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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018042
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】誘虫予測方法および誘虫予測システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20250130BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121436
(22)【出願日】2023-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雄大
(72)【発明者】
【氏名】宮瀬 文裕
(72)【発明者】
【氏名】宇野 昌利
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC11
5L050CC11
(57)【要約】
【課題】季節性による気温変化に応じた誘虫量の予測が的確に行われるようにする。
【解決手段】誘虫予測システムにおける誘虫予測方法として、気温取得部が、予測対象日に該当する日付の気温を、過去の年単位における日付ごとの気温の実績を示す気温実績情報を記憶する気温実績情報記憶部から取得する気温取得ステップと、予測部が、誘虫情報記憶部が記憶し、照明に昆虫が誘引される状況を気温に対応させて示す誘虫情報のうちで、前記気温取得ステップにより取得された気温に対応する誘虫情報に基づいて、前記予測対象日における昆虫の誘引状況を予測する予測ステップとを備えた誘虫予測方法を構成する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘虫予測システムにおける誘虫予測方法であって、
気温取得部が、予測対象日に該当する日付の気温を、過去の年単位における日付ごとの気温の実績を示す気温実績情報を記憶する気温実績情報記憶部から取得する気温取得ステップと、
予測部が、誘虫情報記憶部が記憶し、照明に昆虫が誘引される状況を気温に対応させて示す誘虫情報のうちで、前記気温取得ステップにより取得された気温に対応する誘虫情報に基づいて、前記予測対象日における昆虫の誘引状況を予測する予測ステップと
を備える誘虫予測方法。
【請求項2】
前記誘虫情報は、対応の気温のもとで照明に誘引される昆虫の誘引量を所定の昆虫の分類ごとに示し、
前記予測ステップは、昆虫の分類ごとに誘引量を予測する
請求項1に記載の誘虫予測方法。
【請求項3】
前記予測ステップは、一定期間における複数の予想対象日ごとに予測した誘引状況を総合した総合誘引状況を算出する
請求項1または2に記載の誘虫予測方法。
【請求項4】
前記誘虫情報は、対応の気温のもとで照明に誘引される昆虫の誘引量を、照明の種別ごとに示し、
前記予測ステップは、指定された照明の種別に応じた誘引量を予測する
請求項1または2に記載の誘虫予測方法。
【請求項5】
前記誘虫情報に対応させる気温、前記気温実績情報が示す気温は、一日における日の入り後の時刻に基づいて定められた所定の時刻に対応する気温である
請求項1または2に記載の誘虫予測方法。
【請求項6】
過去の年単位における日付ごとの気温の実績を示す気温実績情報を記憶する気温実績情報記憶部と、
照明に昆虫が誘引される状況を気温に対応させて示す誘虫情報を記憶する誘虫情報記憶部と、
予測対象日に該当する日付の気温を、気温実績情報記憶部から取得する気温取得部と、
前記誘虫情報記憶部が記憶する誘虫情報のうち、前記気温取得部により取得された気温に対応する誘虫情報に基づいて、前記予測対象日における昆虫の誘引状況を予測する予測部と
を備える誘虫予測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘虫予測方法および誘虫予測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工事期間において工事に使用される照明に誘引される昆虫の量を、環境種別に応じて誘引される昆虫の量を示す情報を利用して予測する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-130812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
照明に誘引される昆虫の量(誘虫量)は、例えば年間における季節の遷移に応じた気温変化に依存して変化する。
【0005】
