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特開2025-17812水性1コート塗料組成物、1コート塗膜、及び塗膜形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017812
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】水性1コート塗料組成物、1コート塗膜、及び塗膜形成方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/00 20060101AFI20250130BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20250130BHJP
   C09D 179/02 20060101ALI20250130BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20250130BHJP
   C09D 5/44 20060101ALI20250130BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20250130BHJP
   B05D 3/02 20060101ALI20250130BHJP
   B05D 3/10 20060101ALI20250130BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20250130BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
C09D133/00
C09D5/02
C09D179/02
C09D7/61
C09D5/44 A
B05D7/14 P
B05D3/02 Z
B05D3/10 P
B05D7/24 302P
B05D7/24 303A
B05D5/06 Z
B05D5/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121079
(22)【出願日】2023-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】水野 重行
(72)【発明者】
【氏名】酒井 直也
(72)【発明者】
【氏名】本間 恭平
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075BB26Z
4D075BB28Z
4D075BB60Z
4D075BB75X
4D075BB89X
4D075CA13
4D075CA18
4D075CA38
4D075CA47
4D075CA48
4D075CB01
4D075CB04
4D075DA06
4D075DB01
4D075DB02
4D075DC11
4D075DC12
4D075EA06
4D075EB22
4D075EB32
4D075EB45
4D075EB51
4D075EB52
4D075EB53
4D075EB54
4D075EB55
4D075EB56
4D075EC02
4D075EC11
4D075EC30
4D075EC33
4D075EC47
4D075EC51
4J038CG141
4J038CH031
4J038CH121
4J038CH151
4J038CJ031
4J038DJ012
4J038GA03
4J038HA166
4J038KA03
4J038KA08
4J038KA09
4J038MA10
4J038MA13
4J038MA14
4J038PA04
4J038PB07
4J038PC02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】耐水性試験後の密着性に優れた、高明度の塗膜を形成できる水性1コート塗料組成物、及び、当該水性1コート塗料組成物から得られる硬化1コート塗膜を提供すること。
【解決手段】水酸基含有アクリル樹脂(A)、硬化剤(B)、及び着色顔料(C)を含有する水性1コート塗料組成物であって、水酸基含有アクリル樹脂(A)が、水酸基価60~100mgKOH/g、酸価10~30mgKOH/g、ハンセン空間上の溶解度パラメーター(HSP)9.8~10.8、質量平均分子量10,000~100,000、及びガラス転移温度0~40℃であるアクリル樹脂であり、明度L*45値が40の下地塗膜上に、乾燥膜厚30μmとなるように、前記水性1コート塗料組成物から形成した硬化1コート塗膜の60°光沢値が85以上、明度L*45値が60~95であって、赤外線反射率(IRSR)が60%以上である、水性1コート塗料組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基含有アクリル樹脂(A)、硬化剤(B)、及び着色顔料(C)を含有する水性1コート塗料組成物であって、
水酸基含有アクリル樹脂(A)が、水酸基価60~100mgKOH/g、酸価10~30mgKOH/g、ハンセン空間上の溶解度パラメーター(HSP)9.8~10.8、質量平均分子量10,000~100,000、及びガラス転移温度0~40℃であるアクリル樹脂であり、
明度L*45値が40の下地塗膜上に、乾燥膜厚30μmとなるように、前記水性1コート塗料組成物から形成した硬化1コート塗膜の60°光沢値が85以上、明度L*45値が60~95であって、赤外線反射率(IRSR)が60%以上である、
水性1コート塗料組成物。
【請求項2】
前記水酸基含有アクリル樹脂(A)の含有量が、合計樹脂固形分100質量部を基準として、50~90質量部である請求項1記載の水性1コート塗料組成物。
【請求項3】
