(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017743
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】RF送信機
(51)【国際特許分類】
H04L 27/00 20060101AFI20250130BHJP
H03D 7/14 20060101ALI20250130BHJP
H04B 17/18 20150101ALI20250130BHJP
H04B 1/04 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
H04L27/00 C
H03D7/14 C
H04B17/18
H04B1/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023120944
(22)【出願日】2023-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111763
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100163832
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 直哉
(72)【発明者】
【氏名】対馬 博之
【テーマコード(参考)】
5K060
【Fターム(参考)】
5K060CC04
5K060HH14
5K060KK06
(57)【要約】
【課題】 ギルバートセル型ダブル・バランスド・ミキサを利用したRF送信機において、ローカルリークの発生を抑制する。
【解決手段】 RF送信機100において、ローカルリーク検波回路130は、RF信号生成部110から出力されるローカルリークを検波する。RF信号生成部110内のミキサは、与えられるデジタル値に基づいて、差動対のオフセット補正のための補正バイアスを発生する補正バイアス発生手段を有する。補正制御部140は、補正バイアス発生手段に与えるデジタル値を記憶する記憶手段を有し、記憶手段に記憶されるデジタル値を制御する手段であって、ローカルリーク検波回路130から得られる検波電圧が最小となるデジタル値を探索する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースバンド信号とローカル信号を周波数混合するギルバートセル型ダブル・バランスド・ミキサを有し、前記ギルバートセル型ダブル・バランスド・ミキサにより得られるRF信号を送信するRF送信機において、
前記ギルバートセル型ダブル・バランスド・ミキサから出力されるローカルリークを検波するローカルリーク検波回路と、
与えられるデジタル値に基づいて、前記ギルバートセル型ダブル・バランスド・ミキサを構成する差動対のオフセット補正のための補正バイアスを発生する補正バイアス発生手段と、
前記補正バイアス発生手段に与える補正用デジタル値を記憶する記憶手段を有し、前記記憶手段に記憶される補正用デジタル値を制御する手段であって、前記ローカルリーク検波回路から得られる検波電圧が最小となる前記補正用デジタル値を探索する補正制御手段と
を有するRF送信機。
【請求項2】
前記記憶手段は、複数の差動対のオフセット補正のための複数種類の補正用デジタル値を記憶し、前記補正制御手段は、前記複数種類の補正用デジタル値の中から1種類の補正用デジタル値を順次選択し、前記検波電圧が最小となる補正用デジタル値を探索する請求項1に記載のRF送信機。
【請求項3】
前記補正バイアス発生手段は、差動対を構成するトランジスタに与えるバックゲート電圧を前記補正バイアスとして発生する請求項1に記載のRF送信機。
【請求項4】
前記補正バイアス発生手段は、差動対を構成するトランジスタに流し込む電流を前記補正バイアスとして発生する請求項1に記載のRF送信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ギルバートセル型ダブル・バランスド・ミキサを利用したRF送信機に関する。
【背景技術】
【0002】
周波数混合器は、周波数の異なる2つの信号を乗算して出力する回路であり、略称ではミキサ、ミキサ回路と呼ばれることが多い。送受信システムでは、周波数混合器は要素回路として搭載され、搬送波(ローカル信号)に信号情報に基づく変調(送信)を施し、または外部からの受信信号から信号情報を復調(受信)する役割を果たす。
【0003】
周波数混合器の一形態として、
図7に示すギルバートセル型回路200がある。このギルバートセル型回路200は、2つの第1差動対201および202と、1つの第2差動対203とを有する。ここで、第1差動対201の共通ノードおよび第1差動対202の共通ノードは、第2差動対203の2つの差動出力ノードに接続されている。このギルバートセル型回路200は、2つの異なる周波数成分の分離特性で優れているダブル・バランスド・ミキサを集積回路上で実装する場合に多く用いられる。
