(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017863
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】携帯用スロープ装置
(51)【国際特許分類】
A61G 5/10 20060101AFI20250130BHJP
E04F 11/00 20060101ALI20250130BHJP
E04F 11/06 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
A61G5/10
E04F11/00 100
E04F11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121168
(22)【出願日】2023-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】599117255
【氏名又は名称】株式会社 シコク
(74)【代理人】
【識別番号】100144509
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 洋三
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 圭一朗
【テーマコード(参考)】
2E301
【Fターム(参考)】
2E301AA01
(57)【要約】
【課題】スロープ装置を高位面と低位面の間の架設した状態において、該スロープ装置の上端部と高位面の部分に土手状部分が形成されるのを未然に回避して、スロープ装置を使用した車椅子の走行時における高い走行性と操作性、延いては高い使用上の信頼性を得ることを目的とする。
【解決手段】第1スロープ2と第2スロープ3のスロープ併設方向における両端部には、該各スロープ2,3の端部を高位面F1の段差直前位置において該高位面F1の高さに略合致させた状態で掛止して保持する上端掛止部24を設ける一方、上記各スロープ23の連結部におけるスロープ方向の端部2a,3aには、該端部2a,3aを高位面F1の段差直前位置において該高位面の高さに略合致させた状態で保持する中間支持部25を設ける。係る構成によれば、高位面F1該とスロープ装置1の通路面13との間のおける通路の平坦化が実現され、車椅子使用時における走行性及び操作性が格段に改善され、延いては車椅子使用時における信頼性が向上する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長矩形の板体で且つその一面を通路面とした第1スロープと第2スロープが、その長縁を対向させた状態で並設されるとともに、この対向部位に設けたヒンジ部によって折曲自在に連結され、上記第1スロープと第2スロープが同一平面を形成するように展開した展開姿勢と、該第1スロープ体と第2スロープ体がその通路面を対向させるようにして折り畳まれた格納姿勢を選択でき、この展開姿勢において高位面と低位面の間に跨って架設されるスロープ装置であって、
上記第1スロープと上記第2スロープのスロープ併設方向における両端部には、該各スロープの端部を上記高位面の段差直前位置において該高位面の高さに略合致させた状態で掛止して保持する上端掛止部が設けられる一方、
上記第1スロープと第2スロープの連結部におけるスロープ方向の端部には、該端部を上記高位面の段差直前位置において該高位面の高さに略合致させた状態で保持する中間支持部が設けられていることを特徴とする携帯用スロープ装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記上端掛止部が、上記第1スロープ体及び第2スロープ体の長辺側縁部にその前端から前方へ延出状態で設けた掛止体で構成されていることを特徴とする携帯用スロープ装置。
【請求項3】
請求項1において、
上記中間支持部が、上記第1スロープ体と第2スロープ体の連結部の上記スロープ方向の一端部に該一端部から前方へ延出状態で取り付けた掛止材で構成されていることを特徴とする携帯用スロープ装置。
【請求項4】
請求項1において、
