(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001776
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】ウェブガイド装置、ウェブ幅計測方法、及びウェブ幅計測プログラム
(51)【国際特許分類】
B65H 43/08 20060101AFI20241226BHJP
B65H 23/038 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
B65H43/08
B65H23/038 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101438
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】597030442
【氏名又は名称】株式会社マシンテックス
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】深田 康一
【テーマコード(参考)】
3F048
3F104
【Fターム(参考)】
3F048AB01
3F048AB06
3F048AB07
3F048AB10
3F048AC02
3F048BA06
3F048CA03
3F048CC05
3F048DA06
3F048DB02
3F048DB06
3F048DC13
3F048DC20
3F104AA01
3F104AA03
3F104AA05
3F104AA07
3F104CA07
3F104CA27
3F104CA31
3F104CA36
(57)【要約】
【課題】アナログ式のエッジセンサを用いてウェブの幅を高精度で計測することができるウェブガイド装置を提供する。
【解決手段】ウェブの幅方向両端部の位置を検出する一対のエッジセンサ3を備えたウェブガイド装置1であって、エッジセンサ3から出力されたアナログ信号をデジタル変換したデジタル信号に基づいてエッジセンサ3の検出領域に対し非線形に変化する非線形データを取得する非線形データ取得手段41aと、非線形データを線形データに変換する変換手段41bと、線形データに基づいてウェブの幅を算出するウェブ幅算出手段41cとを備えるものとする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブの幅方向両端部の位置を検出する一対のエッジセンサを備えたウェブガイド装置であって、
前記エッジセンサから出力されたアナログ信号をデジタル変換したデジタル信号に基づいて前記エッジセンサの検出領域に対し非線形に変化する非線形データを取得する非線形データ取得手段と、
前記非線形データを線形データに変換する変換手段と、
前記線形データに基づいて前記ウェブの幅を算出するウェブ幅算出手段と、
を備えるウェブガイド装置。
【請求項2】
前記変換手段は、前記エッジセンサの検出領域を複数の区間に分割し、各区間において前記非線形データを直線近似して近似直線を設定するとともに、前記エッジセンサの検出領域において出力が線形に変化する理想直線を設定し、前記区間の夫々において前記近似直線を前記理想直線に変換する請求項1に記載のウェブガイド装置。
【請求項3】
前記ウェブが巻き掛けられるローラを前記ウェブの幅方向に揺動させて前記ウェブの蛇行を修正する蛇行修正機構と、
前記蛇行修正機構を制御する蛇行修正コントローラと、
をさらに備え、
前記蛇行修正コントローラは、前記非線形データ取得手段、前記変換手段及び前記ウェブ幅算出手段を含む請求項1又は2に記載のウェブガイド装置。
【請求項4】
前記エッジセンサを前記ウェブの幅方向に相対移動させる移動機構をさらに備える請求項1又は2に記載のウェブガイド装置。
【請求項5】
前記エッジセンサは、前記ウェブの厚み方向一側に配される発光部又は超音波発信部と、前記ウェブの厚み方向他側に配される受光部又は超音波受信部とを備え、前記受光部で受けた光量又は前記超音波受信部で受けた音量に基づいて前記ウェブの幅方向端部の位置を検出する請求項1又は2に記載のウェブガイド装置。
【請求項6】
ウェブの幅方向両端部の位置を検出する一対のエッジセンサから出力されたアナログ信号をデジタル変換したデジタル信号に基づいて前記エッジセンサの検出領域に対し非線形に変化する非線形データを取得する非線形データ取得工程と、
前記非線形データを線形データに変換する変換工程と、