前記硬化剤(B)がメラミン樹脂である請求項1又は請求項2記載の水性1コート塗料組成物。
【請求項4】
前記着色顔料(C)が、白色顔料であって、さらに、赤色顔料、橙色顔料、黄色顔料、緑色顔料、青色顔料、紫色顔料、及び黒色顔料からなる群から選択した着色顔料と組み合わせることのできる請求項1又は請求項2記載の水性1コート塗料組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の水性1コート塗料組成物から得られる硬化1コート塗膜。
【請求項6】
金属製被塗物にカチオン電着塗料組成物を塗装し、焼き付けて硬化カチオン電着塗膜を形成した後、その上に直接請求項1又は請求項2記載の水性1コート塗料組成物を塗装し、焼き付けて硬化1コート塗膜を形成する塗膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性1コート塗料組成物、1コート塗膜、及び塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車外板部にカチオン電着塗料組成物等の下塗り塗料及び中塗り塗料を塗装し、次いでその塗膜上にソリッド系等の上塗り塗料を塗装して仕上げる塗装方法や、カチオン電着塗料組成物等の下塗り塗料の塗膜上に直接上塗り塗料を塗装して仕上げる塗装方法は既に公知である。これらの方式は、上塗り塗膜を1コートで形成するため、工程が少なく、生産性が高く、さらにはエネルギーも削減できるという利点を有する。
【0003】
例えば、特許文献1では、(A)特定の水酸基価、酸価を有するポリエステル樹脂、(B)水性メラミン樹脂、及び(C)白色系着色顔料を含有することを特徴とする水性上塗り1コート用白色系塗料により、リコート付着性に優れた塗膜を形成できることが開示されている。
【0004】
また、例えば、特許文献2では、(A)特定の酸価、水酸基価、ベンゼン環濃度を有するポリエステル樹脂、(B)硬化剤、(C)着色顔料、及び(D)特定の重合性不飽和モノマーを共重合して得られる顔料分散用アクリル樹脂を含有することを特徴とする水性上塗り1コート塗料組成物により、リコート付着性、耐水性、耐候性、耐チッピング性に優れた塗膜を形成できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-206439号公報
【特許文献2】特開2003-292884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、明度の高い塗膜が必要とされる場合、上塗り塗膜としては、下地塗膜の色調を隠蔽できる特性を有するものであることを要する。殊に、上記特許文献1及び特許文献2に記載されるような上塗り1コート塗料組成物を用いる場合には、塗膜の明度を高めつつ下地塗膜の色調を隠蔽するために、塗料組成物中の顔料、とりわけ白色系顔料の含有量を増加させることが必要となる。
ところが、上記特許文献1及び特許文献2のいずれに記載の塗料組成物も、顔料の含有量が増加すると、得られた塗膜の耐水性試験後の密着性が低下してしまう場合があった。
【0007】
そこで、本発明は、耐水性試験後の密着性に優れた、高明度の塗膜を形成できる水性1コート塗料組成物、及び、当該水性1コート塗料組成物から得られる1コート塗膜を提供することを目的とした。さらに、本発明は、当該水性1コート塗料組成物を用いた塗膜形成方法を提供することをも目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、特定の水酸基価、酸価、ハンセン空間上の溶解度パラメーター(HSP)、質量平均分子量及びガラス転移温度を有する水酸基含有アクリル樹脂(A)、硬化剤(B)、及び着色顔料(C)を含有する水性1コート塗料組成物であって、特定の明度L*45値を有する下地塗膜上に、特定の乾燥膜厚となるように形成した1コート塗膜が特定の60°光沢値、明度L*45値、及び赤外線反射率(IRSR)を示す水性1コート塗料組成物により、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明の上記課題は、水酸基含有アクリル樹脂(A)、硬化剤(B)、及び着色顔料(C)を含有する水性1コート塗料組成物であって、水酸基含有アクリル樹脂(A)が、水酸基価60~100mgKOH/g、酸価10~30mgKOH/g、ハンセン空間上の溶解度パラメーター(HSP)9.8~10.8、質量平均分子量10,000~100,000、及びガラス転移温度0~40℃であるアクリル樹脂であり、明度L*45値が40の下地塗膜上に、乾燥膜厚30μmとなるように形成した硬化1コート塗膜の60°光沢値が85以上、明度L*45値が60~95であって、赤外線反射率(IRSR)が60%以上である水性1コート塗料組成物により解決される。
【0010】
さらに、本発明の水性1コート塗料組成物は、水酸基含有アクリル樹脂(A)の含有量が、合計樹脂固形分100質量部を基準として、50~90質量部である水性1コート塗料組成物であることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の水性1コート塗料組成物は、硬化剤(B)がメラミン樹脂である水性1コート塗料組成物であることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明の水性1コート塗料組成物は、着色顔料(C)が、白色顔料であって、さらに、赤色顔料、橙色顔料、黄色顔料、緑色顔料、青色顔料、紫色顔料、及び黒色顔料からなる群から選択した着色顔料と組み合わせることのできる水性1コート塗料組成物であることが好ましい。
【0013】