上記中間支持部が、上記第1スロープ体と第2スロープ体の連結部の上記スロープ方向の一端側部分にそれぞれ同軸上に設けられたガイド材と、該ガイド材に挿脱されるロック材とを備え、該ロック材が上記各ガイド材に同時に挿入された状態では上記第1スロープ体と第2スロープ体の板厚方向の相対変位を規制するようにしたロック機構で構成されていることを特徴とする携帯用スロープ装置。
【請求項5】
長矩形の平面形状をもつスロープを備えて構成され、高位面と低位面の間に跨って架設されるスロープ装置であって、
上記スロープの幅方向の両端部には、該端部を上記高位面の段差直前位置において該高位面の高さに略合致させた状態で掛止して保持する上端掛止部が設けらていることを特徴とする携帯用スロープ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、携帯用のスロープ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の携帯用スロープ装置としては、例えば、特許文献1~3に示されるようなものが知られている。
【0003】
特許文献1に示されるものは、方形の芯材の表裏両面に、繊維強化プラスチック製の板材を接着した少なくとも2枚の合板からなり、該各合板は、通行方向上下端それぞれに合板自身の段差を解消するためのテーパー構造を有し、通行方向に対する外側面を枠部材によって嵌合させた構造を有し、2枚の合板を、通行方向に対して並列させ、合板の対向側面をシート材によって連結させ、合板が互いに重なり合うように折り畳み可能としたものである。
【0004】
特許文献2に示されるものは、物体間に生じる段差に掛け渡して車椅子の走行に使用される携帯用スロープであって、上面が車椅子の走行面となる板状のスロープ本体と該スロープ本体の外側縁で立ち上がってスロープの長さ方向にのびる脱輪防止用の側壁とを一体に具えた左右一対のスロープ片を、その幅方向に対向する側縁同士をテープ状のヒンジ材によって折り畳・展開可能に連結する一方、そのスロープ長手方向の両端にはそれぞれ前方に向かって高さ寸法が漸減する断面形状を持つ端部材を装着して構成されている。
【0005】
特許文献3に示されるものは、物体間に生じる段差に掛け渡して車椅子を走行させるために使用される携帯用スロープであって、この携帯用スロープは、上記車椅子が走行可能な幅寸法の板材を備えるとともに、そのスロープ方向の上端(即ち、高位面寄りの端部)と、下端(即ち、低位面寄りの端部)にはそれぞれして構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-162818号公報
【特許文献2】特開2012-143260号公報
【特許文献3】特開2016-67518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、これら各特許文献に示されるスロープ装置では、それぞれその高位面寄りの端部には、前方に向かって高さ寸法が漸減する断面形状を持つ端部材が装着されている。このため、この端部材の部分を高位面に掛止して、該スロープ装置を高位面と低位面との間にかけ渡した状態では、該端部材の存在によって、上記高位面の端部付近には、該高位面から上方に隆起する土手状部分が、スロープ装置の通路幅方向の全域に亘って形成される。
【0008】
したがって、車椅子が高位面から低位面側へ移動する場合には、車椅子の車輪は、先ず高位面から上記土手状部分に乗り上げてその表面に沿って移動した後、今度は該土手状部分からスロープ装置の通路面に乗り下げ、この通路面に沿ってその下端側へ移動し、さらに該通路面から低位面側へ移動することになる。
【0009】
この場合、車椅子が高位面から上記土手状部分を経て、スロープ装置の通路面を通って低位面側へ移動する場合には、先ず上記土手状部分が車椅子の車輪に対して走行障害物となって該車椅子のスムーズな走行、安定した操作が阻害される一方、該土手状部分を乗り越えた後は、車椅子は低位面側に向かって上記通路面を一気に降下し易くなり、この結果、車椅子の走行性及び操作性が阻害され、車椅子使用時における信頼性が行われることになる。
