(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017795
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】カムクラッチ
(51)【国際特許分類】
F16D 41/07 20060101AFI20250130BHJP
F16D 41/08 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
F16D41/07 Z
F16D41/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121043
(22)【出願日】2023-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100138254
【弁理士】
【氏名又は名称】澤井 容子
(72)【発明者】
【氏名】杉谷 翼
(72)【発明者】
【氏名】中川 栄一
(72)【発明者】
【氏名】榑松 勇二
(72)【発明者】
【氏名】福田 明大
(72)【発明者】
【氏名】上東 宏之
(57)【要約】
【課題】簡便な構造で、正確性、安定性、耐久性に優れ、小型化及び長寿命化を実現可能であり、高トルクにも対応可能なトルクリミッタ機能を備えたカムクラッチを提供すること。
【解決手段】同軸上に相対回転可能に設けられている少なくとも1組の内輪110及び外輪120の間の周方向に設けられている複数のカム130と、複数のカム130を内外輪110、120に接触させる方向に付勢する付勢手段とを備え、カム130は内輪110及び外輪120のカム受け面111、121以外に設けられた係止部141に当接して噛み合い方向の傾動を制限する傾動制限部133を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸上に相対回転可能に設けられている少なくとも1組の内輪及び外輪と、前記内輪と前記外輪の間の周方向に設けられている複数のカムと、前記複数のカムを内外輪に接触させる方向に付勢する付勢手段とを備えたカムクラッチであって、
前記カムは、前記内輪及び外輪のカム受け面以外に設けられた係止部に当接して噛み合い方向の傾動を制限する傾動制限部を有することを特徴とするトルクリミッタ機能を備えたカムクラッチ。
【請求項2】
前記係止部は、前記複数のカムを周方向に整列支持するケージ部材に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のトルクリミッタ機能を備えたカムクラッチ。
【請求項3】
前記傾動制限部は、前記カムの軸方向一方又は両方の端部に設けられ、
前記係止部は、前記外輪又は内輪に直接又は間接的に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のトルクリミッタ機能を備えたカムクラッチ。
【請求項4】
前記係止部は、前記外輪又は内輪に軸方向側方から嵌合される規制部材に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のトルクリミッタ機能を備えたカムクラッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクリミッタ機能を備えたカムクラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
入力軸側から出力軸側へトルクを伝達または遮断するクラッチにおいては、過大なトルクが伝達されることを防止するためのトルクリミッタを備えたものが知られている。
【0003】
トルクリミッタとしては、トレランスリングや摩擦板を利用したいわゆる摩擦式のトルクリミッタや、例えばボールとボールに対し軸方向または径方向に荷重をかける付勢手段とを利用したいわゆる機械式のトルクリミッタなどが知られている。付勢手段としては、例えばコイルスプリング、皿ばねまたは板バネなどが用いられる。
【0004】
例えば、特許文献1には、トレランスリングが外輪の外周面と入力伝達部材の内周面との間もしくは内輪の外周面と入力伝達部材の外周面との間に配置され、規定トルクを超える大きさのトルクの入力があった場合には、内輪、外輪または入力伝達部材とトレランスリングとの間で滑りが発生し、トルクの伝達を制限するよう構成されたトルクリミッタが開示されている。
【0005】
また、例えば特許文献2には、孔に入れて嵌め込んだボールに対し片側に寄せる力が加わるよう円形の板バネが設けられ、例えば過剰なトルクの入力があった場合には、板バネが拡開方向に弾性変形されてボールが孔から押し出されることで、トルクの伝達を制限するよう構成されたトルクリミッタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-156432号公報
