(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001811
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】端子金具
(51)【国際特許分類】
H01R 4/18 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
H01R4/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101513
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】郎 鵬飛
【テーマコード(参考)】
5E085
【Fターム(参考)】
5E085BB01
5E085BB12
5E085BB23
5E085CC03
5E085DD14
5E085FF01
5E085JJ35
(57)【要約】
【課題】端子金具を支障なく電線に圧着しつつ強度を向上させる。
【解決手段】端子金具10は、相手側端子に接続される端子接続部材20と、電線Wの端末に圧着される電線圧着部材30と、を備えている。端子接続部材20は、相手側端子に接続される接続部21と、電線圧着部材30につながる接続側つなぎ部22と、を有している。電線圧着部材30は、電線Wの端末に圧着される圧着部31と、接続側つなぎ部22につながる圧着側つなぎ部32と、を有している。接続側つなぎ部22と圧着側つなぎ部32は、重なった状態でつながる。接続側つなぎ部22と圧着側つなぎ部32とが重なり方向で離れないように固定する固定部23を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側端子に接続される端子接続部材と、
電線の端末に圧着される電線圧着部材と、
を備え、
前記端子接続部材は、
前記相手側端子に接続される接続部と、
前記電線圧着部材につながる接続側つなぎ部と、
を有し、
前記電線圧着部材は、
前記電線の端末に圧着される圧着部と、
前記接続側つなぎ部につながる圧着側つなぎ部と、
を有し、
前記接続側つなぎ部と前記圧着側つなぎ部は、重なった状態でつながり、
前記接続側つなぎ部と前記圧着側つなぎ部とが重なり方向で離れないように固定する固定部を備える端子金具。
【請求項2】
前記固定部は、前記接続側つなぎ部と前記圧着側つなぎ部とをカシメにより固定する請求項1に記載の端子金具。
【請求項3】
前記電線圧着部材は、前記圧着部及び前記圧着側つなぎ部を構成する板部を有し、
前記電線の端末は、前記板部の一面側に位置するように圧着され、
前記板部は、前記一面よりも他面側に凹む段差部を具備し、
前記固定部は、前記接続側つなぎ部において前記板部の前記他面側に配される部分から延出して、折り返し形状で前記段差部を板厚方向に挟む請求項2に記載の端子金具。
【請求項4】
前記板部は、板厚方向に貫通する孔を具備し、
前記段差部は、前記孔の縁部に設けられている請求項3に記載の端子金具。
【請求項5】
前記電線圧着部材は、前記圧着部及び前記圧着側つなぎ部が設けられる板部を有し、
前記電線の端末は、前記板部の一面側に圧着され、
前記電線圧着部材は、前記板部の他面から突出する突出部を有し、
前記固定部は、前記接続側つなぎ部から延出して、前記突出部に引っ掛かる請求項1に記載の端子金具。
【請求項6】
前記板部は、板厚方向に貫通する孔を具備し、
前記突出部は、前記板部の他面側で前記孔を跨ぐブリッジ状であり、
前記固定部は、前記突出部の内側に配された状態で前記突出部に引っ掛かる請求項5に記載の端子金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、端子金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コネクタ端子が開示されている。このコネクタ端子は、電気接触部と、ボックス部と、胴体圧着部と、被覆加締部と、を備えている。コネクタ端子において、前側から電気接触部、ボックス部、胴体圧着部、被覆加締部の順に並んでいる。電気接触部は、相手側コネクタ端子と接触導通する。胴体圧着部は、電線の導体に圧着される。被覆加締部は、電線の絶縁被覆の付いた部分に加締められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようなコネクタ端子では、電線に圧着される部分(胴体圧着部及び被覆加締部)と、相手側コネクタ端子に接続される部分(電気接触部及びボックス部)との間の部分(首部分)の強度が低くなり易い。