【0010】
一方、これとは逆に、車椅子を低位面側からスロープ装置の通路面を通って高位面側へ移動させる場合には、先ず低位面F2側からスロープ装置の通路面側への移行時には、上記低位面と上記スロープ装置の端部材への移行部位が下方に落ち込む溝状部分となり、しかもこの溝状部分の落ち込み深さに対して車輪が十分に大きい径を持つことから、車輪はこの溝状部分に触れることなくこれを跨いで移動するため走行障害物とはならず、低位面から通路面への移行がスムーズに行われる。
【0011】
しかし、車輪が上記通路面から上記土手状部分を通って上記高位面側へ移動する場合には、上述の高位面側から上記通路面側への移行時と同様に、上記土手状部分が車輪の走行障害物となって、車椅子の走行性及び操作性が阻害されることになる。
【0012】
これら事実から、高位面から低位面への移動時も、低位面方高位面への移動時においても、車椅子の走行性及び操作性を確保して高い信頼性を確保することが必要であるといえるが、かかる要望に応える有効な手段はいまだ提案されていないというのが実情である。
【0013】
そこで本願発明では、スロープ装置を高位面と低位面の間の架設した状態において、該スロープ装置の上端部と上記高位面の部分に土手状部分が形成されるのを未然に回避して、該スロープ装置を使用した車椅子の走行時において高い走行性と操作性を確保し、延いては車椅子使用時における高い信頼性を得ることを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明ではかかる課題を解決するための具体的手段として次のような構成を採用している。
【0015】
本願の第1の発明では、長矩形の板体で且つその一面を通路面とした第1スロープと第2スロープが、その長縁を対向させた状態で並設されるとともに、この対向部位に設けたヒンジ部によって折曲自在に連結され、上記第1スロープと第2スロープが同一平面を形成するように展開した展開姿勢と、該第1スロープ体と第2スロープ体がその通路面を対向させるようにして折り畳まれた格納姿勢を選択でき、この展開姿勢において高位面と低位面の間に跨って架設されるスロープ装置において、上記第1スロープと上記第2スロープのスロープ併設方向における両端部に、該各スロープの端部を上記高位面の段差直前位置において該高位面の高さに略合致させた状態で掛止して保持する上端掛止部を設ける一方、上記第1スロープと第2スロープの連結部におけるスロープ方向の端部には、該端部を上記高位面の段差直前位置において該高位面の高さに略合致させた状態で保持する中間支持部を設けたことを特徴としている。
【0016】
本願の第2の発明では、上記第1の発明に係る携帯用のスロープ装置において、上記上端掛止部を、上記第1スロープ体及び第2スロープ体の長辺側縁部にその前端から前方へ延出状態で設けた掛止体で構成したことを特徴としている。
【0017】
本願の第3の発明では、上記第1の発明に係る携帯用のスロープ装置において、上記中間支持部を、上記第1スロープ体と第2スロープ体の連結部の上記スロープ方向の一端部に該一端部から前方へ延出状態で取り付けた掛止材で構成したことを特徴としている。
【0018】
本願の第4の発明では、上記第1の発明に係る携帯用のスロープ装置において、上記中間支持部を、上記第1スロープ体と第2スロープ体の連結部の上記スロープ方向の一端側部分にそれぞれ同軸上に設けられたガイド材と、該ガイド材に挿脱されるロック材とを備え、該ロック材が上記各ガイド材に同時に挿入された状態では上記第1スロープ体と第2スロープ体の板厚方向の相対変位を規制するようにしたロック機構で構成したことを特徴としている。
【0019】
本願の第5の発明では、長矩形の平面形状をもつスロープを備えて構成され、高位面と低位面の間に跨って架設されるスロープ装置において、上記スロープの幅方向の両端部に、該端部を上記高位面の段差直前位置において該高位面の高さに略合致させた状態で掛止して保持する上端掛止部を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本願各発明では次のような効果が得られる。