【0004】
図7に示すギルバートセル型回路200は、復調回路として用いられている。このギルバートセル型回路200には、搬送波と周波数混合されたRF(高周波)信号が外部から入力される。ギルバートセル型回路200では、このRF信号と、搬送波に相当するローカル信号LOとが乗算され、IF(中間周波)信号が出力される。このIF信号から差分の信号周波数のみを抽出することができる。ギルバートセル型回路200は、変調回路としても用いられる。変調回路の場合は、搬送波であるローカル信号LOとIF信号を周波数混合させてRF信号を生成する。
【0005】
ギルバートセル型回路200を利用したミキサとして、
図8に示すギルバートセル型ダブル・バランスド・ミキサ250がある。このギルバートセル型ダブル・バランス・ミキサ250では、ミキサ221および222がギルバートセル型回路200により構成されている。
【0006】
このギルバートセル型ダブル・バランスド・ミキサ250は、ベースバンド信号BBとローカル信号LOとを周波数混合して16QAM(直交振幅変調)送信信号を生成するミキサであり、例えば無線LAN(WiFi)の変調装置に利用されている。
【0007】
このギルバートセル型ダブル・バランスド・ミキサ250は、電流出力型の差動対211および212を有している。差動対211は、Iチャネルの差動形式のベースバンド信号BBIPおよびBBINを差動増幅し、1対の差動出力電流を出力する。差動対212は、Iチャネルに対して位相が90度ずれたQチャネルの差動形式のベースバンド信号BBQPおよびBBQNを差動増幅し、1対の差動出力電流を出力する。
【0008】
ミキサ221は、差動対211の1対の差動出力電流とIチャネルのローカル信号LOIPおよびLOINとの周波数混合を行い、1対の差動出力信号を生成する。また、ミキサ222は、差動対212の1対の差動出力電流とQチャネルのローカル信号LOQPおよびLOQNとの周波数混合を行い、1対の差動出力信号を生成する。加算器230は、ミキサ221から得られる1対の差動出力信号と、ミキサ222から得られる1対の差動出力信号とを加算することにより、16QAM送信信号を生成する。なお、このようなギルバートセル型回路を利用した周波数混合器は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したギルバートセル型ダブル・バランスド・ミキサ250において、同ミキサの内部の差動対に閾値Vthなどのミスマッチがある場合、オフセット電圧が発生し、2つの信号の乗算に誤差が発生する。また、ミキサの入力信号にDCオフセットが元々含まれている場合についても同様である。その場合、打ち消されるはずのローカル信号LOの成分がRF信号までリークすることで、信号妨害電力となり、大きさによっては送受信システムの要求仕様を満たせない場合がある。
【0011】
特許文献1には、ギルバートセル型回路を利用した周波数混合器において、オフセット電圧を検出し、検出したオフセット電圧に基づいて入力信号を補正することで、オフセット電圧を補正する旨の記載がある。しかしながら、このように入力信号を補正することによってオフセット電圧を補正するのは、非常に難しい処理であり、オフセット電圧を十分に除去できない問題がある。
【0012】
この発明は、以上説明した事情に鑑みてなされたものであり、ギルバートセル型ダブル・バランスド・ミキサを利用したRF送信機において、ローカルリークの発生を抑制する技術的手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、ベースバンド信号とローカル信号を周波数混合するギルバートセル型ダブル・バランスド・ミキサを有し、前記ギルバートセル型ダブル・バランスド・ミキサにより得られるRF信号を送信するRF送信機において、前記ギルバートセル型ダブル・バランスド・ミキサから出力されるローカルリークを検波するローカルリーク検波回路と、
与えられるデジタル値に基づいて、前記ギルバートセル型ダブル・バランスド・ミキサを構成する差動対のオフセット補正のための補正バイアスを発生する補正バイアス発生手段と、前記補正バイアス発生手段に与える補正用デジタル値を記憶する記憶手段を有し、前記記憶手段に記憶される補正用デジタル値を制御する手段であって、前記ローカルリーク検波回路から得られる検波電圧が最小となる前記補正用デジタル値を探索する補正制御手段とを有するRF送信機を提供する。
【0014】
この発明によれば、補正バイアス発生手段は、与えられる補正用デジタル値に基づいて、ギルバートセル型ダブル・バランスド・ミキサを構成する差動対のオフセット補正のための補正バイアスを発生し、補正制御手段は、ローカルリーク検波回路から得られる検波電圧が最小となる補正用デジタル値を探索する。従って、この発明によれば、RF送信機におけるローカルリークの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明の一実施形態であるRF送信機の構成を示す回路図である。
