IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社MARS Companyの特許一覧

<>
  • 特開-冷却装置および冷却方法 図1
  • 特開-冷却装置および冷却方法 図2
  • 特開-冷却装置および冷却方法 図3
  • 特開-冷却装置および冷却方法 図4
  • 特開-冷却装置および冷却方法 図5
  • 特開-冷却装置および冷却方法 図6
  • 特開-冷却装置および冷却方法 図7
  • 特開-冷却装置および冷却方法 図8
  • 特開-冷却装置および冷却方法 図9
  • 特開-冷却装置および冷却方法 図10
  • 特開-冷却装置および冷却方法 図11
  • 特開-冷却装置および冷却方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001794
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】冷却装置および冷却方法
(51)【国際特許分類】
   F25D 3/02 20060101AFI20241226BHJP
   A23B 4/06 20060101ALI20241226BHJP
   A23B 2/80 20250101ALI20241226BHJP
   F25D 9/00 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
F25D3/02
A23B4/06 501A
A23L3/36 Z
F25D9/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101480
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】509317531
【氏名又は名称】株式会社MARS Company
(74)【代理人】
【識別番号】100144886
【弁理士】
【氏名又は名称】大坪 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】大野 正樹
(72)【発明者】
【氏名】井筒 伊朗
【テーマコード(参考)】
3L044
4B022
【Fターム(参考)】
3L044AA04
3L044CA04
3L044DC01
3L044FA06
3L044KA04
3L044KA05
4B022LA06
4B022LP05
4B022LT06
4B022LT13
(57)【要約】
【課題】被冷却物の冷却以外に、被冷却物のカット、洗浄、保管といった冷却以外のプロセスを行うことができる冷却装置および冷却方法を提供する。
【解決手段】冷却装置1は、被冷却物である魚Qを第1氷スラリーS1に浸漬して冷却する冷却ユニット3と、冷却ユニット3で冷却された魚Qを洗浄する洗浄ユニット4と、洗浄ユニット4で洗浄された魚Qを第2氷スラリーS2に浸漬して保管する保管ユニット5と、第1氷スラリーS1を製造して冷却ユニット3に供給する第1氷スラリー製造ユニット6と、第2氷スラリーS2を製造して保管ユニット5に供給する第2氷スラリー製造ユニット7と、を有する。また、第1氷スラリーS2の温度は、-20°以下であり、第2氷スラリーS2の温度は、-2~0℃である。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却物を第1氷スラリーに浸漬して冷却する冷却ユニットと、
前記冷却ユニットで冷却された前記被冷却物を洗浄する洗浄ユニットと、
前記洗浄ユニットで洗浄された前記被冷却物を第2氷スラリーに浸漬して保管する保管ユニットと、を有することを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記第1氷スラリーを製造して前記冷却ユニットに供給する第1氷スラリー製造ユニットと、
