(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018142
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】クリップの回転抑制部材
(51)【国際特許分類】
F16L 3/12 20060101AFI20250130BHJP
H02G 3/30 20060101ALI20250130BHJP
F16B 19/00 20060101ALI20250130BHJP
B60R 16/02 20060101ALN20250130BHJP
【FI】
F16L3/12 B
H02G3/30
F16B19/00 E
F16B19/00 Q
B60R16/02 623A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121614
(22)【出願日】2023-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】521537852
【氏名又は名称】ダイムラー トラック エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100176946
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 智恵
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣井 信行
【テーマコード(参考)】
3H023
3J036
5G363
【Fターム(参考)】
3H023AA04
3H023AB01
3H023AC02
3H023AD21
3H023AD54
3H023AE08
3H023AE09
3J036AA01
3J036BA01
3J036CA04
3J036DB04
5G363AA16
5G363BA02
5G363BA07
5G363DA13
5G363DA15
5G363DC02
(57)【要約】
【課題】クリップの回転を抑制することができるクリップの回転抑制部材を提供する。
【解決手段】アンカー部12の差し込み力を保持する保持部14を備えるクリップ1の回転抑制部材2であって、クリップ1のアンカー部12が貫通可能な貫通孔23、及び、貫通孔23の周囲に設けられ保持部14が嵌合可能な複数の溝24が設けられる土台部21と、土台部21の周囲から貫通孔23の中心軸CLに対し垂直方向に延びる複数の廻り止め部22と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンカー部の差し込み力を保持する保持部を備えるクリップの回転抑制部材であって、
前記クリップの前記アンカー部が貫通可能な貫通孔、及び、前記貫通孔の周囲に配置され前記保持部が嵌合可能な複数の溝が設けられる土台部と、
前記土台部の周囲から前記貫通孔の中心軸に対し垂直方向に延びる複数の廻り止め部と、を備える
クリップの回転抑制部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のハーネスなどの電線や配管などを固定するクリップの回転を抑制するクリップの回転抑制部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のハーネスなどの電線や配管など(以下、電線類とも記す)は、クリップを用いてシャシフレームや部品などに固定される。例えば、特許文献1には、鍔部(17)を備えたクリップ(10)が開示されている。
このクリップ(10)は、鍔部(17)が弾性変形することで、車体パネル(20)に押し当てられた状態となり、各羽根部(14)の係止段部(15)が係止穴21の周縁に係止される構成となっている。なお、ここでは、特許文献1の文献中に記載されている符号をカッコ書きで記している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電線類を配線・配策する際、クリップが回転し目論見通りに取り付けが出来ない場合がある。この場合、例えば電線類が垂れて取り付けられると、他部品と干渉して電線類または他部品が損傷する虞がある。
そのため、クリップの回転を抑制しつつ電線類の取付け作業を行うことになり、作業時間を要してしまうことがあった。
【0005】
