(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017759
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】継杭溶接用防雨・防風ユニット
(51)【国際特許分類】
B23K 9/32 20060101AFI20250130BHJP
E04G 21/28 20060101ALI20250130BHJP
E02D 13/00 20060101ALI20250130BHJP
E02D 5/24 20060101ALI20250130BHJP
B23K 37/00 20250101ALI20250130BHJP
【FI】
B23K9/32 A
E04G21/28 B
E02D13/00 Z
E02D5/24 102
B23K37/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023120972
(22)【出願日】2023-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】西田 雄紀
(72)【発明者】
【氏名】坂崎 信夫
【テーマコード(参考)】
2D041
2D050
【Fターム(参考)】
2D041AA02
2D041BA44
2D041FA00
2D050AA08
2D050EE12
(57)【要約】
【課題】様々な杭径に対応でき、確実に風雨を防ぐことができるようにする。
【解決手段】本管3の両側にそれぞれ軸方向に沿って延びる継手管4が備えられた鋼管矢板2の継杭溶接作業時に設置される継杭溶接用防雨・防風ユニット1である。各継手管4に外嵌された状態で固定される継手管固定治具5と、帯状のバンド帯からなり、一方の端部が一方の継手管固定治具5に支持されるとともに、他方の端部が他方の継手管固定治具5に支持されることにより、本管3の両側に配置された継手管固定治具5、5間をそれぞれ本管3の外周に沿って配置される長さ調整可能な固定バンド6と、各継手管固定治具5付近において周囲に広がる板状屋根材7と、両側部が各板状屋根材7、7に固定されるとともに、内側端部が固定バンド6に固定されるシート状屋根材8と、板状屋根材7及びシート状屋根材8の先端から垂下され、本管3の周囲を囲う側面被覆材9とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本管の両側にそれぞれ軸方向に沿って延びる継手管が備えられた鋼管矢板の継杭溶接作業時に設置される継杭溶接用防雨・防風ユニットであって、
略C字状に形成され、各継手管に外嵌された状態で固定される継手管固定治具と、
帯状のバンド帯からなり、一方の端部が一方の前記継手管固定治具に支持されるとともに、他方の端部が他方の前記継手管固定治具に支持されることにより、前記本管の両側に配置された前記継手管固定治具間をそれぞれ前記本管の外周に沿って配置される長さ調整可能な固定バンドと、
前記継手管固定治具に固定され、各継手管固定治具付近において周囲に広がる板状屋根材と、
両側部が各板状屋根材に固定されるとともに、内側端部が前記固定バンドに固定されるシート状屋根材と、
前記板状屋根材及びシート状屋根材の先端から垂下され、前記本管の周囲を囲う側面被覆材と、を備えることを特徴とする継杭溶接用防雨・防風ユニット。
【請求項2】
前記継手管固定治具は、クリップ式のロック機構により、前記継手管にワンタッチで装着可能となっている請求項1記載の継杭溶接用防雨・防風ユニット。
【請求項3】
前記継手管固定治具の端部に、前記固定バンドが挿通可能な挿通部が設けられており、
前記固定バンドの端部を前記挿通部に挿通し折り返した状態で、前記固定バンド同士が面ファスナーで固定されることにより、前記固定バンドの長さ調整が可能となっている請求項1記載の継杭溶接用防雨・防風ユニット。
【請求項4】
前記固定バンドの前記本管との密着面に、吸水シートが配置されている請求項1記載の継杭溶接用防雨・防風ユニット。
【請求項5】
前記板状屋根材は、前記継手管固定治具に対し、マグネット及びねじのいずれか又は両方で固定されている請求項1記載の継杭溶接用防雨・防風ユニット。
