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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017804
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】はく離性接着層および積層体
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/04 20060101AFI20250130BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20250130BHJP
   C09D 5/20 20060101ALI20250130BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20250130BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20250130BHJP
   C09D 4/00 20060101ALI20250130BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
C09D175/04
C09D5/02
C09D5/20
C09D5/00 D
C09D133/00
C09D4/00
B32B27/00 M
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121067
(22)【出願日】2023-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】593135125
【氏名又は名称】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】堀金 航大
(72)【発明者】
【氏名】角野 宏和
(72)【発明者】
【氏名】千田 晃子
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 希美
(72)【発明者】
【氏名】小川 淳也
【テーマコード(参考)】
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AH03A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK25A
4F100AK51A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA02A
4F100CA13B
4F100CB00A
4F100GB32
4F100HB00B
4F100JB05A
4F100JL10B
4F100JL11A
4F100JL14A
4F100JN01C
4F100YY00A
4J038CG001
4J038DG111
4J038DG131
4J038DG191
4J038DG262
4J038FA081
4J038FA121
4J038GA03
4J038JB01
4J038KA02
4J038MA08
4J038MA10
4J038NA10
4J038PA06
4J038PA19
4J038PB07
4J038PC02
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】通常利用時に剥がれない密着性と、剥がしたいタイミングで剥がすことができるはく離性が良好なはく離性接着層を提供すること。
【解決手段】はく離性接着層であって、前記はく離性接着層が、接着層用塗料の塗膜であり、前記接着層用塗料が、水分散アクリル樹脂および水分散ウレタン樹脂を含む第1剤と、イソシアネートを含む第2剤からなる2液型であり、前記水分散ウレタン樹脂のガラス転移温度(Tg)が、-80~0℃であり、前記水分散アクリル樹脂の水酸基価が、40~165mg KOH/gであり、前記イソシアネートが有するイソシアネート基のモル数の、前記第1剤に含まれる水酸基のモル数に対する比(NCO/OH)が、0.5~2.0である、はく離性接着層。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
はく離性接着層であって、
前記はく離性接着層が、接着層用塗料の塗膜であり、
前記接着層用塗料が、水分散アクリル樹脂および水分散ウレタン樹脂を含む第1剤と、イソシアネートを含む第2剤からなる2液型であり、
前記水分散ウレタン樹脂のガラス転移温度(Tg)が、-80~0℃であり、
前記水分散アクリル樹脂の水酸基価が、40~165mg KOH/gであり、
前記イソシアネートが有するイソシアネート基のモル数の、前記第1剤に含まれる水酸基のモル数に対する比(NCO/OH)が、0.5~2.0である、はく離性接着層。
【請求項2】
順に隣接して、
請求項1に記載のはく離性接着層と、
クリヤー層または意匠層と、を含む、積層体。
【請求項3】
前記水分散アクリル樹脂と前記水分散ウレタン樹脂との合計質量に対する、前記水分散アクリル樹脂の質量の割合が、10~90質量%である、請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
酸無水物基を有する重合性不飽和モノマーを含む1液型塗膜用、または、ウレタン樹脂を含む2液型塗膜用である、請求項2に記載の積層体。
【請求項5】
剥離強度が3N以上である、請求項4に記載の積層体。
【請求項6】
80℃/100h後の剥離強度が10N以下である、請求項4に記載の積層体。
【請求項7】
Xe試験750MJ後の剥離強度が10N以下である、請求項4に記載の積層体。
【請求項8】
順に隣接して、
前記はく離性接着層と、
意匠層と、
