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特開2025-18030固体分散体、およびその固体分散体を含む製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018030
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】固体分散体、およびその固体分散体を含む製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/502 20060101AFI20250130BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20250130BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20250130BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20250130BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250130BHJP
   A61P 15/14 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
A61K31/502
A61K9/16
A61K47/32
A61K47/38
A61P35/00
A61P15/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121414
(22)【出願日】2023-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000209049
【氏名又は名称】沢井製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】増井 辰馬
(72)【発明者】
【氏名】尾曲 克彦
(72)【発明者】
【氏名】東山 陽一
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076BB01
4C076CC27
4C076EE06
4C076EE07
4C076EE16
4C076EE32
4C076FF33
4C076FF65
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC50
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA41
4C086MA52
4C086NA02
4C086NA03
4C086NA05
4C086ZA81
4C086ZB26
(57)【要約】
【課題】一実施形態において、オラパリブの固体分散体において、オラパリブを非晶質形態で分散させ、オラパリブの類縁物質の生成を抑制し、且つオラパリブの溶出性を十分に向上させることを目的の一つとする。または、一実施形態において、オラパリブを非晶質形態で分散させ、オラパリブの類縁物質の生成を抑制し、且つオラパリブの溶出性を十分に向上させたオラパリブの固体分散体を含むオラパリブ含有製剤を提供すことを目的の一つとする。
【解決手段】本発明の一実施形態によると、固体分散体は、オラパリブと、酢酸ビニルとビニルピロリドンとの共重合体と、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはポリビニルアルコールと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オラパリブと、
酢酸ビニルとビニルピロリドンとの共重合体と、
ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはポリビニルアルコールと、を含む固体分散体。
【請求項2】
前記オラパリブ:前記共重合体:前記ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたはポリビニルアルコールの重量比が、1:1.0~1.6:0.2~1.2である、請求項1に記載の固体分散体。
【請求項3】
前記オラパリブ:前記共重合体:前記ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはポリビニルアルコールの重量比が、1:1.3~1.5:0.3~1.0である、請求項2に記載の固体分散体。
【請求項4】
前記オラパリブ:前記共重合体:前記ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはポリビニルアルコールの重量比が、1:1.4~1.5:0.4~0.9である、請求項3に記載の固体分散体。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の固体分散体と、1以上の医薬的に許容される添加剤と、を含むオラパリブ含有製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、固体分散体、およびその固体分散体を含む製剤に関する。
【0002】
