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特開2025-18143濁水処理設備を用いた常圧浮上処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018143
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】濁水処理設備を用いた常圧浮上処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/52 20230101AFI20250130BHJP
【FI】
C02F1/52 B
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121615
(22)【出願日】2023-07-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】523284192
【氏名又は名称】小櫻 義▲隆▼
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小櫻 義▲隆▼
(72)【発明者】
【氏名】黒田 哲也
【テーマコード(参考)】
4D015
【Fターム(参考)】
4D015BA19
4D015BA21
4D015BA22
4D015BA28
4D015BB09
4D015BB14
4D015CA10
4D015DA04
4D015DB42
4D015DC07
4D015DC08
4D015EA07
4D015EA33
(57)【要約】
【課題】薬品を用いる常圧浮上処理方式を採用しているのでランニングコストはある程度必要とするが、薬品により気泡と固形物を電気化学的に吸着させ、清澄度の高い処理水が得られる。また、装置、設備をコンパクトな形状にすることで、トレーラー、トラックによる槽の分割輸送や、現地で容易に組み立て作業ができる。
【解決手段】原水(濁水)に薬剤を注入する急速撹拌機3と、薬剤が注入された原水を化学反応させる管形状の緩速撹拌機5と、原水をスカムと処理水とに分離する内筒602を、その下部は水槽601の底板603から離した状態で固定し、原水投入管605の噴出口605aを内筒602内に配置し、処理水を集水する集水口604aを有する排水管604とを設けた浮上処理装置6と、を備えた処理設備である。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
砕石場、建設工事現場、工場、農業・漁業関連施設、廃棄物処理事業の現場で生じる濁水について、スカムと清浄にした処理水に分離処理する濁水処理設備であって、
処理する原水(濁水)の水量を調節するために、一定量の原水を貯留する原水槽(1)と、
前記原水槽(1)の下流に配置された、原水に薬剤を注入する薬剤注入口(302)を開けた筒体(301)と、該筒体(301)内にクロスミキサー(303)を設けた急速撹拌機(3)と、
前記急速撹拌機(3)の下流に配置された、薬剤が注入された原水を低位置から高位置へ移動させながら化学反応させる管形状の緩速撹拌機(5)と、
前記緩速撹拌機(5)の下流に配置された、水槽(601)の内側に原水をスカムと処理水とに分離する内筒(602)を、その開口が上下方向に向くと共に、その下部は該水槽(601)の底板(603)から離した状態で固定し、原水投入管(605)の噴出口(605a)を該内筒(602)内に配置し、該水槽(601)と内筒(602)との間に、処理水を集水する集水口(604a)を有する排水管(604)とを設けた浮上処理装置(6)と、を備えた、ことを特徴とする濁水処理設備。
【請求項2】
前記急速撹拌機(3)は、前記筒体(301)の上流側に前記薬剤注入口(302)を、該薬剤注入口(302)に隣接する下流側に前記クロスミキサー(303)を設けた、ことを特徴とする請求項1に記載した濁水処理設備。
【請求項3】
前記緩速撹拌機(5)は、管材をらせん形状に複数回巻回し、該管材の下部位置にある一端を、前記原水槽(1)からの供給菅を連結し、下流になる該管材の上部位置にある他端を、前記浮上処理装置(6)の原水投入管(605)に連結した、ことを特徴とする請求項1に記載した濁水処理設備。
【請求項4】
前記浮上処理装置(6)は、前記水槽(601)を平面視で四角形状を有し、前記内筒(602)も平面視で四角形状を有し、
前記原水投入管(605)の噴出口(605a)を該水槽(601)の全高の約半分の高さ位置に配置した、ことを特徴とする請求項1に記載した濁水処理設備。