【
図3】同RF送信機のミキサを構成する差動対のオフセット電圧とローカルリークの電力レベルとの関係を示す図である。
【
図4】同ミキサを構成する差動対のオフセット電圧とローカルリーク検波回路の出力電圧との関係を示す図である。
【
図6】同RF送信機の動作を示すタイムチャートである。
【
図7】ギルバートセル型回路の構成を示す回路図である。
【
図8】ギルバートセル型回路を利用したミキサの構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、この発明の実施形態について説明する。
【0017】
図1および
図2はこの発明の一実施形態であるRF送信機100の構成を示す回路図である。RF送信機100は、RF信号生成部110と、このRF信号生成部110の出力端子121に対して接続されたパワーアンプ122およびアナログスイッチ124と、パワーアンプ122の出力端子に接続された送信アンテナ123と、アナログスイッチ124を介してRF信号生成部110の出力端子121に接続されたローカルリーク検波回路130と、補正制御部140とを有する。
【0018】
本実施形態によるRF送信機100は、アナログスイッチ124をOFFとした通常モードでの動作と、アナログスイッチ124をONとし、RF信号生成部110内の差動対のオフセット補正を行うキャリブレーションモードでの動作が可能である。
図1には通常モードにおけるRF送信機100の状態が示され、
図2にはキャリブレーションモードにおけるRF送信機100の状態が示されている。
【0019】
図1および
図2において、RF信号生成部110の送信DAC(Digital Analogue Converter)111_Iおよび111_Qは、IチャネルおよびQチャネルの送信用デジタル信号をアナログ信号に変換する。LPF(Low Pass Filter)112_Iおよび112_Qは、DAC111_Iおよび111_Qの出力信号の遮断周波数以下の成分を各々通過させる。ミキサ113_Iおよび113_Qと、ローカル発振器114と、加算器115は、ギルバートセル型ダブル・バランスド・ミキサを構成している。ローカル発振器114は、互いに位相が90degずれたローカル信号Loをミキサ113_Iおよび113_Qに各々供給する。ミキサ113_Iは、LPF112_Iの出力信号とローカル信号Lo(0deg)とを周波数混合(乗算)して出力する。ミキサ113_Qは、LPF112_Qの出力信号とローカル信号Lo(90deg)とを周波数混合(乗算)して出力する。加算器115は、ミキサ113_Iの出力信号とミキサ113_Qの出力信号とを加算して出力する。ドライバアンプ116は、加算器115の出力信号を増幅し、RF信号として出力端子121に出力する。
【0020】
出力端子121に出力されたRF信号は、パワーアンプ122によって増幅され、アンテナ123から放射される。また、出力端子121は、アナログスイッチ124を介してローカルリーク検波回路130に接続される。ここで、アナログスイッチ124は、キャリブレーション信号CALが“0”である場合にOFF、“1”である場合にONとなる。
【0021】
本実施形態において、RF信号生成部110は、RF信号を出力しない期間に、ローカルリークを出力する場合がある。このローカルリークの電力レベルは、
図3に示すようにRF信号生成部110のミキサ113_Iおよび113_Qを構成する差動対のDCオフセットに依存する。
【0022】
本実施形態におけるキャリブレーションモードは、このローカルリークが最小となるようにRF信号生成部110を調整するモードである。キャリブレーション信号CALは、通常は“0”であるが、例えば図示しない上位装置によって定期的に“1”に切り換えられ、キャリブレーションモードが設定される。
【0023】
ローカルリーク検波回路130は、キャリブレーションモードにおいて、RF信号生成部110から出力されるローカルリークをDC電圧に変換する回路である。このローカルリーク検波回路130のミキサ131_Iおよび131_Qは、RF信号生成部110の出力信号に対し、互いに位相が90degずれたローカル信号を周波数混合し、各々IチャネルおよびQチャネルの検波信号として出力する。LPF132_Iは、ミキサ131_Iから出力されるIチャネルの検波信号をDC電圧に変換する。LPF132_Qは、ミキサ131_Qから出力されるQチャネルの検波信号をDC電圧に変換する。マルチプレクサ133は、切換信号CAL_IQが“0”である期間は、LPF132_Iから出力されるIチャネルのDC電圧を選択して出力し、切換信号CAL_IQが“1”である期間は、LPF132_Qから出力されるQチャネルのDC電圧を選択して出力する。切換信号CAL_IQは、所定周期で“0”/“1”の切り換えが行われる。すなわち、マルチプレクサ133は、IチャネルのDC電圧とQチャネルのDC電圧とを時間多重して出力する。
