(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018079
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】エレベータ異常検出装置およびエレベータ異常検出方法
(51)【国際特許分類】
B66B 3/00 20060101AFI20250130BHJP
B66B 5/14 20060101ALI20250130BHJP
H02P 27/06 20060101ALI20250130BHJP
H02P 29/024 20160101ALI20250130BHJP
【FI】
B66B3/00 R
B66B5/14 A
H02P27/06
H02P29/024
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121488
(22)【出願日】2023-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】弁理士法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】向 雲
(72)【発明者】
【氏名】高上 遼馬
【テーマコード(参考)】
3F303
3F304
5H501
5H505
【Fターム(参考)】
3F303CB42
3F303DB11
3F303DC36
3F303EA02
3F304BA13
3F304CA11
3F304EA29
3F304ED13
5H501AA07
5H501BB08
5H501HB07
5H501JJ03
5H501JJ04
5H501JJ17
5H501KK07
5H501LL22
5H501LL23
5H501LL51
5H501MM09
5H505AA03
5H505BB06
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ04
5H505JJ17
5H505KK08
5H505LL22
5H505LL24
5H505LL54
5H505MM12
(57)【要約】
【課題】エレベータ装置の異常検出の精度を向上する。
【解決手段】実施形態に係るエレベータ異常検出装置は、データ取得部とフーリエ変換部と異常検出部とを有する。データ取得部は、電源がモータに供給する電圧もしくは電流の波形を計測する計測装置から、電圧もしくは電流の波形を示す時系列データを取得する。抽出部は、データ取得部が取得した時系列データから指定された時間長の時系列データを抽出する。フーリエ変換部は、抽出部が抽出した時系列データをフーリエ変換することでスペクトル分布を生成する。異常検出部は、教師ありデータを用いたAIにより、生成されたスペクトル分布に基づいてエレベータ装置を構成する用品の異常を検出する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごの昇降を駆動するモータと前記モータに電力を供給する電源と前記モータを制御する制御装置とを有するエレベータ装置の異常を検出するエレベータ異常検出装置において、
前記電源が前記モータに供給する電圧もしくは電流の波形を計測する計測装置から、電圧もしくは電流の波形を示す時系列データを取得するデータ取得部と、
前記データ取得部が取得した前記時系列データから指定された時間長の時系列データを抽出する抽出部と、
前記抽出部が抽出した前記時系列データをフーリエ変換することでスペクトル分布を生成するフーリエ変換部と、
少なくとも一部のデータについて教師ありデータを用いたAIにより、生成された前記スペクトル分布に基づいて前記エレベータ装置を構成する用品の異常を検出する異常検出部と、
を有するエレベータ異常検出装置。
【請求項2】
前記時間長は、前記エレベータ装置を構成する用品それぞれの動作周期に基づいて設定される、
請求項1に記載のエレベータ異常検出装置。
【請求項3】
異常が無いことが判断されている用品の異常がない場合の前記用品の動作に起因するスペクトル分布の値を、前記フーリエ変換部が生成した前記スペクトル分布の値から減算する減算処理部を有し、
前記異常検出部は、減算処理後のスペクトル分布に基づいて前記エレベータ装置を構成する用品の異常を検出する、
請求項1または2に記載のエレベータ異常検出装置。
【請求項4】
前記抽出部は、動作周期が短い用品に対応する時間長から動作周期が長い用品に対応する時間長に順次時間長を変えて時間長を設定し、
前記異常検出部は、設定された前記時間長の時系列データに基づいて動作周期が短い用品から順に異常の有無を検出する、
請求項3に記載のエレベータ異常検出装置。
【請求項5】
異常がない場合のスペクトル分布の値を、前記フーリエ変換部が生成した前記スペクトル分布の値から減算する減算処理部を有し、
前記異常検出部は、減算処理後のスペクトル分布に基づいて前記エレベータ装置を構成する用品の異常を検出する、
請求項1または2に記載のエレベータ異常検出装置。
【請求項6】
乗りかごの昇降を駆動するモータと前記モータに電力を供給する電源と前記モータを制御する制御装置とを有するエレベータ装置の異常を検出するエレベータ異常検出方法において、
前記電源の電圧もしくは電流の波形を計測する計測装置から、電圧もしくは電流の波形を示す時系列データを取得するデータ取得工程と、
前記時系列データから指定された時間長の時系列データを抽出する抽出工程と、
抽出した前記時系列データをフーリエ変換することでスペクトル分布を生成するフーリエ変換工程と、
少なくとも一部のデータについて教師ありデータを用いたAIにより、生成された前記スペクトル分布に基づいて前記エレベータ装置を構成する用品の異常を検出する異常検出工程と、
を含むエレベータ異常検出方法。
【請求項7】