また、本発明の課題は、水酸基価60~100mgKOH/g、酸価10~30mgKOH/g、ハンセン空間上の溶解度パラメーター(HSP)9.8~10.8、質量平均分子量10,000~100,000、及びガラス転移温度0~40℃である水酸基含有アクリル樹脂(A)、硬化剤(B)、及び着色顔料(C)を含有する水性1コート塗料組成物より得られる硬化1コート塗膜であって、60°光沢値が85以上、明度L*45値が60~95、赤外線反射率(IRSR)が60%以上である硬化1コート塗膜によっても解決される。
【0014】
さらに、本発明の課題は、金属製被塗物にカチオン電着塗料組成物を塗装し、焼き付けて硬化カチオン電着塗膜を形成した後、その上に直接上記水性1コート塗料組成物を塗装し、焼き付けて硬化1コート塗膜を形成する塗膜形成方法によっても解決される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の水性1コート塗料組成物により、耐水性試験後の密着性に優れた、高明度の塗膜を形成できる。さらに、本発明の水性1コート塗料組成物により得られた塗膜は優れた遮熱特性も有する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の水性1コート塗料組成物は、水酸基含有アクリル樹脂(A)、硬化剤(B)、及び着色顔料(C)を含有する。本発明において「水性」とは、含有する樹脂、硬化剤等が、水もしくは水と有機溶剤との混合液中に、安定して溶解もしくは分散可能な状態であることを意味する。
【0017】
本発明に使用される水酸基含有アクリル樹脂(A)は、水溶性又は水分散性アクリル樹脂であり、ラジカル重合性単量体を原料成分とするラジカル重合反応を利用した、公知の方法により得ることができる。
【0018】
ラジカル重合性単量体として、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、アリルアルコール、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、スチレン、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4-tert-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。これらのラジカル重合性単量体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
本発明に使用される水酸基含有アクリル樹脂(A)の水酸基価は60~100mgKOH/gであることが好ましく、65~95mgKOH/gであることがより好ましく、70~90mgKOH/gであることが特に好ましい。水酸基含有アクリル樹脂(A)の水酸基価を60~100mgKOH/gとすることにより、十分な架橋密度を有する塗膜を得ることができ、耐水性試験後においても優れた密着性を示す。
【0020】
本発明においては、水酸基含有アクリル樹脂(A)の試料1g中の水酸基と当量の水酸化カリウムのミリグラム数である水酸基価を、アクリル樹脂のモノマー配合より計算で求めた。
【0021】
また、本発明に使用される水酸基含有アクリル樹脂(A)の酸価は10~30mgKOH/gであることが好ましく、13~27mgKOH/gであることがより好ましく、15~25mgKOH/gであることが特に好ましい。水酸基含有アクリル樹脂(A)の酸価を10~30mgKOH/gとすることにより、水酸基含有アクリル樹脂(A)が水中で問題のない安定性を示す。また、得られた塗膜は耐水性試験後においても優れた密着性を示す。
【0022】
本発明においては、水酸基含有アクリル樹脂(A)の試料1g中の遊離酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数である酸価を、アクリル樹脂のモノマー配合より計算で求めた。
【0023】
本発明に使用される水酸基含有アクリル樹脂(A)のハンセン空間上の溶解度パラメーター(HSP)は9.8~10.8であることが好ましく、9.9~10.7mgKOH/gであることがより好ましく、10.0~10.6mgKOH/gであることが特に好ましい。水酸基含有アクリル樹脂(A)のハンセン空間上の溶解度パラメーター(HSP)を9.8~10.8とすることにより、優れた顔料分散性を得ることができ、高い光沢値を有する塗膜を得ることができる。
【0024】
ハンセン空間上の溶解度パラメーター(HSP)は、C.M.Hansenによって開発された、物質の溶解性を示すためのパラメーターである(C.M.Hansen著、Hansen Solubility Parameters: A User‘s Handbook、1999年)。本発明においては、ハンセン空間上の溶解度パラメーター(HSP)を、D.W.van KrevelenとP.J.Hoftyzerが提案したグループ寄与法を用いて求めた(D.W.van Krevelen、P.J.Hoftyzer共著、Properties of Polymers 2nd Edition、1976年)。
【0025】
本発明に使用される水酸基含有アクリル樹脂(A)の質量平均分子量は10,000~100,000であることが好ましく、15,000~80,000であることがより好ましく、20,000~60,000であることが特に好ましい。水酸基含有アクリル樹脂(A)の質量平均分子量を10,000~100,000とすることにより、塗料組成物は問題のない塗装作業性を示す。また、得られた塗膜は耐水性試験後においても優れた密着性を示す。
【0026】
