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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025177795
(43)【公開日】2025-12-05
(54)【発明の名称】光源装置及びエネルギービーム導入部材
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20251128BHJP
   H05G 2/00 20060101ALI20251128BHJP
【FI】
G03F7/20 503
H05G2/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024084901
(22)【出願日】2024-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺本 雄介
【テーマコード(参考)】
2H197
4C092
【Fターム(参考)】
2H197CA10
2H197CA17
2H197DB16
2H197GA01
2H197GA05
2H197GA12
2H197GA16
2H197GA20
2H197GA24
4C092AA06
4C092AB10
4C092AB19
4C092AC09
4C092BD18
(57)【要約】
【課題】エネルギービームを、進行を阻害することなく発光点まで安定的に導入することを可能とする光源装置、及びエネルギービーム導入部材を提供すること。
【解決手段】エネルギービーム導入部材は、筐体部と、第1の窓部材と、治具と、第2の窓部材と、ガス導入部とを有する。筐体部は、エネルギービームの入射孔及び出射孔と、エネルギービームが通過する内部空間とを有する。第1の窓部材は、エネルギービームが通過可能であり、入射孔を閉塞するように設けられる。治具は、筐体部に固定され、内部空間に位置する。第2の窓部材は、エネルギービームが通過可能であり、治具に固定され、内部空間に位置する。ガス導入部は、内部空間のうち、第2の窓部材を基準として入射孔側の空間を第1の空間、出射孔側の空間を第2の空間とした場合に、第1の空間にガスを導入する。治具は、ガスを第1の空間から第2の空間に導通させるガス導通孔を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギービームの照射を利用して液体原料をプラズマ化して放射線を取り出す光源装置であって、
前記エネルギービームの入射孔及び出射孔と、前記エネルギービームが通過する内部空間とを有する筐体部と、
前記エネルギービームが通過可能であり、前記入射孔を閉塞するように設けられた第1の窓部材と、
前記筐体部に固定され、前記内部空間に位置する治具と、
前記エネルギービームが通過可能であり、前記治具に固定され、前記内部空間に位置する第2の窓部材と、
前記内部空間のうち、前記第2の窓部材を基準として前記入射孔側の空間を第1の空間、前記出射孔側の空間を第2の空間とした場合に、前記第1の空間にガスを導入するガス導入部とを有し、
前記治具は、前記ガスを前記第1の空間から前記第2の空間に導通させるガス導通孔を有する
エネルギービーム導入部材を具備する
光源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光源装置であって、さらに、
前記筐体部の前記出射孔の近傍を加熱する加熱機構を具備する
光源装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光源装置であって、
前記加熱機構は、前記プラズマから発生するデブリを捕捉するデブリ低減機構である
光源装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の光源装置であって、
前記治具は、前記第2の窓部材を基準として前記入射孔側の第1の治具、及び前記出射孔側の第2の治具からなり、
前記第2の窓部材は、前記第1の治具及び前記第2の治具により挟み込まれることで固定される
光源装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光源装置であって、
前記第1の治具はリング形状を有し、
前記第2の窓部材は円盤形状を有し、径が前記第1の治具の内径よりも大きく、外径よりも小さい
光源装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の光源装置であって、
前記第2の窓部材の少なくとも前記出射孔側の面は、反射防止膜を有さない
光源装置。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の光源装置であって、
前記第2の窓部材は、フッ化カルシウム又はフッ化マグネシウムの少なくとも一方を含む材料により構成される
光源装置。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の光源装置であって、
前記第2の窓部材は、低膨張率の材料又はガラスの少なくとも一方により構成される
光源装置。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の光源装置であって、
前記ガス導入部は、前記筐体部に構成される孔である
光源装置。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の光源装置であって、
前記エネルギービーム導入部材は、前記プラズマから発生し前記出射孔から前記内部空間に進入するデブリを、前記第2の窓部材とは異なる位置に誘導するデブリ誘導手段を有する
光源装置。
【請求項11】
請求項10に記載の光源装置であって、
前記デブリ誘導手段は、前記第2の窓部材とは異なる位置に構成された空間であるバッファ空間に前記デブリを誘導する手段である
光源装置。
【請求項12】
請求項10に記載の光源装置であって、
前記デブリ誘導手段は、前記内部空間を排気することにより前記デブリを誘導する手段である
光源装置。
【請求項13】
請求項10に記載の光源装置であって、
前記デブリ誘導手段は、前記エネルギービーム導入部材の外部から前記内部空間に向かってガスを吹き付けることにより前記デブリを誘導する手段である
光源装置。
【請求項14】
エネルギービームの照射を利用して液体原料をプラズマ化して放射線を取り出す光源装置において用いられるエネルギービーム導入部材であって、
