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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017996
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】インサート成形品、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20250130BHJP
   B29C 45/16 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C45/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121357
(22)【出願日】2023-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】檀浦 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 邦宏
(72)【発明者】
【氏名】高牟礼 大
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AD05
4F206AD08
4F206AH17
4F206JA07
4F206JB12
4F206JB13
4F206JB15
4F206JB28
4F206JL02
4F206JN12
(57)【要約】
【課題】樹脂射出時のフィルムの亀裂発生が抑制されたインサート成形品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】陥没する凹部を外縁部に有する透明樹脂部材と、前記透明樹脂部材の前記凹部内面及び当該凹部内面から連続する面に一体的に貼付されたフィルムと、を備えたインサート成形品とする。凹形状部を外縁部に備えたフィルムを準備すること、前記凹形状部が、第1金型に設けられた凸部に嵌合するように、前記第1金型内面に前記フィルムを配置すること、前記第1金型と前記第1金型に対応する第2金型とを組み合わせ、前記フィルムと前記第2金型との間に樹脂材料を射出すること、を含む、インサート成形品の製造方法とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陥没する凹部を外縁部に有する透明樹脂部材と、前記透明樹脂部材の前記凹部内面及び当該凹部内面から連続する面に一体的に貼付されたフィルムと、を備えたインサート成形品。
【請求項2】
前記フィルムの表面に、帯状の吸引痕を有する、請求項1に記載のインサート成形品。
【請求項3】
前記透明樹脂部材の前記フィルムが貼付された側とは反対の面に、不透明樹脂部材が成形されている、請求項1又は2に記載のインサート成形品。
【請求項4】
凹形状部を外縁部に備えたフィルムを準備すること、
前記凹形状部が、第1金型に設けられた凸部に嵌合するように、前記第1金型内面に前記フィルムを配置すること、
前記第1金型と前記第1金型に対応する第2金型とを組み合わせ、前記フィルムと前記第2金型との間に樹脂材料を射出すること、を含む、インサート成形品の製造方法。
【請求項5】
前記フィルムを前記第1金型内面に配置した後に、前記第1金型の内面に設けられた吸引溝で前記フィルムを吸引固定することを含む、請求項4に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インサート成形品、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用灯具部品においても、透明のプラスチックフィルムに印刷を施した加飾フィルムを真空成形で予備成形し、その予備成形品を射出成形の金型にインサートして一体成形するインサート成形の需要が高くなってきている。一方、金型にインサートされた予備成形されたフィルム上に射出樹脂を充填して一体成形を行う場合、射出樹脂の流動によるせん断応力によりフィルムが位置ずれを起こすことがある。この問題を解決するために、フィルムに貫通孔を形成し、この貫通孔に金型に設けられた突起を挿入して固定し、位置ずれを防ぐ方法が取られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-199743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、特許文献1のようにフィルムに貫通孔を形成すると、貫通孔が形成された箇所にも樹脂を射出する場合、射出樹脂の流動によるせん断応力により樹脂の射出時にフィルムに亀裂が生じることがあった。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、樹脂射出時のフィルムの亀裂発生が抑制されたインサート成形品及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は以下の態様を有する。
[1]陥没する凹部を外縁部に有する透明樹脂部材と、前記透明樹脂部材の前記凹部内面及び当該凹部内面から連続する面に一体的に貼付されたフィルムと、を備えたインサート成形品。
[2]凹形状部を外縁部に備えたフィルムを準備すること、
前記凹形状部が、第1金型に設けられた凸部に嵌合するように、前記第1金型内面に前記フィルムを配置すること、