異常が無いことが判断されている用品の異常がない場合の前記用品の動作に起因するスペクトル分布の値を、前記フーリエ変換工程で生成した前記スペクトル分布の値から減算する減算処理工程を有し、
前記異常検出工程では、減算処理後のスペクトル分布に基づいて前記エレベータ装置を構成する用品の異常を検出する、
請求項6に記載のエレベータ異常検出方法。
【請求項8】
前記抽出工程では、動作周期が短い用品に対応する時間長から動作周期が長い用品に対応する時間長に順次時間長を変えて時間長を設定し、
前記異常検出工程では、設定された前記時間長の時系列データに基づいて動作周期が短い用品から順に異常の有無を検出する、
請求項6または7に記載のエレベータ異常検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ異常検出装置およびエレベータ異常検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータ装置の異常を検出する方法として、エレベータ装置の乗りかごを昇降駆動するモータに電力を供給するインバータ出力の電圧波形や電流波形をモニタして、正常時の波形との相違に基づいて、インバータに異常があるか否かを検出する方法が知られている。また、モータのトルクリプルを計測し、正常時のトルクリプルとの相違に基づいて、モータの異常や異物の挟まり等を検出する方法が知られている。
【0003】
また、インバータ出力の電圧波形やモータのトルクリプルをFFT変換してスペクトル分布を求め、スペクトル分布をAIにより解析することで、インバータやモータ、もしくは、モータにより駆動される機器の異常を検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5481286号公報
【特許文献2】特開2020-64481号公報
【0005】
エレベータ装置の乗りかごを昇降動作させながらモニタしたインバータ出力の電圧波形や電流波形およびモータのトルクリプルには、乗りかごの昇降動作に伴う周囲の機械振動等のノイズが含まれている。このようなノイズを含んだインバータ出力の電圧波形や電流波形もしくはモータのトルクリプルに基づいて異常の有無を判断すると、誤った判断をする確率が高くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述の事情によりなされたもので、エレベータ装置の異常検出の精度を向上することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための実施形態に係るエレベータ異常検出装置は、乗りかごの昇降を駆動するモータとモータに電力を供給する電源とモータを制御する制御装置とを有するエレベータ装置の異常を検出するエレベータ異常検出装置である。実施形態に係るエレベータ異常検出装置は、データ取得部とフーリエ変換部と異常検出部とを有する。データ取得部は、電源がモータに供給する電圧もしくは電流の波形を計測する計測装置から、電圧もしくは電流の波形を示す時系列データを取得する。抽出部は、データ取得部が取得した時系列データから指定された時間長の時系列データを抽出する。フーリエ変換部は、抽出部が抽出した時系列データをフーリエ変換することでスペクトル分布を生成する。異常検出部は、教師ありデータを用いたAIにより、生成されたスペクトル分布に基づいてエレベータ装置を構成する用品の異常を検出する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係るエレベータ装置の斜視図である。
【
図2】本実施形態に係るエレベータ装置の制御系を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態に係る駆動ユニットのブロック図である。
【
図4】本実施形態に係る制御ユニットの物理的ブロック図である。
【
図5】本実施形態に係る制御ユニットの機能的ブロック図である。
【
図6】本実施形態に係る運転パターンについて説明するための図である。
【
図7】本実施形態に係る時系列データについて説明するための図である。
【
図8】本実施形態に係るエレベータ装置を構成する用品の動作周期について説明するための図である。
【
図9】本実施形態に係る抽出部が抽出する時系列データについて説明するための図である。
【
図10】本実施形態に係るフーリエ変換部が生成するスペクトル分布について説明するための図である。
【
図11】本実施形態に係る減算処理部の動作について説明するための図である。
【
図12】本実施形態に係るエレベータ異常検出装置のデータ計測処理について説明するためのフローチャートである。
【
図13】本実施形態に係るエレベータ異常検出装置の異常検出処理について説明するためのフローチャートである。
【
図14】本実施形態に係るエレベータ異常検出装置の教師ありデータの追加処理について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態を、図面を用いて説明する。説明には、適宜、相互に直交するX軸、Y軸、Z軸からなるXYZ座標系を用いる。本実施形態の説明に用いる図およびフローチャートは一例を示すものである。
【0010】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係るエレベータ装置10の斜視図である。エレベータ装置10は、商業施設や居住施設などの建築物に設けられた昇降路100の内部に配置されている。
図1に示されるように、エレベータ装置10は、乗りかご31、カウンタウエイト50、昇降モータ40、ガイドレール21~24、制御盤70(エレベータ制御装置)を有している。
【0011】