前記エネルギービームの入射孔及び出射孔と、前記エネルギービームが通過する内部空間とを有する筐体部と、
前記エネルギービームが通過可能であり、前記入射孔を閉塞するように設けられた第1の窓部材と、
前記筐体部に固定され、前記内部空間に位置する治具と、
前記エネルギービームが通過可能であり、前記治具に固定され、前記内部空間に位置する第2の窓部材と、
前記内部空間のうち、前記第2の窓部材を基準として前記入射孔側の空間を第1の空間、前記出射孔側の空間を第2の空間とした場合に、前記第1の空間にガスを導入するガス導入部とを具備し、
前記治具は、前記ガスを前記第1の空間から前記第2の空間に導通させるガス導通孔を有する
エネルギービーム導入部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線や極端紫外光等を発生させる光源装置、及び当該光源装置に用いられるエネルギービーム導入部材に関する。
【背景技術】
【0002】
X線のうち極端紫外光(以下、「EUV(Extreme Ultra Violet)光」ともいう)は、近年露光光として使用されている。EUVリソグラフィ用のマスクの基材は、EUV光を反射させるための多層膜(例えば、モリブデンとシリコン)上にEUVリソグラフィ用の放射線を吸収する材料をパターニングすることで、EUVマスクが構成される。
【0003】
EUVマスクにおける許容できない欠陥の大きさは、大幅に小さくなっており検出が困難となっている。そこで、EUVマスクの検査には、アクティニック検査(Actinic inspection)と呼ばれる、リソグラフィの作業波長と一致する波長の放射線を用いた検査が行われる。
【0004】
一般にEUV光源装置としては、DPP(Discharge Produced Plasma)光源装置、LDP(Laser Assisted Discharge Produced Plasma)光源装置、及びLPP(Laser Produced Plasma)光源装置が挙げられる。
【0005】
DPP光源装置は、EUV放射種を含む気体状のプラズマ原料(放電ガス)が供給された電極間に高電圧を印加して、放電により高密度高温プラズマを生成し、そこから放射される極端紫外光を利用するものである。
【0006】
LDP光源装置は、DPP光源装置が改良されたものであり、例えば、放電を発生させる電極(放電電極)表面にEUV放射種を含む液体状の高温プラズマ原料(例えば、Sn(スズ)やLi(リチウム)等)を供給し、当該原料に対してレーザビームを照射して当該原料を気化し、その後、放電によって高温プラズマを生成するものである。
【0007】
LPP光源装置は、EUV放射種をレーザビーム等により励起して高温プラズマを生成するものである。この方式の光源装置としては、微小な液滴状に噴出された高温プラズマ原料のドロップレットに対して、レーザ光を集光することにより当該ターゲット材料を励起してプラズマを発生させるものが知られている。
【0008】
特許文献1では、X線やEUV等の放射線を発生させるためのプラズマ原料を回転体に供給し、回転体においてプラズマ原料が供給される領域にエネルギービーム(レーザビーム)を照射して放射線を得る方法が提案されている。一方が開口した円筒状の容器が回転体として用いられ、この容器に液体状のプラズマ原料が供給され、容器の内周面にレーザ光が照射される。
【0009】
この方法は、所謂LPP方式に相当するが、回転体の遠心力によりエネルギービームの照射領域へ液体状のプラズマ原料を供給するものであり、液体状のプラズマ原料をドロップレットとして供給する必要がない。このため、ドロップレットにレーザビームを集光する方式等と比べて、比較的簡易な構成で、高輝度の放射線を得ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2014-216286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1のような光源装置において、エネルギービームを、進行を阻害することなく発光点まで導入することを可能とする技術が求められている。
【0012】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、エネルギービームを、進行を阻害することなく発光点まで安定的に導入することを可能とする光源装置、及びエネルギービーム導入部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本技術の一形態に係る光源装置は、エネルギービームの照射を利用して液体原料をプラズマ化して放射線を取り出す光源装置であって、エネルギービーム導入部材を具備する。
前記エネルギービーム導入部材は、筐体部と、第1の窓部材と、治具と、第2の窓部材と、ガス導入部とを有する。
前記筐体部は、前記エネルギービームの入射孔及び出射孔と、前記エネルギービームが通過する内部空間とを有する。
前記第1の窓部材は、前記エネルギービームが通過可能であり、前記入射孔を閉塞するように設けられる。
前記治具は、前記筐体部に固定され、前記内部空間に位置する。
前記第2の窓部材は、前記エネルギービームが通過可能であり、前記治具に固定され、前記内部空間に位置する。
前記ガス導入部は、前記内部空間のうち、前記第2の窓部材を基準として前記入射孔側の空間を第1の空間、前記出射孔側の空間を第2の空間とした場合に、前記第1の空間にガスを導入する。
前記治具は、前記ガスを前記第1の空間から前記第2の空間に導通させるガス導通孔を有する。
【0014】
この光源装置では、エネルギービームがエネルギービーム導入部材を第1の窓部材、第2の窓部材、出射孔の順に通過する。第1の窓部材は入射孔を閉塞し、第2の窓部材は筐体部に固定された治具に固定される。また入射孔側の空間にはガスが導入され、治具にはガス導通孔が設けられる。これにより、エネルギービームを、進行を阻害することなく発光点まで安定的に導入することが可能となる。
【0015】
前記光源装置は、さらに、前記筐体部の前記出射孔の近傍を加熱する加熱機構を具備してもよい。
【0016】
前記加熱機構は、前記プラズマから発生するデブリを捕捉するデブリ低減機構であってもよい。
【0017】
前記治具は、前記第2の窓部材を基準として前記入射孔側の第1の治具、及び前記出射孔側の第2の治具からなってもよい。この場合、前記第2の窓部材は、前記第1の治具及び前記第2の治具により挟み込まれることで固定されてもよい。
【0018】
