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特開2025-1786端末装置、遠隔制御システム、および、遠隔制御方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001786
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】端末装置、遠隔制御システム、および、遠隔制御方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 65/18 20060101AFI20241226BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20241226BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
B62D65/18 Z
H04Q9/00 301B
G05B19/418 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101461
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩堀 健人
【テーマコード(参考)】
3C100
3D114
5K048
【Fターム(参考)】
3C100AA22
3C100AA29
3C100BB12
3C100BB15
3C100BB33
3C100CC02
3C100CC14
3C100EE01
3D114AA06
3D114BA01
3D114BA08
3D114BA16
3D114CA05
3D114FA16
3D114GA11
3D114JA04
5K048AA05
5K048BA42
5K048BA48
5K048DB01
5K048DC01
5K048EB06
5K048GC03
5K048HA01
5K048HA02
5K048HA03
(57)【要約】
【課題】製造途中の車両を遠隔制御により走行させることができる技術を提供する。
【解決手段】車両の走行動作を遠隔制御するために用いられる端末装置において、車両は、車両を製造するために複数の製造工程が実行される工場内を遠隔制御によって走行し、車両には、遠隔制御に必要な複数の機能を実現する機能部が、複数の製造工程のいずれかにおいて搭載され、端末装置は、車両に対して実行された製造工程を示す工程情報と、機能部との通信が可能であるか否かを示す通信可否情報と、の少なくとも一方の情報を用いて特定される補完対象機能であって、遠隔制御に必要な複数の機能のうち、車両に搭載された機能部によって実現することができない機能である補完対象機能を補完する補完部と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行動作を遠隔制御するために用いられる端末装置であって、
前記車両は、前記車両を製造するために複数の製造工程が実行される工場内を遠隔制御によって走行し、
前記車両には、前記遠隔制御に必要な複数の機能を実現する機能部が、前記複数の製造工程のいずれかにおいて搭載され、
前記端末装置は、
前記車両に対して実行された前記製造工程を示す工程情報と、前記機能部との通信が可能であるか否かを示す通信可否情報と、の少なくとも一方の情報を用いて特定される補完対象機能であって、前記遠隔制御に必要な前記複数の機能のうち、前記車両に搭載された前記機能部によって実現することができない前記機能である補完対象機能を補完する補完部と、を備える、端末装置。
【請求項2】
請求項1に記載の端末装置であって、さらに、
前記工程情報を取得する端末取得部と、
取得した前記工程情報と、前記複数の製造工程ごとに必要な前記補完対象機能を示す工程データベースと、を用いて、取得した前記工程情報によって特定される前記製造工程以外の前記製造工程に関連付けられた前記補完対象機能を特定することで、前記車両に対して実行された前記製造工程に応じた前記補完対象機能を特定する特定部と、を備える、端末装置。
【請求項3】
請求項1に記載の端末装置であって、さらに、
前記通信可否情報を取得する端末取得部と、
取得した前記通信可否情報を用いて、前記補完対象機能を特定する特定部と、を備える、端末装置。
【請求項4】
車両の走行動作を遠隔制御する遠隔制御システムであって、
前記車両と、
前記車両とは異なる場所に設置された外部装置と、
請求項1に記載の端末装置と、を備え、
前記車両には、前記遠隔制御に必要な複数の機能を実現する機能部が、前記複数の製造工程のいずれかにおいて搭載され、
前記外部装置は、
前記車両に対して実行された前記製造工程を示す工程情報を取得する装置取得部と、
取得した前記工程情報と、前記複数の製造工程ごとに必要な前記補完対象機能を示す工程データベースと、を用いて、取得した前記工程情報によって特定される前記製造工程以外の前記製造工程に関連付けられた前記補完対象機能を特定することで、前記車両に対して実行された前記製造工程に応じた前記補完対象機能を示す機能情報を生成する生成部と、
前記機能情報を前記車両に送信する送信部と、を備える、遠隔制御システム。
【請求項5】
車両の走行動作を遠隔制御する遠隔制御方法であって、
前記車両は、前記車両を製造するために複数の製造工程が実行される工場内を遠隔制御によって走行し、
前記車両には、前記遠隔制御に必要な複数の機能を実現する機能部が、前記複数の製造工程のいずれかにおいて搭載され、
前記遠隔制御方法は、
前記車両に対して実行された前記製造工程を示す工程情報と、前記機能部との通信が可能であるか否かを示す通信可否情報と、の少なくとも一方の情報を取得する取得工程と、
前記遠隔制御に必要な前記複数の機能のうち、前記取得工程で取得された前記情報を用いて特定される補完対象機能であって、前記遠隔制御に必要な前記複数の機能のうち、前記車両に搭載された前記機能部によって実現することができない前記機能である補完対象機能を特定する特定工程と、
1以上の前記補完対象機能を有する複数の端末装置の中から、前記特定工程において特定された前記補完対象機能を有する1以上の前記端末装置を前記車両に搭載する搭載工程と、を備える、遠隔制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の遠隔制御方法であって、さらに、
前記車両に前記端末装置を搭載すべきか否かを判断する判断工程を備える、遠隔制御方法。
【請求項7】
請求項5に記載の遠隔制御方法であって、さらに、
前記車両に搭載された前記端末装置を前記車両から除外する除外工程を備える、遠隔制御方法。
【請求項8】
請求項5に記載の遠隔制御方法であって、
前記車両は、車輪と、車台と、前記車両を加速させる駆動装置と、前記車両の進行方向を変更する操舵装置と、前記車両を減速させる制動装置と、を少なくとも備えるプラットフォームの形態の第1種車両と、前記第1種車両に少なくとも車体を組み付けた形態の第2種車両と、を含む、遠隔制御方法。
【請求項9】
車両の走行動作を遠隔制御する遠隔制御方法であって、
前記車両は、前記車両を製造するために複数の製造工程が実行される工場内を遠隔制御によって走行し、
前記車両には、前記遠隔制御に必要な複数の機能を実現する機能部が、前記複数の製造工程のいずれかにおいて搭載され、
