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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017898
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】シール構造
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/447 20060101AFI20250130BHJP
   F16J 15/40 20060101ALI20250130BHJP
   F16J 15/24 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
F16J15/447
F16J15/40 Z
F16J15/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121245
(22)【出願日】2023-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】株式会社PILLAR
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加門 祐介
(72)【発明者】
【氏名】日名 純
【テーマコード(参考)】
3J042
3J043
【Fターム(参考)】
3J042AA06
3J042AA11
3J042BA03
3J042CA02
3J042CA10
3J043AA16
3J043CA03
3J043CA04
3J043HA03
3J043HA04
(57)【要約】
【課題】簡単な構成でパージガスを導入することができるシール構造を提供する。
【解決手段】本開示のシール構造は、互いに径方向に対向する内側被シール面と外側被シール面との間をシールするシール構造であって、前記内側被シール面及び前記外側被シール面にそれぞれ密着する環状のグランドパッキンと、前記グランドパッキンよりも、被密封流体が存在する機内側に設けられ、前記内側被シール面との間にラビリンス隙間が形成される環状のラビリンスパッキンと、を備え、前記ラビリンスパッキンは、前記内側被シール面との間にパージガスを導入するために、前記ラビリンスパッキンの内周側で開口するパージ流路を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに径方向に対向する内側被シール面と外側被シール面との間をシールするシール構造であって、
前記内側被シール面及び前記外側被シール面にそれぞれ密着する環状のグランドパッキンと、
前記グランドパッキンよりも、被密封流体が存在する機内側に設けられ、前記内側被シール面との間にラビリンス隙間が形成される環状のラビリンスパッキンと、を備え、
前記ラビリンスパッキンは、前記内側被シール面との間にパージガスを導入するために、前記ラビリンスパッキンの内周側で開口するパージ流路を有する、シール構造。
【請求項2】
前記パージ流路は、前記ラビリンスパッキンの内周側において、前記グランドパッキン側の位置で開口しており、
前記ラビリンス隙間は、前記ラビリンスパッキンと前記内側被シール面との間において、前記機内側に形成された第1ラビリンス隙間と、前記グランドパッキン側に形成された第2ラビリンス隙間と、を有する、請求項1に記載のシール構造。
【請求項3】
前記ラビリンスパッキンは、周方向に分割された複数の分割体で構成されている、請求項1又は請求項2に記載のシール構造。
【請求項4】
周方向に隣り合う前記分割体の端部同士は、周方向に互いに隙間をあけて配置された状態で、軸方向に互いに当接している、請求項3に記載のシール構造。
【請求項5】
周方向に隣り合う前記分割体のうちの一方の端部は、
軸方向一方側において軸方向に延び、周方向一方側に面する第1面と、
前記第1面の軸方向他方端から周方向他方側に延び、軸方向他方側に面する第2面と、
前記第2面の周方向他方端から軸方向他方側に延び、周方向一方側に面する第3面と、を有し、
周方向に隣り合う前記分割体のうちの他方の端部は、
軸方向一方側において軸方向に延び、周方向他方側に面する第4面と、
前記第4面の軸方向他方端から周方向他方側に延び、軸方向一方側に面する第5面と、
前記第5面の周方向他方端から軸方向他方側に延び、周方向他方側に面する第6面と、を有し、