前記第1の治具はリング形状を有してもよい。この場合、前記第2の窓部材は円盤形状を有し、径が前記第1の治具の内径よりも大きく、外径よりも小さくてもよい。
【0019】
前記第2の窓部材の少なくとも前記出射孔側の面は、反射防止膜を有さなくてもよい。
【0020】
前記第2の窓部材は、フッ化カルシウム又はフッ化マグネシウムの少なくとも一方を含む材料により構成されてもよい。
【0021】
前記第2の窓部材は、低膨張率の材料又はガラスの少なくとも一方により構成されてもよい。
【0022】
前記ガス導入部は、前記筐体部に構成される孔であってもよい。
【0023】
前記エネルギービーム導入部材は、前記プラズマから発生し前記出射孔から前記内部空間に進入するデブリを、前記第2の窓部材とは異なる位置に誘導するデブリ誘導手段を有してもよい。
【0024】
前記デブリ誘導手段は、前記第2の窓部材とは異なる位置に構成された空間であるバッファ空間に前記デブリを誘導する手段であってもよい。
【0025】
前記デブリ誘導手段は、前記内部空間を排気することにより前記デブリを誘導する手段であってもよい。
【0026】
前記デブリ誘導手段は、前記エネルギービーム導入部材の外部から前記内部空間に向かってガスを吹き付けることにより前記デブリを誘導する手段であってもよい。
【0027】
本技術の一形態に係るエネルギービーム導入部材は、前記筐体部と、前記第1の窓部材と、前記治具と、前記第2の窓部材と、前記ガス導入部とを有する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、エネルギービームを、進行を阻害することなく発光点まで安定的に導入することが可能となる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本実施形態に係る光源装置100の構成例を示す模式図である。
図2】チャンバ本体109の内部の構成例を示す模式図である。
図3】レーザポート3の構成例を示す模式図である。
図4】オサエ9aの構成例を示す模式図である。
図5】デブリ誘導手段の一例を示す模式図である。
図6】デブリ誘導手段の一例を示す模式図である。
図7】治具のバリエーション例を示す模式図である。
図8】ガス導通孔18のバリエーション例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<第1の実施形態>
以下、本技術に係る第1の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0031】
[光源装置の基本構成]
図1は、本実施形態に係る光源装置100の構成例を示す模式図である。光源装置100は、LPP方式の光源装置である。即ち光源装置100は、プラズマ原料101にエネルギービームEBを照射することで、プラズマ原料101を励起してプラズマPを発生させ、プラズマPから放出される放射線Rを取り出して光源として用いる装置である。放射線RはEUV光、X線又はその他の電磁波である。
【0032】
プラズマ原料101は溶融した金属又は合金であり、例えば液相状態のスズ(Sn)、リチウム(Li)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ガリウム(Ga)、ビスマス(Bi)、インジウム(In)又はこれらの材料のうちの少なくとも1つを含む合金である。
プラズマ原料101は、液体原料の一実施形態に相当する。
【0033】
図1は、光源装置100を設置面から所定の高さの位置で水平方向に沿って切断した場合の模式的な断面を、鉛直上方から見た場合の図である。図1では、光源装置100の構成及び動作を理解しやすいように、断面の構成等を説明する必要のない部分については、断面の図示を省略している。以下、X方向を水平方向のうち左右方向(X軸の正側が右側、負側が左側)、Y方向を水平方向のうち前後方向(Y軸の正側が前方側、負側が後方側)、Z方向を鉛直方向(Z軸の正側が上方側、負側が下方側)として説明を行う場合がある。もちろん、本技術の適用について、光源装置100が使用される向き等が限定される訳ではない。
【0034】
図1に示すように光源装置100は、筐体102、真空チャンバ103、エネルギービーム入射チャンバ104、放射線出射チャンバ105、プラズマ生成機構106、制御部107及びビーム源108を備える。
【0035】
図1に示す例では、筐体102は、出射孔102a、入射孔102b及び貫通孔102cを有する。本実施形態では、出射孔102aを通るように、放射線Rの出射軸EAが設定されている。放射線Rは、出射軸EAに沿って取り出され、出射孔102aから放出される。また本実施形態では、入射孔102bを通るように、エネルギービームEBの入射軸IAが設定されている。
【0036】
図1に示すように、筐体102の外部にはエネルギービームEBを出射するビーム源108が設置されている。ビーム源108は、入射軸IAに沿ってエネルギービームEBが筐体102の内部に入射するように設置されている。エネルギービームEBとしては、電子ビームやレーザ光を使用することが可能である。
【0037】
光源装置100には、複数のチャンバを含むチャンバ部Cが設けられている。具体的には、チャンバ部Cは、真空チャンバ103、エネルギービーム入射チャンバ(以下、単に入射チャンバという)104、及び放射線出射チャンバ(以下、単に出射チャンバという)105を含む。真空チャンバ103と入射チャンバ104は互いに連結され、真空チャンバ103と出射チャンバ105は互いに連結されている。
【0038】
入射チャンバ104は、エネルギービームEBの入射軸IA上に位置するように構成され、出射チャンバ105は、放射線Rの出射軸EA上に位置するように構成されている。出射チャンバ105内には放射線Rを導光するコレクタ(集光鏡)112が配置されている。また真空チャンバ103には、プラズマPを発生させるプラズマ生成機構106が配置されている。
【0039】
出射チャンバ105のプラズマ生成機構106とは反対側の端部には、マスク検査装置等の利用装置が接続される。図1に示す例では、利用装置の一部をなすチャンバとして、アプリケーションチャンバ110が接続されている。アプリケーションチャンバ110内の圧力は大気圧であってもよい。また、アプリケーションチャンバ110の内部は、必要に応じてガス注入路よりガス(例えば、不活性ガス)を導入してパージし、図示を省略した排気手段により排気されてもよい。アプリケーションチャンバ110と出射チャンバ105の間には、プラズマPが生成される領域とアプリケーションチャンバ110とを物理的に分離するフィルタ膜111や開口が設けられている。
