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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018108
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/966 20130101AFI20250130BHJP
【FI】
A61F2/966
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121538
(22)【出願日】2023-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】藤原 暢哉
(72)【発明者】
【氏名】玉井 裕介
(72)【発明者】
【氏名】堤 里菜
(72)【発明者】
【氏名】向井 智和
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA12
4C267AA52
4C267AA56
4C267BB02
4C267BB11
4C267BB12
4C267CC07
4C267CC08
4C267CC09
4C267DD01
4C267EE03
4C267GG01
4C267GG21
4C267HH08
(57)【要約】
【課題】手技の際にオペレータが操作しやすく、基端側構造体の破損が生じにくいカテーテルを提供する。
【解決手段】カテーテルは、長尺の軸状部材と、軸状部材の基端側に取り付けられる基端側構造体と、を備える。基端側構造体は、長軸が軸状部材の軸方向に沿って配置される楕円体である。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の軸状部材と、
前記軸状部材の基端側に取り付けられる基端側構造体と、を備え、
前記基端側構造体は、長軸が前記軸状部材の軸方向に沿って配置される楕円体である
カテーテル。
【請求項2】
前記基端側構造体は、樹脂材料の射出成形品であり、
前記軸方向と直交する断面上で第1方向に延び、前記軸方向および前記第1方向に延在する平面上で楕円形をなす板状基部と、
前記板状基部から前記第1方向と直交する第2方向に沿ってそれぞれ立設され、前記平面上で間隔をあけて配置される複数のリブ部と、を有する
請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記リブ部は、
前記平面上で前記板状基部の前記第1方向に間隔をあけて形成され、それぞれ前記軸方向に沿って円弧状に延びる複数の第1リブと、
前記第1方向に延び、隣り合う2つの前記第1リブを繋ぐ第2リブと、を含む
請求項2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記第1リブおよび前記第2リブは、前記板状基部の軸方向中心に対して線対称に配置される
請求項3に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記基端側構造体は、
前記板状基部の前記軸方向に開口され、前記軸状部材が挿入される軸穴と、
前記板状基部の前記第2方向に開口されて前記軸穴に連通する接着剤注入穴と、をさらに有し、
前記リブ部は、前記接着剤注入穴を囲むように配置される第3リブをさらに含む
請求項3に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記第3リブの外周部には、複数の第1リブが接続され、
前記第3リブの内周部では、前記第1リブが切り欠かれている
請求項5に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記第2リブは、前記第3リブおよび前記接着剤注入穴から前記軸方向にずれた位置に配置されている
請求項5に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記軸状部材と前記基端側構造体は、前記接着剤注入穴から前記軸穴に注入された光硬化型樹脂で接着される
請求項5に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記基端側構造体の基端側に取り付けられ、径方向に突出する一対の突出部を有するグリップ部材をさらに備え、
前記グリップ部材は、前記リブ部の立設方向に対して前記突出部が直交方向に延びるように取り付けられる