ガイドレール21~24それぞれは、長手方向をZ軸方向とする部材である。ガイドレール21と22は、乗りかご31を昇降自在にガイドするための一対の部材である。また、ガイドレール23と24は、カウンタウエイト50を昇降自在にガイドするための一対の部材である。ガイドレール21とガイドレール22は、Y軸方向に離間して配置されている。また、ガイドレール23と24も、同様にY軸方向に相互に離間して配置されている。
図1では、カウンタウエイト50のガイドレール23と24が、乗りかご31のガイドレール21と22に対してX軸方向に離間して配置されている。なお、ガイドレール21~24の配置は、
図1に示される配置に限定されるものではない。
【0012】
乗りかご31は、利用者を収容して昇降路100を昇降するユニットである。乗りかご31は、ガイドレール21と22の間に配置され、ガイドレール21と22に対して、上下方向に移動可能に取り付けられている。
【0013】
乗りかご31の+X側の側面には、内部に出入りするための開口部31aが形成されている。開口部31aは、乗りかご31の側面に沿って移動する一対の扉32によって、閉塞或いは開放される。扉32は、開閉モータ(
図1では、図示略)によって開閉される。
【0014】
カウンタウエイト50は、ガイドレール23と24に対して、上下方向に移動可能に取り付けられている。カウンタウエイト50の重量は、乗りかご31の重量に対して所定の割合になるように調整されている。
【0015】
昇降モータ40は、乗りかご31を昇降させるためのモータである。昇降モータ40は、昇降路100の上部に、回転軸がY軸に平行になるように配置されている。昇降モータ40の回転軸にはプーリー42が固定されている。
【0016】
昇降モータ40のプーリー42には、ワイヤ43が巻き回されている。ワイヤ43は、一端が、乗りかご31に固定され、他端が、カウンタウエイト50に固定されている。
【0017】
制御盤70は、昇降路100に配置されている。制御盤70には、昇降モータ40や乗りかご31に設けられた機器等を制御するための制御装置が収容されている。なお、以下の実施形態では、制御盤70が昇降路100に配置されているマシンルームレスエレベータを例に説明するが、機械室がある場合についても本実施形態を適用することができる。
【0018】
図2は、エレベータ装置10の制御系を示すブロック図である。制御系は、制御盤70に収容される制御ユニット80および駆動ユニット91と、乗りかご31に設けられる操作パネル36と、を含んで構成される。
【0019】
操作パネル36は、乗りかご31の内壁面に設けられている。操作パネル36は、乗りかご31の利用者から、行き先階などを受け付けるためのインタフェースである。利用者は、操作パネル36を操作することで、乗りかご31の行き先階などの登録や、扉32の開閉を行うことができる。操作パネル36は、
図1に示されるケーブル44を介して、制御盤70に収容される制御ユニット80に接続されている。
【0020】
図2に示す駆動ユニット91は、昇降モータ40と、乗りかご31の扉32を駆動する開閉モータ41(
図1では図示略)に電力を供給することで、昇降モータ40と開閉モータ41とを駆動する。駆動ユニット91は、制御ユニット80からの指示に基づいて、昇降モータ40を駆動する。また、駆動ユニット91は、制御ユニット80からの指示に基づいて、開閉モータ41を駆動する。
【0021】
図3は、駆動ユニット91のブロック図である。駆動ユニット91は、インバータ13と計測装置15を有する。インバータ13は、昇降モータ40および開閉モータ41に電力を供給する電源装置である。インバータ13は、スイッチングレギュレータで構成されている。昇降モータ40および開閉モータ41が3相交流モータで形成されている場合、インバータ13は、3相交流電圧を出力する。
【0022】
計測装置15は、電流計測装置151と電圧計測装置152を有する。電流計測装置151は、インバータ13が昇降モータ40および開閉モータ41に供給する電流を相ごとに計測する装置である。電圧計測装置152は、インバータ13の出力電圧を相ごとに計測する装置である。
【0023】
図4は、制御ユニット80の物理的なブロック図である。制御ユニット80は、バス85を介して相互接続されるCPU(Central Processing Unit)81、主記憶部82、補助記憶部83、およびインタフェース部84を有するコンピュータである。CPU81は、補助記憶部83に記憶されているプログラムに従って、後述する処理を実行する。主記憶部82は、RAM(Random Access Memory)等を有している。主記憶部82は、CPU81の作業領域として用いられる。補助記憶部83は、ROM(Read Only Memory)、半導体メモリ等の不揮発性メモリを有している。補助記憶部83は、CPU81が実行するプログラム、および各種パラメータなどを記憶している。また、補助記憶部83は、AI(Artificial Intelligence)による異常検出に使用する教師ありデータを記憶する。教師ありデータは全てのデータについてラベルを付けたものでもよく、また、一部をラベル付けした半教師ありデータであってもよい。詳細は後述する。
【0024】
インタフェース部84は、シリアルインタフェース、パラレルインタフェース、無線LANインタフェースなどを有している。操作パネル36と駆動ユニット91とは、インタフェース部84を介して、CPU81に接続される。また、インタフェース部84には、キーボード、ディスプレイ等で構成された入出力装置93が接続される。
【0025】
図5は、制御ユニット80の機能的なブロック図である。制御ユニット80のCPU81は、補助記憶部83に記憶されているプログラムを実行することで、駆動ユニット制御部71と異常検出装置72を実現する。