前記線形データに基づいて前記ウェブの幅を算出するウェブ幅算出工程と、
を包含するウェブ幅計測方法。
【請求項7】
コンピュータに請求項6に記載のウェブ幅計測方法を実行させるためのウェブ幅計測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェブの幅方向両端部の位置を検出する一対のエッジセンサを備えたウェブガイド装置、当該ウェブガイド装置において実施されるウェブ幅計測方法、及び当該ウェブガイド装置において実行されるウェブ幅計測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
紙、不織布、フィルム、鋼板等の帯状の素材(以下、「ウェブ」と称する。)の製造ラインや所要の加工ラインにおいて、ウェブをローラに巻き掛けてライン下流側へと搬送する際に、ローラの不釣り合い等に起因してウェブが蛇行することがある。ウェブの蛇行は、生産性の低下や不良品の発生を招く原因となる。このため、ウェブの蛇行を修正する必要があり、ウェブの蛇行を修正する機能を有する装置として、ウェブガイド装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に開示されたウェブガイド装置には、ウェブの幅方向両端部の位置を検出する一対のアナログ式のエッジセンサ(位置検出装置)が設けられている。エッジセンサは、発光部と受光部とを備え、発光部から照射された光を受光部が受光して光量を検出できるように、ウェブの厚み方向にウェブを挟むようにして発光部と受光部とが配設されている。受光部は、制御部に電気的に接続されており、検出した光量に関する情報を含む検出信号を制御部に送信するようにされている。
【0004】
受光部が検出する光量は、ウェブの端部とエッジセンサとの相対的な位置の変化によって変化する。従って、制御部は、受光部からの検出信号に基づいて、ウェブの両端部と一対のエッジセンサとの相対的な位置を把握することができ、一対のエッジセンサとウェブとが所定の位置関係、より具体的には、一対のエッジセンサの中間線と、ウェブの中心軸とが一致しているか否かを把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、ウェブガイド装置においては、上記のように、一対のエッジセンサの中間線と、ウェブの中心軸とが一致しているか否かを把握することに加え、ウェブの幅を計測できることが求められている。
【0007】
ところで、特許文献1のウェブガイド装置で用いられる一対のエッジセンサからはアナログ信号が出力され、出力されたアナログ信号は、検出領域において非線形特性を示す。すなわち、光源から照射された光を受光部が受光して検出できる領域がエッジセンサの検出領域であり、この検出領域がウェブによって遮蔽された状態から当該検出領域に対するウェブの端部の相対的な位置変化によって開放される部分が拡がるに従って、受光部から出力されるアナログ信号は、出力値自体は上昇するものの、出力値の変化量が次第に小さくなる等、非線形に変化する。このため、一対のエッジセンサを用いたウェブ幅の計測は、信頼性が低く、精度に問題がある。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、アナログ式のエッジセンサを用いてウェブの幅を高精度で計測することができるウェブガイド装置、ウェブ幅計測方法、及びウェブ幅計測プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明に係るウェブガイド装置の特徴構成は、
ウェブの幅方向両端部の位置を検出する一対のエッジセンサを備えたウェブガイド装置であって、
前記エッジセンサから出力されたアナログ信号をデジタル変換したデジタル信号に基づいて前記エッジセンサの検出領域に対し非線形に変化する非線形データを取得する非線形データ取得手段と、
前記非線形データを線形データに変換する変換手段と、
前記線形データに基づいて前記ウェブの幅を算出するウェブ幅算出手段と、
を備えることにある。
【0010】
本構成のウェブガイド装置によれば、エッジセンサから出力されたアナログ信号をデジタル変換したデジタル信号に基づいてエッジセンサの検出領域に対し非線形に変化する非線形データが非線形データ取得手段によって取得され、取得された非線形データが、エッジセンサの検出領域に対し線形に変化する線形データに変換手段によって変換される。そして、この線形データに基づいてウェブの幅がウェブ幅算出手段によって算出されるので、比較的安価なアナログ式のエッジセンサを用いてウェブの幅を高精度で計測することができる。