本発明において質量平均分子量は、溶離液としてテトラヒドロフラン(THF)を用いたゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(GPC)により、温度40℃、流速1m/分で測定したデータを、ポリスチレンの質量平均分子量を基準にして換算したときの値として求めた。ここで、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(GPC)のカラムは、TSKgel G2000HXL、G3000HXL、G4000HXL、G5000HXL(商品名、東ソー株式会社製)を組み合わせて用いた。
【0027】
また、本発明に使用される水酸基含有アクリル樹脂(A)のガラス転移温度は0~40℃であることが好ましく、5~35℃であることがより好ましく、10~30℃であることが特に好ましい。水酸基含有アクリル樹脂(A)のガラス転移温度を0~40℃とすることにより、塗料組成物は問題のない塗装作業性を示す。また、得られた塗膜は耐水性試験後においても優れた密着性を示す。
【0028】
本発明においては、ガラス転移温度を、アクリル樹脂のモノマー配合より下記に示した式から計算で求めた。
1 / Tg = Σ (W i/ Tg i )
Tg : 共重合体のガラス転移温度(絶対温度)
W i : モノマー i 成分の質量分率
Tg i : モノマー i 成分のホモポリマーのガラス転移温度(絶対温度)
【0029】
本発明の水性1コート塗料組成物において、水酸基含有アクリル樹脂(A)の含有量は、組成物の合計樹脂固形分100質量部を基準として、50~90質量部であることが好ましく、55~85質量部であることがより好ましく、60~80質量部であることが特に好ましい。水酸基含有アクリル樹脂(A)の含有量を50~90質量部とすることにより、十分な架橋密度を有する塗膜を得ることができ、耐水性試験後においても優れた密着性を示す。
【0030】
本発明に使用される水酸基含有アクリル樹脂(A)は、1種単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
また、本発明に使用される硬化剤(B)としては、例えば、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、ポリカルボジイミド化合物等が挙げられる。この中でも、アミノ樹脂が特に好ましい。これらの硬化剤(B)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
アミノ樹脂は、アミノ基を含有する化合物にホルムアルデヒドを縮合させた樹脂の総称である。アミノ樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、グアナミン樹脂等が挙げられ、その中でも、メラミン樹脂が特に好ましい。
【0033】
メラミン樹脂としては、例えば、メラミンとホルムアルデヒドとを反応させて得られる部分又は完全メチロール化メラミン樹脂、メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をアルコール成分で部分的に又は完全にエーテル化して得られる部分又は完全アルキルエーテル型メラミン樹脂、イミノ基含有型メラミン樹脂、及びこれらのメラミン樹脂を2種以上混合した混合型メラミン樹脂等が挙げられる。さらに、アルキルエーテル型メラミン樹脂としては、例えば、メチル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、メチル/ブチル混合アルキルエーテル型メラミン樹脂等が挙げられる。
【0034】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等の芳香族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添XDI、水添TDI、水添MDI等の脂環族ジイソシアネート、及びこれらのウレトジオン体、アロファネート体、アダクト体、ビウレット体、イソシアヌレート体、イミノオキサジアジンジオン体等のジイソシアネート2量体、3量体、またはそれ以上のジイソシアネートからなる化合物を挙げることができる。さらに、これらのイソシアネート基の一部をアミノ基含有のシランカップリング剤等で変性したものであってもよい。
【0035】
ブロックポリイソシアネート化合物としては、上記ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基を、例えば、ブタノール等のアルコール類、メチルエチルケトオキシム等のオキシム類、ε-カプロラクタム類等のラクタム類、マロン酸ジエステル、アセト酢酸エステル等の活性メチレン類、3,5-ジメチルピラゾール等のピラゾール類、イミダゾール、2-エチルイミダゾール等のイミダゾール類、m-クレゾール等のフェノール類等によりブロックしたものを挙げることができる。
【0036】
ポリカルボジイミド化合物としては、親水性カルボジイミド化合物が好ましい。親水性カルボジイミド化合物として、例えば、1分子中にイソシアネート基を少なくとも2個含有するポリカルボジイミド化合物と、分子末端に水酸基を有するポリオールとを、NCO/OHのモル比が1を超えるような比率で反応させ、得られた反応生成物に、活性水素及び親水性部分を有する親水化剤を反応させたもの等が挙げられる。
本発明の水性1コート塗料組成物において、硬化剤(B)の含有量は、組成物の合計樹脂固形分100質量部を基準として、10~50質量部であることが好ましく、15~45質量部であることがより好ましく、20~40質量部であることが特に好ましい。硬化剤(B)の含有量を10~50質量部とすることにより、十分な架橋密度を有する塗膜を得ることができ、耐水性試験後においても優れた密着性を示す。
【0037】