前記遠隔制御方法は、
前記車両に対して実行された前記製造工程を示す工程情報と、前記機能部との通信が可能であるか否かを示す通信可否情報と、の少なくとも一方の情報を用いて特定される補完対象機能であって、前記遠隔制御に必要な前記複数の機能のうち、前記車両に搭載された前記機能部によって実現することができない前記機能である補完対象機能を有する端末装置を前記車両に搭載する搭載工程を備える、遠隔制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、端末装置、遠隔制御システム、および、遠隔制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遠隔制御によって自動走行する車両が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2017-538619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製造途中の車両には、遠隔制御に必要な機能を実現する車両制御装置や通信部等の機能部が搭載されていない場合がある。この場合、遠隔制御に必要な機能を実現できない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の第1形態によれば、端末装置が提供される。車両の走行動作を遠隔制御するために用いられる端末装置において、前記車両は、前記車両を製造するために複数の製造工程が実行される工場内を遠隔制御によって走行し、前記車両には、前記遠隔制御に必要な複数の機能を実現する機能部が、前記複数の製造工程のいずれかにおいて搭載され、前記端末装置は、前記車両に対して実行された前記製造工程を示す工程情報と、前記機能部との通信が可能であるか否かを示す通信可否情報と、の少なくとも一方の情報を用いて特定される補完対象機能であって、前記遠隔制御に必要な前記複数の機能のうち、前記車両に搭載された前記機能部によって実現することができない前記機能である補完対象機能を補完する補完部と、を備える。この形態によれば、遠隔制御に必要な機能を実現する複数の機能部の少なくとも一部が未だ搭載されていない製造途中の車両に対して、補完対象機能を補完する端末装置を搭載することで、車両を遠隔制御により走行させることができる。これにより、複数の機能部の少なくとも一部が未だ搭載されていない製造途中の車両であっても、遠隔制御により走行させることができる。
(2)上記形態であって、さらに、前記工程情報を取得する端末取得部と、取得した前記工程情報と、前記複数の製造工程ごとに必要な前記補完対象機能を示す工程データベースと、を用いて、取得した前記工程情報によって特定される前記製造工程以外の前記製造工程に関連付けられた前記補完対象機能を特定することで、前記車両に対して実行された前記製造工程に応じた前記補完対象機能を特定する特定部と、を備えてもよい。この形態によれば、工程情報と工程データベースとを用いて、端末装置が補完対象機能を特定できる。
(3)上記形態であって、さらに、前記通信可否情報を取得する端末取得部と、取得した前記通信可否情報を用いて、前記補完対象機能を特定する特定部と、を備えてもよい。この形態によれば、通信可否情報を用いて、端末装置が補完対象機能を特定することができる。
(4)本開示の第2形態によれば、遠隔制御システムが提供される。車両の走行動作を遠隔制御する遠隔制御システムは、前記車両と、前記車両とは異なる場所に設置された外部装置と、上記形態に記載の端末装置と、を備え、前記車両には、前記遠隔制御に必要な複数の機能を実現する機能部が、前記複数の製造工程のいずれかにおいて搭載され、前記外部装置は、前記車両に対して実行された前記製造工程を示す工程情報を取得する装置取得部と、取得した前記工程情報と、前記複数の製造工程ごとに必要な前記補完対象機能を示す工程データベースと、を用いて、取得した前記工程情報によって特定される前記製造工程以外の前記製造工程に関連付けられた前記補完対象機能を特定することで、前記車両に対して実行された前記製造工程に応じた前記補完対象機能を示す機能情報を生成する生成部と、前記機能情報を前記車両に送信する送信部と、を備える。この形態によれば、工程情報と工程データベースとを用いて、外部装置が補完対象機能を特定できる。そして、外部装置は、特定した補完対象機能を示す機能情報を生成して、端末装置に送信することができる。これにより、端末装置の補完部は、機能情報を基に、補完対象機能を補完することができる。
(5)本開示の第3形態によれば、遠隔制御方法が提供される。車両の走行動作を遠隔制御する遠隔制御方法において、前記車両は、前記車両を製造するために複数の製造工程が実行される工場内を遠隔制御によって走行し、前記車両には、前記遠隔制御に必要な複数の機能を実現する機能部が、前記複数の製造工程のいずれかにおいて搭載され、前記遠隔制御方法は、前記車両に対して実行された前記製造工程を示す工程情報と、前記機能部との通信が可能であるか否かを示す通信可否情報と、の少なくとも一方の情報を取得する取得工程と、前記遠隔制御に必要な前記複数の機能のうち、前記取得工程で取得された前記情報を用いて特定される補完対象機能であって、前記遠隔制御に必要な前記複数の機能のうち、前記車両に搭載された前記機能部によって実現することができない前記機能である補完対象機能を特定する特定工程と、1以上の前記補完対象機能を有する複数の端末装置の中から、前記特定工程において特定された前記補完対象機能を有する1以上の前記端末装置を前記車両に搭載する搭載工程と、を備える。この形態によれば、1以上の補完対象機能を有する複数の端末装置の中から、特定工程において特定された補完対象機能を有する1以上の端末装置を車両に搭載することができる。これにより、遠隔制御に必要な機能を実現する複数の機能部の少なくとも一部が未だ搭載されていない製造途中の車両であっても、遠隔制御により走行させることができる。
(6)上記形態であって、さらに、前記車両に前記端末装置を搭載すべきか否かを判断する判断工程を備えてもよい。この形態によれば、端末装置を搭載すべきか否かを判断することができる。
(7)上記形態であって、さらに、前記車両に搭載された前記端末装置を前記車両から除外する除外工程を備えてもよい。この形態によれば、不要となった端末装置を車両から除外することができる。
(8)上記形態であって、前記車両は、車輪と、車台と、前記車両を加速させる駆動装置と、前記車両の進行方向を変更する操舵装置と、前記車両を減速させる制動装置と、を少なくとも備えるプラットフォームの形態の第1種車両と、前記第1種車両に少なくとも車体を組み付けた形態の第2種車両と、を含んでもよい。この形態によれば、第1種車両101と第2種車両102とを遠隔制御によって走行させることができる。