また、コネクタ端子の上記首部分の付近に強度を高めるための部材等を設けることが考えられる。しかしながら、首部分の付近は電線の圧着部分に近いため、別途設ける部材と電線とが干渉するおそれがある。
本開示の端子金具は、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、支障なく電線に圧着しつつ強度を向上できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の端子金具は、
相手側端子に接続される端子接続部材と、
電線の端末に圧着される電線圧着部材と、
を備え、
前記端子接続部材は、
前記相手側端子に接続される接続部と、
前記電線圧着部材につながる接続側つなぎ部と、
を有し、
前記電線圧着部材は、
前記電線の端末に圧着される圧着部と、
前記接続側つなぎ部につながる圧着側つなぎ部と、
を有し、
前記接続側つなぎ部と前記圧着側つなぎ部は、重なった状態でつながり、
前記接続側つなぎ部と前記圧着側つなぎ部とが重なり方向で離れないように固定する固定部を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、端子金具において支障なく電線に圧着しつつ強度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施例1の端子金具の右上方側から見た斜視図である。
【
図2】
図2は、端子金具の右下方側から見た斜視図である。
【
図3】
図3は、端子接続部材の左上方側から見た斜視図である。
【
図4】
図4は、電線圧着部材の左上方側から見た斜視図である。
【
図5】
図5は、端子金具の右側から見た側断面図である。
【
図8】
図8は、実施例2の端子金具の右上方側から見た斜視図である。
【
図9】
図9は、端子金具の右下方側から見た斜視図である。
【
図10】
図10は、端子接続部材の左上方側から見た斜視図である。
【
図11】
図11は、電線圧着部材の右下方側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
〔1〕相手側端子に接続される端子接続部材と、
電線の端末に圧着される電線圧着部材と、
を備え、
前記端子接続部材は、
前記相手側端子に接続される接続部と、
前記電線圧着部材につながる接続側つなぎ部と、
を有し、
前記電線圧着部材は、
前記電線の端末に圧着される圧着部と、
前記接続側つなぎ部につながる圧着側つなぎ部と、
を有し、
前記接続側つなぎ部と前記圧着側つなぎ部は、重なった状態でつながり、
前記接続側つなぎ部と前記圧着側つなぎ部とが重なり方向で離れないように固定する固定部を備える端子金具。
【0009】
上記〔1〕の構成によれば、端子金具において、接続側つなぎ部と圧着側つなぎ部とが重なり方向で離れないように固定する固定部を備えるため、つなぎ部分(接続側つなぎ部と圧着側つなぎ部とが重なった部分)の強度を高めることができる。その上で、圧着部とは異なる構成要素として固定部が設けられるため、圧着部による電線の端末の圧着に影響が及び難い。したがって、端子金具は、支障なく電線に圧着しつつ強度を向上できる。
【0010】
〔2〕前記固定部は、前記接続側つなぎ部と前記圧着側つなぎ部とをカシメにより固定する〔1〕に記載の端子金具。
【0011】
上記〔2〕の構成によれば、固定部のカシメによる固定によって、接続側つなぎ部と圧着側つなぎ部とを強固に固定できる。
【0012】
〔3〕前記電線圧着部材は、前記圧着部及び前記圧着側つなぎ部を構成する板部を有し、
前記電線の端末は、前記板部の一面側に位置するように圧着され、
前記板部は、前記一面よりも他面側に凹む段差部を具備し、
前記固定部は、前記接続側つなぎ部において前記板部の前記他面側に配される部分から延出して、折り返し形状で前記段差部を板厚方向に挟む〔2〕に記載の端子金具。
【0013】
上記〔3〕の構成によれば、接続側つなぎ部から延出する固定部が、電線圧着部材の板部の一面側よりも凹む段差部を挟む構成である。そのため、固定部が、板部の一面側に露出しにくい構成となる。これにより、電線圧着部に圧着されて板部の一面側に位置する電線の端末が、固定部に干渉しにくくなる。
【0014】
〔4〕前記板部は、板厚方向に貫通する孔を具備し、
前記段差部は、前記孔の縁部に設けられている〔3〕に記載の端子金具。