前記クリヤー層と、を含む、請求項2に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はく離性接着層および積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の外装(例えば、自動車の外装のクリヤー塗膜)に、自動車外装の色替えまたは保護を目的として剥がせる塗膜を設けることがある。そのような塗膜は、任意の期間利用された後、剥離される。利用期間中は自動車外装としての高い塗膜性能が求められる。剥がせる塗膜用の塗料は、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体のような合成ゴムをキシレンやエチルベンゼン、アセトン及びメチルエチルケトン等の有機溶媒に溶解させたものが広く販売されている。これら塗料は、乾燥工程で、揮発性有機化合物を空気中へ放出するため、健康や環境的側面が懸念されている。近年では、こういった背景から、水性の剥がせる塗膜用の塗料が望まれている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0216682号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような塗膜には塗工してから最終的に塗膜を剥がすまで、不用意に剥がれず、剥がそうとしたときに剥がせる適切な密着性を維持する必要がある。
【0005】
本発明者らが従来の水性1液系塗料を自動車外装に適用しようとした場合、以下の課題が生じた。
1つ目:通常利用時に剥がれない密着性
2つ目:剥がしたいタイミングで剥がすことができるはく離性
【0006】
剥がしたいタイミングで剥がすことができるはく離性は、塗膜作成初期の密着性またははく離性が適切であっても、熱(例えば、夏の気温)によって徐々に密着性が増大し、はく離性が持続しなかった。
【0007】
そこで、本発明は、通常利用時に剥がれない密着性と、剥がしたいタイミングで剥がすことができるはく離性が良好なはく離性接着層を提供することを目的とする。また、本発明は、そのようなはく離性接着層を含む積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るはく離性接着層は、
接着層用塗料の塗膜であり、
前記接着層用塗料が、水分散アクリル樹脂および水分散ウレタン樹脂を含む第1剤と、イソシアネートを含む第2剤からなる2液型であり、
前記水分散ウレタン樹脂のガラス転移温度(Tg)が、-80~0℃であり、
前記水分散アクリル樹脂の水酸基価が、40~165mg KOH/gであり、
前記イソシアネートが有するイソシアネート基のモル数の、前記第1剤に含まれる水酸基のモル数に対する比(NCO/OH)が、0.5~2.0である、はく離性接着層である。これによって、通常利用時に剥がれない密着性と、剥がしたいタイミングで剥がすことができるはく離性が良好なはく離性接着層が得られる。
【0009】
本発明に係る積層体は、順に隣接して、
上記はく離性接着層と、
クリヤー層または意匠層と、を含む、積層体である。これによって、通常利用時に剥がれない密着性と、剥がしたいタイミングで剥がすことができるはく離性が良好な積層体が得られる。
【0010】
本発明に係る積層体の一実施形態では、前記水分散アクリル樹脂と前記水分散ウレタン樹脂との合計質量に対する、前記水分散アクリル樹脂の質量の割合が、10~90質量%である。
【0011】
本発明に係る積層体の一実施形態では、酸無水物基を有する重合性不飽和モノマーを含む1液型塗膜用、または、ウレタン樹脂を含む2液型塗膜用である。
【0012】
本発明に係る積層体の一実施形態では、剥離強度が3N以上である。
【0013】
本発明に係る積層体の一実施形態では、80℃/100h後の剥離強度が10N以下である。
【0014】
本発明に係る積層体の一実施形態では、Xe試験750MJ後の剥離強度が10N以下である。
【0015】
本発明に係る積層体の一実施形態では、順に隣接して、
前記はく離性接着層と、
意匠層と、
前記クリヤー層と、を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、通常利用時に剥がれない密着性と、剥がしたいタイミングで剥がすことができるはく離性が良好なはく離性接着層を提供することができる。また、本発明によれば、通常利用時に剥がれない密着性と、剥がしたいタイミングで剥がすことができるはく離性が良好な積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明に係るはく離性接着層の一例を示した模式図である。
図2図2は、本発明に係る積層体の層構成の一例を示した模式図である。
図3図3は、本発明に係る積層体の層構成の別の一例を示した模式図である。
図4図4は、本発明に係る積層体の層構成の別の一例を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。これらの記載は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0019】
本発明において、2以上の実施形態を任意に組み合わせることができる。
【0020】
本発明において、塗料と塗料組成物は相互互換的に用いることができる。
【0021】
数値範囲は、別段の記載がない限り、その範囲の上限値および下限値を含むことを意図している。例えば、-80~0℃は、-80℃以上0℃以下の範囲を意味する。
【0022】
添付の図面は、本発明の理解を容易にすることを優先した模式図であるため、図中の各要素の寸法および縮尺は正確ではない。
【0023】
本発明において、はく離強度、80℃/100h後の剥離強度およびXe試験750MJ後の剥離強度は、実施例に記載の方法により測定する。
【0024】