前記第1面及び前記第4面が周方向に互いに隙間をあけて配置され、かつ、前記第3面及び前記第6面が周方向に互いに隙間をあけて配置された状態で、前記第2面及び前記第5面は、軸方向に互いに当接している、請求項4に記載のシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、流体機器内の被密封流体が、外箱と軸との隙間を通過して大気側へ漏れるのを抑制する軸封装置が開示されている。この軸封装置は、前記隙間の大気側に配置されたグランドパッキンと、前記隙間の機内側に配置されたラビリンスパッキンと、これら両パッキンの間に配置されたランタンリングと、を備える。グランドパッキンは、軸方向に押圧されることで、その外周面と内周面がそれぞれ外箱と軸に密着して前記隙間をシールする。
【0003】
ラビリンスパッキンは、その内周側に形成された凹凸部によって、機内側の被密封流体がグランドパッキン側へ流れるのを抑制している。ランタンリングには、その内周側にパージガスを供給するための連通孔が形成されている。ランタンリングの連通孔から前記内周側に供給されたパージガスは、ラビリンスパッキンの内周側を通過して機内側へ流れる。これにより、機内側の被密封流体が大気側へ漏れるのを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭59-97277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の軸封装置では、グランドパッキン以外に、パージガスを機内側へ導入するためのラビリンスパッキン及びランタンリングが必要になるため、部品点数が多く、組み付け作業が煩雑であった。
【0006】
本開示は、簡単な構成でパージガスを導入することができるシール構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示は、互いに径方向に対向する内側被シール面と外側被シール面との間をシールするシール構造であって、前記内側被シール面及び前記外側被シール面にそれぞれ密着する環状のグランドパッキンと、前記グランドパッキンよりも、被密封流体が存在する機内側に設けられ、前記内側被シール面との間にラビリンス隙間が形成される環状のラビリンスパッキンと、を備え、前記ラビリンスパッキンは、前記内側被シール面との間にパージガスを導入するために、前記ラビリンスパッキンの内周側で開口するパージ流路を有する、シール構造である。
【0008】
本開示のシール構造によれば、ラビリンスパッキンが、内側被シール面との間にパージガスを導入するためのパージ流路を有するので、従来のように連通孔(パージ流路)が形成されたランタンリングを設ける必要がない。これにより、簡単な構成でパージガスを導入することができる。
【0009】
(2)前記(1)のシール構造において、前記パージ流路は、前記ラビリンスパッキンの内周側において、前記グランドパッキン側の位置で開口しており、前記ラビリンス隙間は、前記ラビリンスパッキンと前記内側被シール面との間において、前記機内側に形成された第1ラビリンス隙間と、前記グランドパッキン側に形成された第2ラビリンス隙間と、を有するのが好ましい。
この場合、ラビリンスパッキンと内側被シール面との間には、機内側の第1ラビリンス隙間以外に、グランドパッキン側(パージ流路側)にも第2ラビリンス隙間が形成される。これにより、機内側の被密封流体が、ラビリンス隙間を通過してグランドパッキン側へ流れるのを効果的に抑制することができる。
【0010】
(3)前記(1)又は(2)のシール構造において、前記ラビリンスパッキンは、周方向に分割された複数の分割体で構成されているのが好ましい。
ラビリンスパッキンが無端環状に形成されている場合、内側被シール面の軸方向の端部からラビリンスパッキンを挿入し、内側被シール面の軸方向の所定位置までラビリンスパッキンを移動させる必要があり、組み付け作業に多大な時間を要する。これに対して、上記(3)のシール構造では、内側被シール面の前記所定位置において複数の分割体を周方向に組み合わせることでラビリンスパッキンを装着することができる。したがって、無端環状のラビリンスパッキンよりも短時間でラビリンスパッキンを装着することができる。
【0011】