オラパリブ(4-[3-(4-cyclopropanecarbonyl-piperazine-1-carbonyl)-4-fluoro-benzyl]-2H-phthalazin-1-one)は、乳癌や卵巣癌等の癌の治療薬として用いられるポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)を選択的に阻害する経口の分子標的薬である。オラパリブは、難溶性薬物であるため、特許文献1においては、オラパリブと、低い吸湿性および高い軟化温度を示す酢酸ビニルとビニルピロリドンとの共重合体とを含む固体分散体を用い、オラパリブの溶出性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許5524220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の記載から、オラパリブは難溶性薬物であり、酢酸ビニルとビニルピロリドンとの共重合体との固体分散体により溶出性の改善が見込まれる。しかしながら、本発明者らが検討した結果、特許文献1に記載されている酢酸ビニルとビニルピロリドンとの共重合体を担体としたオラパリブの固体分散体化では、オラパリブの溶出性の向上が不十分であり、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するものであって、オラパリブの固体分散体において、オラパリブを非晶質形態で分散させ、オラパリブの類縁物質の生成を抑制し、且つオラパリブの溶出性を十分に向上させることを目的の一つとする。または、一実施形態において、オラパリブを非晶質形態で分散させ、オラパリブの類縁物質の生成を抑制し、且つオラパリブの溶出性を十分に向上させたオラパリブの固体分散体を含むオラパリブ含有製剤を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によると、オラパリブと、酢酸ビニルとビニルピロリドンとの共重合体と、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはポリビニルアルコールと、を含む固体分散体が提供される。
【0007】
オラパリブ:共重合体:ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはポリビニルアルコールの重量比が、1:1.0~1.6:0.2~1.2であってもよい。
【0008】
オラパリブ:共重合体:ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはポリビニルアルコールの重量比が、1:1.3~1.5:0.3~1.0であってもよい。
【0009】
オラパリブ:共重合体:ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはポリビニルアルコールの重量比が、1:1.4~1.5:0.4~0.9であってもよい。
【0010】
また、本発明の一実施形態によると、前記固体分散体と、1以上の医薬的に許容される添加剤と、を含むオラパリブ含有製剤が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態によると、オラパリブが非晶質形態で分散され、オラパリブの類縁物質の生成が抑制され、且つオラパリブの溶出性を十分に向上させたオラパリブの固体分散体が提供される。または、本発明の一実施形態によると、オラパリブが非晶質形態で分散され、オラパリブの類縁物質の生成が抑制され、且つオラパリブの溶出性を十分に向上させたオラパリブの固体分散体を含むオラパリブ含有製剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施例の溶出試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る固体分散体およびオラパリブ含有製剤について詳細に説明する。ただし、本発明の固体分散体およびオラパリブ含有製剤は、以下に示す実施形態および実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0014】
本発明の一実施形態に係る固体分散体は、オラパリブと、酢酸ビニルとビニルピロリドンとの共重合体と、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはポリビニルアルコールと、を含む。一実施形態において、固体分散体は、酢酸ビニルとビニルピロリドンとの共重合体と、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはポリビニルアルコールとを担体として、オラパリブがこの担体に分散した医薬組成物である。なお、固体分散体とは、活性を持たない基剤中に薬物を分散させた固体の医薬組成物であり、薬物が非晶質形態である固体の医薬組成物をいう。したがって、本実施形態に係る固体分散体は、非晶質形態のオラパリブを含む。
【0015】
本発明者らが検討した結果、後述する実施例においても説明するように、酢酸ビニルとビニルピロリドンとの共重合体を担体とした固体分散体においては、オラパリブの十分な溶出性が得られない。このため、固体分散体において利用可能な他の担体について検討した結果、ヒプロメロースまたはヒドロキシプロピルセルロースを担体とした固体分散体においては、それぞれを単独で用いた場合、オラパリブを結晶化させてしまうことが分かった。この結果より、オラパリブをヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロースに分散させた固体分散体では、当然、オラパリブの良好な溶出性を得ることができないことが想定される。
【0016】
一実施形態において、驚くべきことに、本実施形態に係る固体分散体においては、酢酸ビニルとビニルピロリドンとの共重合体と、ヒプロメロースまたはヒドロキシプロピルセルロースとを、特定の割合で組み合わせた担体に、オラパリブが分散していることにより、オラパリブの非晶質形態を維持し、オラパリブの類縁物質が生成するのを抑制することに加えて、高い溶出性を得ることができる。
【0017】