【請求項6】
前記シート状屋根材は、前記板状屋根材及び固定バンドに対しそれぞれ、面ファスナー及びボタンのいずれかにより固定されている請求項1記載の継杭溶接用防雨・防風ユニット。
【請求項7】
前記側面被覆材は、透明の防炎シートからなる請求項1記載の継杭溶接用防雨・防風ユニット。
【請求項8】
前記側面被覆材の一部に、作業員が出入り可能な開閉式の扉が設けられている請求項1記載の継杭溶接用防雨・防風ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管矢板の継杭溶接時における降雨及び風などを防ぐための防雨・防風ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、構造物の基礎杭や土留め壁、防波堤、防潮堤、防砂堤、護岸や岸壁などを構成するために、鋼管杭や鋼管矢板などが用いられている。前記鋼管矢板は、本管の両側にそれぞれ軸方向に沿って延びる継手管が設けられたものであり、隣り合う鋼管矢板間が継手構造を介して連結されることにより連続鋼管矢板壁を構成するものである。前記鋼管杭や鋼管矢板は、地中に貫入した鋼管杭や鋼管矢板の上端部に、次の鋼管杭や鋼管矢板の下端部を施工現場で溶接して順次継ぎ足し(継杭)することにより、所定の長さに形成される。
【0003】
前記鋼管杭や鋼管矢板の継杭溶接作業は、施工現場の露天環境下で行われるため、溶接中の急な降雨に伴う作業中断や風による溶接品質の低下など、天候による影響を受けやすい。
【0004】
このような天候の変化に対する対策として、下記特許文献1~3には、溶接箇所に防雨屋根を設置する方法が開示されている。これらの防雨屋根を設置する手順は、概ね次の通りである。継杭溶接部の上部に、杭を滴り落ちる水滴を止める止水バンドを巻き付けた後、この止水バンドの近傍に、作業部への雨滴の落下を防止する傘を取り付け、その後、必要に応じて風雨を防ぐ側面養生シートを傘の周縁に取り付ける。
【0005】
また、継杭溶接部への風雨を防止する従来の技術として、継杭溶接部の周囲を四角く囲うように、風よけ用の側部シート壁を設置する方法もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平5-64223号公報
【特許文献2】実用新案登録第3028128号公報
【特許文献3】特開2022-123315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1~3に記載される手段は以下の欠点がある。
・現場で対象となる杭径が様々であるため、その杭径に適合する多種の止水バンドや傘が必要となる。
・これらの文献ではいずれも鋼管杭を対象にしており、本管の両側に継手管を備えた鋼管矢板の場合には適用できない。
【0008】
また、風よけ用の側部シート壁を設置する方法では、横風に対しては効果があるが、上部から吹き込む風や降雨に対しては効果がない。
【0009】
そこで本発明の主たる課題は、様々な杭径に対応でき、確実に風雨を防ぐことができる継杭溶接用防雨・防風ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、本管の両側にそれぞれ軸方向に沿って延びる継手管が備えられた鋼管矢板の継杭溶接作業時に設置される継杭溶接用防雨・防風ユニットであって、
略C字状に形成され、各継手管に外嵌された状態で固定される継手管固定治具と、
帯状のバンド帯からなり、一方の端部が一方の前記継手管固定治具に支持されるとともに、他方の端部が他方の前記継手管固定治具に支持されることにより、前記本管の両側に配置された前記継手管固定治具間をそれぞれ前記本管の外周に沿って配置される長さ調整可能な固定バンドと、
前記継手管固定治具に固定され、各継手管固定治具付近において周囲に広がる板状屋根材と、
両側部が各板状屋根材に固定されるとともに、内側端部が前記固定バンドに固定されるシート状屋根材と、
前記板状屋根材及びシート状屋根材の先端から垂下され、前記本管の周囲を囲う側面被覆材と、を備えることを特徴とする継杭溶接用防雨・防風ユニットが提供される。
【0011】
