(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001778
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】メンテナンス支援システム、メンテナンス支援方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20241226BHJP
【FI】
G06Q10/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101441
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東平 知丈
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英樹
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】補修などのメンテナンス実施の判断に有用な情報を提示することで、製品寿命の延長および製造量の低減を促進し、サーキュラーエコノミー等に貢献することができる。
【解決手段】 1以上のプロセッサと、1以上のメモリリソースと、を有するメンテナンス支援システムであって、前記メモリリソースは、メンテナンス支援プログラムを記憶し、前記メンテナンス支援プログラムを実行することで、前記プロセッサは、メンテナンスの対象部品または組立品について、劣化度合いに応じた補修量と、補修プロセスに対応する補修コストとを求め、前記補修量、前記補修コストおよび前記補修プロセスを含むメンテナンス支援情報を生成し、前記メンテナンス支援情報を所定の装置に出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のプロセッサと、1以上のメモリリソースと、を有するメンテナンス支援システムであって、
前記メモリリソースは、メンテナンス支援プログラムを記憶し、
前記メンテナンス支援プログラムを実行することで、前記プロセッサは、
メンテナンスの対象部品または組立品について、劣化度合いに応じた補修量と、補修プロセスに対応する補修コストとを求め、
前記補修量、前記補修コストおよび前記補修プロセスを含むメンテナンス支援情報を生成し、
前記メンテナンス支援情報を所定の装置に出力する
ことを特徴とするメンテナンス支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載のメンテナンス支援システムであって、
前記プロセッサは、
設計変更による前記対象部品または組立品の寸法公差に差分がある場合、当該差分を補修公差として算出し、
前記対象部品または組立品の品質のばらつきを示す情報と、前記補修公差と、を含む前記メンテナンス支援情報を生成する
ことを特徴とするメンテナンス支援システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のメンテナンス支援システムであって、
前記プロセッサは、
前記補修プロセスの実施にかかる補修リードタイムを含む前記メンテナンス支援情報を生成する
ことを特徴とするメンテナンス支援システム。
【請求項4】
請求項1または2に記載のメンテナンス支援システムであって、
前記プロセッサは、
補修せずに前記対象部品または組立品を製造した場合の製造プロセスと、当該製造プロセスにかかるコストと、を含む前記メンテナンス支援情報を生成する
ことを特徴とするメンテナンス支援システム。
【請求項5】
請求項1または2に記載のメンテナンス支援システムであって、
前記プロセッサは、
前記対象部品または組立品の材料、または、前記対象部品または組立品を含む製品の仕様が所定の規制に該当する場合、当該対象部品または組立品を所定の廃棄プロセスまたはリサイクルプロセスに移行させる
ことを特徴とするメンテナンス支援システム。
【請求項6】
請求項1または2に記載のメンテナンス支援システムであって、
前記プロセッサは、
前記対象部品または組立品のメンテナンス頻度と、当該対象部品または組立品を含む製品の使用期間と、に基づいて、補修した前記対象部品または組立品を使用する製品の優先度を求め、
前記優先度を含むメンテナンス優先度情報を生成し、
前記メンテナンス優先度情報を前記所定の装置に出力する
ことを特徴とするメンテナンス支援システム。
【請求項7】
1以上のプロセッサと、1以上のメモリリソースと、を有するメンテナンス支援システムが行うメンテナンス支援方法であって、
前記メモリリソースは、メンテナンス支援プログラムを記憶し、
前記メンテナンス支援プログラムを実行することで、前記プロセッサは、
