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特開2025-18098保持部材、搬送装置、切断用テーブル、切断装置、半導体製造装置、保持部材の製造方法、及び、半導体装置の製造方法
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  • 特開-保持部材、搬送装置、切断用テーブル、切断装置、半導体製造装置、保持部材の製造方法、及び、半導体装置の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018098
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】保持部材、搬送装置、切断用テーブル、切断装置、半導体製造装置、保持部材の製造方法、及び、半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20250130BHJP
【FI】
H01L21/68 P
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121524
(22)【出願日】2023-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(74)【代理人】
【識別番号】100231038
【弁理士】
【氏名又は名称】正村 智彦
(72)【発明者】
【氏名】花坂 周邦
(72)【発明者】
【氏名】鍬田 詩織
(72)【発明者】
【氏名】藤原 直己
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA03
5F131AA12
5F131AA23
5F131BA39
5F131BA52
5F131CA70
5F131EB02
5F131EB04
5F131EB54
5F131EB78
5F131EC03
(57)【要約】
【課題】保持部材の吸着力を損なうことなく、吸着解除後に保持対象物を容易に取り外すことができる。
【解決手段】保持対象物Wを吸着して保持する吸着孔10aが形成された保持部材10であって、吸着孔10aにより保持対象物Wを保持する保持領域10Rの表面に複数の凹部10cが形成されており、保持領域10Rにおいて複数の凹部10c以外の表面が粗化面10dである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持対象物を吸着して保持する吸着孔が形成された保持部材であって、
前記吸着孔により前記保持対象物を保持する保持領域の表面に複数の凹部が形成されており、
前記保持領域において前記複数の凹部以外の表面が粗化面である、保持部材。
【請求項2】
前記複数の凹部は、前記保持対象物を保持した状態において、前記吸着孔及び前記保持領域の外側空間が連通しないように形成されている、請求項1に記載の保持部材。
【請求項3】
前記複数の凹部は、平面視において格子状、ストライプ状又はドット状をなすものである、請求項1又は2に記載の保持部材。
【請求項4】
搬送対象物を吸着して保持する保持部と、
前記保持部を移動させる移動機構とを備え、
前記保持部は、請求項1乃至3の何れか一項に記載の保持部材を有する、搬送装置。
【請求項5】
切断対象物を吸着して保持する切断用テーブルであって、
請求項1乃至3の何れか一項に記載の保持部材を有する、切断用テーブル。
【請求項6】
切断対象物を吸着して保持する切断用テーブルと、
前記切断用テーブルに保持された前記切断対象物を切断する切断機構とを備え、
前記切断用テーブルは、請求項1乃至3の何れか一項に記載の保持部材を有する、切断装置。
【請求項7】
複数の半導体装置が形成された基板を切断して、個片化された半導体装置を製造する半導体製造装置であって、
前記基板を吸着して保持する切断用テーブルと、
前記切断用テーブルに保持された前記基板を切断する切断機構と、
前記個片化された半導体装置を前記切断用テーブルから搬送する搬送機構とを備え、
前記切断用テーブル又は前記搬送機構は、請求項1乃至3の何れか一項に記載の保持部材を有する、半導体製造装置。
【請求項8】
請求項1乃至3に何れか一項に記載の保持部材の製造方法であって、
前記保持領域において前記複数の凹部以外の表面にレーザ光を照射して前記粗化面を形成する、保持部材の製造方法。
【請求項9】
前記保持領域の表面にレーザ光を照射して前記複数の凹部を形成する、請求項8に記載の保持部材の製造方法。
【請求項10】
請求項7に記載の半導体製造装置を用いた半導体装置の製造方法であって、