【0040】
チャンバ本体109には、入射窓114が設けられている。入射窓114は、エネルギービームEBの入射軸IA上で入射孔102bと並ぶ位置に配置されている。また、チャンバ本体109には排気用ポンプ117が接続されている。
【0041】
また、図1に示すように、出射チャンバ105及び入射チャンバ104には、ガス注入路116a及び116bがそれぞれ設けられ、図示を省略したガス供給装置から、出射チャンバ105及び入射チャンバ104の内部にガスが供給される。出射チャンバ105には、アルゴンやヘリウム等の放射線Rに対して透過率の高いガスが供給される。また入射チャンバ104には、アルゴンやヘリウム等のエネルギービームEBに対して透過率の高いガスが供給される。
【0042】
プラズマ生成機構106は、真空チャンバ103内にてプラズマPを生成し、放射線R(X線又はEUV光)を放出するための機構である。プラズマ生成機構106は、図1に示すように回転体20を備え、回転体20にはエネルギービームEBが入射する。回転体20は、エネルギービームEBの照射位置Iが入射軸IAと出射軸EAとの交点の位置に配置されるように、真空チャンバ103内に配置されている。
【0043】
回転体20の裏面(Y軸の負側の面)の中央には軸部材72が接続される。軸部材72は、チャンバ本体109及び筐体102を貫通するように配置される。また筐体102の外部にはモータ71が配置され、モータ71は、軸部材72の回転体20に接続されない側の端部に接続される。
【0044】
モータ71が駆動すると、軸部材72及び回転体20が一体的に回転する。図1にはこれらの回転の向きが矢印で示されている。本例では、回転体20がY軸の正側から見て反時計回りに回転しているが、時計回りの回転であってもよい。また本例では、チャンバ本体109における軸部材72の貫通部分に、メカニカルシール73が設けられている。これにより、真空チャンバ103の気密性を維持しつつ、スムーズな回転が実現される。
【0045】
また、プラズマ生成機構106は原料コンテナ21を有する。原料コンテナ21にはプラズマ原料101が貯留され、貯留されたプラズマ原料101に回転体20の下側が浸漬される。
【0046】
回転体20が回転すると、プラズマ原料101が回転体20に付着した状態で持ち上げられる。これにより、回転体20の表面に常にプラズマ原料101が付着した状態となる。さらに付着したプラズマ原料101に対して、ビーム源108によりエネルギービームEBが照射される。これにより、照射位置IにおいてプラズマPが発生する。
【0047】
制御部107は、光源装置100が有する各構成要素の動作を制御する。例えば、制御部107により、ビーム源108や排気用ポンプ117の動作が制御される。図1では、制御部107は機能ブロックとして模式的に図示されているが、制御部107が構成される位置等は任意に設計されてよい。
【0048】
また、図1に示すように、本実施形態では、チャンバ本体109に放射線診断部119が接続されている。放射線診断部119は放射線Rの出射軸EAとは異なる方向に放射される放射線Rが入射する位置に配置され、プラズマPから放出される放射線Rの状態を測定する。
【0049】
[真空チャンバ]
図2は、チャンバ本体109の内部の構成例を示す模式図である。
図2には、チャンバ本体109の内部を上側から、図1の右側を下にして見た状態を示している。チャンバ本体109の内部には、回転体20、軸部材72、光源カバー1、DMT2、及びレーザポート3が配置される。なお図1では、このうち光源カバー1、DMT2、及びレーザポート3の図示を省略している。また図2では、図1に記載されている原料コンテナ21及びメカニカルシール73等の図示を省略している。
【0050】
光源カバー1は、回転体20の周りを覆うカバーである。光源カバー1の面のうち、図2の右側の面の照射位置Iに対向する部分には開口4が設けられ、照射位置Iにおいて発生した放射線Rの一部が開口4を通過する。図2には放射線Rの進路が矢印で模式的に示されている。
【0051】
また、光源カバー1の左側の面の中央にも開口が設けられ、当該開口を軸部材72が貫通する。光源カバー1が設けられることにより、照射位置Iにおいて発生したデブリの、光源カバー1の外部への飛散が抑制される。
【0052】
DMT2(Debris Mitigation Tool、デブリ低減機構)は、デブリを捕捉する機構である。照射位置IでプラズマPから発生したデブリの一部は、光源カバー1の開口4を通過し、右側に向かって飛散する。本例では開口4の右側にDMT2が配置され、このようなデブリが捕捉される。
【0053】
本実施形態では、DMT2として回転式や固定式のホイルトラップが用いられる。またDMT2が加熱され、捕捉されたデブリが溶融することにより液状となって回収される。また、ホイルトラップ内に圧力差を作るためにガスが導入されてもよい。その他、DMT2の具体的な種類は限定されない。
DMT2は、本技術に係るデブリ低減機構の一実施形態に相当する。
【0054】
レーザポート3は概ね円錐形状を有し、チャンバ本体109及び光源カバー1を貫通するように配置される。レーザポート3は、図2の右下から左上に渡って配置されるが、これは図1の右上から左下に相当する。図1のチャンバ本体109の右上部分には、入射窓114、エネルギービーム入射チャンバ104、ガス注入路116bが設けられているが、レーザポート3はこれらの機構と共に、あるいはこれらの機構に代えて設けられる。
【0055】
ビーム源108により出射されたエネルギービームEBは、レーザポート3の内部を通過し、回転体20の表面(照射位置I)に到達する。すなわちレーザポート3は、回転体20の表面にエネルギービームEBを導入するエネルギービーム導入部材であるとも言える。
【0056】
また本実施形態では、DMT2及びレーザポート3の先端が近接するように、DMT2及びレーザポート3の配置や形状が調整される。
【0057】
[レーザポート]
図3は、レーザポート3の構成例を示す模式図である。
図3には、レーザポート3の中央部分をXY平面で切った場合の断面を、上側から見た状態が示されている。以降説明のために、図3に示すように新たにXYZ座標系を規定する。すなわち、実際には図2の右側(Y軸の正側)は図3の左斜め下側に、図2の下側(X軸の正側)は図3の左斜め上側に相当するが、便宜上これと異なる座標系を規定する。
