以下、更に好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.45以下、更に好ましくは0.35以下、更に好ましくは0.25以下であり、そして、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上、更に好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.08以上、更に好ましくは0.10以上である、<1>に記載の害虫忌避組成物。
<3>
前記せん断粘度ηHighが、好ましくは430mPa・s以下、より好ましくは400mPa・s以下、更に好ましくは390mPa・s以下、更に好ましくは370mPa・s以下、更に好ましくは345mPa・s以下、更に好ましくは320mPa・s以下、更に好ましくは295mPa・s以下、更に好ましくは280mPa・s以下、更に好ましくは250mPa・s以下、更に好ましくは150mPa・s以下であり、そして、好ましくは50mPa・s以上、より好ましくは80mPa・s以上、更に好ましくは100mPa・s以上である、<1>又は<2>に記載の害虫忌避組成物。
<4>
前記せん断粘度ηLowが、好ましくは250mPa・s以上、より好ましくは350mPa・s以上、更に好ましくは450mPa・s以上、更に好ましくは480mPa・s以上、更に好ましくは500mPa・s以上、更に好ましくは515mPa・s以上、更に好ましくは540mPa・s以上、更に好ましくは580mPa・s以上、更に好ましくは620mPa・s以上、更に好ましくは680mPa・s以上、更に好ましくは750mPa・s以上、更に好ましくは850mPa・s以上、更に好ましくは950mPa・s以上、更に好ましくは1050mPa・s以上であり、そして、好ましくは5000mPa・s以下、より好ましくは3000mPa・s以下、更に好ましくは2000mPa・s以下、更に好ましくは1500mPa・s以下、更に好ましくは1300mPa・s以下、更に好ましくは1200mPa・s以下である、<1>~<3>のいずれかに記載の害虫忌避組成物。
<5>
前記シリコーン化合物(A)が、好ましくは変性シリコーン(A1)を含む、<1>~<4>のいずれかに記載の害虫忌避組成物。
<6>
前記変性シリコーン(A1)が、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、シリコーン変性多糖類、アミノ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、アミノ誘導体シリコーン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、脂肪族アルコール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、及びアルキル変性シリコーンからなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、シリコーン変性多糖類、アミノ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン及びグリセリン変性シリコーンからなる群から選択される少なくとも一種を含むことがより好ましく、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、シリコーン変性多糖類、アミノ変性シリコーン及びカルボキシ変性シリコーンからなる群から選択される少なくとも一種を含むことが更に好ましく、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)変性シリコーン及びポリエーテル変性シリコーンからなる群から選択される少なくとも一種を含むことが更に好ましく、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)変性シリコーンを含むことが更に好ましい、<5>に記載の害虫忌避組成物。
<7>
前記変性シリコーン(A1)中の前記ポリ(N-アシルアルキレンイミン)変性シリコーンの含有量が、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは12質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である、<5>又は<6>に記載の害虫忌避組成物。
<8>
前記シリコーン化合物(A)が、好ましくは未変性シリコーン(A2)を含み、より好ましくは前記変性シリコーン(A1)及び前記未変性シリコーン(A2)の両方を含有する、<1>~<7>のいずれかに記載の害虫忌避組成物。
<9>
前記未変性シリコーン(A2)中の不揮発性シリコーンの含有量が、好ましくは65質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは85質量%以上、更に好ましくは88質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下である、<8>に記載の害虫忌避組成物。
<10>
前記未変性シリコーン(A2)がジメチルポリシロキサンを含むことが好ましく、直鎖状ジメチルポリシロキサン及び環状ジメチルポリシロキサンから選択される少なくとも一種を含むことがより好ましく、直鎖状ジメチルポリシロキサンを含むことが更に好ましい、<8>又は<9>に記載の害虫忌避組成物。
<11>
前記シリコーン化合物(A)中の前記未変性シリコーン(A2)の含有量が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは85質量%以上、更に好ましくは88質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、そして、好ましくは99.5質量%以下、より好ましくは99質量%以下、更に好ましくは98質量%以下、更に好ましくは97質量%以下、更に好ましくは96質量%以下、更に好ましくは95質量%以下、更に好ましくは94質量%以下である、<8>~<10>のいずれかに記載の害虫忌避組成物。
<12>
前記シリコーン化合物(A)中の前記変性シリコーン(A1)と前記未変性シリコーン(A2)との質量比[(A1)/(A2)]は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、更に好ましくは0.03以上、更に好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.06以上、更に好ましくは0.07以上であり、そして、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.2以下、更に好ましくは0.15以下、更に好ましくは0.1以下である、<5>~<11>のいずれかに記載の害虫忌避組成物。
<13>
前記シリコーン化合物(A)の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下である、<1>~<12>のいずれかに記載の害虫忌避組成物。
<14>