【0021】
(a)本願の第1の発明
本願の第1の発明に係る携帯用のスロープ装置では、上記スロープ装置を構成する上記第1スロープと上記第2スロープのスロープ併設方向における両端部には、該各スロープの端部を上記高位面の段差直前位置において該高位面の高さに略合致させた状態で掛止して保持する上端掛止部を設ける一方、上記第1スロープと第2スロープの連結部におけるスロープ方向の端部には、該端部を上記高位面の段差直前位置において該高位面の高さに略合致させた状態で保持する中間支持部を設けたので、上記スロープ装置の上記高位面側の端部は、その幅方向の全域が上記高位面と略合致した高さに保持され、この結果、上記高位面と上記スロープ装置の端部が略合致し、この高位面と上記スロープ装置の端部の境部分に、従来のスロープ装置のような土手状部分が存在せず、上記高位面と上記スロープ装置の通路面との間のおける通路の平坦化が実現され、車椅子使用時における走行性及び操作性が格段に改善され、延いては車椅子使用時における信頼性が向上する。
【0022】
(b)本願の第2の発明
本願の第2の発明に係る携帯用のスロープ装置では、上記第1の発明に係る携帯用のスロープ装置において、上記上端掛止部を、上記第1スロープ体及び第2スロープ体の長辺側縁部にその前端から前方へ延出状態で設けた掛止体で構成したので、より簡単且つ安価な構成によって、上記(a)記載の効果を得ることができる。
【0023】
(c)本願の第3の発明
本願の第3の発明に係る携帯用のスロープ装置では、上記第1の発明に係る携帯用のスロープ装置において、上記中間支持部を、上記第1スロープ体と第2スロープ体の連結部の上記スロープ方向の一端部に該一端部から前方へ延出状態で取り付けた掛止材で構成し、該掛止材を高位面に掛止して保持するようにしたので、より簡単且つ安価な構成で上記中間支持部の支持効果が確実に得られ、延いては上記(a)記載の効果がさらに促進される。
【0024】
(c)本願の第4の発明
本願の第4の発明に係る携帯用のスロープ装置では、上記第1の発明に係る携帯用のスロープ装置において、上記中間支持部を、上記第1スロープ体と第2スロープ体の連結部の上記スロープ方向の一端側部分にそれぞれ同軸上に設けられたガイド材と、該ガイド材に挿脱されるロック材とを備え、該ロック材が上記各ガイド材に同時に挿入された状態では上記第1スロープ体と第2スロープ体の板厚方向の相対変位を規制するようにしたロック機構で構成したので、上記高位面上には何らの部材も存在させることなく、上記第1スロープと第2スロープの連結部における高さを上記高位面の高さに略合致させた状態で保持することができ、この結果、上記(a)記載の効果がさらに促進されることに加え、
通路面の幅方向中央寄り部分に上方の突出する物が存在しないことで、例えば、車椅子を介助者の支援の下で走行させる場合には、該介助者はその歩行が阻害されることなく安全に車椅子を移動させることができ、車椅子使用時における信頼性がさらに向上する。
【0025】
(c)本願の第5の発明
本願の第5の発明では、長矩形の平面形状をもつスロープを備えて構成され、高位面と低位面の間に跨って架設されるスロープ装置において、上記スロープの幅方向の両端部に、該端部を上記高位面の段差直前位置において該高位面の高さに略合致させた状態で掛止して保持する上端掛止部を設けているので、上記スロープの上記高位面側の端部は、その幅方向の全域が上記高位面と略合致した高さに保持され、この結果、上記高位面と上記スロープ装置の端部が略合致し、この高位面と上記スロープ装置の端部の境部分に、従来のスロープ装置のような土手状部分が生じず、上記高位面と上記スロープ装置の通路面との間のおける通路の平坦化が実現され、車椅子使用時における走行性及び操作性が格段に改善され、延いては車椅子使用時における信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本願発明の第1の実施形態に係る携帯用スロープ装置の全体斜視図である。
【
図3】
図1に示した携帯用スロープ装置の平面図である。
【