(4)前記(3)のシール構造において、周方向に隣り合う前記分割体の端部同士は、周方向に互いに隙間をあけて配置された状態で、軸方向に互いに当接しているのが好ましい。
この場合、周方向に隣り合う分割体の端部同士は、周方向に互いに隙間をあけて配置されるので、各分割体の径方向の寸法が熱影響によって変化しても、その寸法変化を前記隙間によって吸収することができる。また、周方向に隣り合う分割体の端部同士は、軸方向に互いに当接するので、これらの当接部分によって、前記隙間に入り込んだパージガスがグランドパッキン側へ漏れるのを抑制することができる。
【0012】
(5)前記(4)のシール構造において、周方向に隣り合う前記分割体のうちの一方の端部は、軸方向一方側において軸方向に延び、周方向一方側に面する第1面と、前記第1面の軸方向他方端から周方向他方側に延び、軸方向他方側に面する第2面と、前記第2面の周方向他方端から軸方向他方側に延び、周方向一方側に面する第3面と、を有し、周方向に隣り合う前記分割体のうちの他方の端部は、軸方向一方側において軸方向に延び、周方向他方側に面する第4面と、前記第4面の軸方向他方端から周方向他方側に延び、軸方向一方側に面する第5面と、前記第5面の周方向他方端から軸方向他方側に延び、周方向他方側に面する第6面と、を有し、前記第1面及び前記第4面が周方向に互いに隙間をあけて配置され、かつ、前記第3面及び前記第6面が周方向に互いに隙間をあけて配置された状態で、前記第2面及び前記第5面は、軸方向に互いに当接しているのが好ましい。
【0013】
この場合、周方向に隣り合う分割体の端部同士が、それぞれ第1面(第4面)、第2面(第5面)、及び第3面(第6面)の三面からなる簡単な構成によって、熱影響による径方向の寸法変化を吸収することができ、かつ、パージガスがグランドパッキン側へ漏れるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示の軸封装置によれば、簡単な構成でパージガスを導入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施形態に係るシール構造を備えた軸封装置を示す断面図である。
図2図2は、ラビリンスパッキンの拡大断面図である。
図3図3は、ラビリンスパッキンを大気側から見た図である。
図4図4は、図3のI矢視図である。
図5図5は、図3のII矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本開示の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
[軸封装置]
図1は、実施形態に係るシール構造10を備えた軸封装置1を示す断面図である。軸封装置1は、例えば乾燥機又は撹拌機等の流体機器に設けられ、流体機器の機内側(図1の左側)に存在する被密封流体が大気側(図1の右側)へ漏れるのを抑制する。被密封流体は、例えば粉体である。流体機器は、軸線C回りに回転したり、軸線C方向に往復移動したりする軸50を備える。
【0017】
本実施形態の軸50は、円柱状の軸本体51と、軸本体51の外周面に嵌合された円筒状のスリーブ52と、を有する。軸50は、軸本体51のみで構成されてもよい。また、本実施形態の流体機器では、軸50の軸線Cが水平方向に配置されているが、当該軸線Cが鉛直方向に配置されてもよい。以下、本明細書では、軸線Cに沿う方向を「軸方向」、軸線Cと直交する方向を「径方向」、軸線C回りの方向を「周方向」という。
【0018】
軸封装置1は、シールボックス2と、締付機構3と、シール構造10と、を備える。シールボックス2は、軸50を包囲する円筒状のボックス本体21と、ボックス本体21の軸方向両端部からそれぞれ径方向外方に延びる一対の環状のフランジ22と、を有する。機内側のフランジ22は、流体機器のハウジング側に固定される。大気側のフランジ22には、ネジ孔23が軸方向に貫通して形成されている。ネジ孔23は、フランジ22の周方向に複数(図1では1個のみ図示)形成されている。
【0019】
ボックス本体21の内周には、径方向に延びる環状の段差面21aと、段差面21aの外周端から大気側のフランジ22まで延びる円周面21bと、が形成されている。円周面21bは、軸50(スリーブ52)の外周面53と径方向に対向している。ボックス本体21の円周面21bと、軸50の外周面53との間には、環状空間Sが形成されている。