前記第1金型と前記第1金型に対応する第2金型とを組み合わせ、前記フィルムと前記第2金型との間に樹脂材料を射出すること、を含む、インサート成形品の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、樹脂射出時のフィルムの亀裂発生が抑制されたインサート成形品及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示における一実施形態に係るインサート成形品を示す平面図である。
図2図1におけるA-A断面に沿った構成を示す断面図である。
図3図1におけるB-B断面に沿った構成を示す断面図である。
図4】本開示の一実施形態に係るインサート成形品の断面図である。
図5】本開示における一実施形態に係る製造方法を示す図である。
図6】本開示における一実施形態に係る製造装置の断面図である。
図7】本開示における他の実施形態に係る製造装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係るインサート成形品及びその製造方法の実施形態を図面に基づいて説明するが、本開示の範囲はここで説明する一実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができる。本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。また、特定のパラメータについて、複数の上限値及び下限値が記載されている場合、これらの上限値及び下限値の内、任意の上限値と下限値とを組合せて好適な数値範囲とすることができる。また、本開示に記載されている数値範囲の下限値及び/又は上限値は、その数値範囲内の数値であって、実施例で示されている数値に置き換えてもよい。数値範囲を示す「X~Y」との表現は、「X以上Y以下」であることを意味している。一実施形態について記載した特定の説明が他の実施形態についても当てはまる場合には、他の実施形態においてはその説明を省略している場合がある。
【0010】
[インサート成形品]
図1図2及び図3は、この開示の一実施形態として示したインサート成形品1を示す図である。なお、図1はインサート成形品1の全体像を示しており、図2は、図1に示したインサート成形品1のA-A断面の概略図、図3は、図1に示したインサート成形品1のB-B断面の概略図である。インサート成形品1は、陥没する凹部11を外縁部12に有する透明樹脂部材10と、透明樹脂部材10の凹部11内面及び凹部11内面から連続する面に一体的に貼付されたフィルム20と、を備えている。なお、図1はフィルム20に対向する側から見たときの平面図である。本実施形態のインサート成形品1は、ヘッドランプやフォグランプやデイタイムランニングランプやクリアランスランプ等の車両用灯具のアウターレンズとして用いることができる。図1に示すように、インサート成形品1は、溶着足40を備えていてもよい。
【0011】
(透明樹脂部材)
図1に示すように、透明樹脂部材10は、その外縁部12に、陥没する凹部11を有している。透明樹脂部材10は、アウターレンズとして用いる場合における、光が入射する側の入射面10Aと、光を出射する側の出射面10Bとを有しており、凹部11は入射面10Aの表面に設けられている。
外縁部12が有する凹部11は、その形状は、特に制限されず、矩形柱、矩形錐、矩形錐台、円柱、円錐、円錐台、及びこれらの組み合わせから選択することができる。一実施形態においては、凹部11は、透明樹脂部材10の略平坦に形成された入射面10Aから入射面10Aの内方へ凹む凹部11であって、凹部11は前記内方へ延出する第1の側面11Aと、この側面11Aの先端に形成される第1の底面11Bとからなっている。図2では、円錐台と円柱とを組み合わせた形状となっている。凹部11の直径は、0.3~8.0mmが好ましく、0.3~5.0mmがより好ましく、0.4~2.0mmがさらに好ましく、凹部11の深さは、0.2~5.0mmが好ましく、0.3~2.0mmがより好ましく、0.4~1.0mmがさらに好ましい。また、図2では、凹部11の出射面10B側に凸形状が形成されているが、この凸形状は必須の構成ではなく、形成されていなくてもよい。
【0012】
一実施形態においては、透明樹脂部材10は、外縁部12と、立体形状を有する立体形状部14と、を有している。立体形状部14の形状は、特に制限されないが、例えば車両のヘッドランプやコンビネーションランプ等のアウターレンズの形状とすることができる。より具体的には、立体形状部14は、上壁部15と、上壁部15を囲み、上壁部15と外縁部12とをつなぐ側壁部16と、から構成されている。外縁部12は、立体形状部14の外周端から周方向に延在する部分となっている。アウターレンズとして用いる場合、外縁部12は、意匠面以外の部分を形成している。
透明樹脂部材10の材料としては、例えばアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリルスチレン系樹脂、シリコーン系樹脂等の樹脂が好ましい。「透明」とは、完全透明、半透明、無色透明、有色透明(乳白色等を含む)といった様々な透明も含まれる。
透明樹脂部材10の平均厚みは、1~10mmが好ましく、1~7mmがより好ましく、2~4mmがさらに好ましい。
【0013】
(フィルム)