本発明において、樹脂、溶媒、化合物、材料、部材などは、それぞれ、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
(はく離性接着層)
本発明に係るはく離性接着層は、
接着層用塗料の塗膜であり、
前記接着層用塗料が、水分散アクリル樹脂および水分散ウレタン樹脂を含む第1剤と、イソシアネートを含む第2剤からなる2液型であり、
前記水分散ウレタン樹脂のガラス転移温度(Tg)が、-80~0℃であり、
前記水分散アクリル樹脂の水酸基価が、40~165mg KOH/gであり、
前記イソシアネートが有するイソシアネート基のモル数の、前記第1剤に含まれる水酸基のモル数に対する比(NCO/OH)が、0.5~2.0である、はく離性接着層である。
【0026】
図1は、本発明に係るはく離性接着層の一例を示した模式図である。
【0027】
はく離性接着層は、接着層用塗料の塗膜であり、通常、自動車外装に接して設けられる。そして、本発明の積層体の利用後にはく離性接着層を自動車外装からはく離することで、本発明の積層体が自動車外装から剥がされる。
【0028】
・接着層用塗料
はく離性接着層を形成する接着層用塗料は、第1剤と第2剤とからなる2液型である。
【0029】
・第1剤
第1剤は、水分散アクリル樹脂および水分散ウレタン樹脂を含む。
【0030】
水分散アクリル樹脂は、例えば、重合性不飽和モノマーの混合物を溶液重合することにより得ることができる。重合性不飽和モノマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマー、および水酸基含有エチレン性不飽和モノマーを用いることができる。
【0031】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。
【0032】
カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、エタクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸およびフマル酸などが挙げられる。
【0033】
水酸基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N-メチロールアクリルアミド、アリルアルコール、ε-カプロラクトン変性アクリルモノマーなどが挙げられる。
【0034】
重合によって調製されるアクリル樹脂は、例えば、塩基性化合物で中和して、水溶液の形態で用いてもよい。
【0035】
塩基性化合物としては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンおよびジメチルエタノールアミンのような有機アミンが挙げられる。
【0036】
水分散アクリル樹脂は、その水酸基価が、40~165mg KOH/gである。一実施形態では、水分散アクリル樹脂の水酸基価(mg KOH/g)は、40以上、50以上、60以上、70以上、80以上、90以上、100以上、110以上、120以上、130以上、140以上、150以上または160以上である。別の実施形態では、水分散アクリル樹脂の水酸基価(mg KOH/g)は、165以下、160以下、150以下、140以下、130以下、120以下、110以下、100以下、90以下、80以下、70以下、60以下または50以下である。さらに別の実施形態では、水分散アクリル樹脂の水酸基価(mg KOH/g)は、40~130である。
【0037】
第1剤中の水分散アクリル樹脂の量は、適宜調節すればよい。一実施形態では、水分散アクリル樹脂と水分散ウレタン樹脂との合計質量に対する、水分散アクリル樹脂の質量の割合は、10~90質量%である。別の実施形態では、水分散アクリル樹脂と水分散ウレタン樹脂との合計質量に対する、水分散アクリル樹脂の質量の割合は、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上または80質量%以上である。さらに別の実施形態では、水分散アクリル樹脂と水分散ウレタン樹脂との合計質量に対する、水分散アクリル樹脂の質量の割合は、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下または20質量%以下である。
【0038】
水分散アクリル樹脂として、市販品を用いてもよい。
【0039】
水分散ウレタン樹脂は、ポリオールとポリイソシアネートとの反応物であることが好ましく、ポリオールとポリイソシアネートとの反応物に、さらに鎖伸長剤又は末端停止剤を反応させた反応物であってもよい。
【0040】
ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリチオエーテルポリオール等が挙げられる。
【0041】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0042】
ポリエステルポリオールとしては、ポリカルボン酸とポリエステル原料ポリオールとの反応物;ε-カプロラクトンの開環重合物;これらの共重合体等が挙げられる。前記ポリカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、フタル酸、イソフタル酸等が挙げられ、前記ポリエステル原料ポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。
【0043】
ポリカーボネートジオールとしては、例えば、多価アルコール(例えばジオール)に炭酸ジメチルを反応させることによって、調製することができる。
【0044】
多価アルコールとしては、例えば、ジオールが挙げられる。ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0045】
ポリイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0046】