【0020】
ボックス本体21には、環状空間SにパージガスA,Bを導入するための一対の導入孔24が、径方向に貫通して形成されている。一対の導入孔24は、第1導入孔24Aと、第1導入孔24Aよりも大気側に位置する第2導入孔24Bと、からなる。第1導入孔24Aには、圧縮されたパージガスAが流れる配管61が接続される。第2導入孔24Bには、圧縮されたパージガスBが流れる配管62が接続される。パージガスBは、パージガスAよりも高圧である。
【0021】
シール構造10は、環状空間Sに配置され、シールボックス2の円周面(外側被シール面)21bと、軸50の外周面(内側被シール面)53との間をシールする。本実施形態のシール構造10は、複数のグランドパッキン11、複数のスペーサ12、ランタンリング13、補助パッキン14、及びラビリンスパッキン15を備える。
【0022】
ラビリンスパッキン15は、複数のグランドパッキン11よりも機内側に配置される。本実施形態のラビリンスパッキン15は、環状空間Sにおいて最も機内側に配置されている。ラビリンスパッキン15は、環状に形成されている。ラビリンスパッキン15の機内側の端面15aは、ボックス本体21の段差面21aに当接する。ラビリンスパッキン15の外径は、シールボックス2の円周面21bの内径よりも小さい。ラビリンスパッキン15の大気側の外周面は、シールボックス2の第1導入孔24Aと対向している。ラビリンスパッキン15の詳細については後述する。
【0023】
補助パッキン14は、ラビリンスパッキン15の大気側に隣接して配置される。補助パッキン14は、環状に形成されている。補助パッキン14は、環状空間Sにおいてシールボックス2の第1導入孔24Aと第2導入孔24Bとの間に位置する。補助パッキン14の外周面及び内周面は、それぞれシールボックス2の円周面21b、及び軸50の外周面53に当接している。補助パッキン14は、複数のグランドパッキン11のシール性能を補完する。補助パッキン14は、グランドパッキン11よりも、軸50の外周面53との間をパージガスBが通過し易い材料からなる。
【0024】
ランタンリング13は、補助パッキン14の大気側に隣接して配置される。ランタンリング13は、環状に形成されている。ランタンリング13の外周面及び内周面は、それぞれシールボックス2の円周面21b、及び軸50の外周面53に当接している。ランタンリング13には、流路孔13aが径方向に貫通して形成されている。流路孔13aは、シールボックス2の第2導入孔24Bと連通している。
【0025】
配管62を流れるパージガスBは、第2導入孔24B及び流路孔13aを通過して、ランタンリング13の内周側に導入される。ランタンリング13の内周側に導入されたパージガスBは、補助パッキン14の内周側を通過してラビリンスパッキン15の内周側へ流れる。
【0026】
複数のグランドパッキン11及び複数のスペーサ12は、ランタンリング13よりも大気側において、軸方向に交互に並べて配置される。グランドパッキン11の個数とスペーサ12の個数は、同数(図1では3個)である。グランドパッキン11及びスペーサ12の各個数は、本実施形態に限定されない。
【0027】
グランドパッキン11は環状に形成されている。グランドパッキン11は、締付機構3により軸方向に押圧される。スペーサ12は、例えば金属製の環状の板部材からなる。軸方向に隣り合うグランドパッキン11同士の間にスペーサ12が配置されることで、各グランドパッキンは均等に押圧される。
【0028】
締付機構3は、複数のグランドパッキン11を軸方向に押圧する機構である。締付機構3は、押圧部材4と、ネジ軸5と、スプリング6と、ナット7と、を有する。押圧部材4は、軸50の径方向外側に配置される円筒部4aと、環状のフランジ部4bと、を有する。円筒部4aの機内側の端部は、環状空間Sに挿入される。円筒部4aは、シールボックス2に対して軸方向に移動可能である。
【0029】
フランジ部4bは、円筒部4aの大気側の端部から径方向外方に延びている。フランジ部4bには、軸方向に貫通する貫通孔4cが、周方向に複数(図1では1個のみ図示)形成されている。貫通孔4cの個数は、シールボックス2のネジ孔23の個数と同数である。
【0030】
ネジ軸5は、押圧部材4の貫通孔4cを貫通し、シールボックス2のネジ孔23に締め込まれている。これにより、ネジ軸5の一端部は、シールボックス2に固定されている。ネジ軸5の他端部は、押圧部材4よりも大気側に突出している。ネジ軸5は、押圧部材4の軸方向への移動をガイドする。