フィルム20は、透明樹脂部材10の凹部11内面及び凹部11内面から連続する面に一体的に貼付されている薄膜の部材である。フィルム20は、透明樹脂部材10の凹部11の内面においても連続した面を形成しており、孔となっていない。フィルム20は、前記透明樹脂部材10の凹部11に沿う凹形状部27を備えており、凹形状部27は、透明樹脂部材10の入射面10Aに沿う略平坦な第1の面から前記凹部11の側面11Aに沿って延びる第2の側面27Aと、この第2の側面27Aに連続し、前記第1の底面11Bに沿う第2の底面27Bとからなっている。つまり、フィルム20は、透明樹脂部材10における凹部11の第1の側面11A及び第1の底面11Bにおいても連続した面を形成している。また、フィルム20は、孔を有していないことが好ましい。
一実施形態においては、フィルム20は、透明樹脂部材10の立体形状部14に対応する面の全面に貼付されているが、外縁部12に対応する面には貼付されていないか、一部のみに貼付されている。
フィルム20は、透明樹脂部材10とは異なる色及び/又は模様で色飾されていてもよい。このため、透明樹脂部材10とは異なる色が認識されたり模様が認識されたりする。
フィルム20の材料としては、例えばアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリルスチレン系樹脂、シリコーン系樹脂等の樹脂が好ましい。
フィルム20の平均厚みは、0.1~2.0mmが好ましく、0.2~1.5mmがより好ましく、0.3~1.0mmがさらに好ましい。
【0014】
一実施形態においては、フィルム20は、吸引痕25を有している。この吸引痕25は、インサート成形時にフィルム20が金型に設けられた吸引溝により吸引された痕である。そのため、吸引痕25は、フィルム20の透明樹脂部材10に貼付している側とは反対の面から帯状に隆起した凸部となっている。吸引痕25の長さは、50~1000mmが好ましく、100~800mmがより好ましく、200~500mmがさらに好ましく、吸引痕25の幅は、1~15mmが好ましく、2~10mmがより好ましく、3~5mmがさらに好ましく、吸引痕25の高さは、0.1~2.0mmが好ましく、0.2~1.5mmがより好ましく、0.3~1.0mmがさらに好ましい。
【0015】
一実施形態においては、透明樹脂部材10の側壁部16から外縁部12にかけて、フィルム20が貼付された側とは反対の面に不透明樹脂部材30が成形されている。ここで、一般にインサート成形品におけるフィルムは、その端部の処理が不十分であると、意匠性の低下を招き得る。しかしながら、本実施形態においては、図4に示すように、フィルム20の端部を隠すように不透明樹脂部材30が透明樹脂部材10の表面に成形されており、フィルム20の端部による意匠性の低下を抑制することができる。
【0016】
[インサート成形品の製造方法]
本開示の一実施形態におけるインサート成形品1の製造方法は、凹形状部27を外縁部に備えたフィルム20を準備すること、凹形状部27が、第1金型50に設けられた凸部55に嵌合するように、第1金型50内面にフィルム20を配置すること、第1金型50と第1金型50に対応する第2金型60とを組み合わせ、フィルム20と第2金型60との間に樹脂材料を射出すること、を含む、インサート成形品1の製造方法である。
図5は、本実施形態に係るインサート成形品の製造工程を示す図である。図5aは凹形状部27を外縁部に備えたフィルム20の準備工程を示している。図5bはフィルム20の外縁部に備えられた凹形状部27が、第1金型50に設けられた凸部55に嵌合するように、第1金型50内面にフィルム20を配置する工程を示している。図5cは第1金型50と第2金型60とを組み合わせる工程を示している。図5dはフィルム20と第2金型60との間に樹脂材料を射出する工程を示している。
【0017】
以下に、本開示の製造方法における各工程について簡単に説明する。
(工程1:フィルムの準備工程)
フィルムの準備工程では、凹形状部27を外縁部に備えたフィルム20を準備する。
図5aに示すように、凹形状部27をフィルム20の外縁部に付与するが、フィルム20に凹形状部27を付与する方法は特に限定されず、樹脂材料をシート状に成形した後に熱成形(真空成形又は圧空成形)する方法、圧縮成形する方法、射出成形する方法等を用いることができる。凹形状部27の直径及び高さは、熱収縮することを考慮した上で、第1金型50に設けられた凸部55に嵌合するように適宜選択することができる。
【0018】
(工程2:フィルムの配置工程)
フィルムの配置工程では、第1金型50に設けられた凸部55に凹形状部27が嵌合するように、第1金型50内面にフィルム20を配置する。
第1金型50は、透明樹脂部材10を形成する部分の周縁部に複数の凸部55を備えている。凸部55は、第1金型50の略平坦な面から外方へ突出するものであって、突出方向へ延びる第3の側面55Aと、第3の側面55Aの端部に位置する先端面55Bとからなっている。
図5bに示すように、凹形状部27は、凸部55と嵌合する形状となっており、フィルムの配置工程では、凸部55に凹形状部27が嵌合するようにフィルム20を第1金型50の内面に配置する。この時、フィルム20は、その一方の面の実質的に全ての箇所において、第1金型50の内面に接するように配置される。凸部55に凹形状部27が嵌合するように配置することで、後の樹脂材料の射出工程においてフィルム20の位置ずれが抑制される。
一実施形態においては、第1金型50の内面に設けられた吸引溝で、配置されたフィルム20を吸引固定してもよい。フィルム20を吸引固定することにより、フィルム20の位置ずれがより抑制される。
【0019】
(工程3:樹脂材料の射出工程)