前記第2氷スラリーを製造して前記保管ユニットに供給する第2氷スラリー製造ユニットと、を有する請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記第1氷スラリーの温度は、-20°以下である請求項1に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記第2氷スラリーの温度は、-2~0℃である請求項1に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記第1氷スラリーおよび前記第2氷スラリーは、それぞれ、塩水から生成されている請求項1に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記洗浄ユニットは、前記被冷却物に洗浄液を吹き付けることで前記被冷却物を洗浄する請求項1に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記洗浄液は、-2~0℃である請求項6に記載の冷却装置。
【請求項8】
前記被冷却物は、魚であり、
前記第1氷スラリーに浸漬する前に、前記魚の血管を断ち切る切断ユニットをさらに有する請求項1に記載の冷却装置。
【請求項9】
被冷却物を第1氷スラリーに浸漬して冷却し、
前記冷却された前記被冷却物を洗浄し、
前記洗浄された前記被冷却物を第2氷スラリーに浸漬して保管することを特徴とする冷却方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置および冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、野菜、魚介類等の被冷却物を冷却するための冷却装置が開示されている。この冷却装置は、アイスフレーク(フレーク状の氷)を生成する人工雪製造装置と、人工雪製造装置で生成されたアイスフレークを水に混合することにより得られる氷スラリーを貯留するタンクと、タンクとの間で氷スラリーが循環する冷却プールと、を有する。そして、冷却プール内の氷スラリーに被冷却物を浸漬することにより、被冷却物が冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-108556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の冷却装置は、被冷却物を冷却することしかできず、被冷却物のカット、洗浄、保管といった冷却以外のプロセスを行うことができない。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、被冷却物の冷却以外に、被冷却物のカット、洗浄、保管といった冷却以外のプロセスを行うことができる冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
【0007】
(1)被冷却物を第1氷スラリーに浸漬して冷却する冷却ユニットと、
前記冷却ユニットで冷却された前記被冷却物を洗浄する洗浄ユニットと、
前記洗浄ユニットで洗浄された前記被冷却物を第2氷スラリーに浸漬して保管する保管ユニットと、を有することを特徴とする冷却装置。
【0008】
(2) 前記第1氷スラリーを製造して前記冷却ユニットに供給する第1氷スラリー製造ユニットと、
前記第2氷スラリーを製造して前記保管ユニットに供給する第2氷スラリー製造ユニットと、を有する上記(1)に記載の冷却装置。
【0009】
(3) 前記第1氷スラリーの温度は、-20°以下である上記(1)に記載の冷却装置。
【0010】
(4) 前記第2氷スラリーの温度は、-2~0℃である上記(1)に記載の冷却装置。
【0011】
(5) 前記第1氷スラリーおよび前記第2氷スラリーは、それぞれ、塩水から生成されている上記(1)に記載の冷却装置。
【0012】
(6) 前記洗浄ユニットは、前記被冷却物に洗浄液を吹きかけることで前記被冷却物を洗浄する上記(1)に記載の冷却装置。
【0013】
(7) 前記洗浄液は、-2~0℃である上記(6)に記載の冷却装置。
【0014】
(8) 前記被冷却物は、魚であり、
前記第1氷スラリーに浸漬する前に、前記魚の血管を断ち切る切断ユニットをさらに有する上記(1)に記載の冷却装置。
【0015】
(9) 被冷却物を第1氷スラリーに浸漬して冷却し、