請求項2から請求項8のいずれか一項に記載のカテーテル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状留置具を生体管腔内に留置するためのカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食道、胃、小腸、大腸、胆管などの消化管や血管(以下、「生体管腔」と称する)に生じた狭窄部又は閉塞部などの病変部位に留置され、当該病変部位を拡径して生体管腔の開存状態を維持する管状留置具が知られている。
【0003】
この種の管状留置具は、例えば特許文献1などの留置装置(カテーテル)を用いて径方向に収縮させた状態で留置目標部位まで送達される。管状留置具は、留置目標部位で留置装置のシースから生体管腔内に放出されて径方向に拡張し、留置目標部位に留置される。
【0004】
留置装置は、オペレータにより操作される操作部材を近位側(基端側)に備えている。操作部材の操作により、管状留置具を保持するインナーチューブに対してシースが軸方向の近位側に相対的に移動することで、管状留置具をシースから放出することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-100274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
留置装置の操作部材のうち、インナーチューブに取り付けられる基端側構造体は、留置装置の操作性を向上する観点からオペレータが保持しやすい形状であることが求められる。一方、基端側構造体には、インナーチューブに生じる曲げや管状留置具を放出するときにかかる負荷などで応力が集中する。かかる応力集中により手技の際に基端側構造体が破損すると、管状留置具を放出する操作に支障をきたすおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は上記の状況に鑑みてなされたものであって、手技の際にオペレータが操作しやすく、基端側構造体の破損が生じにくいカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様のカテーテルは、長尺の軸状部材と、軸状部材の基端側に取り付けられる基端側構造体と、を備える。基端側構造体は、長軸が軸状部材の軸方向に沿って配置される楕円体である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、手技の際にオペレータが操作しやすく、基端側構造体の破損が生じにくいカテーテルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態のカテーテルの一例を示す全体図である。
図2】(a)は図1のカテーテルの分解図であり、(b)は図2(a)の組立状態を示す図である。
図3】基端側構造体の把持状態の一例を示す図である。
図4】基端側構造体の斜視図である。
図5】基端側構造体の平面図である。
図6】基端側構造体の側面図である。
図7】基端側構造体の正面図である。
図8】基端側構造体の背面図である。
図9図7のA-A線断面図である。
図10図5のB-B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、実施形態に係るカテーテルの構成例について説明する。なお、図面における各部の形状、寸法等は模式的に示したもので、実際の形状や寸法等を示すものではない。
【0012】
また、以下の説明では、カテーテルのオペレータからみて遠い方を遠位側(または先端側)と称し、オペレータからみて近い方を近位側(または基端側)と称する。図1図2では、カテーテルの長手方向(軸方向)を適宜矢印Axで示す。また、長手方向に略直交する方向を径方向と定義し、長手方向を中心とする回転方向を周方向と定義する。
【0013】
図1は、本実施形態のカテーテル1の一例を示す全体図である。図2(a)は、図1のカテーテル1の分解図であり、図2(b)は、図2(a)の組立状態を示す図である。本実施形態のカテーテル1は、生体管腔(不図示)内の留置目標部位に管状留置具2を留置するために適用される。
【0014】
管状留置具2は、軸方向Axの一方側と他方側が連通する管状に形成された骨格部を有し、生体管腔内の病変部位に留置されて生体管腔の開存状態を維持する。管状留置具2の骨格部は、拡張状態の形状が記憶されたいわゆる自己拡張型の構成を有し、径方向に拡縮可能である。管状留置具2は、カテーテル1の後述するシース10内に収容されて径方向内側に収縮された状態で生体管腔内に導入され、生体管腔内の病変部位に運ばれた後にシース10から放出されて径方向外側に拡張する。
【0015】