鎖伸長剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
【0047】
末端停止剤としては、例えば、メタノール、ブタノール、オクタノール、アルキルアルコールアルキレンオキシド付加物などのモノアルコール;ブチルアミン、ジブチルアミン等のモノアミンなどが挙げられる。
【0048】
水分散ウレタン樹脂のTgは、-80~0℃である。一実施形態では、水分散ウレタン樹脂のTgは、-80℃以上、-70℃以上、-60℃以上、-50℃以上、-40℃以上、-30℃以上、-20℃以上または-10℃以上である。別の実施形態では、水分散ウレタン樹脂のTgは、0℃以下、-10℃以下、-20℃以下、-30℃以下、-40℃以下、-50℃以下、-60℃以下または-70℃以下である。
【0049】
水分散ウレタン樹脂として、市販品を用いてもよい。
【0050】
第1剤は、水分散アクリル樹脂および水分散ウレタン樹脂に加えて、その他の樹脂を含んでいてもよい。例えば、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、SBR、NBRが挙げられる。また、その他の成分として、顔料、分散剤、消泡剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤、酸化防止剤、粘性調整剤、表面調整剤、造膜助剤、防錆剤、増粘剤、有機溶剤および硬化触媒を含んでいてもよい。
【0051】
本発明に係る積層体は、例えば、酸無水物基を有する重合性不飽和モノマーを含む1液型塗膜用、または、ウレタン樹脂を含む2液型塗膜用である。
【0052】
酸無水物基を有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水フタル酸、無水オキシジフタル酸、無水ナフタレンジカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などが挙げられる。
【0053】
・第2剤
第2剤は、イソシアネートを含む。イソシアネートとしては、例えば、脂肪族イソシアネート、脂肪族環式イソシアネート、脂環族イソシアネートおよび芳香族イソシアネートならびにこれらのビュレット体およびヌレート体などが挙げられる。
【0054】
脂肪族イソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0055】
脂肪族環式イソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,2-シクロヘキサンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0056】
脂環族イソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネートメチルなどが挙げられる。
【0057】
芳香族イソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6-トリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0058】
イソシアネートが有するイソシアネート基のモル数の、第1剤に含まれる水酸基(例えば、水分散アクリル樹脂が有する水酸基)のモル数に対する比(NCO/OH)は、0.5~2.0である。一実施形態では、当該比(NCO/OH)は、0.5以上、0.6以上、0.8以上、1.0以上、1.2以上、1.4以上、1.6以上または1.8以上である。別の実施形態では、当該比(NCO/OH)は、2.0以下、1.8以下、1.6以下、1.4以下、1.2以下、1.0以下、0.8以下または0.6以下である。
【0059】
はく離性接着層の厚さは、適宜調節すればよいが、例えば、20~100μmである。
【0060】
はくり性接着層用塗料の調製方法
例えば、水分散アクリル樹脂と水分散ウレタン樹脂とを混合して、第1剤を調製する。別途、ポリイソシアネートを含む第2剤を調製する。第2剤には、水酸基を有さない有機溶媒を任意に混合してもよい。得られた第1剤と第2剤とを混合して、はくり性接着層用塗料を調製する。通常、第1剤と第2剤の混合は、はくり性接着層用塗料の塗装の直前に行われる。
【0061】
はく離性接着層の形成
はく離性接着層の形成は、特に限定されず、例えば、はくり性接着層用塗料を、被塗物上に塗装し、塗膜を硬化させてはく離性接着層を形成する。
【0062】
はくり性接着層用塗料の塗布量は特に限定されず、塗膜に求められる性能に応じて適宜設定すればよく、例えば、乾燥塗膜の膜厚が20~100μmになるように塗布する。
【0063】
はくり性接着層用塗料の塗装方法は、特に限定されず、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装などが挙げられる。これらの方法と静電塗装とを組み合わせてもよい。塗装は複数回行ってもよい。
【0064】
はくり性接着層用塗料を塗装した後、塗膜を硬化させる。硬化条件は、塗布量や組成に応じて適宜設定すればよく、例えば、60℃で20分程度である。
【0065】
(積層体)
本発明に係る積層体は、順に隣接して、
上記はく離性接着層と、
クリヤー層または意匠層と、を含む、積層体である。
【0066】
図2は、本発明に係る積層体の層構成の一例を示した模式図である。図2の積層体10は、順に、はく離性接着層1と、クリヤー層2とからなる。
【0067】
図3は、本発明に係る積層体の層構成の別の一例を示した模式図である。図2の積層体10は、順に、はく離性接着層1と、意匠層3とからなる。
【0068】
図4は、本発明に係る積層体の層構成の別の一例を示した模式図である。図2の積層体10は、順に、はく離性接着層1と、意匠層3と、クリヤー層2とからなる。
【0069】