本発明は、季節性による気温変化に応じた誘虫量の予測が的確に行われるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上述した課題を解決する本発明の一態様は、誘虫予測システムにおける誘虫予測方法であって、気温取得部が、予測対象日に該当する日付の気温を、過去の年単位における日付ごとの気温の実績を示す気温実績情報を記憶する気温実績情報記憶部から取得する気温取得ステップと、予測部が、誘虫情報記憶部が記憶し、照明に昆虫が誘引される状況を気温に対応させて示す誘虫情報のうちで、前記気温取得ステップにより取得された気温に対応する誘虫情報に基づいて、前記予測対象日における昆虫の誘引状況を予測する予測ステップとを備える誘虫予測方法である。
【0007】
(2)本実施形態の一態様は、(1)に記載の誘虫予測方法であって、前記誘虫情報は、対応の気温のもとで照明に誘引される昆虫の誘引量を所定の昆虫の分類ごとに示し、前記予測ステップは、昆虫の分類ごとに誘引量を予測してよい。
【0008】
(3)本実施形態の一態様は、(1)または(2)に記載の誘虫予測方法であって、前記予測ステップは、一定期間における複数の予想対象日ごとに予測した誘引状況を総合した総合誘引状況を算出してよい。
【0009】
(4)本実施形態の一態様は、(1)から(3)のいずれか1つに記載の誘虫予測方法であって、前記誘虫情報は、対応の気温のもとで照明に誘引される昆虫の誘引量を、照明の種別ごとに示し、前記予測ステップは、指定された照明の種別に応じた誘引量を予測してよい。
【0010】
(5)本実施形態の一態様は、(1)から(4)のいずれか1つに記載の誘虫予測方法であって、前記誘虫情報に対応させる気温、前記気温実績情報が示す気温は、一日における日の入り後の時刻に基づいて定められた所定の時刻に対応する気温であってよい。
【0011】
(6)本実施形態の一態様は、過去の年単位における日付ごとの気温の実績を示す気温実績情報を記憶する気温実績情報記憶部と、照明に昆虫が誘引される状況を気温に対応させて示す誘虫情報を記憶する誘虫情報記憶部と、予測対象日に該当する日付の気温を、気温実績情報記憶部から取得する気温取得部と、前記誘虫情報記憶部が記憶する誘虫情報のうち、前記気温取得部により取得された気温に対応する誘虫情報に基づいて、前記予測対象日における昆虫の誘引状況を予測する予測部とを備える誘虫予測システムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、季節性による気温変化に応じた誘虫量の予測が的確に行われるようになるとの効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態における誘虫予測装置の機能構成例を示す図である。
図2】本実施形態における工事計画情報の一例を示す図である。
図3】本実施形態における照明仕様情報の一例を示す図である。
図4】本実施形態における実績気温情報の一例を示す図である。
図5】本実施形態における昆虫カロリー情報の一例を示す図である。
図6】本実施形態における誘虫情報の一例を示す図である。
図7】本実施形態における誘虫予測装置が昆虫誘引状況の予想と予測された昆虫誘引状況に基づく生物種への影響の予測とに対応して実行する処理手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本実施形態の誘虫予測装置100の機能構成例を示している。本実施形態の誘虫予測装置100は、工事現場において使用される照明器具により昆虫が誘引される状況(誘虫状況)を予測する。また、本実施形態の誘虫予測装置100は、予測した誘虫状況に応じた特定の生物種への影響についても予測する。
同図の誘虫予測装置100としての機能は、ハードウェアとしての誘虫予測装置100が備えるCPU(Central Processing Unit)にプログラムを実行させることにより実現される。
同図の誘虫予測装置100は、ユーザインターフェース部101、制御部102、および記憶部103を備える。
【0015】
ユーザインターフェース部101は、ユーザインターフェースに対応するデバイスによりユーザインターフェース機能を実現する部位である。ユーザインターフェース部101に対応するハードウェアとしては、例えば、マウス、キーボード等の入力デバイスやディスプレイデバイス等の出力デバイスを含んでよい。また、ユーザインターフェース部101に対応するハードウェアとして、ディスプレイデバイスの表示面に対する操作が可能なタッチパネル等も含まれてよい。
【0016】
制御部102は、誘虫予測装置100における各種の制御を実行する。制御部102は、気温取得部121と予測部122とを備える。
【0017】