メンテナンスの対象部品または組立品について、劣化度合いに応じた補修量と、補修プロセスに対応する補修コストとを求めるステップと、
前記補修量、前記補修コストおよび前記補修プロセスを含むメンテナンス支援情報を生成するステップと、
前記メンテナンス支援情報を所定の装置に出力するステップと、を行う
ことを特徴とするメンテナンス支援方法。
【請求項8】
請求項7に記載のメンテナンス支援方法であって、
前記プロセッサは、
設計変更による前記対象部品または組立品の寸法公差に差分がある場合、当該差分を補修公差として算出するステップと、
前記対象部品または組立品の品質のばらつきを示す情報と、前記補修公差と、を含む前記メンテナンス支援情報を生成するステップと、を行う
ことを特徴とするメンテナンス支援方法。
【請求項9】
1以上のプロセッサと、1以上のメモリリソースと、を有するメンテナンス支援システムの前記プロセッサが前記メモリリソースから読み込んで実行するプログラムであって、
前記メモリリソースは、メンテナンス支援プログラムを記憶し、
前記プロセッサが実行する前記メンテナンス支援プログラムは、
メンテナンスの対象部品または組立品について、劣化度合いに応じた補修量と、補修プロセスに対応する補修コストとを求め、
前記補修量、前記補修コストおよび前記補修プロセスを含むメンテナンス支援情報を生成し、
前記メンテナンス支援情報を所定の装置に出力する
ことを特徴とするプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のプログラムであって、
前記プロセッサが実行する前記メンテナンス支援プログラムは、
設計変更による前記対象部品または組立品の寸法公差に差分がある場合、当該差分を補修公差として算出し、
前記対象部品または組立品の品質のばらつきを示す情報と、前記補修公差と、を含む前記メンテナンス支援情報を生成する
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メンテナンス支援システム、メンテナンス支援方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーに取り組む企業が増えており、コストだけではなく、環境価値を創出することの重要性が増している。また、環境価値の向上には、製品の再利用を促したり、廃棄された製品から回収した部品を再利用した再生部品、あるいは廃棄された製品を材料に戻して再利用した再生材を活用することが重要とされる。
【0003】
家電や自動車の分野は、市場での製品流通量が多く、リサイクルに関する法規制も整備されており、環境対応が先行している分野である。一方で、製品流通量の少ない生産設備などの分野では、再生部品に対する再設計技術や再生産の仕組みが整っていないケースが多く、サーキュラーエコノミー等への貢献について課題がある。
【0004】
なお、特許文献1には、製造物の再利用に必要な支援情報を管理する装置が開示されている。具体的には、特許文献1には、「製造物情報管理サーバSVにおいて、複数の蓄電池メーカが製造した電池モジュールについて、その属性情報、使用履歴情報、メンテナンス履歴情報およびCO2排出情報をそれぞれ収集し、相互に関連付けてDBに記憶する。そして、情報閲覧要求を受信した場合に、該当する電池モジュールの属性情報、使用履歴情報、メンテンナス履歴情報およびCO2排出情報に基づいてリユース支援情報を生成し、生成されたリユース支援情報を要求元に送信する。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーの実現のためには製品の寿命を長くする取り組みが重要であり、適切な部品交換等のメンテナンスを実施することによって、ライフタイムを延長することが可能となる。また、寿命を迎えた製品を分解し、再利用可能な部品や組立品を再度、別の製品へ使用することができれば、新品の製造量を減らすことができるため、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーに貢献することができる。
【0007】