【特許文献2】特表2005-505431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
而して、特許文献1に記載のトルクリミッタなどのように、摩擦式のトルクリミッタにあっては、摩擦板などの摩擦係数に大きく依存するものが多く、トリップ時(トルク伝達遮断時)に摺動するため、このようなトルクリミッタを備えたクラッチにおいては、環境変化による荷重コントロールが難しく、トリップを繰り返すと摩耗による耐久性やリミッタ荷重の不安定さが懸念される。
また、特許文献2に記載のトルクリミッタなどのように、機械式のトルクリミッタにあっては、付勢手段として用いられる例えば板バネ等では、高いトルクを発生させるのが難しく、また、付勢手段を配置するためにスペースを大きくとるため、高トルク、省スペースが必要な車両の動力伝達用途には適さず、また、部品点数も増加し、製造コストが増大するといった問題がある。さらに、板バネの位置合わせも必要となる。
【0008】
一方、カムクラッチのカム形状によって決定される噛み合いトルクの上限を使用して、上限以上のトルクとなった際にカム面を滑らせることでトルクリミッタとすることが考えられる。
例えば、
図1に示すように、定格トルク負荷時は、カム530の内輪側カム面531が内輪カム受け面511、外輪カム受け面521の間でカム530が噛み合ってくさびとして働くことでトルクを伝達しているが、過大入力時にはカム530が傾動して噛み合いトルクの上限を超えるとカムのトルク伝達するR形状のくさび角度限界を超える。
このくさび角度限界を超えた際、
図1上段のようなカム面形状の場合、カムとカム受け面の接触点が瞬間的に移動してくさび角度効果がなくなってトルクを逃がす(ロールオーバー)こととなり大きな衝撃が発生する。
また、トルクリミッタとしての機能が働いた際に、ロールオーバーで一旦角度限界を超えていることから、元の状態には復帰せず、一回のみの作動となりカムクラッチ全体の交換(あるいは、分解して再度組み立て等)を行う必要があった。
【0009】
また、
図1下段のように、くさび角度限界を超えた後のロールオーバーを防止するために、くさび角度限界の延長上にカム受け面と摺動する面が存在する場合は、くさび角度限界位置で静止摩擦の限界を超えた後にカムとカム面が摺動しつつトルクが急激に抜ける。
この時、カムが無負荷状態の方向に急激に戻る現象(ポップアウト)が発生し、その際のカムとカム受け面との衝突に伴う損傷が発生する虞があるという課題があった。
【0010】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、簡便な構造で、正確性、安定性、耐久性に優れ、小型化及び長寿命化を実現可能であり、高トルクにも対応可能なトルクリミッタ機能を備えたカムクラッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、同軸上に相対回転可能に設けられている少なくとも1組の内輪及び外輪と、前記内輪と前記外輪の間の周方向に設けられている複数のカムと、前記複数のカムを内外輪に接触させる方向に付勢する付勢手段とを備えたカムクラッチであって、前記カムは、前記内輪及び外輪のカム受け面以外に設けられた係止部に当接して噛み合い方向の傾動を制限する傾動制限部を有することにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0012】
本請求項1に係る発明によれば、カムは、前記内輪及び外輪のカム受け面以外に設けられた係止部に当接して噛み合い方向の傾動を制限する傾動制限部を有することにより、カムの噛み込みをカム形状に依存した噛み込みトルクの上限より手前の任意のトルクに対応した傾動状態に制限することでトルクリミッタとしての伝達トルクの上限を精度良く設定することができる。
また、設計自由度が増大するとともに、カムのトルク伝達するR形状のくさび角度限界を超えることがなく、スリップさせる平面に瞬間的に移動することでくさび角度を急激に変えてトルクを抜くこととはならないため、トルクリミットを超えた際にもトルクが急激に抜けることなく、ポップアウトによる耐久性の低下を抑制できる。
さらに、係止部が内輪及び外輪のカム受け面以外に設けられていることにより、内輪及び外輪のカム受け面の摩耗摺動を低減することが可能となり、耐久性を向上することが可能となる。
【0013】
本請求項2に記載の構成によれば、係止部が複数のカムを周方向に整列支持するケージ部材に設けられていることにより、カム面の延長部分で内輪及び外輪のカム受け面と接触しない位置に係止部を設けることができ、カムクラッチ全体軸方向長さを拡大することなくトルクリミッタを構成する係止部と傾動制限部を設けることが可能となる。
