(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017736
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】堤体補強構造
(51)【国際特許分類】
E02B 3/12 20060101AFI20250130BHJP
E02D 3/12 20060101ALI20250130BHJP
E02D 27/28 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
E02B3/12
E02D3/12 102
E02D27/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023120930
(22)【出願日】2023-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000150110
【氏名又は名称】株式会社竹中土木
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小森 寛之
(72)【発明者】
【氏名】尾山 雄基
(72)【発明者】
【氏名】森 守正
(72)【発明者】
【氏名】小西 一生
【テーマコード(参考)】
2D040
2D118
【Fターム(参考)】
2D040AA01
2D040AB03
2D040BA06
2D040BB01
2D040BD05
2D040CA01
2D118AA02
2D118BA02
2D118CA07
2D118DA01
2D118FA01
2D118FB39
(57)【要約】
【課題】堤体の洗堀を抑制することを目的とする。
【解決手段】堤体補強構造は、堤体20と、堤体20の内部に堤体20に沿って連続して設けられる壁状地盤改良部30と、壁状地盤改良部30の長手方向に間隔を空けて設けられ、壁状地盤改良部30から河川12側へ突出する複数の凸状地盤改良部40と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
堤体と、
前記堤体の内部に該堤体に沿って連続して設けられる壁状地盤改良部と、
前記壁状地盤改良部の長手方向に間隔を空けて設けられ、該壁状地盤改良部から水域側へ突出する複数の凸状地盤改良部と、
を備える堤体補強構造。
【請求項2】
前記凸状地盤改良部は、前記壁状地盤改良部から該壁状地盤改良部の壁厚方向に突出する、
請求項1に記載の堤体補強構造。
【請求項3】
前記凸状地盤改良部は、平面視にて、前記壁状地盤改良部から該壁状地盤改良部の壁厚方向に対して傾斜する方向に突出する、
請求項1に記載の堤体補強構造。
【請求項4】
前記堤体は、前記水域としての河川に沿って設けられ、
前記凸状地盤改良部は、平面視にて、前記壁厚方向に対して前記河川の上流側又は下流側へ傾斜する、
請求項3に記載の堤体補強構造。
【請求項5】
前記凸状地盤改良部は、少なくとも前記堤体の下端部から上部に亘って形成される、
請求項1に記載の堤体補強構造。
【請求項6】
前記壁状地盤改良部及び前記凸状地盤改良部は、柱状改良体によって形成される、
請求項1~請求項5の何れか1項に記載の堤体補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、堤体補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤改良体によって堤体を補強する補強構造が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-032690号公報
【特許文献2】特開2015-081436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、河川やため池等の堤体に沿って壁状地盤改良体を形成することにより、堤体を補強することが考えられる。
【0005】
しかしながら、この場合、河川やため池等の増水時に、壁状地盤改良体の表面に沿って堤体が洗堀され、堤体の流出量(欠損量)が増加する可能性がある。
【0006】
本発明は、上記の事実を考慮し、堤体の洗堀を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の堤体補強構造は、堤体と、前記堤体の内部に該堤体に沿って連続して設けられる壁状地盤改良部と、前記壁状地盤改良部の長手方向に間隔を空けて設けられ、該壁状地盤改良部から水域側へ突出する複数の凸状地盤改良部と、を備える。