(9)本開示の第4形態によれば、遠隔制御方法が提供される。車両の走行動作を遠隔制御する遠隔制御方法において、前記車両は、前記車両を製造するために複数の製造工程が実行される工場内を遠隔制御によって走行し、前記車両には、前記遠隔制御に必要な複数の機能を実現する機能部が、前記複数の製造工程のいずれかにおいて搭載され、前記遠隔制御方法は、前記車両に対して実行された前記製造工程を示す工程情報と、前記機能部との通信が可能であるか否かを示す通信可否情報と、の少なくとも一方の情報を用いて特定される補完対象機能であって、前記遠隔制御に必要な前記複数の機能のうち、前記車両に搭載された前記機能部によって実現することができない前記機能である補完対象機能を有する端末装置を前記車両に搭載する搭載工程を備える。この形態によれば、1以上の補完対象機能を有する複数の端末装置の中から、補完対象機能を有する1以上の端末装置を車両に搭載することができる。これにより、遠隔制御に必要な機能を実現する複数の機能部の少なくとも一部が未だ搭載されていない製造途中の車両であっても、遠隔制御により走行させることができる。
本開示は、上記の端末装置、遠隔制御システム、および、遠隔制御方法以外の種々の形態で実現することが可能である。例えば、端末装置および遠隔制御システムの製造方法、端末装置および遠隔制御システムの制御方法、その制御方法を実現するコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した一時的でない記録媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態における遠隔制御システムの構成を示す図。
図2】車両の製造過程の一例を示す図。
図3】第1実施形態における撮像装置の構成を示す図。
図4】第1実施形態における遠隔制御装置の構成を示す図。
図5】第1実施形態における端末装置の構成を示す図。
図6】第1実施形態における遠隔制御方法を示すフローチャート。
図7】第1実施形態における取得工程の詳細を示すフローチャート。
図8】第1実施形態における特定工程の詳細を示すフローチャート。
図9】第2実施形態における撮像装置の構成を示す図。
図10】第2実施形態における遠隔制御装置の構成を示す図。
図11】第2実施形態における端末装置の構成を示す図。
図12】第2実施形態における遠隔制御方法を示すフローチャート。
図13】第2実施形態における取得工程の詳細を示すフローチャート。
図14】第2実施形態における特定工程の詳細を示すフローチャート。
図15】第2実施形態におけるソフトウェア変更工程の詳細を示すフローチャート。
図16】第3実施形態における遠隔制御装置の構成を示す図。
図17】第3実施形態における端末装置の構成を示す図。
図18】第3実施形態における遠隔制御方法を示すフローチャート。
図19】第3実施形態における取得工程の詳細を示すフローチャート。
図20】第3実施形態における特定工程の詳細を示すフローチャート。
図21】第4実施形態における遠隔制御システムの構成を示す図。
図22】第4実施形態における遠隔制御装置の構成を示す図。
図23】第4実施形態における端末装置の構成を示す図。
図24】第4実施形態における遠隔制御方法を示すフローチャート。
図25】第4実施形態における取得工程の詳細を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における遠隔制御システム1の構成を示す図である。遠隔制御システム1は、車両10の走行動作を遠隔制御する。遠隔制御システム1は、1台以上の車両10と、車両10とは異なる場所に設置された外部装置としての遠隔制御装置5と、車両10の走行動作を遠隔制御するために用いられる端末装置7と、を備える。本実施形態では、遠隔制御システム1は、さらに、車両10の位置および向きを算出するために、車両10の外部から車両10を検出するセンサとして、複数の撮像装置9を備える。
【0009】
車両10は、例えば、電気自動車、ハイブリッド車、燃料電池車、ガソリン車、ディーゼル車のいずれかである。車両10は、乗用車等の自家用自動車であってもよく、トラック、バス、工事用車両等の事業用自動車であってもよい。
【0010】
車両10は、車両10を製造するために複数の製造工程が実行される工場内を遠隔自動運転モードによって走行する。遠隔自動運転モードでは、サーバ等の遠隔制御装置5が車両10の走行動作を規定する制御値(以下、運転制御値)を作成して、車両10に送信する。これにより、車両10は、運転制御値を受信して、受信した運転制御値に応じた自動走行を行う。工場は、1つの建物内に存在する場合や、1箇所の敷地や住所に存在する場合等に限定されず、複数の建物、複数の敷地、複数の住所等に亘って存在していてもよい。このとき、車両10は、私道に限らず、公道を走行してもよい。また、工場は、ヤード等の保管場所を含んでもよい。保管場所は、複数の製造工程を実行することで製造された完成品としての車両10を出荷する前に保管する場所である。
【0011】
図2は、車両10の製造過程の一例を示す図である。図2では、車両10の製造過程において実行される複数の製造工程の一部を代表して図示している。図2に示す例では、完成品としての車両10は、プラットフォームの形態である第1種車両101に、ボディシェル等の車体160、シート等の内装部品、および、ドアパネル等の外装部品等を組み付けることで製造される。このとき、車両10には、遠隔制御に必要な複数の機能を実現する機能部170が、複数の製造工程のいずれかにおいて搭載される。本開示において、「搭載」とは、車両10に取り付けた装置の機能を実現できる状態を指す。すなわち、「搭載」とは、車両10に装置が取り付けられて、結線された状態である。以下においては、第1種車両101に車体160を少なくとも組み付けた形態の車両10を第2種車両102と呼ぶ。
【0012】
プラットフォーム製造工程は、第1種車両101を製造する製造工程である。第1種車両101は、端末装置7を必要に応じて搭載することで、遠隔制御装置5による遠隔制御により、「走る」、「曲がる」、「止まる」の3つの機能を少なくとも実現できる車両10である。具体的には、第1種車両101は、例えば、駆動装置110と、操舵装置120と、制動装置130と、車台140と、車輪150と、を少なくとも備える。駆動装置110は、車両10を加速させる。駆動装置110は、駆動力源と、駆動力源に動力を供給する動力供給装置と、を少なくとも備える。車両10が電気自動車である場合、駆動力源は走行用モータであり、動力供給装置はリチウムイオン電池等のメインバッテリである。操舵装置120は、車両10の進行方向を変更する。制動装置130は、車両10を減速させる。車台140は、車両10に搭載される各種装置110~130,170と、プラットフォーム製造工程より後の製造工程において組み付けられる車体160等を支持するシャシー部分である。さらに、本実施形態では、プラットフォーム製造工程において、端末装置7が、第1種車両101に着脱可能に搭載される。なお、端末装置7を第1種車両101に搭載する作業は、作業員によって実行されてもよく、ロボットによって実行されてもよい。
【0013】
車体組付工程は、第1種車両101に車体160を組み付けた以降の車両10であって、完成品を含む車両10である第2種車両102を製造する製造工程である。車体組付工程は、プラットフォーム製造工程の後に実行される。
【0014】