上記請求項1記載の発明では、帯状のバンド帯からなり、一方の端部が一方の継手管固定治具に支持されるとともに、他方の端部が他方の継手管固定治具に支持される長さ調整可能な固定バンドが、本管の両側に配置された継手管固定治具間をそれぞれ本管の外周に沿って配置されるため、1組の部材で様々な杭径に対応でき、杭径に適合する多種の部材を用意する必要がなくなる。
【0012】
また、継杭溶接部の上部が、前記板状屋根材及びシート状屋根材で覆われ、これらの屋根材の先端から、本管の周囲を囲う側面被覆材が垂下されているため、溶接作業部への風雨を確実に防ぐことができる。
【0013】
請求項2に係る本発明として、前記継手管固定治具は、クリップ式のロック機構により、前記継手管にワンタッチで装着可能となっている請求項1記載の継杭溶接用防雨・防風ユニットが提供される。
【0014】
上記請求項2記載の発明では、前記継手管固定治具を継手管に固定する手段として、クリップ式のロック機構を採用することにより、継手管固定治具を継手管にワンタッチで装着できる。
【0015】
請求項3に係る本発明として、前記継手管固定治具の端部に、前記固定バンドが挿通可能な挿通部が設けられており、
前記固定バンドの端部を前記挿通部に挿通し折り返した状態で、前記固定バンド同士が面ファスナーで固定されることにより、前記固定バンドの長さ調整が可能となっている請求項1記載の継杭溶接用防雨・防風ユニットが提供される。
【0016】
上記請求項3記載の発明では、前記固定バンドを長さ調整可能とする具体的手段として、前記継手管固定治具の端部に、固定バンドが挿通可能な挿通部を設けておき、この挿通部に固定バンドの端部を挿通し折り返した状態で、この折り返した固定バンド部分が固定バンドの外面に固定できる面ファスナーを備えるようにしている。折り返した固定バンド部分が前記面ファスナーによって固定バンドの外面に任意の位置で固定できるため、様々な杭径に対応できるようになる。
【0017】
請求項4に係る本発明として、前記固定バンドの前記本管との密着面に、吸水シートが配置されている請求項1記載の継杭溶接用防雨・防風ユニットが提供される。
【0018】
上記請求項4記載の発明では、前記固定バンドの本管との密着面に吸水シートを配置することにより、本管の上部から本管を伝って流れ落ちる雨滴の浸入を防止している。
【0019】
請求項5に係る本発明として、前記板状屋根材は、前記継手管固定治具に対し、マグネット及びねじのいずれか又は両方で固定されている請求項1記載の継杭溶接用防雨・防風ユニットが提供される。
【0020】
上記請求項5記載の発明では、前記板状屋根材を継手管固定治具に固定する際の固定方法として、マグネット及びねじのいずれか又は両方を用いることにより、簡単に且つ高強度に固定できるようにしている。
【0021】
請求項6に係る本発明として、前記シート状屋根材は、前記板状屋根材及び固定バンドに対しそれぞれ、面ファスナー及びボタンのいずれかにより固定されている請求項1記載の継杭溶接用防雨・防風ユニットが提供される。
【0022】
上記請求項6記載の発明では、前記板状屋根材間に懸架されるシート状屋根材の板状屋根材及び固定バンドに対する固定方法として、面ファスナー又はボタンを用いている。
【0023】
請求項7に係る本発明として、前記側面被覆材は、透明の防炎シートからなる請求項1記載の継杭溶接用防雨・防風ユニットが提供される。
【0024】
上記請求項7記載の発明では、前記側面被覆材として、内部の作業状況が外部から把握できるようにするとともに、溶接作業のスパッタが飛散しても発炎しにくくするため、透明の防炎シートを用いている。
【0025】
請求項8に係る本発明として、前記側面被覆材の一部に、作業員が出入り可能な開閉式の扉が設けられている請求項1記載の継杭溶接用防雨・防風ユニットが提供される。
【0026】
上記請求項8記載の発明では、作業員が簡単に出入り可能なように、前記側面被覆材の一部に開閉式の扉を設けている。
【発明の効果】
【0027】
