(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025178366
(43)【公開日】2025-12-05
(54)【発明の名称】光学フィルタ
(51)【国際特許分類】
G02B 5/22 20060101AFI20251128BHJP
G02B 5/28 20060101ALI20251128BHJP
【FI】
G02B5/22
G02B5/28
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025158330
(22)【出願日】2025-09-24
(62)【分割の表示】P 2022542588の分割
【原出願日】2021-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2020137088
(32)【優先日】2020-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩野 和彦
(72)【発明者】
【氏名】長田 崇
(57)【要約】
【課題】RGB帯域の光を選択的に透過し、かつ入射角によるRGB帯域の光量変化が少ない光学フィルタを提供すること。
【解決手段】本発明は、基材と、前記基材の少なくとも一方の主面側に最外層として積層された誘電体多層膜とを備える光学フィルタであって、前記基材は、樹脂及び波長400nm以上700nm未満の範囲に吸収極大波長を有する色素Aを含有する樹脂層を有し、波長430nm以上490nm未満の範囲、波長490nm以上590nm未満の範囲、波長590nm以上650nm未満の範囲に極大値を有する光学フィルタに関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の少なくとも一方の主面側に積層された誘電体多層膜とを備える光学フィルタであって、
前記基材は、樹脂及び色素Aを含有する樹脂層を有し、
前記色素Aは、波長400nm以上700nm未満の範囲に吸収極大波長を有し、
下記(i-1)~(i-9)を全て満たす、光学フィルタ。
(i-1)入射角0°の分光透過率曲線において、
波長430nm以上490nm未満の範囲に極大値1(0deg)を有し、
波長490nm以上590nm未満の範囲に極大値2(0deg)を有し、
波長590nm以上650nm未満の範囲に極大値3(0deg)を有する。
(i-2)入射角30°の分光透過率曲線において、
波長430nm以上490nm未満の範囲に極大値1(30deg)を有し、
波長490nm以上590nm未満の範囲に極大値2(30deg)を有し、
波長590nm以上650nm未満の範囲に極大値3(30deg)を有する。
(i-3)入射角0°の分光透過率曲線において、波長440nm以上550nm未満の範囲に極小値1(0deg)又は透過率が1%以下になる波長範囲を有し、
波長490nm以上610nm未満の範囲に極小値2(0deg)又は透過率が1%以下になる波長範囲を有する。
(i-4)入射角30°の分光透過率曲線において、波長440nm以上550nm未満の範囲に極小値1(30deg)又は透過率が1%以下になる波長範囲を有し、
波長490nm以上610nm未満の範囲に極小値2(30deg)又は透過率が1%以下になる波長範囲を有する。
(i-5)下記式が全て満たされる。
極大値1(0deg)-極小値1(0deg)≧40%
極大値2(0deg)-極小値1(0deg)≧30%
極大値2(0deg)-極小値2(0deg)≧30%
極大値3(0deg)-極小値2(0deg)≧27%
(i-6)下記式が全て満たされる。
極大値1(30deg)-極小値1(30deg)≧30%
極大値2(30deg)-極小値1(30deg)≧30%
極大値2(30deg)-極小値2(30deg)≧30%
極大値3(30deg)-極小値2(30deg)≧27%
(i-7)入射角0°の分光透過率曲線において、
波長700~1000nmの範囲における平均透過率(0deg)が5%以下である。
(i-8)入射角30°の分光透過率曲線において、
波長700~1000nmの範囲における平均透過率(30deg)が5%以下である。
(i-9)下記式が全て満たされる。
0.85≦極大値1(30deg)/極大値1(0deg)≦1.12
0.85≦極大値2(30deg)/極大値2(0deg)≦1.12
0.85≦極大値3(30deg)/極大値3(0deg)≦1.12
【請求項2】
さらに、下記式を全て満たす、請求項1に記載の光学フィルタ。
|波長λ1(0deg)-波長λ1(30deg)|≦10nm
|波長λ2(0deg)-波長λ2(30deg)|≦10nm
|波長λ3(0deg)-波長λ3(30deg)|≦10nm
|波長λ4(0deg)-波長λ4(30deg)|≦10nm
<式中、波長λ1(0deg)、波長λ1(30deg)、波長λ2(0deg)、波長λ2(30deg)、波長λ3(0deg)、波長λ3(30deg)、波長λ4(0deg)、波長λ4(30deg)は、下記式により求められる値である。
波長λ1(0deg)={極大値1(0deg)における波長+極小値1(0deg)における波長}÷2
波長λ1(30deg)={極大値1(30deg)における波長+極小値1(30deg)における波長}÷2
波長λ2(0deg)={極大値2(0deg)における波長+極小値1(0deg)における波長}÷2
波長λ2(30deg)={極大値2(30deg)における波長+極小値1(30deg)における波長}÷2
波長λ3(0deg)={極大値2(0deg)における波長+極小値2(0deg)における波長}÷2
波長λ3(30deg)={極大値2(30deg)における波長+極小値2(30deg)における波長}÷2
波長λ4(0deg)={極大値3(0deg)における波長+極小値2(0deg)における波長}÷2
波長λ4(30deg)={極大値3(30deg)における波長+極小値2(30deg)における波長}÷2>
【請求項3】
さらに、下記式を満たす、請求項1又は2に記載の光学フィルタ。
極大値1(0deg)-極小値1(0deg)≧50.1%
【請求項4】
さらに、下記式を満たす、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
極小値1(0deg)≦20.6%
【請求項5】
前記色素Aは、色素1、色素2、色素3及び色素4を含有し、
下記(ii-1)~(ii-4)が全て満たされる、請求項1~4のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
(ii-1)ガラス基板上に、前記色素1を前記樹脂に溶解して塗工した塗工膜の分光透過率曲線において、前記色素1は波長395nm以上450nm未満の範囲に吸収極大波長を有する。
(ii-2)ガラス基板上に、前記色素2を前記樹脂に溶解して塗工した塗工膜の分光透過率曲線において、前記色素2は波長450nm以上540nm未満の範囲に吸収極大波長を有する。
(ii-3)ガラス基板上に、前記色素3を前記樹脂に溶解して塗工した塗工膜の分光透過率曲線において、前記色素3は波長540nm以上600nm未満の範囲に吸収極大波長を有する。
(ii-4)ガラス基板上に、前記色素4を前記樹脂に溶解して塗工した塗工膜の分光透過率曲線において、前記色素4は波長600nm以上720nm未満の範囲に吸収極大波長を有する。
【請求項6】
前記色素1、前記色素2、前記色素3、前記色素4及び前記樹脂を有する樹脂層は、下記(iii-1)~(iii-3)を全て満たす、請求項5に記載の光学フィルタ。
(iii-1)波長430nm以上490nm未満の範囲に極大値10を有し、
波長490nm以上590nm未満の範囲に極大値11を有し、
波長590nm以上650nm未満の範囲に極大値12を有する。
(iii-2)波長400nm以上440nm未満の範囲に極小値10又は内部透過率が1%以下になる波長範囲を有し、
波長440nm以上540nm未満の範囲に極小値11又は内部透過率が1%以下になる波長範囲を有し、
波長540nm以上640nm未満の範囲に極小値12又は内部透過率が1%以下になる波長範囲を有し、
波長640nm以上700nm未満の範囲に極小値13又は内部透過率が1%以下になる波長範囲を有する。
(iii-3)極大値10、極大値11及び極大値12のなかの最大値が40%以上である。
【請求項7】
さらに、下記(iv-1)~(iv-4)を全て満たす、請求項5又は6に記載の光学フィルタ。
(iv-1)吸収極大波長における内部透過率が10%となるように、ガラス基板上に、前記色素1を前記樹脂に溶解して塗工した塗工膜の分光透過率曲線において、
波長395nm以上450nm未満の範囲において内部透過率が80%となる最も長い波長をIR80a(色素1)とし、
内部透過率が10%となる波長をIR10(色素1)としたとき、下記式が満たされる。
IR80a(色素1)-IR10(色素1)≦25nm
(iv-2)吸収極大波長における内部透過率が10%となるように、ガラス基板上に、前記色素2を前記樹脂に溶解して塗工した塗工膜の分光透過率曲線において、
波長450nm以上540nm未満の範囲において内部透過率が80%となる最も長い波長をIR80a(色素2)とし、
内部透過率が80%となる最も短い波長をIR80b(色素2)とし、
内部透過率が10%となる波長をIR10(色素2)としたとき、下記式が満たされる。
IR80a(色素2)-IR10(色素2)≦35nm