【0008】
請求項1に係る堤体補強構造によれば、壁状地盤改良部は、堤体の内部に当該堤体に沿って連続して設けられる。この壁状地盤改良部には、複数の凸状地盤改良部が設けられる。複数の凸状地盤改良部は、壁状地盤改良部の長手方向に間隔を空けて設けられ、当該壁状地盤改良部から水域側へ突出する。
【0009】
これにより、河川やため池等の増水時に、堤体に沿って流れる水流が、複数の凸状地盤改良部によって減速される。この結果、堤体の洗堀が抑制されるため、堤体の流出量(欠損量)を低減することができる。
【0010】
請求項2に記載の堤体補強構造は、請求項1に記載の堤体補強構造において、前記凸状地盤改良部は、前記壁状地盤改良部から該壁状地盤改良部の壁厚方向に突出する。
【0011】
請求項2に係る堤体補強構造によれば、凸状地盤改良部は、壁状地盤改良部から当該壁状地盤改良部の壁厚方向に突出する。これにより、凸状地盤改良部の施工性が向上する。
【0012】
請求項3に記載の堤体補強構造は、請求項1に記載の堤体補強構造において、前記凸状地盤改良部は、平面視にて、前記壁状地盤改良部から該壁状地盤改良部の壁厚方向に対して傾斜する方向に突出する。
【0013】
請求項3に係る堤体補強構造によれば、凸状地盤改良部は、平面視にて、壁状地盤改良部から壁厚方向に対して傾斜する方向に突出する。
【0014】
ここで、壁状地盤改良部の壁厚方向に対する凸状地盤改良部の傾斜角度を増減することにより、河川やため池等の増水時に堤体に沿って流れる水流の減速率を調整することができる。したがって、河川やため池等の増水時に、堤体の洗堀を効率的に抑制することができる。
【0015】
請求項4に記載の堤体補強構造は、請求項3に記載の堤体補強構造において、前記堤体は、前記水域としての河川に沿って設けられ、前記凸状地盤改良部は、平面視にて、前記壁厚方向に対して前記河川の上流側又は下流側へ傾斜する。
【0016】
請求項4に係る堤体補強構造によれば、堤体は、河川に沿って設けられる。そして、凸状地盤改良部は、平面視にて、壁状地盤改良部の壁厚方向に対して河川の上流側又は下流側に傾斜する。
【0017】
ここで、壁状地盤改良部の壁厚方向に対して河川の上流側に凸状地盤改良部を傾斜させると、河川の増水時に、堤体に沿って流れる水流を減速させることができる。これにより、堤体の洗堀が抑制される。
【0018】
一方、壁状地盤改良部の壁厚方向に対して河川の下流側に凸状地盤改良部を傾斜させると、河川の増水時に、堤体に沿って流れる水流を減速させ、且つ乱流の発生を抑制することができる。これにより、堤体の洗堀が抑制される。
【0019】
したがって、例えば、河川の増水時に堤体に沿って流れる水流の特性に応じて、壁状地盤改良部の壁厚方向に対する凸状地盤改良部の傾斜方向を使い分けることにより、堤体の洗堀を効率的に抑制することができる。
【0020】
請求項5に記載の堤体補強構造は、請求項1に記載の堤体補強構造において、前記凸状地盤改良部は、少なくとも前記堤体の下端部から上部に亘って形成される。
【0021】
請求項5に係る堤体補強構造によれば、凸状地盤改良部は、少なくとも堤体の下端部から上部に亘って形成される。これにより、河川やため池等の増水時に、少なくとも堤体の下端部から上部に亘って堤体の洗堀を抑制することができる。
【0022】
請求項6に記載の堤体補強構造は、請求項1~請求項5の何れか1項に記載の堤体補強構造において、前記壁状地盤改良部及び前記凸状地盤改良部は、柱状改良体によって形成される。
【0023】
請求項6に係る堤体補強構造によれば、壁状地盤改良部及び凸状地盤改良部は、柱状改良体によって形成される。ここで、柱状改良体は、小型の施工機械によって施工することができる。したがって、狭小な堤体に対しても、壁状地盤改良部及び凸状地盤改良部を施工することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、堤体の洗堀を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】一実施形態に係る堤体補強構造が適用された堤体を示す横断面図である。
【
図4】一実施形態に係る堤体補強構造の変形例が適用された堤体を示す
図3に対応する断面図である。
【
図5】一実施形態に係る堤体補強構造の変形例が適用された堤体を示す
図3に対応する断面図である。
【
図6】比較実験に用いた循環水槽を示す縦断面図である。
【
図7】(A)は、比較実験で用いた実施例に係る堤体模型を示す平面図であり、(B)は、
図7(A)の7B-7B線断面図である。