本発明に使用される着色顔料(C)は、白色顔料、赤色顔料、橙色顔料、黄色顔料、緑色顔料、青色顔料、紫色顔料、及び黒色顔料からなる群から選択される少なくとも一つの着色顔料であることが好ましい。
【0038】
これらの着色顔料(C)は、特に好ましくは白色顔料であり、白色顔料を1種単独で用いてもよいし、又は白色顔料とさらに、赤色顔料、橙色顔料、黄色顔料、緑色顔料、青色顔料、紫色顔料、及び黒色顔料からなる群から選択した着色顔料を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
本発明に使用される着色顔料(C)の白色顔料としては、例えば、酸化チタン等が挙げられる。
【0040】
本発明に使用される着色顔料(C)の赤色顔料としては、例えば、アゾ系顔料、アンサンスロン系顔料、アンスラキノン系顔料、ペリレン系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、酸化鉄系顔料等が挙げられる。
【0041】
本発明に使用される着色顔料(C)の橙色顔料としては、例えば、アゾ系顔料、アンスラキノン系顔料、ペリノン系顔料、キナクリドン系顔料、複合酸化物系顔料等が挙げられる。
【0042】
本発明に使用される着色顔料(C)の黄色顔料としては、例えば、イソインドリン系顔料、アゾメチン系顔料、アントロン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、キノキサリンジオン系顔料、イソインドリノン系顔料、酸化鉄系顔料、複合酸化物系顔料等が挙げられる。
【0043】
本発明に使用される着色顔料(C)の緑色顔料としては、例えば、フタロシアニン系顔料、アゾメチン系顔料、複合酸化物系顔料等が挙げられる。
【0044】
本発明に使用される着色顔料(C)の青色顔料としては、例えば、フタロシアニン系顔料、スレン系顔料、インジゴ系顔料、複合酸化物系顔料等が挙げられる。
【0045】
本発明に使用される着色顔料(C)の紫色顔料としては、例えば、ジオキサジン系顔料、ペリレン系顔料、キナクリドン系顔料、複合酸化物系顔料等が挙げられる。
【0046】
本発明に使用される着色顔料(C)の黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック、アゾ系顔料、ペリレン系顔料、複合酸化物系顔料等が挙げられる。なお、カーボンブラックの使用は控え、アゾ系、ペリレン系、複合酸化物系等の黒色顔料を使用すると、得られる複層塗膜が優れた遮熱効果を発揮するため、さらに好ましい。
【0047】
本発明の水性1コート塗料組成物に含まれる着色顔料(C)の合計含有量は特に限定されないが、合計樹脂固形分100質量部を基準として、10~200質量部であることが好ましく、35~160質量部であることがより好ましく、60~120質量部であることが特に好ましい。
【0048】
本発明の水性1コート塗料組成物は、さらに光輝性顔料を含んでもよい。光輝性顔料としては、例えば、未着色又は着色アルミニウム顔料、蒸着金属フレーク顔料、透明又は半透明な基材を金属酸化物で被覆した光干渉性顔料等を挙げることができる。これらの光輝性顔料は、1種単独で用いてもよいし、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
本発明の水性1コート塗料組成物に含まれる光輝性顔料の合計含有量は特に限定されないが、合計樹脂固形分100質量部を基準として、0~2.0質量部であることが好ましく、0~1.0質量部であることがより好ましく、0~0.5質量部であることが特に好ましい。
【0050】
本発明の水性1コート塗料組成物は、必要に応じて、その他の樹脂を添加して、塗膜性能の調整を行ってもよい。その他の樹脂として、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、アクリルウレタン樹脂、ポリウレタンポリウレア樹脂、ポリオレフィン樹脂(塩素化及び/又は変性されたものも含む)、エポキシ樹脂等が挙げられる。さらに、その他の樹脂は、一部が架橋された粒子であってもよいし、粒子が内側(コア部)と外側(シェル部)からなるコア/シェル型粒子であってもよい。粒子状の基体樹脂としては、例えば、ポリウレタン-ポリウレア粒子、ウレタンコア/アクリルシェル型粒子、アクリルコア/ウレタンシェル型粒子等が挙げられる。なお、樹脂粒子の一部が架橋されている場合は、その部分が有機溶剤に不溶な部分(ゲル部)となるため、樹脂粒子固形分中におけるゲル部の割合を示す値であるゲル分率を測定することができる。また、その他の樹脂は、官能基として、水酸基及び/又はカルボキシル基を有することが好ましい。その他の樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
本発明の水性1コート塗料組成物は、さらに必要に応じて、水及び/又は有機溶剤等の溶媒、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤、沈降防止剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の各種塗料用添加剤、体質顔料等を適宜配合することができる。有機溶剤の例としては、例えばトルエン、キシレン、芳香族ナフサ等の芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸2-ブトキシエチル、酢酸ペンチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル、イソプロパノール、ブタノール、2-ブトキシエタノール、2-エチルヘキサノール等のアルコール、エーテル、塩素化炭化水素等を含む脂肪族炭化水素、またはこれらの混合物を挙げることができる。有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