樹脂材料の射出工程では、第1金型50と第1金型50に対応する第2金型60とを組み合わせ、フィルム20と第2金型60との間に樹脂材料を射出する。
図5c及び図5dに示すように、第1金型50と第2金型60とは対応する形状を有している。配置されたフィルム20と第2金型60との隙間に、ゲートから樹脂材料を射出することにより、樹脂材料の成形品にフィルム20が貼付されたインサート成形品1が得られる。
【0020】
本開示の製造方法においては、フィルム20は、凸部55に嵌合する凹形状部27においても連続した面を形成しており、孔となっていないため、射出樹脂の流動によるせん断応力によるフィルムの亀裂発生が抑制される。
【0021】
一実施形態においては、射出工程の後に、第2金型60に替えて第3金型を用い、不透明樹脂材料を射出する。この工程により、インサート成形品1の樹脂材料成形品側表面に不透明樹脂部材30が成形されることとなり、フィルム20の端部を意匠面から隠すことができ、意匠性の低下が抑制される。
【0022】
[製造装置]
以下に、図6を参照しつつ、上記のようにインサート成形品1を製造するための製造装置100について説明する。図6は本開示の一実施形態における製造装置100の要部を示す図である。本実施形態の製造装置100は、フィルム20のインサート成形品1を製造するための装置100であって、フィルム20に対応する形状を有する第1金型50と、第1金型50に組み合わされる第2金型60と、第1金型50の第2金型60に対向する面に配置されるフィルム20と第2金型60との間に樹脂材料を射出するためのゲートと、を備え、第1金型50の外縁部53に、フィルム20が有する凹形状部27と嵌合させるための凸部55が設けられた構成とされている。
【0023】
第1金型50の形状は、第1金型外縁部53に、フィルム20が有する凹形状部27と嵌合させるための凸部55が設けられていれば特に限定されないが、例えば車両のヘッドランプやコンビネーションランプ等のアウターレンズを成形するのに適した形状となっていることが好ましい。第2金型60の形状も特に限定されず、車両のヘッドランプやコンビネーションランプ等のアウターレンズを第1金型50と組み合わせて成形するのに適した形状となっていることが好ましい。
【0024】
一実施形態においては、第1金型50は、立体形状成形部52と第1金型外縁部53とを有しており、立体形状成形部52は、例えば車両のヘッドランプやコンビネーションランプ等のアウターレンズに対応する形状となっている。
【0025】
凸部55の形状は、フィルム20が有する凹形状部27の形状に対応させた形状とされており、第1金型50の内面にフィルム20を配置したときに、凸部55が凹形状部27と嵌合するようになっている。凸部55の形状は、特に制限されず、矩形柱、矩形錐、矩形錐台、円柱、円錐、円錐台、及びこれらの組み合わせから選択することができる。図6に示すように、一実施形態においては、円錐台と円柱とを組み合わせた形状となっている。
図6に示すように、第1金型外縁部53に、フィルム20が有する凹形状部27と嵌合させるための凸部55が設けられているため、フィルムの配置工程において、凸部55にフィルム20の凹形状部27を嵌合させることで、後の樹脂材料の射出工程においてフィルム20の位置ずれが抑制される。
また、凸部55は、凹形状部27と嵌合可能な形状とすることで、フィルム20の凹形状部27においても連続した面として、孔を有さない形状にすることができるため、射出樹脂の流動によるせん断応力によるフィルムの亀裂発生を抑制することができる。
【0026】
一実施形態においては、図7に示すように、第1金型50の内面に吸引溝57を設けられている。配置されたフィルム20を吸引溝57により吸引固定することにより、樹脂材料の射出工程におけるフィルム20の位置ずれがより抑制される。
【0027】
本開示の構成をまとめると以下のとおりである。
[1]陥没する凹部を外縁部に有する透明樹脂部材と、前記透明樹脂部材の前記凹部内面及び当該凹部内面から連続する面に一体的に貼付されたフィルムと、を備えたインサート成形品。
[2]前記フィルムの表面に、帯状の吸引痕を有する、[1]に記載のインサート成形品。
[3]前記透明樹脂部材の前記フィルムが貼付された側とは反対の面に、不透明樹脂部材が成形されている、[1]又は[2]に記載のインサート成形品。
[4]凹形状部を外縁部に備えたフィルムを準備すること、
前記凹形状部が、第1金型に設けられた凸部に嵌合するように、前記第1金型内面に前記フィルムを配置すること、
前記第1金型と前記第1金型に対応する第2金型とを組み合わせ、前記フィルムと前記第2金型との間に樹脂材料を射出すること、を含む、インサート成形品の製造方法。
[5]前記フィルムを前記第1金型内面に配置した後に、前記第1金型の内面に設けられた吸引溝で前記フィルムを吸引固定することを含む、[4]に記載の製造方法。
【符号の説明】
【0028】
1 インサート成形品
10 透明樹脂部材
10A 入射面
10B 出射面
11 凹部
11A 第1の側面
11B 第1の底面
12 外縁部
14 立体形状部
15 上壁部
16 側壁部
20 フィルム
25 吸引痕
27 凹形状部
27A 第2の側面
27B 第2の底面
30 不透明樹脂部材
40 溶着足
50 第1金型
52 立体形状成形部
53 第1金型外縁部
55 凸部
55A 第3の側面
55B 先端面
57 吸引溝
60 第2金型
100 製造装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7