管状留置具2の骨格部は、一例として、金属素線からなる線材をフェンス状に編み込んで構成されている。骨格部の材料としては、例えば、Ni-Ti合金、ステンレス鋼、チタン合金などに代表される公知の金属又は金属合金等が挙げられる。なお、骨格部は、金属以外の材料(例えば、セラミックや樹脂等)で形成されていてもよい。骨格部の材料としてNi-Ti合金を用いる場合、骨格を拡張状態の形状に整えた後に所定の熱処理を施すことにより、拡張状態の形状を骨格部に記憶させることができる。
【0016】
なお、骨格部の構成は、上記に限定されるものではない。例えば、ジグザグ状に折り曲げた金属細線をらせん状に巻回させて骨格部が形成されてもよい。または、骨格部は、ジグザグに折り返された金属細線を環状に接続したリング状の骨格片を軸方向に間隔をおいて複数配列した構造であってもよい。また、上記の各種金属からなる薄肉円筒体をレーザーカットして骨格部が形成されてもよい。
【0017】
特に限定するものではないが、管状留置具2は、骨格部の内周または外周に管状の可撓性被膜を取り付けたいわゆるステントグラフトであってもよい。なお、管状留置具2の全体形状は、図2(a)に示すように直線的な形状であってもよく、患者の生体管腔の形状に対応する湾曲形状に予め形成されていてもよい。
【0018】
また、図1図2(a)、(b)に示すように、カテーテル1は、管状のシース10と、シース10の内側に配置される管状のインナーチューブ20と、を備えている。
【0019】
シース10は、収縮状態の管状留置具をその内側に収容可能である。シース10は、シース本体部11と、シース本体部11の近位側の端部に設けられる第1操作部12とを有している。第1操作部12は、インナーチューブ20に対してシース10を固定するためのナット13や、インナーチューブ20に管状留置具2を拘束する線状部材(不図示)を操作するための操作部材(不図示)等を有していてもよい。
【0020】
シース本体部11は、可撓性を有する材料で形成された管体である。シース本体部11の材料としては、例えば、フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、及び、ポリ塩化ビニル系樹脂等から選択された生体適合性を有する合成樹脂(エラストマー)、これら樹脂に他の材料が混合された樹脂コンパウンド、これらの合成樹脂による多層構造体、並びに、これら合成樹脂と金属線との複合体などが挙げられる。
【0021】
インナーチューブ20は、シース10よりも長尺の軸状部材であって、軸方向Axに沿って進退可能に構成されている。インナーチューブ20は、チューブ本体部21と、チューブ本体部21の遠位側に形成されるチューブ小径部22とを有している。インナーチューブ20の材料としては、例えば、樹脂(プラスチック及びエラストマー等)並びに金属など、適度な剛性及び柔軟性を有する種々の材料が挙げられる。
【0022】
チューブ小径部22は、チューブ本体部21と同軸であり、チューブ本体部21よりも小径である。カテーテル1においては、チューブ小径部22の外周とシース本体部11の内周の間に形成される空間に管状留置具2が収容される。また、インナーチューブ20のチューブ本体部21およびチューブ小径部22には、ガイドワイヤを挿通させるルーメンや、カテーテル1の洗浄用の生理食塩水を流すルーメン(いずれも不図示)などがそれぞれ軸方向Axに沿って形成されている。
【0023】
なお、チューブ小径部22の遠位側の端部には、シース10の遠位側の端部開口を塞ぐ先端チップ23が取り付けられている。先端チップ23の径はインナーチューブ20よりも大径であり、先端チップ23の遠位側の形状は、遠位側に向けて緩やかに先細となるテーパー形状をなしている。
【0024】
一方、インナーチューブ20の近位側には、オペレータが操作を行うための基端側の第2操作部としての基端側構造体30が取り付けられている。基端側構造体30の構成については後述する。また、図1に示すように、基端側構造体30の基端側には、径方向両側に突出する突出部41を有するグリップ部材40が着脱可能に取り付けられてもよい。なお、グリップ部材40には、カテーテル1に生理食塩水を流すためのシリンジ(不図示)を接続することもできる。
【0025】
カテーテル1から管状留置具2を放出するときには、図3に示すようにオペレータはグリップ部材40が取り付けられていない基端側構造体30を把持するか、あるいは基端側構造体30の基端側に取り付けたグリップ部材40を把持することでインナーチューブ20を操作できる。また、オペレータは先端側の第1操作部12を保持して、インナーチューブ20の位置を保持しつつ、シース10を近位側に向けて引き抜くように移動させる操作を行う。これらの操作によりシース10から管状留置具2を放出することができる。
【0026】