以上詳説のとおり本発明によれば、様々な杭径に対応でき、確実に風雨を防ぐことができる継杭溶接用防雨・防風ユニットが提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明に係る継杭溶接用防雨・防風ユニット1を用いた継杭溶接作業を示す斜視図である。
【
図2】継手管固定治具5及び固定バンド6を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。本発明に係る継杭溶接用防雨・防風ユニット1(以下、「防雨・防風ユニット1」という。)は、
図1に示されるように、本管3の両側にそれぞれ軸方向に沿って延びる継手管4、4が備えられた鋼管矢板2の継杭作業時に継杭溶接部を覆うように設置することにより、継杭溶接における降雨及び風などを防ぐためのものである。前記鋼管矢板2は、隣り合う鋼管矢板2、2間が前記継手管4、4を介して連結された連続鋼管矢板壁を構成するためのものであり、地中に貫入した鋼管矢板2の上端部に、次の鋼管矢板2の下端部を施工現場で溶接して順次継杭し、所定長さの鋼管矢板に形成される。
【0030】
本発明に係る防雨・防風ユニット1は、
図1に示されるように、略C字状に形成され、各継手管4に外嵌された状態で固定される継手管固定治具5と、帯状のバンド帯からなり、一方の端部が一方の前記継手管固定治具5に支持されるとともに、他方の端部が他方の前記継手管固定治具5に支持されることにより、本管3の両側に配置された継手管固定治具5、5間をそれぞれ本管3の外周に沿って配置される長さ調整可能な固定バンド6と、前記継手管固定治具5に固定され、各継手管固定治具5付近において周囲に広がる板状屋根材7と、両側部が各板状屋根材7、7に固定されるとともに、内側端部が前記固定バンド6に固定されるシート状屋根材8と、前記板状屋根材7及びシート状屋根材8の先端から垂下され、本管3の周囲を囲う側面被覆材9とを備えている。
【0031】
前記継手管固定治具5は、詳細には
図2に示されるように、前記継手管4に外嵌できるように、継手管4の外径に適合する内径を有する円環状の部材の周方向の一部を切り欠いて離隔部が設けられたC字状又はΩ状に形成された樹脂製の部材である。その内面(継手管4との密着面)には、例えばポリウレタン、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリオレフィンを原料とする繊維性や多孔性の素材からなる吸水シート5aが備えられている。前記吸水シート5aを備えることにより、継手管4の上部から継手管4を伝って流れ落ちる雨滴が前記吸水シート5aに吸水されるため、継杭溶接部まで雨滴が浸入するのを防止することができる。また、前記継手管固定治具5の内面(継手管4との密着面)にマグネットを配置し、継手管4に対し磁力によって吸着できるようにしてもよい。
【0032】
前記継手管固定治具5には、前記継手管固定治具5の周方向の離隔部の反対側に設けられた支持部から、継手管固定治具5の外面を周方向に沿って左右にそれぞれ延びるクリップ部材5b、5bが備えられており、このクリップ部材5b、5bが弾性力によって継手管固定治具5を外面側から押さえ付けるクリップ式のロック機構により、前記継手管固定治具5が、継手管4にワンタッチで装着できるようになっている。
【0033】
略C字状に形成された前記継手管固定治具5の周方向の一端部には、前記固定バンド6の一方側端部が溶着、接着及び/又は挟着されて固着される第1の固定バンド固定用端部5cが備えられ、他端部には、前記固定バンド6の他方側端部が挿通可能な縦長のスリット状の挿通部5eが備えられた第2の固定バンド固定用端部5dが備えられている。
図2に示されるように、鋼管矢板2の一方の継手管4に取り付けられた一方の継手管固定治具5は、前記第1の固定バンド固定用端部5cから延びる固定バンド6が、本管3の片側周面を周方向に沿って延び、他方の継手管4に取り付けられた他方の継手管固定治具5の前記第2の固定バンド固定用端部5dの挿通部5eに挿通され折り返された状態で、本管3に沿って配置された固定バンド6の外面と固定バンド6の折り返し部分6bの内面(本管3に沿って配置された固定バンド6の対向面)とが固定バンド6の折り返し部分6bの内面に備えられたフック型の面ファスナーによって固定される。