【0015】
上記〔4〕の構成によれば、固定部が挟む段差部が、電線圧着部材の板部を貫通する孔の縁部に設けられている。そのため、電線圧着部材の板部の外周縁より内側で固定部を固定することができ、電線圧着部材に対して端子接続部材をより強固に固定できる。
【0016】
〔5〕前記電線圧着部材は、前記圧着部及び前記圧着側つなぎ部が設けられる板部を有し、
前記電線の端末は、前記板部の一面側に圧着され、
前記電線圧着部材は、前記板部の他面から突出する突出部を有し、
前記固定部は、前記接続側つなぎ部から延出して、前記突出部に引っ掛かる〔1〕に記載の端子金具。
【0017】
上記〔5〕の構成によれば、固定部は、電線圧着部材の板部の一面とは異なる他面から突出する突出部に引っ掛かる構成である。そのため、電線圧着部材に圧着されて板部の一面側に位置する電線の端末が、固定部に干渉することを抑制できる。
【0018】
〔6〕前記板部は、板厚方向に貫通する孔を具備し、
前記突出部は、前記板部の他面側で前記孔を跨ぐブリッジ状であり、
前記固定部は、前記突出部の内側に配された状態で前記突出部に引っ掛かる〔5〕に記載の端子金具。
【0019】
上記〔6〕の構成によれば、固定部が電線圧着部材の板部の他面側で孔を跨ぐ構成であるため、固定部によって板部の孔付近を補強できる。その上で、固定部を突出部に引っ掛けて固定できる。
【0020】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施例1]
本開示を具体化した実施例1の端子金具を、
図1~
図7を参照して説明する。
図1は、本実施例1の端子金具10を示している。本実施例1において、前後の方向については、
図1におけるF方向を前方と定義する。前方は、端子金具10が相手側端子(図示略)に接続する方向である。上下の方向については、
図1におけるH方向を上方と定義する。左右の方向については、
図1におけるR方向を右方と定義する。
【0021】
(端子金具)
図1、
図2に示す端子金具10は、雌型端子であり、図示しない相手側端子(雄端子金具)に接続可能である。端子金具10は、相手側端子に接続される端子接続部材20と、電線W(
図5参照)の端末に圧着される電線圧着部材30と、を備えている。端子接続部材20と電線圧着部材30は、別体の部材である。端子金具10は、端子接続部材20と電線圧着部材30とを組み合わせて構成されている。
【0022】
(端子接続部材)
端子接続部材20は、導電性の金属板を打ち抜きや曲げ加工等して形成されている。端子接続部材20を構成する金属として、例えばステンレス鋼(SUS)が挙げられる。端子接続部材20は、
図3に示すように、相手側端子(図示略)に接続される接続部21と、電線圧着部材30につながる接続側つなぎ部22と、端子接続部材20と電線圧着部材30とを固定する固定部23と、を有している。端子接続部材20は、接続部21、接続側つなぎ部22、及び固定部23が一体となった単一部品である。
【0023】
接続部21は、
図3に示すように、前後方向に貫通する角筒状である。接続部21は、相手側端子の雄タブ(図示略)が挿入される。接続部21は、底壁41と、左壁42と、右壁43と、天壁44と、を有している。
【0024】
底壁41は、
図5に示すように、前後方向に細長い板形状である。底壁41には、弾性接触片41Aが形成されている。弾性接触片41Aは、接続部21内に収容されている。弾性接触片41Aは、接続部21に挿入された雄タブ(図示略)に接触する。弾性接触片41Aは、底壁41の前端から折り返し、後方へ片持ち状に延出している。
【0025】
左壁42は、
図3に示すように、底壁41の左縁から上方に立ち上がっている。左壁42の上部には、延出片42A,42B,42Cが形成されている。延出片42A,42B,42Cは、帯板状である。延出片42A,42B,42Cは、この順番で前方から後方に間隔を空けて並んでいる。延出片42A,42B,42Cは、右側に屈曲しており、天壁44の上面に接触している。
図5、
図7に示すように、左壁42における中心よりわずかに前方の位置に、内側に凸となる凸部42Dが形成されている。凸部42Dは、側面視で角が丸みを帯びた四角形状である。
【0026】
右壁43は、
図3に示すように、底壁41の右縁から上方に立ち上がっている。
図7に示すように、右壁43における中心よりわずかに前方の位置に、内側に凸となる凸部43Dが形成されている。凸部43Dは、側面視で角が丸みを帯びた四角形状である。