【0031】
ネジ軸5の押圧部材4よりも大気側には、スプリング6が挿入された状態で、ナット7が締め込まれる。スプリング6は、圧縮コイルスプリングである。ナット7の締め込みによって、押圧部材4は、ネジ軸5及びシールボックス2に対して機内側へ移動し、複数のグランドパッキン11を軸方向に押圧する。このように複数のグランドパッキン11が押圧されると、各グランドパッキン11の外周面11a及び内周面11bは、それぞれ径方向に対向するシールボックス2の円周面21b及び軸50の外周面53に密着する。これにより、各グランドパッキン11は、流体機器内の被密封流体及び各パージガスA,Bが大気側へ漏れるのを抑制する。
【0032】
[ラビリンスパッキン]
図2は、ラビリンスパッキン15の拡大断面図である。図1及び図2において、ラビリンスパッキン15は、軸50の外周面53との間にラビリンス隙間30を形成するパッキンである。本実施形態のラビリンス隙間30は、機内側に形成された第1ラビリンス隙間31と、大気側(グランドパッキン11側)に形成された第2ラビリンス隙間32と、によって構成される。
【0033】
ラビリンスパッキン15の内周における機内側には、第1ラビリンス隙間31を形成する第1ラビリンス部16が設けられている。第1ラビリンス部16は、軸方向に交互に配置された複数の凹部161及び複数の凸部162を有する。凹部161及び凸部162は、ラビリンスパッキン15の周方向全体にわたって環状に形成されている。
【0034】
本実施形態の凸部162は、断面視において、径方向内方に向かって先細るように略三角形状に形成されている。凸部162は、機内側の側面163と、大気側の側面164と、を有する。機内側の側面163は、径方向に沿ってまっすぐ延びている。大気側の側面164は、機内側から大気側に向かうにしたがって拡径する傾斜面である。第1ラビリンス部16(複数の凹部161及び複数の凸部162)と、軸50の外周面53との間には、第1ラビリンス隙間31が形成される。凸部162の断面形状は、本実施形態に限定されない。
【0035】
ラビリンスパッキン15の内周における大気側には、第2ラビリンス隙間32を形成する第2ラビリンス部17が設けられている。第2ラビリンス部17は、軸方向に交互に配置された複数の凹部171及び複数の凸部172を有する。凸部172は、機内側の側面173と、大気側の側面174と、を有する。凹部171及び凸部172(側面173,174)は、それぞれ第1ラビリンス部16の凹部161及び凸部162(側面163,164)と同様の構成であるため、詳細な説明を省略する。第2ラビリンス部17(複数の凹部171及び複数の凸部172)と、軸50の外周面53との間には、第2ラビリンス隙間32が形成される。凸部172の断面形状は、本実施形態に限定されない。
【0036】
ラビリンスパッキン15の内周における第1ラビリンス部16と第2ラビリンス部17との間には、円周面18が形成されている。円周面18の直径は、凹部161(凹部171)の底面の直径と略同一である。ラビリンスパッキン15の円周面18と、軸50の外周面53との間には、環状隙間33が形成されている。
【0037】
第1ラビリンス部16及び第2ラビリンス部17は、ラビリンスパッキン15の内周において軸方向に連続して形成されてもよい。つまり、第1ラビリンス隙間31及び第2ラビリンス隙間32は、ラビリンスパッキン15と軸50の外周面53との間において軸方向に連続して形成されてもよい。また、第2ラビリンス部17は、ラビリンスパッキン15の内周に形成されなくてもよい。つまり、第2ラビリンス隙間32は、ラビリンスパッキン15と軸50の外周面53との間に形成されなくてもよい。
【0038】
ラビリンスパッキン15の外周には、一対の溝19が形成されている。一対の溝19は、機内側に位置する第1溝19Aと、大気側に位置する第2溝19Bと、からなる。第1溝19A及び第2溝19Bは、それぞれ断面視においてU字状に形成されている。本実施形態では、第1溝19Aは、第1ラビリンス部16の径方向外方に位置する。第2溝19Bは、第2ラビリンス部17の径方向外方に位置し、かつ、シールボックス2の第1導入孔24Aと対向して配置される。
【0039】