次に、図4から図9を参照しつつ、基端側構造体30の構成例について説明する。
図4は、基端側構造体30の斜視図であり、図5は、基端側構造体30の平面図であり、図6は、基端側構造体30の側面図である。図7は、基端側構造体30の正面図であり、図8は、基端側構造体30の背面図である。図9は、図7のA-A線断面図であり、図10は、図5のB-B線断面図である。
【0027】
また、図4から図10では適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z方向は、カテーテル1の軸方向と平行な方向である。X方向は、軸方向に対する径方向のうち図5の左右方向である。Y方向は、Z方向及びX方向の両方と直交する方向であり、図5の紙面垂直方向である。以下の説明では、X方向を第1方向とも称し、Y方向を第2方向とも称する。
【0028】
基端側構造体30は、全体形状が楕円体に形成され、周方向にほぼ一様な形状で軸方向中央が凸をなす曲面を有する形状である。基端側構造体30は、その長軸が軸方向に沿うようにインナーチューブ20に固定されてカテーテル1に配置される。
【0029】
基端側構造体30は、第2方向(Y方向)に開閉する射出成形用割型(不図示)を用いて射出成形された樹脂製の射出成形品である。基端側構造体30は、板状基部31と、複数のリブ部32を有しており、平面側および底面側がそれぞれ肉抜きされている。
【0030】
また、基端側構造体30の基端側には、グリップ部材40を取り付けるためのねじ部30aが設けられている。これにより、カテーテル1ではグリップ部材40の把持による操作と、基端側構造体30の把持による操作のいずれにも対応できる。
【0031】
グリップ部材40は、図8に破線で示すように、グリップ部材40の突出部41が第2方向と直交する第1方向(X方向)に延びるように基端側構造体30に取り付けられる。グリップ部材40の突出部41を第1方向に配置することで、リブ部32の形成面をつまんで基端側構造体30を把持する場合には、グリップ部材40が操作の妨げになることを抑制できる。
【0032】
板状基部31は、基端側構造体30のパーティングラインに沿って配置される平板状の部位であり、軸方向(Z方向)および第1方向に延在するXZ平面上で楕円形をなしている。
【0033】
板状基部31は、図10に示すように、軸方向と直交するXY断面上で楕円体の軸心を通って第1方向に延びている。また、板状基部31の中心には、楕円体の軸心に沿って軸方向に延びる管状部31aが配置されている。そして、管状部31aの内側には、インナーチューブ20を挿通するための軸穴33が管状部31aと同心状に開口されている。軸穴33は、図9に示すように、管状部31aを軸方向に貫通し、軸方向先端側から軸方向基端側に連通している。
【0034】
また、図5図9図10に示すように、板状基部31の管状部31aには、板状基部31の平面側から第2方向に軸穴33と連通する接着剤注入穴34が開口されている。接着剤注入穴34は、図5図9に示すように、管状部31aの軸方向に間隔をあけて2つ形成されている。なお、軸穴33に挿入されたインナーチューブ20(チューブ本体部21)と基端側構造体30は、接着剤注入穴34から軸穴33に注入された光硬化型樹脂(例えばUV硬化接着剤)で接着される。
【0035】
リブ部32は、板状基部31の平面側および底面側にそれぞれ設けられている。各々のリブ部32は、いずれも板状基部31から立ち上がって楕円体の外縁の位置まで第2方向に沿って立設されている。なお、各々のリブ部32は、XY断面において射出金型からの抜きテーパーを有するように形成されていてもよい。
【0036】
ここで、板状基部31の平面側および底面側に形成されるリブ部32のパターンはいずれも共通である。以下の説明では、図5に示す平面側のリブ部32のパターンについて説明し、底面側のリブ部32のパターンに関する重複説明はいずれも省略する。
【0037】
リブ部32は、板状基部31の軸方向中心に対して線対称をなすパターンで配置されている。リブ32部を線対称のパターンで配置することで、基端側構造体30にかかる応力が偏りにくくなり、基端側構造体30の破損が生じにくくなる。
【0038】
リブ部32は、XZ平面上で板状基部31の第1方向に間隔をあけて形成され、軸方向に沿って円弧状に延びる複数の第1リブ35と、隣り合う2つの第1リブ35を第1方向に繋ぐリブ(第2リブ36、第3リブ37)を有する。これにより、基端側構造体30の平面側および底面側には、リブ部32で仕切られて楕円体の外縁から第2方向の内側にくぼむ凹部がそれぞれ複数形成される。
【0039】