【0026】
駆動ユニット制御部71は、操作パネル36もしくは各フロアの呼びパネルからの入力に基づいて、駆動ユニット91を制御する。例えば、駆動ユニット制御部71が、駆動ユニット91を介して、昇降モータ40を正転させると、乗りかご31が上昇するとともに、カウンタウエイト50が下降する。駆動ユニット制御部71が、駆動ユニット91を介して、昇降モータ40を逆転させると、乗りかご31が下降するとともに、カウンタウエイト50が上昇する。また、駆動ユニット制御部71が、駆動ユニット91を介して、開閉モータ41を正転させると、乗りかご31の扉32および各階の乗り場に設けられた扉は戸開制御され、開閉モータ41を逆転させると、乗りかご31の扉32および各階の乗り場に設けられた扉は戸閉制御される。
【0027】
異常検出装置72は、教師ありデータを用いたAIにより、計測装置15で計測した電流もしくは電圧の変化を示す時系列データをフーリエ変換したスペクトル分布に基づいてエレベータ装置10を構成する用品の異常を検出する。異常検出装置72は、運転パターン設定部73、データ取得部75、抽出部76、フーリエ変換部77、減算処理部78、異常検出部79を有する。
【0028】
運転パターン設定部73は、乗りかご31の移動速度及び移動加速度を規定する運転パターンを駆動ユニット制御部71に設定する。運転パターンとしては、利用者を運搬する通常運行時の運転パターンと、エレベータ装置10を構成する用品の異常を検出する異常検出時の運転パターンがあり、運転パターンは予め記憶部に記憶されている。運転パターン設定部73は、運転パターンを記憶部から選択し、駆動ユニット制御部71に供給する。
【0029】
図6は、異常検出時の運転パターンの例である。
図6(A)は、通常運行時よりも低い加速度で乗りかご31の速度を変化させる運転パターンを示している。低い加速度で速度を変化させることで、特定の速度で現れる用品の振動や動作周期等に起因するノイズを検出しやすくなる。
図6(B)は、一定の速度を維持して乗りかご31を移動させる運転パターンを示している。
図6(C)は、通常運行時よりも高い加速度で乗りかご31の速度を高めたのち、低い加速度で乗りかご31の昇降速度を低下させる運転パターンを示している。
図6(D)は、
図6(A)の加速制御をステップ的に行う運転パターンを示している。異常検出時の運転パターンは、乗りかご31の昇降制御だけでなく、扉32の開閉制御についても設定されている。
【0030】
図5に戻り、データ取得部75は、インバータ13が昇降モータ40および開閉モータ41に供給する電圧もしくは電流の波形を計測する計測装置15から、電圧もしくは電流の波形を示す時系列データを取得する。計測装置15が計測した時系列データはいったん記憶部に記憶され、データ取得部75は、記憶部から時系列データを取得してもよい。
図7は、取得した電圧波形を示す時系列データの一部を示す例である。時系列データには、モータ制御に伴う電圧変化に対応する周波数成分に加え、用品の振動や動作周期等に起因する様々の周波数成分のノイズが含まれている。1回の運転パターンで取得される時系列データの時間長は、例えば、10秒とか1分とか10分である。
【0031】
ところで、エレベータ装置10を構成する用品は、それぞれの動作周期を有している。この動作周期は、運転パターンにも関係する。例えば、乗りかご31とカウンタウエイト50とを接続するケーブルに関係するシーブの回転周期は、乗りかご31の昇降速度によって決まる。また、ガイドレール21から24の振動等の周期は、乗りかご31の昇降速度および昇降加速度と移動距離によって決まる。また、扉32の開閉に使用されるシーブの回転周期は、扉32の開閉速度によって決まる。
図8は、エレベータ装置10を構成する用品それぞれの固有の動作周期の例を示すものである。
図8に示す情報は、運転パターンの動作速度ごとに記憶されている。
【0032】
図5に戻り、抽出部76は、データ取得部75が取得した時系列データから時間長を指定して時系列データの一部を抽出する。
図9は、時系列データについて説明するための図である。時間長は、
図8に示す用品固有の動作周期に基づいて設定される。例えば、シーブの異常を検出するための時間長Wmは、1/fmの数倍(例えば、2倍とか4倍)の時間長(例えば、0.1秒程度)であり、ガイドレールの異常を検出するための時間長Wnは、1/fnの数倍の時間長(例えば、100秒程度)である。扉32に関係する用品について検査する場合には、時間長を例えば、2秒程度としてもよい。
【0033】
図5に戻り、フーリエ変換部77は、抽出部76が抽出した時系列データをフーリエ変換することでスペクトル分布を生成する。
図10は、フーリエ変換部77が生成したスペクトル分布の例である。
図8に示す用品それぞれの動作周期に対応する周波数のスペクトル値が大きな値となっている。
【0034】
減算処理部78は、異常が無いことが判断されている用品の異常がない場合の用品の動作に起因するスペクトル分布の値を、フーリエ変換部77が生成したスペクトル分布の値から減算する処理を行う。例えば、
図8に示すローラガイドに異常が無いことが判断されている場合、ローラガイドの異常がない場合の動作に起因するスペクトル分布の値を、
図10に示すスペクトル分布の値から減算する。
図6に示す運転パターンで取得した時系列データについて、抽出部76が指定する時間長に対応する各用品の異常がない場合のスペクトル分布のデータは、予め記憶部に記憶されている。この減算処理により、
図11に示す点線で示されるスペクトルが削除される、もしくは、点線で示されるスペクトルの値が小さくなる。
【0035】