前記切断用テーブルに保持された前記基板を前記切断機構により切断し、
個片化された前記半導体装置を前記搬送機構により搬出する、半導体装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持部材、搬送装置、切断用テーブル、切断装置、半導体製造装置、保持部材の製造方法、及び、半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、洗浄装置や成膜装置等において、部品を吸着する吸着部材が用いられている。この吸着部材は、同一の吸着面に1又は複数の部品を吸着するものであり、吸着層と支持体とを備えている。そして、吸着層はセラミックの多孔体からなり、その平均細孔径を調整することで、部品との吸着及び離脱を改善している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-183535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、耐水性、保持対象物の反りへの追従性又は保持対象物の位置ずれ防止等の観点から、保持対象物を保持する保持部材(保持層)に、例えばシリコーン系の樹脂やフッ素系の樹脂等の弾性樹脂(ラバー材)が用いられている。また、保持部材には、保持対象物を吸着して保持するための吸着孔が形成されている。
【0005】
しかしながら、保持対象物を保持するための吸着力を増大させた場合には、吸着孔による吸着を解除した後であっても保持部材に保持対象物が張り付いてしまう。また、保持部材の表面粘着性や汚れ等により、保持部材及び保持対象物の接触面積が大きいほど、張り付き力が増大してしまう。さらに、保持対象物及び保持部材の接触面が互いに平滑である場合には真空張り付きが発生し、また、保持部材が水で濡れた場合にはそれら接触面の凹凸が水で満たされて張り付き力が増してしまう。このように、保持部材に保持対象物が張り付いてしまうと、保持部材から保持対象物を取り外すことができず、保持対象物を搬送できない状況が発生してしまう。
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、保持部材の吸着力を損なうことなく、吸着解除後に保持対象物を容易に取り外すことをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る保持部材は、保持対象物を吸着して保持する吸着孔が形成された保持部材であって、前記吸着孔により前記保持対象物を保持する保持領域の表面に複数の凹部が形成されており、前記保持領域において前記複数の凹部以外の表面が粗化面であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように構成した本発明によれば、保持部材の吸着力を損なうことなく、吸着解除後に保持対象物を容易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る一実施形態の切断装置の構成を示す模式図である。
図2】同実施形態の切断用テーブルの構成を模式的に示す断面図である。
図3】同実施形態の(a)基板の構成を模式的に示す平面図、及び、(b)保持部材の構成を模式的に示す平面図である。
図4】同実施形態の保持部材の構成を模式的に示す部分拡大平面図である。
図5】同実施形態の保持部材の構成を模式的に示す部分拡大断面図である。
図6】変形実施形態の保持部材の構成を模式的に示す平面図である。
図7】変形実施形態の保持部材の構成を模式的に示す部分拡大平面図である。
図8】変形実施形態の保持部材の構成を模式的に示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明に係る技術について、例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の技術により限定されない。
【0011】
本発明に係る技術1の保持部材は、保持対象物を吸着して保持する吸着孔が形成された保持部材であって、前記吸着孔により前記保持対象物を保持する保持領域の表面に複数の凹部が形成されており、前記保持領域において前記複数の凹部以外の表面が粗化面であることを特徴とする。
【0012】
この保持部材であれば、保持対象物を保持する保持領域の表面に複数の凹部が形成されているので、保持部材と保持対象物との接触面積を低減して張り付き力を低減することができる。また、保持領域において複数の凹部以外の表面が粗化面としてあるので、真空張り付き等による張り付き力を低減することができる。したがって、保持部材の吸着力を損なうことなく、吸着解除後に保持対象物を容易に取り外すことができる。