なお、特許文献1の技術では、電池モジュールを再使用するためのリユース支援情報を提供することが開示されている。しかしながら、同文献の技術では、製品や部品の再整備や再製造(リファービッシュ)を支援することについては考慮されていない。そのため、同文献の技術では、上記課題に対する改善の余地がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、補修などのメンテナンス実施の判断に有用な情報を提示することで、製品寿命の延長および製造量の低減を促進し、サーキュラーエコノミー等に貢献することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願は、上記課題の少なくとも一部を解決する手段を複数含んでいるが、その例を挙げるならば、以下のとおりである。上記の課題を解決する本発明の一態様に係るメンテナンス支援システムは、1以上のプロセッサと、1以上のメモリリソースと、を有するメンテナンス支援システムであって、前記メモリリソースは、メンテナンス支援プログラムを記憶し、前記メンテナンス支援プログラムを実行することで、前記プロセッサは、メンテナンスの対象部品または組立品について、劣化度合いに応じた補修量と、補修プロセスに対応する補修コストとを求め、前記補修量、前記補修コストおよび前記補修プロセスを含むメンテナンス支援情報を生成し、前記メンテナンス支援情報を所定の装置に出力する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、補修などのメンテナンス実施の判断に有用な情報を提示することで、製品寿命の延長および製造量の低減を促進し、サーキュラーエコノミー等に貢献することができる。
【0011】
なお、上記以外の課題、構成および効果等は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】メンテナンス支援システムの概略構成の一例を示した図である。
【
図3】メンテナンス記録情報の一例を示した図である。
【
図7】メンテナンス支援処理の一例を示したフロー図である。
【
図8】メンテナンス支援情報の表示画面例を示した図である。
【
図9】メンテナンス優先度情報の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。また、特に限定しない限り、各構成要素は、単数でも複数でも構わない。
【0014】
また、図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0015】
また、各種情報の例として、「テーブル」や「リスト」等の表現を用いて説明することがあるが、各種情報はこれら以外のデータ構造で表現されてもよい。例えば、「**テーブル」等の各種情報は、「**情報」としてもよい。また、識別情報について説明する際に、「識別情報」、「識別子」、「名」、「ID」、「番号」等の表現を用いるが、これらについてはお互いに置換が可能である。
【0016】
また、同一あるいは同様の機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。また、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0017】
また、実施形態において、プログラムを実行して行う処理について説明する場合がある。ここで、計算機は、プロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit、GPU:Graphics Processing Unit)によりプログラムを実行し、記憶資源(例えばメモリリソース)やインターフェースデバイス(例えば通信ポート)等を用いながら、プログラムで定められた処理を行う。そのため、プログラムを実行して行う処理の主体を、プロセッサとしてもよい。
【0018】
同様に、プログラムを実行して行う処理の主体が、プロセッサを有するコントローラ、装置、システム、計算機、ノードであってもよい。プログラムを実行して行う処理の主体は、演算部(処理部)であれば良く、特定の処理を行う専用回路を含んでいてもよい。ここで、専用回路とは、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)等である。
【0019】
また、プログラムは、プログラムソースから計算機にインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布サーバまたは計算機が読み取り可能な記憶メディアであってもよい。プログラムソースがプログラム配布サーバの場合、プログラム配布サーバはプロセッサと配布対象のプログラムを記憶する記憶資源を含み、プログラム配布サーバのプロセッサが配布対象のプログラムを他の計算機に配布してもよい。また、実施例において、2以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されてもよいし、1つのプログラムが2以上のプログラムとして実現されてもよい。
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0021】