【0058】
レーザポート3は、筐体7、2つの窓8(8a、8b)、及び2つのオサエ9(9a、9b)を有する。筐体7は概ね円錐形状の部材であり、図3では頂点が右側を向いている。筐体7の側部11は、円錐の筒形状を有する。また、筐体7の底面に相当する部分(左側)は、概ね全面が円形状の開口10aとなっている。また頂点に相当する部分(右側)は、径の小さい開口10bとなっている。
【0059】
なお、筐体7の具体的な形状は限定されず、本技術が実現可能な範囲内で適宜変更されてよい。例えば筐体7が円柱の筒形状を有し、左側の全面が円形状の開口10aとなっており、右側にはエネルギービームEBが通過可能である小さな開口10bが構成されてもよい。
筐体7は、本技術に係る筐体部の一実施形態に相当する。
【0060】
窓8aは、筐体7の開口10aと同一の形状である、円盤形状を有する部材である。窓8aは開口10aに嵌め込まれて配置される。すなわち窓8aは、窓8aと開口10aとの間に隙間が生じないように、開口10aを閉塞するように設けられる。以下、側部11及び窓8aにより囲まれた空間を内部空間Sと呼称する。窓8aは、エネルギービームEBが通過可能であるような材料により構成される。
窓8aは、本技術に係る第1の窓部材の一実施形態に相当する。
【0061】
側部11の開口10aの近傍には、ガス導入管12が接続される。ガス導入管12は内部空間Sに連通する管であり、すなわち側部11に構成される孔であるとも言える。ガス導入管12の内部空間S側ではない端部には、図示しないガス導入のための機構が接続される。当該機構が動作することにより、ガス導入管12を介して内部空間Sにガスが流入する。
【0062】
本例では4つのガス導入管12a~12dが等間隔に接続される。図3にはそのうち2つのガス導入管12a及び12bが図示されている。この他、ガス導入管12c及び12dも設けられるが、図3は断面図であるためこれらは図示されていない。各々のガス導入管12は側部11に対して垂直に接続される。しかしながら、このような構成はあくまで一例であり、ガス導入管12の具体的な数は限定されず、接続される位置や向きも任意であってよい。
ガス導入管12は、本技術に係るガス導入部の一実施形態に相当する。
【0063】
図4は、オサエ9aの構成例を示す模式図である。
オサエ9aは全体として正円のリング形状を有する部材であり、図3に示すように内部空間Sに、YZ平面に平行に配置される。なお、図3ではオサエ9aを模式的に図示しているため、リング形状の内側の開口の図示を省略している。オサエ9aは、リング部15及び側部16を有する。
【0064】
リング部15はリング形状の平板である。従ってリング部15は、内側に円形状の開口19を有する。またリング部15はその表面に、4つのネジ用孔17及び4つのガス導通孔18を有する。図4では、これらのうち1つのネジ用孔17及び1つのガス導通孔18にのみ代表して符号を付している。
【0065】
ネジ用孔17はネジが貫通するための孔である。ネジ用孔17は、リング部15の0時、3時、6時、9時の位置にそれぞれ1つずつ、合計4つ設けられる。ガス導通孔18はリング部15に沿った形状を有する孔であり、リング部15の0時~3時、3時~6時、6時~9時、9時~12時の間に延在するようにそれぞれ1つずつ、合計4つ設けられる。
【0066】
側部16は円筒形状の平板であり、所定の厚みを有する。なおオサエ9aは、側部16を挟んでリング部15に対向する側には面を有しない。オサエ9aは、図3においてリング部15が左側、側部16が右側に存在するような向きで配置される。以降、リング部15の内径(開口19の径)をオサエ9aの内径、リング部15の外径(側部16の径)をオサエ9aの外径と呼称する場合がある。
【0067】
オサエ9aは、例えば剛性を有する材料により構成される。その他、オサエ9aの材料や形状、ネジ用孔17及びガス導通孔18の配置や形状は限定されず、本技術を実現可能な範囲内で任意の構成が採用されてよい。
オサエ9aは、本技術に係る第1の治具の一実施形態に相当する。
【0068】
窓8bは円盤形状の部材であり、エネルギービームEBが通過可能に構成される。窓8bは内部空間Sに、オサエ9aのリング部15の裏面(側部16が存在する側の面)に当接するように配置される。言い換えれば、オサエ9aは窓8bを基準として、筐体7の左側の開口10a側に位置する。また窓8bは、中心がリング部15の中心に一致するように配置される。
【0069】
ここで窓8bの径は、オサエ9aの内径よりも大きいが、ネジ用孔17やガス導通孔18には達しないものとして設定される。すなわち窓8bの径は側部16の径(オサエ9aの外径)よりも小さいため、窓8bは側部16に引っかかることなく、リング部15の裏面に当接することが可能である。さらに、窓8bがリング部15に当接した状態下では、窓8bによりリング部15の開口19の全面が塞がれるが、ネジ用孔17やガス導通孔18が塞がれることはない。
窓8bは、本技術に係る第2の窓部材の一実施形態に相当する。
【0070】
オサエ9bは円錐の筒形状の部材である。オサエ9bの外面の形状と、筐体7の側部11の内面のうち開口10bの近傍の形状とは概ね同一であり、オサエ9bは側部11の当該部分に当接するようにして固定される。オサエ9bを側部11に固定する方法は限定されない。また、オサエ9b及び側部11が一体的に形成されてもよい。
【0071】
またオサエ9bの厚みは、左側が最も大きく、右側に向かう(開口10に近づく)につれて徐々に減少していく。オサエ9bの内部の空間も、概ね円錐形状を有する。またオサエ9bは、図3の左側から見た場合にリング形状となる底面23を有する。底面23の内側には、複数の凸部24が構成される。凸部24は離散的に構成され、断面図である図3にはそのうち2つの凸部24a及び24bが図示されているが、図示しない他の凸部24も構成され、その数や具体的な配置は限定されない。
【0072】
また、オサエ9bの具体的な形状は限定されず、本技術が実現可能な範囲内で任意の形状が採用されてよい。
オサエ9bは、本技術に係る第2の治具の一実施形態に相当する。
オサエ9a及び9bは、本技術に係る治具の一実施形態に相当する。
【0073】
各々の凸部24は、窓8bの右側の面に当接する。すなわち窓8bは、凸部24に当接できるような十分な大きさの径を有する。この状態下では、図3に示すように、窓8bはオサエ9a及び9bによって挟み込まれた状態となる。オサエ9bは、窓8bを基準として、右側の開口10b側に位置するとも言える。