IR80b(色素2)-IR10(色素2)≦55nm
(iv-3)吸収極大波長における内部透過率が10%となるように、ガラス基板上に、前記色素3を前記樹脂に溶解して塗工した塗工膜の分光透過率曲線において、
波長540nm以上600nm未満の範囲において内部透過率が80%となる最も長い波長をIR80a(色素3)とし、
内部透過率が80%となる最も短い波長をIR80b(色素3)とし、
内部透過率が10%となる波長をIR10(色素3)としたとき、下記式が満たされる。
IR80a(色素3)-IR10(色素3)≦35nm
IR80b(色素3)-IR10(色素3)≦55nm
(iv-4)吸収極大波長における内部透過率が10%となるように、ガラス基板上に、前記色素4を前記樹脂に溶解して塗工した塗工膜の分光透過率曲線において、
波長600nm以上720nm未満の範囲において内部透過率が80%となる最も短い波長をIR80b(色素4)とし、
内部透過率が10%となる波長をIR10(色素4)としたとき、下記式が満たされる。
IR80b(色素4)-IR10(色素4)≦80nm
【請求項8】
前記誘電体多層膜が、入射角5°の分光透過率曲線及び30°の分光透過率曲線において、下記(vi-1)~(vi-7)を全て満たす、請求項1~7のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
(vi-1)波長430nm以上490nm未満の光の平均反射率が30%以下である。
(vi-2)波長490nm以上590nm未満の光の平均反射率が30%以下である。
(vi-3)波長590nm以上650nm未満の光の平均反射率が30%以下である。
(vi-4)波長430nm以上490nm未満の光の平均透過率が70%以上である。
(vi-5)波長490nm以上590nm未満の光の平均透過率が80%以上である。
(vi-6)波長590nm以上650nm未満の光の平均透過率が80%以上である。
(vi-7)波長700nm以上1000nm未満の光の平均透過率が20%以下である。
【請求項9】
前記基材が、支持体を有し、
前記樹脂層が前記支持体の少なくとも一方の主面に積層され、
前記支持体が、透明性ガラス又は吸収ガラスを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項10】
前記樹脂がポリイミド樹脂である、請求項1~9のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項11】
前記樹脂層と、他の樹脂層とを備える、請求項1~10のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の光学フィルタを備える、撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子を用いた撮像装置には、色調を良好に再現し鮮明な画像を得るため、可視帯域の光(可視光)を透過し近赤外域の光(近赤外光)を遮断する光学フィルタが用いられる。光学フィルタとしては、例えば、ガラス基板上に、色素と樹脂を含む基材と、誘電体多層膜とを設けた近赤外光カットフィルタが知られている。
【0003】
光学フィルタに用いる色素は、フレア現象及びゴースト現象を抑制する観点から、近赤外光の遮光性に優れている近赤外線吸収色素が好ましい。また、近年、複数の帯域(例えば、RGB帯域(赤色帯域、緑色帯域、青色帯域))の光を選択的に透過する光学フィルタが求められている。
【0004】
複数の帯域の光を選択的に透過する光学フィルタとしては、例えば、特許文献1では、樹脂Aからなる層(A層)と樹脂Bからなる層(B層)を少なくとも有する積層数が30以上の積層フィルムを含んでなり、波長850~1000nmの近赤外線帯域の平均反射率が60%以上であり、かつ下記式aおよびbを満たすことを特徴とする光学フィルタが開示されている。
【0005】
T(630nm)-T(595nm)≧20% 式a
T(370nm)≦5% 式b
ここでT(xnm):波長xnmにおける透過率
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本国特開2006-126315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らの検討によると、特許文献1に記載の光学フィルタは、複数の帯域の光を透過するものの、RGB帯域の光の選択性が小さく改善の余地があった。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、RGB帯域の光を選択的に透過し、かつ入射角によるRGB帯域の光量変化が少ない光学フィルタを提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る光学フィルタは、下記に存する。
基材と、前記基材の少なくとも一方の主面側に最外層として積層された誘電体多層膜とを備える光学フィルタであって、
前記基材は、樹脂及び色素Aを含有する樹脂層を有し、
前記色素Aは、ガラス基板上に、前記色素Aを前記樹脂に溶解して塗工した塗工膜の分光透過率曲線において、波長400nm以上700nm未満の範囲に吸収極大波長を有し、
下記(i-1)~(i-9)を全て満たす、光学フィルタ。
(i-1)入射角0°の分光透過率曲線において、
波長430nm以上490nm未満の範囲に極大値1(0deg)を有し、
波長490nm以上590nm未満の範囲に極大値2(0deg)を有し、
波長590nm以上650nm未満の範囲に極大値3(0deg)を有する。
(i-2)入射角30°の分光透過率曲線において、
波長430nm以上490nm未満の範囲に極大値1(30deg)を有し、
波長490nm以上590nm未満の範囲に極大値2(30deg)を有し、
波長590nm以上650nm未満の範囲に極大値3(30deg)を有する。
(i-3)入射角0°の分光透過率曲線において、波長440nm以上550nm未満の範囲に極小値1(0deg)又は透過率が1%以下になる波長範囲を有し、
波長490nm以上610nm未満の範囲に極小値2(0deg)又は透過率が1%以下になる波長範囲を有する。
(i-4)入射角30°の分光透過率曲線において、波長440nm以上550nm未満の範囲に極小値1(30deg)又は透過率が1%以下になる波長範囲を有し、
波長490nm以上610nm未満の範囲に極小値2(30deg)又は透過率が1%以下になる波長範囲を有する。
(i-5)下記式が全て満たされる。
極大値1(0deg)-極小値1(0deg)≧30%
極大値2(0deg)-極小値1(0deg)≧30%
極大値2(0deg)-極小値2(0deg)≧30%
極大値3(0deg)-極小値2(0deg)≧27%
(i-6)下記式が全て満たされる。
極大値1(30deg)-極小値1(30deg)≧30%
極大値2(30deg)-極小値1(30deg)≧30%
極大値2(30deg)-極小値2(30deg)≧30%
極大値3(30deg)-極小値2(30deg)≧27%
(i-7)入射角0°の分光透過率曲線において、
波長700~1000nmの範囲における平均透過率(0deg)が5%以下である。
(i-8)入射角30°の分光透過率曲線において、
波長700~1000nmの範囲における平均透過率(30deg)が5%以下である。
(i-9)下記式が全て満たされる。
0.85≦極大値1(30deg)/極大値1(0deg)≦1.12
0.85≦極大値2(30deg)/極大値2(0deg)≦1.12
0.85≦極大値3(30deg)/極大値3(0deg)≦1.12
【発明の効果】
【0010】
本発明の光学フィルタは、RGB帯域の光を選択的に透過し、かつ入射角によるRGB帯域の光量変化が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施形態の光学フィルタの一例を概略的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、試験例4-2の塗工膜の分光透過率曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本明細書において、近赤外線吸収色素を「NIR色素」、紫外線吸収色素を「UV色素」と略記することもある。
本明細書において、式(1)で示される化合物を化合物(1)ともいう。他の式で表される化合物も同様である。また、式(1)で表される基を基(1)とも記し、他の式で表される基も同様である。
【0013】
本明細書において、「内部透過率」とは、{実測透過率/(100-反射率)}×100の式で示される、実測透過率から界面反射の影響を引いて得られる透過率である。
本明細書において、基材又は樹脂層の透過率は、「透過率」と記載されている場合も全て「内部透過率」である。一方、色素をジクロロメタン等の溶媒に溶解して測定される透過率、光学フィルタの透過率は、実測透過率である。
【0014】
本明細書において、特定の波長域について、透過率が例えば90%以上とは、その全波長域において透過率が90%を下回らない、すなわちその波長域において最小透過率が90%以上であることをいう。同様に、特定の波長域について、透過率が例えば1%以下とは、その全波長域において透過率が1%を超えない、すなわちその波長域において最大透過率が1%以下であることをいう。内部透過率においても同様である。特定の波長域における平均透過率及び平均内部透過率は、該波長域の1nm毎の透過率及び内部透過率の相加平均である。