異常検出部79は、教師ありデータを用いたAIにより、生成された減算処理部78が出力したスペクトル分布に基づいてエレベータ装置10を構成する用品の異常を検出する。異常検出部79は、学習機能を有するAIで構成される。AIは、例えば、ニューラルネットワークやサポートベクタマシンを利用して構成されている。異常検出部79を構成するAIは、減算処理部78が出力したスペクトル分布の特徴量と教師ありデータの特徴量とを比較することで、エレベータ装置10を構成する用品に異常があるか否かを検出する。
【0036】
ここで教師ありデータについて説明する。教師ありデータは、異常がある場合のスペクトル分布のデータには「異常あり」というラベルを付し、異常がない場合のスペクトル分布のデータには「異常なし」というラベルを付したデータである。例えば、シーブが変形している場合のスペクトル分布には「シーブに変形あり」とのラベルを付し、シーブに傷がある場合のスペクトル分布には「シーブに傷あり」とのラベルを付してもよい。また、ガイドレールの場合も、ガイドレールのゆがみや取り付けねじのゆるみに対応するスペクトル分布のデータに異常の原因を示すラベルを付してもよい。この教師ありデータは、抽出部76が設定する時間長、および、
図6に示す運転パターンごとに多数のデータが作成され、記憶部に記憶されている。この教師ありデータは、全ての用品に異常がない場合についても、抽出部76が設定する時間長、および、
図6に示す運転パターンごとに多数のデータが作成され、記憶部に記憶されている。即ち、この教師ありデータは、半教師ありデータとして用いることができる。
【0037】
次に、
図12に示されるフローチャートを参照しながら、エレベータ装置10の異常検出処理に使用するデータの計測処理について説明する。下記の制御は、補助記憶部83に記憶されたプログラムに基づいて行われ、制御の主体は制御ユニット80(CPU81)である。計測装置15は、インバータ13の出力電流および出力電圧を計測し、制御ユニット80に計測値を通知している。ここでは、
図6に示す4種類の運転パターンで乗りかご31を昇降動作させてデータを計測する場合について説明する。
【0038】
運転パターン設定部73は、最初に、
図6(A)に示す運転パターンを駆動ユニット制御部71に設定する(ステップS11)。
【0039】
計測装置15は、該当する運転パターンにより乗りかご31が移動制御もしくは扉32が開閉制御されている際の電圧および電流の時系列データを計測し(ステップS12)、記憶部に記憶する。
【0040】
運転パターン設定部73は、全ての運転パターンを実施したか否かを判断する(ステップS13)。全ての運転パターンを実施していない場合(ステップS13:No)、運転パターン設定部73は、ステップS11に戻り、実施していない運転パターンを設定する。例えば、2回目のステップS13では、運転パターン設定部73は、
図6(B)に示す運転パターンを駆動ユニット制御部71に設定する。また、3回目のステップS13では、運転パターン設定部73は、
図6(C)に示す運転パターンを駆動ユニット制御部71に設定する。一方、全ての運転パターンを実施している場合(ステップS13:Yes)、異常検出装置72は、データ計測処理を終了する。
【0041】
次に、
図13に示されるフローチャートを参照しながら、エレベータ装置10の異常検出処理(エレベータ異常検出方法)について説明する。上述したデータ取得処理は終了しており、計測した時系列データは、記憶部に記憶されているものとする。運転パターンおよび抽出部76が設定する時間長に応じた教師ありデータは、予め記憶部に記憶されている。
【0042】
最初に、データ取得部75は、運転パターンごとに時系列データを記憶部から抽出する(ステップS31)。たとえば、データ取得部75は、最初に、
図6(A)に示す運転パターンで計測した時系列データを記憶部から抽出する。
【0043】
次に、抽出部76は、データ取得部75が取得した時系列データから時間長を指定して時系列データの一部を抽出する(ステップS32)。時間長は、検査対象とする用品の動作周期等により検査対象とする用品ごとに予め設定されている。抽出部76は、最初に最も短い時間長を設定する。例えば、
図8に示すローラガイドを検査対象とする場合、抽出部76は、
図9に示す時間長Wiを1/fiの数倍(例えば、2倍とか4倍)の時間長に設定する。そして、抽出部76は、時間長Wiの時系列データをフーリエ変換部77に供給する。
【0044】
次に、フーリエ変換部77は、時間長Wiの時系列データをフーリエ変換したスペクトル分布を生成する(ステップS33)。時間長Wiに制限した時系列データをフーリエ変換したスペクトル分布には、
図8に示すシーブやガイドレールのように動作周期がfiより長い周期の用品に起因するノイズは含まれない、もしくは、変換されたスペクトル分布における動作周期がfiより長い周期の用品に起因するスペクトルのパワーの割合が低い。
【0045】
次に、減算処理部78は、異常が無いことが判断されている用品の異常がない場合の用品の動作に起因するスペクトル分布の値を、フーリエ変換部77が生成したスペクトル分布の値から減算する処理を行う(ステップS34)。最初のステップS34の処理では、異常が無いことが判断されている用品がないので、ステップS34の処理はスルーされる。
【0046】
次に、異常検出部79は、減算処理部78が出力したスペクトル分布の特徴量と教師ありデータの特徴量とを比較することで、エレベータ装置10を構成する用品に異常があるか否かを検出する(ステップS35)。時間長Wiに制限した時系列データをフーリエ変換したスペクトル分布には、