本発明の水性1コート塗料組成物の塗装時の不揮発成分含有率は特に限定されないが、30~70質量%が好ましく、40~60質量%がより好ましく、45~55質量%が特に好ましい。塗装時の不揮発成分含有率を30~70質量%することにより、塗料組成物は問題のない塗装作業性を示す。
【0053】
本発明の水性1コート塗料組成物を被塗物に塗装し、その後、焼き付け(加熱)を行うことにより、硬化1コート塗膜を得ることができる。
【0054】
本発明の水性1コート塗料組成物を適用することができる被塗物には特に制限はなく、例えば、鉄、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム等の金属からなる部材、これら金属の合金からなる部材、これらの金属によるメッキ又は蒸着が施された部材、ガラス、プラスチック、各種素材の発泡体等からなる部材等を挙げることができ、その中でも、自動車車体を構成する金属及びプラスチック製被塗物が好ましい。これらの部材には、必要に応じて適宜、脱脂処理、表面処理等の処理を施すことができる。
【0055】
また、本発明の水性1コート塗料組成物を適用することができる被塗物には、上記部材に下塗り塗膜を形成したものも含まれる。下塗り塗膜は、部材表面を隠蔽したり、部材に防食性、防錆性、密着性等を付与したりするために部材表面に適用されるものであり、下塗り塗料を塗装し、硬化又は乾燥させることによって形成することができる。この下塗り塗料は、特に限定されるものではなく、それ自体既知のもの、例えば、電着塗料、溶剤型プライマー、水系プライマー等を用いることができる。その中でも、金属製被塗物にカチオン電着塗料組成物を塗装し、焼き付けて硬化カチオン電着塗膜を形成したものが好ましく、さらにその硬化カチオン電着塗膜の明度L*45値が40以上であることが特に好ましい。
【0056】
本発明の水性1コート塗料組成物の塗装は、静電塗装、エアスプレー、エアレススプレー等の方法により行うことができる。
【0057】
硬化1コート塗膜の乾燥膜厚は、特に限定されないが、10~50μmであることが好ましく、20~40μmであることがより好ましく、25~35μmであることが特に好ましい。
【0058】
本発明では、焼き付け(加熱)は公知の手段により行うことができ、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉を使用できる。焼き付け温度は特に制限されないが、100~160℃であることが好ましく、120~155℃であることがより好ましく、130~150℃であることが特に好ましい。焼き付け温度を100~160℃とすることにより、硬化反応を十分に進めることができる。また、加熱時間も特に制限されないが、10~50分間であることが好ましく、15~45分間であることがより好ましく、20~40分間であることが特に好ましい。
【0059】
本発明の水性1コート塗料組成物から得られる硬化1コート塗膜の60°光沢値は85以上であることが好ましく、87以上であることがより好ましく、90以上であることが特に好ましい。なお、本発明における60°光沢値は、マイクロトリグロス光沢計(商品名、BYK-Gardner社製)を用いて測定された数値である。
【0060】
本発明の水性1コート塗料組成物は、明度L*45値が40の下地塗膜上に、乾燥膜厚30μmとなるように形成した硬化1コート塗膜の明度L*45値が60~95であることが好ましく、65~92であることがより好ましく、70~90であることが特に好ましい。硬化1コート塗膜の明度L*45値を60~95とすることにより、硬化1コート塗膜は優れた遮熱効果を発揮する。ここで、明度L*45値とは、塗膜層面の垂線に対して45度の角度で照射した入射光を正反射角に対して入射光方向に45度の角度をなして受光した反射光の分光反射率に基づくCIE LAB表色系における明度である。なお、CIE LAB表色系とは、1976年に国際照明委員会(CIE)で規定され、JIS Z 8781-4:2013にも採用されている表色系である。本発明における明度L*45値は、マルチアングル測色器BYKmac i(商品名、BYK-Gardner社製)を用いて測定された数値である。
【0061】
また、上記水性1コート塗料組成物から得られる硬化1コート塗膜の赤外線反射率(IRSR)は、60%以上であることが好ましく、63%以上であることがより好ましく、65%以上であることが特に好ましい。硬化1コート塗膜の赤外線反射率(IRSR)を60%以上とすることにより、硬化1コート塗膜は優れた遮熱効果を発揮する。なお、本発明における赤外線反射率(IRSR)は、紫外・可視・近赤外分光光度計UV-3600(商品名、株式会社島津製作所製)を用いて測定された数値である。
【0062】
本発明の水性1コート塗料組成物及びそれを用いる塗膜形成方法は、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体、部材および部品について適用可能であり、特に金属製の自動車車体への使用に有効である。
【実施例0063】
以下、本発明について実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、実施例中、「部」は特に断りのない限り「質量部」を意味し、配合量、含有量に関する「%」は、「質量%」を意味する。
【0064】
<製造例1-1: アクリル樹脂水分散液AC-1の製造>