さらに本発明者らが、酢酸ビニルとビニルピロリドンとの共重合体に組み合わせる担体を鋭意検討した結果、酢酸ビニルとビニルピロリドンとの共重合体とポリビニルアルコールとを、特定の割合で組み合わせた担体に、オラパリブが分散していることにより、オラパリブの非晶質形態を維持し、オラパリブの類縁物質が生成するのを抑制することに加えて、高い溶出性を得ることができた。
【0018】
一般に、オラパリブを含む固体分散体の担体としては、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル共重合体、メタアクリル酸共重合体、セルロース誘導体等のポリマーが用いられている。しかし、ヒプロメロースまたはヒドロキシプロピルセルロースを単独で担体として用いた固体分散体において、オラパリブが結晶化することからも明らかなように、オラパリブを含む固体分散体の担体として用いるポリマーによって、オラパリブの非晶質形態を維持することができるか否かが大きく変わる。このため、オラパリブの非晶質形態を維持することができる担体やその組み合わせを選択するのは、容易ではない。また、担体を組み合わせることによる十分な溶出性の改善は容易に予測し得るものではない。
【0019】
さらに、後述する比較例にも示すように、オラパリブを含む固体分散体の担体として用いるポリマーによって、固体分散体においてオラパリブの類縁物質の生成を抑制することができるか否かが大きく変わる。このため、オラパリブの非晶質形態の達成と、オラパリブの溶出性を十分に向上させた上で、固体分散体においてオラパリブの類縁物質の生成を抑制することができる担体の組み合わせを選択することは容易ではない。
【0020】
したがって、一般的に非晶質の維持と溶出性の向上、および類縁物質の抑制を達成する添加剤の組み合わせを見いだすことは難しく、さらに、特定の割合にまで最適化することは、非常に困難である。
【0021】
一実施形態において、本発明に係る固体分散体は、オラパリブと、酢酸ビニルとビニルピロリドンとの共重合体と、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはポリビニルアルコールと、を含む。オラパリブに、酢酸ビニルとビニルピロリドンとの共重合体と、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはポリビニルアルコールと、を組み合わせることで、オラパリブの非晶質形態を維持し、また類縁物質の生成を抑制し、且つ十分な溶出性を得ることができる。
【0022】
本実施形態に係る固体分散体が含む酢酸ビニルとビニルピロリドンとの共重合体としては、1-ビニル-2-ピロリドン(VP)と酢酸ビニル(VA)の共重合体であり、酢酸ビニルとビニルピロリドンの質量比は3:2である。酢酸ビニルとビニルピロリドンとの共重合体は定量するとき、換算した乾燥物に対し、酢酸ビニル(C:86.09)35.3~42.0%および窒素(N:14.01)7.0~8.0%を含む。
【0023】
一実施形態において、オラパリブ:酢酸ビニルとビニルピロリドンとの共重合体:ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはポリビニルアルコールの重量比が、好ましくは1:1.0~1.6:0.2~1.2であり、より好ましくは1:1.3~1.5:0.3~1.0であり、さらに好ましくは1:1.4~1.5:0.4~0.9である。オラパリブと、酢酸ビニルとビニルピロリドンとの共重合体と、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはポリビニルアルコールとの重量比がこの範囲にある場合、オラパリブの非晶質形態を維持し、また類縁物質の発生を抑制し、さらに高い溶出性を得ることができる。オラパリブ:酢酸ビニルとビニルピロリドンとの共重合体:ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはポリビニルアルコールの重量比が上述した範囲にない場合、オラパリブの非晶質形態を維持し、また類縁物質の生成を抑制し、且つより高い溶出性を得ることが困難な場合がある。
【0024】
酢酸ビニルとビニルピロリドンとの共重合体とともに、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはポリビニルアルコールを特定の割合で含む担体を用いると、オラパリブを非晶質の状態で分散させることができ、オラパリブの類縁物質の生成を抑制することも可能であり、且つオラパリブの溶出性を十分に向上させることが可能であるとの本発明者らの知見は、これまでに報告されていない新たな知見であり、従来技術から容易に想到し得るものではない。
【0025】
[オラパリブ含有製剤]
本発明に係るオラパリブ含有製剤は、上述した固体分散体に加えて、1以上の医薬的に許容される添加剤と、を含む。
【0026】
オラパリブ含有製剤が含む医薬的に許容される添加剤としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、および滑沢剤等が挙げられる。これらの添加剤から、1つ以上を選択してオラパリブ含有製剤を構成することができる。また、これらの添加剤の2種以上を組み合わせて事前に混合した添加剤を含んでもよい。
【0027】
賦形剤としては、例えば、乳糖、ショ糖、デンプン、部分アルファー化デンプン、マンニトール、ソルビトール、無機塩類、セルロース誘導体(例えば、結晶セルロース、セルロース)、硫酸カルシウム、キシリトールおよびラクチトール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの賦形剤は、単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0028】