・クリヤー層
クリヤー層は、クリヤー層用塗料組成物の塗膜であり、積層体の車体側に位置する層、例えば、はく離性接着層および任意の意匠層を保護する働きを有する。クリヤー層は、通常、積層体の最外層として設けられる。
【0070】
クリヤー層用塗料組成物は、公知のクリヤー塗料組成物を用いることができる。クリヤー層用塗料組成物は、例えば、国際公開第2020/241342号および特許7052119号などに記載のクリヤー塗料組成物を用いることができる。また、特開2022-180115号などに記載の自動車補修用塗料も用いることができる。
【0071】
クリヤー層用塗料組成物は、水系と溶剤系のいずれでもよい。
【0072】
クリヤー層の厚さは、適宜調節すればよいが、例えば、20~100μmである。
【0073】
・意匠層
意匠層は、意匠層用塗料組成物の塗膜であり、積層体に意匠性を付与する層である。意匠層としては、従来公知の自動車の上塗り塗膜のベース層などを用いることができる。
【0074】
意匠層用塗料組成物としては、例えば、特許7052119号などに記載の意匠層用塗料を用いることができる。また、自動車補修用塗料も用いることができる。
【0075】
意匠層用塗料組成物は、水系と溶剤系のいずれでもよい。
【0076】
意匠層の厚さは、適宜調節すればよいが、例えば、10~100μmである。
【0077】
本発明に係る積層体の一実施形態では、順に隣接して、はく離性接着層と、意匠層と、クリヤー層と、を含む。
【0078】
・その他の層
積層体は、はく離性接着層とクリヤー層または意匠層に加えて、他の層を有していてもよい。
【0079】
本発明に係る積層体の一実施形態では、剥離強度が3N以上である。別の実施形態では、積層体の剥離強度は、3~10である。
【0080】
本発明に係る積層体の一実施形態では、80℃/100h後の剥離強度が10N以下である。別の実施形態では、積層体の80℃/100h後の剥離強度は、3~10Nである。
【0081】
本発明に係る積層体の一実施形態では、Xe試験750MJ後の剥離強度が10N以下である。別の実施形態では、積層体のXe試験750MJ後の剥離強度は、3~10Nである。
【0082】
・積層体の製造方法
積層体は、例えば、被塗物に、接着層用塗料を塗装して、はくり性接着層を形成する工程(I)と、はくり性接着層上に、意匠層用塗料組成物またはクリヤー層用塗料組成物を塗装して、意匠層またはクリヤー層を形成する工程(II)とを備える方法により製造される。
【0083】
また、図4の積層体の場合、例えば、被塗物に、接着層用塗料を塗装して、はくり性接着層を形成する工程(I)と、はくり性接着層上に、意匠層用塗料組成物を塗装して、意匠層を形成する工程(II)と、意匠層上に、クリヤー層用塗料組成物を塗装して、クリヤー層を形成する工程(III)と、を備える方法により製造される。
【0084】
(被塗物)
被塗物は、平板状であってよく、立体形状を有していてもよい。被塗物の材質も、特に限定されない。被塗物の材質としては、例えば、樹脂、鋼板が使用できる。
【0085】
樹脂として、例えば、ポリエチレン樹脂、EVA樹脂、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂など)、塩化ビニル樹脂、スチロール樹脂、ポリエステル樹脂(PET樹脂、PBT樹脂などを含む)、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリルスチレン(AS)樹脂、ポリアミド樹脂、アセタール樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリフェニレンオキサイド(PPO)などが挙げられる。
【0086】
鋼板として、例えば、鉄、鋼、ステンレス、アルミニウム、銅、亜鉛、スズなどの金属およびこれらの合金などが挙げられる。上記鋼板には、必要に応じて、化成処理が施され、さらに電着塗膜が形成されていてもよい。化成処理として、例えば、リン酸亜鉛化成処理、ジルコニウム化成処理、クロム酸化成処理などが挙げられる。また電着塗膜は、例えば、カチオン電着塗料組成物またはアニオン電着塗料組成物を用いた電着塗装によって形成される。
【0087】
被塗物として、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の車体;自動車外装クリヤー塗膜を有する車体などが挙げられる。
【0088】
自動車外装クリヤー塗膜として、例えば、酸無水物基を有する重合性不飽和モノマーを含む1液硬化型塗膜、または、ウレタン樹脂を含む2液硬化型塗膜が挙げられる。
【0089】
工程(I)
工程(I)では、被塗物に、はくり性接着層用塗料を塗装して、はくり性接着層を形成する。はくり性接着層用塗料の調製、塗装およびはくり性接着層を形成は、上述したとおりである。
【0090】
工程(II)
工程(II)では、はくり性接着層上に、意匠層用塗料組成物またはクリヤー層用塗料組成物を塗装して、意匠層またはクリヤー層を形成する。意匠層用塗料組成物の塗装は、複数回行ってもよい。
【0091】
(意匠層用塗料組成物(Y)の調製方法)
意匠層用塗料組成物は、公知の自動車外装用ベース塗料、または自動車補修用ベース塗料を用いることができ、水系と溶剤系のいずれでもよい。また、意匠層用塗料組成物は、硬化タイプであってよく、ラッカータイプであってよい。意匠層用塗料組成物は、さらに顔料を含んでいてもよい。顔料としては、例えば、着色顔料、光輝性顔料などが挙げられる。
【0092】
意匠層用塗料組成物の塗装方法は特に限定されず、接着層用塗料と同様の方法が挙げられる。意匠層用塗料組成物の塗布量は特に限定されず、例えば、意匠層の乾燥膜厚が10~20μmになるような量である。意匠層用塗料組成物の塗装は複数回行ってもよい。意匠層用塗料組成物の塗装後、塗膜を硬化させる。硬化条件は、塗布量や組成に応じて適宜設定すればよく、例えば、60℃で20分程度である。