【0011】
本発明に係るウェブガイド装置において、
前記変換手段は、前記エッジセンサの検出領域を複数の区間に分割し、各区間において前記非線形データを直線近似して近似直線を設定するとともに、前記エッジセンサの検出領域において出力が線形に変化する理想直線を設定し、前記区間の夫々において前記近似直線を前記理想直線に変換することが好ましい。
【0012】
本構成のウェブガイド装置によれば、エッジセンサの検出領域における複数の区間の夫々において非線形データを直線近似した近似直線が設定されるとともに、エッジセンサの検出領域において出力が線形に変化する理想直線が設定される。そして、エッジセンサの検出領域における複数の区間の夫々において、近似直線を理想直線に変換する処理が行われる。これにより、エッジセンサから出力されるアナログ信号の特性を反映した理想的な線形データを得ることができる。
【0013】
本発明に係るウェブガイド装置において、
前記ウェブが巻き掛けられるローラを前記ウェブの幅方向に揺動させて前記ウェブの蛇行を修正する蛇行修正機構と、
前記蛇行修正機構を制御する蛇行修正コントローラと、
をさらに備え、
前記蛇行修正コントローラは、前記非線形データ取得手段、前記変換手段及び前記ウェブ幅算出手段を含むことが好ましい。
【0014】
本構成のウェブガイド装置によれば、蛇行修正機構を制御する蛇行修正コントローラに、非線形データ取得手段、変換手段及びウェブ幅算出手段が含まれるので、蛇行修正コントローラとは別に、非線形データ取得手段、変換手段及びウェブ幅算出手段の機能を実現するためのコントローラを用意する必要がなく、装置構成の簡素化及び低コスト化を図ることができる。
【0015】
本発明に係るウェブガイド装置において、
前記エッジセンサを前記ウェブの幅方向に相対移動させる移動機構をさらに備えることが好ましい。
【0016】
本構成のウェブガイド装置によれば、例えば、製造ラインや所要の加工ラインにおいて、ウェブの幅の大きさが異なる複数種類のウェブを取り扱う場合、一対のエッジセンサの夫々の検出領域内に、ウェブの幅方向両端部が位置するように、一対のエッジセンサをウェブの幅方向に相対移動させる。これにより、幅の大きさが異なる複数種類のウェブの幅を計測することができる。
【0017】
本発明に係るウェブガイド装置において、
前記エッジセンサは、前記ウェブの厚み方向一側に配される発光部又は超音波発信部と、前記ウェブの厚み方向他側に配される受光部又は超音波受信部とを備え、前記受光部で受けた光量又は前記超音波受信部で受けた音量に基づいて前記ウェブの幅方向端部の位置を検出することが好ましい。
【0018】
受光部又は超音波受信部が検出する光量又は音量は、発光部又は超音波発信部と受光部又は超音波受信部との間に位置するウェブの端部との相対的な位置の変化によって変化する。本構成のウェブガイド装置によれば、受光部で受けた光量又は超音波受信部で受けた音量に基づいてウェブの幅方向端部の位置が検出されるので、エッジセンサの基準位置に対するウェブの端部のズレ(偏差)に基づいてウェブの幅を正確に計測することができる。
【0019】
上記課題を解決するための本発明に係るウェブ幅計測方法の特徴構成は、
ウェブの幅方向両端部の位置を検出する一対のエッジセンサから出力されたアナログ信号をデジタル変換したデジタル信号に基づいて前記エッジセンサの検出領域に対し非線形に変化する非線形データを取得する非線形データ取得工程と、
前記非線形データを線形データに変換する変換工程と、
前記線形データに基づいて前記ウェブの幅を算出するウェブ幅算出工程と、
を包含することにある。
【0020】
本構成のウェブ幅計測方法によれば、エッジセンサから出力されたアナログ信号をデジタル変換したデジタル信号に基づいてエッジセンサの検出領域に対し非線形に変化する非線形データが取得され(非線形データ取得工程)、取得された非線形データが、エッジセンサの検出領域に対し線形に変化する線形データに変換される(変換工程)。そして、この線形データに基づいてウェブの幅が算出される(ウェブ幅算出工程)ので、比較的安価なアナログ式のエッジセンサを用いてウェブの幅を高精度で計測することができる。
【0021】
上記課題を解決するための本発明に係るウェブ幅計測プログラムの特徴構成は、