【
図8】(A)は、比較実験で用いた比較例1に係る堤体模型を示す平面図であり、(B)は、
図8(A)の8B-8B線断面図である。
【
図9】(A)は、比較実験で用いた比較例2に係る堤体模型を示す平面図であり、(B)は、
図9(A)の9B-9B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、一実施形態について説明する。
【0027】
(堤体)
図1及び
図2には、本実施形態に係る堤体補強構造が適用された堤体20が示されている。堤体20は、一例として、河川12に沿って設けられる河川堤防とされている。この堤体20は、地盤10上に設けられた盛土によって形成されている。
【0028】
なお、
図1に示される河川12の二点鎖線は、一例として、増水時の河川12の水面を示している。また、河川12は、水域の一例である。
【0029】
堤体20の横断面形状は、全体として台形状とされている。また、堤体20は、天端面20Tと、河川12側の表法面20S1と、河川12と反対側の裏法面20S2とを有している。この堤体20は、壁状地盤改良部30及び複数の凸状地盤改良部40によって補強されている。なお、堤体20の横断面形状は、台形状に限らず、適宜変更可能である。
【0030】
(壁状地盤改良部)
壁状地盤改良部30は、堤体20の内部に、当該堤体20の長手方向(矢印L方向)に沿って壁状に連続して設けられている。この壁状地盤改良部30は、堤体20の天端面20Tから、堤体20及び当該堤体20の直下の地盤(以下、「直下地盤10A」という)を、堤体20の長手方向に沿って壁状に地盤改良した部位とされている。また、壁状地盤改良部30の下端部は、一例として、直下地盤10Aの不透水層10Kに達している(根入れされている)。
【0031】
なお、壁状地盤改良部30の深度は、河川12の深さや、直下地盤10Aの地層に応じて適宜設定される。また、壁状地盤改良部30は、少なくとも堤体20の下端部から上部に亘って形成されればよく、必ずしも堤体20と直下地盤10Aとに亘る必要はない。
【0032】
壁状地盤改良部30は、壁状に連接された複数の柱状改良体32を有している。複数の柱状改良体32は、円柱状に形成されている。また、複数の柱状改良体32は、堤体20と直下地盤10Aとに亘って形成されており、下端部が直下地盤10Aの不透水層10Kに達している。
【0033】
ここで、柱状改良体32の施工時には、堤体20の天端面20Tから、堤体20、及び直下地盤10Aを図示しないオーガ等によって掘削しながら、当該堤体20及び直下地盤10Aにセメントミルク等のセメント系固化材を注入する。そして、セメント系固化材と掘削土とを撹拌混合することにより、堤体20及び直下地盤10Aに柱状改良体32を形成(造成)する。
【0034】
(凸状地盤改良部)
複数の凸状地盤改良部40は、壁状地盤改良部30に櫛状に設けられている。具体的には、複数の凸状地盤改良部40は、壁状地盤改良部30(堤体20)の長手方向に間隔を空けて設けられている。また、複数の凸状地盤改良部40は、壁状地盤改良部30から河川12側へ突出している。
【0035】
より具体的には、複数の凸状地盤改良部40は、壁状地盤改良部30から当該壁状地盤改良部30の壁厚方向(矢印W方向、堤体20の幅方向)に突出している。つまり、複数の凸状地盤改良部40は、壁状地盤改良部30に対して略垂直に設けられている。
【0036】
複数の凸状地盤改良部40は、堤体20の天端面20T及び表法面20S1から、堤体20及び直下地盤10Aを、堤体20の幅方向に沿って地盤改良した部位とされている。この壁状地盤改良部30の下端部は、一例として、直下地盤10Aの不透水層10Kに達している(根入れされている)。
【0037】
なお、凸状地盤改良部40の深度は、河川12の深さや、直下地盤10Aの地層に応じて適宜設定される。また、凸状地盤改良部40は、少なくとも堤体20の下端部から上部に亘って形成されればよく、必ずしも堤体20と直下地盤10Aとに亘る必要はない。
【0038】
凸状地盤改良部40は、連接された複数(本実施形態では2本)の柱状改良体42を有している。複数の柱状改良体42は、円柱状に形成されている。また、複数の柱状改良体42は、堤体20と直下地盤10Aとに亘って形成されており、下端部が直下地盤10Aの不透水層10Kに達している。
【0039】
なお、凸状地盤改良部40を構成する柱状改良体42の本数は、2本に限らず、1本でもよし、3本以上でもよい。すなわち、凸状地盤改良部40は、少なくとも1本の柱状改良体42によって構成することができる。
