(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001791
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/41 20060101AFI20241226BHJP
G01N 27/409 20060101ALI20241226BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
G01N27/41 325H
G01N27/409 100
G01N27/416 331
G01N27/416 311H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101470
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】野村 昌史
(72)【発明者】
【氏名】中村 元彦
【テーマコード(参考)】
2G004
【Fターム(参考)】
2G004BB04
2G004BC02
2G004BE02
2G004BF05
2G004BH06
2G004BJ03
2G004ZA01
2G004ZA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】使用中の振動等による外筒の破損を抑制しガスセンサを提供する。
【解決手段】軸線O方向に延びるセンサ素子21と、主体金具11と、センサ素子に電気的に接続される端子金具75,76と、端子金具を保持する筒状のセパレータ91と、主体金具の後端側に固定されると共にセパレータを覆う外筒81と、外筒とセパレータとの間に配置される保持金具82と、を備えるガスセンサ1であって、セパレータは、本体部91tと該本体部よりも大径の拡径部91sとを有し、外筒は、本体部を収容する小径部81tと、小径部よりも大径で拡径部を収容する大径部81sと、大径部と小径部とを繋ぐ段部81cと、を備え、保持金具は、軸線方向に大径部と小径部とを跨いで配置されると共に、少なくともセパレータの本体部の側面と小径部の内面とに弾性的に接している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びるセンサ素子と、
前記センサ素子を保持する主体金具と、
前記軸線方向に延び、前記センサ素子に電気的に接続される端子金具と、
前記軸線方向に延び、前記端子金具を保持する筒状のセパレータと、
前記主体金具の後端側に固定されると共に前記セパレータを覆う外筒と、
前記外筒と前記セパレータとの間に配置される保持金具と、
を備えるガスセンサであって、
前記セパレータは、本体部と該本体部よりも大径の拡径部とを有し、
前記外筒は、前記本体部を収容する小径部と、前記小径部よりも大径で前記拡径部を収容する大径部と、前記大径部と前記小径部とを繋ぐ段部と、を備え、
前記保持金具は、前記軸線方向に前記大径部と前記小径部とを跨いで配置されると共に、少なくとも前記セパレータの前記本体部の側面と前記小径部の内面とに弾性的に接していることを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
前記小径部は前記大径部よりも後端側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記セパレータは、前記本体部と前記拡径部との間に径方向に延びる先端向き面又は後端向き面を有し、
前記保持金具は、前記先端向き面又は前記後端向き面に接することを特徴とする請求項1又は2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記保持金具は、前記大径部又は前記段部の少なくとも一方に接していることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレータとそれを覆う外筒とを備えたガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の排気ガス中の酸素やNOxの濃度を検出するガスセンサとして、固体電解質を用いた板状のセンサ素子を有するものが知られている。
この種のガスセンサとして、センサ素子の後端側に設けた電極パッドに端子金具を電気的に接触させるものが広く用いられている。端子金具はセパレータ(絶縁碍子)に保持されており、さらにセパレータは外筒(カバー)の内側に配置された保持金具等の金属部材によって弾性的に保持されている。(特許文献1)
また、セパレータは大径の拡径部を有しており、外筒はこのセパレータの形状に追随してセパレータを収容するため、小径部と、大径部と、大径部と小径部とを繋ぐ段部とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ガスセンサが車両の走行等によって振動環境下に晒されると、セラミック等の重量物からなるセパレータが振れ、セパレータを金属部材を介して保持する外筒にも荷重が掛かる。すると、外筒の形状の点から段部と小径部の繋ぎ目付近に応力が集中し、やがて金属疲労によってクラック等が発生する恐れがある。