本明細書において、数値範囲を表す「~」では、上下限を含む。
【0015】
[光学フィルタ]
図1に示すように、本発明の一実施形態の光学フィルタ10は、基材11と、基材11の少なくとも一方の主面側に最外層として積層された誘電体多層膜12とを備える。基材は、樹脂及び色素Aを含有する樹脂層を有する。
以下、本発明の一実施形態の光学フィルタを「本フィルタ」と称することがある。
【0016】
本フィルタは、下記(i-1)~(i-9)を全て満たす。
(i-1)入射角0°の分光透過率曲線において、
波長430nm以上490nm未満の範囲に極大値1(0deg)を有し、
波長490nm以上590nm未満の範囲に極大値2(0deg)を有し、
波長590nm以上650nm未満の範囲に極大値3(0deg)を有する。
(i-2)入射角30°の分光透過率曲線において、
波長430nm以上490nm未満の範囲に極大値1(30deg)を有し、
波長490nm以上590nm未満の範囲に極大値2(30deg)を有し、
波長590nm以上650nm未満の範囲に極大値3(30deg)を有する。
(i-3)入射角0°の分光透過率曲線において、波長440nm以上550nm未満の範囲に極小値1(0deg)又は透過率が1%以下になる波長範囲を有し、
波長490nm以上610nm未満の範囲に極小値2(0deg)又は透過率が1%以下になる波長範囲を有する。
(i-4)入射角30°の分光透過率曲線において、波長440nm以上550nm未満の範囲に極小値1(30deg)又は透過率が1%以下になる波長範囲を有し、
波長490nm以上610nm未満の範囲に極小値2(30deg)又は透過率が1%以下になる波長範囲を有する。
(i-5)下記式が全て満たされる。
極大値1(0deg)-極小値1(0deg)≧30%
極大値2(0deg)-極小値1(0deg)≧30%
極大値2(0deg)-極小値2(0deg)≧30%
極大値3(0deg)-極小値2(0deg)≧27%
(i-6)下記式が全て満たされる。
極大値1(30deg)-極小値1(30deg)≧30%
極大値2(30deg)-極小値1(30deg)≧30%
極大値2(30deg)-極小値2(30deg)≧30%
極大値3(30deg)-極小値2(30deg)≧27%
(i-7)入射角0°の分光透過率曲線において、
波長700~1000nmの範囲における平均透過率(0deg)が5%以下である。
(i-8)入射角30°の分光透過率曲線において、
波長700~1000nmの範囲における平均透過率(30deg)が5%以下である。
(i-9)下記式が全て満たされる。
0.85≦極大値1(30deg)/極大値1(0deg)≦1.12
0.85≦極大値2(30deg)/極大値2(0deg)≦1.12
0.85≦極大値3(30deg)/極大値3(0deg)≦1.12
【0017】
本フィルタは、上記(i-1)~(i-6)を満たすことで、RGB帯域の光を選択的に透過できる。
【0018】
(i-1)において、
極大値1(0deg)の波長範囲は、好ましくは430nm以上480nm未満、より好ましくは430nm以上455nm未満である。
極大値2(0deg)の波長範囲は、好ましくは490nm以上550nm未満、より好ましくは500nm以上540nm未満である。
極大値3(0deg)の波長範囲は、好ましくは590nm以上640nm未満、より好ましくは590nm以上630nm未満である。
【0019】
(i-2)において、
極大値1(30deg)の波長範囲は、好ましくは430nm以上480nm未満、より好ましくは430nm以上455nm未満である。
極大値2(30deg)の波長範囲は、好ましくは490nm以上550nm未満、より好ましくは500nm以上540nm未満である。
極大値3(30deg)の波長範囲は、好ましくは590nm以上640nm未満、より好ましくは590nm以上630nm未満である。
【0020】
(i-3)において、
極小値1(0deg)の波長範囲又は透過率が1%以下になる波長範囲は、好ましくは450nm以上540nm未満、より好ましくは460nm以上530nm未満である。
極小値2(0deg)の波長範囲又は透過率が1%以下になる波長範囲は、好ましくは500nm以上600nm未満、より好ましくは510nm以上590nm未満である。
【0021】
(i-4)において、
極小値1(30deg)の波長範囲又は透過率が1%以下になる波長範囲は、好ましくは400nm以上430nm未満、より好ましくは410nm以上420nm未満である。
極小値2(30deg)の波長範囲又は透過率が1%以下になる波長範囲は、好ましくは450nm以上530nm未満、より好ましくは460nm以上520nm未満である。
【0022】
(i-5)において、
極大値1(0deg)-極小値1(0deg)は、好ましくは35%以上、より好ましくは40%以上である。
極大値2(0deg)-極小値1(0deg)は、好ましくは32%以上、より好ましくは35%以上である。
極大値2(0deg)-極小値2(0deg)は、好ましくは32%以上、より好ましくは35%以上である。
極大値3(0deg)-極小値2(0deg)は、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上である。
【0023】
(i-6)において、
極大値1(30deg)-極小値1(30deg)は、好ましくは35%以上、より好ましくは40%以上である。
極大値2(30deg)-極小値1(30deg)は、好ましくは32%以上、より好ましくは35%以上である。
極大値2(30deg)-極小値2(30deg)は、好ましくは32%以上、より好ましくは35%以上である。
極大値3(30deg)-極小値2(30deg)は、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上である。
【0024】
本フィルタは、上記(i-7)~(i-8)を満たすことで、近赤外光の遮光性に優れる。
【0025】
(i-7)において、
平均透過率(0deg)は、好ましくは2%以下、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.2%以下である。
【0026】
(i-8)において、
平均透過率(30deg)は、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.2%以下である。
【0027】
本フィルタは、上記(i-9)を満たすことで、入射角によるRGB帯域の光量変化が少なくなる。
【0028】
(i-9)において、
極大値1(30deg)/極大値1(0deg)は、好ましくは0.9以上1.12以下、より好ましくは0.95以上1.05以下である。
極大値2(30deg)/極大値2(0deg)は、好ましくは0.9以上1.12以下、より好ましくは0.95以上1.05以下である。
極大値3(30deg)/極大値3(0deg)は、好ましくは0.9以上1.12以下、より好ましくは0.95以上1.05以下である。
【0029】
さらに、本フィルタは、下記式を全て満たすことが好ましい。
|波長λ1(0deg)-波長λ1(30deg)|≦10nm
|波長λ2(0deg)-波長λ2(30deg)|≦10nm
|波長λ3(0deg)-波長λ3(30deg)|≦10nm
|波長λ4(0deg)-波長λ4(30deg)|≦10nm
【0030】
<式中、波長λ1(0deg)、波長λ1(30deg)、波長λ2(0deg)、波長λ2(30deg)、波長λ3(0deg)、波長λ3(30deg)、波長λ4(0deg)、波長λ4(30deg)は、下記式により求められる値である。
波長λ1(0deg)={極大値1(0deg)における波長+極小値1(0deg)における波長}÷2
波長λ1(30deg)={極大値1(30deg)における波長+極小値1(30deg)における波長}÷2
波長λ2(0deg)={極大値2(0deg)における波長+極小値1(0deg)における波長}÷2
波長λ2(30deg)={極大値2(30deg)における波長+極小値1(30deg)における波長}÷2
波長λ3(0deg)={極大値2(0deg)における波長+極小値2(0deg)における波長}÷2
波長λ3(30deg)={極大値2(30deg)における波長+極小値2(30deg)における波長}÷2
波長λ4(0deg)={極大値3(0deg)における波長+極小値2(0deg)における波長}÷2
波長λ4(30deg)={極大値3(30deg)における波長+極小値2(30deg)における波長}÷2>
【0031】
本フィルタは、上記式を満たすことで、入射角によるRGB帯域の光量変化が少なくなる。
【0032】
|波長λ1(0deg)-波長λ1(30deg)|は、好ましくは5nm以下、より好ましくは3nm以下である。
|波長λ2(0deg)-波長λ2(30deg)|は、好ましくは5nm以下、より好ましくは3nm以下である。
|波長λ3(0deg)-波長λ3(30deg)|は、好ましくは5nm以下、より好ましくは3nm以下である。
|波長λ4(0deg)-波長λ4(30deg)|は、好ましくは5nm以下、より好ましくは3nm以下である。
【0033】
さらに、本フィルタ中の樹脂層が、後述の色素1、後述の色素2、後述の色素3、後述の色素4及び樹脂を有するとき、本フィルタは、下記(iv-1)~(iv-4)を全て満たすことが好ましい。