気温取得部121は、予測対象となる日付(予測対象日)に該当する気温を、実績気温情報記憶部133から取得する。
予測部122は、気温取得部121が取得した気温に対応付けられた誘虫情報を利用して、予測対象日における昆虫の誘引状況を予測する。予測部122は、気温取得部121が取得した気温に対応付けられた誘虫情報を誘虫情報記憶部135から取得する。
また、予測部122は、予測対象日における昆虫の誘引状況の予測結果を利用して、工事期間における特定の生物種への影響を推定する。
【0018】
記憶部103は、誘虫予測装置100に対応する各種の情報を記憶する。記憶部103は、工事計画情報記憶部131、照明仕様情報記憶部132、実績気温情報記憶部133、昆虫カロリー情報記憶部134、誘虫情報記憶部135、および予測結果記憶部136を備える。
【0019】
工事計画情報記憶部131は、誘虫状況の予測の対象となる工事(対象工事)の計画に関する情報(工事計画情報)を記憶する。
【0020】
図2は、工事計画情報の一例を示している。同図の工事計画情報は、工事日程と使用照明情報の各フィールドを含む。
工事期間のフィールドは、対象工事が行われる日程を示す。
使用照明情報は、対象工事において使用される照明器具に関する情報である。使用照明情報は、光源種別と点灯時間と使用数の各フィールドを含む。
光源種別のフィールドは、対象工事において使用される照明器具の光源の種別(光源種別:例えば、水銀灯、ナトリウム灯、LED等)の情報を格納する。光源種別のフィールドは、工事期間において単一の光源種別が使用される場合には、当該光源種別を格納してよい。一方、例えば工事期間において複数の光源種別で照明器具を使い分けるような計画の場合には、日ごとあるいは日における時間ごとに対応付けて使用される光源種別の情報を格納してよい。
点灯時間のフィールドは、日ごとの対象工事において照明を点灯させる(使用する)時間を格納する。光源種別のフィールドは、例えば工事期間において日ごとに点灯時間が異なる計画の場合には、日ごとに対応して計画された点灯時間を格納してよい。
使用数のフィールドは、対象工事にて使用される照明の数を格納する。光源種別のフィールドは、例えば工事期間において日付や時間帯等に応じて使用数が異なる計画の場合には、日付や時間帯ごとに対応付けた使用数を格納してよい。
なお、工事計画情報には、対象工事が行われる場所(工事場所)を示す情報を格納してよい。
【0021】
説明を図1に戻す。照明仕様情報記憶部132は、照明仕様情報を格納する。照明仕様情報は、照明器具の光源種別ごとの所定の仕様(特性)を示す情報である。
【0022】
図3は、照明仕様情報の一例を示している。同図の照明仕様情報は、「水銀灯」、「ナトリウム灯」、「LED」の3つの光源種別ごとの光量と消費電力とを格納する。光量と消費電力は、それぞれ照明器具の1つあたりに対応する値であってよい。
【0023】
説明を図1に戻す、実績気温情報記憶部133は実績気温情報を格納する。実績気温情報は、過去において測定された日ごとの気温の履歴(実績)に基づいて導出された気温(実績気温)を示す情報である。
図4は、実績気温情報の一例である。同図の実績気温情報は、1年(年単位)における日付ごとの実績気温が示されている。実績気温情報における実績気温は、例えば昨年に対応する1年の日付ごとに記録された気温であってもよいし、過去の所定年数における日付ごとの気温の統計に基づくものであってもよい。日付ごとの気温の統計を求めるに手法としては、例えば平均値、最頻値、正規分布などをはじめとして特に限定されない。
また、照明による昆虫の誘引量は日の入り(日没)後であり、日の入り後において気温が最も高くなる日の入り直後となる。そこで、実績気温情報において示される実績気温は、過去における日の入り直後に対応して定めた時刻または時間帯において測定された気温に基づいて求められてよい。
また、実績気温情報は、予測対象の工事が行われる場所にて測定された気温に基づいて作成されたものであることが好ましい。
【0024】
昆虫カロリー情報記憶部134は、昆虫カロリー情報を記憶する。昆虫カロリー情報は、昆虫の分類ごとに、対応の分類の昆虫が有するカロリーを示した情報である。
【0025】
図5は、昆虫カロリー情報の一例を示している。同図の昆虫カロリー情報は、「チョウ・ガ」、「カメムシ・ウンカ」、「ハチ・羽アリ」、「ハエ・ユスリカ」、「コウチュウ」の5種に分類される昆虫ごとの単位重量あたりのカロリーの情報を格納する。
【0026】
説明を図1に戻す。誘虫情報記憶部135は、誘虫情報を記憶する。