【請求項5】
前記浮上処理装置(6)における原水投入管(605)の噴出口(605a)に、原水をその噴出方向に対して直角方向に可変するじゃま板(606)を取り付けた、ことを特徴とする請求項1に記載した濁水処理設備。
【請求項6】
砕石場、建設工事現場、工場、農業・漁業関連施設、廃棄物処理事業の現場で生じる濁水について、処理する水量を調節する濁水(原水)を貯留する原水槽(1)と、原水に薬剤を注入する急速撹拌機(3)と、薬剤が注入された原水を化学反応させる緩速撹拌機(5)と、水槽(601)の内側に内筒(602)をその下部を水槽(601)の底板(603)から離した状態で配置した浮上処理装置(6)とを備えた濁水処理設備を用いた常圧浮上処理方法であって、
先ず、急速撹拌機(3)において原水に薬剤を添加し、その後緩速撹拌機(5)において原水と薬剤とを化学反応させ、
次に、薬剤と化学反応した原水を、前記浮上処理装置(6)の内筒(602)に噴射させ、この内筒(602)内においてスカムを浮上させ、そのまま掬い排出し、
内筒(602)内においてスカムを分離して清浄になった処理水を沈降させ、この処理水は内筒(602)の下部から内筒(602)と水槽(601)の間に上昇移動させて、溢流するように集水し、排出して処理を完了させる、ことを特徴とする濁水処理設備を用いた浮上処理方法。
【請求項7】
前記急速撹拌機(3)において、原水に複数の薬剤を添加する際に、2つのダイヤフラムを対向配置することで無脈動連続流できるスムーズフローポンプを用いて薬注する、ことを特徴とする請求項6に記載された濁水処理設備を用いた浮上処理方法。
【請求項8】
前記原水槽(1)からポンプで原水を輸送する量を決定する際に、現場において浮上ジャーテスト器(401)に原水と薬剤とを入れ、所定時間後にスカムの浮上時間を測定して、浮上処理装置(6)の容量から時間当たりの原水処理量を算出し、原水槽(1)のポンプ(7)の流量を決定し、原水を処理する、ことを特徴とする請求項6に記載された濁水処理設備を用いた浮上処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砕石場、建設工事現場、工場、農業・漁業関連施設、廃棄物処理事業等で生じる濁水を清浄に処理する技術に係り、特に濁水について常圧で浮上処理する濁水処理設備及びその処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地下水の高い建設工事ではほぼ例外なく濁水が排出される。排出される濁水については、水質汚濁防止法ならびに各都道府県が設ける条例が定める基準を遵守することが必要である。水質汚濁防止法や条例による濁水の規制により厳しく規制されている。
【0003】
従来では濁水等を処理する際に、浮上処理設備(装置)と、凝集沈降処理設備(装置)の2段階の処理設備(装置)を用いていた。浮上処理方法(装置)は、水より比重が軽い懸濁物質(油など)を水面に浮かせて分離する技術である。一般的に浮上処理方法(装置)は加圧浮上方式が主流である。この方式は効率や経済性に優れているために広く用いられている。
【0004】
浮上処理方法(装置)では、先ず、原水(濁水)を、原水槽に流入させて貯留する。原水(濁水)を均一にするために、原水調整槽に移す。なお、この原水調整槽は必須の設備(装置)ではない。
次に、薬品を投入してこの薬注した原水(濁水)を浮上分離槽に投入する。この浮上分離槽では、濁水中の浮遊物質に微細な気泡を付着させて浮遊物質の見かけの比重を小さくして浮遊物質は水面に浮かし、スカムとして排出する。
【0005】
図18は従来の浮上処理装置の一例を示す断面図である。図19は従来の浮上処理装置の一例を示す平面図である。図示する従来型の浮上処理装置901は原水流量Q=50m3/Hタイプの処理槽を示している。この浮上処理装置901は直方体の水槽902である。この水槽902の左半分に原水(濁水)を投入する投入管903をその噴出口904が上方に向くように、水槽902の上下方向の中間位置に配置した。水槽902の右半分に処理した水(処理水)を集水する排水管905を配置した。排水管905の集水口906が水槽902の上面位置に来るように水槽902に配置した。原水と処理後の処理水が混濁しないように、水槽902を右半分と左半分に仕切るように仕切板907が取り付けられている。この仕切板907は、投入管903と排水管905との間に配置される。仕切板907はその下部が水槽902の底板902aから離れているので、ここを処理水が移動するようになっている。