【0027】
天壁44は、
図3に示すように、右壁43の上縁から左方向へ延出している。
図3、
図5に示すように、天壁44において前端よりわずかに後方の位置に、下方に凸となる凸部44Aが形成されている。凸部44Aは、側面視で角が丸みを帯びた四角形状である。
【0028】
接続側つなぎ部22は、
図3に示すように、接続部21から後方へ延出している。接続側つなぎ部22は、接続側底壁45と、接続側左壁46と、接続側右壁47と、を有している。接続側底壁45は、底壁41と同じ幅で、底壁41から後方に延出している長方形状の板である。接続側左壁46は、接続側底壁45の左縁から上方に立ち上がっている。接続側左壁46は、左壁42よりも高さが低く、左壁42に連なっている。接続側右壁47は、接続側底壁45の右縁から上方に立ち上がっている。接続側右壁47は、右壁43よりも高さが低く、右壁43に連なっている。
【0029】
固定部23は、接続側つなぎ部22から後方に延出している。固定部23は、接続側底壁45の後縁の左右方向中央から一旦後方に延出し、前方に折り返す片持ち状の帯板である。すなわち、固定部23は、左右方向から見て後方に凸となるU字形状である。固定部23は、
図6に示すように、基端部51と、湾曲部52と、先端部53と、を具備している。基端部51は、接続側底壁45から後方に延出する部分である。湾曲部52は、基端部51に連なり、後方に凸となるように上方側に湾曲する部分である。先端部53は、湾曲部52に連なり、後方へ延出する部分である。先端部53の延出方向は、基端部51の延出方向と平行である。
【0030】
(電線圧着部材)
電線圧着部材30と、導電性の金属板を打ち抜きや曲げ加工等して形成されている。電線圧着部材30を構成する金属として、例えばアルミニウムが挙げられる。電線圧着部材30は、
図4に示すように、電線W(
図6参照)の端末に圧着される圧着部31と、接続側つなぎ部22につながる圧着側つなぎ部32と、箱部33と、を有している。電線圧着部材30は、圧着部31、圧着側つなぎ部32、及び箱部33が一体となった単一部品である。電線圧着部材30は、前後方向の全体に亘って延びる帯板状の板部34を有している。板部34は、圧着部31、圧着側つなぎ部32、及び箱部33を構成している。
【0031】
圧着部31は、基部61と、ワイヤバレル62と、インシュレーションバレル63と、を具備している。基部61は、板部34の後端側部分を構成している。基部61は、前後方向に亘って延びる帯板状である。ワイヤバレル62は、基部61の前端側の左右両側から立ち上がる一対のワイヤバレル片64を具備している。各ワイヤバレル片64は、前後方向に長い矩形板片状をなしている。各ワイヤバレル片64は、電線Wの端末を構成する芯線W1(
図5参照)を、基部61(板部34)の一面(上面)側に位置するように圧着する。各ワイヤバレル片64は、芯線W1に巻き付けられる。これにより、ワイヤバレル62は、芯線W1に圧着して電気的に接続される。例えば、各ワイヤバレル片64は、芯線W1の外周面に沿って変形させられ、左右中央部にて突き合わされる。なお、
図4等に示すように、ワイヤバレル62は、変形前、オープンバレル状に形成されている。
【0032】
インシュレーションバレル63は、基部61の後端側の左右両側から立ち上がる一対のインシュレーションバレル片65を具備している。インシュレーションバレル片65は、ワイヤバレル片64より立ち上げ寸法が大きい板片状をなしている。各インシュレーションバレル片65は、電線Wの絶縁被覆W2(
図5参照)の前端を、基部61(板部34)の一面(上面)側に位置するように圧着する。各インシュレーションバレル片65は、電線Wの絶縁被覆W2の前端に巻き付けられる。インシュレーションバレル63は、絶縁被覆W2に圧着して機械的に接続される。例えば、インシュレーションバレル片65は、絶縁被覆W2の外周面に沿って変形させられている。なお、
図4等に示すように、インシュレーションバレル63は、変形前、オープンバレル状に形成されている。
【0033】
圧着側つなぎ部32は、
図4に示すように、圧着部31から前方へ延出している。圧着側つなぎ部32は、圧着側底壁71と、圧着側左壁72と、圧着側右壁73と、を有している。圧着側底壁71は、板部34の中央側部分を構成している。圧着側底壁71は、基部61から前方に延出している帯板状である。圧着側左壁72は、圧着側底壁71の左縁から上方に立ち上がっている。圧着側右壁73は、圧着側底壁71の右縁から上方に立ち上がっている。
