(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018082
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】ロータリジョイント
(51)【国際特許分類】
F16J 15/34 20060101AFI20250130BHJP
F16L 27/08 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
F16J15/34 L
F16J15/34 Z
F16L27/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121492
(22)【出願日】2023-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】株式会社PILLAR
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福本 崇人
(72)【発明者】
【氏名】辻 泰弘
【テーマコード(参考)】
3H104
3J041
【Fターム(参考)】
3H104JA04
3H104JB02
3H104LE02
3H104LF10
3H104LF13
3J041AA01
3J041BA02
3J041BD01
3J041DA12
3J041DA16
(57)【要約】
【課題】メカニカルシールの摺動部分から漏洩する蒸気が転がり軸受に侵入するのを抑制できるロータリジョイントを提供する。
【解決手段】本開示のロータリジョイントは、ブロック部及び円筒部を有するジョイント本体と、回転軸と、転がり軸受と、前記円筒部との間で環状空間を形成するメカニカルシールと、を備え、前記メカニカルシールは、前記ブロック部に設けられた静止密封環と、前記回転軸側に設けられ、前記静止密封環に対して摺動することで前記静止密封環内の流体が前記環状空間に漏洩するのを抑制する回転密封環と、を有し、前記円筒部の周壁には、前記環状空間と連通する給気孔及び排気孔が、互いに軸方向にずれて形成されており、前記回転密封環の外周側に一体回転可能に設けられ、前記環状空間において前記給気孔から前記排気孔へ向かう気流を発生させる羽根部材を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に第1流路が形成されたブロック部、及び前記ブロック部から軸方向一方側に延びる円筒部を有するジョイント本体と、
前記円筒部内に挿入され、内部に第2流路が形成された回転軸と、
前記円筒部内に設けられ、前記回転軸を回転可能に支持する転がり軸受と、
前記ジョイント本体内において前記転がり軸受よりも軸方向他方側に配置され、前記円筒部との間で環状空間を形成するメカニカルシールと、を備え、
前記メカニカルシールは、
前記ブロック部に設けられた静止密封環と、
前記回転軸側に設けられ、前記静止密封環に対して摺動することで前記静止密封環内の流体が前記環状空間に漏洩するのを抑制する回転密封環と、を有し、
前記円筒部の周壁には、前記環状空間と連通する給気孔及び排気孔が、互いに軸方向にずれて形成されており、
前記回転密封環の外周側に一体回転可能に設けられ、前記環状空間において前記給気孔から前記排気孔へ向かう気流を発生させる羽根部材を備えるロータリジョイント。
【請求項2】
前記排気孔は、前記給気孔よりも前記軸方向他方側に形成されている、請求項1に記載のロータリジョイント。
【請求項3】
前記排気孔は、前記給気孔よりも、前記静止密封環と前記回転密封環との摺動部分に近い位置に形成されている、請求項2に記載のロータリジョイント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロータリジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
一の機器の固定側部材と、他の機器の回転側部材との間に設けられ、前記固定側部材から前記回転側部材へ移送流体を供給する接続部分に用いられる継手として、例えば特許文献1に開示されたロータリジョイントが知られている。 このロータリジョイントは、
図8に示すように、ジョイント本体90と、ジョイント本体90内に挿入された回転軸91と、ジョイント本体90と回転軸91との間に設けられるメカニカルシール92と、を備える(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ジョイント本体90は、内部に第1流路93が形成されたブロック部90aと、ブロック部90aから軸方向に延びる円筒部90bとを有する。ブロック部90aの第1流路93には、固定側部材(図示省略)が接続される。回転軸91は、円筒体からなり、内部に第2流路94が形成されている。回転軸91の端部91aには、回転側部材(図示省略)が接続される。回転軸91は、転がり軸受95に支持され、ジョイント本体90に対して回転可能である。