前記冷却された前記被冷却物を洗浄し、
前記洗浄された前記被冷却物を第2氷スラリーに浸漬して保管することを特徴とする冷却方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の冷却装置は、前述したように、被冷却物を第1氷スラリーに浸漬して冷却する冷却ユニットと、冷却ユニットで冷却された被冷却物を洗浄する洗浄ユニットと、洗浄ユニットで洗浄された被冷却物を第2氷スラリーに浸漬して保管する保管ユニットと、を有するため、被冷却物の冷却以外にも、被冷却物の洗浄、保管を行うことができる。そのため、利便性の高い冷却装置となる。
【0017】
同様に、本発明の冷却方法は、被冷却物を第1氷スラリーに浸漬して冷却し、冷却された被冷却物を洗浄し、洗浄された被冷却物を第2氷スラリーに浸漬して保管するため、被冷却物の冷却以外にも、被冷却物の洗浄、保管を行うことができる。そのため、利便性の高い冷却方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る冷却装置の全体図である。
図2】切断ユニットを示す図である。
図3】第1氷スラリー製造装置を示す図である。
図4】冷却ユニットを示す図である。
図5】ヒラメの切り身の写真である。
図6】ヒラメの切り身の写真である。
図7】洗浄ユニットを示す図である。
図8】第2氷スラリー製造装置を示す図である。
図9】保管ユニットを示す図である。
図10】第1実施形態に係る冷却装置の冷却ユニットを示す図である。
図11】洗浄ユニットを示す図である。
図12】保管ユニットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の冷却装置および冷却方法を添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0020】
<第1実施形態>
図1に示す冷却装置1は、被冷却物である海産物(魚介類)、特に魚Qを冷却するための装置である。ただし、被冷却物としては、特に限定されない。
【0021】
図1に示すように、このような冷却装置1は、血抜きのために魚Qの血管を切断する切断ユニット2と、切断ユニット2で血管が切断された魚Qを第1氷スラリーS1に浸漬して冷却する冷却ユニット3と、冷却ユニット3で冷却された魚Qを洗浄する洗浄ユニット4と、洗浄ユニット4で洗浄された魚Qを第2氷スラリーS2に浸漬して保管する保管ユニット5と、第1氷スラリーS1を製造して冷却ユニット3に供給する第1氷スラリー製造ユニット6と、第2氷スラリーS2を製造して保管ユニット5に供給する第2氷スラリー製造ユニット7と、切断ユニット2で血管が切断された魚Qを冷却ユニット3→洗浄ユニット4→保管ユニット5の順に魚Qを搬送する搬送ユニット8と、を有する。
【0022】
≪切断ユニット2≫
図2に示すように、切断ユニット2は、魚Qを載置する載置台21と、載置台21に載置された魚Qの血管を切断する第1作業ロボット22と、血管が切断された魚Qを把持して搬送する第2作業ロボット23と、載置台21に載置された魚Qを撮像するカメラ24と、カメラ24が取得した画像データに基づいて魚Qに関する情報を検出する検出部25と、検出部25の検出結果に基づいて切断箇所を決定する切断箇所決定部26と、切断箇所決定部26の決定に基づいて第1作業ロボット22および第2作業ロボット23の駆動を制御するロボット制御部27と、を有する。
【0023】
また、第1作業ロボット22は、それぞれ、6つの駆動軸を有する6軸垂直多関節ロボットであり、ベース221と、ベース221に回動自在に連結されたロボットアーム222と、ロボットアーム222の先端に装着されたツールとしてのナイフ223と、を有する。ロボットアーム222は、6本のアームが回動自在に連結された構成であり、3つの曲げ関節と、3つのねじり関節と、を有する。
【0024】
同様に、第2作業ロボット23は、それぞれ、6つの駆動軸を有する6軸垂直多関節ロボットであり、ベース231と、ベース231に回動自在に連結されたロボットアーム232と、ロボットアーム232の先端に装着されたツールとしてのハンド233と、を有する。ロボットアーム232は、6本のアームが回動自在に連結された構成であり、3つの曲げ関節と、3つのねじり関節と、を有する。