【0034】
板部34には、
図4,
図6に示すように、板厚方向に貫通する孔35が形成されている。孔35は、平面視で四角形状である。孔35は、板部34において左右方向の中央位置に形成されている。孔35は、圧着側底壁71の後端に形成されている。孔35の大部分は、圧着側底壁71に形成されている。孔35の一部は、基部61の前端に位置している。孔35の左右方向の幅は、固定部23の左右方向の幅よりもわずかに大きい。
【0035】
板部34には、
図4,
図6に示すように、段差部36が形成されている。段差部36は、孔35の前側の縁部に形成されている。具体的には、段差部36は、孔35の前側の縁部(左右に延びる縁部)において左右方向の全体に亘って形成されている。段差部36は、板部34の一面(上面)よりも他面(下面)側に凹んでいる。段差部36は、平面視で左右方向に長い長方形状である。
【0036】
箱部33は、
図4に示すように、圧着側つなぎ部32の前端側に連なっている。箱部33は、前後方向に貫通する角筒状である。箱部33は、端子接続部材20の接続部21内に挿入される。箱部33は、底壁81と、左壁82と、右壁83と、天壁84と、を有している。
【0037】
底壁81は、
図5に示すように、前後方向に細長い板形状である。左壁82は、
図4に示すように、底壁81の左縁から上方に立ち上がっている。左壁82の上部には、上方に突出する2つの凸部82Aが形成されている。2つの凸部82Aは、天壁84の左縁に接している。右壁83は、底壁81の右縁から上方に立ち上がっている。天壁84は、右壁83の上縁から左方向へ延出している。天壁84の左縁には、左方向に突出する3つの凸部84Aが形成されている。3つの凸部84Aは、左壁82の上縁に接している。3つの凸部84Aは、前後方向において、2つの凸部82Aと交互に並んでいる。
【0038】
箱部33の天壁84には、
図4に示すように、前方へ延出する延出板85が形成されている。延出板85は、前後方向に長い四角板状である。延出板85は、天壁84の前縁における左右方向の中央部分に連なっている。
【0039】
(端子接続部材と電線圧着部材の固定構造)
端子接続部材20と電線圧着部材30は、
図1、
図2、
図5に示すように、一体化されている。電線圧着部材30の箱部33は、
図5に示すように、端子接続部材20の接続部21内に挿入されている。箱部33の底壁81、左壁82、右壁83、及び天壁84は、接続部21の底壁41、左壁42、右壁43、及び天壁44にそれぞれ壁厚方向で内側から重なっている。
【0040】
箱部33の左壁82は、
図5、
図7に示すように、接続部21の左壁42の凸部42Dに後方から接触している。箱部33の右壁83は、
図7に示すように、接続部21の右壁43の凸部43Dに後方から接触している。このようにして、接続部21に対する箱部33の前方への移動が規制されている。
【0041】
箱部33の延出板85は、
図5に示すように、接続部21の天壁44の凸部44Aに後方から接触している。これにより、接続部21に対する箱部33の前方への移動が規制されている。
【0042】
図1、
図2、
図5に示すように、接続側つなぎ部22と圧着側つなぎ部32は、重なった状態でつながっている。具体的には、接続側底壁45、接続側左壁46、及び接続側右壁47は、圧着側底壁71、圧着側左壁72、及び圧着側右壁73にそれぞれ壁厚方向で外側から重なっている。固定部23は、接続側つなぎ部22と圧着側つなぎ部32とが重なり方向(上下方向)で離れないように固定する。
【0043】
固定部23は、
図6に示すように、接続側つなぎ部22と圧着側つなぎ部32とをカシメにより固定する。端子接続部材20の接続側底壁45は、電線圧着部材30の板部34の他面(下面)側に配されている。固定部23は、板部34の他面(下面)側において接続側底壁45から後方に延出して、折り返し形状で段差部36を板厚方向に挟んでいる。例えば、固定部23は、段差部36にカシメつける前に後方に直線状に延びた状態としておく。そして、例えば、箱部33を接続部21内に挿入する過程や、箱部33が接続部21内に挿入された後の状態において、固定部23を上方側に折り返して段差部36にカシメつける。また、
図3に示すように固定部23を予め折り返された状態としておき、端子接続部材20と電線圧着部材30の組み合わせ時に、板部34あるいは固定部23が弾性変形することで固定部23が段差部36にカシメつけられてもよい。