【0006】
この従来の浮上処理装置901では、投入管903の噴出口904から水面に向かって噴出される懸濁処理水は、スカムが上方に浮上し、スカムが分離した処理水は右半分の排水管905側に移動する。このとき浮上したスカムは仕切板907によって排水管905に集まらないようになっている。このスカムをすくい取り、濁水をスカムと処理水とに分離処理する。
【0007】
このように濁水を処理する技術は多数提案されている。例えば、特許文献1の特開2008-119563号「濁水処理装置」には、可搬式の架台に、原水槽と、緩速攪拌槽と、前記原水槽内の原水を、緩速攪拌槽へ送給する第1送給手段と、この第1送給手段の途中の凝集剤注入部に凝集剤を供給する凝集剤供給手段と、緩速攪拌槽内の処理水を、沈降分離槽その他に送給する第2送給手段とを設けた濁水処理装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008-119563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、図18の断面図と図19の平面図に示した従来の浮上処理装置901では、図18の断面図に示すように、投入管903の噴出口904から水面に向かって噴出される懸濁処理水は、スカムと処理水に分離される際に、スカムは水の流れに乗って水面全体に広がり、渦巻いたりするため、スカムの掻き寄せが困難になる。その結果、スカムの除去率が低下するという問題を有していた。
【0010】
また、浮上処理装置901は、例えば図18の断面図のように処理水の流速VLを一定にするため、水槽902の中央下部では開口高をh=1300mmとし、分離面積A(1.7m2=1300mm×1300mm)と同等の面積を確保している。これにより、浮上処理装置901の高さが増すばかりか、体積も大きくなるという問題を有している。
【0011】
原水流量Q=200m3/Hのような大型処理装置では、浮上処理装置901の体積が増し、輸送が困難になることがある。トレーラー、トラック輸送する場合には、槽の分割輸送や、現地での組み立て作業およびヤードの確保ができないという問題も有していた。
【0012】
従来の薬剤の注入方法では、貯留した原水に気泡を付着させるなどの薬剤を投入したあとに、均一に混ざらないことがあり、そのまま浮上分離処理をすると、処理水の清澄度が劣ったりすることがある。また、分離処理の処理速度をおそくする必要があり、処理時間が長くなるという問題を有していた。
【0013】
従来の薬剤注入量の決定方法は、浮上処理する際に用いる薬剤を、工事現場において濁水を採取し、現場で使用する浮上処理装置の使用条件により決定していた。適正な薬剤の注入量を決定しないと、気泡付着が不十分な場合が多く、処理水の清澄度が劣りやすいという問題を有していた。また、薬注量の調整が複雑な場合は処理流量を下げて運転するために、時間単位の処理量が低下するという問題を有していた。
【0014】
特許文献1に記載の「濁水処理装置」は、原水槽と、緩速攪拌槽と、沈降分離槽とこれらにそれぞれ送給手段が必要となり処理設置場所が広くなりやすいという問題を有していた。
【0015】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、薬品を用いる常圧浮上処理方式は、ランニングコストはある程度必要とするが、薬品により気泡と固形物を電気化学的に吸着させ、清澄度の高い処理水が得られる。また、装置、設備をコンパクトな形状にすることで、トレーラー、トラックによる槽の分割輸送や、現地での組み立て作業を容易に実施できる濁水処理設備及びその処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の濁水処理設備は、砕石場、建設工事現場、工場、農業・漁業関連施設、廃棄物処理事業等の現場で生じる濁水について、スカムと清浄にした処理水に分離処理する濁水処理設備であって、
処理する原水(濁水)の水量を調節するために、一定量の原水を貯留する原水槽(1)と、
前記原水槽(1)の下流に配置された、原水に薬剤を注入する薬剤注入口(302)を開けた筒体(301)と、該筒体(301)内にクロスミキサー(303)を設けた急速撹拌機(3)と、
前記急速撹拌機(3)の下流に配置された、薬剤が注入された原水を低位置から高位置へ移動させながら化学反応させる管形状の緩速撹拌機(5)と、