【0025】
このような構成の切断ユニット2では、まず、魚Qを載置台21に載置する。載置台21への魚Qの載置は、図示しないロボットやコンベアを用いて行ってもよいし、作業者が行ってもよい。次に、カメラ24は、載置台21上の魚Qを撮像する。次に、検出部25は、カメラ24が取得した画像データに基づいて魚Qの形状、種別、位置、姿勢等(以下、「魚データ」とも言う。)を検出する。次に、切断箇所決定部26は、検出部25が検出した魚データに基づいて魚Qの血抜きに適した切断箇所を決定すると共に、カメラ24が取得した画像に基づいて切断箇所の座標を特定する。
【0026】
次に、ロボット制御部27は、切断箇所決定部26が特定した座標に基づいて第1作業ロボット22の駆動を制御し、切断箇所決定部26が決定した切断箇所をナイフ223で切断する。ここで、魚Qは、一般的に背骨に沿って太い血管が通っているため、本実施形態では、鰓の裏側において当該血管の一端部を切断し、尾鰭の付け根部分において当該血管の他端部を切断する。これにより、迅速な血抜きが可能となる。次に、ロボット制御部27は、第2作業ロボット23の駆動を制御し、切断済みの魚Qをハンド233で把持し、搬送ユニット8に搬送する。
【0027】
検出部25、切断箇所決定部26およびロボット制御部27は、例えば、コンピューターから構成され、情報を処理するプロセッサー(CPU)と、プロセッサーに通信可能に接続されたメモリーと、外部装置との接続を行う外部インターフェースと、を有する。メモリーにはプロセッサーにより実行可能な各種プログラムが保存され、プロセッサーは、メモリーに記憶されたプログラム等を読み込んで実行することができる。
【0028】
以上、切断ユニット2について説明した。ただし、切断ユニット2としては、血抜きのために魚Qを切断することができれば、特に限定されない。また、切断ユニット2は、省略してもよい。
【0029】
≪第1氷スラリー製造ユニット6≫
第1氷スラリー製造ユニット6は、塩水を冷却して第1氷スラリーS1を生成し、生成した第1氷スラリーS1を冷却ユニット3に供給する。なお、氷スラリーは、塩水中に微細な氷が混濁したシャーベット状の氷であり、スラリー氷、アイススラリー、スラリーアイスとも呼ばれる。
【0030】
塩水の凍結点としては、特に限定されないが、例えば、-15℃以下であることが好ましく、-20℃以下であることがより好ましい。これにより、後述するように、冷却ユニット3において魚Qをより急峻に冷却することができ、効果的な血抜きが可能となる。特に、本実施形態では、飽和塩水であり、その凍結点が-21℃程度である。飽和塩水を用いることにより、凍結点を十分に下げることができるだけではなく、浸透圧によって第1氷スラリーS1内の水分が魚Qに吸収されるのを効果的に抑制することができる。そのため、魚Qが水っぽくなり難く、味や触感が低下するのを効果的に抑制することができる。
【0031】
ただし、第1氷スラリーS1の原料は、塩水に限定されず、例えば、塩化カルシウム水溶液、各種アルコール等を用いることができる。また、第1氷スラリーS1の原料の凍結点は、特に限定されず、-15℃超であってもよい。
【0032】
図3に示すように、第1氷スラリー製造ユニット6は、圧縮機61、凝縮器62、膨張弁63および冷却器64(熱交換器)を備え冷媒Nを循環させる冷媒回路6Aと、冷却器64に塩水を循環させる液冷媒回路6Bと、を有する。冷媒回路6Aでは、圧縮機61で冷媒Nが圧縮されて高温高圧ガス状となる。圧縮機61で高温高圧ガス状となった冷媒Nは、凝縮器62に流入し、凝縮・液化して高圧液状となる。凝縮器62で高圧液状となった冷媒Nは、膨張弁63で減圧されて冷却器64に流入する。冷却器64に流入した低圧液状の冷媒Nは、冷却器64において塩水から熱を奪いつつ蒸発・気化して低圧ガス状となる。冷却器64で低圧ガス状となった冷媒Nは、圧縮機61に戻され、圧縮機61により圧縮されて再び高温高圧ガス状となって吐出される。冷媒回路6Aは、このような熱交換サイクルで冷媒Nを循環させることにより、冷却器64において塩水を連続的に冷却する。