機能部取付工程は、車両10に機能部170を取り付ける工程である。図2に示す例では、機能部取付工程は、車体組付工程の後に実行される。機能部170は、例えば、車両制御装置171と、車両通信部172と、サブバッテリ173と、のいずれかである。車両制御装置171は、車両10の動作を制御する。車両制御装置171は、複数のECUを含む。具体的には、車両制御装置171は、統合ECUと、複数の個別ECUと、を含む。統合ECUは、各個別ECUへの通信を中継する。統合ECUは、車両通信部172と各個別ECUとに通信可能に接続されている。統合ECUは、いわゆるゲートウェイECUである。複数の個別ECUはそれぞれ、車両10に搭載される各種装置の動作を制御する。個別ECUは、例えば、車両通信部172を制御するDCM-ECU、ブレーキを制御するブレーキECU、エンジンを制御するエンジンECU、走行用モータを制御するMG-ECU、エンジンECUとMG-ECUとを相互に管理制御するHV-ECUである。車両通信部172は、無線通信等を用いて外部装置と通信する。外部装置は、遠隔制御装置5等の自車両10以外の他の装置、および、他車両10である。車両通信部172は、例えば、DCM(Data Communication Module)等の無線通信装置である。車両通信部172は、例えば、工場内のアクセスポイントを介して、ネットワークNtに接続された遠隔制御装置5と通信する。サブバッテリ173は、車両制御装置171および車両通信部172を駆動させるために、車両制御装置171および車両通信部172に電力を供給する。なお、機能部170の構成は、上記に限られるものではない。例えば、車両制御装置171の少なくとも一部の機能は、車両通信部172の一機能として実現されてもよい。
【0015】
結線工程は、車両10に取り付けられた複数の機能部170を結線することで、機能部170の機能を実現できる状態にする工程である。結線工程は、機能部取付工程の後に実行される。機能部170は、車両10に取り付けられた後に結線されることで、遠隔制御に必要な機能を実現する。なお、車両10の製造方法は、上記に限られるものではない。機能部取付工程は、車両10の製造過程において、図2とは異なる他のタイミングで実行されてもよい。また、結線工程は、機能部取付工程の後に実行されればよく、図2とは異なる他のタイミングで実行されてもよい。
【0016】
本開示において、車両10は、完成品としての車両10と、完成品を製造する各製造工程における半製品および仕掛品としての車両10と、の少なくともいずれかである。以下においては、複数の異なる形態の車両101,102を区別する必要がない場合には、単に「車両10」と呼ぶ。
【0017】
図3は、第1実施形態における撮像装置9の構成を示す図である。撮像装置9は、図1に示すように、車両10を含む撮像範囲RGを車両10の外部から撮像することで撮像データを取得するカメラである。撮像データは、例えば、車両10を含むカラー画像である。1台以上の撮像装置9によって走路2の全体を撮像するために、撮像装置9の設置位置および設置数は、撮像装置9の撮像範囲RG(画角)等を考慮して決定される。
【0018】
図3に示すように、撮像装置9は、撮像部90と、通信部91と、記憶部93と、CPU92と、を備える。撮像部90、通信部91、記憶部93、およびCPU92はそれぞれ、例えば、内部バスおよびインターフェイス回路を介して互いに接続されている。撮像部90は、車両10を含む撮像範囲RGを車両10の外部から撮像する。撮像装置9の通信部91は、撮像装置9以外の他の装置と撮像装置9とを通信可能に接続する。撮像装置9の通信部91は、例えば、無線通信装置である。撮像装置9の記憶部93は、撮像装置9の動作を制御する各種プログラムを含む各種情報を記憶する。撮像装置9の記憶部93は、例えば、RAMと、ROMと、ハードディスクドライブ(HDD)と、を含む。撮像装置9のCPU92は、記憶部93に記憶された各種プログラムを展開することで、撮像制御部921と、データ取得部922と、データ送信部924として機能する。撮像制御部921は、撮像部90の動作を制御する。データ取得部922は、各種情報を取得する。本実施形態では、データ取得部922は、撮像データを撮像装置9から取得する。データ送信部924は、各種データを送信する。本実施形態では、撮像装置9は、遠隔制御装置5に撮像データを送信する。なお、撮像装置9の構成は、上記に限られるものではない。撮像装置9の少なくとも一部の機能は、遠隔制御装置5等の外部装置および車両10のいずれかの一機能として実現されてもよい。
【0019】
図4は、第1実施形態における遠隔制御装置5の構成を示す図である。遠隔制御装置5は、走行情報を用いて作成した運転制御値を車両10に送信することで、車両10の走行動作を遠隔制御する。走行情報は、車両10の走行条件に関する情報である。走行情報は、例えば、車両10を含む撮像データ、車両10の位置、向き、走行速度、実舵角、および走行ルート情報を含む。走行ルート情報は、遠隔自動運転モードにより走行する車両10の目標走行ルートを示す情報である。
【0020】
遠隔制御装置5は、通信部51と、CPU52と、記憶部53と、を備える。通信部51と記憶部53とCPU52とは、例えば、内部バスおよびインターフェイス回路を介して互いに接続されている。
【0021】
遠隔制御装置5の通信部51は、遠隔制御装置5以外の他の装置と遠隔制御装置5とを通信可能に接続する。遠隔制御装置5の通信部51は、例えば、無線通信装置である。
【0022】
遠隔制御装置5の記憶部53は、遠隔制御装置5の動作を制御する各種プログラムと生産管理情報Inとを含む各種情報を記憶する。生産管理情報Inは、各製造工程が実行される作業場を車両10が走行する予定時刻を示す情報である。生産管理情報Inは、例えば、車両10の位置および向き、車両10に対する運転制御値の送信履歴、撮像装置9の設置場所を基に作成される。遠隔制御装置5の記憶部53は、例えば、RAMと、ROMと、ハードディスクドライブ(HDD)と、を含む。
【0023】
遠隔制御装置5のCPU52は、記憶部53に記憶された各種プログラムを展開することで、装置取得部521と、算出部522と、工程特定部523と、制御値作成部525と、装置送信部526として機能する。
【0024】
装置取得部521は、各種情報を取得する。本実施形態では、装置取得部521は、撮像データを撮像装置9から取得する。また、装置取得部521は、走行速度、実舵角等を車両10から取得する。
【0025】
算出部522は、車両10の位置および向きを算出する。本実施形態では、算出部522は、撮像データを解析することで、車両10の位置および向きを算出する。
【0026】
工程特定部523は、車両10の製造過程において実行される複数の製造工程のうち、車両10に対して既に実行された製造工程を特定する。そして、工程特定部523は、車両10に対して実行された製造工程を示す工程情報を生成する。本実施形態では、工程特定部523は、生産管理情報Inを用いて、車両10に対して既に実行された製造工程を特定して、特定した製造工程を示す工程情報を生成する。
【0027】
制御値作成部525は、走行情報を用いて、運転制御値を作成する。運転制御値は、例えば、車両10の前進方向の加速度を規定する加速度制御値と、車両10の舵角を規定する舵角制御値と、を含む。なお、運転制御値は、加速度制御値および舵角制御値に代えて、軌道制御値と目的地制御値とのいずれかを含んでもよい。軌道制御値は、車両10の予め定められた時間ごとの目標走行位置を時系列順序に並べることで、車両10の走行軌跡を規定する制御値である。目的地制御値は、車両10の目標到達場所への目標到達時刻を示す制御値である。