前記緩速撹拌機(5)の下流に配置された、水槽(601)の内側に原水をスカムと処理水とに分離する内筒(602)を、その開口が上下方向に向くと共に、その下部は該水槽(601)の底板(603)から離した状態で固定し、原水投入管(605)の噴出口(605a)を該内筒(602)内に配置し、該水槽(601)と内筒(602)との間に、処理水を集水する集水口(604a)を有する排水管(604)とを設けた浮上処理装置(6)と、を備えた、ことを特徴とする。
【0017】
前記急速撹拌機(3)は、前記筒体(301)の上流側に前記薬剤注入口(302)を、該薬剤注入口(302)に隣接する下流側に前記クロスミキサー(303)を設けたものである。
前記緩速撹拌機(5)は、管材をらせん形状に複数回巻回し、該管材の下部位置にある一端を、前記原水槽(1)からの供給菅を連結し、下流になる該管材の上部位置にある他端を、前記浮上処理装置(6)の原水投入管(605)に連結したものである。
【0018】
前記浮上処理装置(6)は、前記水槽(601)を平面視で四角形状を有し、前記内筒(602)も平面視で四角形状を有し、
前記原水投入管(605)の噴出口(605a)を該水槽(601)の全高の約半分の高さ位置に配置したものである。
前記浮上処理装置(6)における原水投入管(605)の噴出口(605a)に、原水をその噴出方向に対して直角方向に可変するじゃま板(606)を取り付けたものである。
【0019】
本発明の常圧浮上処理方法は、砕石場、建設工事現場、工場、農業・漁業関連施設、廃棄物処理事業等の現場で生じる濁水について、処理する水量を調節する濁水(原水)を貯留する原水槽(1)と、原水に薬剤を注入する急速撹拌機(3)と、薬剤が注入された原水を化学反応させる緩速撹拌機(5)と、水槽(601)の内側に内筒(602)をその下部を水槽(601)の底板(603)から離した状態で配置した浮上処理装置(6)とを備えた濁水処理設備を用いた常圧浮上処理方法であって、
先ず、急速撹拌機(3)において原水に薬剤を添加し、その後緩速撹拌機(5)において原水と薬剤とを化学反応させ、
次に、薬剤と化学反応した原水を、前記浮上処理装置(6)の内筒(602)に噴射させ、この内筒(602)内においてスカムを浮上させ、そのまま掬い排出し、
内筒(602)内においてスカムを分離して清浄になった処理水を沈降させ、この処理水は内筒(602)の下部から内筒(602)と水槽(601)の間に上昇移動させて、溢流するように集水し、排出して処理を完了させる、ことを特徴とする。
【0020】
前記急速撹拌機(3)において、原水に複数の薬剤を添加する際に、2つのダイヤフラムを対向配置することで無脈動連続流できるスムーズフローポンプを用いて薬注する、ことができる。
前記原水槽(1)からポンプで原水を輸送する量を決定する際に、現場において浮上ジャーテスト器(401)に原水と薬剤とを入れ、所定時間後にスカムの浮上時間を測定して、浮上処理装置(6)の容量から短時間当たりの原水処理量を算出し、原水槽(1)のポンプ(7)の流量を決定し、原水を処理する、ことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、装置、設備をコンパクトな形状にすることで、トレーラー、トラックによる装置の分割輸送や、現地での組み立て作業を容易に実施できる。特に、浮上処理装置(6)において、薬注された原水(濁水)は内筒(602)の中央部から上方へ放出され、じゃま板(606)によって減速された後、水面に到達する。このとき軽いフロックは水面に浮きスカムとなる。またスカムはじゃま板(606)の作用により、内筒(602)内の狭い範囲内かつ、水面の中央付近(円形状)に集められるので、掻き寄せが容易になり、スカムの除去効率が上がる。
薬品により気泡と固形物を電気化学的に吸着させ、常圧浮上処理方式による清澄度の高い処理水が得られる。
【0022】
スカムが分離された処理水は、内筒(602)の下部から水槽(601)側に沈降移動する。その後内筒(602)と水槽(601)の内壁の間に移動し、水面に設けられた集水口(604a)から排出される。このように浮上処理装置(6)の小型化は、輸送制限や現地作業の発生、広い敷地確保などの諸問題を解決できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の濁水処理設備の全体構成を示す正面図であり、一部縦断面図で表現している。
図2】本発明の濁水処理設備の全体構成を示す平面図である。
図3】本発明の濁水処理設備の各種機械を用いて水処理を実施する際のフロー図である。