本実施形態に係るメンテナンス支援システム100は、製品(例えば、装置)に搭載されている部品や組立品(以下、「部品等」という)のメンテナンスを支援するための処理を行う。具体的には、メンテナンス支援システム100は、製品の使用に伴って劣化(例えば、摩耗)した部品等の補修量や補修プロセスに応じた補修コスト等を求め、メンテナンスを支援するための情報としてユーザに提示する。
【0022】
このような補修整備の実施判断に有用な情報をユーザに提示することで、メンテナンス支援システム100は、製品寿命の延長および製造量の低減を促進し、サーキュラーエコノミー等に貢献することができる。
【0023】
<メンテナンス支援システム100の概略構成>
図1は、本実施形態に係るメンテナンス支援システム100の概略構成の一例を示した図である。メンテナンス支援システム100は、処理に用いる各種の情報を外部装置10から取得し、これらをメモリリソース30内の対応するデータベースに格納する。また、メンテナンス支援システム100は、メンテナンス支援処理を実行し、メンテナンス対象の部品等における補修量や補修プロセスにかかるコストなどを求める。また、メンテナンス支援システム100は、求めた情報を所定の計算機(例えば、ユーザが使用するメンテナンス支援システム100あるいは外部装置10を含む)に出力(送信)する。
【0024】
なお、メンテナンス支援システム100と、外部装置10とは、通信ケーブルや所定の通信ネットワーク(例えば、インターネット、LAN(Local Area Network)あるいはWAN(Wide Area Network)など)Nにより、相互通信可能に接続されている。
【0025】
<<外部装置10>>
外部装置10は、メンテナンス支援システム100に各種の情報を提供する計算機である。具体的には、外部装置10は、例えば、部品等や当該部品等が使用されている製品の規制情報やメンテナンスの記録情報など、各種の最新情報をメンテナンス支援システム100に提供(送信)する。
【0026】
また、外部装置10は、メンテナンス支援システム100で生成された情報(例えば、部品等の補修量やコストなど、メンテナンスを支援するための情報)を表示する計算機である。
【0027】
なお、メンテナンス支援システム100に対して情報の提供を行う外部装置10と、メンテナンス支援システム100で生成された情報を表示する外部装置10とは、同一の計算機であっても良く、あるいは異なる計算機であっても良い。
【0028】
<メンテナンス支援システム100の詳細>
メンテナンス支援システム100は、メモリリソース30に格納されたプログラム210や各種の情報をプロセッサ20が読み込むことにより、様々な処理を実行するプロセッサシステムである。具体的には、メンテナンス支援システム100は、メンテナンス支援情報を生成するためのメンテナンス支援処理を実行する。なお、当該処理の詳細については後述する。
【0029】
メンテナンス支援システム100は、例えば、サーバ計算機やクラウドサーバあるいはパーソナルコンピュータといった計算機であって、少なくとも1以上の計算機から構成されている。
【0030】
また、メンテナンス支援システム100は、プロセッサ20と、メモリリソース30と、NI(Network Interface Device)40と、UI(User Interface Device)50と、を有している。
【0031】
プロセッサ20は、メモリリソース30に格納されているプログラムを読み込んで、当該プログラムに対応する処理を実行する演算装置である。なお、プロセッサ20は、マイクロプロセッサ、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、あるいはその他の演算できる半導体デバイス等が一例として挙げられる。
【0032】
メモリリソース30は、各種の情報を記憶する記憶装置である。具体的には、メモリリソース30は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの不揮発性あるいは揮発性の記憶媒体である。なお、メモリリソース30は、例えばフラッシュメモリ、ハードディスクあるいはSSD(Solid State Drive)などの書き換え可能な記憶媒体や、USB(Universal Serial Bus)メモリ、メモリカードおよびハードディスクであっても良い。
【0033】
NI40は、外部装置10との間で情報通信を行う通信装置である。NI40は、通信ネットワークNを介して外部装置10との間で情報通信を行う。なお、以下で特に言及しない場合、メンテナンス支援システム100と外部装置10との間の情報通信は、NI40を介して実行されているものとする。