図4に示すようにローカルリーク検波回路130の出力電圧は、RF信号生成部110のミキサ113_Iおよび113_Qを構成する差動対のDCオフセットに依存する。
【0024】
本実施形態において、RF信号生成部110のミキサ113_Iおよび113_Qは、差動対のオフセット補正のための補正バイアスを発生する補正バイアス発生手段を有する。
図5はミキサ113_Iの構成を示す回路図である。なお、図示は省略したが、ミキサ113_Qもミキサ113_Iと同じ構成を有する。
【0025】
図5に示すように、ミキサ113_Iは、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor;以下、単にトランジスタという)811および812のソース同士を共通接続(以下、ソース同士の共通接続点を共通ソースという)した差動対810と、トランジスタ821および822のソース同士を共通接続した差動対820と、トランジスタ831および832のソース同士を共通接続した差動対830とを有する。ここで、差動対810の共通ソースは、定電流源813を介して接地されている。また、差動対820の共通ソースは、トランジスタ811のドレインに接続され、差動対830の共通ソースは、トランジスタ812のドレインに接続されている。また、トランジスタ821および832のドレインは共通接続されている。この共通接続点は、正相信号OUTPを加算器115に出力するノードであり、抵抗841を介して電源に接続されている。また、トランジスタ822および831のドレインは共通接続されている。この共通接続点は、逆相信号OUTNを加算器115に出力するノードであり、抵抗842を介して電源に接続されている。
【0026】
正相のベースバンド信号DAC(P)は、トランジスタ811のゲートに与えられ、逆相のベースバンド信号DAC(N)は、トランジスタ812のゲートに与えられる。差動対810では、正相のベースバンド信号DAC(P)と逆相のベースバンド信号DAC(N)の差動増幅が行われる。
【0027】
正相のローカル信号LO(P)は、トランジスタ821および831のゲートに与えられ、逆相のローカル信号LO(N)は、トランジスタ822および832のゲートに与えられる。差動対820および830の各々では、正相のローカル信号LO(P)と逆相のローカル信号LO(N)の差動増幅が行われる。これによりミキサ113_Iでは、ベースバンド信号とローカル信号との周波数混合(乗算)が行われる。
【0028】
このミキサ113_Iにおいて、差動対810、820または830に閾値Vthなどのミスマッチがある場合、オフセット電圧が発生し、2つの信号の乗算に誤差が発生する。また、ミキサの入力信号にDCオフセットが元々含まれている場合についても同様である。そこで、ミキサ113_Iには、補正バイアス発生手段として、電圧出力型のDACであるV-DAC851および852と、電流出力型のDACであるI-DAC853が設けられている。
【0029】
V-DAC851は、6ビットの補正用デジタル値LOP[5:0]をD/A変換することにより、補正用デジタル値LOP[5:0]に比例した差分を有するバックゲート電圧BGP(P)およびBGP(N)を発生する。そして、バックゲート電圧BGP(P)およびBGP(N)をトランジスタ831および821に出力する。
【0030】
また、V-DAC852は、6ビットの補正用デジタル値LON[5:0]をD/A変換することにより、補正用デジタル値LON[5:0]に比例した差分を有するバックゲート電圧BGN(P)およびBGN(N)を発生する。そして、バックゲート電圧BGN(P)およびBGN(N)をトランジスタ832および822に出力する。
【0031】
また、I-DAC853は、6ビットの補正用デジタル値DAC[5:0]をD/A変換することにより、補正用デジタル値DAC[5:0]に比例した差分を有する電流Isink+およびIsink-を発生する。そして、電流Isink+およびIsink-を差動対810のトランジスタ811のドレインおよび差動対810のトランジスタ812のドレインから引き込む。
【0032】
図1および
図2において、補正制御部140は、RF信号生成部110のミキサ113_Iおよび113_Qに与える補正用デジタル値を制御する手段である。この補正制御部140において、差動増幅器141は、マスタクロックMCLKに同期してローカルリーク検波回路130の出力電圧を差動増幅する。選択部142_LOは、切換信号CAL_LOが“1”である期間、差動増幅器141の出力信号をデジタル値制御部143_LOに供給する。選択部142_BBは、切換信号CAL_BBが“1”である期間、差動増幅器141の出力信号をデジタル値制御部143_BBに供給する。
【0033】