XZ平面上で接着剤注入穴34の周囲には、それぞれ第3リブ37が形成されている。第3リブ37は、接着剤注入穴34を囲んで環状に形成されており、基端側構造体30に曲げによる圧縮荷重や引張荷重がかかるときに接着剤注入穴34への応力集中を抑制する機能を担う。
【0040】
第1リブ35は、XZ平面上でそれぞれ第1方向の外側に凸となる円弧状である。第1リブ35は、板状基部31の外縁に配置される一対の外側円弧リブ35aと、外側円弧リブ35aよりも第1方向の内側に配置される内側円弧リブ35b,35cとを含む。外側円弧リブ35aは、基端側構造体30の第1方向の端部で帯状をなすように形成され、基端側構造体30を第1方向側から把持するときのグリップ部として機能する。
【0041】
内側円弧リブ35b,35cは、外側円弧リブ35aと相似状の円弧をなすようにそれぞれ設けられている。内側円弧リブ35bは、外側円弧リブ35aに隣り合うように一対配置される。各々の内側円弧リブ35bは、軸方向に離間して配置された2つの第3リブ37にそれぞれ外接するように形成されている。
【0042】
内側円弧リブ35cは、内側円弧リブ35bよりも内側に配置されており、第3リブ37の外周に接続されている。したがって、内側円弧リブ35b,35cは、第3リブ37を介して第1方向に接続されている。これにより、第3リブ37は、内側円弧リブ35b,35cの間で第1方向に荷重を分散させる機能も担う。
【0043】
第3リブ37の内周部では、内側円弧リブ35cは切り欠かれている。これにより、第3リブ37の内側に内側円弧リブ35cがない空間が確保され、接着剤注入穴34には荷重がかかりにくくなる。また、内側円弧リブ35cの軸方向先端側の部位と、内側円弧リブ35cの軸方向基端側の部位は、それぞれ第3リブ37と一体化している。内側円弧リブ35cの軸方向先端側の部位と、内側円弧リブ35cの軸方向基端側の部位は、軸方向の両側に配置された直線状の連絡リブ35dを介して、内側円弧リブ35bの端部と接続されている。
【0044】
また、外側円弧リブ35aと内側円弧リブ35bの間には、第1方向に延びる第2リブ36がそれぞれ複数配置されている。第2リブ36は、外側円弧リブ35aと内側円弧リブ35bを繋いでこれらのリブにかかる荷重を分散させる機能を担う。図5に示すように、第2リブ36は、軸方向に間隔をあけて3箇所設けられている。各々の第2リブ36は、第3リブ37および接着剤注入穴34の位置に対して軸方向にずれた位置に配置されている。
【0045】
ここで、基端側構造体30は、第1方向から把持されるときには、第1方向の端部に位置する外側円弧リブ35aがオペレータの手と当接する。外側円弧リブ35aは、板状基部31で支持されている。また、外側円弧リブ35aに第1方向の外側からかかる荷重は、第2リブ36を介して内側円弧リブ35bにも分散する。したがって、基端側構造体30は第1方向からの荷重に対して潰れずに十分な反力を生じさせる。なお、第2リブ36は、第3リブ37および接着剤注入穴34とは位置がずれているため、第3リブ37や接着剤注入穴34には第1方向からの荷重による応力集中は生じにくい。
【0046】
また、基端側構造体30は、第2方向から把持されるときには、板状基部31に立設されるリブ部32の端部がオペレータの手と当接する。リブ部32が第2方向の外側からかかる荷重に抵抗することで、基端側構造体30は第2方向からの荷重に対しても潰れずに十分な反力を生じさせる。また、基端側構造体30が第2方向から把持される場合、リブ部32と凹部の凹凸によってグリップ性を向上させる効果を生じさせる。なお、接着剤注入穴34の周囲には第3リブ37が立設されて補強されているため、第2方向から把持された場合においても、接着剤注入穴34への応力集中は生じにくい。
【0047】
以下、本実施形態の基端側構造体30の作用を述べる。
基端側構造体30は全体形状が楕円体であって、周方向にほぼ一様な形状で軸方向中央が凸をなす曲面を有するため、第1方向および第2方向のいずれからでもオペレータが掴んで操作しやすい。したがって、本実施形態の基端側構造体30は、オペレータがカテーテル1を操作するときの操作性を向上できる。
また、基端側構造体30は全体形状が楕円体であるため、管状留置具2の放出操作の際などで基端側構造体30にかかる荷重が部品全体にほぼ均一に分散し、基端側構造体30が破損しにくい。したがって、本実施形態の基端側構造体30は、カテーテル1の操作時に基端側構造体30が破損する不具合が生じる可能性を大幅に低減できる。
【0048】
また、基端側構造体30は、リブ部32で強度を確保しつつ、リブ部32に囲まれて第2方向の内側にくぼむ凹部によって肉抜きされた射出成形品である。基端側構造体30に曲げが生じたときには、リブ部32に囲まれた凹部が撓みしろとなるため、基端側構造体30は曲げによる変形にも追従しやすい。