揮発性成分の含有量が、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、更に好ましくは実質0質量%である、<1>~<13>のいずれかに記載の害虫忌避組成物。
<15>
皮膜形成性ポリマー(ただし、前記シリコーン化合物(A)に該当するものを除く)の含有量が、好ましくは0.5質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満、更に好ましくは0.07質量%以下、更に好ましくは0.05質量%以下、更に好ましくは0.01質量%以下である、<1>~<14>のいずれかに記載の害虫忌避組成物。
<16>
前記シリコーン化合物(A)以外の不揮発性液状油性成分の含有量が、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは12質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である、<1>~<15>のいずれかに記載の害虫忌避組成物。
<17>
前記シリコーン化合物(A)以外の既存の害虫忌避剤の含有量が、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、更に好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である、<1>~<16>のいずれかに記載の害虫忌避組成物。
<18>
前記害虫が飛翔害虫である、<1>~<17>のいずれかに記載の害虫忌避組成物。
<19>
前記飛翔害虫が蚊である、<18>に記載の害虫忌避組成物。
<20>
<1>~<19>のいずれかに記載の害虫忌避組成物を皮膚表面に塗布する工程を含む、害虫の忌避方法。
<21>
皮膚表面に塗布する組成物の量が、1cmあたり、好ましくは0.1mg以上であり、より好ましくは0.2mg以上、更に好ましくは0.25mg以上であり、そして、1cmあたり、好ましくは10mg以下、より好ましくは7mg以下、更に好ましくは5mg以下である、<20>に記載の害虫の忌避方法。
【実施例0057】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されない。なお本実施例において、各種測定及び評価は以下の方法により行った。
【0058】
(せん断粘度の測定)
プレート(LOWER MEASURING PLATE、L-PP57/CTD450)の中心に各例の組成物(1g)を付与し、コーンプレート(直径50mm、角度0.1rad、CP50-1)で前記組成物を上から挟み、プレート間からはみ出した前記組成物を取り除いた後、下記条件で測定した。
・測定装置:レオメータ(製品名:MCR302、Anton-Paar社製)
・温度:25℃
・せん断速度範囲:10-3~10-1
・測定点間隔:30~2(s)
・プレート間距離:1mm
・測定モード:回転モード
【0059】
(忌避効果持続時間の評価)
(I)ヒトスジシマカの準備
ヒトスジシマカは、住友テクノサービス株式会社より購入したヒトスジシマカ成虫雌を27℃、相対湿度(RH)70%の条件下ケージ内で飼育したものを使用した。餌として、10質量%スクロースを与えた。
【0060】
(II)忌避効果持続時間の測定
約250匹のヒトスジシマカ成虫雌をプラスチックケージ(30×30×30cm)に移し、27℃、相対湿度(RH)70%の条件下、試験を実施した。被験者の腕が覆われる大きさのゴム製手袋の前腕部に3×10cmの大きさの穴をあけ、各例の組成物を1mg/cmとなるように均一に塗布した。その後、ヒトスジシマカの活性化のために、プラスチックケージに息を5秒間吹きかけた。試験は、組成物を塗布した前腕部を、プラスチックケージに入れることでヒトスジシマカに3分間暴露させ、吸血数をカウントすることで行った。トータルで2回吸血された時点で試験を終了とし、試験終了まで30分間毎に3分間の暴露を行った。30分目の暴露中に2回目の停留がされた場合は、忌避効果持続時間を0時間と判定し、60分目の暴露で2回目の停留がされた場合は忌避効果持続時間を0.5時間と判定した。結果は表2に示した。
【0061】
(漏れ広がりにくさの評価)
前腕内側部に4×5cmの大きさで各例の組成物を1mg/cm塗布し、25℃、57RH%条件下で10秒間かけて均一に塗り延ばした。1h後の塗布面からの漏れ広がりを下記基準により4段階評価で評価を行い、スコアを表2に示した。
A:塗布面からの漏れ広がりが0.3cm以下
B:塗布面からの漏れ広がりが0.3cmより大きく、1cm以下
C:塗布面からの濡れ広がりが1cmより大きく、2cm以下
D:塗布面からの濡れ広がりが2cmより大きい
【0062】
実施例1~11、比較例1~4(組成物の製造及び評価)
表1に示す各成分を表2に示す配合量にて配合し、T.K.ロボミックス(特殊機化工業株式会社製)の撹拌部をT.K.ホモミキサー MARKII2.5型に換えたものを用いて、80℃、2000rpmで10分間撹拌し、次いで、室温まで放冷することで、各例の組成物を得た。得られた組成物を用いて、前記方法により各種評価を行った。結果を表2に示す。表2に示す配合量の数値の単位は質量部である。
【0063】
【表1】
【0064】
ここで、表1に記載のポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)オルガノシロキサンは以下の方法により製造した。
【0065】
(ポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)オルガノシロキサンの合成)
2-エチル-2-オキサゾリン3.63g(0.036モル)と酢酸エチル8.46gとの混合液をモレキュラーシーブ(ゼオラムA-4、東ソー株式会社製)0.6gで、28℃15時間脱水を行った。
また、側鎖一級アミノプロピル変性ポリジメチルシロキサン(KF-8015、信越シリコーン社製、重量平均分子量100000、アミン当量20000)100gと酢酸エチル203gとの混合液をモレキュラーシーブ15.2gで、28℃15時間脱水を行った。
上記の脱水2-エチル-2-オキサゾリンの酢酸エチル溶液に硫酸ジエチル0.54g(0.0035モル)を加え、窒素雰囲気下8時間、80℃で加熱還流し、末端反応性ポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)を合成した。GPCにより測定した数平均分子量は1200であった。得られた末端反応性ポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)溶液に、上記の脱水した側鎖一級アミノプロピル変性ポリジメチルシロキサン溶液を一括して加え、10時間、80℃で加熱還流した。
得られた反応混合物を減圧濃縮し、ポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)オルガノシロキサンを淡黄色ゴム状固体(102g)として得た。最終生成物におけるオルガノポリシロキサンセグメントの質量比は0.96、最終生成物の重量平均分子量は104000であった。
【0066】
【表2】
【0067】
表2から、実施例の組成物は比較例の組成物に比べて忌避効果持続時間が長く、忌避持続効果が向上していることが分かる。