【0004】
メカニカルシール92は、ジョイント本体90(ブロック部90a)と回転軸91との間に設けられる静止密封環96と回転密封環97とを有している。静止密封環96は、ブロック部90aとの間でシールされた状態で、ブロック部90aに取り付けられている。回転密封環97は、回転軸91との間でシールされた状態で、回転軸91に一体回転可能として取り付けられている。静止密封環96は、ばね部材99により回転密封環97に押圧されており、静止密封環96のシール面96aに対して回転密封環97のシール面97aが密着しながら摺動する。これにより、メカニカルシール92は、第1流路93から第2流路94へ流れる移送流体98が外部へ漏洩するのを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記ロータリジョイントでは、メカニカルシール92のシール面96a,97a間において、これらの摺動熱により移送流体98が蒸気となって、メカニカルシール92と円筒部90bとの間の環状空間100に漏洩する場合がある。環状空間100に漏洩した蒸気は、円筒部90bに形成されたドレン孔101から外部へ排出されにくく、環状空間100に長く滞留する。このため、例えば移送流体98が有機溶剤である場合、環状空間100に滞留した有機溶剤の蒸気が、転がり軸受95の内部に侵入してグリース等の潤滑剤を溶かし、焼き付きが発生するおそれがある。
【0007】
本開示は、メカニカルシールの摺動部分から漏洩する蒸気が転がり軸受に侵入するのを抑制できるロータリジョイントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のロータリジョイントは、内部に第1流路が形成されたブロック部、及び前記ブロック部から軸方向一方側に延びる円筒部を有するジョイント本体と、前記円筒部内に挿入され、内部に第2流路が形成された回転軸と、前記円筒部内に設けられ、前記回転軸を回転可能に支持する転がり軸受と、前記ジョイント本体内において前記転がり軸受よりも軸方向他方側に配置され、前記円筒部との間で環状空間を形成するメカニカルシールと、を備え、前記メカニカルシールは、前記ブロック部に設けられた静止密封環と、前記回転軸側に設けられ、前記静止密封環に対して摺動することで前記静止密封環内の流体が前記環状空間に漏洩するのを抑制する回転密封環と、を有し、前記円筒部の周壁には、前記環状空間と連通する給気孔及び排気孔が、互いに軸方向にずれて形成されており、前記回転密封環の外周側に一体回転可能に設けられ、前記環状空間において前記給気孔から前記排気孔へ向かう気流を発生させる羽根部材を備える。
【0009】
本開示によれば、回転密封環と共に羽根部材が回転すると、円筒部とメカニカルシールとの間の環状空間において、円筒部の給気孔から排気孔へ向かう気流が発生する。このため、静止密封環内の流体が、静止密封環と回転密封環との摺動部分から蒸気となって環状空間に漏洩すると、その蒸気は、前記気流により排気孔から外部へ排出され易くなる。これにより、転がり軸受の内部に蒸気が侵入するのを抑制することができる。その結果、前記蒸気によって転がり軸受内の潤滑剤が溶けるのを抑制できるので、転がり軸受に焼き付きが発生するのを抑えることができる。
【0010】
(2)前記(1)のロータリジョイントにおいて、前記排気孔は、前記給気孔よりも前記軸方向他方側に形成されているのが好ましい。
この場合、環状空間における給気孔から排気孔への気流の方向は、転がり軸受から遠ざかる方向になるので、転がり軸受の内部に蒸気が侵入するのをさらに抑制することができる。
【0011】
(3)前記(2)のロータリジョイントにおいて、前記排気孔は、前記給気孔よりも、前記静止密封環と前記回転密封環との摺動部分に近い位置に形成されているのが好ましい。
この場合、摺動部分から環状空間に漏洩した蒸気は、早期に排気孔から排出され易くなるので、転がり軸受の内部に蒸気が侵入するのをさらに抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、メカニカルシールの摺動部分から漏洩する蒸気が転がり軸受に侵入するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るロータリジョイントを示す断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の羽根部材を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の羽根部材を軸方向上側から見た平面図である。