図8に示すシーブやガイドレールのように動作周期がfiより長い周期の用品に起因するノイズは含まれない、もしくは、変換されたスペクトル分布における動作周期がfiより長い周期の用品に起因するスペクトルのパワーの割合が低い。したがって、時間長Wiに制限した時系列データをフーリエ変換したスペクトル分布は、動作周期がfiより短い周期の用品に起因するノイズの特徴量が占める割合が高くなる。着目する用品の特徴量が顕著になることで、異常検出部79は、着目する用品(動作周期がfiより短い周期の用品)に異常があるか否かの検出を正確に行うことができる。
【0047】
異常検出装置72は、全ての用品について解析したか否かを判断する(ステップS36)。具体的には、検査対象とする
図8に示す用品に対応する
図9に示す時間長の全ての設定を実行したか否かを判断する。全ての用品についての解析が終了していない場合(ステップS36:No)、異常検出装置72は、ステップS32に戻り、時間長を変えてステップS32からステップS36の処理を繰り返す。
【0048】
2回目のステップS34の減算処理では、例えば、1回目のステップS35の処理でローラガイドについて異常がないことが判断されている場合、ローラガイドの異常がない場合のローラガイドの動作に起因するスペクトル分布の値を、2回目のステップS33においてフーリエ変換部77が生成したスペクトル分布の値から減算する。
図11で説明すると、点線で示すスペクトル成分が除去されるので、周波数fiより低い周波数帯域のスペクトル成分が強調されることになる。
【0049】
また、3回目のステップS34の減算処理では、例えば、1回目のステップS35の処理でローラガイドについて異常がないことが判断され、2回目のステップS35の処理でモータとシーブについて異常がないことが判断されている場合、ローラガイドとモータとシーブの異常がない場合のローラガイドの動作に起因するスペクトル分布の値を、3回目のステップS33においてフーリエ変換部77が生成したスペクトル分布の値から減算する。
図11で説明すると、点線で示すスペクトル成分と一点鎖線で示されるスペクトル成分が除去されるので、周波数fmより低い周波数帯域のスペクトル成分が強調されることになる。
【0050】
異常が無いことが判断されている用品の異常がない場合の用品の動作に起因するスペクトル分布の値を、フーリエ変換部77が生成したスペクトル分布の値から減算することで、スペクトル分布における異常の有無が判断されていない用品に起因するノイズのスペクトル成分が占める割合が高くなる。異常の有無が判断されていない用品の特徴量が顕著になることで、異常検出部79は、異常の有無が判断されていない用品について異常があるか否かの検出を正確に行うことができる。
【0051】
次に、異常検出装置72は、全ての運転パターンについて解析が終了したか否かを判断する(ステップS37)。全ての運転パターンについて解析が終了していない場合(ステップS37:No)、異常検出装置72は、ステップS31に戻り、ステップS31からステップS37の処理を繰り返す。2回目のステップS31の処理では、例えば、
図6(B)に示す運転パターンで計測した時系列データを記憶部から抽出する。ステップS32からステップS37の処理は、1回目と同じである。3回目のステップS31の処理では、例えば、
図6(C)に示す運転パターンで計測した時系列データを記憶部から抽出する。ステップS32からステップS37の処理は、1回目と同じである。
【0052】
一方、全ての運転パターンについて解析が終了している場合(ステップS37:Yes)、異常検出装置72は、異常検出処理を終了する。
【0053】
次に、
図14に示されるフローチャートを参照しながら、教師ありデータの追加処理について説明する。上述した異常検出処理は終了していることとする(ステップS51)。
【0054】
異常検出処理において異常があると判断された用品がある場合(ステップS52:Yes)、異常検出装置72は、異常があると判断した用品を入出力装置93に表示する(ステップS53)。異常検出装置72は、たとえば、「シーブに異常があります」とか「ガイドレールに異常があります」などの警告を入出力装置93に出力する。
【0055】
用品に異常があると表示されると、検査員は、異常検出装置72による判断が正しかったか否かの検査を行う(ステップS54)。検査員は、検査結果に基づいて、教師ありデータを追加する作業を行う(ステップS55)。具体的には、異常検出装置72による判断が正しかった場合、検査員は、「異常あり」と判断した根拠となるスペクトル分布を示すデータに「異常あり」のラベルを付けて記憶部に記憶する操作を入出力装置93で行う。一方、異常検出装置72による判断が誤っていた場合、検査員は、「異常あり」と判断した根拠となるスペクトル分布を示すデータに「異常なし」のラベルを付けて記憶部に記憶する操作を入出力装置93で行う。
【0056】
異常検出処理において異常があると判断された用品がない場合(ステップS52:No)、教師ありデータを追加する作業は行われない。
【0057】
以上に説明したように、実施形態1に係るエレベータ異常検出装置72は、データ取得部75が取得した時系列データから指定された時間長の時系列データを抽出する抽出部76と、抽出部76が抽出した時系列データをフーリエ変換することでスペクトル分布を生成するフーリエ変換部77と、教師ありデータを用いたAIにより、生成されたスペクトル分布に基づいてエレベータ装置10を構成する用品の異常を検出する異常検出部79と、を有する。抽出部76による抽出処理を行うことで、任意の時間長Wxに制限した時系列データをフーリエ変換したスペクトル分布は、動作周期がfx(Wxは1/fxの数倍)より短い周期の用品に起因するノイズの特徴量が占める割合が高くなる。着目する用品の特徴量が顕著になることで、異常検出部79は、着目する用品(動作周期がfxより短い周期の用品)に異常があるか否かの検出を正確に行うことができる。したがって、エレベータ装置10の異常検出の精度を向上することができる。