【0033】
また、冷却器64は、外管641と、外管641の内側に同軸的に配置された内管642と、を有する。外管641および内管642は、立てて設置され、互いの軸が鉛直方向を向く。つまり、冷却器64は、竪置き型二重管式蒸発器である。また、外管641および内管642は、それぞれ、下端側に設けられた導入口と、上端側に設けられた導出口と、を有する。そして、外管641に膨張弁63によって減圧された低圧液状の冷媒Nが導入され、内管642に塩水が導入されることにより、これらの熱交換が行われ、塩水が冷却される。
【0034】
一方、液冷媒回路6Bは、塩水を貯留する貯留タンク65と、貯留タンク65から冷却器64に塩水を送出する管路661と、冷却器64から貯留タンク65に塩水を送出する管路662と、管路661の途中に設けられた送液ポンプ67と、を有する。圧縮機61を駆動して冷媒回路6A内に冷媒Nを循環させると共に、送液ポンプ67を駆動して液冷媒回路6B内に塩水を循環させると、冷却器64において塩水が連続的に冷却され、次第に、塩水中に微細な氷が発生して第1氷スラリーS1が生成される。生成された第1氷スラリーS1は、貯留タンク65に貯留される。
【0035】
なお、冷媒Nとしては、特に限定されず、例えば、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)、HFC(ハイドロフルオロカーボン)、HFO(ハイドロフルオロオレフィン)、プロパン、プロピレン、ブタン、イソブタン、ヘキサフルオロプロパン、ヘプタフルオロプロパン、アンモニア、二酸化炭素等の自然冷媒等を用いてもよい。
【0036】
以上、第1氷スラリー製造ユニット6について説明したが、第1氷スラリー製造ユニット6の構成は、第1氷スラリーS1を生成することができれば、特に限定されない。例えば、天然ガスのプラントにおいて、気化器に送られる前のLNG(液化天然ガス)との熱交換により塩水を冷却して第1氷スラリーS1を生成してもよい。また、例えば、石油ガスのプラントにおいて、気化器に送られる前のLPG(液化石油ガス)との熱交換により塩水を冷却して第1氷スラリーS1を生成してもよい。
【0037】
≪冷却ユニット3≫
冷却ユニット3は、切断ユニット2において血管が切断された魚Qを第1氷スラリーS1で冷却することにより血抜きする。つまり、身から血液を除去する。
【0038】
図4に示すように、冷却ユニット3は、魚Qを冷却する冷却槽31と、冷却槽31と貯留タンク65とを繋ぐ配管32と、を有する。そして、貯留タンク65に貯留された第1氷スラリーS1が配管32を介して冷却槽31へ供給され、冷却槽31内の第1氷スラリーS1が所定量以上に維持される。そして、冷却槽31内の第1氷スラリーS1に魚Qが浸漬され、これにより、魚Qが冷却される。なお、第1氷スラリーS1は、シャーベット状の氷であるため、柔らかく、魚Qが傷つき難い。また、魚Qと氷との接触面積が大きいため、魚Qを効率的に冷却することができる。
【0039】
また、冷却槽31には排出口311が設けられており、冷却槽31内の第1氷スラリーS1(主に、魚との熱交換により溶けた塩水)を排出することができる。冷却槽31内の第1氷スラリーS1は、魚Qから流出した血液、剥がれた鱗、ごみ等によって汚れや匂いが付着しているため、排出口311から排出した第1氷スラリーS1は、適切に処理した後に廃棄することが好ましい。ただし、これに限定されず、例えば、排出口311から排出した第1氷スラリーS1を適切に処理した後、再び貯留タンク65に戻し、第1氷スラリーS1の原料として再利用してもよい。つまり、貯留タンク65と冷却槽31との間で第1氷スラリーS1を循環させてもよい。
【0040】