【
図5】
図5は、羽根部材の変形例を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係るロータリジョイントの要部を拡大した断面図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態の羽根部材を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、従来のロータリジョイントを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
<全体構成>
次に、本開示の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態に係るロータリジョイント1を示す断面図である。ロータリジョイント1は、一の機器の固定側部材2と、他の機器の回転側部材3との間において、固定側部材2から回転側部材3へ移送流体4を供給する接続部分に用いられる。回転側部材3は、固定側部材2に対して回転する。本実施形態のロータリジョイント1は、例えば1ポートの継手である。移送流体4は、例えばスラリー液であるが、塗料等でもよい。
【0015】
ロータリジョイント1は、ジョイント本体10と、回転軸20と、転がり軸受30と、メカニカルシール40と、を備える。ジョイント本体10は、固定側部材2に接続される。回転軸20は、回転側部材3に接続される。転がり軸受30は、回転軸20を、その軸線C回りに回転可能に支持する。メカニカルシール40は、ジョイント本体10の第1流路13と回転軸20の第2流路23とを接続し、第1流路13から第2流路23へ流れる移送流体4が外部に漏洩するのを抑制する。本実施形態のロータリジョイント1は、軸線Cを上下方向に向けて配置されている。以下、
図1の上側を軸方向上側といい、
図1の下側を軸方向下側という。
【0016】
ジョイント本体10は、ブロック部11と、円筒部12と、を有する。ブロック部11は、例えば円柱状のブロック体である。ブロック部11の中央部には、移送流体4が流れる第1流路13が軸方向に貫通して形成されている。第1流路13の軸方向上端部には、固定側部材2が接続される。ブロック部11の第1流路13よりも径方向外側には、環状溝14が形成されている。環状溝14は、ブロック部11の軸方向下側の端面において開口している。
【0017】
ブロック部11の軸方向下端部の外周には、環状の段差部11aが形成されている。ブロック部11の段差部11aには、円筒部12の軸方向上端部が嵌め込まれている。円筒部12は、ブロック部11から軸方向下側(軸方向一方側)に延びる円筒状の部材である。円筒部12の内径は、回転軸20の外径よりも大きい。円筒部12は、ボルト18によってブロック部11に固定されている。
【0018】
回転軸20の軸方向の一部21は、円筒部12内に挿入されている。回転軸20の軸線Cは、円筒部12の軸線と一致している。回転軸20の軸方向の他部22は、円筒部12より軸方向下側に突出している。回転軸20の内部には、移送流体4が流れる第2流路23が軸方向に貫通して形成されている。第2流路23の軸方向下端部には、回転側部材3が接続される。
【0019】
転がり軸受30は、円筒部12内に設けられている。転がり軸受30は、例えば、複列(二列)のアンギュラ玉軸受である。転がり軸受30は、外輪31と、内輪32と、複数の玉(転動体)33と、を有する。外輪31は、円筒部12の内周に嵌合して固定されている。内輪32は、回転軸20の一部21の外周に嵌合して固定されている。複数の玉33は、外輪31と内輪32との間において軸方向に二列に配置されている。転がり軸受30の内部(外輪31と内輪32との間)には、潤滑剤としてグリースが封入されている。これにより、転がり軸受30は、円筒部12に対して回転軸20を軸線C回りに回転可能に支持している。
【0020】
<メカニカルシール>
メカニカルシール40は、ジョイント本体10内において、転がり軸受30よりも軸方向上側(軸方向他方側)に配置されている。メカニカルシール40と円筒部12との間には、環状空間5が形成されている。本実施形態のメカニカルシール40は、第1静止密封環41、第2静止密封環(静止密封環)42、リテーナ43、及び回転密封環44を有する。第1静止密封環41及び第2静止密封環42は、ジョイント本体10に設けられている。リテーナ43及び回転密封環44は、回転軸20に設けられている。