第1溝19A及び第2溝19Bには、それぞれガータースプリング35が装着されている。ガータースプリング35は、環状に形成されている。ガータースプリング35は、その付勢力によって、ラビリンスパッキン15を常に径方向内方に押圧している。ガータースプリング35の付勢力により、ラビリンスパッキン15が径方向外方へ熱膨張するのを抑制することができる。
【0040】
[パージ流路]
図3は、ラビリンスパッキン15を大気側から見た図である。図2及び図3において、ラビリンスパッキン15は、軸50の外周面53との間にパージガスAを導入するために、ラビリンスパッキン15の内周側で開口するパージ流路15bを有する。パージ流路15bは、ラビリンスパッキン15の周方向に等間隔をあけて複数(図3では6個)形成されている。
【0041】
本実施形態のパージ流路15bは、ラビリンスパッキン15の内周側において、グランドパッキン11側の位置で開口するように形成されている。具体的には、パージ流路15bは、第2溝19Bの底部から第2ラビリンス部17まで、ラビリンスパッキン15を径方向に貫通して形成されている。パージ流路15bは、第2ラビリンス隙間32と連通している。パージ流路15bは、第2ラビリンス部17において凹部171の底面において開口している。このため、パージ流路15bが開口する凹部171は、他の凹部171よりも軸方向に長く形成されている。
【0042】
パージ流路15bは、第1ラビリンス部16よりも大気側で開口すれば、本実施形態に限定されない。例えば、パージ流路15bは、ラビリンスパッキン15における第1溝19Aと第2溝19Bとの間の外周面から円周面18まで、径方向に貫通して形成されてもよい。
【0043】
図1及び図2において、配管61を流れるパージガスAは、第1導入孔24A及びパージ流路15bを通過して、ラビリンスパッキン15の内周側である第2ラビリンス隙間32に供給される。第2ラビリンス隙間32に供給されたパージガスAは、環状隙間33及び第1ラビリンス隙間31を通過して機内側へ流れ込む。その際、上記のようにランタンリング13の内周側からラビリンスパッキン15の内周側(第2ラビリンス隙間32)に流れるパージガスBも、環状隙間33及び第1ラビリンス隙間31を通過して機内側へ流れ込む。これにより、機内側の被密封流体が大気側へ漏れるのを抑制できる。
【0044】
ラビリンスパッキン15の機内側の端面15aには、環状のシール溝15cが形成されている。シール溝15cは、例えば、大気側の溝底から機内側の開口に向かって径方向(図2の上下方向)の溝幅が狭くなる蟻溝からなる。シール溝15cには、Oリング36が装着される。Oリング36は、ラビリンスパッキン15の端面15aと、シールボックス2の段差面21aとの間をシールする。
【0045】
これにより、シールボックス2の第1導入孔24Aから、ラビリンスパッキン15とボックス本体21との隙間にパージガスAが流れ込んでも、そのパージガスAが、端面15aと段差面21aとの間から径方向内側へ流れるのを、Oリング36で防止することができる。したがって、パージガスAが、第1ラビリンス部16を通過することなく機内側へ流れ込むのを防止することができる。
【0046】
[分割体]
図4は、図3のI矢視図である。図5は、図3のII矢視図である。図3図5において、ラビリンスパッキン15は、周方向に分割された複数の分割体40で構成されている。本実施形態では、複数の分割体40は、第1分割体40Aと、第2分割体40Bと、からなる。このため、ラビリンスパッキン15の端面15a、シール溝15c、第1ラビリンス部16、第2ラビリンス部17、円周面18、及び溝19は、それぞれ周方向において二分割されている。分割体40の個数は、本実施形態の2個に限定されず、3個以上であってもよい。
【0047】
第1分割体40A及び第2分割体40Bは、それぞれ半円弧状に形成されている。第1分割体40Aは、周方向両側に第1端部41及び第2端部42を有する。第2分割体40Bは、周方向両側に第3端部43及び第4端部44を有する。
【0048】
図3及び図4において、第1分割体40Aの第1端部41、及び第2分割体40Bの第3端部43は、周方向に隣り合っている。第1端部41及び第3端部43は、周方向に互いに隙間45,46をあけて配置された状態で、軸方向に互いに当接している。具体的には、第1端部41及び第3端部43は、以下のように構成されている。