コンピュータに上記記載のウェブ幅計測方法を実行させることにある。
【0022】
本構成のウェブ幅計測プログラムによれば、コンピュータにインストールされることによって、比較的安価なアナログ式のエッジセンサを用いた既存のウェブガイド装置であっても、ウェブの幅を高精度で計測することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るウェブガイド装置の一部を破断して示す平面図である。
【
図2】
図2は、エッジセンサ及びその出力特性の説明図である。
【
図3】
図3は、蛇行修正コントローラの機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、非線形データを線形データに変換する手法の説明図である。
【
図5】
図5は、線形化対象領域におけるウェブの偏差量に関する説明図である。
【
図7】
図7は、線形化キャリブレーション部において実行される処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることは意図しない。
【0025】
<全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るウェブガイド装置1の一部を破断して示す平面図である。
図1に示すように、本実施形態のウェブガイド装置1は、ウェブWの蛇行を修正する蛇行修正機構2と、一対のエッジセンサ3をウェブWの幅方向に相対移動させる移動機構4と、蛇行修正機構2等を制御する蛇行修正コントローラ5とを備えている。
【0026】
<蛇行修正機構>
蛇行修正機構2は、ベース10、可動フレーム11、ローラ12及び揺動機構13を備えている。ベース10は、図示されない製造ラインや加工ラインにおけるフレーム等に固定されている。可動フレーム11は、ベース10と対向配置されている。可動フレーム11には、ウェブWの搬送方向に所定間隔をあけて平行に配置される一対のローラ12(一方のみ図示)が回転自在に取り付けられている。一対のローラ12には、ウェブWが巻き掛けられている。揺動機構13は、可動フレーム11を支点軸14及び支持機構(図示省略)により支点軸14周りにベース10に対向した平行な面で自在に可動できる構造で、電動又は油圧などで駆動されるアクチュエータ(図示省略)を備え、蛇行修正コントローラ5からの制御信号にて揺動させることにより、可動フレーム11を介して一対のローラ12を当該一対のローラ12の両方の中心軸を含む面に沿ってウェブWの幅方向に揺動させるように構成されている。支点軸14については機械的な支点の他に仮想支点で構成する場合もある。
【0027】
<移動機構>
移動機構4は、一対のエッジセンサ3を保持する一対の保持部材20と、一対のエッジセンサ3に対応するようにベース10に配設される一対のねじ機構21とを備えている。ここで、ねじ機構21は、ねじ軸部とナット部とを有するねじ22と、ねじ22のねじ軸部に回転動力伝達可能に連結されるモータ23とを備えている。移動機構4においては、保持部材20の一端側がエッジセンサ3の後述するフレーム30に固定され、保持部材20の他端側がねじ22のナット部に固定され、モータ23からの回転動力をねじ22にて直線動力に変換し、この直線動力を一対の保持部材20を介して一対のエッジセンサ3に伝達可能に構成されている。そして、蛇行修正コントローラ5からの制御信号にてモータ23を正転又は逆転させることにより、エッジセンサ3をウェブWの幅方向に相対移動させることができる。
【0028】
<エッジセンサ>
図2は、エッジセンサ3及びその出力特性の説明図である。
図2(a)は、エッジセンサ3とウェブWの端部との相対位置関係を示す図である。
図2(a)に示すように、一対のエッジセンサ3は、ウェブWの幅方向両端部の位置を検出するものであり、フレーム30、発光部31及び受光部32を備えている。フレーム30は、ウェブWが配される側に開かれた溝形状に形成されており、ウェブWの端部を間に挟むように対向配置される一対のアーム部30a,30bを有している。一対のアーム部30a,30bにおける一方側のアーム部30aには、ウェブWの端部に光を照射可能に発光部31が埋設されている。他方側のアーム部30bには、発光部31から照射された光を受光可能に受光部32が埋設されている。発光部31は、例えば、赤外線等を発する発光ダイオードを備え、受光部32は、例えば、フォトダイオードを備え、発光部31から照射された断面円形の光を受光部32で受けるように、発光部31と受光部32とを対にして用いることで光センサとして機能し、両者間に位置するウェブWの端部の相対位置の変化に伴う受光光量の変化に応じたアナログ信号(電圧又は電流)が受光部32から出力されるように構成されている。受光部32は、蛇行修正コントローラ5に電気的に接続されており、検出した光量に関する情報を含む検出信号を蛇行修正コントローラ5に送信する。