例えば、特許文献1の鍔部(17)は、クリップ(10)を車体パネル(20)に押し当てるものの、この押し当て力ではクリップ(10)が回転することを抑制することはできない。
【0006】
本発明は、かかる課題を解決すべく創案されたもので、クリップの回転を抑制することができるクリップの回転抑制部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本件は上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現できる。
本適用例に係るクリップの回転抑制部材は、アンカー部の差し込み力を保持する保持部を備えるクリップの回転抑制部材であって、前記クリップの前記アンカー部が貫通可能な貫通孔、及び、前記貫通孔の周囲に配置され前記保持部が嵌合可能な複数の溝が設けられる土台部と、前記土台部の周囲から前記貫通孔の中心軸に対し垂直方向に延びる複数の廻り止め部と、を備える。
【0008】
本適用例によれば、クリップの取付時に、クリップのアンカー部を本回転抑制部材の土台部の貫通孔に貫通させるとともに、クリップの保持部を複数の溝の何れかに嵌合させることで、クリップに回転力が作用した場合に、クリップに作用する回転力は、クリップの保持部から、この保持部が嵌合した溝を介して本回転抑制部材に伝わる。本回転抑制部材は、複数の廻り止め部を備えるので、例えば、クリップの周囲の構造物や固定された部品に何れかの廻り止め部が当接し、当該構造物や当該部品の反力が本回転抑制部材に伝わる回転力に対抗して、本回転抑制部材の回転が抑制される。これにより、クリップの回転も抑制される。
【発明の効果】
【0009】
本件によれば、クリップの回転を抑制することができ、クリップを目論見通りに取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係るクリップの回転抑制部材を示す図であり、(a)はその正面図、(b)はその部分断面図(
図1(a)のA-A矢視断面の部分図)である。
【
図2】一実施形態に係るクリップを示す図であり、(a)はその挿通部の閉鎖時の正面図、(b)はその挿通部の開放時の正面図、(c)はその挿通部の閉鎖時の側面図(
図2(a)のB矢視図)、(D)はその挿通部の閉鎖時の上面図(
図2(a)のC矢視図)である。
【
図3】
図1に示すクリップの回転抑制部材の使用状態を示す図であり、(a)はその平面図、(b)はその断面図(
図3(a)のD-D矢視断面図)である。
【
図4】
図1に示すクリップの回転抑制部材の作用を説明する第1使用例の上面図であり、(a)はクリップ補助部材を使用しない場合の図、(b)はクリップ補助部材を使用した場合の図である。
【
図5】
図1に示すクリップの回転抑制部材の作用を説明する第2使用例の上面図であり、(a)はクリップ補助部材を使用しない場合の図、(b)はクリップ補助部材を使用した場合の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照して、本件の実施形態について説明する。この実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0012】
[1.装置構成]
(1.1.クリップの構造)
まず、
図2を参照して、本実施形態のかかるクリップ1を説明する。
クリップ1は、例えばポリプロピレン(PP)やポリアミド(PA)等の比較的柔軟で、強靭で強度,耐衝撃性,耐熱性に優れたプラスティックで形成されており、
図2(a)に示すように、車両のハーネスなどの電線や配管(電線類)を挿通する挿通部11と、車両の車体パネル3の取付穴30(
図3(b)参照)に差し込むアンカー部12と、アンカー部12の差し込み力を保持する保持部14とを備えている。以下、クリップ1が、
図2(a)に示すように、挿通部11を上にし、アンカー部12を下にした姿勢にあるものとして説明する。
【0013】
挿通部11は、リング状であり、下部が開放し頂部11aがやや薄く弾性変形し易くなっている。これにより、クリップ1は、
図2(b)に示すように挿通部11が開放した状態と、
図2(a)に示すように挿通部11が閉鎖した状態とをとりうる。
挿通部11の内側には、二本の把持アーム11bが突設されており、挿通部11の下部内周面11cと二本の把持アーム11bとで、挿通された電線類を把持する。