図9】本願発明の第2の実施形態に係る携帯用スロープ装置の全体斜視図である。
【
図11】
図9に示した携帯用スロープ装置の平面図である。
【
図17】本願発明の第3の実施形態に係る携帯用スロープ装置の全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
「第1の実施形態」
【0028】
図1~
図3には、本願発明の第1の実施形態に係るスロープ装置1を示している。このスロープ装置1は、長矩形の平面形体を持つ所定厚さの板材の表裏何れか一方の面を、例えば、樹脂コーティングなどの耐摩耗性処理をした第1スロープ2と第2スロープ3を備える。この第1スロープ2と第2スロープ3の耐摩耗性処理をした面を、それぞれ通路面13としている。
【0029】
上記第1スロープ2と第2スロープ3は、該第1スロープ2の一対の長辺縁部2a,2bのうちの一方の長辺縁部2bと、該第2スロープ3の一対の長辺縁部3a,3bのうちの一方の長辺縁部3aを、近接対向させた状態で並設するとともに、この並設部分をヒンジ部5によって展開(即ち、上記第1スロープ2と第2スロープ3が略同一面を形成するように開かれた状態)・格納(即ち、両者の表面が二つ折り状態に対向した状態)自在に連結して一体化している。
【0030】
さらに、上記第1スロープ2の他の長辺縁部2aには、断面山形で、車椅子の車輪(図示省略)の外れ止めとして機能するレール体6が、該長辺縁部2aに沿ってその全長に亘って延びるとともに、その一端部が上記第1スロープ2の前端2cから所定寸法だけ外方へ延出しており、この延設部6aを高位面F1に掛止される掛止体8としている。なお、この掛止体8の下面には、滑止材14が設けられている。
【0031】
同様に、上記第2スロープ3の他の長辺縁部3bには、断面山形で、車椅子の車輪(図示省略)の外れ止めとして機能するレール体7が、該長辺縁部3bに沿ってその全長に亘って延びるとともに、その一端部が上記第2スロープ3の前端3cから所定寸法だけ外方へ延出しており、この延設部7aを高位面F1に掛止される掛止体9としている。なお、この掛止体8の下面には、滑止材14が設けられている。
【0032】
そして、上記第1スロープ2側の上記掛止体8と、上記第2スロープ3側の上記掛止体9によって、特許請求の範囲にいう「上端掛止部24」が構成される。
【0033】
また一方、上記第1スロープ2の前端2cの上記ヒンジ部5寄り部位と、上記第2スロープ3の前端3cの上記ヒンジ部5寄り部位には、
図1、
図3及び
図8に示すようにそれぞれ断面L形の掛止体10が、その一面の高さを上記各スロープ2、3の通路面1に略合致させ且つ上記端部2c、3cから前方へ延出させた状態で、取り付けられている。この各スロープ2,3にそれぞれ設けられた上記掛止体10によって、特許請求の範囲中の中間支持部25が構成される。
【0034】
なお、
図13に拡大図示するように、上記掛止体10の掛止部10aの角度を適宜調整しておくことで、上記掛止部10aの上記高位面F1への当接状態を調整することができる。即ち、同図に鎖線図示する(符号10a´)角度と実線図示する角度(符号10)の間で角度調整するものである。この角度調整によって、上記スロープ装置1の上記高位面F1への掛止性が向上する。
【0035】
一方、上記各スロープ2、3の後端2d、3dには、それぞれ短スロープ状の端部材12、12が取り付けられている。
【0036】
以上のように構成された上記スロープ装置1は、
図1、
図2に示すように、上記高位面F1と低位面F2の段差部に、上記各掛止体8、9及び各掛止体10、10を、上記高位面F1の端縁部F1aにその上方から掛止した状態で配置される。このスロープ装置1の高位面F1と低位面F2への設置状態においては、
図1、
図2及び
図8に示すように、上記スロープ装置1の上記第1スロープ2と上記第2スロープ3の幅方向外側部分では該部分に設けた上記掛止体8、9(即ち、上記上端掛止部24)によって上記通路面13の高さは、上記高位面F1の上面高さに略合致した状態で保持されている。
【0037】