【0034】
UI50は、オペレータの指示をメンテナンス支援システム100に入力する入力装置、および、メンテナンス支援システム100で生成した情報等を出力する出力装置である。入力装置には、例えばキーボード、タッチパネル、マウスなどのポインティングデバイスや、マイクロフォンのような音声入力装置などがある。
【0035】
また、出力装置には、例えばディスプレイ、プリンタ、音声合成装置などがある。なお、以下で特に言及しない場合、メンテナンス支援システム100に対するオペレータの操作(例えば、情報の入力、出力および処理の実行指示など)は、UI50を介して実行されているものとする。
【0036】
また、メンテナンス支援システム100の各構成、機能、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現しても良い。また、メンテナンス支援システム100は、各機能の一部または全部を、ソフトウェアにより実現することもできるし、ソフトウェアとハードウェアとの協働により実現することもできる。また、メンテナンス支援システム100は、固定的な回路を有するハードウェアを用いても良いし、少なくとも一部の回路を変更可能なハードウェアを用いてもよい。
【0037】
また、メンテナンス支援システム100は、各プログラムにより実現される機能や処理の一部または全部をオペレータが実施することで、システムを実現することもできる。
【0038】
なお、メンテナンス支援システム100で実行されるプログラムは、当該システムが読み込み可能な不揮発ストレージ媒体に格納されても良い。不揮発ストレージ媒体に格納されたプログラムは、直接、メンテナンス支援システム100が読み込んでも良いが、プログラム配信用のプロセッサシステムが当該媒体からプログラムを読み込み、その後、プログラム配信用のプロセッサシステムからメンテナンス支援システム100に当該プログラムを送信(配信)しても良い。なお、不揮発ストレージ媒体の例は、メモリリソース30として説明した不揮発メモリなどが挙げられるが、それ以外の光ディスク媒体でも良い。
【0039】
<<規制情報DB(Database)110>>
規制情報DB110は、規制情報を格納しているデータベースである。なお、規制情報には、部品等に使用されている材料、部品等および製品についての様々な規制に関する情報が登録されている。
【0040】
図2は、規制情報の一例を示した図である。図示するように、規制情報には、使用材料に関する規制、環境汚染物質排出に関する規制、騒音に関する規制、エネルギー消費に関する規制および安全性確保に関する規制など、規制に関する各種の情報が登録されている。
【0041】
なお、規制情報は、現在適用されている規制のみならず、将来的に適用されることが決まっている規制も含まれる。例えば、1年後に使用不可になる材料あるいはその他の規制内容についても登録されている。
【0042】
<<メンテナンス記録情報DB120>>
メンテナンス記録情報DB120は、メンテナンス記録情報を格納しているデータベースである。なお、メンテナンス記録情報には、部品等に対して行われたメンテナンスの記録が登録されている。
【0043】
図3は、メンテナンス記録情報の一例を示した図である。図示するように、メンテナンス記録情報には、製品コードと、品目コード、寸法記録、使用履歴記録、交換部品記録および交換頻度記録など、メンテナンスに関する各種の情報が登録されている。
【0044】
なお、製品コードは、部品等を搭載している製品を一意に識別する情報である。品目コードは、部品等を一意に識別する情報である。寸法記録は、メンテナンス時に記録された部品等の寸法を示す情報である。すなわち、寸法記録には、劣化している状態の部品等の寸法が記録されている。
【0045】
また、使用履歴記録は、部品等の使用履歴を示す情報であって、例えば、搭載されている製品を特定する情報(例えば、製品コード)と、使用期間(あるいは製品の運用期間)と、が対応付けられて登録されている。交換部品記録は、部品等を交換したか否かを示す情報である。なお、交換部品記録には、例えば、交換された部品を識別する情報なども対応付けられて登録されている。
【0046】
また、交換頻度記録は、部品等の交換頻度を示す情報であって、例えば、交換した年月日を示す情報が登録されている。
【0047】
<<営業情報DB130>>
営業情報DB130は、営業情報を格納しているデータベースである。なお、営業情報には、製品である装置の納入やその金額といった営業の管理情報が登録されている。
【0048】