【0058】
また、実施形態1に係るエレベータ異常検出装置72は、異常が無いことが判断されている用品の異常がない場合の用品の動作に起因するスペクトル分布の値を、フーリエ変換部77が生成したスペクトル分布の値から減算する減算処理部78を有する。異常が無いことが判断されている用品の異常がない場合の用品の動作に起因するスペクトル分布の値を、フーリエ変換部77が生成したスペクトル分布の値から減算することで、スペクトル分布における異常の有無が判断されていない用品に起因するノイズのスペクトル成分が占める割合が高くなる。異常の有無が判断されていない用品の特徴量が顕著になることで、異常検出部79は、異常の有無が判断されていない用品について異常があるか否かの検出を正確に行うことができる。したがって、エレベータ装置10の異常検出の精度を向上することができる。
【0059】
また、実施形態1に係るエレベータ異常検出装置72は、
図14に示すフローチャートを用いて説明したように、教師ありデータの追加処理を行う。実施形態1に係るエレベータ異常検出装置72は、教師ありデータが増えることでAIによる判断精度が向上するので、エレベータ装置10の異常検出の精度を向上することができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態によって限定されるものではない。例えば、上記の説明では、データ計測処理と異常検出断処理を別々に行う場合について説明したが、データ計測処理を行いながら計測した時系列データについて随時異常検出処理を行ってもよい。
【0061】
また、上述したように、教師ありデータは、運転パターンと時間長の組み合わせに対応して予め記憶部に記憶されている。上記の説明では詳しく説明しなかったが、ステップS35の異常検出処理において、運転パターンと時間長の組み合わせに対応した教師ありデータを選択して、AIの判断に適用してもよい。
【0062】
また、異常検出時の運転パターンには、
図6に示した例だけでなく、通常運行時の運転パターンを含めてもよい。
【0063】
また、上記の説明では、教師ありデータの追加処理を行う場合について説明した。しかし、予め十分な量の教師ありデータが記憶されており、目的とする異常検出精度を満たしている場合、教師ありデータの追加処理を省略してもよい。
【0064】
また、上記の説明では、ステップS31でデータ取得部75が運転パターンごとの時系列データを記憶部から抽出し、ステップS32で抽出部76がデータ取得部75により取得した時系列データから時間長を指定して時系列データの一部を抽出する場合について説明した。他の実施例としては、ステップS31とステップS32の処理をまとめてもよい。具体的には、データ取得部75が抽出部76から時間長の指定を受け、データ取得部75が指定された時間長の時系列データを記憶部から取得するようにしてもよい。
【0065】
(実施形態2)
実施形態1の説明では、減算処理部78が
図13を用いて説明したステップS34の減算処理を行う場合について説明した。他の実施形態として、減算処理部78を省略し、
図13を用いて説明したステップS34の減算処理を省略する実施形態も考えられる。異常検出の精度は、実施形態1で説明した実施形態における検出精度よりも低下すると思われる。しかし、抽出部76により時系列データの時間長を調整することで十分な検出精度を確保できると判断できる場合には、減算処理を省略することもできる。
【0066】
(実施形態3)
実施形態1の
図13を用いた説明では、ステップS34の減算処理において、減算処理部78が、異常が無いことが判断されている用品の異常がない場合の用品の動作に起因するスペクトル分布の値を、フーリエ変換部77が生成したスペクトル分布の値から減算する処理を行う場合について説明した。他の実施形態として、減算処理部78が、全ての用品について異常が無いと判断されているときに計測した時系列データをフーリエ変換したスペクトル分布の値を、フーリエ変換部77が生成したスペクトル分布の値から減算する処理を行う実施形態も考えられる。すべての用品が正常であるときのスペクトル成分の値を減算処理することで、用品の異常に起因するスペクトル成分の特徴量が強調される。用品の異常に起因するスペクトル成分の特徴量が顕著になることで、異常検出部79は、エレベータ装置10の異常検出の精度を向上することができる。
【0067】
(実施形態4)
実施形態1から3の説明では、乗りかご31に関係する用品の異常検出をする場合について説明した。しかし、乗りかご31の扉32の開閉モータと扉32の開閉にかかわる用品についても異常の有無を検出することができる。例えば、扉32の開閉にかかわるシーブについての異常の有無を検出することができる。この場合、
図6に示す運転パターンは、扉32の下位へ動作に応じた運転パターンが用意される。
【0068】
(実施形態5)
実施形態に係るエレベータ異常検出装置は、乗りかご31の扉32の開閉用のレールであるシルにごみ等が挟まっているか否かの検査をすることができる。教師ありデータとして、シルにごみ等が挟まっているときのスペクトルと、シルにごみ等が挟まっていないときのスペクトルを準備する。ガムや石等の複数の材質、複数の大きさ、シルにおけるごみが挟まっている位置、など異なる条件に基づいて生成した多数の教師ありデータを準備する。教師ありデータのラベルとして、ごみの材質、大きさ、位置等の情報を紐付けておく。
【0069】
上記の教師ありデータを準備したうえで、
図13に示すフローチャートに基づいて異常検出処理を行うことで、シルのどの位置にどのようなごみが挟まっているのかを推定することができる。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施しうるものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