照明に誘引される昆虫の量(誘虫量)は、年間における気温の変化に応じて変化する。本実施形態の誘虫情報は、年間において変化する気温の区分ごとに、当該気温の区分において生じる誘虫量を示す情報である。また、本実施形態の誘虫情報は、所定の昆虫の分類ごとに対応させた誘虫量が示される。また、本実施形態の誘虫情報は、光源種別ごとに対応させた誘虫量が示される。
【0027】
図6(A)、図6(B)、図6(C)は、それぞれ誘虫情報記憶部135が記憶する光源種別ごとの誘虫情報である。図6(A)は、光源種別が水銀灯である場合の誘虫情報である。図6(B)は、光源種別がナトリウム灯である場合の誘虫情報である。図6(C)は、光源種別がLED(Light Emitting Diode)である場合の誘虫情報である。
1つの光源種別に対応する誘虫情報は、年間における10℃以上での気温の変化を複数(同図では7つ)の気温区分に分割し、分割された気温区分ごとにおいて、所定の昆虫の分類ごとの誘虫量を示す。同図においては、昆虫の分類として「チョウ・ガ」、「カメムシ・ウンカ」、「ハチ・羽アリ」、「ハエ・ユスリカ」、「コウチュウ」の5種とした例が示されている。例えば図6(A)の光源種別が水銀灯である場合の誘虫情報においては、昆虫の分類ごとに対応する気温区分ごとの誘虫量は、T11~T17、T21~T27、T31~T47、T41~T47、T51~T57により示されている。
【0028】
誘虫量は、所定の単位容積、単位時間、単位光量の組み合わせのもとで照明に誘引される昆虫の量を示す。誘虫量は、昆虫の重量を示すものであってよいが、昆虫の数を示すものであってもよい。
【0029】
図6(A)、図6(B)、図6(C)の各図において、7つの気温区分は、ピーク前期、ピーク期、ピーク後期の3つの時期のいずれか1つに該当する。ピーク前期、ピーク期、ピーク後期の各時期は、特定の日付が固定的に対応付けられるのではなく、例えば、実績気温情報(図4)において、実績気温が23℃を超える前までの期間がピーク前期であり、23℃~25℃の実績気温となる期間がピーク期であり、ピーク期後において25℃以下の実績気温となる期間がピーク後期となる。
【0030】
この場合、ピーク前期とピーク後期とで同じ気温を含む気温区分が存在する。具体的には、例えばピーク前期に該当する17℃~23℃の気温区分と、ピーク後期に該当する22℃~14℃の気温区分とでは、17℃~22℃の範囲が共通となっている。
例えば、誘虫情報について、時期に対応させることなく単に気温区分ごとに対応させて各昆虫の分類の誘虫量を示す構造であってもよい。しかしながら、昆虫の分類ごとの誘虫量は、同じ気温であっても、気温のピーク前の春に近い時期とピーク後の秋に近い時期とで異なる場合がある。つまり、同じ気温でも対応する季節により昆虫の分類ごとの誘虫量が異なる場合がある。そこで、本実施形態のように、気温区分をピーク前期、ピーク期、ピーク後期ごとに対応させるようにすることで、季節に応じた誘虫の状況の相違に的確に対応することが可能となり、予測結果の精度の向上を図ることができる。
なお、気温区分に対する時期の設定は、例えば前期と後期といったように2つの時期で分けるようにされてよい。
【0031】
説明を図1に戻す。予測結果記憶部136は、予測部122が予測した対象日ごとの昆虫誘引状況を記憶する。また、予測結果記憶部136は、予測部122が対象日ごとの昆虫誘引状況に基づいて予測した工事期間に対応する総合昆虫誘引状況や、生物種への影響に関する予測結果等も記憶してよい。
【0032】
図7のフローチャートを参照して、誘虫予測装置100が昆虫誘引状況の予想と、予測された昆虫誘引状況に基づく生物種への影響の予測とに対応して実行する処理手順例について説明する。
【0033】
ステップS100:気温取得部121は、工事計画情報に格納される工事期間の情報を参照することにより工事開始日を取得する。誘虫予測装置100において気温取得部121は、工事期間において予測の対象とする対象日として工事開始日を設定する。
【0034】
ステップS102:気温取得部121は、ステップS100または後述のステップS116により設定された対象日としての日付に対応付けられた実績気温を、実績気温情報記憶部133から取得する。
【0035】
ステップS104:予測部122は、ステップS102にて取得された実績気温が予測対象外であるか否かを判定する。具体的には10℃未満の実績気温が予測対象外となる。つまり、本実施形態においては、10℃未満の気温の環境では、照明による昆虫の誘引はないものとして扱うようにされる。
【0036】
ステップS106:ステップS104にて取得された実績気温が予測対象外でないと判定された場合、予測部122は、工事計画情報の光源種別を参照することで、今回の予測対象となる工事において対象日に使用される照明器具の光源種別を特定する。