結合剤は、例えば、乳糖、デンプン、部分アルファー化デンプン、糖類、アラビアゴム、トラガントゴム、グアーガム、ペクチン、カルナウバロウやパラフィンなどのろう結合剤、結晶セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、コポリビドン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン(PVP)、アルギン酸ナトリウム、およびポリビニルアルコール(PVA)等から選択することができるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
崩壊剤は、例えば、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム、トウモロコシデンプン、結晶セルロース、および低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)等から選択することができるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
滑沢剤は、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ラウリルステアリン酸マグネシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、およびタルク等から選択することができるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
一実施形態において、オラパリブ含有製剤は錠剤であってもよく、1錠当たり100mg又は150mgのオラパリブを含むがこれらに限定されず、治療効果を得られる範囲で、オラパリブの含有量を変更してもよい。
【0032】
[固体分散体の製造方法]
本実施形態に係る固体分散体は、熱溶融法により製造することができる。例えば、オラパリブと、上述した酢酸ビニルとビニルピロリドンとの共重合体と、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはポリビニルアルコールとを混合し、得られた混合物を、熱溶融機を通して混合物が溶融し、且つオラパリブが分解しない程度の温度にて加熱し、その後冷却をする。冷却した混合物を整粒し、固体分散体を得ることができる。本実施形態に係る固体分散体の製造方法においては、オラパリブは、結晶および非晶質形態の何れを用いてもよい。
【0033】
[オラパリブ含有製剤の製造方法]
本実施形態に係るオラパリブ含有製剤は、オラパリブと、酢酸ビニルとビニルピロリドンとの共重合体と、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはポリビニルアルコールと、を含む本実施形態に係る固体分散体と、上述した1以上の医薬的に許容される添加剤と、を混合し、得られた混合物を打錠することにより製造することができる。また、添加剤の2種以上を組み合わせて事前に混合した添加剤を用いてもよい。
【0034】
[オラパリブの結晶学的形態の評価]
オラパリブの結晶学的形態は、粉末X線回折測定法にて評価することができる。本明細書において、「非晶質」とは、粉末X線回折測定法により得られた回折パターンにおいて、ベースラインに対してブロードなハローパターンが観察され、結晶成分に由来する顕著なピークが観察されないことを意味する。
【0035】
[純度の評価]
本明細書において、固体分散体中のオラパリブの純度の評価は、液体クロマトグラフィを用いたオラパリブの個々最大類縁物質の定量により行う。面積百分率法により、クロマトグラム上に得られたオラパリブおよびオラパリブ由来の類縁物質の各成分のピーク面積の総和を100とし、ピーク面積の比からオラパリブ由来の個々の類縁物質量(%)を算出する。
【0036】
[溶出性の評価]
本明細書において、固体分散体におけるオラパリブの溶出性は、第十八改正日本薬局方に定める溶出第2液による溶出試験法のパドル法によって評価する。
【実施例0037】
[固体分散体の担体の検討]
固体分散体に用いる担体を検討した。
【0038】
[実施例1]
担体として、酢酸ビニルとビニルピロリドンとの共重合体(PVPVA)とヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を用いた。オラパリブ結晶15gと、PVPVA(VA64(登録商標)、BASFジャパン株式会社)21g、HPC(HPC-SSL、日本曹達株式会社)13.5g、軽質無水ケイ酸(アドソリダー(登録商標)101、フロイント産業株式会社)1.1gを混合した。得られた混合物を熱溶融機に通し、冷却をした。冷却した混合物を粉砕機にて粉砕し、実施例1の固体分散体を得た。
【0039】
[実施例2]
担体として、酢酸ビニルとビニルピロリドンとの共重合体(PVPVA)とヒプロメロース(HPMC)を用いた。オラパリブ結晶15gと、PVPVA(VA64(登録商標)、BASFジャパン株式会社)21g、HPMC(TC-5(登録商標)、E、信越化学工業株式会社)13.5g、軽質無水ケイ酸(アドソリダー(登録商標)101、フロイント産業株式会社)1.1gを混合した。得られた混合物を熱溶融機に通し、冷却をした。冷却した混合物を粉砕機にて粉砕し、実施例2の固体分散体を得た。
【0040】
[実施例3]
担体として、酢酸ビニルとビニルピロリドンとの共重合体(PVPVA)とポリビニルアルコール(PVA)を用いた。オラパリブ結晶15gと、PVPVA(VA64(登録商標)、BASFジャパン株式会社)22.35g、PVA(Parteck(登録商標)MXP、メルクミリポア株式会社)7.5g、軽質無水ケイ酸(アドソリダー(登録商標)101、フロイント産業株式会社)1.1gを混合した。得られた混合物を熱溶融機に通し、冷却をした。冷却した混合物を粉砕機にて粉砕し、実施例3の固体分散体を得た。