例えば、基端側構造体30の軸方向に配置される第1リブ35は円弧状であるため、曲げによる圧縮や引っ張りに対して軸方向に突っ張らずに荷重を逃がすように変位する。この点からも、基端側構造体30は曲げに対して破損しにくい。また、第2リブ36は、第1方向からの荷重に対して複数の第1リブ35に荷重を分散させて、基端側構造体30の強度を向上させることができる。
【0049】
また、基端側構造体30に凹部を設けることで、樹脂の使用量を抑制して製造コストを低減できるとともに、射出成形時に射出金型内で樹脂のヒケが生じにくくなり、基端側構造体30の寸法精度や歩留まりを向上させることもできる。また、リブ部32と凹部の凹凸によって基端側構造体30のグリップ性が高くなるため、本実施形態の基端側構造体30によれば、オペレータがカテーテル1を操作するときの操作性を向上できる。
【0050】
さらに、インナーチューブ20と基端側構造体30の接着を光硬化型樹脂(例えばUV硬化接着剤)で行う場合、基端側構造体30を肉抜きして凹部を設けることで、光硬化型樹脂を反応させる波長の光(例えば紫外線)が基端側構造体30を透過しやすくなる。これにより、光硬化型樹脂による接着をより短時間で行うことができ、基端側構造体30の生産性を向上させることができる。
【0051】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
【0052】
例えば、上記の実施形態において、基端側構造体30の第1方向からのグリップ性を向上させるために、外側円弧リブ35aの表面に溝や突起などの凹凸構造を適宜形成してもよい。
【0053】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0054】
なお、上記の実施形態の開示は以下の技術的思想を包含する。
(1)長尺の軸状部材と、前記軸状部材の基端側に取り付けられる基端側構造体と、を備え、前記基端側構造体は、長軸が前記軸状部材の軸方向に沿って配置される楕円体であるカテーテル。
(2)前記基端側構造体は、樹脂材料の射出成形品であり、前記軸方向と直交する断面上で第1方向に延び、前記軸方向および前記第1方向に延在する平面上で楕円形をなす板状基部と、前記板状基部から前記第1方向と直交する第2方向に沿ってそれぞれ立設され、前記平面上で間隔をあけて配置される複数のリブ部と、を有する上記(1)に記載のカテーテル。
(3)前記リブ部は、前記平面上で前記板状基部の前記第1方向に間隔をあけて形成され、それぞれ前記軸方向に沿って円弧状に延びる複数の第1リブと、前記第1方向に延び、隣り合う2つの前記第1リブを繋ぐ第2リブと、を含む上記(2)に記載のカテーテル。
(4)前記第1リブおよび前記第2リブは、前記板状基部の軸方向中心に対して線対称に配置される上記(3)に記載のカテーテル。
(5)前記基端側構造体は、前記板状基部の前記軸方向に開口され、前記軸状部材が挿入される軸穴と、前記板状基部の前記第2方向に開口されて前記軸穴に連通する接着剤注入穴と、をさらに有し、前記リブ部は、前記接着剤注入穴を囲むように配置される第3リブをさらに含む上記(3)または上記(4)に記載のカテーテル。
(6)前記第3リブの外周部には、複数の第1リブが接続され、前記第3リブの内周部では、前記第1リブが切り欠かれている上記(5)に記載のカテーテル。
(7)前記第2リブは、前記第3リブおよび前記接着剤注入穴から前記軸方向にずれた位置に配置されている上記(5)または上記(6)に記載のカテーテル。
(8)前記軸状部材と前記基端側構造体は、前記接着剤注入穴から前記軸穴に注入された光硬化型樹脂で接着される上記(5)から上記(7)のいずれか一項に記載のカテーテル。
(9)前記基端側構造体の基端側に取り付けられ、径方向に突出する一対の突出部を有するグリップ部材をさらに備え、前記グリップ部材は、前記リブ部の立設方向に対して前記突出部が直交方向に延びるように取り付けられる上記(2)から上記(8)のいずれか一項に記載のカテーテル。
【符号の説明】
【0055】
1…カテーテル、2…管状留置具、10…シース、20…インナーチューブ、30…基端側構造体、30a…ねじ部、31…板状基部、31a…管状部、32…リブ部、33…軸穴、34…接着剤注入穴、35…第1リブ、35a…外側円弧リブ、35b,35c…内側円弧リブ、35d…連絡リブ、36…第2リブ、37…第3リブ、40…グリップ部材、41…突出部

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