また、同じ鋼管矢板2の他方の継手管4に取り付けられた他方の継手管固定治具5の前記第1の固定バンド固定用端部5cから延びる固定バンド6が、本管3の反対側周面を周方向に沿って延び、一方の継手管4に取り付けられた一方の継手管固定治具5の前記第2の固定バンド固定用端部5dの挿通部5eに挿通され折り返された状態で、本管3に沿って配置された固定バンド6の外面と固定バンド6の折り返し部分6bの内面(本管3に沿って配置された固定バンド6の対向面)とが固定バンド6の折り返し部分6bの内面に備えられたフック型の面ファスナーによって固定される。前記面ファスナーの固定位置を変化させることによって、固定バンド6の締め付け長さを任意の長さに変化させることが可能になる。
【0034】
前記固定バンド6は、ナイロンやポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステルなどのプラスチック製の可撓性を有するバンド帯であり、その内面(本管3との密着面)には、例えばポリウレタン、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリオレフィンを原料とする繊維性や多孔性の素材からなる吸水シート6aが備えられている。前記吸水シート6aを備えることにより、本管3の上部から本管3を伝って流れ落ちる雨滴が前記吸水シート6aに吸水されるため、継杭溶接部まで雨滴が浸入するのを防止することができる。
【0035】
前記板状屋根材7は、繊維強化プラスチック(FRP)などの軽量の素材からなる板状の屋根材であり、各継手管固定治具付近において周囲に広がるように配置されている。具体的には、本管3と継手管4との接続部における接線方向より外側において略半円形若しくは中心角が約180°の略扇形又は屋根材全体が多角形状になるように周縁に複数の頂部を有する形状で形成されている。前記板状屋根材7は、各継手管固定治具5にそれぞれ取り付けられており、本管3を挟んで両側に離隔して配置されている。
【0036】
前記板状屋根材7は、各継手管固定治具5に対し、マグネット及びねじのいずれか又は両方で固定されている。すなわち、継手管固定治具5の底部(鋼管矢板2の軸方向下端部)又は継手管固定治具5の外面下端部に、マグネットが備えられるとともに、前記板状屋根材7の継手管固定治具5に対する取付け部に前記マグネットに吸着するマグネットが備えられ、これらのマグネット同士を接合することにより固定されるようになっている。また、マグネットによる固定に代えて又はこれに加えて、両者をねじで固定することにより、より強固に固定できるようにしてもよい。
【0037】
前記シート状屋根材8は、左右に離隔して配置された板状屋根材7、7間の離隔部を被覆するように配置される屋根材の一部であり、防水性を有するシート材であれば公知のものを制限なく使用することができ、例えば、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリ塩化ビニルを原料とするシート材を使用できる。
【0038】
前記シート状屋根材8は、両側部が前記板状屋根材7、7にそれぞれ固定されるとともに、内側端部(本管3側の端部)が前記固定バンド6に固定される。このときの固定方法としては、面ファスナー又はボタンが用いられ、簡単に取り付け及び取り外しができるようになっている。
【0039】
前記板状屋根材7及びシート状屋根材8によって継杭溶接部の上部を本管3の全周に亘って覆う屋根材が形成され、この屋根材の周縁側の先端部から垂下して前記側面被覆材9が屋根材の全周に亘って設けられるようになっている。前記側面被覆材9は、外部からも内部の状況が把握できるように透明な素材が用いられるとともに、溶接作業に伴うスパッタが飛散しても発炎しにくく難燃性を有する防炎シートで構成されている。
【0040】
前記側面被覆材9の設置は、屋根材の全周に亘って垂下するシート材を配置し、このシート材の下端部を適宜固定するようにしてもよいが、