また、上記第1スロープ2と上記第2スロープ3の連結部では、上記各掛止体10、10が上記高位面F1の表面上に掛止されることで、該各スロープ2,3の通路面の高さは、上記高位面F1の高さに略合致した状態で保持されている。この結果、上記スロープ装置1の前端部分は、その幅方向の全域において、上記高位面F1の高さに略合致することになる。したがって、従来のように上記高位面F1と上記スロープ装置1の境界部(移行部)に土手状部分等の障害物が存在しないことから、上記車椅子を上記スロープ装置1の通路面13を経て上記高位面F1と低位面F2の間で移動させる場合、該車椅子の高い走行性及び操作性を確保した状態で移動させることができ、車椅子使用時における高い信頼性が確保される。
【0038】
「第2の実施形態」
図9には、本願発明の第2の実施形態に係るスロープ装置1を示している。このスロープ装置1は、その基本構成を上記第1の実施形態と同じにし、これと異なる点は、上記中間支持部25の構成のみである。したがって、ここでは上記中間支持部25の構成のみを詳述し、それ以外の部分の構成等については上記第1の実施形態の該当説明を援用し、ここでの説明を省略する。また、係る援用を考慮して、この第2実施形態の各図においては、可能な限り上記第1の実施形態に係る各部材の符号を用いている。
【0039】
この実施形態においては、上記中間支持部25を、上記第1の実施形態の場合とは異なって、次述するガイド材17とロック材18で構成している。
【0040】
上記ガイド材17は、
図9、
図11及び
図13に示すように、上記スロープ装置1の上記ヒンジ部5の両側にそれぞれ位置する上記第1スロープ2の前端2cと、上記第2スロープ3の前端3cに、該各スロープ2,3の幅方向において同軸上に配置されている。したがって、上記スロープ装置1の格納状態においては、上記各ガイド材17は、折曲状態にある上記第1スロープ2側と上記第2スロープ3側にそれぞれ分かれて保持されることになる。
【0041】
一方、上記ロック材18は、展開状態にある上記スロープ装置1の第1スロープ2側のガイド材17と、上記第2スロープ3側のガイド材17の双方に跨って嵌挿されることで該各ガイド材17、17の同軸上の配置状態を保持し、これによって上記第1スロープ2と上記第2スロープ3の展開状態を保持するもの、換言すれば、上記連結部分の垂れ下がりを規制するものである。
【0042】
そのため、上記ロック材18は、
図9、
図11及び
図13に示すように、嵌挿方向手前側のガイド材17(この実施形態の場合、上記2スロープ3側に設けられたガイド材17)の端部から嵌挿した状態において、その先端が嵌挿方向前方側のガイド材17(この実施形態の場合、上記第1スロープ装置スロープ2側に設けられたガイド材17)の中間位置に達するような長さをもつとともに、その基端側(即ち、嵌挿方向手前側)には該掛止体8を押印操作すると共に、これを回動操作するためのハンドル部19を備える。さらに、上記ガイド材17の軸方向の適所(具体的には、上記ロック材18の先端が嵌挿方向前方側のガイド材17から完全に離脱して、手前側のガイド材17内まで引き出された時点において、該手前側のガイド材17の手前側端部よりさらに手前側に位置する部位)には、該ロック材18を折曲自在とする折曲部20を備えている。
【0043】
したがって、上記スロープ装置1の上記第1スロープ2と第2スロープ3を展開させた状態で、上記ロック材18を、上記第2スロープ3側ンガイド材17からさらに上記第1スロープ2側のガイド材17内にまで嵌挿することで、該ロック材18と上記各ガイド材17,17との係合力によって、上記第1スロープ2と上記第2スロープ3は展開状態のまま保持される。
【0044】
このように展開された上記スロープ装置1を上記高位面F1と低位面F2の間に架設し、上記左右一対の掛止体8、9を共に上記高位面F1に掛止する。この架設状態においては、上記スロープ装置1の上記第1スロープ2の端部2c、及び上記第2スロープ3の端部3cの高さが上記高位面F1の高さに略合致している。この結果、従来のように上記高位面F1と上記スロープ装置1の境界部(移行部)に土手状部分等の障害物が存在しないことから、車椅子を上記スロープ装置1の通路面13を経て上記高位面F1と低位面F2の間で移動させる場合、該車椅子の高い走行性及び操作性を確保した状態で移動させることができ、車椅子使用時における高い信頼性が確保される。