【0013】
保持領域に形成された複数の凹部によって、吸着孔及び保持領域の外側空間が連通してしまうと、保持部材の吸着力が低下する恐れがある。この問題を解決するためには、本発明に係る技術2の保持部材は、上記の技術1の構成に加えて、前記複数の凹部が、前記保持対象物を保持した状態において、前記吸着孔及び前記保持領域の外側空間が連通しないように形成されていることが望ましい。
【0014】
保持部材の具体的な実施の態様としては、複数の凹部が規則的に形成されている構成、複数の凹部が不規則に形成されている構成、又は、複数の凹部が不定形で形成されている構成が考えられる。ここで、複数の凹部が規則的に形成されている構成は、保持部材への加工処理を行いやすくできる。このため、本発明に係る技術3の保持部材は、上記の技術1又は2の構成に加えて、前記複数の凹部が、平面視において格子状、ストライプ状又はドット状をなすものであることが望ましい。
【0015】
本発明に係る技術4の搬送装置は、搬送対象物を吸着して保持する保持部と、前記保持部を移動させる移動機構とを備え、前記保持部は、上記の技術1乃至3の何れか1つの構成である保持部材を有することを特徴とする。
この構成であれば、保持部材の吸着力を損なうことなく、吸着解除後に搬送対象物を容易に取り外すことができるので、搬送対象物を所定の位置に確実に搬送することができる。
【0016】
本発明に係る技術5の切断用テーブルは、切断対象物を吸着して保持する切断用テーブルであって、上記の技術1乃至3の何れか1つの構成である保持部材を有することを特徴とする。
この構成であれば、保持部材の吸着力を損なうことなく、吸着解除後に切断対象物を容易に取り外すことができるので、切断時に切断対象物の位置ずれを防ぐことができ、吸着解除後に切断された切断対象物を容易に取り外すことができる。
【0017】
本発明に係る技術6の切断装置は、切断対象物を吸着して保持する切断用テーブルと、前記切断用テーブルに保持された前記切断対象物を切断する切断機構とを備え、前記切断用テーブルは、上記の技術1乃至3の何れか1つの構成である保持部材を有することを特徴とする。
この構成であれば、保持部材の吸着力を損なうことなく、吸着解除後に切断対象物を容易に取り外すことができるので、切断時に切断対象物の位置ずれを防ぐことができ、吸着解除後に切断された切断対象物を切断用テーブルから容易に取り外すことができる。
【0018】
本発明に係る技術7の半導体製造装置は、複数の半導体装置が形成された基板を切断して、個片化された半導体装置を製造する半導体製造装置であって、前記基板を吸着して保持する切断用テーブルと、前記切断用テーブルに保持された前記基板を切断する切断機構と、前記個片化された半導体装置を前記切断用テーブルから搬送する搬送機構とを備え、前記切断用テーブル又は前記搬送機構は、上記の技術1乃至3の何れか1つの構成である保持部材を有することを特徴とする。
この構成であれば、保持部材の吸着力を損なうことなく、吸着解除後に個片化された半導体装置を容易に取り外すことができるので、切断用テーブルが上記の技術1乃至3の何れか1つの構成である保持部材を有する場合には、切断時に切断対象物の位置ずれを防ぐことができ、吸着解除後に個片化された半導体装置を切断用テーブルから容易に取り外すことができる。また、搬送機構が上記の技術1乃至3の何れか1つの構成である保持部材を有する場合には、吸着解除後に個片化された半導体装置を所定の位置に確実に搬送することができる。
【0019】
本発明に係る技術8の保持部材の製造方法は、上記の技術1乃至3の何れか1つの構成である保持部材を製造する方法であり、前記保持領域において前記複数の凹部以外の表面にレーザ光を照射して前記粗化面を形成することを特徴とする。
この構成であれば、保持領域の表面を粗化して粗化面を形成しつつ、保持領域の表面の汚れを燃焼して除去することができる。特に、凹部が形成された後にレーザ光を照射して粗化することで、凹部の形成により生じた表面の汚れを燃焼して除去することができる。
【0020】
本発明に係る技術9の保持部材の製造方法は、上記の技術8の構成に加えて、前記保持領域の表面にレーザ光を照射して前記複数の凹部を形成することが望ましい。
この構成であれば、粗化面だけでなく凹部もレーザ光を用いて形成しているので、保持部材の製造工程を簡略化することができる。
【0021】