2系統の滴下装置、還流冷却器、温度計、攪拌装置及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに脱イオン水94部を仕込んで窒素雰囲気下で80℃に昇温させた。次に、スチレン13.68部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル18.52部、アクリル酸n-ブチル16.03部、メタクリル酸n-ブチル49.21部、アクリル酸2.56部からなるラジカル重合性単量体混合物、及び、乳化重合調整剤としてn-ドデシルメルカプタン4.0部、反応性アニオン乳化剤エレミノール RS-3000(商品名、三洋化成工業株式会社製、メタクリロイルオキシポリオキシプロピレン硫酸エステルナトリウム)2.0部、反応性ノニオン乳化剤アデカリアソープ NE20(商品名、株式会社ADEKA製)1.0部、脱イオン水15部からなる乳化剤溶液の混合物を、一方の滴下装置を用いて、3時間かけて等速滴下した。上記滴下装置による滴下と同時に、もう一方の滴下装置を用いて、過硫酸アンモニウム0.30部、脱イオン水15部からなる重合開始剤溶液を3時間かけて等速滴下した。滴下終了後、1時間攪拌を続けた後で40℃まで冷却し、表1に示す特性値を有するアクリル樹脂水分散液AC-1を得た。
【0065】
<製造例1-2~1-19: アクリル樹脂水分散液AC-2~AC-19の製造>
表1に示された配合組成に従って、製造例1-1と同様の方法で、表1及び表2に示す特性値を有するアクリル樹脂水分散液AC-2~AC-19を得た。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
(注1)乳化重合調整剤: n-ドデシルメルカプタン
(注2)反応性アニオン乳化剤: エレミノール RS-3000(商品名、三洋化成工業株式会社製、メタクリロイルオキシポリオキシプロピレン硫酸エステルナトリウム)
(注3)反応性ノニオン乳化剤: アデカリアソープ NE20(商品名、株式会社ADEKA製)
【0069】
<製造例2:アクリルウレタン樹脂水分散液AU-1の製造>
2-1 ポリエステルポリオール溶液PE-1の製造
反応水の分離管が付属した還流冷却器、温度計、攪拌装置及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに、アジピン酸49.9部、1,6-ヘキサンジオール18.5部、ネオペンチルグリコール31.6部を仕込み、窒素気流下、攪拌しながら160℃まで昇温した。160℃で1時間保持した後、230℃まで5時間かけて昇温した。230℃に保持しながら定期的に酸価を測定し、酸価が3.5mgKOH/gになったところで、80℃以下まで冷却した。最後にメチルエチルケトン21.9部を加え、ポリエステルポリオール溶液PE-1を得た。ポリエステルポリオール溶液PE-1の特性値は、酸価3.5mgKOH/g、水酸基価155mgKOH/g、樹脂固形分80質量%であった。
【0070】
2-2 アクリルウレタン樹脂水分散液AU-1の製造
2系統の滴下装置、還流冷却器、温度計、攪拌装置及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに、製造例2-1で得られたポリエステルポリオール溶液PE-1を420.0部、ネオペンチルグリコール31.0部、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル27.8部、ジブチル錫ジラウレート0.5部、メチルエチルケトン195.7部を仕込み、窒素気流下、攪拌し、均一にした。
【0071】
次に、得られた溶液にイソホロンジイソシアネート259.9部を添加した。発熱反応がおさまった後、反応混合物を撹拌しながら徐々に80℃まで加熱し、この温度で、溶液のイソシアネート含量が2.2質量%になるまで撹拌を続けた。次いで、トリメチロールプロパン66.7部を添加し、溶液中の遊離イソシアネート基がもはや検出できなくなるまで80℃で撹拌した。その後、得られたポリウレタン溶液にメチルエチルケトン248.9部を添加した。
【0072】
続いて、温度を82℃に調整し、アクリル酸n-ブチル312.5部、メタクリル酸メチル312.5部、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル74.7部、アクリル酸58.4部からなるラジカル重合性単量体混合物を、一方の滴下装置を用いて、3時間かけて等速滴下した。上記滴下装置による滴下と同時に、もう一方の滴下装置を用いて、2,2’-アゾビス(メチルブチロニトリル)22.8部、メチルエチルケトン152.3部からなる重合開始剤溶液を3.5時間かけて等速滴下した。
【0073】
モノマー混合物及び重合開始剤溶液の滴下終了後、得られた反応混合物を82℃でさらに2.5時間撹拌し、ジメチルエタノールアミン56.9部、脱イオン水2242部を添加した。その後、還流冷却器に分離管を取り付け、分散体の樹脂固形分が40質量%となるまで減圧下45℃で脱溶剤を行い、アクリルウレタン樹脂水分散液AU-1を得た。得られたアクリルウレタン樹脂水分散液AU-1は、酸価32mgKOH/g、水酸基価57mgKOH/g、pH8.1であった。
【0074】
<製造例3:黒色顔料ペーストP-1の製造>
分散樹脂としてアクリルウレタン樹脂水分散液AU-1を100.0部、ペリレン系黒色顔料Spectrasense Black L 0086(商品名、Sun Chemical Colors & Effects社製)を40.0部および脱イオン水を60.0部混合した後、モーターミルで分散し、黒色顔料ペーストP-1を得た。
【0075】
<製造例4:青色顔料ペーストP-2の製造>