【0044】
固定部23は、
図6に示すように、孔35内に下方側から入り込んで、前方側に折り返されている。具体的には、基端部51は、段差部36に下方側から接している。湾曲部52は、孔35内の前端側に位置している。湾曲部52は、孔35の前側の縁部を後方側から覆っている。先端部53は、段差部36に上方側から接している。基端部51と先端部53とによって、孔35の段差部36を板厚方向(上下方向)に挟んでいる。
【0045】
固定部23は、
図6に示すように、前後方向に直交する方向において、圧着部31のワイヤバレル62(ワイヤバレル片64)と重なっていない。また、固定部23は、
図5に示すように、前後方向に直交する方向において、電線W(芯線W1)と重なっていない。
【0046】
(実施例1の主な効果)
従来の端子金具(相手側端子に接続される接続部分と電線に圧着される圧着部分が一体となった単一部品)では、接続部分と圧着部分との間の部分の強度が低かった。特に、端子金具が前後方向に対して曲げられたとき、接続部分と圧着部分との間に応力が集中してしまう。そこで、実施例1の端子金具10では、接続側つなぎ部22と圧着側つなぎ部32とが重なり方向で離れないように固定する固定部23を備えている。このため、つなぎ部分(接続側つなぎ部22と圧着側つなぎ部32とが重なった部分)の強度を高めることができる。その上で、圧着部31とは異なる構成要素として固定部23が設けられるため、圧着部31による電線Wの端末の圧着に影響が及び難い。例えば、固定部23が電線Wに干渉しにくくなる。したがって、端子金具10は、支障なく電線Wに圧着しつつ強度を向上できる。
【0047】
実施例1の端子金具10では、固定部23は、接続側つなぎ部22と圧着側つなぎ部32とをカシメにより固定する。この構成によれば、固定部23のカシメによる固定によって、接続側つなぎ部22と圧着側つなぎ部32とを強固に固定できる。
【0048】
実施例1の端子金具10では、電線圧着部材30は、圧着部31及び圧着側つなぎ部32を構成する板部34を有している。電線Wの端末は、板部34の一面側に位置するように圧着されている。板部34は、一面よりも他面側に凹む段差部36を具備している。固定部23は、接続側つなぎ部22において板部34の他面側に配される部分から延出して、折り返し形状で段差部36を板厚方向に挟む。この構成によれば、接続側つなぎ部22から延出する固定部23が、電線圧着部材30の板部34の一面側よりも凹む段差部36を挟む構成である。そのため、固定部23が、板部34の一面側に露出しにくい構成となる。これにより、電線圧着部材30に圧着されて板部34の一面側に位置する電線Wの端末が、固定部23に干渉しにくくなる。
【0049】
実施例1の端子金具10では、板部34は、板厚方向に貫通する孔35を具備している。段差部36は、孔35の縁部に設けられている。この構成によれば、固定部23が挟む段差部36が、電線圧着部材30の板部34を貫通する孔35の縁部に設けられている。そのため、電線圧着部材30の板部34の外周縁より内側で固定部23を固定することができ、電線圧着部材30に対して端子接続部材20をより強固に固定できる。
【0050】
[実施例2]
実施例2は、接続側つなぎ部と圧着側つなぎ部との固定構造が実施例1と異なっている。それ以外の構成は、実施例1と同じであり、実施例1と同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
【0051】
(端子金具)
実施例2の端子金具210を
図8に示す。端子金具210は、相手側端子に接続される端子接続部材220と、電線W(
図12参照)の端末に圧着される電線圧着部材230と、を備えている。端子接続部材220と電線圧着部材230は、別体の部材である。端子金具210は、端子接続部材20と電線圧着部材30とを組み合わせて構成されている。
【0052】
(端子接続部材)
端子接続部材220は、
図9に示すように、接続部21と、接続側つなぎ部22と、端子接続部材220と電線圧着部材230とを固定する固定部223と、を有している。端子接続部材220は、接続部21、接続側つなぎ部22、及び固定部223が一体となった単一部品である。
【0053】
接続側つなぎ部22の接続側左壁46には、
図9に示すように、カシメ部246Aが形成されている。カシメ部246Aは、
図12に示すように、圧着側つなぎ部32の圧着側左壁72にカシメつけられる。同様に、接続側つなぎ部22の接続側右壁47には、