冷却槽31内の第1氷スラリーS1に魚Qを浸漬すると、冷却によって魚Qの身(筋肉)が表面側から内側に向けて徐々に収縮し、それに伴って、毛細血管内の血液が臓器側へ押し戻され、切断ユニット2により形成された傷口から第1氷スラリーS1内へ血液が流れ出るか、または、臓器に戻させる。これにより、身を傷付けることなく、身からより多くの血液をより短時間で除去することができる。つまり、優れた血抜きが可能となる。これにより、魚Qの鮮度を効果的に保つことができる。特に、本実施形態では、第1氷スラリーS1の温度が-21℃程度であるため、魚Qをより急峻に冷却することができる。そのため、冷却開始初期において魚Qの表面側と内側とに大きな温度差を与えることができ、表面側から内側に向けて効果的に身を収縮させることができる。したがって、毛細血管内の血液をより効果的に身から除去することができ、前述した効果がより顕著となる。
【0041】
なお、冷却ユニット3では、魚Qを凍結させることなく、未凍結の状態に保つ。これにより、凍結による劣化を防止することができる。魚Qの種類や大きさにもよるが、魚Qを第1氷スラリーS1に浸漬する時間は、例えば、2~4分程度であることが好ましい。これにより、魚Qの凍結を効果的に抑制することができる。
【0042】
以上、冷却ユニット3について説明したが、冷却ユニット3の構成は、魚Qを冷却して血抜きをすることができれば、特に限定されない。
【0043】
ここで、冷却ユニット3によれば、優れた血抜きを行うことができる証拠として図5および図6に示すヒラメの写真を挙げる。図5は、切断ユニット2において図中Cの線で血管を切断し、冷却ユニット3において飽和塩水から生成した-21℃の第1氷スラリーS1内に4分浸漬させた後の切り身である。対して、図6は、ナイフを用いて図中Cの線で血管を切断し、自ら生成した氷を入れた1℃の海水内に4分浸漬させた後の切り身である。図6では、身が血液で赤みがかっており、血抜きが不十分であることが分かる。これに対して、図5では、身が白く、血抜きが効果的に行われていることが分かる。
【0044】
≪洗浄ユニット4≫
図7に示すように、洗浄ユニット4は、洗浄液をシャワー状に吐出する複数のノズル41を有する。そして、冷却ユニット3において血抜きされた魚Qにノズル41から吐出した洗浄液を吹き付けて魚Qを洗浄する。これにより、魚Qに付着した血液、鱗、ごみ等を洗い流すことができる。
【0045】
洗浄液としては、特に限定されないが、本実施形態では、塩水を用いている。また、洗浄液の温度としては、特に限定されないが、例えば、-2~0℃程度であることが好ましい。これにより、魚Qの劣化を効果的に抑制することができる。本実施形態では、洗浄液として、塩分濃度が5%程度の塩水を-1℃に冷却したものを用いている。そのため、浸透圧によって洗浄液内の水分が魚Qに吸収されてしまうのを効果的に抑制することができる。そのため、魚Qが水っぽくなり、味や触感が低下するのを効果的に抑制することができる。
【0046】
以上、洗浄ユニット4について説明したが、洗浄ユニット4の構成は、魚Qを洗浄することができれば、特に限定されない。例えば、洗浄液が貯留された槽に、魚Qを浸漬することにより洗浄してもよい。
【0047】
≪第2氷スラリー製造ユニット7≫
第2氷スラリー製造ユニット7は、塩水を冷却して第2氷スラリーS2を生成し、生成した第2氷スラリーS2を保管ユニット5に供給する。
【0048】
塩水の凍結点としては、特に限定されないが、例えば、0℃以下、かつ、魚Qの凍結点以上であることが好ましい。本実施形態では、塩分濃度が1%程度で凍結点が-1℃程度の塩水を用いている。これにより、後述するように、保管ユニット5において、魚Qをより低温で、かつ、未凍結状態で保管することができる。そのため、凍結による劣化を防止することができると共に、より長時間、高い鮮度を保つことができる。
【0049】
ただし、第2氷スラリーS2の原料は、塩水に限定されず、例えば、塩化カルシウム水溶液、各種アルコール等を用いることができる。また、第2氷スラリーS2の原料の凍結点は、特に限定されず、例えば、魚Qの凍結点より低い凍結点を有する塩水であってもよい。この場合は、魚Qを凍結状態で保管することができる。
【0050】