【0028】
装置送信部526は、各種情報を遠隔制御装置5以外の他の装置に送信する。本実施形態では、装置送信部526は、運転制御値および工程情報を送信する。なお、遠隔制御装置5の構成は、上記に限られるものではない。遠隔制御装置5の少なくとも一部の機能は、遠隔制御装置5以外の他の装置の一機能として実現されてもよい。
【0029】
図5は、第1実施形態における端末装置7の構成を示す図である。端末装置7は、製造途中の車両10を遠隔自動運転モードにより走行させるために用いられる。端末装置7は、補完対象機能を補完する。補完対象機能は、遠隔制御に必要な複数の機能のうち、製造工程によって車両10に既に搭載された機能部170によっては実現することができない機能である。本実施形態では、端末装置7は、車両10の製造過程において補完対象機能となり得る全ての機能を実現可能に構成される。ここで、機能部170は、複数の製造工程のいずれかにおいて車両10に搭載される。そのため、車両10に対して実行された製造工程と補完対象機能とは相関がある。よって、本実施形態では、補完対象機能は、工程情報を用いて特定される。
【0030】
端末装置7は、通信部71と、記憶部73と、補助バッテリ75と、CPU72と、を備える。通信部71、記憶部73、補助バッテリ75、およびCPU72はそれぞれ、例えば、内部バスおよびインターフェイス回路を介して互いに接続されている。
【0031】
端末装置7が車両10に搭載された状態において、端末装置7の通信部71は、車両10に搭載された装置と遠隔制御装置5等の外部装置とを通信可能に接続する。つまり、機能部170の1つである車両通信部172(図2)が車両10に未だ搭載されていない場合に、端末装置7の通信部71は、車両通信部172の代わりに、車両通信部172と同等の機能を担う。端末装置7の通信部71は、例えば、無線通信装置である。
【0032】
図5に示す端末装置7の記憶部73は、端末装置7の動作を制御する各種プログラムと工程データベースDbとを含む各種情報を記憶する。工程データベースDbは、複数の製造工程ごとに必要な補完対象機能を示すデータベースである。端末装置7の記憶部73は、例えば、RAMと、ROMと、ハードディスクドライブ(HDD)と、を含む。
【0033】
補助バッテリ75は、端末装置7を駆動させるために電力を供給する。さらに、車両10にサブバッテリ173(図2)が搭載されていない場合に、補助バッテリ75は、サブバッテリ173の代わりに、車両10に既に搭載された車両制御装置171および車両通信部172等に電力を供給する。
【0034】
図5に示す端末装置7のCPU92は、記憶部73に記憶された各種プログラムを展開することで、端末取得部721と、機能特定部722と、補完部723として機能する。
【0035】
端末取得部721は、各種情報を取得する。本実施形態では、端末取得部721は、遠隔制御装置5から工程情報を取得する。また、車両制御装置171と車両通信部172との少なくとも一方が車両10に未だ搭載されていない場合に、端末取得部721は、運転制御値を取得する。
【0036】
機能特定部722は、補完対象機能を特定する。すなわち、機能特定部722は、車両10に未だ搭載されていない機能を特定する。本実施形態では、機能特定部722は、取得した工程情報と、端末装置7の記憶部93に記憶された工程データベースDbと、を用いて、取得した工程情報によって特定される製造工程以外の製造工程に関連付けられた補完対象機能を特定する。換言すると、機能特定部722は、車両10の製造過程において実行される複数の製造工程のうち、未だ実行されていない製造工程と、実行中の製造工程と、に関連付けられた補完対象機能を工程データベースDbから抽出する。これにより、機能特定部722は、車両10に対して実行された製造工程に応じた補完対象機能を特定する。
【0037】
補完部723は、補完対象機能を補完する。本実施形態では、補完部723は、遠隔制御に必要な複数の機能のうち、特定された補完対象機能のみを実行するようにソフトウェアを変更する。これにより、補完部723は、端末装置7を車両10に搭載した場合に、端末装置7によって補完対象機能を補完できるようにする。具体的には、車両制御装置171が車両10に未だ搭載されていない場合、補完部723は、車両制御装置171の代わりに、車両制御装置171と同等の機能を実現できるようにソフトウェアを変更する。例えば、車両制御装置171を構成する複数のECUのうち、一部のECUが結線されていないことにより機能を未だ実現できていない状態である場合に、補完部723は、以下の処理を実行する。つまり、補完部723は、機能を未だ実現できていないECU(以下、未結線ECU)の代わりに、未結線ECUと同等の機能を実現できるようにソフトウェアを変更する。また、車両通信部172が車両10に未だ搭載されていない場合、補完部723は、端末装置7の通信部91を用いて遠隔制御装置5等の外部装置と車両10が通信できるようにソフトウェアを変更する。またさらに、サブバッテリ173が車両10に未だ搭載されていない場合に、補完部723は、サブバッテリ173の代わりに、補助バッテリ75を用いて車両10に既に搭載された車両制御装置171および車両通信部172を駆動できるようにソフトウェアを変更する。なお、端末装置7の構成は、上記に限られるものではない。端末装置7の少なくとも一部の機能は、端末装置7以外の他の装置の一機能として実現されてもよい。
【0038】
図6は、第1実施形態における遠隔制御方法を示すフローチャートである。本実施形態では、取得工程(ステップS11)と、特定工程(ステップS21)と、ソフトウェア変更工程(ステップS31)と、がこの順に実行される。これにより、車両10に対して既に実行された製造工程に応じて特定された補完対象機能を補完するようにソフトウェア変更をした端末装置7を用いて補完対象機能を補完することで、製造途中の車両10を遠隔自動運転モードにより走行させる。遠隔制御方法は、例えば、対象とする車両10が図2に示すプラットフォーム製造工程を終了した時点以降において、予め定められた時間ごとに繰り返し実行される。これ以降に示す実施形態における遠隔制御方法についても同様である。
【0039】
図7は、第1実施形態における取得工程(ステップS11)の詳細を示すフローチャートである。ステップS111において、遠隔制御装置5の装置取得部521は、生産管理情報Inを取得する。本実施形態では、装置取得部521は、遠隔制御装置5の記憶部53に予め記憶された生産管理情報Inを取得するが、他の実施形態では、遠隔制御装置5以外の他の装置から生産管理情報Inを取得してもよい。ステップS112において、工程特定部523は、生産管理情報Inを用いて、車両10に対して既に実行された製造工程を特定する。ステップS113において、工程特定部523は、車両10に対して既に実行された製造工程を示す工程情報を生成する。ステップS114において、装置送信部526は、工程情報を端末装置7に送信する。ステップS115において、端末装置7の端末取得部721は、工程情報を取得する。