分散樹脂としてアクリルウレタン樹脂水分散液AU-1を100.0部、コバルトブルー顔料HEUCODUR Blue 2R(商品名、HEUBACH社製)を40.0部および脱イオン水を60.0部混合した後、モーターミルで分散し、青色顔料ペーストP-2を得た。
【0076】
<製造例5:赤色顔料ペーストP-3の製造>
分散樹脂としてアクリルウレタン樹脂水分散液AU-1を100.0部、赤色酸化鉄顔料100ED(商品名、戸田工業株式会社製)を40.0部および脱イオン水を60.0部混合した後、モーターミルで分散し、赤色顔料ペーストP-3を得た。
【0077】
<製造例6-1:水性1コート塗料組成物WB-1の製造>
分散樹脂としてアクリル樹脂水分散液AC-1を55.30部使用し、これに対して酸化チタン顔料TI-PURE R-706(商品名、CHEMOURS社製)84.92部、さらに粘度調整のために2-ブトキシエタノールを8.50部、脱イオン水21.20部を添加し、モーターミルで分散し、顔料ペーストを得た。
次に、上記の顔料ペースト169.92部をディソルバーで攪拌下、アクリル樹脂水分散液AC-1を113.30部、メラミン樹脂溶液CYMEL 325(商品名、ALLNEX社製、不揮発分80質量%)を12.50部、メラミン樹脂溶液CYMEL 203(商品名、ALLNEX社製、不揮発分72質量%)を20.80部、黒色顔料ペーストP-1を1.26部、青色顔料ペーストP-2を6.30部、赤色顔料ペーストP-3を3.15部、紫外線吸収剤TINUVIN 384-2(商品名、BASFジャパン株式会社製)を2.00部、光安定剤吸収剤TINUVIN 292(商品名、BASFジャパン株式会社製)を2.00部、増粘剤RHEOVIS HS 1152(商品名、BASFジャパン株式会社製)を2.00部、表面調整剤BYK-346(商品名、BYK-Chemie社製)を1.00部、及び脱イオン水を10.00部順次加えて混合した。最後に、ポータブル回転粘度計レオマットR180(商品名、proRheo社製)を用いて、20℃、せん断速度1000s-1で120mPa・sとなるように脱イオン水で希釈して、表3に示す配合組成の水性1コート塗料組成物WB-1を得た。
【0078】
<製造例6-2~6-22:水性1コート塗料組成物WB-2~WB-22の製造>
表3~5に示された配合組成に従って、製造例6-1と同様の方法で、水性1コート塗料組成物WB-2~WB-22を得た。
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】
【表5】
【0081】
(注4)酸化チタン顔料: TI-PURE R-706(商品名、CHEMOURS社製)
(注5)メラミン樹脂溶液: CYMEL 325(商品名、ALLNEX社製、不揮発分80質量%)
(注6)メラミン樹脂溶液: CYMEL 203(商品名、ALLNEX社製、不揮発分72質量%)
(注7)紫外線吸収剤: TINUVIN 384-2(商品名、BASFジャパン株式会社製)
(注8)光安定剤吸収剤: TINUVIN 292(商品名、BASFジャパン株式会社製)
(注9)増粘剤: RHEOVIS HS 1152(商品名、BASFジャパン株式会社製)
(注10)表面調整剤: BYK-346(商品名、BYK-Chemie社製)
【0082】
<実施例1~14及び比較例1~8>
(1)試験板の作成及び目視外観の評価
リン酸亜鉛処理軟鋼板にカチオン電着塗料カソガードNo.500(商品名、BASFジャパン株式会社製)を用いて硬化膜厚が20μmとなるよう電着塗装を行い、175℃で25分間焼き付けて電着塗装板を得た。得られた電着塗膜層のマルチアングル測色器BYKmac i(商品名、BYK-Gardner社製)を用いて測定された明度L*45値は40であった。
【0083】
次に、上記の電着塗装板に水性1コート塗料組成物WB-1~WB-22を乾燥膜厚が30μmとなるようにスプレー塗装し、室温で3分間放置した後に、140℃で30分間加熱して硬化1コート塗膜試験板を作成した。得られた塗膜の外観を次の基準に従い目視評価し、その結果を表6及び表7に示した。
〇: 塗膜に異常が無い状態
×: 塗膜に泡状の小さな膨れや穴がある状態(ワキともいう)
【0084】
(2)硬化1コート塗膜の評価
上記目視外観評価において〇となった硬化1コート塗膜試験板(実施例1~14、比較例1、3及び5~8)について下記(2)-1~(2)-4の測定・評価を行い、その結果を表6及び表7に示した。
【0085】
(2)-1 60°光沢値
マイクロトリグロス光沢計(商品名、BYK-Gardner社製)を用いて60°光沢値を測定した。
【0086】
(2)-2 明度L*45値の測定
マルチアングル測色器BYKmac i(商品名、BYK-Gardner社製)を用いて明度L*45値を測定した。
【0087】
(2)-3 赤外線反射率(IRSR)の測定
赤外線反射率(IRSR)は、紫外・可視・近赤外分光光度計UV-3600(商品名、株式会社島津製作所製)を用いて測定した。
【0088】
(2)-4 耐水性試験後の密着性の評価
試験板を40℃の温水に10日間浸漬し、引き上げて乾燥した。その後、JIS K5400-8.5(碁盤目試験)に準じ、密着性の評価を行った。すなわち、試験板の塗膜面に素地に達するようにカッターで切り込み線を入れ、大きさ2mm×2mmのマス目を100個作り、その表面上、全面にセロテープ(登録商標)を貼り付け、20℃においてそれを急激に45°剥離した。評価は、残存塗膜のマス目数から次の基準に従って行った。
○: 残存塗膜のマス目数が100個(剥離なし)
×: 残存塗膜のマス目数が99個以下
【0089】
【表6】
【表7】
【0090】
以上、本発明者等によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。