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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017778
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/08 20060101AFI20250130BHJP
【FI】
H01Q13/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121015
(22)【出願日】2023-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】312012287
【氏名又は名称】株式会社HYSエンジニアリングサービス
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 健
【テーマコード(参考)】
5J045
【Fターム(参考)】
5J045AA12
5J045AA14
5J045CA02
5J045CA03
5J045HA03
(57)【要約】
【課題】この発明は、給電点と反射板の給電端子との間を給電部材を用いて接続した垂直水平偏波共用型パッチアンテナの、特定の1周波数の交差偏波特性の向上を図る。
【解決手段】この発明の一態様は、パッチおよびストリップ線路に設けた水平偏波用の第1の給電点および垂直偏波用の第2の給電点と、反射板に設けた水平偏波用の第1の給電端子および垂直偏波用の第2の給電端子との間を、それぞれ給電部材を介して接続した水平垂直偏波共用のアンテナ装置において、前記パッチ上に、前記第1の給電点と所定の位置関係を有して第1の短絡点を配置すると共に、前記パッチ上に、前記第2の給電点と所定の位置関係を有して第2の短絡点を配置し、前記第1の短絡点と前記反射板の接地面との間および前記第2の短絡点と前記反射板の接地面との間を、それぞれ第1の短絡部材および第2の短絡部材により接続するようにしたものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッチおよびストリップ線路に設けた水平偏波用の第1の給電点および垂直偏波用の第2の給電点と、反射板に設けた水平偏波用の第1の給電端子および垂直偏波用の第2の給電端子との間を、それぞれ給電部材を介して接続した水平垂直偏波共用のアンテナ装置であって、
前記パッチ上に、前記第1の給電点と所定の位置関係を有して配置される第1の短絡点と、
前記パッチ上に、前記第2の給電点と所定の位置関係を有して配置される第2の短絡点と、
前記第1の短絡点と前記反射板の接地面との間を接続する第1の短絡部材と、
前記第2の短絡点と前記反射板の接地面との間を接続する第2の短絡部材と
を備えるアンテナ装置。
【請求項2】
前記パッチと前記反射板との間の空隙は、0.03λ以上に設定される請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記パッチは正方形状をなし、前記第1の給電点および前記第1の短絡点と、前記第2の給電点および前記第2の短絡点とが、前記パッチ上で前記座標中心に対し互いに直交する位置に配置される、請求項1に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の一態様は、アンテナ素子としてパッチを用いたアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナ装置の一つとして、パッチと呼ばれる金属片をアンテナ素子として用いたパッチアンテナが知られている。パッチアンテナは、アンテナ構造が簡単で薄型化が容易であるため、例えば無線タグのような小型の無線デバイスをはじめ、多くのデバイスに広く使用されている。
【0003】
ところで、パッチアンテナには、パッチに対し2方向から給電することで直交する2種類の偏波を送信または受信可能とした垂直水平偏波共用型のパッチアンテナがある。この種のパッチアンテナは、例えば偏波方向を任意に切替えることで、相手側のアンテナの状態に応じて偏波方向が変化する場合でも、通信可能な状態を維持できるという利点を有する(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-39756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載されるパッチアンテナは、接地パターンが形成された反射板に対し一定の空隙(パッチと反射板との間が0.03λ以上の場合)または誘電体を隔ててパッチを配置し、パッチの給電点と反射板に設けられた給電端子との間を給電ピンで接続する構造となっている。このため、一方の給電系によるパッチと反射板との間の偏波の電界分布が、他方の給電系の給電ピンにより乱れ、その影響により交差偏波特性の劣化を招くという課題がある。