【0093】
クリヤー層用塗料組成物は、公知の自動車外装用クリヤー塗料、または自動車補修用クリヤー塗料を用いることができ、水系と溶剤系のいずれでもよい。また、クリヤー層用塗料組成物は、シリカなどの無機粒子を含んでいてもよい。
【0094】
クリヤー層用塗料組成物の塗装方法は特に限定されず、はくり性接着層用塗料と同様の方法が挙げられる。クリヤー層用塗料組成物の塗装は複数回行ってもよい。クリヤー層用塗料組成物の塗布量は特に限定されず、塗膜に求められる性能に応じて適宜設定すればよく、例えば、硬化後のクリヤー塗膜の厚さが40~60μmになるような量である。
クリヤー層用塗料組成物の塗装後、塗膜を硬化させる。硬化条件は、適宜設定すればよく、例えば、70℃で、20分である。
【0095】
・積層体の用途
積層体の用途は限定されず、適宜選択すればよい。例えば、自動車外装の色替えまたは保護を目的として自動車外装用積層体として用いることができる。
【実施例0096】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。実施例中、「部」は、質量部を表す。
【0097】
実施例で用いた材料の詳細は以下のとおりである。
・硬化剤
nax E-CUBE WB 水性用ハードナー(日本ペイント社製)
・意匠層塗料
主剤:nax E-CUBE WB 412 サイレントブラック(日本ペイント社製)
補助剤:nax E-CUBE WB 911 S-バインダー(日本ペイント社製)
希釈剤:nax E-CUBE WB R20 標準希釈剤(日本ペイント社製)
・クリヤー層塗料
主剤:nax E-CUBE WB(2:1)NNクリヤー(日本ペイント社製)
硬化剤:nax E-CUBE WB 水性用ハードナー(日本ペイント社製)
【0098】
・被塗物1
1液硬化型クリヤー塗料組成物:MAC O-1860 クリヤー(日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製)
【0099】
(被塗物1の作製)
リン酸亜鉛処理したダル鋼板に、電着塗料組成物(パワーニクス150、日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社製カチオン)を、乾燥塗膜が20μmとなるように電着塗装し、160℃で30分間の加熱硬化後冷却して、鋼板基板を準備した。得られた被塗物に、水性中塗り塗料組成物(AR-630-X 8110、日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製)を乾燥膜厚が25μmになるように、エアスプレーガンにより塗装し、80℃設定のオーブンで3分間プレヒートを行った。続いて、中塗り層を備える被塗物に、水性ベース塗料組成物(AR-3020-1 202、日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製)を、乾燥膜厚が15μmになるように、エアスプレーガンにより塗装し、80℃設定のオーブンで3分間プレヒートを行った。さらに、中塗り層と、ベース層とを備える被塗物に、クリヤー塗料組成物(日本ペイント・オートモーティブコーティングス製、MAC O-1860 クリヤー)を、乾燥膜厚が35μmになるように塗装した。次いで、140℃設定のオーブンで30分加熱して、複層塗膜を備えた被塗物1を得た。
【0100】
・被塗物2
2液硬化型クリヤー塗料組成物:ポリウレエクセル O-2100 クリヤー(日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製)
【0101】
(クリヤー塗料組成物の準備)
主剤として、ポリウレエクセル O-2100 クリヤー(日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製)100部とTMKシンナー(希釈剤、日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製)9.7部との混合物を準備した。硬化剤として、H-2100(硬化剤、日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製)38.3部を準備し、主剤100部と希釈剤9.7部との混合物と、塗装直前に混合し、クリヤー層用塗料組成物を調製した。
【0102】
(被塗物2の作製)
被塗物1と同様にして、電着塗膜を備えた鋼板を作製した。次いで、溶剤系中塗り塗料組成物(OP-30-P DG 8110、日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製)を乾燥膜厚が35μmになるように、エアスプレーガンにより塗装し、140℃設定のオーブンで30分間加熱を行った。続いて、中塗り層を備える被塗物に、水性ベース塗料組成物(AR-3020-1 202、日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製)を、乾燥膜厚が15μmになるように、エアスプレーガンにより塗装し、80℃設定のオーブンで3分間プレヒートを行った。さらに、中塗り層と、ベース層とを備える被塗物に、クリヤー塗料組成物(ポリウレエクセル O-2100 クリヤー、日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製)を、乾燥膜厚が30μmになるように塗装した。次いで、140℃設定のオーブンで30分加熱して、複層塗膜を備えた被塗物2を得た。
【0103】
・被塗物3
2液硬化型クリヤー塗料組成物:R-2550-2(日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製)
【0104】