【0029】
図2(b)は、エッジセンサ3の検出領域Rとアナログ信号出力との関係を示すグラフである。
図2(b)に示すように、受光部32から出力されたアナログ信号は、検出領域Rにおいて非線形特性を示す。すなわち、発光部31から照射された光を受光部32が受光して検出できる領域がエッジセンサ3の検出領域Rである。この検出領域RがウェブWによって遮蔽された状態から当該検出領域Rに対するウェブWの端部の相対的な位置変化によって開放される部分が拡がるに従って、受光部32から出力されるアナログ信号は、出力値自体は上昇するものの、出力値の変化量が次第に小さくなる等、非線形に変化する。すなわち、検出領域RがウェブWによって遮蔽される位置からウェブWの端面までの距離(X:
図2(a)参照)の大きさが大きくなるに従って(
図2(b)のグラフの横軸において開放側(右側)に進むに従って)、受光部32から出力されるアナログ信号は、出力値の変化量が次第に小さくなる等、非線形に変化する。このため、ウェブWの幅を計測するにあたっては、後述する線形化キャリブレーション処理を行う必要がある。
【0030】
受光部32が検出する光量は、ウェブWの端部とエッジセンサ3との相対的な位置の変化によって変化する。従って、蛇行修正コントローラ5は、受光部32からの検出信号に基づいて、ウェブWの両端部と一対のエッジセンサ3との相対的な位置を把握することができ、一対のエッジセンサ3とウェブWとが所定の位置関係、より具体的には、一対のエッジセンサ3の中間線と、ウェブWの中心軸とが一致しているか否かを把握することができるとともに、エッジセンサ3の基準位置に対するウェブWの端部のズレ(偏差)を計測することができる。
【0031】
なお、一対のエッジセンサ3において、発光部31に代えて超音波発信部を用い、受光部32に代えて超音波受信部を用い、超音波受信部で受けた音量に基づいて、一対のエッジセンサ3の中間線とウェブWの中心軸とが一致しているか否かを把握するとともに、エッジセンサ3の基準位置に対するウェブWの端部のズレ(偏差)を計測するようにしてもよい。
【0032】
<蛇行修正コントローラ>
図3は、蛇行修正コントローラ5の機能ブロック図である。
図3に示す蛇行修正コントローラ5は、コンピュータを主体に構成されており、エッジセンサ3からのアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換部40と、線形化キャリブレーション処理等を行う線形化キャリブレーション部41と、蛇行修正機構2を制御する蛇行修正機構制御部42と、移動機構4を制御する移動機構制御部43とを備えている。蛇行修正コントローラ5においては、所定プログラムがMPU(Micro Processor Unit)で実行されることにより、A/D変換部40、線形化キャリブレーション部41、蛇行修正機構制御部42及び移動機構制御部43の夫々の機能が発揮される。
【0033】
線形化キャリブレーション部41は、非線形データ取得手段41a、変換手段41b及びウェブ幅算出手段41cを含む。
【0034】
<非線形データ取得手段>
図4は、非線形データを線形データに変換する手法の説明図である。
図4(a)は、エッジセンサ3の検出領域R内に設定される線形化対象領域Raの説明図である。
図4(b)は、エッジセンサ3の線形化対象領域Raと当該線形化対象領域Raに対し設定される近似直線BL1~BL4及び理想直線CLとの関係を示すグラフである。
図4(a)に示すように、エッジセンサ3の検出領域Rの内側には、当該検出領域Rよりも、例えば5~10%程度狭い線形化対象領域Raが設定される。すなわち、エッジセンサ3の検出領域RにおけるウェブWの端部の相対的な位置変化によるアナログ信号の変化量が所定の閾値以上かつ閾値以下である部分を、線形化処理を行う対象領域として、線形化対象領域Raが設定される。つまり、エッジセンサ3の検出領域Rにおける受光部32から出力されるアナログ信号の変化量が極端に小さくなる部分を除くように、線形化対象領域Raが設定される。そして、