また、ケージ部材を内輪及び外輪に対して半径方向に移動可能とすることで、内輪と外輪の軸心がずれて複数のカムの傾動状態が均一ではなくなっても、ケージ部材が半径方向に移動することで複数のカムの上限トルクを均一に保つことが可能となり、伝達トルクの上限をさらに精度良く設定することができる。
【0014】
本請求項3に記載の構成によれば、傾動制限部がカムの軸方向一方又は両方の端部に設けられていることにより、カム面の形状設計とは独立して傾動制限部を形成可能となり、設計自由度が向上するとともに、傾動を精度良く設定できトルクリミッタとしての伝達トルクの上限をさらに精度良く設定することができる。
本請求項4に記載の構成によれば、係止部が外輪又は内輪に軸方向側方から嵌合される規制部材に設けられていることにより、同一の内輪、外輪、カムを用いて規制部材を変更することで異なるトルクの上限値を設定することができる。
また、係止部が摩耗等により劣化しても規制部材を交換することで、長期間に渡って安定したトルクの上限を維持可能となる
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】従来のカムクラッチによるトルク過大入力時の動作説明図。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るカムクラッチの斜視図。
【
図6】第1実施形態に係るカムクラッチのトルク過大入力時の動作説明図。
【
図7】第1実施形態に係るカムクラッチの第1変形例の一部断面斜視図。
【
図8】第1実施形態に係るカムクラッチの第2変形例の一部断面斜視図。
【
図9】本発明の第2実施形態に係るカムクラッチの斜視図。
【
図12】本発明の第3実施形態に係るカムクラッチの一部断面斜視図。
【
図13】本発明の第4実施形態に係るカムクラッチの一部断面斜視図。
【
図14】本発明の第5実施形態に係るカムクラッチの一部断面斜視図。
【
図16】本発明の第6実施形態に係るカムクラッチの一部断面斜視図。
【
図17】本発明の第7実施形態に係るカムクラッチの斜視図。
【
図21】本発明の第8実施形態に係るカムクラッチの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係るカムクラッチ100は、
図1乃至
図4に示すように、同軸上に相対回転可能に設けられた内輪110及び外輪120と、内輪110と外輪120との間の周方向に設けられてトルクの伝達を行う複数のカム130と、複数のカム130を内外輪110、120に接触させる方向に付勢する付勢手段(ガータースプリング)150とを備える。
複数のカム130は、ケージ部材140によって周方向に整列支持されている。
カム130は、ケージ部材140の係止部141に当接して噛み合い方向の傾動を制限する傾動制限部133を有している。
【0017】
以上のように構成されたカムクラッチ100のトルクリミッタ機能の動作について説明する。
図6に示すように、定格トルク負荷時は、カム130の内輪側カム面131が内輪カム受け面111、外輪カム受け面121の間でカム130が噛み合ってくさびとして働くことでトルクを伝達している。
伝達トルクが所定のトルクに達すると、カム130の傾動規制部133の周方向反対側の背面がケージ部材140の枠端142に当接し、カム130の傾動規制部133がケージ部材140の係止部141に当接してカム130のそれ以上の傾動が阻止され、さらなる噛み込みを抑えることで、それ以上のトルクが加わった際に、内輪110のカム受け面111とカム130のカム面132、あるいは、外輪120のカム受け面121とカム130のカム面131の間で滑りが発生してトルクが開放される。
また、
図7(a:一部断面斜視図、b:内外輪を省略した説明図)に示す変形例のように、ケージ部材140が外輪120に対して回転方向に固定されている場合、カム130の傾動規制部133の周方向反対側の背面がケージ部材140の枠端142に当接することのみでカム130のそれ以上の傾動を阻止することが可能であり、その場合、当該背面が傾動規制部であり、ケージ部材140の枠端142が係止部となる。
さらに、
図8(a:一部断面斜視図、b:内外輪を省略した説明図)に示す他の変形例のように、外輪120に対して回転方向に固定したケージ部材140にカム130を枠端142側に常時付勢する押圧片152を各カム130に対応して設け、カム130を内外輪110、120に接触させる方向に付勢する付勢手段としてもよい。
押圧片152は、ケージ部材140と別体でもよく、ケージ部材140をスプリング材料で構成して一体に形成されていてもよい。
【0018】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係るカムクラッチ100bは、
図9乃至