【0041】
[比較例1]
担体として、酢酸ビニルとビニルピロリドンとの共重合体(PVPVA)を用いた。オラパリブ結晶15gと、PVPVA(VA64(登録商標)、BASFジャパン株式会社)34.5g、軽質無水ケイ酸(アドソリダー(登録商標)101、フロイント産業株式会社)1.1gを混合した。得られた混合物を熱溶融機に通し、冷却をした。冷却した混合物を粉砕機にて粉砕し、比較例1の固体分散体を得た。
【0042】
[比較例2]
担体として、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を用いた。オラパリブ結晶10gと、HPC(HPC-SSL、日本曹達株式会社)23g、軽質無水ケイ酸(アドソリダー(登録商標)101、フロイント産業株式会社)0.73gを混合した。得られた混合物を熱溶融機に通し、冷却をした。冷却した混合物を粉砕機にて粉砕し、比較例2の固体分散体を得た。
【0043】
[比較例3]
担体として、ヒプロメロース(HPMC)を用いた。オラパリブ結晶10gと、HPMC(TC-5(登録商標)、R、信越化学工業株式会社)23g、軽質無水ケイ酸(アドソリダー(登録商標)101、フロイント産業株式会社)0.73gを混合した。得られた混合物を熱溶融機に通し、冷却をした。冷却した混合物を粉砕機にて粉砕し、比較例3の固体分散体を得た。
【0044】
[比較例4]
担体として、ポリビニルピロリドン(PVP)を用いた。オラパリブ結晶10gと、PVP(K30、第一工業製薬株式会社)23g、軽質無水ケイ酸(アドソリダー(登録商標)101、フロイント産業株式会社)0.73gを混合した。得られた混合物を熱溶融機に通し、冷却をした。冷却した混合物を粉砕機にて粉砕し、比較例4の固体分散体を得た。
【0045】
[比較例5]
担体として、酢酸ビニルとビニルピロリドンとの共重合体(PVPVA)とポリビニルピロリドン(PVP)を用いた。オラパリブ結晶15gと、PVPVA(VA64(登録商標)、BASFジャパン株式会社)21g、PVP(K25、第一工業製薬株式会社)13.5g、軽質無水ケイ酸(アドソリダー(登録商標)101、フロイント産業株式会社)1.1gを混合した。得られた混合物を熱溶融機に通し、冷却をした。冷却した混合物を粉砕機にて粉砕し、比較例5の固体分散体を得た。
【0046】
[非晶質の評価]
粉末X線回折測定法にて、実施例1、実施例2、実施例3、および比較例1~5の固体分散体中のオラパリブの非晶質形態を確認した。測定には、粉末X線回折装置Bruker D8 ADVANCEを用い、Cu-Ka線、管電圧40kV、管電流40mA、測定範囲:2θ=10.0~25.0°、スキャンスピード:1sec/step、ステップサイズ:0.015°の条件により測定した。
【0047】
非晶質形態の評価結果を表1に示す。
【表1】
【0048】
表1の結果より、PVPVAと、HPC、HPMC、またはPVAとを担体とした実施例1、実施例2、および実施例3の固体分散体においては、オラパリブが非晶質形態であることが確認できた。また、単体のPVPVAまたはPVP、PVPVAとPVPの組合せを担体とした比較例1、比較例4、および比較例5も非晶質形態であることが確認できた。一方、単体のHPCまたはHPMCを担体とした比較例2および比較例3の固体分散体においては、オラパリブが結晶化することが確認された。表1の結果より、単体のHPCまたはHPMCを担体とした場合、オラパリブの非晶質形態の達成はできないことが明らかとなった。
【0049】
[純度の評価]
実施例1、実施例2、実施例3、および比較例4の固体分散体を、密栓状態にて40℃、相対湿度75%で1ヶ月間保存した。保存後の実施例1、実施例2、および比較例4の固体分散体について、高速液体クロマトグラフィ法にて、純度を評価した。測定には、高速液体クロマトグラフ島津製作所製を用い、測定カラムInertSustain C18(4.6mmφ×150mm、5μm)を装着し、カラム温度35℃、流速1.0mL/minの条件を用いた。移動相の送液は移動相A(水/リン酸混液(1000:1))および移動相B(アセトニトリル)の混合比を変えて濃度勾配制御した。
【0050】
純度の評価結果を表2に示す。
【0051】
【表2】
【0052】
表2の結果より、実施例1、実施例2、および実施例3の固体分散体においてはオラパリブの類縁物質の生成が抑制され、オラパリブの純度が高いことが確認された。一方、比較例4の固体分散体は、オラパリブの純度が安全性の確認が必要な閾値である0.2%を超えていることが確認された。比較例4の固体分散体は、非晶質形態であるが、類縁物質の生成が抑制できないことが明らかとなった。
【0053】
[溶出性の評価]
第十八改正日本薬局方溶出試験法(パドル法、50rpm、溶出第2液)にて、上記実施例1、実施例2、実施例3、比較例1および比較例5の固体分散体について、溶出性を評価した。
【0054】
溶出性の評価結果を表3および図1に示す。
【0055】
【表3】
【0056】
表3および図1の結果より、実施例1、実施例2および実施例3の固体分散体においては、オラパリブの溶出率が高いことが確認された。一方、比較例1および比較例5の固体分散体においては、最大溶出率が実施例1、実施例2および実施例3の固体分散体と同等であるが、溶出率時間曲線下面積(AUC)の値が低く、実施例1、実施例2および実施例3の固体分散体に比べオラパリブの溶出率が低いことが確認された。オラパリブを含む固体分散体の担体には、PVPVAとHPMC、HPCまたはPVAを併用することでオラパリブの溶出率が十分に向上することが明らかとなった。
図1