(クリヤー塗料組成物の準備)
主剤として、R-2550-2(日本ペイント社製)100部とT-5025(希釈剤、日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製)30部との混合物を準備した。硬化剤として、H-2550(硬化剤、日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製)43.4部を準備し、主剤100部と希釈剤30部との混合物と、塗装直前に混合し、クリヤー層用塗料を調製した。
【0105】
(被塗物3の作製)
ポリプロピレン素材に、水性プライマー塗料組成物(WB-1200CD-5、日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製)を乾燥膜厚が8μmになるように、エアスプレーガンにより塗装し、80℃設定のオーブンで3分間プレヒートを行った。続いて、プライマー層を備える被塗物に、水性ベース塗料組成物(AR-3020-1 202、日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製)を、乾燥膜厚が15μmになるように、エアスプレーガンにより塗装し、80℃設定のオーブンで3分間プレヒートを行った。さらに、プライマー層と、ベース層とを備える被塗物に、クリヤー塗料組成物(R-2550-2、日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製)を、乾燥膜厚が30μmになるように塗装した。次いで、120℃設定のオーブンで35分加熱して、複層塗膜を備えた被塗物3を得た。
【0106】
・被塗物4
2液硬化型クリヤー塗料組成物:R-2500-1(日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製)
【0107】
(クリヤー塗料組成物の準備)
R-2550-1(主剤、日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製)100部とT-505HCL(希釈剤、日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製)30部との混合物を準備した。硬化剤として、H-2500(硬化剤、日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製)44部を準備し、主剤100部と希釈剤30部との混合物と、塗装直前に混合し、クリヤー層用塗料を調製した。
【0108】
ポリプロピレン素材に、水性プライマー塗料組成物(WB-1200CD-5、日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製)を乾燥膜厚が8μmになるように、エアスプレーガンにより塗装し、80℃設定のオーブンで3分間プレヒートを行った。続いて、プライマー層を備える被塗物に、水性ベース塗料組成物(AR-3020-1 202、日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製)を、乾燥膜厚が15μmになるように、エアスプレーガンにより塗装し、80℃設定のオーブンで3分間プレヒートを行った。さらに、プライマー層と、ベース層とを備える被塗物に、クリヤー塗料組成物(R-2500-1、日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製)を、乾燥膜厚が30μmになるように塗装した。次いで、120℃設定のオーブンで35分加熱して、複層塗膜を備えた被塗物4を得た。
【0109】
(実施例1~4)
以下のようにして、はくり性接着層用塗料、意匠層用塗料組成物1およびクリヤー層用塗料組成物1を調製し、積層体を作製した。
【0110】
はくり性接着層用塗料の調製
攪拌機を有する容器に、以下の材料を順に仕込み、接着層用塗料の第1剤を得た。
ウレタン樹脂 67部(固形分)
アクリル樹脂 33部(固形分)
ノパール3303(ウレタン会合型増粘剤、サンノプコ社製) 2.0部
BYK-345(表面調整剤、BYK社製) 0.6部
イオン交換水 57.8部
【0111】
第2剤として、nax E-CUBE WB 水性用ハードナー(日本ペイント社製)を用いた。得られた第1剤と第2剤とを、塗装の直前に混合して、接着層用塗料を調製した。
【0112】
意匠層用塗料組成物
nax E-CUBE WB 412 サイレントブラック(主剤、日本ペイント社製)100部、nax E-CUBE WB 911 S-バインダー(補助剤、日本ペイント社製)50部およびnax E-CUBE WB R20 標準希釈剤(希釈剤、日本ペイント社製) 45部を混合して、ラッカータイプの意匠層用塗料組成物1を調製した。
【0113】
クリヤー層用塗料組成物
主剤として、nax E-CUBE WB(2:1)NNクリヤー(日本ペイント社製)100部と、純水30部との混合物を準備した。硬化剤として、nax E-CUBE WB 水性用ハードナー(硬化剤、日本ペイント社製)50部を準備し、主剤100部と純粋30部との混合物と、塗装直前に混合し、クリヤー層用塗料組成物1を調製した。
【0114】
(積層体の作製)
はくり性接着層の作製
被塗物1にエアスプレーガンで接着層用塗料を塗装した。続いて、この被塗物を60℃に設定されたオーブンで20分加熱して、はくり性接着層を作製した。
【0115】
意匠層の作製
はくり性接着層を備える被塗物に、エアスプレーガンにより意匠層用塗料組成物1を塗装し、指で触れて塗料が付着しなくなるまでエアブロー乾燥を行った。この塗装および乾燥を、さらに2回繰り返して、意匠層を形成した。
【0116】
クリヤー層の作製