本発明に係る技術10の半導体装置の製造方法は、上記の技術7の半導体製造装置を用いた半導体装置の製造方法であって、前記切断用テーブルに保持された前記基板を前記切断機構により切断し、個片化された前記半導体装置を前記搬送機構により搬出することを特徴とする。
【0022】
<本発明の一実施形態>
以下に、本発明に係る切断装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0023】
<切断装置100の全体構成>
本実施形態の切断装置100は、切断対象物である基板Wを切断して複数の切断品Pに個片化するものである。
【0024】
ここで、基板Wとしては、例えばフリップチップ用基板又は封止済基板等を挙げることができる。フリップチップ用基板とは、半導体チップ、抵抗素子、キャパシタ素子等の電子素子がフリップチップ接続される基板である。また、封止済基板とは、半導体チップ、抵抗素子、キャパシタ素子等の電子素子が接続された基板に対して、少なくとも電子素子を樹脂封止するように樹脂成形したものである。封止済基板を構成する基板としては、リードフレーム、プリント配線板を用いることができ、これら以外にも、半導体製基板(シリコンウェーハ等の半導体ウェーハを含む)、金属製基板、セラミック製基板、ガラス製基板、樹脂製基板等を用いることができる。また、封止済基板を構成する基板には、配線が施されていても施されていなくてもよい。
【0025】
具体的に切断装置100は、図1に示すように、基板Wを供給する供給モジュール100Aと、基板Wを切断する切断モジュール100Bと、切断されて個片化された切断品Pを検査する検査モジュール100Cとを、それぞれ構成要素として備えている。各構成要素は、それぞれ他の構成要素に対して着脱可能かつ交換可能である。なお、基板Wが複数の半導体装置が形成された基板である場合、切断装置100は、個片化された半導体装置を製造する半導体製造装置ということができる。
【0026】
以下に示す各モジュール100A~100Cを含む切断装置100の動作制御は、供給モジュール100Aに設けた制御部CTLが行う。この制御部CTLは、供給モジュール100A以外の他のモジュール100B、100Cに設けてもよい。また、制御部CTLは、複数に分割して、供給モジュール100A、切断モジュール100B及び検査モジュール100Cのうちの少なくとも2つのモジュールに設けてもよい。
【0027】
供給モジュール100Aは、切断される基板Wが外部から供給されて、基板Wを収容するものである。この供給モジュール100Aには、基板Wを収容する基板収容部2が設けられる。基板Wは、搬送機構(ローダ)3によって、供給モジュール100Aから切断モジュール100Bに搬送される。なお、ローダ3は、ガイドレール31を用いて基板Wを切断モジュール100Bに搬送するものである。本実施形態の切断装置100は、基板収容部2を3つ備えているが、基板収容部2の個数は特に限定されない。
【0028】
切断モジュール100Bは、基板Wを切断して複数の切断品Pに個片化するものである。この切断モジュール100Bは、切断対象物である基板Wを吸着して保持する切断用テーブル4と、切断用テーブル4に保持された基板Wを切断する切断機構5とを有している。
【0029】
切断機構5は、スピンドル51に回転刃52が装着されることにより構成されている。そして、切断用テーブル4と切断機構5とを相対的に移動させることによって、基板Wが回転刃52によって切断されて切断品Pに個片化される。ここで、回転刃52及び基板Wには、基板Wの切断時に発生する摩擦熱を抑えるために加工液である切削水が加工液供給部50により供給される。その後、個片化された切断品Pは、搬送機構(アンローダ)6によって、切断モジュール100Bから検査モジュール100Cに搬送される。なお、アンローダ6は、搬送対象物である複数の切断品Pを個別に吸着して保持する保持部61と、当該保持部61を移動させる移動機構62とを有している。本実施形態の切断装置100は、切断機構5を2つ備えているが、切断機構5は1つであってもよい。
【0030】
検査モジュール100Cは、切断モジュール100Bにより個片化された切断品Pを撮像して検査するものである。この検査モジュール100Cは、検査対象物である複数の切断品Pを吸着して保持する検査用テーブル7と、検査用テーブル7に保持された複数の切断品Pを撮像する検査カメラ8とを備えている。そして、検査モジュール100Cでは、検査カメラ8により得られた画像に基づいて、個片化された切断品Pを良品と不良品とに区別する。そして、移送機構(図示なし)によって良品は良品用トレイ9aに、不良品は不良品用トレイ9bにそれぞれ移送されて収納される。(図1参照)