【0040】
図6に示すように、ステップS11の取得工程の次に、ステップS21の特定工程が実行される。図8は、第1実施形態における特定工程(ステップS21)の詳細を示すフローチャートである。ステップS221において、端末装置7の端末取得部721は、工程データベースDbを取得する。本実施形態では、端末取得部721は、端末装置7の記憶部73に予め記憶された工程データベースDbを取得するが、他の実施形態では、端末装置7以外の他の装置から工程データベースDbを取得してもよい。ステップS212において、機能特定部722は、工程情報と工程データベースDbとを用いて、補完対象機能を特定する。
【0041】
図6に示すように、ステップS21の特定工程の次に、ステップS31のソフトウェア変更工程が実行される。ソフトウェア変更工程において、補完部723は、機能特定部722によって特定された補完対象機能を補完するようにソフトウェアを変更する。そして、車両通信部172が車両10に既に搭載されている場合、ソフトウェア変更工程が終了した後に、遠隔制御装置5は、車両通信部172との通信を開始して、車両10を遠隔自動運転モードによって走行させる。車両通信部172が車両10に未だ搭載されていない場合、ソフトウェア変更工程が終了した後に、遠隔制御装置5は、端末装置7の通信部71との通信を開始して、車両10を遠隔自動運転モードによって走行させる。
【0042】
なお、完成品としての車両10のように、特定工程において特定される補完対象機能がない場合、遠隔制御装置5は、端末装置7を用いることなく、車両10に搭載された機能部170の機能により、車両10を遠隔自動運転モードによって走行させる。つまり、この場合、図6に示す遠隔制御方法において、ソフトウェア変更工程は省略される。
【0043】
上記第1実施形態によれば、遠隔制御に必要な機能を実現する機能部170の少なくとも一部が未だ搭載されていない製造途中の車両10に対して、補完対象機能を補完する端末装置7を搭載することで、車両10を遠隔制御により走行させることができる。これにより、第1種車両101のように、遠隔制御に必要な機能を実現する車両制御装置171、車両通信部172、およびサブバッテリ173等の機能部170の少なくとも一部が未だ搭載されていない製造途中の車両10であっても、遠隔制御により走行させることができる。
【0044】
また、上記第1実施形態によれば、生産管理情報Inを用いて、車両10に対して実行された製造工程を特定することができる。そして、車両10に対して実行された製造工程を示す工程情報を生成することができる。
【0045】
また、上記第1実施形態によれば、車両10には、複数の製造工程のいずれかにおいて機能部170が搭載される。そのため、車両10の製造過程において実行される各製造工程と補完対象機能との相関関係を基に、車両10に対して実行された製造工程を示す工程情報を用いて、補完対象機能を特定することができる。
【0046】
また、上記第1実施形態によれば、工程情報を取得することができる。そして、工程情報と工程データベースDbとを用いて、取得した工程情報によって特定される製造工程以外の製造工程に関連付けられた補完対象機能を特定することができる。これにより、車両10に対して実行された製造工程に応じた補完対象機能を特定することができる。
【0047】
また、上記第1実施形態によれば、外部装置としての遠隔制御装置5から工程情報を取得することで、端末装置7によって補完対象機能を特定することができる。
【0048】
また、上記第1実施形態によれば、ソフトウェアを変更することで、端末装置7によって補完する機能を変更することができる。このようにすると、1つの端末装置7を車両10に搭載することで、複数の製造工程において端末装置7の着脱を要することなく、補完対象機能を補完することができる。
【0049】
B.第2実施形態:
図9は、第2実施形態における撮像装置9aの構成を示す図である。図10は、第2実施形態における遠隔制御装置5aの構成を示す図である。図11は、第2実施形態における端末装置7aの構成を示す図である。本実施形態では、遠隔制御方法の一部が第1実施形態とは異なる。これにより、撮像装置9a、遠隔制御装置5a、および端末装置7aの構成の一部が第1実施形態とは異なる。第1実施形態における各ステップと同一のステップ、および、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すと共に説明を省略する。
【0050】
図9に示すように、撮像装置9aの記憶部93aは、撮像装置9aの動作を制御する各種プログラムを含む各種情報を記憶する。撮像装置9aのCPU92aは、さらに、工程特定部923を備える。工程特定部923は、撮像データを解析することで、車両10に対して既に実行された製造工程を特定する。工程特定部923は、例えば、撮像データに含まれる特徴点であって、複数の製造工程を識別可能な特徴点を検出することで、車両10に対して実行されている一の製造工程を特定する。そして、工程特定部923は、車両10の製造過程において実行される複数の製造工程のうち、車両10に対して実行されていると特定した一の製造工程より前の製造工程を、車両10に対して既に実行された製造工程であると判断する。そして、工程特定部923は、車両10に対して既に実行された製造工程を示す工程情報を生成する。
【0051】
図10に示すように、遠隔制御装置5aの記憶部53aは、生産管理情報Inに代えて、工程データベースDbを記憶する。遠隔制御装置5aのCPU52aは、第1実施形態における装置取得部521に代えて、装置取得部521aを備える。装置取得部521aは、工程情報を取得する。さらに、遠隔制御装置5aのCPU52aは、第1実施形態における工程特定部523に代えて、生成部524を備える。生成部524は、工程情報と工程データベースDbとを用いて、機能情報を生成する。機能情報は、車両10に対して既に実行された製造工程に応じた補完対象機能を示す情報である。
【0052】
図11に示すように、端末装置7aの記憶部73aは、端末装置7aの動作を制御する各種プログラムを含む各種情報を記憶する。端末装置7aのCPU72aは、機能特定部722を備えることなく、端末取得部721aと、補完部723と、を備える。端末取得部721aは、外部装置から機能情報を取得する。本実施形態では、端末取得部721は、外部装置としての遠隔制御装置5aから機能情報を取得する。
【0053】
図12は、第2実施形態における遠隔制御方法を示すフローチャートである。図13は、第2実施形態における取得工程(ステップS12)の詳細を示すフローチャートである。ステップS121において、撮像装置9aのデータ取得部922は、撮像データを取得する。ステップS122において、工程特定部923は、撮像データを用いて、車両10に対して既に実行された製造工程を特定する。ステップS123において、工程特定部923は、工程情報を生成する。ステップS124において、データ送信部924は、工程情報を遠隔制御装置5aに送信する。ステップS125において、遠隔制御装置5aの装置取得部521は、工程情報を取得する。
【0054】