10 エレベータ装置
13 インバータ
15 計測装置
151 電流計測装置
152 電圧計測装置
21~24 ガイドレール
31 乗りかご
31a 開口部
32 扉
36 操作パネル
40 昇降モータ
41 開閉モータ
42 プーリー
43 ワイヤ
44 ケーブル
50 カウンタウエイト
70 制御盤
71 駆動ユニット制御部
72 異常検出装置
73 運転パターン設定部
75 データ取得部
76 抽出部
77 フーリエ変換部
78 減算処理部
79 異常検出部
80 制御ユニット
81 CPU
82 主記憶部
83 補助記憶部
84 インタフェース部
85 バス
91 駆動ユニット
93 入出力装置
100 昇降路
【手続補正書】
【提出日】2024-11-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごの昇降を駆動するモータと前記モータに電力を供給する電源と前記モータを制御する制御装置とを有するエレベータ装置の異常を検出するエレベータ異常検出装置において、
前記電源が前記モータに供給する電圧もしくは電流の波形を計測する計測装置から、電圧もしくは電流の波形を示す時系列データを取得するデータ取得部と、
前記データ取得部が取得した前記時系列データから指定された時間長の時系列データを抽出する抽出部と、
前記抽出部が抽出した前記時系列データをフーリエ変換することでスペクトル分布を生成するフーリエ変換部と、
少なくとも一部のデータについて教師ありデータを用いたAIにより、生成された前記スペクトル分布に基づいて前記エレベータ装置を構成する用品の異常を検出する異常検出部と、
異常が無いことが判断されている用品の異常がない場合の前記用品の動作に起因するスペクトル分布の値を、前記フーリエ変換部が生成した前記スペクトル分布の値から減算する減算処理部を有し、
前記異常検出部は、減算処理後のスペクトル分布に基づいて前記エレベータ装置を構成する用品の異常を検出するエレベータ異常検出装置。
【請求項2】
前記時間長は、前記エレベータ装置を構成する用品それぞれの動作周期に基づいて設定される、
請求項1に記載のエレベータ異常検出装置。
【請求項3】
前記抽出部は、動作周期が短い用品に対応する時間長から動作周期が長い用品に対応する時間長に順次時間長を変えて時間長を設定し、
前記異常検出部は、設定された前記時間長の時系列データに基づいて動作周期が短い用品から順に異常の有無を検出する、
請求項1または2に記載のエレベータ異常検出装置。
【請求項4】
異常がない場合のスペクトル分布の値を、前記フーリエ変換部が生成した前記スペクトル分布の値から減算する減算処理部を有し、
前記異常検出部は、減算処理後のスペクトル分布に基づいて前記エレベータ装置を構成する用品の異常を検出する、
請求項1または2に記載のエレベータ異常検出装置。
【請求項5】
乗りかごの昇降を駆動するモータと前記モータに電力を供給する電源と前記モータを制御する制御装置とを有するエレベータ装置の異常を検出するエレベータ異常検出方法において、
前記電源の電圧もしくは電流の波形を計測する計測装置から、電圧もしくは電流の波形を示す時系列データを取得するデータ取得工程と、
前記時系列データから指定された時間長の時系列データを抽出する抽出工程と、
抽出した前記時系列データをフーリエ変換することでスペクトル分布を生成するフーリエ変換工程と、
少なくとも一部のデータについて教師ありデータを用いたAIにより、生成された前記スペクトル分布に基づいて前記エレベータ装置を構成する用品の異常を検出する異常検出工程と、
異常が無いことが判断されている用品の異常がない場合の前記用品の動作に起因するスペクトル分布の値を、前記フーリエ変換工程で生成した前記スペクトル分布の値から減算する減算処理工程と、
を含み、
前記異常検出工程では、減算処理後のスペクトル分布に基づいて前記エレベータ装置を構成する用品の異常を検出するエレベータ異常検出方法。
【請求項6】
前記抽出工程では、動作周期が短い用品に対応する時間長から動作周期が長い用品に対応する時間長に順次時間長を変えて時間長を設定し、
前記異常検出工程では、設定された前記時間長の時系列データに基づいて動作周期が短い用品から順に異常の有無を検出する、
請求項5に記載のエレベータ異常検出方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記課題を解決するための実施形態に係るエレベータ異常検出装置は、乗りかごの昇降を駆動するモータとモータに電力を供給する電源とモータを制御する制御装置とを有するエレベータ装置の異常を検出するエレベータ異常検出装置である。実施形態に係るエレベータ異常検出装置は、データ取得部とフーリエ変換部と異常検出部と減算処理部を有する。データ取得部は、電源がモータに供給する電圧もしくは電流の波形を計測する計測装置から、電圧もしくは電流の波形を示す時系列データを取得する。抽出部は、データ取得部が取得した時系列データから指定された時間長の時系列データを抽出する。フーリエ変換部は、抽出部が抽出した時系列データをフーリエ変換することでスペクトル分布を生成する。異常検出部は、教師ありデータを用いたAIにより、生成されたスペクトル分布に基づいてエレベータ装置を構成する用品の異常を検出する。減算処理部は、異常が無いことが判断されている用品の異常がない場合の用品の動作に起因するスペクトル分布の値を、フーリエ変換部が生成した前記スペクトル分布の値から減算する。異常検出部は、減算処理後のスペクトル分布に基づいてエレベータ装置を構成する用品の異常を検出する。