【0045】
また、上記中間支持部25を左右一対のガイド材17、17と、これに嵌挿されるロック材18で構成したので、上記高位面F1上には何らの部材も存在させることなく、上記第1スロープ2と第2スロープ3の連結部における高さを上記高位面F1の高さに略合致させた状態で保持することができる。この結果、上記スロープ装置1の通路面の幅方向中央寄り部分には上方への突出物が存在しないことから、例えば、車椅子を介助者の支援の下で走行させる場合には、該介助者はその歩行を阻害されることなく安全に車椅子を移動させることができ、車椅子使用時における信頼性がさらに向上する。
【0046】
一方、上記第1スロープ2と第2スロープ3の展開状態を解除して、これを格納状態とする場合には、先ず上記ハンドル部19を掴んでロック材18を手前側に引き、その先端が上記第1スロープ2側のガイド材17から離脱して、上記第2スロープ3側のガイド材17側に位置するまで引き出す。この時点で、上記折曲部20が手前側のガイド材17寄り外側に位置しているので、該折曲部20において上記ロック材18を折曲し、さらにこれを回動させて上記第2スロープ3の側面に沿わせる。そして、この折曲部分を適宜の固定機構(図示省略)によって第2スロープ3側に固定保持する。後は、上記スロープ装置1の第1スロープ2と第2スロープ3を折り畳んで格納姿勢とする。
【0047】
「第3の実施形態」
図17には、本願発明の第3の実施形態に係るスロープ装置1を示している。このスロープ装置1は、折り畳み構造を持たない一体型のスロープ装置1であるが、その基本構成は、展開・格納可能な第1スロープ2と第2スロープ3をもって構成された上記第1の実施形態のスロープ装置1と同様である。
【0048】
即ち、このスロープ装置1は幅広のスロープ4を備えて構成され、該スロープ4の左右ンの長辺縁部4a、4bには車輪止め用のレール体6、7をそれぞれ取り付けるとともに、該各レール体6,7を上記スロープ4の前端4cからさらに前方へ延設してこの延設部分をそれぞれ掛止体8、9(特許請求の範囲中の上端掛止部24に該当する)としている。
【0049】
したがって、このスロープ装置1は、上記各掛止体8、9を高位面F1に掛止下状態で、該高位面F1と低位面F2の間に架設される。そして、この架設状態では、上記各実施形態の場合と同様に、該スロープ4の通路面13の高さは、上記高位面F1の上面高さに略合致した状態で保持されている。このため、車椅子が、上記高位面F1と低位面F2の間を上記スロープ装置1の通路面13介して通行する場合、特に上記低位面F2から上記スロープ装置1の通路面13への移行時には、高位面F1と通路面13の境部分に車椅子の走行障害都なる物が存在しないことから、該車椅子の走行の安全性が確保されることになる。
【0050】
なお、この実施形態では、上記掛止体8と掛止体9との間隔が広いことから、上記スロープ装置1のスロープ4の前端4cに補強材16を横設し、該前端4cの垂れ下がりを防止するようにしている。
【0051】
上記説明以外の部分の構成等についいては、上記第1の実施形態のスロープ装置1における該当説明を援用し、ここでの説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本願発明に係る携帯用スロープ装置は、主として介護分野において広く利用されるものである。
【符号の説明】
【0053】
1 ・・スロープ装置
2 ・・第1スロープ体
3 ・・第2スロープ体
4 ・・スロープ体
5 ・・ヒンジ部
6 ・・レール体
7 ・・レール体
8 ・・掛止体
9 ・・掛止体
10 ・・掛止体
11 ・・連結部
12 ・・端部材
13 ・・通路面
14 ・・滑り止め材
15 ・・滑り止め材
16 ・・枢支ピン
17 ・・ガイド材
18 ・・ロック材
19 ・・ハンドル部
20 ・・折曲部
24 ・・上端掛止部
25 ・・中間支持部
F1 ・・高位面
F2 ・・低位面