【0005】
そこで、本発明は、使用中の振動等による外筒の破損を抑制したガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のガスセンサは、軸線方向に延びるセンサ素子と、前記センサ素子を保持する主体金具と、前記軸線方向に延び、前記センサ素子に電気的に接続される端子金具と、前記軸線方向に延び、前記端子金具を保持する筒状のセパレータと、前記主体金具の後端側に固定されると共に前記セパレータを覆う外筒と、前記外筒と前記セパレータとの間に配置される保持金具と、を備えるガスセンサであって、前記セパレータは、本体部と該本体部よりも大径の拡径部とを有し、前記外筒は、前記本体部を収容する小径部と、前記小径部よりも大径で前記拡径部を収容する大径部と、前記大径部と前記小径部とを繋ぐ段部と、を備え、前記保持金具は、前記軸線方向に前記大径部と前記小径部とを跨いで配置されると共に、少なくとも前記セパレータの前記本体部の側面と前記小径部の内面とに弾性的に接していることを特徴とする。
【0007】
このガスセンサによれば、保持金具に接したセパレータの本体部が振動等によって径方向に振れると、外筒の小径部の内面に接している弾性部が径方向に撓む。
これにより、セパレータの振れにより小径部に掛かる荷重、ひいては小径部を介して応力が集中し易い段部に掛かる荷重を軽減し、使用中の振動等による外筒の破損を抑制することができる。
【0008】
本発明のガスセンサにおいて、前記小径部は前記大径部よりも後端側に配置されていてもよい。
大径部よりも強度が低く、振れによって破損し易い小径部が後端側に配置されると、小径部がより振れやすくなるので、本発明を有効に適用できる。
【0009】
本発明のガスセンサにおいて、前記セパレータは、前記本体部と前記拡径部との間に径方向に延びる先端向き面又は後端向き面を有し、前記保持金具は、前記先端向き面又は前記後端向き面に接していてもよい。
このガスセンサによれば、セパレータを保持金具で確実に保持できる。
【0010】
本発明のガスセンサにおいて、前記保持金具は、前記大径部又は前記段部の少なくとも一方に接していてもよい。
このガスセンサによれば、保持金具を外筒81内部に確実に保持できる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、使用中の振動等による外筒の破損を抑制したを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態にかかるガスセンサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について、
図1~
図4に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態にかかるガスセンサ1の断面図、
図2は端子金具75の斜視図、
図3は保持金具82付近の部分断面図、
図4は保持金具82の上面図である。
【0014】
図1において、ガスセンサ(NOxセンサ)1は、センサ素子21と、軸線O方向に貫通してセンサ素子21を挿通させる貫通孔32を有するホルダ(セラミックホルダ)30と、セラミックホルダ30の径方向周囲を取り囲む主体金具11と、セパレータ91と、外筒81と、保持金具82とを備えている。
センサ素子21のうち、検知部22が形成された先端寄り部位が、セラミックホルダ30より先端に突出している。
セラミックホルダ30の貫通孔32の後端側には、貫通孔32に連通する充填用穴30hが形成されており、センサ素子21は、充填用穴30hにシール材(本例では滑石)41を充填することによって、セラミックホルダ30の貫通孔32内に気密に保持されている。
【0015】
セラミックホルダ30の後端側には、複数の端子金具75、76を保持するセパレータ91が配置されている。セパレータ91は、有底円筒状をなし、後端側が底部91eになっている。
また、セパレータ91は、本体部91tと、本体部91tよりも先端側で本体部91tよりも大径の拡径部91sとを一体に有している。
また、セパレータ91の中心部分には、センサ素子21が配置される中心孔91hが形成されており、底部91eには端子金具75,76の挿通孔(図示せず)が形成されている。
【0016】
そして、端子金具75,76は、中心孔91hを介してセンサ素子21の電極パッド24(
図1)に接触している。
ここで、端子金具75は、センサ素子21の幅方向の両端側にそれぞれ1つずつ配置され、端子金具76は、センサ素子21の幅方向の中央に1つ配置されている。