はくり性接着層と、意匠層とを備える被塗物に、エアスプレーガンによりクリヤー層用塗料組成物1を塗装した。その後、30分静置し、次いで、被塗物を70℃設定のオーブンで20分間加熱して、クリヤー層を形成した。
【0117】
(実施例5~7)
被塗物を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、積層体を作製した。
【0118】
(実施例8、9、比較例1~3)
接着層用塗料組成物と、はくり性接着層の膜厚を表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、積層体を作製した。
【0119】
(実施例10)
接着層用塗料組成物と、はくり性接着層の膜厚と、被塗物を表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、積層体を作製した。
【0120】
(実施例11~13)
接着層用塗料組成物とはくり性接着層の膜厚を表3に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、積層体を作製した。
【0121】
(実施例14~18、比較例4)
接着層用塗料組成物とはくり性接着層の膜厚を表4に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、積層体を作製した。
【0122】
(実施例19~22、比較例5、6)
接着層用塗料組成物とはくり性接着層の膜厚を表5に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、積層体を作製した。
【0123】
(実施例23)
はくり性接着層用塗料の指触乾燥まで常温で乾燥したことと、はくり性接着層の膜厚を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、積層体を作製した。
【0124】
(実施例24)
意匠層用塗料組成物およびクリヤー層用塗料組成物を以下の意匠層用塗料組成物2およびクリヤー層用塗料組成物2に変更したことと、はくり性接着層の膜厚を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、積層体を作製した。
意匠層用塗料組成物2の調製
nax レアル 611 チンチングブラックNP(主剤、日本ペイント社製)100部と、nax スタビR NEO #20(希釈剤、日本ペイント社製)33部を混合し、意匠層用塗料組成物2を調製した。
クリヤー層用塗料組成物2の調製
nax マルチエコ(3:1)20LXクリヤー(主剤、日本ペイント社製)100部と、nax マルチ #20 スタンダード ウレタンシンナー NEO (希釈剤、日本ペイント社製)20部の混合物と、nax ウルトラ #20 ハードナー(硬化剤、日本ペイント社製)33部とを、塗装直前に混合し、クリヤー層用塗料組成物2を調製した。
【0125】
(実施例25)
意匠層用塗料組成物を使用せず、クリヤー層用塗料組成物を、以下のクリヤー層用塗料組成物3に変更したこと、はくり性接着層の膜厚を変更した以外は、実施例1と同様にして、積層体を作製した。
クリヤー層用塗料組成物3の調製
nax マルチエコ(3:1)マットクリヤー(主剤、日本ペイント社製)100部と、nax マルチ #20 スタンダード ウレタンシンナー NEO(日本ペイント社製、希釈剤)50部との混合物と、nax ウルトラ #20 ハードナー(日本ペイント社製、硬化剤)33部とを、塗装直前に混合し、クリヤー層用塗料組成物3を調製した。
【0126】
(比較例7~18)
接着層用塗料を次のように調製したこと以外は、実施例1と同様にして、積層体を作製した。
比較接着層用塗料の調製
攪拌機を有する容器に、以下の材料を順に仕込み、比較接着層用塗料を調製した。
基体樹脂分散液(表7) 100部
BYK-345(表面調整剤、BYK社製) 0.2部
【0127】
(はく離強度測定)
20℃の恒温槽を備えた引張試験機(島津製作所社製オートグラフAGX-V)にて、剥離角度180度、剥離速度300mm/分、試料幅10mmの条件ではく離性接着層と被塗物のはく離強度測定を実施した。はく離強度の測定は試料数3とし、その平均値を求め、下記評価基準で密着性を評価した。
密着性合格:剥離強度が3N/cm~10N/cm
密着性不合格:剥離強度が3N/cm未満または10N/cmより大きい
【0128】
(耐熱試験)
作製した積層体を80℃のオーブンで100時間加熱した。取り出し後、半日以上、室温で静置した後に、はく離強度測定を実施した。
【0129】
(Xe試験)
JIS K5600-7-7のキセノンランプ法に従い、スーパーキセノンウェザーメーターSX-75(スガ試験機株式会社製)に、積層体を取り付け、照度100W/mにて2100時間の促進暴露を実施した。
【0130】
【表1】
【0131】
【表2】
【0132】
【表3】
【0133】
【表4】
【0134】
【表5】
【0135】
【表6】
【0136】
【表7】
【0137】
本発明によれば、通常利用時に剥がれない密着性と、剥がしたいタイミングで剥がすことができるはく離性が良好なはく離性接着層を提供することができた。また、本発明によれば、通常利用時に剥がれない密着性と、剥がしたいタイミングで剥がすことができるはく離性が良好な積層体を提供することができた。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明によれば、通常利用時に剥がれない密着性と、剥がしたいタイミングで剥がすことができるはく離性が良好なはく離性接着層を提供することができる。また、本発明によれば、通常利用時に剥がれない密着性と、剥がしたいタイミングで剥がすことができるはく離性が良好な積層体を提供することができる。
【符号の説明】
【0139】
1:はく離性接着層
2:クリヤー層
3:意匠層
10:積層体
図1
図2
図3
図4