【0040】
ここで、柱状改良体42の施工時には、堤体20の天端面20T及び表法面20S1から、堤体20、及び直下地盤10Aを図示しないオーガ等によって掘削しながら、当該堤体20及び直下地盤10Aにセメントミルク等のセメント系固化材を注入する。そして、セメント系固化材と掘削土とを撹拌混合することにより、堤体20及び直下地盤10Aに柱状改良体42を形成(造成)する。
【0041】
なお、堤体20の表法面20S1に形成される凸状地盤改良部40(柱状改良体42)は、堤体20の天端面20T上に設置された重機から施工可能な範囲に設けられる。また、本実施形態では、凸状地盤改良部40が堤体20の天端面20T及び表法面20S1に亘っているが、凸状地盤改良部40は、堤体20の天端面20Tにのみ形成されてもよいし、堤体20の表法面20S1にのみ形成されてもよい。
【0042】
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0043】
本実施形態によれば、壁状地盤改良部30は、堤体20の内部に当該堤体20に沿って連続して設けられている。この壁状地盤改良部30によって、河川12の増水時に、浸食や越水による堤体20の破壊が抑制される。
【0044】
また、壁状地盤改良部30は、堤体20及び直下地盤10Aに亘って形成されている。これにより、河川12の増水時に、堤体20及び直下地盤10Aの境界部に水が浸透し、堤体20が破壊されることが抑制される。
【0045】
さらに、壁状地盤改良部30には、複数の凸状地盤改良部40が設けられている。複数の凸状地盤改良部40は、壁状地盤改良部30の長手方向に間隔を空けて設けられ、当該壁状地盤改良部30から河川12側へ突出している。
【0046】
これにより、例えば、
図3に示されるように、壁状地盤改良部30の河川12側の表面に沿って堤体20が洗堀されることが抑制される。したがって、堤体20の流出量(欠損量)を低減することができる。なお、
図3に示される堤体20の破壊形状(洗堀状態)は一例であって、これに限定されるものではない。
【0047】
また、河川12の増水時に、堤体20に沿って流れる水流Fが、複数の凸状地盤改良部40によって減速される。この結果、水流Fによる堤体20の洗堀がさらに抑制される。
【0048】
さらに、凸状地盤改良部40は、堤体20の下端部から上部に亘って形成されている。これにより、河川12の増水時に、堤体20の略全体の洗堀を抑制することができる。
【0049】
また、複数の凸状地盤改良部40は、壁状地盤改良部30から当該壁状地盤改良部30の壁厚方向(矢印W方向)に突出している。これにより、凸状地盤改良部40の施工性が向上する。
【0050】
さらに、壁状地盤改良部30及び凸状地盤改良部40は、複数の柱状改良体32,42によって形成されている。ここで、柱状改良体32,42は、小型の施工機械によって施工することができる。したがって、天端面20Tが狭小な堤体20に対しても、壁状地盤改良部30及び凸状地盤改良部40を施工することができる。
【0051】
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0052】
上記実施形態では、凸状地盤改良部40が、壁状地盤改良部30から当該壁状地盤改良部30の壁厚方向に突出している。しかし、凸状地盤改良部40の突出方向は、壁状地盤改良部30の壁厚方向に限らず、適宜変更可能である。
【0053】
例えば、
図4に示される変形例では、凸状地盤改良部40が、平面視にて、壁状地盤改良部30から壁状地盤改良部30の壁厚方向に対して傾斜する方向に突出している。より具体的には、凸状地盤改良部40は、平面視にて、壁状地盤改良部30の壁厚方向に対して河川12の上流側(矢印Fと反対側)へ傾斜している。これにより、河川12の増水時に、堤体20に沿って流れる水流Fをより効率的に減速させることができる。
【0054】
一方、
図5に示される変形例では、凸状地盤改良部40が、平面視にて、壁状地盤改良部30の壁厚方向に対して河川12の下流側(矢印F側)へ傾斜している。これにより、河川12の増水時に、堤体20に沿って流れる水流を減速させつつ、乱流の発生を抑制することができる。
【0055】
このように河川12の増水時に堤体20に沿って流れる水流Fの特性に応じて、壁状地盤改良部30の壁厚方向に対する凸状地盤改良部40の傾斜方向を使い分けることにより、堤体20の洗堀を効率的に抑制することができる。なお、
図4及び