第2氷スラリー製造ユニット7は、第1氷スラリー製造ユニット6と同様の構成であるため、簡単に説明する。図8に示すように、第2氷スラリー製造ユニット7は、圧縮機71、凝縮器72、膨張弁73および冷却器74(熱交換器)を備え冷媒Nを循環させる冷媒回路7Aと、冷却器74に塩水を循環させる液冷媒回路7Bと、を有する。また、液冷媒回路6Bは、塩水を貯留するための貯留タンク75と、貯留タンク75から冷却器74に塩水を送出する管路761と、冷却器74から貯留タンク75に塩水を送出する管路762と、管路761の途中に設けられた送液ポンプ77と、を有する。貯留タンク75には稼働前に十分な量の塩水が貯留される。圧縮機71を駆動して冷媒回路7A内に冷媒Nを循環させると共に、送液ポンプ77を駆動して液冷媒回路7B内に塩水を循環させると、冷却器74において塩水が連続的に冷却され、次第に、塩水中に微細な氷が発生して第2氷スラリーS2が生成される。生成された第2氷スラリーS2は、貯留タンク75に貯留される。
【0051】
以上、第2氷スラリー製造ユニット7について説明したが、第2氷スラリー製造ユニット7の構成は、塩水を冷却して第2氷スラリーS2を生成することができれば、特に限定されない。例えば、天然ガスのプラントにおいて、気化器に送られる前のLNG(液化天然ガス)との熱交換により塩水を冷却して第2氷スラリーS2を生成してもよい。また、例えば、石油ガスのプラントにおいて、気化器に送られる前のLPG(液化石油ガス)との熱交換により塩水を冷却して第2氷スラリーS2を生成してもよい。
【0052】
≪保管ユニット5≫
保管ユニット5は、洗浄ユニット4において洗浄された魚Qを第2氷スラリーS2で冷却し、加工されるまでの間、一時的に保管する。なお、第2氷スラリーS2は、シャーベット状の氷であるため、柔らかく、魚Qが傷つき難い。また、魚Qと氷との接触面積が大きいため、魚Qを効率的に冷却することができる。
【0053】
図9に示すように、保管ユニット5は、魚Qを冷却して保管する保管槽51と、保管槽51と貯留タンク75とを繋ぐ配管52、53と、を有する。第2氷スラリーS2は、配管52、53を介して貯留タンク75と保管槽51との間を循環し、常に、所定量以上の第2氷スラリーS2が保管槽51内に貯留された状態に維持される。そして、保管槽51に貯留された第2氷スラリーS2に魚Qを浸漬することにより、魚Qを低温で保管することができる。なお、前述したように、第2氷スラリーS2が-1℃程度であり、魚Qの凍結点よりも高い。そのため、魚Qをより低温で、かつ、未凍結状態で保管することができる。そのため、凍結による劣化を防止することができると共に、より長時間、高い鮮度を保つことができる。
【0054】
以上、保管ユニット5について説明したが、保管ユニット5の構成は、魚Qを冷却して保管することができれば、特に限定されない。例えば、第2氷スラリーS2の温度を魚Qの凍結点以下とし、魚Qを凍結させて保管してもよい。
【0055】
≪搬送ユニット8≫
図1に示すように、搬送ユニット8は、冷却ユニット3から洗浄ユニット4を経由して保管ユニット5まで魚Qを搬送するコンベア81を有する。具体的には、切断ユニット2によって傷口が形成された魚Qは、第2作業ロボット23によってコンベア81に載せられる。そして、コンベア81に載せられた魚Qは、冷却ユニット3に導入される。冷却ユニット3に導入された魚Qは、冷却槽31に貯留された第1氷スラリーS1内に浸漬され、未凍結のままで魚Qの血抜きが行われ、所定時間後に浮上する。冷却槽31から浮上した魚Qは、洗浄ユニット4に導入され、ノズル41から吐出される洗浄液によって洗浄される。洗浄ユニット4で洗浄を終えた魚Qは、保管ユニット5の保管槽51に貯留された第2氷スラリーS2内に浸漬され、冷却状態で保管される。このように、搬送ユニット8によれば、冷却ユニット3、洗浄ユニット4および保管ユニット5での作業をシームレスに連続して行うことができる。そのため、高い作業効率を発揮することができる。
【0056】
保管ユニット5で保管された魚Qは、必要に応じて、切り身にされた後、未凍結の状態または凍結させた状態で出荷される。
【0057】