【0006】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、給電点と反射板の給電端子との間を給電部材を用いて接続した垂直水平偏波共用型のパッチアンテナにおいて、偏波間の特定の1周波数の交差偏波特性を向上させることが可能な技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためにこの発明に係るアンテナ装置の一態様は、パッチおよびストリップ線路に設けた水平偏波用の第1の給電点および垂直偏波用の第2の給電点と、反射板に設けた水平偏波用の第1の給電端子および垂直偏波用の第2の給電端子との間を、それぞれ給電部材を介して接続した水平垂直偏波共用のアンテナ装置において、前記パッチ上に、前記第1の給電点と所定の位置関係を有して第1の短絡点を配置すると共に、前記パッチ上に、前記第2の給電点と所定の位置関係を有して第2の短絡点を配置し、前記第1の短絡点と前記反射板の接地面との間および前記第2の短絡点と前記反射板の接地面との間を、それぞれ第1の短絡部材および第2の短絡部材により接続するようにしたものである。
【0008】
この発明の一態様によれば、垂直偏波および水平偏波の送受信時に、他方の給電部材によりパッチと反射板との間で発生する電界分布の乱れは対称化され、これにより垂直偏波と水平偏波との間の特定の1周波数の交差偏波識別度が改善されて、各偏波の無線信号の品質を高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
すなわちこの発明の一態様によれば、給電点と反射板の給電端子との間を給電部材を用いて接続した垂直水平偏波共用型のパッチアンテナにおいて、偏波間の特定の1周波数の交差偏波特性を向上させることが可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、この発明の一実施形態に係るアンテナ装置のアンテナ部分の構造の一例を示す平面図である。
図2図2は、図1に示したアンテナ装置のA-A矢視断面図である。
図3図3は、図1に示したアンテナ装置において給電ピンに対する短絡ピンの配置位置関係を説明するための図である。
図4図4は、図1に示したアンテナ装置による垂直偏波の水平面指向特性の一例を示す図である。
図5図5は、短絡ピンを有しない従来の同種のアンテナ装置の構造を示す平面図である。
図6図6は、図5に示したアンテナ装置による垂直偏波の水平面指向特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
【0012】
[一実施形態]
(構成例)
図1および図2は、この発明の一実施形態に係るアンテナ装置のアンテナ部分の構造の一例を示すもので、図1はその平面図、図2図1のA-A矢視断面図である。
【0013】
一実施形態におけるアンテナ装置は、パッチ1と、このパッチ1の裏面側に所定の空隙を隔てて対向配置される反射板2とを有する。但し、パッチ1と反射板2との間は0.03λ以上とする。パッチ1は例えば正方形状の金属片からなる。反射板2は、表面全面に接地パターンを形成した基板により構成される。なお、パッチの形状は六角形などの多角形状や円形状であってもよい。
【0014】
パッチ1には、そのY軸上の一点に水平偏波用の給電点31aおよびストリップ線路3が設けられ、またZ軸上の一点に垂直偏波用の給電点31bおよびストリップ線路4が設けられている。一方、反射板2の上記各給電点31a,31bと対向する位置には、それぞれ水平偏波用の給電端子32aと、垂直偏波用の給電端子32bが配置されている。
【0015】
そして、上記水平偏波用の給電点31aと給電端子32aとの間は、水平偏波用の給電ピン33aにより接続され、また上記垂直偏波用の給電点31bと給電端子32bとの間は、垂直偏波用の給電ピンにより接続されている。上記各給電端子32a,32bは図示しない給電回路に接続される。
【0016】
ところで、一実施形態におけるアンテナ装置は、上記パッチ1の上記水平偏波用の給電点31aと、短絡点41a1,41a2とを備えている。また、アンテナ装置は、上記パッチ1の上記垂直偏波用の給電点31bと、短絡点41b1,41b2とを備えている。そして、上記各短絡点41a1,41a2および41b1,41b2をそれぞれ短絡ピン43a1,43a2および43b1,43b2を介して反射板2の接地パターンに接続している。
【0017】
図3は、各給電点31aおよび31bと上記短絡点41a1,41b2および41b1,41b2との位置関係の具体例を示すものである。同図に示すように、短絡点41a1,41b2とパッチ1の座標中心との間の距離y2と、給電点31aとパッチ1の座標中心との間の距離y1とは、それぞれ個別の長さに設定され、また短絡点41b1,41b2とパッチ1の座標中心との間の距離z2と、給電点31bとパッチ1の座標中心との間の距離z1とは、それぞれ個別の長さに設定される。