図11に示すように、同軸上に相対回転可能に設けられた内輪110b及び外輪120bと、内輪110bと外輪120bとの間の周方向に設けられてトルクの伝達を行う複数のカム130bと、複数のカム130bを径方向に付勢する付勢手段(ガータースプリング)150bとを備える。
複数のカム130bは、カム面以外に連続的な円周面を備える形状であり、本実施形態ではケージ部材なしでもそれ自体で整列可能に構成されているが、ケージ部材が存在してもよい。
カム130bは、その両側部に外輪120bに設けられた係止部121bに当接して噛み合い方向の傾動を制限する傾動制限部133bを有している。
【0019】
このカムクラッチ100bにおいては、伝達トルクが所定のトルクに達すると、カム130bの傾動規制部133bが外輪120bの係止部121bに当接し、カム130bのそれ以上の傾動が阻止されさらなる噛み込みを抑えることで、それ以上のトルクが加わった際に、内輪110bのカム受け面とカム130bのカム面、あるいは、外輪120bのカム受け面とカム130bのカム面の間で滑りが発生してトルクが開放される。
【0020】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態に係るカムクラッチ100cは、
図12に示すように、同軸上に相対回転可能に設けられた内輪110c及び外輪120cと、内輪110cと外輪120cとの間の周方向に設けられてトルクの伝達を行う複数のカム130cと、複数のカム130cを径方向に付勢する付勢手段(ガータースプリング)150cとを備える。
複数のカム130cは、カム面以外に連続的な円周面を備える形状であり、ケージ部材なしでもそれ自体で整列可能に構成されている。
カム130cは、その両側部に係止部を構成する規制部材160cに当接して噛み合い方向の傾動を制限する傾動制限部133bを有している。
規制部材160cは、円環状で外輪120cの両側部の内側に挿入されている。
【0021】
このカムクラッチ100cにおいては、伝達トルクが所定のトルクに達すると、カム130cの傾動規制部133cが規制部材160cに当接し、カム130cのそれ以上の傾動が阻止されさらなる噛み込みを抑えることで、それ以上のトルクが加わった際に、内輪110cのカム受け面とカム130cのカム面、あるいは、外輪120cのカム受け面とカム130cのカム面の間で滑りが発生してトルクが開放される。
【0022】
<第4実施形態>
本発明の第4実施形態に係るカムクラッチ100dは、
図13に示すように、同軸上に相対回転可能に設けられた内輪110d及び外輪120dと、内輪110dと外輪120dとの間の周方向に設けられてトルクの伝達を行う複数のカム130dと、複数のカム130dを径方向に付勢する付勢手段(ガータースプリング)150dとを備える。
複数のカム130dは、カム面以外に連続的な円周面を備える形状であり、本実施形態ではケージ部材なしでもそれ自体で整列可能に構成されているが、ケージ部材が存在してもよい。
カム130dは、その両側部に係止部を構成する規制部材160dに当接して噛み合い方向の傾動を制限する傾動制限部133dを有している。
規制部材160dは、円環状で外輪120dの両側部の内側に圧入嵌合されている。
【0023】
このカムクラッチ100dにおいては、伝達トルクが所定のトルクに達すると、カム130dの傾動規制部133dが規制部材160dに当接し、カム130dのそれ以上の傾動が阻止されさらなる噛み込みを抑えることで、それ以上のトルクが加わった際に、内輪110dのカム受け面とカム130dのカム面、あるいは、外輪120dのカム受け面とカム130dのカム面の間で滑りが発生してトルクが開放される。
【0024】
<第5実施形態>
本発明の第5実施形態に係るカムクラッチ100eは、
図14、
図15に示すように、同軸上に相対回転可能に設けられた内輪110e及び外輪120eと、内輪110eと外輪120eとの間の周方向に設けられてトルクの伝達を行う複数のカム130eと、複数のカム130eを径方向に付勢する付勢手段(ガータースプリング)150eとを備える。
複数のカム130eは、カム面以外に連続的な円周面を備える形状であり、本実施形態ではケージ部材なしでもそれ自体で整列可能に構成されているが、ケージ部材が存在してもよい。
カム130eは、その一方の側部に外輪120eに設けられた係止部121eに当接して噛み合い方向の傾動を制限する傾動制限部133eを有している。
【0025】
このカムクラッチ100eにおいては、伝達トルクが所定のトルクに達すると、カム130eの傾動規制部133eが外輪120eの係止部121eに当接し、カム130eのそれ以上の傾動が阻止されさらなる噛み込みを抑えることで、それ以上のトルクが加わった際に、内輪110eのカム受け面とカム130eのカム面、あるいは、外輪120eのカム受け面とカム130eのカム面の間で滑りが発生してトルクが開放される。