図4は、営業情報の一例を示した図である。図示するように、営業情報には、納入装置、納入台数、管理番号、装置金額およびメンテナンス金額など、営業に関する各種の情報が登録されている。
【0049】
なお、納入装置は、営業先に納入された装置に関する情報(例えば、製品コードや製品の種類など)であって、例えば、納入日などが付帯されて登録されている。また、納入台数および管理番号は各々、納入された台数および納入された装置の管理番号を示す情報である。また、装置金額およびメンテナンス金額は各々、納入された装置の売価およびメンテナンス時に発生したコストを示す情報である。
【0050】
<<製品設計情報DB140>>
製品設計情報DB140は、製品設計情報を格納しているデータベースである。なお、製品設計情報には、部品等を含む製品の設計に関する情報が登録されている。
【0051】
図5は、製品設計情報の一例を示した図である。図示するように、製品設計情報には、製品コード、品目コード、図面、部品設計寸法、組立品設計寸法、設計公差寸法、製品寿命、製品性能、材料および規定メンテナンス頻度など、製品の設計に関する各種の情報が登録されている。
【0052】
なお、製品コードは、製品を一意に識別する情報である。品目コードは、製品に搭載されている各部品等を一意に識別する情報である。図面は、部品等を含む製品の図面を示す情報である。
【0053】
また、部品設計寸法および組立品設計寸法は、部品等の設計寸法を示す情報である。設計公差寸法は、部品等の設計公差すなわち許容される大きさのばらつき範囲を示す情報である。
【0054】
また、製品寿命および製品性能は各々、製品の寿命および仕様に基づくスペックを示す情報である。なお、製品寿命には、当該製品に使用されている部品等の寿命も含まれている。また、製品性能には、例えば、仕様から導出される製品の環境汚染物質(例えば、CO2など)の排出量や騒音量、エネルギー消費量および安全性確保に関するレベル値など、規制情報に関連する情報も登録されている。材料は、部品等に使用されている材料を示す情報である。規定メンテナンス頻度は、製品および各部品等のメンテナンスの推奨頻度を示す情報である。
【0055】
なお、製品設計情報DB140には、例えば、マイナーチェンジなどの設計変更がされている製品については、設計変更前の旧設計と、設計変更後の新設計の両方の情報が格納されている。
【0056】
<<製品製造情報DB150>>
製品製造情報DB150は、製品製造情報を格納しているデータベースである。なお、製品製造情報には、部品等を含む製品の製造に関する情報が登録されている。
【0057】
図6は、製品製造情報の一例を示した図である。図示するように、製品製造情報には、製品コード、品目コード、製造プロセス、製造リードタイム、補修プロセス別リードタイム、製造コスト、補修プロセス別コストおよび製造品質ばらつきなど、製品の製造に関する各種の情報が登録されている。
【0058】
なお、製品コードは、製品を一意に識別する情報である。品目コードは、製品に搭載されている各部品等を一意に識別する情報である。製造プロセスは、製品の製造方法を示す情報であって、例えば、製造工程や各工程での製造プロセスなどが登録されている。
【0059】
また、製造リードタイムは、製品を製造する際の所要時間を示す情報である。補修プロセス別リードタイムは、部品等の補修プロセスごとの所要時間を示す情報である。製造コストは、製品の製造コストを示す情報である。補修プロセス別コストは、部品等の補修プロセスごとのコストを示す情報である。製造品質ばらつきは、製品や部品等の製造精度を示す情報であって、例えば、設計寸法に対する製品および部品等の形状や大きさなどのばらつきの範囲を示す情報が登録されている。
【0060】
また、製品製造情報DB150には、例えば、マイナーチェンジなどの設計変更がされている製品については、旧設計における製造情報と、新設計における製造情報の両方が格納されている。
【0061】
なお、これらの各データベースに格納されている情報は、外部装置10を介して取得された最新の情報に基づき、逐次、アップデートされる。
【0062】
<<メンテナンス支援プログラム211>>
メンテナンス支援プログラム211は、メンテナンス実施の判断に有用な情報を提示するプログラムである。具体的には、メンテナンス支援プログラム211は、メンテナンス支援処理を実行する。より具体的には、メンテナンス支援プログラム211は、メンテナンス対象の部品等について、各種の規制に該当するか否かの判定や、補修する場合の補修量および補修にかかるコストなどの有用な情報を求め、これらをユーザに提示する。
【0063】
以上、メンテナンス支援システム100の詳細について説明した。
【0064】