デジタル値制御部143_LOは、IチャネルおよびQチャネルの各々について、補正用デジタル値LOP[5:0]およびLON[5:0]を記憶する記憶手段を有する。デジタル値制御部143_LOは、これらの各補正用デジタル値について、選択部142_LOを通過する信号(すなわち、ローカルリーク検波回路130の出力電圧)を最小化するデジタル値を探索するバイナリサーチをマスタクロックMCLKに同期して実行する。また、デジタル値制御部143_BBは、IチャネルおよびQチャネルの各々について、補正用デジタル値DAC[5:0]を記憶する記憶手段を有する。デジタル値制御部143_BBは、これらの各補正用デジタル値について、選択部142_BBを通過する信号(すなわち、ローカルリーク検波回路130の出力電圧)を最小化するデジタル値を探索するバイナリサーチをマスタクロックMCLKに同期して実行する。
【0034】
図6は本実施形態によるRF送信機100の動作を示すタイムチャートである。本実施形態では、例えば上位装置が定期的に所定時間に亙ってアナログスイッチ124をONとし、RF送信機100にキャリブレーションモードでの動作を行わせる。キャリブレーションモードが終了すると、モードは通常モードになる。
【0035】
ミキサ113_Iおよび113_Qは、キャリブレーションモードおよび通常モードの両方において通常動作する。送信DAC111_Iおよび111_Qは、キャリブレーションモードにおいて動作を停止し、通常モードにおいて通常動作する。アナログスイッチ124は、キャリブレーションモードにおいてONとなり、通常モードにおいてOFFとなる。ローカルリーク検波回路130は、キャリブレーションモードにおいて通常動作し、通常モードにおいてスタンバイとなる。そして、補正制御部140は、キャリブレーションモードにおいて処理P1~P6を順次実行し、通常モードでは、処理P1~P6により得られた補正用デジタル値をそのまま維持する。
【0036】
キャリブレーションモードにおける補正制御部140の動作は次の通りである。処理P1において、デジタル値制御部143_LOは、選択部142_LOを通過するDC電圧(ローカルリーク)を最小にするためのIチャネルの補正用デジタル値LOP[5:0]のバイナリサーチを行う。また、処理P2において、デジタル値制御部143_LOは、選択部142_LOを通過するDC電圧(ローカルリーク)を最小にするためのIチャネルの補正用デジタル値LON[5:0]のバイナリサーチを行う。
【0037】
また、処理P3において、デジタル値制御部143_LOは、選択部142_LOを通過するDC電圧(ローカルリーク)を最小にするためのQチャネルの補正用デジタル値LOP[5:0]のバイナリサーチを行う。また、処理P4において、デジタル値制御部143_LOは、選択部142_LOを通過するDC電圧(ローカルリーク)を最小にするためのQチャネルの補正用デジタル値LON[5:0]のバイナリサーチを行う。
【0038】
また、処理P5において、デジタル値制御部143_BBは、選択部142_BBを通過するDC電圧(ローカルリーク)を最小にするためのIチャネルの補正用デジタル値DAC[5:0]のバイナリサーチを行う。また、処理P6において、デジタル値制御部143_BBは、選択部142_BBを通過するDC電圧(ローカルリーク)を最小にするためのQチャネルの補正用デジタル値DAC[5:0]のバイナリサーチを行う。
【0039】
以上の調整によりRF送信機100のローカルリークは最小となり、このローカルリークが最小となる補正用デジタル値がデジタル値制御部143_LOおよび143_BBの記憶手段に格納される。従って、通常モード時には、この記憶手段に記憶された補正用デジタル値をV-DAC851、852およびI-DAC853に与え、ローカルリークが最小の状態でRF送信機100を動作させることができる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態によれば、ギルバートセル型ダブル・バランスド・ミキサを利用したRF送信機において、ローカルリークの発生を抑制することができる。
【0041】
なお、差動対の調整は、任意のタイミングにおいて実行可能であり、初期動作時に実行してもよく、または稼働途中で、あるいは温度変動があった場合に実行してもよい。
【符号の説明】
【0042】
100……RF送信機、110……RF信号生成部、111_I,111_Q……送信DAC、112_I,112_Q,132_I,132_Q……LPF、112_I,112_Q,131_I,131_Q……ミキサ、114……ローカル発振器、115……加算器、116……ドライバアンプ、121……出力端子、122……パワーアンプ、123……アンテナ、124……アナログスイッチ、130……ローカルリーク検波回路、133……マルチプレクサ、140……補正制御部、141……差動増幅器、142_LO,142_BB……選択部、143_LO,143_BB……デジタル値制御部、811,812,821,822,831,832……トランジスタ、810,820,830……差動対、813……定電流源、841,842……抵抗、851,852……V-DAC、853……I-DAC。