【0049】
第1分割体40Aの第1端部41は、第1面411と、第2面412と、第3面413と、を有する。第1面411は、第1端部41の軸方向一方側に形成されている。第1面411は、第1端部41の軸方向一方端から軸方向中央部まで軸方向に延び、周方向一方側に面している。
【0050】
第2面412は、第1端部41の軸方向中央部において、第1面411に対して直角に形成されている。第2面412は、第1面411の軸方向他方端から周方向他方側に延び、軸方向他方側に面している。第3面413は、第1端部41の軸方向他方側において、第1面411に対して平行、かつ第2面412に対して直角に形成されている。第3面413は、第2面412の周方向他方端から、第1端部41の軸方向他方端まで軸方向に延び、周方向一方側に面している。
【0051】
第2分割体40Bの第3端部43は、第4面434と、第5面435と、第6面436と、を有する。第4面434は、第3端部43の軸方向一方側に形成されている。第4面434は、第3端部43の軸方向一方端から軸方向中央部まで軸方向に延び、周方向他方側に面している。
【0052】
第5面435は、第3端部43の軸方向中央部において、第4面434に対して直角に形成されている。第5面435は、第4面434の軸方向他方端から周方向他方側に延び、軸方向一方側に面している。第6面436は、第3端部43の軸方向他方側において、第4面434に対して平行、かつ第5面435に対して直角に形成されている。第6面436は、第5面435の周方向他方端から、第3端部43の軸方向他方端まで軸方向に延び、周方向他方側に面している。
【0053】
第1端部41の第1面411及び第3端部43の第4面434は、周方向に互いに隙間45をあけて配置される。同様に、第1端部41の第3面413及び第3端部43の第6面436は、周方向に互いに隙間46をあけて配置される。隙間45の周方向の寸法、及び隙間46の周方向の寸法は、略同一である。このように隙間45,46が形成された状態で、第1端部41の第2面412の一部、及び第3端部43の第5面435の一部は、軸方向に互いに当接している。
【0054】
図3及び図5において、第1分割体40Aの第2端部42、及び第2分割体40Bの第4端部44は、周方向に隣り合っている。第2端部42及び第4端部44は、周方向に互いに隙間47,48をあけて配置された状態で、軸方向に互いに当接している。具体的には、第2端部42及び第4端部44は、以下のように構成されている。
【0055】
第1分割体40Aの第2端部42は、第4面424と、第5面425と、第6面426と、を有する。第2端部42の第4面424、第5面425、及び第6面426は、それぞれ第3端部43(図4参照)の第4面434と、第5面435と、第6面436と同様の構成であるため、詳細な説明を省略する。
【0056】
第2分割体40Bの第4端部44は、第1面441と、第2面442と、第3面443と、を有する。第4端部44の第1面441、第2面442、及び第3面443は、それぞれ第1端部41(図4参照)の第1面411と、第2面412と、第3面413と同様の構成であるため、詳細な説明を省略する。
【0057】
第4端部44の第1面441及び第2端部42の第4面424は、周方向に互いに隙間47をあけて配置される。同様に、第4端部44の第3面443及び第2端部42の第6面426は、周方向に互いに隙間48をあけて配置される。隙間47の周方向の寸法、及び隙間48の周方向の寸法は、略同一である。このように隙間47,48が形成された状態で、第4端部44の第2面442の一部、及び第2端部42の第5面425の一部は、軸方向に互いに当接している。
【0058】
[作用効果]
本実施形態のシール構造10によれば、ラビリンスパッキン15は、軸50の外周面53との間にパージガスAを導入するためのパージ流路15bを有する。したがって、パージガスAを導入するために、従来のように連通孔(パージ流路)が形成されたランタンリングを設ける必要がない。これにより、簡単な構成でパージガスAを導入することができる。また、シール構造10の組み付け作業を容易に行うことができる。
【0059】
ラビリンスパッキン15と軸50の外周面53との間には、機内側の第1ラビリンス隙間31以外に、グランドパッキン11側(パージ流路15b側)にも第2ラビリンス隙間32が形成される。これにより、機内側の被密封流体が、ラビリンス隙間30を通過してグランドパッキン11側へ流れるのを効果的に抑制することができる。