【0037】
ステップS108:予測部122は、ステップS106にて特定した光源種別に対応付けられる誘虫情報を、誘虫情報記憶部135から取得する。
【0038】
ステップS110:予測部122は、ステップS108により取得した誘虫情報に基づいて、対象日における昆虫誘引状況を予測する。具体的に、予測部122は、対象日における昆虫誘引状況として、昆虫の分類(「チョウ・ガ」、「カメムシ・ウンカ」、「ハチ・羽アリ」、「ハエ・ユスリカ」、「コウチュウ」)ごとの誘虫量を予測する。この場合において、予測部122は、ステップS108により取得した誘虫情報において示される昆虫の分類ごとの誘虫量をそのまま昆虫誘引状況の予測結果としてもよい。
あるいは、予測部122は、照明仕様情報記憶部132を参照することで対象の工事にて使用される照明の光源の光量を特定してよい。そのうえで、予測部122は、特定した光量と誘虫情報が対応する単位光量との比に基づく係数を乗算することで、工事にて使用される照明の光源の光量に応じた誘虫量を算出してよい。
また、予測部122は、取得した誘虫情報において示される昆虫の分類ごとの誘虫量について、例えば対象の工事の現場の環境等に基づく係数を乗算するなどして変更した結果を、昆虫誘引状況の予測結果としてもよい。
【0039】
ステップS112:ステップS104にて実績気温が予測対象外であると判定された場合、予測部122は、昆虫誘引状況として、いずれの昆虫の分類も誘虫量がゼロであるとの予測結果とする。
【0040】
ステップS114:予測部122は、ステップS110またはステップS112による昆虫誘引状況の予測結果を対象日の日付に対応付けて予測結果記憶部136に記憶させる。
【0041】
ステップS116:また、予測部122は、対象日にて工事に使用される照明器具の消費電力量を算出してよい。
具体的に、予測部122は、工事計画情報記憶部131が記憶する工事計画情報を参照して、対象日において使用される照明器具の光源種別と点灯時間と使用数とを特定する。予測部122は、照明仕様情報記憶部132が記憶する照明仕様情報を参照して、使用される照明器具の光源種別に対応する消費電力を特定する。予測部122は、特定した点灯時間、使用数、および消費電力を利用して、対象日における照明器具の使用に応じた消費電力量を算出する。
【0042】
ステップS118:予測部122は、ステップS116による消費電力量の算出結果を対象日に対応付けて予測結果記憶部136に記憶させてよい。
【0043】
ステップS120:予測部122は、現在設定されている対象日が工事終了日であるか否かを判定する。
【0044】
ステップS122:ステップS120にて工事終了日ではないと判定された場合、予測部122は、対象日について次の稼働日の日付を設定し、ステップS102に処理を戻す。
【0045】
ステップS124:ステップS120にて現在設定されている対象日が工事終了日であると判定された場合の処理として、予測部122は、対象工事の工事期間に対応する総消費電力量を算出してよい。この場合、予測部122は、ステップS116により予測結果記憶部136に記憶された工事期間における日ごとの消費電力量を積算することにより総消費電力量を算出してよい。また、予測部122は、算出した総消費電力量を予測結果記憶部136に記憶させてよい。
【0046】
ステップS126:また、予測部122は、対象工事の工事期間に対応する総合的な昆虫誘引状況(総合昆虫誘引状況)を予測してよい。この場合、予測部122は、予測結果記憶部136に記憶された工事期間における日ごとの昆虫誘引状況の予測結果を統合する処理を行うことで、総合昆虫誘引状況の予測結果を出力してよい。総合昆虫誘引状況の予測結果は、工事期間における昆虫の種別ごとの誘虫量であってよい。
【0047】
ステップS128:また、予測部122は、ステップS126により得られた総合昆虫誘引状況の予測結果を利用して、対象工事にて照明器具が使用されて昆虫が誘引されることに起因する特定の生物種への影響を予測してよい。このために、予測部122は、喪失カロリーを算出する。
本実施形態では、照明器具の光に誘引される昆虫は、昆虫を含む食物連鎖において、上位の捕食者の捕食対象から除外されたものとして捉えるようにされる。喪失カロリーは、工事期間において照明器具の光に昆虫が誘引されたことに起因して、捕食者が喪失することとなったカロリーを示す。予測部122は、総合昆虫誘引状況において示される昆虫の種別ごとの総合的な誘虫量のそれぞれと、対応の昆虫の種別のカロリーとを利用して喪失カロリーを算出してよい。
【0048】