【0074】
さらに、オサエ9aは筐体7に固定される。具体的には、複数のネジがオサエ9aの各々のネジ用孔17を貫通し、筐体7の側部11にそれぞれ嵌合されることで、オサエ9aが側部11にネジ止めされる。
【0075】
これにより、窓8bがオサエ9a及び9bに固定された状態となる。窓8bの左側への移動はオサエ9aにより規制され、右側への移動はオサエ9bにより規制され、上下及び前後方向の移動はオサエ9a及び9bの静止摩擦力により規制される。
【0076】
なお、オサエ9aがネジ止め以外の方法により側部11に固定されてもよい。例えばスナップリング等が固定のために用いられてもよい。その他、任意の方法により固定がされてよい。
【0077】
窓8b(及びオサエ9a)により、内部空間Sは2つの空間に区分けされる。以降内部空間Sのうち、窓8bを基準として、左側の開口10a側の空間を内部空間S1、右側の開口10b側の空間を内部空間S2と記載する。
内部空間S1は、本技術に係る第1の空間の一実施形態に相当する。
内部空間S2は、本技術に係る第2の空間の一実施形態に相当する。
【0078】
[レーザポートにおける作用]
エネルギービームEBの進行について説明する。エネルギービームEBは、図3に矢印で示すように、左側から開口10aに入射する。開口10aは窓8aにより閉塞されているが、窓8aはエネルギービームEBが通過可能に構成されているため、エネルギービームEBは窓8aを通過し、内部空間S1に進入する。すなわち開口10aは、内部空間S1に対するエネルギービームEBの入射孔として機能する。
【0079】
本実施形態では、ビーム源108からエネルギービームEBが収束光として出射される。例えばビーム源108に光学系が設けられ、エネルギービームEBが収束される。そのため、エネルギービームEBは開口10aの全面から入射するが、基本的には側部11の内面で反射することなく、収束しながら開口10bに向かっていく。
【0080】
エネルギービームEBは内部空間S1を通過し、オサエ9aの開口19を通過する。次に窓8bに到達するが、窓8bはエネルギービームEBが通過可能に構成されているため、エネルギービームEBは窓8bを通過する。その後、エネルギービームEBは内部空間S2を通過し、開口10bから出射される。すなわち開口10bは、エネルギービームEBの出射孔として機能する。
【0081】
次に、ガス導入管12の作用について説明する。ガス導入管12を介して内部空間S1にガスが導入されると、内部空間S1にガスが充満し、内部空間S1の圧力が上昇する。図3には、内部空間S1において生じるガスの流れが破線の矢印で模式的に示されているが、必ずしもこのようなガスの流れが発生しなくてもよい。
【0082】
内部空間S1の左側は窓8aにより閉塞されているため、ガスが窓8aの左側に漏れ出ることはない。一方で、内部空間S1の右側にはオサエ9a、窓8b、及びオサエ9bが存在するが、オサエ9aにはガス導通孔18が構成されており、窓8bと側部11との間には隙間がある。また凸部24は離散的に構成されるため、窓8bとオサエ9bとの間にも隙間がある。
【0083】
従って、内部空間S1に存在するガスは、これらの経路を通って内部空間S2に流入する。図3には、当該経路を破線の矢印で模式的に示している。ガス導通孔18及び窓8bとオサエ9bとの間の隙間は、ガスを内部空間S1から内部空間S2に導通させているとも言える。
【0084】
ガスの流入により、内部空間S2の圧力は上昇する。しかしながら、内部空間S2に対しては当該経路からしかガスが流入できないため、内部空間S2の圧力の上昇は内部空間S1の圧力の上昇に比べて緩やかなものとなる。従って、筐体7の外部の圧力が一番低く、筐体7の外部、内部空間S2、内部空間S1の順に圧力が高くなる。
【0085】
[加熱機構]
本技術では、筐体7の開口10bの近傍を加熱する加熱機構が設けられる。特に本実施形態では、図2に示すDMT2が加熱機構に相当する。DMT2は、捕捉されたデブリを溶融するために加熱され、プラズマ原料101の融点以上の温度になっている。さらにDMT2は、図2に示す通り開口10bの近傍に設けられている。
【0086】
従って、DMT2の熱が開口10bの近傍に伝わり、開口10bの近傍が常に加熱された状態となる。その他加熱機構の種類は限定されず、DMT2とは別の加熱機構が開口10bの近傍に別途構成され、直接的又は間接的に開口10bの近傍が加熱されてもよい。この場合、DMT2は開口10bとは離れた位置に設けられてもよい。
【0087】
以上、本実施形態に係る光源装置100では、エネルギービームEBがレーザポート3を窓8a、窓8b、開口10bの順に通過する。窓8aは開口10aを閉塞し、窓8bは筐体7に固定されたオサエ9a及び9bに固定される。また開口10a側の空間である内部空間S1にはガスが導入され、オサエ9a及び9bにはガス導通孔18等が設けられる。これにより、エネルギービームEBを、進行を阻害することなく発光点まで安定的に導入することが可能となる。
【0088】
LPP方式のEUV光源において、発光点までレーザ光を導入する技術は非常に重要である。しかも、EUV光源はコンパクトであることが常に要求されるため、限定されたスペースを有効利用する必要がある。
【0089】
ここで、発光点においては真空を維持する必要があるため、発光点及びレーザ源はレーザ光を透過する窓で隔離される。しかし、発光点においてはデブリが発生するため、当該デブリにより窓が汚染され、レーザ光の進行が阻害される。また窓に付着したデブリがレーザ光を吸収し、それによりデブリが発熱することで窓に熱レンズ効果が発生し、レーザ光の進行方向やビーム形状等の性質に悪影響を与える場合がある。
【0090】
また発光点において熱が発生するため、当該熱により窓の中央部分が局所的に熱されることで、熱膨張による形状変化によりひずみが生じ、割れてしまう。窓は気圧差の大きい2つの空間を隔てているため、窓が割れると破片が大きく飛び散り、他の機構が破損するおそれがある。また窓が割れない場合であっても、当該熱により窓に熱レンズ効果が発生してしまう。
【0091】
窓に対するデブリや熱の影響を抑制する方策としては、当該窓と発光点との間に回転窓を設けることが考えられるが、回転窓を用いた方式は多大なスペースを必要とするため、光源のコンパクト化と相反することになる。
【0092】