<メンテナンス支援処理>
図7は、メンテナンス支援システム100で実行されるメンテナンス支援処理の一例を示したフロー図である。メンテナンス支援システム100は、例えば、オペレータからの実行指示を受け付けると当該処理を開始する。また、メンテナンス支援処理は、メンテナンス支援プログラム211を読み込んだプロセッサ20により実行される。
【0065】
処理が開始されると、プロセッサ20は、メンテナンスの対象製品の製品コードおよび対象部品等の品目コードの入力を受け付ける(ステップS10)。具体的には、プロセッサ20は、対象製品のメンテナンス時に交換が必要と判断された部品等の品目コードおよび当該対象製品の製品コードの入力をオペレータから受け付ける。
【0066】
次に、プロセッサ20は、対象製品および対象部品等の継続使用が可能か否かを判定する(ステップS20)。具体的には、プロセッサ20は、対象部品等に使用されている材料や、規制情報に関連する製品性能(仕様)を製品設計情報から特定する。また、プロセッサ20は、特定した情報と規制情報とを比較し、対象製品および対象部品等が規制情報に登録されている各種の規制に該当するか否かに応じて、継続使用が可能か否かを判定する。
【0067】
なお、継続使用が可能か否かは、メンテナンス支援システム100のユーザが判断し、その可否を入力する形態であっても良い。具体的には、プロセッサ20は、例えば、対象部品等に使用されている材料および規制情報に関連する製品性能を製品設計情報から特定し、メンテナンス情報と共にディスプレイに表示する。また、プロセッサ20は、継続使用の可否を判断したユーザからの入力に基づき、当該判定処理を実行する。
【0068】
そして、継続使用が可能と判定した場合(ステップS20でYes)、プロセッサ20は、処理をステップS30に移行する。一方で、継続使用が不可と判定した場合(ステップS20でNo)、プロセッサ20は、対象製品および対象部品を所定の廃棄プロセスまたはリサイクルプロセスへ移行する(ステップS90)。なお、廃棄プロセスまたはリサイクルプロセスが実行されることで、対象製品や対象部品等は所定の方法で廃棄あるいはリサイクルされて再利用される。
【0069】
ステップS30では、プロセッサ20は、対象部品等の劣化の度合いを特定する。具体的には、プロセッサ20は、例えば、製品設計情報における対象部品等(例えば、歯車)の設計値(例えば、厚み8mm)と、メンテナンス記録情報の寸法記録(例えば、厚み5mm)との差分に基づき、対象部品等の劣化の度合い(3mm)を特定する。
【0070】
次に、プロセッサ20は、最新の製品設計情報に基づき、対象部品等の公差を特定する(ステップS40)。具体的には、プロセッサ20は、対象部品等の設計変更がない製品については、現行の製品設計情報を用いて、対象部品等の公差(例えば、±0.2mm)を特定する。また、プロセッサ20は、対象部品等の設計変更がある製品については、新旧の製品設計情報を用いて、旧設計の公差(例えば、±0.2mm)と新設計の公差(例えば、±0.1mm)を特定する。
【0071】
また、次に、プロセッサ20は、再整備のための評価を実行する(ステップS50)。具体的には、プロセッサ20は、対象部品等の補修プロセス(例えば、歯車の厚みを補修するための所定のプロセス)と、当該補修プロセスにかかるコストと、特定した補修プロセスのリードタイムと、対象部品等の製造品質ばらつきの値と、を製品製造情報から特定する。
【0072】
また、プロセッサ20は、補修せずに対象部品等を製造した場合の製造プロセスと、当該製造プロセスにかかるコストと、製造リードタイムと、対象部品等の製造品質ばらつきの値と、を製品製造情報から特定する。
【0073】
次に、プロセッサ20は、再整備設計を実行する(ステップS60)。具体的には、プロセッサ20は、対象部品等の補修量(本例では、劣化した状態の厚み5mmを設計値の8mmに補修する場合の補修量3mm)と、旧設計の公差と新設計の公差との差分である補修公差(本例では、±0.1mm)を算出し、これらを再整備設計とする。
【0074】
次に、プロセッサ20は、これらの情報を含むメンテナンス支援情報を生成し(ステップS70)、ディスプレイに出力(表示)する(ステップS80)。なお、ユーザが外部装置10を介してメンテナンス支援システム100を操作している場合、メンテナンス支援システム100は、当該外部装置10にメンテナンス支援情報を表示させても良い。
【0075】
また、プロセッサ20は、メンテナンス支援情報を出力すると、本フローの処理を終了する。
【0076】