図4(b)において、図中記号ALを付した破線ラインで示すように、非線形データ取得手段41a(
図3参照)は、A/D変換部40からのデジタル信号に基づいて、線形化対象領域Raにおいて非線形に変化する非線形データを取得する。
【0035】
<変換手段>
変換手段41b(
図3参照)は、
図4(b)に示すように、エッジセンサ3の検出領域Rの内側における線形化対象領域Raを複数(本例では4つ)の区間K1~K4に分割し、各区間K1~K4において非線形データ(ラインAL:
図4(b)参照)を直線近似して近似直線BL1~BL4を設定する。また、変換手段41bは、線形化対象領域Raにおいて出力が線形に変化する理想直線CLを設定する。そして、変換手段41bは、近似直線BL1~BL4を理想直線CL(CL1~CL4)に変換する処理を行う。ここでの変換処理としては、例えば、複数の区間の夫々において近似直線BL1~BL4を理想直線CL1~CL4に変換する変換式を導出し、導出した変換式にて近似直線BL1~BL4を理想直線CL1~CL4に変換するというものが挙げられる。変換式を導出する具体的方法は種々考えられるが、例えば、各区間K1~K4における近似直線BL1~BL4の両端の座標点データ(本例では、
図4(b)のグラフにおいて、[点M1,点M2]、[点M2,点M3]、[点M3,点M4]、[点M4,点M5]の座標点データ)と、各区間K1~K4において近似直線BL1~BL4に応する理想直線CL1~CL4上の座標点データ(本例では、
図4(b)のグラフにおいて、[点N1,点N2]、[点N2,点N3]、[点N3,点N4]、[点N4,点N5]の座標点データ)とに基づいて幾何学的に変換式を得ることができる。或いは、各区間K1~K4において、近似直線BL1~BL4と理想直線CL1~CL4とを夫々関数式で表して、両関数式の関係から変換式を得ることもできる。
【0036】
こうして、デジタル信号の出力値と線形化対象領域Raとが非線形の関係にある
図4(b)中記号ALを付した破線ラインで示すような非線形データが、デジタル信号の出力値と線形化対象領域Raとが線形の関係にある線形データ(理想直線CL)に変換される。
図4(b)に示す線形データ(理想直線CL)によれば、開放率が0%の場合は、線形化対象領域RaがウェブWによって完全に塞がれた状態であり、出力は最小(電圧:0V)を示す。開放率が100%の場合は、線形化対象領域RaがウェブWによって塞がれずに完全に開放された状態であり、出力は最大(電圧:設定電圧上限値Vmax)を示す。開放率が0%から100%の間において増加/減少する際には、開放率X_%の増加/減少に対し、受光部32から出力される、変換手段41bによる変換処理後のデジタル信号出力(Vx_cal)が線形に変化する。
【0037】
図5は、線形化対象領域RaにおけるウェブWの偏差量X_errに関する説明図である。
図5(a)は、エッジセンサ3の線形化対象領域RaにおけるウェブWの偏差量X_errの定義の説明図である。
図5(a)においては、エッジセンサ3の基準位置(中心位置)に対するウェブWの端部のズレの大きさが偏差量X_errで示されている。ここで、偏差量X_errは、後述する偏差量Xl_err及び偏差量Xr_errを総称するものである。
【0038】
図5(b)は、エッジセンサ3の線形化対象領域Raと偏差量X_errとの関係を示すグラフである。例えば、
図5(b)に示すように、ウェブWの幅方向における線形化対象領域Raの長さを10.0mmに設定した場合、線形化対象領域RaにおけるウェブWの端面までの長さによって特定される位置と、線形化対象領域Raの開放率とを以下のように対応させて関係付けられる。すなわち、線形化対象領域RaにおけるウェブWの端面までの長さが0.0mmの位置と、線形化対象領域Raの開放率0%(
図4(b)参照)とが対応するように関係付けられる。同様に、線形化対象領域RaにおけるウェブWの端面までの長さが5.0mmの位置と、線形化対象領域Raの開放率50%(
図4(b)参照)とが対応するように関係付けられる。同様に、線形化対象領域RaにおけるウェブWの端面までの長さが10.0mmの位置と、線形化対象領域Raの開放率100%(
図4(b)参照)とが対応するように関係付けられる。ここで、
図5(b)において、線形化対象領域RaにおけるウェブWの端面までの長さ0.0mm~10.0mmの間の任意の位置がX_mmと表記される。