【0031】
<基板W又は複数の切断品Pを吸着して保持する保持部材10の構成>
そして、本実施形態では、図2図5に示すように、基板W又は複数の切断品Pを吸着して保持する保持部材10が、切断用テーブル4、アンローダ6の保持部61、又は検査用テーブル7の少なくとも1つに設けられている。保持部材10は、例えばシリコーン系の樹脂やフッ素系の樹脂等の弾性樹脂(ラバー材)により構成されている。
【0032】
図2図5には、切断用テーブル4が保持部材10を有する構成を示しており、保持部材10には、切断時に回転刃52を避けるための刃避け溝10Mが形成されている。
【0033】
ここで、基板Wは、図3(a)に示すように、切断後に製品として用いられる製品部Wxと、切断後に製品として用いられない非製品部Wyとを有している。なお、製品部Wxを切断することによって切断品Pに個片化される。本実施形態では、複数の製品部Wxが例えば縦横マトリックス状(全体として例えば矩形状)等により中央部に配置されており、それら複数の製品部Wxの外周部に非製品部Wyが配置されている。なお、製品部Wx及び非製品部Wyそれぞれの配置態様は前述に限られない。例えば、非製品部Wyが基板Wの外周部以外に配置されていても良い。
【0034】
このため、図3(b)に示すように、刃避け溝10Mは、製品部Wx及び非製品部Wyに対応して格子状に形成されており、刃避け溝10Mに取り囲まれた矩形状の領域が基板Wの各製品部Wxを保持する保持領域10Rとなる。
【0035】
その他、個片化された複数の切断品Pを吸着して保持するアンローダ6の保持部61が保持部材10を有する場合には、複数の切断品Pそれぞれに対応して保持領域10Rが形成される。また、個片化された複数の切断品Pを吸着して保持する検査用テーブル7が保持部材10を有する場合には、複数の切断品Pそれぞれに対応して保持領域10Rが形成される。
【0036】
この保持部材10には、基板W又は複数の切断品Pを吸着して保持する吸着孔10aが形成されている。本実施形態では、吸着孔10aによる吸着力を増強するために、吸着孔10aの吸着側開口部の開口サイズを大きくしてポケット部10bを形成している。また、吸着孔10a及びポケット部10bは、平面視において各保持領域10Rの内側に形成されている。なお、図2図5のポケット部10bは、平面視において矩形状をなすものであるが、ポケット部10bの平面視における形状はこれに限られない。なお、保持部材10の吸着孔10aは、保持部材10が装着される保持本体40(図2ではテーブル本体)に形成された吸引流路40aに連通している。
【0037】
そして、保持部材10には、図4及び図5に示すように、吸着孔10aにより基板W又は複数の切断品Pを保持する保持領域10Rの表面に、複数の凹部10cが形成されている。複数の凹部10cは、保持領域10Rの表面と基板Wとの接触面積を低減するものである。複数の凹部10cを形成することによって、凹部10cを形成しない場合の接触面積を100%とした場合に、接触面積を例えば50%~60%としている。
【0038】
また、複数の凹部10cは、基板W又は複数の切断品Pを保持した状態において、吸着孔10a及び保持領域10Rの外側空間が連通しないように形成されている。具体的に複数の凹部10cは、平面視において格子状、ストライプ状又はドット状をなすものである。なお、図4には複数の凹部10cをドット状とした例を示している。ここで、各凹部10cの幅及び深さは、凹部10c内に異物が捕集されない程度に小さくし、かつ、基板Wの切断(切断品Pの生産)及び清掃による摩耗の影響を受けない程度のサイズが望ましい。具体的に各凹部10cの幅及び深さはそれぞれ、例えば数10~数100μmとすることが考えられる。
【0039】
さらに、保持部材10は、図4及び図5に示すように、保持領域10Rにおいて複数の凹部10c以外の表面が粗化面10dである。この粗化面10dは、真空張り付きに対する引き剥がしを向上させるものである。本実施形態の粗化面10dは、保持領域10Rにおいて複数の凹部10c以外の表面にレーザ光を照射して形成されている。また、粗化面10dは、凹部10cの幅及び深さよりも小さい凹凸を有するものであり、例えば数10μmピッチのストライプ状をなすものである。
【0040】
<保持部材10の製造方法>
次に、本実施形態の保持部材10の製造方法の一例について説明する。
まず、吸着孔10a及びポケット部10bが形成された保持部材10を準備する。なお、切断用テーブル4に用いる保持部材10の場合には、回転刃52を避けるための刃避け溝10Mが形成されている。