図12に示すように、ステップS12の取得工程の次に、ステップS22の特定工程が実行される。図14は、第2実施形態における特定工程(ステップS22)の詳細を示すフローチャートである。ステップS221において、遠隔制御装置5aの装置取得部521は、工程データベースDbを取得する。ステップS222において、生成部524は、工程情報と工程データベースDbとを用いて、補完対象機能を特定する。
【0055】
図12に示すように、ステップS22の特定工程の次に、ステップS32のソフトウェア変更工程が実行される。図15は、第2実施形態におけるソフトウェア変更工程(ステップS32)の詳細を示すフローチャートである。ステップS321において、遠隔制御装置5aの生成部524は、機能情報を生成する。ステップS322において、装置送信部526は、機能情報を端末装置7aに送信する。ステップS323において、端末装置7aの端末取得部721は、機能情報を遠隔制御装置5aから取得する。ステップS324において、補完部723は、機能情報によって特定される補完対象機能に応じて、ソフトウェアを変更する。
【0056】
上記第2実施形態によれば、撮像データを解析することで、車両10に対して既に実行された製造工程を特定して、工程情報を生成することができる。
【0057】
また、上記第2実施形態によれば、撮像装置9aから工程情報を取得することで、外部装置としての遠隔制御装置5aによって補完対象機能を特定することができる。
【0058】
また、上記第2実施形態によれば、端末装置7aの補完部723は、遠隔制御装置5から機能情報を取得することで、補完対象機能を認識することができる。これにより、補完部723は、機能情報によって特定される補完対象機能を補完することができる。
【0059】
C.第3実施形態:
図16は、第3実施形態における遠隔制御装置5bの構成を示す図である。図17は、第3実施形態における端末装置7bの構成を示す図である。本実施形態では、遠隔制御方法の一部が第1実施形態とは異なる。これにより、遠隔制御装置5bおよび端末装置7bの構成の一部が第1実施形態とは異なる。撮像装置9の構成は、第1実施形態と同一である。第1実施形態における各ステップと同一のステップ、および、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すと共に説明を省略する。
【0060】
図16に示す遠隔制御装置5bの記憶部53bは、遠隔制御装置5bの動作を制御する各種プログラムを含む各種情報を記憶する。遠隔制御装置5bのCPU52bは、工程特定部523および生成部524を備えることなく、装置取得部521と、算出部522と、制御値作成部525と、装置送信部526と、を備える。
【0061】
図17に示す端末装置7bの記憶部73bは、端末装置7bの動作を制御する各種プログラムを含む各種情報を記憶する。端末装置7bのCPU72bは、第1実施形態における端末取得部721に代えて、端末取得部721bを備える。端末取得部721bは、通信可否情報を取得する。通信可否情報は、機能部170との通信が可能であるか否かを示す情報である。通信可否情報は、例えば、CAN(Controller Area Network)通信により、車両制御装置171に含まれる各ECUのそれぞれと端末装置7bとの間で信号を送受できたか否かを示すCANデータを含む。また、端末装置7bのCPU72bは、第1実施形態における機能特定部722に代えて、機能特定部722bを備える。機能特定部722bは、取得した通信可否情報を用いて、補完対象機能を特定する。機能特定部722bは、例えば、通信可否情報において、通信不可能であった機能部170の機能を補完対象機能として特定する。
【0062】
図18は、第3実施形態における遠隔制御方法を示すフローチャートである。図19は、第3実施形態における取得工程(ステップS13)の詳細を示すフローチャートである。ステップS131において、端末装置7bの端末取得部721bは、通信可否情報を取得する。
【0063】
図18に示すように、ステップS13の取得工程の次に、ステップS23の特定工程が実行される。図20は、第3実施形態における特定工程(ステップS23)の詳細を示すフローチャートである。ステップS231において、端末装置7bの機能特定部722bは、取得した通信可否情報を用いて、補完対象機能を特定する。
【0064】
上記第3実施形態によれば、通信可否情報を取得することができる。そして、通信可否情報を用いて、補完対象機能を特定することができる。つまり、機能部170との通信を利用して、補完対象機能を特定することができる。
【0065】
また、上記第3実施形態によれば、外部装置を用いることなく、端末装置7bにおいて、補完対象機能を特定するための情報を取得して、補完対象機能を特定することができる。
【0066】
D.第4実施形態:
図21は、第4実施形態における遠隔制御システム1cの構成を示す図である。第1実施形態から第3実施形態までの各実施形態では、生産管理情報Inと撮像データとのいずれかを用いて、機械的に、車両10に対して既に実行された製造工程を特定していた。これに対して、本実施形態では、車両10に対して既に実行された製造工程を、各製造工程における作業に従事している作業員が特定する。これに伴い、本実施形態の遠隔制御システム1cは、さらに、入力装置8を備える。入力装置8は、作業員が工程情報を入力するための装置である。また、第1実施形態から第3実施形態までの各実施形態では、端末装置7,7a,7bは、補完対象機能に応じてソフトウェアを変更することで、補完対象機能を補完していた。これに対して、本実施形態では、遠隔制御システム1cは、第1実施形態から第3実施形態までの各実施形態における端末装置7,7a、7bに代えて、予め定められた機能を有する複数の端末装置7c~7eを備える。これにより、1以上の予め定められた機能を有する複数の端末装置7c~7eの中から、車両10に対して既に実行された製造工程に応じた補完対象機能を有する端末装置7c~7eを選択して、車両10に搭載する。つまり、補完対象機能に応じてソフトウェアを変更することなく、予め準備された複数の端末装置7c~7eの中から、工程情報に応じた端末装置7c~7eを選択して、車両10に搭載する。第1実施形態から第3実施形態までの各実施形態における各ステップと同一のステップ、および、第1実施形態から第3実施形態までの各実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すと共に説明を省略する。
【0067】
図22は、第4実施形態における遠隔制御装置5cの構成を示す図である。遠隔制御装置5cの記憶部53cは、遠隔制御装置5cの動作を制御する各種プログラムと工程データベースDbとを含む各種情報を記憶する。遠隔制御装置5cは、さらに、報知部55を備える。報知部55は、予め準備された複数の端末装置7c~7eのうち、車両10に搭載すべき端末装置7c~7eを示す選択情報を搭載工程の実行者に報知する。搭載工程は、1以上の予め定められた機能を有する複数の端末装置7c~7eの中から、特定工程において特定された補完対象機能を有する1以上の端末装置7c~7eを車両10に搭載する工程である。搭載工程は、作業員によって手動で実行されてもよく、ロボットによって自動で実行されてもよい。搭載工程の実行者が作業員である場合、報知部55は、例えば、選択情報を表示させるディスプレイ等の表示装置と、選択情報を示す音声を再生させるスピーカと、のいずれかである。搭載工程の実行者がロボットである場合、報知部55は、例えば、選択情報をロボットに送信する送信装置である。また、遠隔制御装置5cのCPU52cは、さらに、報知部55の動作を制御する報知制御部527を備える。なお、端末装置7c~7eと車両10とのいずれかが報知部55および報知制御部527を備えてもよい。車両10が報知部55を備える場合、例えば、ハザードランプおよびホーンのような車両10に搭載される既存の設備が報知部55として利用されてもよい。