【0034】
(iv-1)吸収極大波長における内部透過率が10%となるように、ガラス基板上に、前記色素1を前記樹脂に溶解して塗工した塗工膜の分光透過率曲線において、
波長395nm以上450nm未満の範囲において内部透過率が80%となる最も長い波長をIR80a(色素1)とし、
内部透過率が10%となる波長をIR10(色素1)としたとき、下記式が満たされる。
IR80a(色素1)-IR10(色素1)≦25nm
(iv-2)吸収極大波長における内部透過率が10%となるように、ガラス基板上に、前記色素2を前記樹脂に溶解して塗工した塗工膜の分光透過率曲線において、
波長450nm以上540nm未満の範囲において内部透過率が80%となる最も長い波長をIR80a(色素2)とし、
内部透過率が80%となる最も短い波長をIR80b(色素2)とし、
内部透過率が10%となる波長をIR10(色素2)としたとき、下記式が満たされる。
IR80a(色素2)-IR10(色素2)≦35nm
IR80b(色素2)-IR10(色素2)≦55nm
(iv-3)吸収極大波長における内部透過率が10%となるように、ガラス基板上に、前記色素3を前記樹脂に溶解して塗工した塗工膜の分光透過率曲線において、
波長540nm以上600nm未満の範囲において内部透過率が80%となる最も長い波長をIR80a(色素3)とし、
内部透過率が80%となる最も短い波長をIR80b(色素3)とし、
内部透過率が10%となる波長をIR10(色素3)としたとき、下記式が満たされる。
IR80a(色素3)-IR10(色素3)≦35nm
IR80b(色素3)-IR10(色素3)≦55nm
(iv-4)吸収極大波長における内部透過率が10%となるように、ガラス基板上に、前記色素4を前記樹脂に溶解して塗工した塗工膜の分光透過率曲線において、
波長600nm以上720nm未満の範囲において内部透過率が80%となる最も短い波長をIR80b(色素4)とし、
内部透過率が10%となる波長をIR10(色素4)としたとき、下記式が満たされる。
IR80b(色素4)-IR10(色素4)≦80nm
【0035】
本フィルタは、上記(iv-1)~(iv-4)を満たすことで、RGB帯域の光をより選択的に透過できる。
【0036】
(iv-1)において、
IR80a(色素1)-IR10(色素1)は、好ましくは24nm以下であり、より好ましくは23nm以下である。
【0037】
(iv-2)において、
IR80a(色素2)-IR10(色素2)は、好ましくは30nm以下であり、より好ましくは26nm以下である。
IR80b(色素2)-IR10(色素2)は、好ましくは50nm以下であり、より好ましくは47nm以下である。
【0038】
(iv-3)において、
IR80a(色素3)-IR10(色素3)は、好ましくは33nm以下であり、より好ましくは30nm以下である。
IR80b(色素3)-IR10(色素3)は、好ましくは53nm以下であり、より好ましくは50nm以下である。
【0039】
(iv-4)において、
IR80b(色素4)-IR10(色素4)は、好ましくは79nm以下であり、より好ましくは77nm以下である。
【0040】
<基材、樹脂層>
基材は、樹脂層を有する。樹脂層は、樹脂及び色素Aを含有する。
【0041】
(樹脂)
樹脂は、透明樹脂(透明性を有する樹脂)であることが好ましい。
透明樹脂としては、例えば、ノルボルネン樹脂等のシクロオレフィンポリマー(COP)又はシクロオレフィンコポリマー(COC);ポリイミド樹脂(PI);ポリカーボネート樹脂(PC);ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン樹脂;ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂;フッ素樹脂;ポリビニルブチラール樹脂;ポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。
これらの樹脂は1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0042】
これらの中でも、可視光域の透明性(波長400~700nm)、耐熱性、ガラス転移温度を両立できる観点から、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、エポキシ樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド樹脂がより好ましく、ポリイミド樹脂がさらに好ましい。
【0043】
(色素A)
色素Aは、ガラス基板上に、色素Aを樹脂に溶解して塗工した塗工膜の分光透過率曲線において、波長400nm以上700nm未満の範囲に吸収極大波長を有する。
【0044】
色素Aは、RGB帯域の光を選択的に透過させる観点から、色素1、色素2、色素3及び色素4を含有することが好ましい。
また、色素Aが色素1、色素2、色素3及び色素4を含有するとき、下記(ii-1)~(ii-4)が全て満たされることが好ましい。
【0045】
(ii-1)ガラス基板上に、前記色素1を前記樹脂に溶解して塗工した塗工膜の分光透過率曲線において、前記色素1は波長395nm以上450nm未満の範囲に吸収極大波長を有する。
(ii-2)ガラス基板上に、前記色素2を前記樹脂に溶解して塗工した塗工膜の分光透過率曲線において、前記色素2は波長450nm以上540nm未満の範囲に吸収極大波長を有する。
(ii-3)ガラス基板上に、前記色素3を前記樹脂に溶解して塗工した塗工膜の分光透過率曲線において、前記色素3は波長540nm以上600nm未満の範囲に吸収極大波長を有する。
(ii-4)ガラス基板上に、前記色素4を前記樹脂に溶解して塗工した塗工膜の分光透過率曲線において、前記色素4は波長600nm以上720nm未満の範囲に吸収極大波長を有する。
【0046】
上記(ii-1)~(ii-4)が全て満たされることで、本フィルタは、RGB帯域の光をより選択的に透過できる。
【0047】
(ii-1)において、色素1は、好ましくは波長395nm以上430nm未満の範囲に吸収極大波長を有し、より好ましくは波長395nm以上420nm未満の範囲に吸収極大波長を有する。
(ii-2)において、色素2は、好ましくは波長460nm以上530nm未満の範囲に吸収極大波長を有し、より好ましくは波長470nm以上520nm未満の範囲に吸収極大波長を有する。
(ii-3)において、色素3は、好ましくは波長550nm以上590nm未満の範囲に吸収極大波長を有し、より好ましくは波長560nm以上580nm未満の範囲に吸収極大波長を有する。
(ii-4)において、色素4は、好ましくは波長640nm以上710nm未満の範囲に吸収極大波長を有し、より好ましくは波長660nm以上710nm未満の範囲に吸収極大波長を有する。
【0048】
樹脂層が、色素1、色素2、色素3、色素4及び樹脂を有するとき、樹脂層は、下記(iii-1)~(iii-3)を全て満たすことが好ましい。
【0049】
(iii-1)波長430nm以上490nm未満の範囲に極大値10を有し、
波長490nm以上590nm未満の範囲に極大値11を有し、
波長590nm以上650nm未満の範囲に極大値12を有する。
(iii-2)波長400nm以上440nm未満の範囲に極小値10又は内部透過率が1%以下になる波長範囲を有し、
波長440nm以上540nm未満の範囲に極小値11又は内部透過率が1%以下になる波長範囲を有し、
波長540nm以上640nm未満の範囲に極小値12又は内部透過率が1%以下になる波長範囲を有し、
波長640nm以上700nm未満の範囲に極小値13又は内部透過率が1%以下になる波長範囲を有する。
(iii-3)極大値10、極大値11及び極大値12のなかの最大値が40%以上である。
【0050】
上記(iii-1)~(iii-3)が全て満たされることで、本フィルタは、RGB帯域の光をより選択的に透過できる。
【0051】
(iii-1)において、
極大値10の波長範囲は、好ましくは430nm以上480nm未満、より好ましくは430nm以上455nm未満である。
極大値11の波長範囲は、好ましくは490nm以上550nm未満、より好ましくは500nm以上540nm未満である。
極大値12の波長範囲は、好ましくは590nm以上640nm未満、より好ましくは590nm以上630nm未満である。
【0052】
(iii-2)において、
極小値10の波長範囲又は内部透過率が1%以下になる波長範囲は、好ましくは400nm以上430nm未満、より好ましくは410nm以上420nm未満である。
極小値11の波長範囲又は内部透過率が1%以下になる波長範囲は、好ましくは450nm以上530nm未満、より好ましくは460nm以上520nm未満である。
極小値12の波長範囲又は内部透過率が1%以下になる波長範囲は、好ましくは550nm以上630nm未満、より好ましくは560nm以上600nm未満である。
【0053】
(iii-3)において、
極大値10、極大値11及び極大値12のなかの最大値は、好ましくは55%以上、より好ましくは60%以上である。
【0054】
(色素1)
色素1は、下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0055】
【0056】