図1に示されるように、繊維強化プラスチックなどの軽量な素材からなる管材や棒材、アングル材等の型材などによって外枠及び中桟などを骨組みしたフレーム10を形成し、このフレーム10にシート材を張設したパネル状の側面被覆材ユニットを配置した方が、防雨・防風ユニット1の組立て及び解体の作業が簡単にできるようになるので好ましい。具体的には、前記板状屋根材7、7及びシート状屋根材8、8からなる屋根材の平面形状が全体として八角形や六角形などの多角形を有しており、この多角形の隣り合う頂部間に対応する幅で外枠及び中桟などからなるフレーム10を形成するとともに、これに側面被覆材9を張設したものを1つの側面被覆材ユニットとして、これを全面に亘って設置することにより、側面被覆材9を形成することができる。このように側面被覆材9をユニット化することによって、継杭溶接の都度必要な取り付けや取り外しの作業を簡単に行うことができ、作業性が向上できる。側面被覆材ユニットと板状屋根材7及びシート状屋根材8との接合並びに側面被覆材ユニット同士の接合にはマグネットを用いることにより、更に作業性を向上することができる。
【0041】
図1に示されるように、前記側面被覆材9の一部に、作業員が出入り可能な開閉式の扉11が設けられている。前記扉11としては、従来より公知のものを制限なく使用することができるが、好ましくは取手付きの蛇腹式又はアコーディオン式の透明又は半透明の防炎シートからなるビニールカーテンとするのがよい。
【0042】
次に、本発明に係る防雨・防風ユニット1を設置する手順について説明する。
図3に示されるように、先行して地中に貫入した鋼管矢板2の本管3の上端部と、次の鋼管矢板2の本管3の下端部との溶接部より上部側の所定の高さ位置の各継手管4に、継手管固定治具5を固定する。前記継手管固定治具5の設置は、クリップ部材5b、5bの弾性力を解除した状態で又はクリップ部材5b、5bの弾性力に抗して、継手管固定治具5本体の周方向の離隔部を広げて継手管4に外嵌させた後、クリップ部材5b、5bの弾性力を作用させ、継手管固定治具5を継手管4に固定する。
【0043】
継手管固定治具5の固定が完了したら、
図4に示されるように、両側の継手管固定治具5、5間に跨設するように、本管3の片側外面及び反対側外面に沿ってそれぞれ固定バンド6を設置する。前記固定バンド6は、継手管固定治具5の第2の固定バンド固定用端部5dの挿通部5eに挿通した折り返し部分6bを固定する位置の調整によって固定バンド6の長さ調整を行い、固定バンド6の内面に配置された吸水シート6aが本管3の外面に密着するようにしっかりと固定する。
【0044】
その後、
図5に示されるように、各継手管固定治具5に板状屋根材7を固定するとともに、
図6に示されるように、シート状屋根材8の両側部を両側の板状屋根材7、7に固定し、かつ内側端部を固定バンド6に固定して屋根材を取り付ける。
【0045】
しかる後、
図7に示されるように、側面被覆材9を、板状屋根材7及びシート状屋根材8の先端に固定するとともに、扉11を取り付ける。
【0046】
本発明に係る防雨・防風ユニット1では、長さ調整可能な固定バンド6が本管3の外周に沿って配置されるため、様々な杭径に対応でき、杭径に適合する多種の部材を用意する必要がなくなる。
【0047】
また、継杭溶接部の上部が板状屋根材7及びシート状屋根材8で覆われるとともに、側面が側面被覆材9で覆われているため、溶接作業部への風雨を確実に防ぐことができる。
【0048】
また、これまでに有効な対策が存在しなかった鋼管矢板の防雨・防風対策が可能となり、鋼管矢板の継杭溶接の品質低下が防止できる。
【0049】
また、防雨・防風ユニット1が各部材の組立てにより、足場上やステージ上など様々な作業環境に対応できる構造のため、適用範囲が広い。
【0050】
前記防雨・防風ユニット1を設置することによって、急な天候変化に伴う溶接作業の中断を防止できるため、着実な工事の工程管理が可能となる。
【0051】
防雨・防風ユニット1の鋼管矢板2への脱着が簡易であるため、従来の溶接準備に要する時間を30%程度低減できる。
【符号の説明】
【0052】
1…継杭溶接用防雨・防風ユニット(防雨・防風ユニット)、2…鋼管矢板、3…本管、4…継手管、5…継手管固定治具、6…固定バンド、7…板状屋根材、8…シート状屋根材、9…側面被覆材、10…フレーム、11…扉