【0017】
なお、
図2に示すように、本例では端子金具75は棒状端子(本例では断面が円形)であり、軸線O方向に延びる本体部75aと、本体部75aの先端をセンサ素子21側に折り返したバネ接触部75bとを一体に有している。そして、本体部75aに対してバネ接触部75bが径方向に弾性的に撓むことで、バネ接触部75bが電極パッド24に接するようになっている。
一方、本体部75aの後端側が圧着端子を介してリード線71に接続されている。
また、端子金具75は、バネ接触部75bの先端が軸線O方向に交差する方向に曲げられたストッパ部75pを備え、バネ接触部75bとストッパ部75pとの間の屈曲部付近が電極パッド24に接する接触部C1となっている。
端子金具76も端子金具75と略同一の構成を有する。
【0018】
図1に戻り、センサ素子21の後端寄り部位はセラミックホルダ30及び主体金具11より後方に突出しており、その後端寄り部位に形成された各電極パッド24に端子金具75、76が圧接され、電気的に接続されている。
なお、端子金具76は、端子金具75よりも先端側に配置されている。また、端子金具76と所定の接触部(接触部C1と同様)を介して電気的に接続される電極パッド24も、端子金具75と接触部C1を介して電気的に接続される電極パッド24よりも先端側に配置されている。
一方、端子金具75、76の後端側はリード線71に接続され、リード線71はシール材85を通して外部に引き出されている。
また、電極パッド24を含むセンサ素子21の後端寄り部位は、外筒81でカバーされている。以下、さらに詳細に説明する。
【0019】
センサ素子21は軸線O方向に延びると共に、測定対象に向けられる先端側(図示下側)に、検知用電極等(図示せず)からなり被検出ガス中の特定ガス成分を検出する検知部22を備えた帯板状(板状)をなしている。センサ素子21の横断面は、先後において一定の大きさの長方形(矩形)をなし、セラミック(固体電解質等)を主体として細長いものとして形成されている。
このセンサ素子21自体は、従来公知のものと同じものであり、固体電解質(部材)の先端寄り部位に検知部22をなす一対の検知用電極が配置され、これに連なり後端寄り部位には、検知用出力取り出し用のリード線71接続用の電極パッド24が露出形成されている。
【0020】
また、本例では、センサ素子21のうち、固体電解質(部材)に積層状に形成されたセラミック材の先端寄り部位内部にヒータ(図示せず)が設けられており、後端寄り部位には、このヒータへの電圧印加用のリード線71接続用の電極パッド24が露出形成されている。
図示はしないが、これら電極パッド24は縦長矩形に形成され、例えばセンサ素子21の後端寄り部位において、帯板の幅広面(両面)に3つ又は2つの電極端子が横に並んでいる。
なお、センサ素子21の検知部22に、アルミナ又はスピネル等からなる多孔質の保護層(図示せず)が被覆されている。
【0021】
主体金具11は、先後において同心異径の筒状をなし、先端側が小径で、後述するプロテクタ51、61を外嵌して固定するための円筒状の円環状部(以下、円筒部ともいう)12を有し、その後方(図示上方)の外周面には、それより大径をなす、エンジンの排気管への固定用のネジ13が設けられている。そして、その後方には、このネジ13によってセンサ1をねじ込むための多角形部14を備えている。また、この多角形部14の後方には、ガスセンサ1の後方をカバーする保護筒(外筒)81を外嵌して溶接する円筒部15が連設され、その後方には外径がそれより小さく薄肉のカシメ用円筒部16を備えている。
なお、このカシメ用円筒部16は、
図1では、カシメ後のために内側に曲げられている。
【0022】
一方、主体金具11は、軸線O方向に貫通する内孔18を有している。内孔18の内周面は後端側から先端側に向かって径方向内側に先細るテーパ状の段部17を有している。
【0023】
主体金具11の内側には、絶縁性セラミック(例えばアルミナ)からなり、概略短円筒状に形成されたセラミックホルダ30が配置されている。セラミックホルダ30は拡径部31を有し、拡径部31の先端向き面が段部17に係止されつつ、セラミックホルダ30が後端側からシール材42、スリーブ43等を介してカシメ用円筒部16で押圧されている。これにより、主体金具11内にセラミックホルダ30が位置決めされ、かつ隙間嵌めされている。
【0024】
一方、センサ素子21の先端部位は、本形態では、2層構造からなり、共にそれぞれ通気孔(穴)を有する有底円筒状のプロテクタ(保護カバー)51,61で覆われている。プロテクタ51,61の後端は、主体金具11の円筒部12に外嵌され、溶接されている。
【0025】
又、