【0014】
アンカー部12は、
図2(b),(c)に示すように、半割れ構造であって、挿通部11の開放側の両下部からそれぞれ延設された第1半部12a及び第2半部12bが、挿通部11の閉鎖に伴って合体することにより、
図2(a),(c),(d)に示すように、ほぼ円柱状に形成される。
【0015】
アンカー部12の各半部12a,12bには、それぞれ、弾性変形により出没する係合突起13,13が形成されている。各係合突起13は、アンカー部12の先端(下端)側に向かってアンカー部12の軸心寄りに緩やかに傾斜した摺接面13aと、摺接面13aの上方(アンカー部12の先端側)に向かって急傾斜した係止面13bとを備えている。
【0016】
図3(b)に示すように、アンカー部12を車体パネル3の取付穴30に差し込むと、両係合突起13,13は、その摺接面13aを取付穴30の内周面30aに摺接させながら弾性変形して、アンカー部12の軸心寄りに没しつつ縮径しながら取付穴30内に貫入する。両係合突起13,13が貫入し終わると、係合突起13,13が弾性変形により復原して拡径する。これにより、係止面13bが取付穴30の内側壁面30bに当接し、アンカー部12が取付穴30に係止される。
【0017】
なお、アンカー部12の係合突起13,13以外の外径は、取付穴30の内径よりもやや小さく設定されている。また、係合突起13,13の外径は、自然の状態では取付穴30の内径よりも大きく、且つ、縮径すれば取付穴30の内径よりもやや小さくなるように設定されている。
【0018】
保持部14は、
図2(a),(b)に示すように、挿通部11とアンカー部12との間に、外側斜め下方へ向けて突設されたアーム状の部位であり、アーム部14aと、アーム部14aの尖端の当接端部14bを備え、対をなして設けられる。保持部14は、アンカー部12の両係合突起13,13が貫入し終わると、アーム部14aが弾性変形しながら、当接端部14bが取付穴30の外側壁面30cに当接するようになっている。
【0019】
(1.2.回転抑制部材の構造)
本実施形態に係る回転抑制部材2は、プレート状の部材であって、クリップ1と同様に、例えばポリプロピレン(PP)やポリアミド(PA)等の比較的柔軟で、強靭で強度,耐衝撃性,耐熱性に優れたプラスティックで形成されている。回転抑制部材2は、
図1(a)に示すように、正面視で正方形に形成された土台部21と、この土台部21の周囲から外方に突出した複数(ここでは、4個)の廻り止め部22と、を備えている。
【0020】
土台部21には、正面視で中心部分に、クリップ1のアンカー部12が貫通可能な貫通孔23が設けられ、この貫通孔23の周囲に配置され、クリップ1の保持部14の当接端部14bが嵌合可能な複数の溝24が設けられている。本実施形態では、溝24は、貫通孔23の周囲に方向45度ずつ変えて8本設けられており、正面視で米型に形成されている。また、溝24は、プレート状の回転抑制部材2の表裏を貫通するように形成されている。なお、貫通孔23の内径は、自然の状態の係合突起13,13の外径よりもやや大きく設定されてもよく、取付穴30と同程度に設定されてもよい。
【0021】
また、廻り止め部22は、貫通孔23の中心軸CLに対し垂直方向に延びており、本実施形態の廻り止め部22は、正面視で正方形の土台部21の各辺近傍を延長させた棒状或いは帯状に形成されている。したがって、廻り止め部22は、正方形の四辺に合わせて合計4本形成されている。各廻り止め部22の基部(本実施形態では、土台部21との境界部)の一方の面(
図1(a)中では、裏面)には、浅溝状のノッチ25が形成されており、
図1(b)に示すように、廻り止め部22を表面側もしくは裏面側に折り曲げることで、ノッチ25に沿って破断させることができ、不要な廻り止め部22を除去できるようになっている。
【0022】
[2.作用及び効果]
本実施形態に係るクリップの回転抑制部材2は、上述のように構成されるので、例えば、
図3~5に示すように使用することができる。
【0023】
つまり、クリップ1の取付時には、
図2(b)に示すような開放状態の挿通部11内に、電線類4(
図3参照)を挿通して、挿通部11を
図2(a),(c),(d)に示すように閉鎖し、アンカー部12の第1半部12a及び第2半部12bを合体する。次に、回転抑制部材2を車体パネル3の一面側から、取付穴30に対して貫通孔23の軸心が一致あるいは略一致するように配置する。そして、車体パネル3の一面側から、クリップ1のアンカー部12を貫通孔23及び取付穴30に差し込む。