式(1)中、R1は、置換基を有してもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基を表す。
置換基としては、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、シアノ基、ジアルキルアミノ基または塩素原子が好ましい。上記アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基及びジアルキルアミノ基の炭素数は1~6が好ましい。
【0057】
置換基を有しないR1として具体的には、水素原子の一部が脂肪族環、芳香族環もしくはアルケニル基で置換されていてもよい炭素数1~12のアルキル基、水素原子の一部が芳香族環、アルキル基もしくはアルケニル基で置換されていてもよい炭素数3~8のシクロアルキル基、及び水素原子の一部が脂肪族環、アルキル基もしくはアルケニル基で置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基が好ましい。
【0058】
R1が非置換のアルキル基である場合、そのアルキル基は直鎖状であっても、分岐状であってもよく、その炭素数は1~6がより好ましい。
【0059】
R1が水素原子の一部が脂肪族環、芳香族環もしくはアルケニル基で置換された炭素数1~12のアルキル基である場合、炭素数3~6のシクロアルキル基を有する炭素数1~4のアルキル基、フェニル基で置換された炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、フェニル基で置換された炭素数1または2のアルキル基が特に好ましい。なお、アルケニル基で置換されたアルキル基とは、全体としてアルケニル基であるが1、2位間に不飽和結合を有しないものを意味し、例えばアリル基や3-ブテニル基等をいう。
【0060】
好ましいR1は、水素原子の一部がシクロアルキル基またはフェニル基で置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基である。特に好ましいQ1は炭素数1~6のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。
【0061】
式(1)中、R2~R5は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、または炭素数1~10のアルコキシ基を表す。
【0062】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0063】
アルキル基及びアルコキシ基の炭素数は1~6が好ましく、1~4がより好ましい。
【0064】
R2及びR3は、少なくとも一方が、アルキル基であることが好ましく、いずれもアルキル基であることがより好ましい。R2及びR3がアルキル基でない場合は、水素原子がより好ましい。R2及びR3は、いずれも炭素数1~6のアルキル基が特に好ましい。
【0065】
R4及びR5は、少なくとも一方が、水素原子が好ましく、いずれも水素原子がより好ましい。R4またはR5が水素原子でない場合は、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。
【0066】
式(1)中、Yは、R6及びR7で置換されたメチレン基または酸素原子を表す。
式(1)中、R6及びR7は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、または炭素数1~10のアルコキシ基を表す。
【0067】
式(1)中、Xは、下記式(X1)~(X5)のいずれかを表す。
【0068】
【0069】
式(X1)~(X4)中、R8及びR9は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基を表す。
R10~R19は、それぞれ独立に、水素原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基を表す。
【0070】
R8~R19の置換基としては、R1における置換基と同様の置換基が挙げられ、好ましい態様も同様である。R8~R19が置換基を有しない炭化水素基である場合、置換基を有しないR1と同様の態様が挙げられる。
【0071】
式(X1)において、R8及びR9は異なる基であってもよいが、同一の基が好ましい。R8及びR9が非置換のアルキル基である場合、直鎖状であっても、分岐状であってもよく、炭素数は1~6がより好ましい。
【0072】
好ましいR8及びR9は、いずれも、水素原子の一部がシクロアルキル基またはフェニル基で置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基である。特に好ましいR8及びR9は、いずれも、炭素数1~6のアルキル基であり、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。
【0073】
式(X2)において、R10とR11は、いずれも、炭素数1~6のアルキル基がより好ましく、それらは同一のアルキル基が特に好ましい。
【0074】
式(X3)において、R12及びR15は、いずれも水素原子であるか、置換基を有しない炭素数1~6のアルキル基が好ましい。同じ炭素原子に結合した2つの基であるR13とR14は、いずれも水素原子であるか、いずれも炭素数1~6のアルキル基が好ましい。
【0075】
式(X4)における、同じ炭素原子に結合した2つの基R16とR17及びR18とR19は、いずれも水素原子であるか、いずれも炭素数1~6のアルキル基が好ましい。
【0076】
化合物(1)としては、より具体的には、各骨格に結合する原子または基が、以下の表に示される原子または基である化合物が挙げられる。
【0077】
【0078】
(色素3)
色素3は、下記式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【0079】
【0080】
式(3)中、R101及びR102は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、または置換基を有していてもよいフェニル基を表す。
nは各々独立に0~3の整数を表す。
【0081】
アルキル基としては、直鎖状でも分岐状でもよく、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、t-ブチル基等の無置換のアルキル基がより好ましい。
【0082】
アルケニル基としては、直鎖状でも分岐状でもよく、炭素数1~6のアルケニル基が好ましく、ビニル基、アリル基、3-ブテン-1-イル基等の無置換のアルケニル基がより好ましい。
【0083】
アルコキシカルボニル基としては、上記のようなアルキル基を有する基が好ましい。
【0084】
アルキル基、アルケニル基、アルコキシカルボニル基の置換基としては特に限定されないが、例えば上記のようなアルキル基を有するアルコキシ基、塩素、フッ素等のハロゲン原子が挙げられる。
【0085】
フェニル基の置換基としては特に限定されないが、上記のようなアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子が挙げられ、好ましくは無置換のフェニル基である。
【0086】
式(3)中、nは各々独立に0~3の整数を表す。nは各々独立に2~3が好ましい。
【0087】
また、化合物(3)は、2個のピロール環を有する基は同じであっても、異なっていてもよいが、好ましくは2個のピロール環を有する基が同一であり、左右対称のスクアリリウム系化合物であることが好ましい。
【0088】
化合物(3)としては、より具体的には、各骨格に結合する原子または基が、以下の表に示される原子または基である化合物が挙げられる。
【0089】
【0090】
(色素4)
色素4は、下記式(4)で表される化合物であることが好ましい。
【0091】
【0092】
式(4)中、R21及びR22は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基もしくはアリル基、または置換基を有していてもよい炭素数6~11のアリール基もしくはアルアリール基を示す。
【0093】
R23及びR25は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~6のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。
【0094】
R24及びR26は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1~6のアルキル基もしくはアルコキシ基、炭素数1~10のアシルオキシ基、-NR27R28を示す。
【0095】
R27及びR28は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、-C(=O)-R29、-NHR30、-SO2-R30、または、下記式(S)で示される基を示す。
【0096】
R29は、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基もしくは炭素数6~11のアリール基、または置換基を有していてもよく、炭素原子間に酸素原子を有してもよい炭素数7~18のアルアリール基を示す。
【0097】