【0039】
図4(b)と
図5(b)とを対比して説明する。
図4(b)において、受光部32から出力される、変換手段41bによる変換処理後のデジタル信号出力(Vx_cal)が0の場合、線形化対象領域Raの開放率が0%である。開放率0%は、線形化対象領域RaがウェブWによって完全に塞がれて遮蔽されていることを示す。このことから、
図5(b)において、線形化対象領域RaにおけるウェブWの端面までの長さが0.0mmの位置における偏差量X_errは+5.0mmとなる。
図4(b)において、Vx_calがVmaxの場合、線形化対象領域の開放率が100%である。開放率100%は、線形化対象領域RaがウェブWによって塞がれずに完全に開放されていることを示す。このことから、
図5(b)において、線形化対象領域Raの長さ10.0mmの位置における偏差量X_errは-5.0mmとなる。
図4(b)において、Vx_calが0とVmaxとの中間値(Vmid)の場合、線形化対象領域Raの開放率が50%であるとする。開放率が50%は、線形化対象領域Raの半分がウェブWによって塞がれ、残り半分が塞がれずに開放されていることを示す。このことから、
図5(b)において、線形化対象領域RaにおけるウェブWの端面までの長さが5.0mmの位置、つまりエッジセンサ3の基準位置(中心位置)にウェブWの端面が位置することから、当該5.0mmの位置における偏差量X_errは0.0mmとなる。
図4(b)において、Vx_calが0からVmaxの間で増加/減少する場合、線形化対象領域Raの開放率X_%は、理想直線CLの傾きの大きさの度合いに応じて増加/減少し、
図5(b)において、線形化対象領域RaにおけるウェブWの端面までの長さX_mmの位置における偏差量X_errは+5.0mmと-5.0mmとの間で減少/増加する。すなわち、
図5(b)に示すように、線形化対象領域RaにおけるウェブWの端面までの長さX_mmと偏差量X_errとは、直線DLに示すような線形に変化する関係となる。ここで、直線DLは、線形化対象領域Raの長さ5.0mmにおいて横軸と直交する仮想の縦軸Fを設定した場合に、その仮想の縦軸Fを基準として、
図4(b)のグラフにおける理想直線CLと対称関係となるように投影された直線である。
【0040】
<ウェブ幅算出手段>
図6は、ウェブ幅の算出法の説明図である。
図6(a)は、一対のエッジセンサ3に対するウェブWの相対位置関係を示す図である。
図6(b)は、
図6(a)のG-G矢視図である。ウェブ幅算出手段41cは、変換手段41bによって変換された線形データ(理想直線CL)に基づいて得られた偏差量X_err(Xl_err、Xr_err)を含む種々のデータからウェブWの幅WWを算出する。すなわち、「Set」、「Xl_err」及び「Xr_err」について、以下のように定義した場合、ウェブ幅算出手段41cは、以下の式(1)により、ウェブWの幅WWを算出する。
ウェブの幅WW = Set + Xl_err + Xr_err ・・・(1)
「Set」:一対のエッジセンサ3の基準位置間距離(検出中心間距離)。
「Xl_err」:一対のエッジセンサ3のうちの一方側(
図6において左側)のエッジセンサ3によって検出される偏差量(X_err:
図5(a)参照)。
「Xr_err」:一対のエッジセンサ3のうちの他方側(
図6において右側)のエッジセンサ3によって検出される偏差量(X_err:
図5(a)参照)。
なお、上記「Set」は、例えば、移動機構4におけるモータ23に付設されたエンコーダからの信号あるいは移動機構4の機械原点からの距離に換算したパルス数などの信号に基づいて蛇行修正コントローラ5が計測可能な既知の値である。
【0041】
図7は、線形化キャリブレーション部41において実行される線形化キャリブレーション処理等の手順を示すフローチャートである。なお、
図7中記号「S」はステップを表す。
【0042】
<S1~S2>
[線形化対象領域設定工程、非線形データ取得工程]
蛇行修正コントローラ5において、まず、線形化キャリブレーション部41における非線形データ取得手段41aは、
図4(a)に示すように、エッジセンサ3の検出領域Rの内側に線形化対象領域Raを設定する(S1:線形化対象領域設定工程)。次いで、非線形データ取得手段41aは、A/D変換部40からのデジタル信号に基づいて、線形化対象領域Raにおいて非線形に変化する非線形データ(ラインAL:
図4(b)参照)を取得する(S2:非線形データ取得工程)。
【0043】
<S3~S5>
[分割工程、直線設定工程、変換工程]
線形化キャリブレーション部41における変換手段41bは、
図4(b)に示すように、線形化対象領域Raを複数の区間K1~K4に分割する(S3:分割工程)。次いで、変換手段41bは、各区間K1~K4において非線形データ(ラインAL)を直線近似して近似直線BL1~BL4を設定するとともに、線形化対象領域Raにおいて出力が線形に変化する理想直線CL(CL1~CL4)を設定する(S4:近似・理想直線設定工程)。そして、変換手段41bは、近似直線BL1~BL4を理想直線CL1~CL4に変換する処理を行う(S5:変換工程)。
【0044】
こうして、エッジセンサ3の検出領域Rの内側に設定された線形化対象領域Raにおける複数の区間K1~K4の夫々において非線形データ(ラインAL:
図4(b)参照)を直線近似した近似直線BL1~BL4が設定されるとともに、エッジセンサ3の線形化対象領域Raにおいて出力が線形に変化する理想直線CLが設定される。そして、エッジセンサ3の線形化対象領域Raにおける複数の区間K1~K4の夫々において、近似直線BL1~BL4を理想直線CL(CL1~CL4)に変換する処理が行われる。これにより、エッジセンサ3から出力されるアナログ信号の特性を反映した理想的な線形データを得ることができる。
【0045】
<S6>
そして、線形化キャリブレーション部41におけるウェブ幅算出手段41cは、変換手段41bによって変換された線形データ(理想直線CL)に基づいて得られた偏差量X_errを含む種々のデータから、上記式(1)により、ウェブWの幅WWを算出する。こうして、比較的安価なアナログ式のエッジセンサ3を用いてウェブWの幅WWを高精度で計測することができる。
【0046】
本実施形態のウェブガイド装置1において、蛇行修正コントローラ5は、受光部32からの検出信号に基づいて、ウェブWの両端部と一対のエッジセンサ3との相対的な位置を把握することができる。従って、ウェブWの両端部と一対のエッジセンサ3との相対的な位置関係からウェブWが蛇行していると判断した場合には、揺動機構13に制御信号を送信して可動フレーム11を介して一対のローラ12を当該一対のローラ12の両方の中心軸を含む面に沿ってウェブWの幅方向に揺動させることにより、ウェブWの蛇行を修正することができる。
【0047】
例えば、製造ラインや所要の加工ラインにおいて、ウェブWの幅の大きさが異なる複数種類のウェブWを取り扱う場合、ウェブWの幅の大きさに合わせてウェブWに対する一対のエッジセンサ3の相対位置が適切となるように調整する必要がある。このような場合、蛇行修正コントローラ5は、移動機構4に制御信号を送信して一対のエッジセンサ3をウェブWの幅方向に相対移動させることにより、一対のエッジセンサ3の夫々の検出領域R(線形化対象領域Ra)内にウェブWの幅方向両端部が位置検出可能に位置するようにすることができる。こうして、幅の大きさが異なる複数種類のウェブWの幅WWを計測することができる。
【0048】
本実施形態のウェブガイド装置1においては、蛇行修正機構2を制御する蛇行修正コントローラ5に、非線形データ取得手段41a、変換手段41b及びウェブ幅算出手段41cが含まれるので、蛇行修正コントローラ5とは別に、非線形データ取得手段41a、変換手段41b及びウェブ幅算出手段41cの機能を実現するためのコントローラを用意する必要がなく、装置構成の簡素化及び低コスト化を図ることができる。
【0049】
以上、本発明のウェブガイド装置、ウェブ幅計測方法、及びウェブ幅計測プログラムについて、一実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のウェブガイド装置、ウェブ幅計測方法、及びウェブ幅計測プログラムは、例えば、紙、不織布、フィルム、鋼板等の帯状の素材(ウェブ)の製造ラインや所要の加工ラインにおいて、ウェブの幅を計測する用途において特に有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 ウェブガイド装置
2 蛇行修正機構
3 エッジセンサ
4 移動機構
5 蛇行修正コントローラ
12 ローラ
31 発光部
32 受光部
41a 非線形データ取得手段
41b 変換手段
41c ウェブ幅算出手段
W ウェブ