【0024】
両係合突起13,13が貫通孔23及び取付穴30に貫入し終わると、係合突起13,13が弾性変形により復原して拡径する。これにより、係止面13bが取付穴30の内側壁面30bに当接し、アンカー部12が取付穴30に係止される。このとき、保持部14では、アーム部14aが弾性変形しながら、当接端部14bが取付穴30の外側壁面30cに当接する。これにより、係合突起13,13の係止面13bと保持部14の当接端部14bとで、取付穴30の周囲を把持するようになり、車体パネル3にクリップ1が固定される。
【0025】
この時、回転抑制部材2の複数の溝24の何れかに、各保持部14の当接端部14bが嵌合するように、クリップ1と回転抑制部材2とを相対配置する。また、クリップ1の挿通部11に挿通された電線類4を所定の方向へ向けたいが、電線類4に所定方向から逸脱するように外力が加わる場合、この逸脱方向への力に抗するように、取付穴30の近傍の構造物や固定された部品に何れかの廻り止め部22が当接するように配置する。
【0026】
例えば、
図4(a)に示すように、電線類4を一点鎖線で示す所定方向に向けたいが、電線類4にこれを阻止する方向(矢印R1参照)へ外力が加わる場合、
図4(b)に示すように、取付穴30の近傍に固定された部品51,52に、何れかの廻り止め部22が当接し、且つ、電線類4が一点鎖線で示す所定方向に向くように、クリップ1と回転抑制部材2とを相対配置する。
【0027】
これによって、部品51,52の反力(矢印R1´参照)で電線類4が所定方向から逸脱回転することを抑制でき、クリップ1及び電線類4を目論見通りに取り付けることができる。したがって、例えば電線類4が垂れて取り付けられて、他部品と干渉して電線類4または他部品が損傷するような虞が抑制される。
【0028】
また、
図5(a)に示すように、電線類4を一点鎖線で示す所定方向に向けたいが、電線類4にこれを阻止する方向(矢印R2参照)へ外力が加わる場合、
図5(b)に示すように、取付穴30の近傍に固定された構造物53に、何れかの廻り止め部22が当接し、且つ、電線類4が一点鎖線で示す所定方向に向くように、クリップ1と回転抑制部材2とを相対配置する。
【0029】
この場合、回転抑制部材2を表裏逆向きに使用し、まった、不要な或いは他部材と干渉する虞がある廻り止め部22は、ノッチ25に沿って破断させて除去している。
これによって、構造物53の反力(矢印R2´参照)で電線類4が所定方向から逸脱回転することを抑制でき、クリップ1及び電線類4を目論見通りに取り付けることができ、例えば電線類4が垂れて取り付けられて、他部品と干渉して電線類4または他部品が損傷する虞が抑制される。
【0030】
[3.その他]
上記の実施形態では、
図2に示すような形状のクリップ1を用いているが、クリップは、固定対象のパネルの取付穴に差し込むアンカー部と、アンカー部の差し込み力を保持する保持部を備えるものであればよく、形状は限定されない。
また、上記の実施形態では、回転抑制部材2は、土台部21も廻り止め部22も面一のプレート状に形成されるが、少なくとも、土台部21の貫通孔の周囲を除いて、プレート状に限定されるものではない。
【0031】
土台部の形状や、土台部に設けられた溝部の形状や数、廻り止め部の形状や数も、上記実施形態のものに限定されない。
また、クリップや回転抑制部材も、上記の実施形態のものに限定されない。これらは、それぞれ別の材料であってもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 クリップ
2 回転抑制部材
3 車体パネル
4 電線類
11 挿通部
12 アンカー部
11a 挿通部11の頂部
11b 把持アーム
11c 挿通部11の下部内周面
12 アンカー部
12a 第1半部
12b 第2半部
13 係合突起
13a 摺接面
13b 係止面
14 保持部
14a アーム部
14b 当接端部
21 土台部
22 廻り止め部
23 貫通孔
24 溝
25 ノッチ
30 取付穴
30a 取付穴30の内周面
30b 取付穴30の内側壁面
30c 取付穴30の外側壁面
51,52 部品
53 構造物
CL 貫通孔23の中心軸