R30は、1つ以上の水素原子が、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、またはシアノ基で置換されていてもよく、炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよい炭素数1~25の炭化水素基を示す。
【0098】
【0099】
式(S)中、R41及びR42は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~10のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。
【0100】
kは2または3を表す。
【0101】
R21とR22、R22とR25、及びR21とR23は、それぞれ、互いに連結して窒素原子と共に員数が5または6の複素環A、複素環B、及び複素環Cを形成してもよい。
【0102】
複素環Aが形成される場合のR21とR22は、これらが結合した2価の基-Q-として、水素原子が、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~10のアリール基または置換基を有していてもよい炭素数1~10のアシルオキシ基で置換されてもよいアルキレン基、またはアルキレンオキシ基を示す。
【0103】
複素環Bが形成される場合のR22とR25、及び複素環Cが形成される場合のR21とR23は、これらが結合したそれぞれ2価の基-X1-Y1-及びX2-Y2-(窒素に結合する側がX1及びX2)として、X1及びX2がそれぞれ下記式(1x)または(2x)で示される基であり、Y1及びY2がそれぞれ下記式(1y)~(5y)から選ばれるいずれかで示される基である。
【0104】
X1及びX2が、それぞれ下記式(2x)で示される基の場合、Y1及びY2はそれぞれ単結合であってもよく、その場合、炭素原子間に酸素原子を有してもよい。
【0105】
【0106】
式(1x)中、4個のZは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、炭素数1~6のアルキル基もしくはアルコキシ基、または-NR38R39を示す。
【0107】
R31~R36は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を示す。
【0108】
R37は、炭素数1~6のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を示す。
【0109】
R38及びR39は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を示す。
【0110】
R27、R28、R29、R31~R37、複素環を形成していない場合のR21~R23、及びR25は、これらのうちの他のいずれかと互いに結合して5員環または6員環を形成してもよい。R31とR36、R31とR37は直接結合してもよい。
【0111】
化合物(4)としては、例えば、可視光透過率を高くできる観点から下記式(4-1)で示される化合物が好ましい。
【0112】
【0113】
式(4-1)中の記号は、式(4)における同記号の各規定と同じであり、好ましい態様も同様である。
【0114】
化合物(4-1)において、X1としては、基(2x)が好ましく、Y1としては、単結合または基(1y)が好ましい。この場合、R31~R36としては、水素原子または炭素数1~3のアルキル基が好ましく、水素原子またはメチル基がより好ましい。なお、-Y1-X1-として、具体的には、式(11-1)~(12-3)で示される2価の有機基が挙げられる。
【0115】
-C(CH3)2-CH(CH3)- …(11-1)
-C(CH3)2-CH2- …(11-2)
-C(CH3)2-CH(C2H5)- …(11-3)
-C(CH3)2-C(CH3)(nC3H7)- …(11-4)
-C(CH3)2-CH2-CH2- …(12-1)
-C(CH3)2-CH2-CH(CH3)- …(12-2)
-C(CH3)2-CH(CH3)-CH2- …(12-3)
【0116】
また、化合物(4-1)において、R21は、溶解性、耐熱性、さらに分光透過率曲線における可視域と近赤外域の境界付近の変化の急峻性の観点から、それぞれ独立して、下記式(4-11)または式(4-12)で示される基がより好ましい。
【0117】
【0118】
式(4-11)及び式(4-12)中、R71~R75は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~4のアルキル基を示す。
【0119】
化合物(4-1)において、R24は可視光の透過率、特に波長430~550nmの光の透過率を高める観点から、-NH-SO2-R30が好ましい。
【0120】
化合物(4-1)において、R24が-NH-SO2-R30の化合物を下記式(4-1-A)に示す。
【0121】
【0122】
化合物(4-1-A)におけるR23及びR26は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~6のアルキル基もしくは炭素数1~6のアルコキシ基が好ましく、いずれも水素原子がより好ましい。
【0123】
化合物(4-1-A)において、R30は、耐光性の点から、それぞれ独立して、分岐を有してもよい炭素数1~12のアルキル基、分岐を有してもよい炭素数1~12のアルコキシ基、または不飽和の環構造を有する炭素数6~16の炭化水素基が好ましい。不飽和の環構造としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、フラン、ベンゾフラン等が挙げられる。R30は、それぞれ独立して、分岐を有してもよい炭素数1~12のアルキル基もしくは分岐を有してもよい炭素数1~12のアルコキシ基がより好ましい。なお、R30を示す各基において、水素原子の一部または全部がハロゲン原子、特にはフッ素原子に置換されていてもよい。
【0124】
化合物(4)としては、より具体的には、式(4-1-A)における各骨格に結合する原子または基が、以下の表に示される原子または基である化合物が挙げられる。
【0125】
【0126】
(その他の色素)
樹脂層は、その他の色素としてUV色素をさらに含有できる。
UV色素としては、例えば、メロシアニン系、オキサゾール系、シアニン系、ナフタルイミド系、オキサジアゾール系、オキサジン系、オキサゾリジン系、ナフタル酸系、スチリル系、アントラセン系、環状カルボニル系、トリアゾール系等の色素が挙げられる。
【0127】
(各成分の含有量)
基材における色素1の含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.1~5質量部である。
基材における色素2の含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.1~5質量部である。
基材における色素3の含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.1~5質量部である。
基材における色素4の含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.1~5質量部である。
基材における全色素の含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは5~15質量部である。
【0128】
(基材構成)
基材は、単層構造であっても、複層構造であってもよい。また、基材の材質としては400~700nmの可視光を透過する透明性材料であれば有機材料でも無機材料でもよく、特に制限されない。
【0129】
基材が単層構造の場合、基材は、色素A及び樹脂を含む樹脂基材であることが好ましい。また、樹脂基材は、UV色素をさらに含有できる。
基材が複層構造の場合、基材は、支持体の少なくとも一方の主面に、色素A及び樹脂を含有する樹脂層を積層した構造であることが好ましい。このとき支持体は、上記透明樹脂又は透明性無機材料からなることが好ましい。また、樹脂層は、UV色素をさらに含有できる。
【0130】
透明性無機材料としては、ガラスや結晶材料が好ましい。
ガラスとしては、フツリン酸塩系ガラスやリン酸塩系ガラス等に銅イオンを含む吸収型のガラス(近赤外線吸収ガラス)、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等が挙げられる。ガラスとしては、目的に応じて吸収ガラスが好ましく、赤外光を吸収する観点ではリン酸塩系ガラス、フツリン酸塩系ガラスが好ましい。赤色光(600~700nm)を多く取り込みたい際は、アルカリガラス、無アルカリガラス、石英ガラスが好ましい。なお、「リン酸塩系ガラス」は、ガラスの骨格の一部がSiO2で構成されるケイリン酸塩ガラスも含む。
【0131】
ガラスとしては、ガラス転移点以下の温度で、イオン交換により、ガラス板主面に存在するイオン半径が小さいアルカリ金属イオン(例えば、Liイオン、Naイオン)を、イオン半径のより大きいアルカリイオン(例えば、Liイオンに対してはNaイオンまたはKイオンであり、Naイオンに対してはKイオンである。)に交換して得られる化学強化ガラスを使用してもよい。
【0132】
結晶材料としては、水晶、ニオブ酸リチウム、サファイア等の複屈折性結晶が挙げられる。
【0133】
支持体としては、光学特性、機械特性等の長期にわたる信頼性に係る形状安定性の観点、フィルタ製造時のハンドリング性等から、無機材料が好ましく、特にガラス、サファイアが好ましい。