本技術では、ビーム源108と照射位置Iとの間に2枚の窓8a及び8bが設けられている。そのため、照射位置Iにおいて発生するデブリは窓8bによりせき止められる。従って、窓8aに付着するデブリの量を大幅に低減することが可能となる。また内部空間S1にガスが導入され、これにより内部空間S2にもガスが流入し、内部空間S2の圧力はレーザポート3の外部に比べて高くなる。そのためデブリは内部空間S2に進入しにくくなり、窓8bに対するデブリの付着さえも抑制される。
【0093】
また、照射位置Iと窓8aとの間に窓8bが存在するため、照射位置Iにおける輻射の窓8aによる吸収が抑制される。加えて、照射位置Iにおいて発生したイオンの窓8aに対する衝突が抑制される。これにより、窓8aが割れる、劣化する、あるいは窓8aに熱レンズ効果が発生するといったことが抑制される。
【0094】
なお、窓8bは気圧差の比較的小さい内部空間S1及びS2を隔てているものであるため、窓8bが割れたとしても破片が飛び散るようなことはなく、基本的にはひびが入る程度である。また仮に破片が飛び散ったとしても、ガスの導入により内部空間S1は内部空間S2に比べて高圧となっているため、破片が窓8aに向かいにくくなっている。
【0095】
また、内部空間S1に流入したガスにより窓8bが冷却され、窓8bにおける熱レンズ効果が低減される。
【0096】
また、デブリは開口10bの近傍に付着し、石筍状に成長することによりレーザ光を遮る場合がある。本技術では、加熱機構により開口10bの近傍が加熱されるため、開口10bの近傍に到達したデブリは凝固しない。よって、開口10bの近傍に対するデブリの付着が抑制される。また加熱機構としてDMT2が用いられるため、別途の加熱機構を設ける必要がなくなり、光源装置100を小型化することが可能となる。
【0097】
以上により、レーザポート3のメンテナンス回数が少なくなり、長寿命となり、またエネルギービームEBを発光点まで安定的に導入することが可能となる。
【0098】
また本技術では、窓8bが2つのオサエ9a及び9bにより挟み込まれることで固定される。これにより、窓8bを安定して固定することが可能となる。
【0099】
また、オサエ9aがリング形状を有し、窓8bが円盤形状を有し、窓8bの径はオサエ9aの内径よりも大きく、外径よりも小さい。これにより、エネルギービームEBの進行経路及び内部空間S2に対するガスの導入経路を確保しつつ、窓8bを安定して固定することが可能となる。
【0100】
また、筐体7の側部11に構成された孔からガスが導入される。これにより、内部空間S1に安定してガスを流入させることが可能となる。
【0101】
<第2の実施形態>
本技術に係る光源装置100について、さらに詳細な実施形態を、第2の実施形態として説明する。これ以降の説明では、上記の実施形態で説明した光源装置100における構成及び作用と同様な部分については、その説明を省略又は簡略化する。
【0102】
[デブリ誘導手段]
図5は、デブリ誘導手段の一例を示す模式図である。
図5は、レーザポート3をY軸の負側から見た場合の断面図である。図3はレーザポート3をZ軸の正側から見た図であるため、図3及び図5は向きが異なる点に留意されたい。そのため図5には、図3に図示されていないガス導入管12c及び12dが図示されている。
【0103】
本例では、側部11のうち開口10bの近傍が下側に開いており、空間が形成されている。以下、当該空間を内部空間S3と呼称する。図5には、図3の内部空間S2に相当する部分の概形、及び内部空間S3の概形が、それぞれ破線の枠で模式的に示している。内部空間S3は窓8bとは離間しているため、窓8bとは異なる位置に構成された空間であると言える。
内部空間S3は、本技術に係るバッファ空間の一実施形態に相当する。
【0104】
また、内部空間S3の下側には図示しない排気装置が接続され、当該排気装置により内部空間S3が排気される。
【0105】
これらにより、内部空間S3が内部空間S2よりも低圧になり、開口10bから内部空間S2に侵入したデブリは、低圧側の内部空間S3に誘導される(実線の矢印の経路)。すなわち、窓8bとは異なる位置にデブリが誘導される。従って窓8bにデブリが付着しにくくなり、窓8bの汚染を抑制することが可能となる。
【0106】
なお、本例では内部空間S3が設けられ、さらに排気が行われているが、これらの一方のみが行われてもよい。すなわち、内部空間S3を設けるだけで排気を行わなくとも一定の効果は発揮され、逆に側部11の下側を開けるだけで内部空間S3を設けず、内部空間S2の排気を行う場合にも効果が発揮される。従って、内部空間S3を設ける手段、及び内部空間S2又はS3を排気する手段は、それぞれがデブリ誘導手段として機能する。
【0107】
本例では内部空間S3が鉛直下側(Z軸の負側)に設けられているが、内部空間S3が他の方向に設けられてもよい。一方で本例のように、内部空間S3を鉛直下側に設けることで、重力の作用により効率的にデブリを誘導することが可能となる。また、レーザポート3には水平方向においてDMT2等が隣接することが多いため、そのような制約を回避することが可能となる。
【0108】
また本例では、図5に示すようにオサエ9a及び窓8bの下側からガスが流入していない。具体的には、オサエ9a及び9bを適宜設計することで、ガスの流入を阻止している。これにより、上側からのみガスが流入した状態となり、内部空間S2を内部空間S3に比べてさらに高圧にすることが可能となる。
【0109】
図6は、デブリ誘導手段の一例を示す模式図である。
本例では、開口10bの近傍にガスノズル27が設けられる。ガスノズル27は斜め下側を向いており、内部空間S3に対して斜め下向きにガスが吹き付けられる。
【0110】
これにより、開口10bから侵入したデブリが、ガスの流れに乗って内部空間S3側に進行し、内部空間S2側には進行しにくくなる。従って窓8bにデブリが付着しにくくなり、窓8bの汚染を抑制することが可能となる。
【0111】
すなわち、レーザポート3の外部から内部空間S3に向かってガスを吹き付ける手段は、デブリ誘導手段として機能する。本例では、図5の例と同様に内部空間S3の排気が行われているが、排気が行われずに、ガスの吹き付けのみが行われてもよい。
【0112】
また本例では、内部空間S3が鉛直下側に向かうにつれてすぼんだ形状となっている。これにより、排気の力を強めることが可能となる。一方で、図5の寸胴型の形状を用いた場合には、内部空間S3が広くなり、内部空間S3の圧力の上昇を緩和させることが可能となる。設計上いずれの形状を採用してもよい。
【0113】