ステップS130:予測部122は、ステップS128により算出された喪失カロリーに基づいて、対象工事の工事期間において照明器具の光に昆虫が誘引されることによる特定の生物種についての影響を予測する。予測の対象となる特定の生物種は、食物連鎖において昆虫の上位となる生物種であれば特に限定されない。一例として、予測部122は、総合昆虫誘引状況において示される昆虫種別ごとの誘虫量を合算することで、工事期間における総合誘虫量を算出する。予測部122は、特定の生物種の1つあたりが一日に必要とするカロリーと工事期間における工事日数とを乗算して、工事期間に対応して特定の生物種が必要とするカロリー(必要カロリー)を算出する。予測部122は、総合誘虫量を必要カロリーで除算して求めた値を、工事期間において影響を受ける特定の生物種の数として予測してよい。予測部122は、ステップS130による予測結果を、予測結果記憶部136に記憶させてよい。
【0049】
ステップS126やステップS130により得られた予測結果は、制御部102の制御により、ユーザインターフェース部101にて表示、印刷等の態様により出力されてよい。このような予測結果の出力は、ユーザの操作に応じて行われてよい。
また、図7の処理は、例えばユーザが、ユーザインターフェース部101を操作して工事計画情報(図2)を入力することに応じて開始されるようにしてよい。
【0050】
これまでの説明から理解されるように、本実施形態の誘虫予測装置100は、年間における時期の変化に伴う気温に応じた誘虫量を示す誘虫量情報を利用して昆虫誘引状況を予測するように構成される。このような構成により、本実施形態においては、季節の遷移に応じた気温の変化を考慮した誘虫量の予測を的確に行うことが可能となる。
【0051】
なお、対象工事の現場の周囲環境に応じて、同じ光源種別、光量等の条件のもとであっても昆虫種別ごとの誘虫量は異なってくる場合がある。そこで、例えば誘虫情報について、さらに周囲環境の種別に応じた誘虫量が反映された内容としてよい。そのうえで、予測部122は、光源種別と対象工事の現場の周囲環境との組み合わせに対応する誘虫情報を取得し、ステップS110において昆虫誘引状況を予測してよい。
【0052】
なお、上記の例では、工事を対象とする場合を例に挙げたが、例えば屋外イベントなどで照明器具を使用する場合にも上記実施形態における構成が適用されてよい。
【0053】
なお、誘虫予測装置100としての機能は、例えば複数の装置やサーバに分散された誘虫予測システムとして構成されてよい。例えば、誘虫予測装置100はユーザインターフェース部101を備えるユーザ端末と、制御部102および記憶部103を備えるサーバとに分散されてよい。また、この場合には、例えば制御部102としての機能を備えるサーバと記憶部103としての機能を備えるサーバとに分散されてもよい。
【0054】
なお、上述の誘虫予測装置100としての機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述の誘虫予測装置100としての処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD-ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部または外部に設けられた記録媒体も含まれる。配信サーバの記録媒体に記憶されるプログラムのコードは、端末装置で実行可能な形式のプログラムのコードと異なるものでもよい。すなわち、配信サーバからダウンロードされて端末装置で実行可能な形でインストールができるものであれば、配信サーバで記憶される形式は問わない。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後に端末装置で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0055】
2015年9月の国連サミットにおいて採択された17の国際目標として「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」がある。本実施形態に係る誘虫予測装置、誘虫予測システムは、このSDGsの17の目標のうち、例えば「15.陸の豊かさも守ろう」の目標などの達成に貢献し得る。
【符号の説明】
【0056】
100 誘虫予測装置、101 ユーザインターフェース部、102 制御部、103 記憶部、121 気温取得部、122 予測部、131 工事計画情報記憶部、132 照明仕様情報記憶部、133 実績気温情報記憶部、134 昆虫カロリー情報記憶部、135 誘虫情報記憶部、136 予測結果記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7