【0134】
基材が、透明樹脂、色素Aを含む単層構造の樹脂基材である場合、例えば、以下の方法で製造できる。
【0135】
樹脂基材は、透明樹脂、または透明樹脂と任意成分の混合物を溶融押出してフィルム状に成形して製造できる。また、透明樹脂及び必要に応じて任意成分を溶媒に溶解させ、塗工液を調製し、これを樹脂基材作製用の剥離性の基材に所望の厚さに塗工し乾燥させ、さらに、必要に応じて硬化させた後、樹脂基材を基材から剥離して、製造できる。
【0136】
塗工液に用いる溶媒は、透明樹脂を安定に分散できる分散媒または溶解できる溶媒であればよい。塗工液は、微小な泡によるボイド、異物等の付着による凹み、乾燥工程でのはじき等の改善のため界面活性剤を含んでもよい。さらに、塗工液の塗工には、例えば、浸漬コーティング法、キャストコーティング法、ダイコート法またはスピンコート法等を使用できる。
【0137】
基材が、支持体と、支持体の少なくとも一方の主面に積層した色素Aを含有する樹脂層とを有する複層構造である場合、樹脂層の厚さは、0.3~15μmが好ましい。樹脂層が複数層からなる場合、樹脂層の合計の厚さは、0.3~15μmが好ましい。
【0138】
樹脂層は、色素Aと、樹脂または樹脂の原料成分と、必要に応じて配合される各成分とを、溶媒に溶解または分散させて塗工液を調製し、これを基材に塗工し乾燥させ、さらに必要に応じて硬化させて形成できる。基材は、本フィルタに含まれる支持体でもよいし、樹脂層を形成する際にのみ使用する剥離性の基材でもよい。また、溶媒は、安定に分散できる分散媒または溶解できる溶媒であればよい。
【0139】
また、塗工液は、微小な泡によるボイド、異物等の付着による凹み、乾燥工程でのはじき等の改善のため界面活性剤を含んでもよい。さらに、塗工液の塗工には、例えば、浸漬コーティング法、キャストコーティング法、またはスピンコート法等を使用できる。上記塗工液を基材上に塗工後、乾燥させることにより樹脂層が形成される。また、塗工液が透明樹脂の原料成分を含有する場合、さらに熱硬化、光硬化等の硬化処理を行う。
【0140】
また、樹脂層は、押出成形によりフィルム状に製造可能でもあり、このフィルムを他の部材に積層し熱圧着等により一体化させてもよい。例えば、このフィルムを支持体上に貼着してもよい。
【0141】
本フィルタは、樹脂層を1層有してもよく、2層以上有してもよい。本フィルタが樹脂層を2層以上有する場合、各層は同じ構成であっても異なってもよい。
【0142】
基材の形状は特に限定されず、ブロック状、板状、フィルム状でもよい。
【0143】
また、基材が単層構造の場合、基材の厚さは、本フィルタの低背化の観点から好ましくは500μm以下、より好ましくは400μm以下である。また、基材が単層構造の場合、基材の厚さは、プロセス上のハンドリングの観点から好ましくは30μm以上、より好ましくは50μm以上である。
【0144】
基材が複層構造の場合、基材の厚さは、本フィルタの低背化の観点から好ましくは500μm以下、より好ましくは400μm以下である。また、基材が複層構造の場合、基材の厚さは、プロセス上のハンドリングの観点から好ましくは30μm以上、より好ましくは50μm以上である。
【0145】
<誘電体多層膜>
本フィルタは、誘電体多層膜を有する。誘電体多層膜は、基材の少なくとも一方の主面側に最外層として積層される。
【0146】
誘電体多層膜が、基材の両方の主面側に最外層として積層される場合、誘電体多層膜の少なくとも一方は近赤外線反射層(以下、NIR反射層とも記載する。)として設計されることが好ましい。誘電体多層膜の他方はNIR反射層、近赤外域以外の反射領域を有する反射層、または反射防止層として設計されることが好ましい。
【0147】
なお、基材が単層構造の場合、反りを防止する観点から、基材の両面にNIR反射層を形成することが好ましい。
【0148】
NIR反射層は、近赤外域の光を遮蔽するように設計された誘電体多層膜である。NIR反射層は、例えば、可視光を透過し、吸収層の遮光域以外の近赤外域の光を主に反射する波長選択性を有する。なお、NIR反射層の反射領域は、吸収層の近赤外域における遮光領域を含んでもよい。NIR反射層は、NIR反射特性に限らず、近赤外域以外の波長域の光、例えば、近紫外域をさらに遮断する仕様に適宜設計してよい。
【0149】
NIR反射層は、例えば、低屈折率の誘電体膜(低屈折率膜)と高屈折率の誘電体膜(高屈折率膜)とを交互に積層した誘電体多層膜から構成される。高屈折率膜は、好ましくは、屈折率が1.6以上であり、より好ましくは2.2~2.5である。高屈折率膜の材料としては、例えばTa2O5、TiO2、Nb2O5が挙げられる。これらのうち、成膜性、屈折率等における再現性、安定性等の点から、TiO2が好ましい。
【0150】
一方、低屈折率膜は、好ましくは、屈折率が1.6未満であり、より好ましくは1.45以上1.55未満である。低屈折率膜の材料としては、例えばSiO2、SiOxNy等が挙げられる。成膜性における再現性、安定性、経済性等の点から、SiO2が好ましい。
【0151】
さらに、NIR反射層は、透過域と遮光域の境界波長領域で透過率が急峻に変化することが好ましい。この目的のためには、反射層を構成する誘電体多層膜の合計積層数は、15層以上が好ましく、25層以上がより好ましく、30層以上がさらに好ましい。ただし、合計積層数が多くなると、反り等が発生したり、膜厚が増加したりするため、合計積層数は100層以下が好ましく、75層以下がより好ましく、60層以下がより一層好ましい。また、反射層の膜厚は、全体として2~10μmが好ましい。
【0152】
誘電体多層膜の合計積層数や膜厚が上記範囲内であれば、NIR反射層は小型化の要件を満たし、高い生産性を維持しながら入射角依存性を抑制できる。また、誘電体多層膜の形成には、例えば、CVD法、スパッタリング法、真空蒸着法等の真空成膜プロセスや、スプレー法、ディップ法等の湿式成膜プロセス等を使用できる。
【0153】
NIR反射層は、1層(1群の誘電体多層膜)で所定の光学特性を与えたり、2層で所定の光学特性を与えたりしてもよい。本フィルタがNIR反射層を2層以上有する場合、各反射層は同じ構成でも異なる構成でもよい。本フィルタがNIR反射層を2層以上有する場合、通常、反射帯域の異なる複数のNIR反射層で構成される。2層のNIR反射層を設ける場合、一方を、近赤外域のうち短波長帯の光を遮蔽する近赤外線反射層とし、他方を、該近赤外域の長波長帯及び近紫外域の両領域の光を遮蔽する近赤外・近紫外反射層としてもよい。
【0154】
反射防止層としては、誘電体多層膜や中間屈折率媒体、屈折率が漸次的に変化するモスアイ構造などが挙げられる。中でも光学的効率、生産性の観点から誘電体多層膜が好ましい。反射防止層は、反射層と同様に誘電体膜を交互に積層して得られる。
【0155】
また、誘電体多層膜は、入射角5°の分光透過率曲線及び30°の分光透過率曲線において、下記(vi-1)~(vi-7)を全て満たすことが好ましい。
(vi-1)波長430nm以上490nm未満の光の平均反射率が30%以下である。
(vi-2)波長490nm以上590nm未満の光の平均反射率が30%以下である。
(vi-3)波長590nm以上650nm未満の光の平均反射率が30%以下である。
(vi-4)波長430nm以上490nm未満の光の平均透過率が70%以上である。
(vi-5)波長490nm以上590nm未満の光の平均透過率が80%以上である。
(vi-6)波長590nm以上650nm未満の光の平均透過率が80%以上である。
(vi-7)波長700nm以上1000nm未満の光の平均透過率が20%以下である。
【0156】
誘電体多層膜が上記(vi-1)~(vi-7)を満たすことで、リップルと呼ばれる分光特性上の強度変動を抑制できる。
【0157】
(vi-1)において、
平均反射率は、好ましくは28%以下、より好ましくは25%以下である。
(vi-2)において、
平均反射率は、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下である。
(vi-3)において、
平均反射率は、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下である。
【0158】
(vi-4)において、
平均透過率は、好ましくは72%以上、より好ましくは74%以上である。
(vi-5)において、
平均透過率は、好ましくは85%以上、より好ましくは87%以上である。
(vi-6)において、
平均透過率は、好ましくは85%以上、より好ましくは87%以上である。
【0159】
(vi-7)において、
平均透過率は、好ましくは18%以下、より好ましくは15%以下である。
【0160】
[撮像装置]
本フィルタは、例えば、デジタルスチルカメラ等の撮像装置に使用できる。
本フィルタを撮像装置に使用した場合に、色再現性に優れる。
【0161】
当該撮像装置は、固体撮像素子と、撮像レンズと、本フィルタとを備える。本フィルタは、例えば、撮像レンズと固体撮像素子との間に配置されたり、撮像装置の固体撮像素子、撮像レンズ等に粘着剤層を介して直接貼着されたりして使用できる。
【実施例0162】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
【0163】
[色素化合物]
<色素化合物1-1>
山田化学社製「DA115」を色素化合物1-1とした。