図5に示される堤体20の破壊形状(洗堀状態)は一例であって、これに限定されるものではない。
【0056】
また、壁状地盤改良部30の壁厚方向に対する凸状地盤改良部40の傾斜角度を増減することにより、河川12の増水時に堤体20に沿って流れる水流Fの減速率を調整することができる。したがって、河川12の増水時に、堤体20の洗堀を効率的に抑制することができる。
【0057】
また、上記実施形態では、壁状地盤改良部30及び凸状地盤改良部40が、柱状改良工法(柱状改良体32,42)によって形成されている。しかし、壁状地盤改良部30及び凸状地盤改良部40は、柱状改良工法に限らず、他の地盤改良工法によって施工されてもよい。
【0058】
また、上記実施形態に係る堤体補強構造は、平面視にて格子状に形成される格子状地盤改良体と組み合わせて実施されてもよい。例えば、堤体20の内部に堤防法線と平行方向でかつ河川12と反対(陸)側に、壁状地盤改良部30を壁の一部とする格子状地盤改良体を形成し、当該格子状地盤改良体における河川12(水域側)側の壁状地盤改良部に複数の凸状地盤改良部を設けてもよい。さらに、上記実施形態に係る堤体補強構造は、格子状地盤改良体に限らず、他の地盤改良体と組み合わせて実施されてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、堤体20が河川12に沿って設けられる河川堤防とされている。しかし、堤体20は、河川堤防に限らず、海岸に沿って設けられる海岸堤防でもよいし、ため池に沿って設けられる池堤でもよい。この場合、海又はため池が、水域の一例となる。
【0060】
(比較実験)
次に、比較実験について説明する。
【0061】
(概要)
本比較実験では、実施例に係る堤体の縮小模型(以下、「堤体模型」という)と、比較例に係る堤体の堤体模型を循環水槽に設置し、各堤体模型の破壊状態(破壊形状)を観察した。そして、各堤体模型の破壊状態から、堤体模型の断面欠損率を求めて比較検討した。
【0062】
(循環水槽)
図6には、循環水槽50が示されている。循環水槽50は、長尺の水槽とされている。この循環水槽50内の水52は、循環配管54及び循環ポンプ56によって、循環水槽50の長手方向(矢印方向)に循環される。また、循環水槽50内の水流の流速は、循環ポンプ56の出力によって調整可能とされている。
【0063】
(堤体模型)
図7(A)及び
図7(B)には、実施例に係る堤体模型20Xが示されている。実施例に係る堤体模型20Xは、上記実施形態に係る堤体補強構造が適用されている。つまり、堤体模型20Xには、壁状地盤改良部30及び凸状地盤改良部40が形成されている。
【0064】
一方、
図8(A)及び
図8(B)には、比較例1に係る堤体模型20Y1が示されている。比較例1に係る堤体模型20Y1は、上記実施形態に係る堤体補強構造が適用されていない。つまり、堤体模型20Y1には、壁状地盤改良部30及び凸状地盤改良部40が形成されていない。
【0065】
また、
図9(A)及び
図9(B)には、比較例2に係る堤体模型20Y2が示されている。比較例2に係る堤体模型20Y2には、壁状地盤改良部30のみが形成され、凸状地盤改良部40が形成されていない。
【0066】
(実験結果)
図10には、実施例、及び比較例1,2に係る堤体模型20X,20Y1,20Y2の断面欠損率を示すグラフX,Y1,Y2が示されている。なお、
図10の横軸は、各堤体模型20X,20Y1,20Y2の上流からの距離(長手方向の位置)であり、
図10の横軸は、各堤体模型20X,20Y1,20Y2の断面欠損率[%]である。
【0067】
図10に示されるグラフX,Y1,Y2から分かるように、比較例2に係る堤体模型20Y2の断面欠損率は、全体的に、比較例1に係る堤体模型20Y1の断面欠損率よりも高くなった。これは、比較例2に係る堤体模型20Y2では、壁状地盤改良部30の水52側の表面に沿って堤体20が洗堀され、堤体20の流出量(欠損量)が増加したためと考えられる。
【0068】
一方、実施形態に係る堤体模型20Xの断面欠損率は、比較例2に係る堤体模型20Y2の断面欠損率よりも低下しており、比較例1に係る堤体模型20Y1の断面欠損率と同程度となった。このことから、凸状地盤改良部40によって堤体20の破壊(洗堀)が抑制されることが確認された。
【0069】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0070】
12 河川(水域)
20 堤体
30 壁状地盤改良部
32 柱状改良体
40 凸状地盤改良部
42 柱状改良体