【0060】
ラビリンスパッキンが無端環状に形成されている場合、軸の軸方向の端部からラビリンスパッキンを挿入し、軸の軸方向の所定位置までラビリンスパッキンを移動させる必要があり、組み付け作業に多大な時間を要する。これに対して、本実施形態のラビリンスパッキン15は、周方向に分割された複数の分割体40で構成される。このため、軸50の外周面53の所定位置において、複数の分割体40を周方向に組み合わせることで、ラビリンスパッキン15を装着することができる。したがって、無端環状のラビリンスパッキンよりも短時間でラビリンスパッキン15を装着することができる。
【0061】
周方向に隣り合う分割体40の端部41,43(42,44)同士は、周方向に互いに隙間45,46(47,48)をあけて配置される。このため、各分割体40の径方向の寸法が熱影響によって変化しても、その寸法変化を隙間45,46(47,48)によって吸収することができる。また、第1ラビリンス部16及び第2ラビリンス部17の各凸部162,172に対して軸50の外周面53が摺動することで、各凸部162,172の径方向の寸法が摩耗によって変化しても、その寸法変化を隙間45,46(47,48)によって吸収することができる。
【0062】
周方向に隣り合う分割体40の端部41,43(42,44)同士は、軸方向に互いに当接している。このため、これらの当接部分によって、隙間45,46(47,48)に入り込んだパージガスA,Bがグランドパッキン11側へ漏れるのを抑制することができる。
【0063】
周方向に隣り合う分割体40の端部41,43(42,44)同士は、それぞれ第1面411,441(第4面434,424)、第2面412,442(第5面435,425)、及び第3面413,443(第6面436,426)の三面からなる。これらの三面同士の組み合わせにより、端部41,43(42,44)同士は、周方向に隙間45,46(47,48)をあけた状態で軸方向に当接する。したがって、簡単な構成によって、熱影響又は摩耗による径方向の寸法変化を吸収することができ、かつ、パージガスA,Bがグランドパッキン11側へ漏れるのを抑制することができる。
【0064】
[その他]
シール構造10は、パージガスBを導入するために、ランタンリング13に替えて、パージ流路を有するラビリンスパッキンを備えてもよい。また、本実施形態のシール構造10は、パージガスA,Bをそれぞれ導入するためのラビリンスパッキン15及びランタンリング13を備えているが、少なくともパージガスAを導入するためのラビリンスパッキン15を備えていればよい。つまり、パージガスBが流れる配管62、第2導入孔24B及びランタンリング13は、必要に応じて設けられるもので、本開示のシール構造において必須の構成ではない。
【0065】
周方向に隣り合う分割体40の端部41,43(42,44)の各形状は、本実施形態に限定されない。例えば、本実施形態(図4図5参照)では、隙間45(47)が軸方向一方側かつ周方向一方側に形成され、隙間46(48)が軸方向他方側かつ周方向他方側に形成されているが、隙間45(47)が軸方向他方側かつ周方向一方側に形成され、隙間46(48)が軸方向一方側かつ周方向他方側に形成されるように、各端部41,43(42,44)を形成してもよい。また、端部41,43(42,44)の各形状を、軸方向全体にわたって周方向に凹凸する波形状又は鋸刃形状等にすることで、端部41,43(42,44)同士を周方向に隙間をあけた状態で軸方向に当接させてもよい。
【0066】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0067】
10 シール構造
11 グランドパッキン
15 ラビリンスパッキン
15b パージ流路
21b 円周面(外側被シール面)
30 ラビリンス隙間
31 第1ラビリンス隙間
32 第2ラビリンス隙間
40 分割体
41 第1端部(端部)
42 第2端部(端部)
43 第3端部(端部)
44 第4端部(端部)
53 外周面(内側被シール面)
411,441 第1面
412,442 第2面
413,443 第3面
424,434 第4面
425,435 第5面
426,436 第6面
図1
図2
図3
図4
図5