図9に示すように、カシメ部247Aが形成されている。カシメ部247Aは、図示を省略するが、圧着側つなぎ部32の圧着側右壁73にカシメつけられる。
【0054】
固定部223は、
図9に示すように、接続側つなぎ部22から後方に延出している。固定部223は、接続側底壁45の後縁の左右方向中央から一旦後方に延出する帯板である。
【0055】
(電線圧着部材)
電線圧着部材230と、
図10、
図11に示すように、電線W(
図12参照)の端末に圧着される圧着部31と、接続側つなぎ部22につながる圧着側つなぎ部232と、箱部33と、を有している。電線圧着部材30は、圧着部31、圧着側つなぎ部232、及び箱部33が一体となった単一部品である。電線圧着部材230は、前後方向の全体に亘って延びる帯板状の板部34を有している。板部34は、圧着部31、圧着側つなぎ部232、及び箱部33を構成している。
【0056】
板部34には、孔235(
図10、
図13参照)と、突出部237(
図11参照)と、が形成されている。孔235及び突出部237は、例えば、板部34の一部(圧着側底壁71の中央部分)を下方に叩き出す加工や、切り起こす加工によって形成される。
【0057】
孔235は、
図10、
図13に示すように、板部34(圧着側底壁71)を板厚方向(壁厚方向)に貫通している。孔235は、平面視で四角形状である。孔235は、圧着側底壁71において左右方向の中央位置に形成されている。
【0058】
突出部237は、突出部237は、
図11に示すように、板部34の他面(下面)から下方に突出している。突出部237は、板部34の他面側(下面側)において孔235を左右方向で跨ぐブリッジ状である。突出部237は、突出底部237Aと、突出左部237Bと、突出右部237Cと、を具備している。突出底部237Aは、平面視で四角形状である。突出底部237Aの板面は、板部34の板面と平行である。突出底部237Aは、孔235と上下方向で重なっている。突出左部237Bは、孔235の左縁から下方に延出し、突出底部237Aの左縁に連なっている。突出右部237Cは、孔235の右縁から下方に延出し、突出底部237Aの右縁に連なっている。
【0059】
(端子接続部材と電線圧着部材の固定構造)
端子接続部材220と電線圧着部材230は、
図8、
図12に示すように、一体化されている。
【0060】
図13に示すように、固定部223が突出部237に引っ掛かることで、接続側つなぎ部22と圧着側つなぎ部232とが固定される。固定部223は、突出部237の内側を前後方向に貫通している。固定部223及び接続側底壁45は、突出部237の突出底部237Aと、板部34における孔235の前後の縁(前縁235A及び後縁235B)と、によって上下方向に挟まれている。具体的には、固定部223の後端側部分は、突出底部237Aによって上方に押さえ付けられている。固定部223の後端は、孔235の後縁235Bによって下方に押さえ付けられている。接続側底壁45は、孔235の前縁235Aによって下方に押さえ付けられている。
【0061】
固定部223と突出部237の引っ掛かり構造は、例えば、固定部223を突出部237の内側(突出底部237Aと前縁235A及び後縁235Bとの間)に圧入することで形成される。また、例えば、固定部223を突出部237の内側(突出底部237Aと前縁235A及び後縁235Bとの間)に挿入した後、突出部237を板部34側(上方側)に加圧変形させてもよい。
【0062】
図13に示すように、接続側底壁45の左後端部245A(
図9参照)が、突出部237の突出左部237Bに前方から接触することで、端子接続部材220が電線圧着部材230に対して後方への移動が規制される。同様に、図示は省略するが、接続側底壁45の右後端部245B(
図9参照)が、突出部237の突出右部237Cに前方から接触することで、端子接続部材220が電線圧着部材230に対して後方への移動が規制される。
【0063】
(実施例2の主な効果)
実施例2の端子金具210は、接続側つなぎ部22と圧着側つなぎ部232とが重なり方向で離れないように固定する固定部223を備える。このため、つなぎ部分(接続側つなぎ部22と圧着側つなぎ部232とが重なった部分)の強度を高めることができる。その上で、圧着部31とは異なる構成要素として固定部223が設けられるため、圧着部31による電線Wの端末の圧着に影響が及び難い。したがって、端子金具210は、支障なく電線Wに圧着しつつ強度を向上できる。