以上、冷却装置1について説明した。このような冷却装置1によれば、魚Qを第1氷スラリーS1に浸漬して冷却する冷却ユニット3と、冷却ユニット3で冷却された魚Qを洗浄する洗浄ユニット4と、洗浄ユニット4で洗浄された魚Qを第2氷スラリーS2に浸漬して保管する保管ユニット5と、を有するため、魚Qの冷却以外にも、魚Qの血抜き、洗浄、保管等を行うことができる。そのため、利便性の高い冷却装置1となる。また、冷却装置1を用いた冷却方法によっても、同様の効果を発揮することができる。
【0058】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る冷却装置1について説明する。本実施形態に係る冷却装置1は、搬送ユニット8が省略されていること以外は、前述した第1実施形態の冷却装置1と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態の冷却装置1に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、本実施形態の図では、前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0059】
本実施形態の冷却装置1では、図10に示すように、冷却ユニット3は、魚Qを収容する収容ケース39を有する。切断ユニット2の第2作業ロボット23は、第1作業ロボット22によって傷口が形成された魚Qを把持して収容ケース39に移す。収容ケース39に所定数の魚Qが収容されると、収容ケース39を冷却槽31に貯留された第1氷スラリーS1内に浸漬する。これにより、魚Qを冷却して、血抜きを行う。当該作業は、図示しないロボットや装置が行ってもよいし、作業者が行ってもよい。
【0060】
魚Qを第1氷スラリーS1に所定時間浸漬した後、収容ケース39を上昇させて第1氷スラリーS1から取り出す。そして、血抜きされた魚Qを収容ケース39毎、洗浄ユニット4に搬送する。当該搬送は、図示しないロボットや装置が行ってもよいし、作業者が行ってもよい。
【0061】
図11に示すように、洗浄ユニット4では、収容ケース39内の魚Qに向けて洗浄液を吐出し、魚Qを洗浄する。そして、洗浄された魚Qを収容ケース39毎、保管ユニット5に搬送する。当該搬送は、図示しないロボットや装置が行ってもよいし、作業者が行ってもよい。
【0062】
図12に示すように、保管ユニット5では、魚Qを収容ケース39毎、第2氷スラリーS2に浸漬して保管する。これにより、例えば、冷却装置1での処理を開始した時刻が早い順に魚Qを整列して保管することができる。そのため、所定の魚Qが、いつまでも加工されずに第2氷スラリーS2内に残置されるのを防止することができる。
【0063】
以上のような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0064】
以上、本発明の冷却装置および冷却方法について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成や工程を付加することもできる。
【符号の説明】
【0065】
1…冷却装置、2…切断ユニット、21…載置台、22…第1作業ロボット、221…ベース、222…ロボットアーム、223…ナイフ、23…第2作業ロボット、231…ベース、232…ロボットアーム、233…ハンド、24…カメラ、25…検出部、26…切断箇所決定部、27…ロボット制御部、3…冷却ユニット、31…冷却槽、311…排出口、32…配管、39…収容ケース、4…洗浄ユニット、41…ノズル、5…保管ユニット、51…保管槽、52…配管、53…配管、6…第1氷スラリー製造ユニット、6A…冷媒回路、6B…液冷媒回路、61…圧縮機、62…凝縮器、63…膨張弁、64…冷却器、641…外管、642…内管、65…貯留タンク、661…管路、662…管路、67…送液ポンプ、7…第2氷スラリー製造ユニット、7A…冷媒回路、7B…液冷媒回路、71…圧縮機、72…凝縮器、73…膨張弁、74…冷却器、75…貯留タンク、761…管路、762…管路、77…送液ポンプ、8…搬送ユニット、81…コンベア、N…冷媒、Q…魚、S1…第1氷スラリー、S2…第2氷スラリー

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12