【0026】
<第6実施形態>
本発明の第6実施形態に係るカムクラッチ100fは、
図16に示すように、同軸上に相対回転可能に設けられた内輪110f及び外輪120fと、内輪110fと外輪120fとの間の周方向に設けられてトルクの伝達を行う複数のカム130fと、複数のカム130fを径方向に付勢する付勢手段(ガータースプリング)150fとを備える。
複数のカム130fは、カム面以外に連続的な円周面を備える形状であり、本実施形態ではケージ部材なしでもそれ自体で整列可能に構成されているが、ケージ部材が存在してもよい。
カム130fは、その一方の側部に係止部を構成する規制部材160fに当接して噛み合い方向の傾動を制限する傾動制限部133fを有している。
規制部材160fは、円環状で外輪120fの一方の側部の内側に挿入されている。
カム130fは、他方の側部において付勢手段(ガータースプリング)150fによって付勢されている。
【0027】
このカムクラッチ100fにおいては、伝達トルクが所定のトルクに達すると、カム130fの傾動規制部133fが係止部を構成する規制部材160fに当接し、カム130fのそれ以上の傾動が阻止されさらなる噛み込みを抑えることで、それ以上のトルクが加わった際に、内輪110fのカム受け面とカム130fのカム面、あるいは、外輪120fのカム受け面とカム130fのカム面の間で滑りが発生してトルクが開放される。
【0028】
<第7実施形態>
本発明の第7実施形態に係るカムクラッチ100gは、
図17乃至
図20に示すように、同軸上に相対回転可能に設けられた内輪110g及び外輪120gと、内輪110gと外輪120gとの間の周方向に設けられてトルクの伝達を行う複数のカム130gと、複数のカム130gを径方向に付勢する付勢手段(ガータースプリング)150gとを備える。
複数のカム130gは、カム面以外に連続的な円周面を備える形状であり、本実施形態ではケージ部材なしでもそれ自体で整列可能に構成されているが、ケージ部材が存在してもよい。
カム130gは、その一方の側部に内輪110gに設けられた係止部111gに当接して噛み合い方向の傾動を制限する傾動制限部133gを有している。
【0029】
このカムクラッチ100gにおいては、伝達トルクが所定のトルクに達すると、カム130gの傾動規制部133gが係止部を構成する規制部材160gに当接し、カム130gのそれ以上の傾動が阻止されさらなる噛み込みを抑えることで、それ以上のトルクが加わった際に、内輪110gのカム受け面とカム130gのカム面、あるいは、外輪120gのカム受け面とカム130gのカム面の間で滑りが発生してトルクが開放される。
【0030】
<第8実施形態>
本発明の第8実施形態に係るカムクラッチ100hは、
図21乃至
図23に示すように、同軸上に相対回転可能に設けられた内輪110h及び外輪120hと、内輪110hと外輪120hとの間の周方向に設けられてトルクの伝達を行う複数のカム130hと、複数のカム130hを径方向に付勢する付勢手段(ガータースプリング)150hとを備える。
複数のカム130hは、ケージ部材140hによって周方向に整列支持されている。
カム130hは、ケージ部材140hの係止部141hに当接して噛み合い方向の傾動を制限する傾動制限部133hを有している。
【0031】
このカムクラッチ100hにおいては、伝達トルクが所定のトルクに達すると、カム130hの傾動規制部133hがケージ部材140hの係止部141hに当接するため、カム130hのそれ以上の傾動が阻止されさらなる噛み込みを抑えることで、それ以上のトルクが加わった際に、内輪110hのカム受け面とカム130hのカム面、あるいは、外輪120hのカム受け面とカム130hのカム面の間で滑りが発生してトルクが開放される。
【0032】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
例えば、上記の各実施形態においては、内輪を固定して外輪を回転させる構成、外輪を固定して内輪を回転させる構成、及び、内輪及び外輪がともに回転する構成のいずれであってもよい。
【符号の説明】
【0033】
100 ・・・ カムクラッチ
110 ・・・ 内輪
111、511 ・・・ カム受け面
112 ・・・ 係止部
120 ・・・ 外輪
121、521 ・・・ カム受け面
122 ・・・ 係止部
123 ・・・ 切り欠き部
130、530 ・・・ カム
131 ・・・ カム面(外輪側)
132 ・・・ カム面(内輪側)
133 ・・・ 傾動規制部
140、540 ・・・ ケージ部材
141 ・・・ 係止部
142 ・・・ 枠端
150 ・・・ 付勢部材(ガータースプリング)
151 ・・・ 係止部
152 ・・・ 押圧片
160 ・・・ 規制部材