【0021】
第1静止密封環41の軸方向上側は、ブロック部11の環状溝14の内側面14aに嵌合されている。第1静止密封環41は、ばね部材(図示省略)によりブロック部11に対して軸方向下側に押圧されている。第1静止密封環41の軸方向下側の端面は、シール面41aである。第1静止密封環41の軸方向下側の内部には、移送流体4が流れる第1接続流路41bが形成されている。第1接続流路41bは、第1流路13と連通している。第1静止密封環41の内周面と環状溝14の内側面14aとの間は、Oリング45によりシール(二次シール)されている。
【0022】
第2静止密封環42は、第1静止密封環41よりも径方向外側に配置されている。第2静止密封環42は、ブロック部11の環状溝14の外側面14bに嵌合されている。第2静止密封環42は、ばね部材(図示省略)によりブロック部11に対して軸方向下側に押圧されている。第2静止密封環42の軸方向下側の端面は、シール面42aである。第1静止密封環41と第2静止密封環42との間には、後述する封液6が流れる環状流路42bが形成されている。環状流路42bは、環状溝14と連通している。第2静止密封環42の外周面と環状溝14の外側面14bとの間は、Oリング46によりシール(二次シール)されている。
【0023】
リテーナ43は、環状の部材である(
図3参照)。リテーナ43は、回転軸20の一部21における軸方向上側の外周面に嵌合して固定されている。リテーナ43の軸方向上側の端面には、軸方向下側に窪む嵌合溝43aが形成されている。嵌合溝43aの底面は、回転軸20の軸方向上側の端面と面一である。リテーナ43の内周面と回転軸20の一部21の外側面との間は、Oリング47によりシール(二次シール)されている。
【0024】
回転密封環44は、例えば環状の板部材である。回転密封環44は、リテーナ43の嵌合溝43aに嵌合して固定されている。これにより、回転密封環44は、回転軸20側に設けられ、回転軸20と一体回転可能である。回転密封環44の軸方向上側の端面は、シール面44aである。回転密封環44のシール面44aには、第1静止密封環41及び第2静止密封環42の両シール面41a,42aがそれぞれ密着する。回転密封環44の内部には、移送流体4が流れる第2接続流路44bが形成されている。第2接続流路44bは、第2流路23と連通し、かつ第1接続流路41bと連通している。
【0025】
ジョイント本体10の第1流路13を流れる移送流体4は、第1静止密封環41の第1接続流路41b、及び回転密封環44の第2接続流路44bを順に通過し、回転軸20の第2流路23に流れる。回転密封環44が回転軸20と共に軸線C回りに回転すると、回転密封環44のシール面44aは、第1静止密封環41のシール面41aに密着した状態で摺動する。これにより、第1流路13から第2流路23へ流れる移送流体4が、メカニカルシール40の径方向内側の摺動部分(シール面41a,44a)から環状流路42bに漏洩するのを抑制することができる。以下、前記径方向内側の摺動部分は、第1摺動部分41a,44aともいう。
【0026】
<封液>
ジョイント本体10のブロック部11には、封液6が流入する流入孔15、及び封液6が流出する流出孔16が形成されている。封液6は、メカニカルシール40の第1摺動部分41a,44aを潤滑及び洗浄する流体である。封液6としては、例えば、水、又は有機溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、アルコール等)が用いられる。本実施形態の封液6は、移送流体4であるスラリー液に混入しても支障がないように、有機溶剤が用いられる。
【0027】
流入孔15及び流出孔16は、ブロック部11において、互いに周方向に離れた位置に形成されている。流入孔15及び流出孔16は、それぞれブロック部11の外周面から環状溝14まで径方向に延びており、環状溝14と連通している。封液6は、流入孔15から、環状溝14を通過し、第1静止密封環41と第2静止密封環42との間の環状流路42bに流入する。環状流路42bに流入した封液6は、第1摺動部分41a,44aを潤滑及び洗浄した後、再び環状溝14を通過し、流出孔16から外部に排出される。
【0028】
回転密封環44が回転軸20と共に軸線C回りに回転すると、回転密封環44のシール面44aは、第2静止密封環42のシール面42aに密着した状態で摺動する。これにより、第2静止密封環42内の環状流路42bを流れる封液6が、メカニカルシール40の径方向外側の摺動部分(シール面42a,44a)から環状空間5に漏洩するのを抑制することができる。以下、前記径方向外側の摺動部分は、第2摺動部分42a,44aともいう。