【0064】
実施例2の端子金具210では、電線圧着部材230は、圧着部31及び圧着側つなぎ部232が設けられる板部34を有している。電線Wの端末は、板部34の一面側に圧着されている。電線圧着部材230は、板部34の他面から突出する突出部237を有している。固定部223は、接続側つなぎ部22から延出して、突出部237に引っ掛かる。この構成によれば、固定部223は、電線圧着部材230の板部34の一面とは異なる他面から突出する突出部237に引っ掛かる構成である。そのため、電線圧着部材230に圧着されて板部34の一面側に位置する電線Wの端末が、固定部223に干渉することを抑制できる。
【0065】
実施例2の端子金具210では、板部34は、板厚方向に貫通する孔235を具備している。突出部237は、板部34の他面側で孔245を跨ぐブリッジ状である。固定部223は、突出部237の内側に配された状態で突出部237に引っ掛かる。この構成によれば、固定部223が電線圧着部材230の板部34の他面側で孔235を跨ぐ構成であるため、固定部223によって板部34の孔235付近を補強できる。その上で、固定部223を突出部237に引っ掛けて固定できる。
【0066】
[他の実施例]
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。本発明には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記の実施形態も含まれる。
【0067】
上記各実施例において、接続側つなぎ部の構成と圧着側つなぎ部の構成が入れ替わっていてもよい。例えば、実施例1において、接続側つなぎ部22に孔が設けられ、圧着側つなぎ部32に固定部が設けられていてもよい。また、実施例2において、接続側つなぎ部22に孔及び突出部が設けられ、圧着側つなぎ部232に固定部が設けられていてもよい。
【0068】
上記実施例1において、孔35の位置が圧着側底壁71の後端に設けられていたが、圧着側底壁71におけるその他の位置に設けられていてもよい。例えば、孔35は、圧着側底壁71の前後方向の中央部分や前端付近に設けられていてもよい。
【0069】
上記実施例2において、孔235及び突出部237の位置が圧着側底壁71における前後方向の中央側に設けられていたが、圧着側底壁71におけるその他の位置に設けられていてもよい。例えば、孔235及び突出部237は、圧着側底壁71の後端付近や、全端付近に設けられていてもよい。
【0070】
上記実施例2において、固定部223の先端(後端)が角取りされた形状(テーパ形状)であってもよい。また、孔235の後縁235Bの下側部分が角取りされた形状(傾斜形状)であってもよい。また、突出部237の突出底部237Aの上側部分が角取りされた形状(傾斜形状)であってもよい。
【0071】
上記各実施例において、端子金具が雌型端子として構成されていたが、雄型端子として構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0072】
10: 端子金具
20: 端子接続部材
21: 接続部
22: 接続側つなぎ部
23: 固定部
30: 電線圧着部材
31: 圧着部
32: 圧着側つなぎ部
33: 箱部
34: 板部
35: 孔
36: 段差部
41: 底壁
41A: 弾性接触片
42: 左壁
42A,42B,42C: 延出片
42D: 凸部
43: 右壁
43D: 凸部
44: 天壁
44A: 凸部
45: 接続側底壁
46: 接続側左壁
47: 接続側右壁
51: 基端部
52: 湾曲部
53: 先端部
61: 基部
62: ワイヤバレル
63: インシュレーションバレル
64: ワイヤバレル片
65: インシュレーションバレル片
71: 圧着側底壁
72: 圧着側左壁
73: 圧着側右壁
81: 底壁
82: 左壁
82A: 凸部
83: 右壁
84: 天壁
84A: 凸部
85: 延出板
210: 端子金具
220: 端子接続部材
223: 固定部
230: 電線圧着部材
232: 圧着側つなぎ部
235: 孔
235A: 前縁
235B: 後縁
237: 突出部
237A: 突出底部
237B: 突出左部
237C: 突出右部
245: 孔
245A: 左後端部
245B: 右後端部
246A: カシメ部
247A: カシメ部
W: 電線
W1: 芯線
W2: 絶縁被覆