その他、デブリを窓8bとは異なる位置に誘導するデブリ誘導手段が、具体的にどのような手段であるかは限定されず、任意の手段が用いられてよい。
【0114】
<その他の実施形態>
本技術は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態を実現することができる。
【0115】
[治具のバリエーション]
図7は、治具のバリエーション例を示す模式図である。
本例では、オサエ9a及び9bに代えて、ホルダ30により窓8bが固定される。図7には窓8b及びホルダ30の断面図が示されている。ホルダ30は窓8bよりも厚さの大きいリング形状を有し、その内径は窓8bと同一である。
ホルダ30は、本技術に係る治具の一実施形態に相当する。
【0116】
さらに、窓8bの外周部及びホルダ30のいずれにも当接する、複数のストッパー31が設けられる。図7では、これら複数のストッパー31のうちの1つに代表して符号を付している。ストッパー31のホルダ30に当接する面にはネジが接続されており、ネジ止めによりストッパー31がホルダ30に固定される。
【0117】
また、ホルダ30にはガス導通孔32が構成される。ガス導通孔32の数や配置は限定されないが、本例ではその一部であるガス導通孔32a及び32bが図示されている。左側の例では、ガス導通孔32がホルダ30の厚さ方向に延在している。また右側の例では、ガス導通孔32がL字型であり、窓8b側(内側)に向いている。
【0118】
このように、窓8bをホルダ30及びストッパー31により挟み込むことで、窓8bが安定して固定される。また、窓8bとストッパー31との間をロウ付けすることにより、窓8bとストッパー31とを固定してもよい。これにより、窓8bがさらに安定して固定される。また熱伝導性が良くなり、窓8bの温度上昇が抑制される。
【0119】
図8は、ガス導通孔18のバリエーション例を示す模式図である。
オサエ9aにおけるガス導通孔18の数及び配置について、本例のようなバリエーションを採用することが可能である。
【0120】
上側の例では、外周部の0時、3時、6時、9時の位置にそれぞれ1つずつ、合計4つのガス導通孔18が設けられている。下側の例では、3時及び9時の位置を除いて、上半分及び下半分にそれぞれ、外周部に沿って延在するようにガス導通孔18が設けられている。
【0121】
ガス導通孔18の構成について、他の部材の配置等に合わせて、このような任意のバリエーションを採用することが可能である。また図7のホルダ30が用いられる場合でも、このようなバリエーションが採用されてよい。
【0122】
図3のオサエ9bは開口10bの位置まで延在しているが、側部11に対してオサエ9bを固定することが可能であれば、オサエ9bが開口10bの位置まで延在しなくてもよい。その他、治具の構成はオサエ9a及び9b、並びにホルダ30のようなものに限定されず、任意であってよい。
【0123】
[窓のバリエーション]
図3において、窓8bの少なくとも右側(開口10b側)の面は、反射防止膜(ARコート)を有さなくてもよい。右側の面にARコートを行った場合、ARコートが劣化して熱レンズ効果が発生してしまう場合がある。そのため、右側の面にはARコートを行わないことにより、このような不具合を防止することが可能となる。
【0124】
一方で、左側の面に対しては、ARコートを行っても、行わなくてもよい。左側の面にARコートを行うことにより、エネルギービームEBの反射を防止することが可能となる。
【0125】
窓8bは、例えばフッ化カルシウム又はフッ化マグネシウムの少なくとも一方を含む材料により構成される。これにより、窓8bによる紫外線の吸収を少なくすることが可能となる。
【0126】
また、窓8bが低膨張率の材料又はガラスの少なくとも一方により構成されてもよい。これらの材料は紫外線を吸収するものの、赤外線の透過率は比較的高いため、窓8bの熱膨張が小さい場合には有用である。
【0127】
また、窓8bが水冷により冷却されてもよい。あるいは、窓8aが何らかの手段により冷却されることで、熱伝導により窓8bが冷却されてもよい。
【0128】
図3では、窓8bがレーザポート3の内部における中央程度の位置に固定されているが、さらに窓8aに近い位置に窓8bが固定されてもよい。これにより、照射位置I(熱源)と窓8bとが離隔され、窓8bに対する熱の影響を抑制することが可能となる。
【0129】
その他、窓8aや8bの具体的な構成は限定されず、エネルギービームEBが通過可能であるような任意の構成が用いられてよい。
【0130】
[その他の部材のバリエーション]
図3において、オサエ9bの凸部24と窓8bとの間に、あるいは凸部24に代えて、Oリングが挿入されてもよい。これにより、窓8bをさらに安定して固定することが可能となる。この場合、ガスの導通経路を確保するため、必要に応じてOリングに孔が設けられてもよい。また図7の例において、窓8bとストッパー31との間にOリングが挿入されてもよい。あるいはテフロン(登録商標)リング等が用いられてもよい。
【0131】
図3の例では、レーザポート3は円錐形を有する。これにより、内部空間S1及びS2に圧力差が生じやすくなる。また開口10aの径は数mm程度であり、開口10bの径は50μm程度である構成が考えられる。一方で、レーザポート3が円錐形以外の他の形状を有していてもよく、開口10a及び10bの径も限定されない。
【0132】
[プラズマ原料の種類]
プラズマ原料101の具体的な種類は限定されない。例えば完全な液体のプラズマ原料101のみならず、液体の中に溶融している途中の固体が混ざった状態のプラズマ原料101が用いられてもよい。
【0133】
[他の装置への応用]
本例では、本技術がLPP光源装置に適用される場合について説明したが、これに限定されず、DPP方式やLDP方式の光源装置に本技術が適用されてもよい。
【0134】
以上説明した本技術に係る特徴部分のうち、少なくとも2つの特徴部分を組み合わせることも可能である。また上記で記載した種々の効果は、あくまで例示であって限定されるものではなく、また他の効果が発揮されてもよい。
【符号の説明】
【0135】
EB…エネルギービーム
S1~S3…内部空間
2…DMT
3…レーザポート
7…筐体
8a、8b…窓
9a、9b…オサエ
10a、10b…開口
11…側部
12…ガス導入管
18、32…ガス導通孔
27…ガスノズル
30…ホルダ
100…光源装置
101…プラズマ原料
108…ビーム源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8