【0029】
ジョイント本体10の円筒部12には、ドレン孔17が形成されている。ドレン孔17は、円筒部12の周壁を径方向に貫通して形成され、環状空間5の軸方向下側と連通している。メカニカルシール40の第2摺動部分42a,44aから環状空間5に、液体のまま漏洩した封液6は、ドレン孔17から外部に排出される。
【0030】
<通気構造>
図2は、
図1の要部を拡大した断面図である。ジョイント本体10の円筒部12には、環状空間5を通気するための給気孔51及び排気孔52が形成されている。給気孔51及び排気孔52は、それぞれ円筒部12の周壁を径方向に貫通して形成され、環状空間5と連通している。
【0031】
給気孔51及び排気孔52は、互いに軸方向にずれて形成されている。具体的には、給気孔51は、円筒部12の周壁において、環状空間5の軸方向下側と連通する位置、かつドレン孔17から周方向に離れた位置に形成されている。排気孔52は、円筒部12の周壁において、給気孔51よりも軸方向上側の位置に形成され、環状空間5の軸方向上側と連通している。
【0032】
給気孔51は、メカニカルシール40の第2摺動部分42a,44aに対して、軸方向下側に位置する。排気孔52は、第2摺動部分42a,44aに対して、軸方向上側に位置する。排気孔52は、給気孔51よりも、第2摺動部分42a,44aに近い位置に形成されている。給気孔51及び排気孔52は、同一の孔径を有する。給気孔51及び排気孔52の各孔径は、ドレン孔17(
図1参照)の孔径よりも小さい。
【0033】
ロータリジョイント1は、環状空間5において給気孔51から排気孔52へ向かう気流を発生させる羽根部材60を備える。羽根部材60は、メカニカルシール40の回転密封環44の外周側に設けられている。本実施形態の羽根部材60は、回転密封環44の外周側に位置するリテーナ43の外周面に、一体回転可能に設けられている。
【0034】
図3は、本実施形態の羽根部材60を示す斜視図である。
図4は、その羽根部材60を軸方向上側から見た平面図である。
図3及び
図4に示すように、本実施形態の羽根部材60は、リテーナ43の外周面において、周方向に等間隔に配置された複数枚(図例では4枚)の羽根板61によって構成されている。各羽根板61は、周方向一端から周方向他端に向かうにしたがって、リテーナ43の軸方向下側から軸方向上側に向かうように傾斜している。
【0035】
図2において、リテーナ43が回転密封環44と共に軸線C回りに回転すると、環状空間5では、図中の矢印で示すように、羽根部材60によって軸方向下側の給気孔51から軸方向上側の排気孔52へ向かう気流が発生する。これにより、給気孔51から環状空間5へ外気が導入され、環状空間5に導入された外気は、排気孔52から外部へ排出される。その際、環状空間5に滞留する蒸気も、前記気流によって排気孔52から外部へ排出される。前記蒸気は、第2摺動部分42a,44aにおいて、その摺動熱によって封液6が蒸気となって環状空間5に漏洩したものである。
【0036】
<変形例>
図5は、羽根部材60の変形例を示す斜視図である。本変形例の羽根部材60は、リテーナ43の外周面に形成された雄ねじ62によって構成されている。雄ねじ62は、リテーナ43の外周面において、軸方向の全体にわたって螺旋状に形成されている。雄ねじ62としては、例えば、三角ねじ、角ねじ、又は台形ねじ等が用いられる。本変形例の雄ねじ62は、角ねじである。
【0037】
<作用効果>
本実施形態のロータリジョイント1によれば、回転密封環44と共に羽根部材60が回転すると、円筒部12とメカニカルシール40との間の環状空間5において、円筒部12の給気孔51から排気孔52へ向かう気流が発生する。このため、第2静止密封環42内の封液6が、第2摺動部分42a,44aから蒸気となって環状空間5に漏洩すると、その蒸気は、前記気流により排気孔52から外部へ排出され易くなる。これにより、転がり軸受30の内部に蒸気が侵入するのを抑制することができる。その結果、前記蒸気によって転がり軸受30内の潤滑剤が溶けるのを抑制できるので、転がり軸受30に焼き付きが発生するのを抑えることができる。
【0038】
排気孔52は、給気孔51よりも軸方向上側に形成されている。これにより、環状空間5における給気孔51から排気孔52への気流の方向は、転がり軸受30から遠ざかる方向になるので、転がり軸受30の内部に蒸気が侵入するのをさらに抑制することができる。
【0039】
排気孔52は、給気孔51よりも、第2摺動部分42a,44aに近い位置に形成されている。これにより、第2摺動部分42a,44aから環状空間5に漏洩した蒸気は、早期に排気孔52から排出され易くなるので、転がり軸受30の内部に蒸気が侵入するのをさらに抑制することができる。