【0041】
そして、保持部材10における保持領域10Rの表面にレーザ光を照射して、複数の凹部10cを形成する。ここで、加工性を考慮して、吸着孔10a及びポケット部10b(刃避け溝10Mがある場合は刃避け溝10M)を区別することなく、レーザ光を照射して複数の凹部10cを形成することもできる。
【0042】
複数の凹部10cを形成した後に、保持部材10の保持領域10Rにおいて、複数の凹部10c以外の表面にレーザ光を照射して粗化面10dを形成する。ここで、加工性を考慮して、複数の凹部10c、吸着孔10a及びポケット部10b(刃避け溝10Mがある場合は刃避け溝10M)を区別することなく、レーザ光を照射して保持領域10Rの表面を粗化することもできる。
【0043】
このようにレーザ光を照射して粗化面10dを形成しているので、保持領域10Rの表面の汚れを燃焼して除去することができる。特に、凹部10cが形成された後にレーザ光を照射して粗化することで、凹部10cの形成により生じた表面の汚れを燃焼して除去することができる。以上により、複数の凹部10c及び粗化面10dが形成された保持部材10が製造される。
【0044】
<本実施形態の効果>
本実施形態の切断装置100によれば、基板W又は切断品Pを保持する保持領域10Rの表面に複数の凹部10cが形成されているので、保持部材10と基板Wとの接触面積を低減して張り付き力を低減し、吸着解除後に基板W又は切断品Pを容易に取り外すことができる。また、保持領域10Rにおいて複数の凹部10c以外の表面が粗化面10dとしてあるので、真空張り付き等による張り付き力を低減し、吸着解除後に基板W又は切断品Pを容易に取り外すことができる。したがって、保持部材10の吸着力を損なうことなく、吸着解除後に基板W又は切断品Pを容易に取り外すことができる。
【0045】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0046】
例えば、前記実施形態では、切断装置100の切断用テーブル4、アンローダ6、又は検査用テーブル7の少なくとも1つに保持部材10を用いた構成であったが、その他、基板W又は切断品Pを吸着保持する吸着機構があれば、当該吸着機構に前記実施形態の保持部材10を用いても良い。
【0047】
また、前記実施形態の保持部材10は、切断装置100以外の半導体製造装置、例えば、圧縮成形又はトランスファー成形等の樹脂成形装置、又は、半導体装置等の検査対象物を検査する検査装置等に適用することもできる。
【0048】
また、凹部10cの形成方法としては、レーザ光を照射する方法の他、例えば、切削等の機械加工により形成しても良いし、薬液を用いた化学処理により形成しても良いし、型転写成形により形成しても良い。
【0049】
さらに、粗化面10dの形成方法としては、レーザ光を照射する方法の他、例えば、切削等の機械加工により形成しても良いし、ブラストにより形成しても良いし、型転写成形により形成しても良い。
【0050】
その上、前記実施形態では、保持部材10がポケット部10bを有する構成であったが、ポケット部10bを有さない構成であっても良い。
【0051】
また、保持部材10を切断用テーブル4に用いる場合、保持部材10には、図6図8に示すように、基板Wを切断して生じる非製品部Wyに接触する接触領域10Sの表面に複数の第2凹部10eを形成しても良い。複数の第2凹部10eは、接触領域10Sの表面と非製品部Wyとの接触面積を低減するものである。複数の第2凹部10eを形成することによって、第2凹部10eを形成しない場合の接触面積を100%とした場合に、接触面積を例えば20%~30%としている。なお、図6図8では、前記実施形態の凹部10c及び粗化面10dの図示を省略している。
【0052】
また、複数の第2凹部10eは、非製品部Wyが接触領域10Sに接触した状態において、接触領域10Sの外側に連通している。ここで、接触領域10Sの外側に連通しているとは、平面視において第2凹部10eが非製品部Wyの外側に延びており、第2凹部10eが保持部材10の表面に開口していること、又は、平面視において第2凹部10eが非製品部Wyに覆われているが、図8に示すように、第2凹部10eが保持部材10の側面101又は刃避け溝10Mの内面102に開口していること等を含む。また、平面視において、第2凹部10eの両端部が接触領域10Sの外側に連通する構成であっても良いし、第2凹部10eの一端部が接触領域10Sの外側に連通する構成であっても良い。なお、第2凹部10eの一端部が接触領域10Sの外側に連通する構成の場合には、加工液が供給される側の一端部が接触領域10Sの外側に連通する構成とすることが望ましい。