【0068】
図23は、第4実施形態における端末装置7c~7eの構成を示す図である。端末装置7c~7eの記憶部73c~73eは、端末装置7c~7eの動作を制御する各種プログラムを含む各種情報を記憶する。端末装置7c~7eのCPU72c~72eは、補完部723を備えることなく、端末取得部721c~721eを備える。端末取得部721c~721eは、各種情報を取得する。なお、各端末装置7c~7eは、1つの機能を有してもよく、複数の機能を有してもよい。例えば、車両10の製造過程において実行される複数の製造工程のそれぞれに応じた補完対象機能を備える端末装置7c~7eが、製造工程ごとに準備されていてもよい。
【0069】
図24は、第4実施形態における遠隔制御方法を示すフローチャートである。図25は、第4実施形態における取得工程(ステップS14)の詳細を示すフローチャートである。図25では、遠隔制御装置5cによって補完対象機能が特定される場合を例示している。ステップS141において、入力装置8は、作業員からの工程情報の入力を受け付ける。ステップS142において、入力装置8は、入力された工程情報を遠隔制御装置5cに送信する。ステップS143において、遠隔制御装置5cの装置取得部521aは、入力装置8から工程情報を取得する。
【0070】
図24に示すように、ステップS14の取得工程の次に、ステップS22の特定工程が実行される。遠隔制御装置5cによって補完対象機能を特定する場合、図14に示す特定工程(ステップS22)と同様の処理が実行される。図24に示すように、ステップS22の特定工程の次に、ステップS34の選択工程が実行される。選択工程において、報知制御部527は、報知部55を介して、選択情報を搭載工程の実行者に報知する。これにより、搭載工程の実行者は、ステップS44の搭載工程において、予め準備された複数の端末装置7c~7eの中から、補完対象機能に応じた端末装置7c~7eを選択して、車両10に搭載する。
【0071】
なお、端末装置7c~7eによって補完対象機能を特定してもよい。この場合、端末装置7c~7eのCPU72cは、さらに、機能特定部722,722bを備える。そして、図25に示すステップS142において、入力装置8は、工程情報を端末装置7c~7eに送信する。端末装置7cの装置取得部521cは、入力装置8から工程情報を取得する。
【0072】
上記第4実施形態によれば、1以上の補完対象機能を有する複数の端末装置7c~7eの中から、特定工程において特定された補完対象機能を有する1以上の端末装置7c~7eを車両10に搭載することができる。このようにすると、端末装置7c~7eの機能を変更するソフトウェア変更を行うことなく、補完対象機能を補完して、車両10を遠隔自動運転モードにより走行させることができる。これにより、端末装置7c~7eにおける処理負荷を低減することができる。
【0073】
E.他の実施形態:
E-1.他の実施形態1:
遠隔制御方法は、さらに、搭載工程において車両10に端末装置7,7a~7eを搭載する場合において、既に車両10に他の端末装置7,7a~7eが搭載されている場合に、以下の工程を備えてもよい。この場合、遠隔制御方法は、車両10に搭載された端末装置7,7a~7eを車両10から取り外す除外工程を備えてもよい。このような形態であれば、不要となった端末装置7,7a~7eを車両10から除外することができる。
【0074】
E-2.他の実施形態2:
遠隔制御方法は、さらに、車両10に端末装置7,7a~7eを搭載すべきか否かを判断する判断工程を備えてもよい。例えば、遠隔制御装置5,5a~5c等の外部装置と端末装置7,7a~7eとのいずれかに、端末装置7,7a~7eを車両10に搭載すべきか否かを判断する判断部が備えられていてもよい。判断部は、例えば、特定工程における特定結果を用いて、車両10に端末装置7,7a~7eを搭載すべきか否かを判断する。具体的には、判断部は、特定工程において特定された補完対象機能がない場合に、車両10に端末装置7,7a~7eを搭載すべきではないと判断する。一方で、特定工程において1以上の補完対象機能が特定された場合に、車両10に端末装置7,7a~7eを搭載すべきであると判断する。このような形態であれば、車両10に端末装置7,7a~7eを搭載すべきか否かを判断することができる。また、判断部は、例えば、工程情報と工程データベースDbとを用いて、車両10に端末装置7,7a~7eを搭載すべきか否かを判断してもよい。このような形態であれば、遠隔制御方法において、特定工程を実行することなく、車両10に端末装置7,7a~7eを搭載すべきか否かを判断することができる。
【0075】
E-3.他の実施形態3:
遠隔制御方法は、さらに、判断工程と除外工程との両工程を備えてもよい。このような形態であれば、既に車両10に他の端末装置7c~7eが搭載されている場合において、端末装置7c~7eを搭載すべきであると判断された場合に、不要となった端末装置7c~7eと搭載すべき端末装置7c~7eとを交換することができる。
【0076】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0077】
1,1c…遠隔制御システム、2…走路、5,5a~5c…遠隔制御装置、7,7a~7e…端末装置、8…入力装置、9,9a…撮像装置、10…車両、51…遠隔制御装置の通信部、52,52a~52c…遠隔制御装置のCPU、53,53a~53c…遠隔制御装置の記憶部、55…報知部、71…端末装置の通信部、72,72a~72e…端末装置のCPU、73,73a~73e…端末装置の記憶部、75…補助バッテリ、90…撮像部、91…撮像装置の通信部、92,92a…撮像装置のCPU、93,93a…撮像装置の記憶部、101…第1種車両、102…第2種車両、110…駆動装置、120…操舵装置、130…制動装置、140…車台、150…車輪、160…車体、170…機能部、171…車両制御装置、172…車両通信部、173…サブバッテリ、521,521a,521c…装置取得部、522…算出部、523,923…工程特定部、524…生成部、525…制御値作成部、526…装置送信部、527…報知制御部、721,721a~721e…端末取得部、722,722b…機能特定部、723…補完部、921…撮像制御部、922…データ取得部、924…データ送信部、Db…工程データベース、In…生産管理情報、Nt…ネットワーク、RG…撮像範囲
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