図1に示すように、センサ素子21の後端寄り部位に形成された各電極パッド24には、外部にシール材85を通して引き出された各リード線71の先端に設けられた各端子金具75、76がそのバネ性により圧接され、電気的に接続されている。そして、この圧接部を含む各端子金具75、76は、本例ガスセンサ1では、外筒81内に配置された絶縁性のセパレータ91内に設けられている。
そして、詳しくは後述するが、セパレータ91は、外筒81内に配置された保持金具82に係止されている。
【0026】
一方、外筒81の後端側の外面には保護外筒83が嵌合されており、保護外筒83の内側にシール材(例えばゴム)85が配置されている。さらに、外筒81と保護外筒83との間には撥水性の通気フィルタ95が介装されている。
また、リード線71は外筒81の後端部の内側に配置されたシール材85を通されて外部に引き出されており、保護外筒83を縮径カシメしてこのシール材85を圧縮することにより、この部位の気密が保持されている。
【0027】
次に、
図3,
図4を参照して保持金具82について説明する。
まず、外筒81は、セパレータ91の本体部91tを収容する小径部81tと、小径部81tよりも大径で拡径部91sを収容する大径部81sと、大径部81sと小径部81tとを繋ぐ段部81cと、を一体に備えている。
また、本例では小径部81tは大径部81sよりも後端側に配置されている。
【0028】
一方、保持金具82は略円板状をなし、中央に開口部82hを有する円板部82aと、円板部82aの一方の主面(
図3,
図4では上面又は後端向き面)の周方向に対向して配置される2つの弾性部82cとを有する。
弾性部82cは、軸線O方向に沿う断面が略L字状をなし、円板部82aの上面から後端側(上側)に向かって垂直に延びた立ち上がり部82c1を有し、立ち上がり部82c1からさらに径方向外側に向かって水平に延びた水平部82c2を有している。
そして、弾性部82cの水平部82c2が径方向に押されると、立ち上がり部82c1が径方向に撓むことで、弾性部82cが径方向に弾性的に変形してクッション効果を有する。
【0029】
そして、保持金具82は、軸線O方向に大径部81sと小径部81tとを跨いで配置される。より詳細には、本例では、弾性部82cのうち水平部82c2の径方向外側の端面82ceが小径部81tの内面に接し、弾性部82cのうち円板部82aの径方向外側の端面82aeが大径部81sの内面に接している。
また、保持金具82は、開口部82hにセパレータ91の本体部91tを貫通させるようにして、少なくとも本体部91tの側面と小径部81tの内面とに弾性部82cが弾性的に接している。より詳細には、開口部82hの内面が体部91tの側面に接している。
【0030】
そして、保持金具82の開口部82hに接したセパレータ91の本体部91tが振動等によって径方向に振れると、小径部81tの内面に接している弾性部82cが上述のように径方向に撓む。
これにより、セパレータ91の振れにより小径部81tに掛かる荷重、ひいては小径部81tを介して応力が集中し易い段部81cに掛かる荷重を軽減し、使用中の振動等による外筒81の破損を抑制することができる。
【0031】
なお、
図4に示すように、本例では、弾性部82cは、周方向に等間隔に(180度の間隔で)2個設けられている。
【0032】
また、本例では、セパレータ91は、本体部91tと拡径部91sとの間に径方向に延びる後端向き面91bを有し、保持金具82(の円板部82a)は、後端向き面91bに接する。
これにより、セパレータ91を保持金具82で確実に保持できる。
【0033】
また、本例では、保持金具82は、大径部81s(又は段部81c)の少なくとも一方に接している。これにより、保持金具82を外筒81の内部に確実に保持できる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0035】
例えば、弾性部82cの形状、個数は限定されず、例えば弾性部82cが周方向に連続していてもよい。
また、
図5に示す変形例の保持金具182のように、円板部182a上に弾性部182cが配置され、この弾性部182cは立ち上がり部182c1と水平部182c2を有している。そして、この立ち上がり部182c1の径方向内側に凸部182pを設けてもよい。
【0036】
また、本発明を適用するガスセンサは、酸素センサに限られることはなく、端子金具を備えるガスセンサであれば、NOxセンサや水素センサなど他の種類のガスを検出するガスセンサであってもよい。
センサ素子も板型に限らず、筒型素子であってもよい。端子金具も棒状に限らず、金属板を加工した形状であってもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 ガスセンサ
11 主体金具
21 センサ素子
75,76 端子金具
81 外筒
81c 段部
81t 小径部
81s 大径部
82、182 保持金具
91 セパレータ
91b セパレータの後端向き面
91t 本体部
91s 拡径部
O 軸線