図8は、メンテナンス支援情報の表示画面例を示した図である。図示するように、メンテナンス支援情報には、補修する場合の再整備設計と、補修せずに製造し直す場合の製造設計とが含まれており、各々の設計を比較可能に表示されている。
【0077】
なお、メンテナンス支援情報の内容は、
図8に例示する項目に限定されるものではなく、適宜、ユーザが所望する項目の組み合わせを表示させることも可能である。
【0078】
以上、メンテナンス支援処理について説明した。
【0079】
このように、メンテナンス支援システム100は、メンテナンス支援情報を表示することで、ユーザが部品等を補修するか否かを判断する際の検討材料となる有用な情報を提供することができる。
【0080】
特に、ユーザは、補修量や補修公差と品質ばらつきとを比較することで、補修による整備が可能かどうかを事前に判断することができる。また、ユーザは、補修リードタイムに基づき、所定のメンテナンス期間中に再整備を完了できるかどうかを判断することができる。また、ユーザは、再整備におけるコストを事前に確認することができる。また、再整備が難しい部品等である場合には、ユーザは、製造のし直しの判断をすることもできる。
【0081】
このように、ユーザは、表示されたメンテナンス支援情報に基づいて、メンテナンスの実施に関する適切な判断を行うことができる。その結果、メンテナンス支援システム100は、製品寿命の延長および製造量の低減を促進し、サーキュラーエコノミー等に貢献することができる。
【0082】
<変形例>
補修した部品等は、メンテナンス対象の製品に戻して使用されるとは限られない。変形例に係るメンテナンス支援システム100は、補修した部品等が使用されている製品であって、メンテナンスの優先度がより高い製品に組み込まれて使用される場合を想定し、当該優先度に関する有用な情報(以下、「メンテナンス優先度情報」という)をユーザに提示する。
【0083】
具体的には、プロセッサ20は、営業情報の納入装置と、メンテナンス記録情報と、製品設計情報と、に基づいて、メンテナンスの対象部品等が使用されている製品(装置)と、使用期間と、を特定する。なお、対象部品等が使用されている製品には、前述の実施形態で説明した対象製品も含まれる。
【0084】
また、プロセッサ20は、特定した製品の製品設計情報を用いて、規定メンテナンス頻度に基づく部品等の交換目安を特定する。また、プロセッサ20は、使用期間および交換目安に基づいて、当該製品に使用されている対象部品等を、補修した部品等に交換するメンテナンスの優先度を決定する。
【0085】
また、プロセッサ20は、決定した優先度を含むメンテナンス優先度情報を生成し、ディスプレイに表示する。なお、メンテナンス優先度情報の生成および出力は、例えば、前述のステップS80の後に実施されれば良い。
【0086】
図9は、メンテナンス優先度情報の一例を示した図である。図示するように、メンテナンス優先度情報には、製品名、使用期間、交換目安および優先度の項目が含まれている。
【0087】
このような変形例に係るメンテナンス支援システム100によっても、補修などのメンテナンス実施の判断に有用な情報がユーザに提示される。その結果、メンテナンス支援システム100は、製品寿命の延長および製造量の低減を促進し、サーキュラーエコノミー等に貢献することができる。
【0088】
特に、ユーザは、メンテナンス優先度情報の項目を確認することで、より優先度の高い製品に対して補修した部品等を用いる、といった判断をすることができる。これにより、補修した部品等を必要に応じて適切な製品に使用することができるため、当該製品の寿命を延長することができる。
【0089】
なお、本発明は、上記の実施形態や変形例などに限られるものではなく、これら以外にも様々な実施形態および変形例が含まれる。例えば、上記の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態や変形例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0090】
また、上記説明では、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えて良い。
【符号の説明】
【0091】
100・・・メンテナンス支援システム、110・・・規制情報DB、120・・・メンテナンス記録情報DB、130・・・営業情報DB、140・・・製品設計情報DB、150・・・製品製造情報DB、210・・・プログラム、211・・・メンテナンス支援プログラム、20・・・プロセッサ、30・・・メモリリソース、40・・・NI(ネットワークインターフェースデバイス)、50・・・UI(ユーザインターフェースデバイス)、10・・・外部装置、N・・・ネットワーク