【0040】
[第2実施形態]
図6は、第2実施形態に係るロータリジョイント1の要部を拡大した断面図である。
図7は、そのロータリジョイント1の羽根部材60を示す斜視図である。
図6及び
図7において、本実施形態のロータリジョイント1は、給気孔51及び排気孔52の形成位置、及び羽根部材60の構成が、第1実施形態と相違する。
【0041】
本実施形態では、円筒部12の周壁において、軸方向上側に給気孔51が形成され、軸方向下側に排気孔52が形成されている。本実施形態の給気孔51及び排気孔52は、それぞれ第1実施形態の排気孔52及び給気孔51と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0042】
リテーナ43の外周面の軸方向下側には、全周にわたって複数の凹部63が等間隔に形成されている。各凹部63は、例えばリテーナ43の径方向外側から見て略U字状に形成されている。各凹部63は、リテーナ43の外周面及び軸方向下側の端面において開口している。リテーナ43の外周面において、周方向に隣り合う凹部63同士の間には、凸部64が形成されている。つまり、リテーナ43の外周面の軸方向下側には、複数の凹部63が形成されることで、複数の凸部64が全周にわたって等間隔に形成されている。各凸部64は、軸方向に延びている。本実施形態の羽根部材60は、複数の凸部64によって構成されている。
【0043】
リテーナ43が回転密封環44と共に軸線C回りに回転すると、リテーナ43の各凹部63内で発生する遠心力が、環状空間5で発生する遠心力よりも大きくなる。このため、各凹部63の軸方向下側では、その径方向外方に位置する排気孔52へ向かう気流が発生する。これに伴って各凹部63内は負圧になるため、各凹部63の軸方向上側では、給気孔51から各凹部63へ向かう気流が発生する。
【0044】
以上より、環状空間5では、羽根部材60によって軸方向上側の給気孔51から軸方向下側の排気孔52へ向かう気流が発生する。このため、給気孔51から環状空間5へ外気が導入され、環状空間5に導入された外気は、排気孔52から外部へ排出される。その際、環状空間5に滞留する蒸気も、前記気流によって排気孔52から外部へ排出される。
【0045】
本実施形態の他の構成は、第1実施形態と同様であるため、同一の符号を付し、その説明を省略する。本実施形態のロータリジョイント1においても、転がり軸受30の内部に蒸気が侵入するのを抑制することができる。
【0046】
[その他]
以上のとおり開示した各実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものでない。例えば、上記各実施形態のロータリジョイント1は、軸線Cを上下方向に向けて配置されているが、軸線Cを水平方向に向けて配置されてもよい。また、本開示のロータリジョイントは、
図8に示すように、封液を使用しないロータリジョイントにも適用することができる。その場合、移送流体がメカニカルシールの摺動部分から蒸気となって漏洩したときに、その蒸気が転がり軸受の内部に侵入するのを抑制することができる。特に、移送流体が有機溶剤である場合に有効となる。
【0047】
本開示のロータリジョイントは、1ポートの継手に限定されず、径方向に複数配置される静止密封環によって多数のポートが形成される多ポートの継手であってもよい。その場合、径方向の最も外側においてブロック部に設けられる静止密封環と回転密封環との摺動部分から漏洩する蒸気が、転がり軸受の内部に侵入するのを抑制すればよい。
【0048】
第1実施形態の給気孔51及び排気孔52は、軸方向において上下逆に形成されてもよい。その場合、羽根部材60は、軸方向上側の給気孔51から軸方向下側の排気孔52へ向かう気流が発生するように構成されればよい。同様に、第2実施形態の給気孔51及び排気孔52は、軸方向において上下逆に形成されてもよい。その場合、羽根部材60は、軸方向下側の給気孔51から軸方向上側の排気孔52へ向かう気流が発生するように構成されればよい。上記実施形態の羽根部材60は、リテーナ43の外周に設けられているが、回転密封環44の外周に直接設けられてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 ロータリジョイント
10 ジョイント本体
11 ブロック部
12 円筒部
13 第1流路
20 回転軸
23 第2流路
30 転がり軸受
40 メカニカルシール
42 第2静止密封環(静止密封環)
44 回転密封環
51 給気孔
52 排気孔
60 羽根部材