【0164】
<色素化合物1-2>
日本国特許第6504176号公報を参考に、以下の色素化合物1-2を合成した。
【0165】
【0166】
<色素化合物1-3>
日本国特許第6504176号公報を参考に、以下の色素化合物1-3を合成した。
【0167】
【0168】
<色素化合物1-4>
山田化学社製「DAA108」を色素化合物1-4とした。
【0169】
<色素化合物1-5>
山田化学社製「FDB005」を色素化合物1-5とした。
【0170】
<色素化合物2-1>
山田化学社製「FDB005」を色素化合物2-1とした。
【0171】
<色素化合物2-2>
山田化学社製「DAA108」を色素化合物2-2とした。
【0172】
<色素化合物2-3>
山田化学社製「FDB006」を色素化合物2-3とした。
【0173】
<色素化合物2-4>
山田化学社製「FDG002」を色素化合物2-4とした。
【0174】
<色素化合物2-5>
山田化学社製「FDB19」を色素化合物2-5とした。
【0175】
<色素化合物2-6>
山田化学社製「DA115」を色素化合物2-6とした。
【0176】
<色素化合物3-1>
山田化学社製「IMM2」を色素化合物3-1とした。
【0177】
<色素化合物3-2>
山田化学社製「FDG003」を色素化合物3-2とした。
【0178】
<色素化合物3-3>
日本国特開2001-183522号公報を参考に、以下の色素化合物3-3を合成した。
【0179】
【0180】
<色素化合物4-1>
山田化学社製「FDR003」を色素化合物4-1とした。
【0181】
<色素化合物4-2>
日本国特許第6197940号公報を参考に、以下の色素化合物4-2を合成した。
【0182】
【0183】
[試験例1]
<試験例1a-1>
色素化合物1-1とシクロヘキサノンで希釈したC-3G30G(三菱ガス化学製、ポリイミドワニス)とを混合させ、色素化合物1-1をポリイミド樹脂溶液とを十分に溶解させて、樹脂溶液(色素化合物含有量:4.5質量%)を得た。
【0184】
得られた樹脂溶液をshotto製D263(アルカリガラス)にスピンコートを用いて塗工して、十分に加熱して有機溶媒を除去し、厚み1.0μmの塗工膜を作製した。
【0185】
得られた塗工膜を日立ハイテクサイエンス製紫外可視近赤外分光光度計「UH4150」で、波長350nm~1200nmの範囲で入射方向に対して0°及び5°の入射方向で透過分光を測定した。
【0186】
得られた透過率、反射率のデータから波長350nm~1200nmの内部透過率を下記式に基づき計算した。
内部透過率={T0deg/(100-R5deg)}×100
T0degは0°の実測透過率を意味し、R5degは5°の反射率を意味する。
【0187】
吸収極大波長における内部透過率が10%となるように補正した結果を表4に示す。
【0188】
<試験例1a-2~1a-8>
色素化合物の種類、色素化合物の含有量、樹脂の種類を表4に示すとおりとした以外は、試験例1a-1と同様の操作を行った。結果を表4に示す。
【0189】
なお、各用語の意味は下記のとおりである。
C-3G30G:三菱ガス化学製、ポリイミドワニス
F4520:JSR製、シクロオレフィン樹脂
B-OKP2:大阪ガスケミカル社製、ポリエステル樹脂
IR80a:波長395nm以上450nm未満の範囲において内部透過率が80%となる最も長い波長
IR80b:波長395nm以上450nm未満の範囲において内部透過率が80%となる最も短い波長
IR10:波長395nm以上450nm未満の範囲において内部透過率が10%となる波長
λMax:吸収極大波長
【0190】
【0191】
<試験例1b-1~1b-11>
色素化合物の種類、色素化合物の含有量、樹脂の種類、塗工膜の厚みを表5に示すとおりとした以外は、試験例1a-1と同様の操作を行った。結果を表5に示す。
【0192】
なお、各用語の意味は下記のとおりである。
IR80a:波長450nm以上540nm未満の範囲において内部透過率が80%となる最も長い波長
IR80b:波長450nm以上540nm未満の範囲において内部透過率が80%となる最も短い波長
IR10:波長450nm以上540nm未満の範囲において内部透過率が10%となる波長
【0193】
【0194】
<試験例1c-1~1c-5>
色素化合物の種類、色素化合物の含有量、樹脂の種類、塗工膜の厚みを表6に示すとおりとした以外は、試験例1a-1と同様の操作を行った。結果を表6に示す。
【0195】
なお、各用語の意味は下記のとおりである。
IR80a:波長540nm以上600nm未満の範囲において内部透過率が80%となる最も長い波長
IR80b:波長540nm以上600nm未満の範囲において内部透過率が80%となる最も短い波長
IR10:波長540nm以上600nm未満の範囲において内部透過率が10%となる波長
【0196】
【0197】
<試験例1d-1~1d-2>
色素化合物の種類、色素化合物の含有量、樹脂の種類、塗工膜の厚みを表7に示すとおりとした以外は、試験例1a-1と同様の操作を行った。結果を表7に示す。
【0198】
なお、各用語の意味は下記のとおりである。
IR80a:波長600nm以上720nm未満の範囲において内部透過率が80%となる最も長い波長
IR80b:波長600nm以上720nm未満の範囲において内部透過率が80%となる最も短い波長
IR10:波長600nm以上720nm未満の範囲において内部透過率が10%となる波長
【0199】
【0200】
[試験例2]
<試験例2-1>
色素化合物1-2(2.55質量%)、色素化合物2-5(3.56質量%)、色素化合物3-3(3.34質量%)、色素化合物4-2(4.06質量%)、シクロヘキサノンで希釈したC-3G30G(三菱ガス化学製、ポリイミドワニス)を混合させ、色素化合物とポリイミド樹脂溶液とを十分に溶解させて、樹脂溶液を得た。
【0201】
得られた樹脂溶液をshotto製D263(アルカリガラス)にスピンコートを用いて塗工して、十分に加熱して有機溶媒を除去し、厚み2μmの塗工膜を作製した。
【0202】
得られた塗工膜を日立ハイテクサイエンス製紫外可視近赤外分光光度計「UH4150」で波長350nm~1200nmの範囲で入射方向に対して0°の入射方向で透過分光を測定した。結果を表8に示す。
【0203】
<試験例2-2~2-4>
色素化合物の種類及び含有量を表8に示すとおりとした以外は、試験例2-1と同様の操作を行った。結果を表8に示す。
【0204】
【0205】
[試験例3]
shotto製D263(アルカリガラス)に、蒸着によりSiO2及びTiO2から構成される48層の誘電体多層膜を成膜した。得られた誘電体多層膜を日立ハイテクサイエンス製紫外可視近赤外分光光度計「UH4150」で、350nm~1200nmの波長範囲で入射方向に対して5°及び30°の入射方向で透過分光を測定した。結果を表9に示す。
【0206】
【0207】
試験例3より、得られた誘電体多層膜は可視帯域の透過率が十分に高く、可視帯域の反射透過率が低いことが分かった。
【0208】
[試験例4]
<試験例4-1(実施例)>
色素化合物1-2(2質量%)、色素化合物2-5(2.8質量%)、色素化合物3-3(2.5質量%)、色素化合物4-2(4.5質量%)、シクロヘキサノンで希釈したC-3G30G(三菱ガス化学製、ポリイミドワニス)を混合させ、色素化合物とポリイミド樹脂溶液とを十分に溶解させて、樹脂溶液を得た。
【0209】
また、shotto製D263(アルカリガラス、厚さ0.2mm)に試験例3で得られた誘電体多層膜を蒸着により成膜した。
【0210】
誘電体多層膜が成膜されたD263(アルカリガラス)にスピンコートを用いて得られた樹脂溶液を塗工して、十分に加熱して有機溶媒を除去することで厚み3μmの塗工膜を作製した。得られた塗工膜の上にSiO2及びTiO2からなる7層の反射防止膜を蒸着により成膜した。
【0211】
反射防止膜を蒸着した塗工膜を日立ハイテクサイエンス製紫外可視近赤外分光光度計「UH4150」で波長350nm~1200nmの範囲で入射方向に対して0°及び30°の入射方向で透過分光を測定した。結果を表10に示す。
【0212】
【0213】
<試験例4-2(実施例)>
D263(アルカリガラス)を、赤外線をカットするフツリン酸ガラス(AGC社製)に変更した以外は、試験例4-1と同様の操作を行った。結果を表11及び
図2に示す。
【0214】
【0215】
<試験例4-3>
shotto製D263(アルカリガラス、厚さ0.2mm)に、青色帯域の光、緑色帯域の光、赤色帯域の光が透過する、SiO2及びTiO2から構成される34層の誘電体多層膜を蒸着により成膜した。
【0216】
得られた膜を日立ハイテクサイエンス製紫外可視近赤外分光光度計「UH4150」で波長350nm~1200nmの範囲で入射方向に対して0°及び30°の入射方向で透過分光を測定した。結果を表12に示す。
【0217】
【0218】
試験例4より、実施例の塗工膜(樹脂層)は、青色帯域の透過率、緑色帯域の透過率、赤色帯域の透過率が十分に高いことが分かった。
【0219】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2020年8月14日出願の日本特許出願(特願2020-137088)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。