【0053】
具体的に複数の第2凹部10eは、平面視において格子状、ストライプ状又はドット状をなすものである。なお、図7及び図8には複数の第2凹部10eを格子状とした例を示している。ここで、各第2凹部10eの幅及び深さは、第2凹部10e内に異物が捕集されない程度に小さくし、かつ、基板Wの切断(切断品Pの生産)及び清掃による摩耗の影響を受けない程度のサイズが望ましい。具体的に各第2凹部10eの幅及び深さはそれぞれ、例えば数10~数100μmとすることが考えられる。複数の第2凹部10eのピッチは、例えば数10μmとすることが考えられる。これら複数の第2凹部10eは、レーザ光を照射して形成しても良いし、切削等の機械加工により形成しても良いし、薬液を用いた化学処理により形成しても良いし、型転写成形により形成しても良い。
【0054】
このように、非製品部Wyに接触する接触領域10Sの表面に複数の第2凹部10eを形成しているので、保持部材10と非製品部Wyとの接触面積を低減して張り付き力を低減し、非製品部Wyを容易に取り除くことができる。また、複数の第2凹部10eが接触領域10Sの外側に連通しているので、加工液が保持部材10と非製品部Wyとの間に流入しやすくなり、非製品部Wyを容易に取り除くことができる。したがって、基板Wを切断して生じる非製品部Wyが保持部材10に張り付くことを防止することができる。また、加工液の供給量を少なくすることもでき、加工液を節約することができる。
【0055】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0056】
100・・・切断装置(半導体製造装置)
W ・・・基板(保持対象物、搬送対象物、切断対象物)
P ・・・切断品(半導体装置)
4 ・・・切断用テーブル
5 ・・・切断機構
6 ・・・アンローダ(搬送装置)
61 ・・・保持部
62 ・・・移動機構
10 ・・・保持部材
10a・・・吸着孔
10R・・・保持領域
10c・・・凹部
10d・・・粗化面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-07-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持対象物を吸着して保持する吸着孔が形成された保持部材であって、
前記吸着孔により前記保持対象物を保持する保持領域の表面に複数の凹部が形成されており、
前記保持領域において前記複数の凹部以外の表面が粗化面である、保持部材。
【請求項2】
前記複数の凹部は、前記保持対象物を保持した状態において、前記吸着孔及び前記保持領域の外側空間が連通しないように形成されている、請求項1に記載の保持部材。
【請求項3】
前記複数の凹部は、平面視において格子状、ストライプ状又はドット状をなすものである、請求項に記載の保持部材。
【請求項4】
搬送対象物を吸着して保持する保持部と、
前記保持部を移動させる移動機構とを備え、
前記保持部は、請求項1乃至3の何れか一項に記載の保持部材を有する、搬送装置。
【請求項5】
切断対象物を吸着して保持する切断用テーブルであって、
請求項1乃至3の何れか一項に記載の保持部材を有する、切断用テーブル。
【請求項6】
切断対象物を吸着して保持する切断用テーブルと、
前記切断用テーブルに保持された前記切断対象物を切断する切断機構とを備え、
前記切断用テーブルは、請求項1乃至3の何れか一項に記載の保持部材を有する、切断装置。
【請求項7】
複数の半導体装置が形成された基板を切断して、個片化された半導体装置を製造する半導体製造装置であって、
前記基板を吸着して保持する切断用テーブルと、
前記切断用テーブルに保持された前記基板を切断する切断機構と、
前記個片化された半導体装置を前記切断用テーブルから搬送する搬送機構とを備え、
前記切断用テーブル又は前記搬送機構は、請求項1乃至3の何れか一項に記載の保持部材を有する、半導体製造装置。
【請求項8】
請求項1乃至3に何れか一項に記載の保持部材の製造方法であって、
前記保持領域において前記複数の凹部以外の表面にレーザ光を照射して前記粗化面を形成する、保持部材の製造方法。
【請求項9】
前記保持領域の表面にレーザ光を照射して前記複数の凹部を形成する、請求項8に記載の保持部材の製造方法。
【請求項10】
請求項7に記載の半導体製造装置を用いた半導体装置の製造方法であって、
前記切断用テーブルに保持された前記基板を前記切断機構により切断し、
個片化された前記半導体装置を前記搬送機構により搬出する、半導体装置の製造方法。