【0018】
(動作例)
このような構成であるから、水平偏波用の給電端子32aおよび垂直偏波用の給電端子32bにそれぞれ給電を行うと、その電流がそれぞれ給電ピン33aを介してパッチ1の給電点31a,31bに供給され、これによりパッチ1から水平偏波および垂直偏波の電磁波が生成される。
【0019】
このとき、上記水平偏波および垂直偏波にとって、他方側となる垂直偏波用の給電ピンおよび水平偏波用の給電ピン33aによりパッチ1と反射板2との間で発生する電界分布の乱れは、それぞれ上記垂直偏波用の給電ピンと短絡ピン43b1,43b2により、また水平偏波用の給電ピン33aと短絡ピン43a1,43a2により対称となる。
【0020】
この結果、垂直偏波と水平偏波との間の特定の1周波数の交差偏波識別度は改善され、これにより垂直偏波による無線信号は水平偏波の影響が軽減された状態で送信することが可能となる。また、同様に水平偏波による無線信号は垂直偏波の影響が軽減された状態で送信することが可能となる。
【0021】
図4は、上記各偏波のうち垂直偏波の水平面指向特性の一例を示すものである。この指向特性から明らかなように、垂直偏波m1にノイズとして混入する水平偏波m2の成分は抑圧されたものとなる。
【0022】
因みに、図6は、図5に例示するように短絡ピンを持たないパッチアンテナ、すなわち給電点31a,31bと反射板2の給電端子との間を接続する給電ピンのみを有するパッチアンテナによる垂直偏波の水平面指向特性を示したものである。図6に示すように、給電ピンしか持たないパッチアンテナでは、垂直偏波m1にノイズとして混入する水平偏波m2の成分は比較的大きなものとなる。
【0023】
(効果)
以上述べたように一実施形態では、パッチ1の給電点31a,31bと反射板2に設けられた給電端子32a,32bとの間を給電ピン33aを介して接続するタイプのパッチアンテナにおいて、上記パッチ1の給電点31a,31bと短絡点41a1,41b2および41b1,41b2とを設け、これらの短絡点41a1,41b2および41b1,41b2をそれぞれ短絡ピン43a1,43a2および43b1,43b2を介して反射板2に接続するようにしている。また、短絡点は少なくとも2か所以上としている。
【0024】
従って、垂直偏波および水平偏波の送受信時に、他方の給電ピン33aによりパッチ1と反射板2との間で発生する電界分布の乱れは対称化され、これにより垂直偏波と水平偏波との間の特定の1周波数の交差偏波識別度が改善されて、垂直偏波および水平偏波の各無線信号の品質を高めることが可能となる。
【0025】
特に、一実施形態では、水平および垂直の2つの偏波のいずれも同一の周波数で共振するようにパッチ1を正方形状としているので、偏波間の干渉が生じやすい。しかし、一実施形態のように給電ピン33aと、短絡ピン43a1,43a2および43b1,43b2とを設けて、垂直偏波と水平偏波との間の特定の1周波数の交差偏波特性を改善するようにしたことで、特定の周波数に対し各偏波の品質向上に大きな効果が奏される。
【0026】
[その他の実施形態]
前記一実施形態では、パッチ1と反射板2とを空隙(パッチ1と反射板2との間が0.03λ以上の場合)を隔てて対向配置するタイプのパッチアンテナを例にとって説明したが、パッチ1と反射板2とを誘電体を介して対向配置するタイプのパッチアンテナにも同様に適用可能である。
【0027】
また、一実施形態ではパッチ1を正方形状に形成し、互いに直交する位置に給電点31a,31bを配置した場合を例にとって説明したが、パッチを六角形状に形成し、このパッチに等間隔で3個の給電点を設ける場合にも、この発明は適用可能である。この場合には、各給電点とパッチ座標中心を挟んだ位置にそれぞれ短絡点を配置して、これらの短絡点をそれぞれ短絡ピンにより反射板の接地パターンに接続する構成とすればよい。
【0028】
その他、パッチおよび反射板の形状やサイズ、給電部材および短絡部材の構成等についても、この発明の要旨を逸脱しないで種々変形して実施可能である。
【0029】
以上、この発明の実施形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点においてこの発明の例示に過ぎない。この発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、この発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0030】
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1…パッチ
2…反射板
3,4…ストリップ線路
31a,31b…給電点
32a,32b…給電端子
33a…給電ピン
41a,41b…短絡点
43a,43b…短絡ピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6