図4】一般的な浮上処理装置内におけるスカムと処理水の移動速度を示す概略説明図である。
図5】浮上ジャーテスト器を示す概略正面図である。
図6】浮上ジャーテスト器による処理水とスカムの分離方法を示す概略説明図である。
図7】フロック浮上平均時間と濁度の計測データの試験結果を示すグラフである。
図8】通常の薬注混合パターンを示す概略説明図である。
図9】ダイヤフラムポンプにより配管内に薬注するパターンを示す概略説明図である。
図10】スムーズフローポンプにより薬注するパターンを示す概略説明図である。
図11】配管流速を利用した急速撹拌機を示す平面図である。
図12】急速撹拌機の内部状態を示す説明図である。
図13】原水(濁水)と薬剤との混合状態を示す説明図である。
図14】緩速薬注撹拌機を示し、(a)は正面図、(b)は平面図である。
図15】簡易組立て配管の一例を示し、(a)は直管、(b)はエルボ管(曲管)、(c)は連結状態の断面図、(d)、(e)、(f)は連結した状態の概略図である。
図16】本発明の濁水処理設備を構成する常圧浮上処理装置を示す断面図である。
図17】本発明の濁水処理設備を構成する常圧浮上処理装置を示す平面図である。
図18】従来の浮上処理装置の一例を示す断面図である。
図19】従来の浮上処理装置の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、砕石場、建設工事現場、工場、農業・漁業関連施設、廃棄物処理事業等の現場で生じる原水(濁水)について、特に水より比重が軽い懸濁物質(油など)を水面に浮かせて浮上処理をするコンパクトな水処理装置であり、主に浮上処理する濁水処理設備である。
【実施例0025】
<濁水処理装置の全体構成>
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の濁水処理設備の全体構成を示す正面図であり、一部縦断面図で表現している。図2は本発明の濁水処理設備の全体構成を示す平面図である。図3は本発明の濁水処理設備の各種機械を用いて水処理を実施する際のフロー図である。
本発明の濁水処理設備は、砕石場、建設工事現場、工場、農業・漁業関連施設、廃棄物処理事業等の現場にトレーラー、トラックで運搬し、現地で組み立てて濁水を清浄な水に処理する設備である。本発明の濁水処理設備は、主に原水を一定量確保するため原水槽1と、薬剤(薬品)を貯留する薬注タンク2と急速撹拌機3とから成る薬注機4を備える。この急速撹拌機3の下流には管内撹拌方式となる緩速撹拌機(反応管)5と、この緩速撹拌機(反応管)5の下流に浮上処理装置6を備える。浮上処理装置6において、処理水と分離したスカムについては、掻き寄せ機をこの装置の上部に設けて除去する(図示せず)。
【0026】
本発明の濁水処理設備に備える浮上処理装置6、原水槽1、薬注タンク2、急速撹拌機3、緩速撹拌機(反応管)5などの材質は、処理する濁水の腐食性などが高いかどうかで決められる。例えば鉄、鋼又はステンレス鋼のような鉄を主成分とした合金、その他の非鉄金属が用いられる。更には、ポリエチレン(PE)、繊維強化プラスチック(FRP)のような合成樹脂、コンクリートを用いることも可能である。
【0027】
スカムは、浮き汚泥と称され、原水(濁水)中の有機物が腐敗、発酵することにより発生するガスによって、濁水中の懸濁物質、繊維質、油脂質、細菌が浮上して、水表面にできるスポンジ質の厚い膜状の浮きかすである。処理装置の水面に浮いたもので、細かい粒子状のものから、30cmを超える大きな塊まで様々ある。
浮上処理装置6により清浄な処理水とする。処理水は、主に原水(濁水)からスカムを分離した処理水である。この処理水は、そのまま公共水域に放流する場合と、再度処理してから公共水域に放流する場合とがある。
【0028】
<原水槽>
原水槽1は、原水即ち砕石場、建設工事現場、工場、農業・漁業関連施設、廃棄物処理事業等の現場で発生する濁水を一時貯留する水槽である。浮上処理装置6へ供給する際に水量調整を行うための水槽である。ポンプ7を用いて下流の急速撹拌機3へ原水を輸送する。なお、本発明はトレーラー、トラックで、工事現場へ搬送できるように、その水槽の開口の1辺の長さは1.5m~2.0m程度以内に、水槽の高さは2.0m~2.5m程度以内が好ましい。
【0029】
<薬剤注入量の決定方法>
図4は一般的な浮上処理装置内におけるスカムと処理水の移動速度を示す概略説明図である。図5は浮上ジャーテスト器を示す概略正面図である。図6は浮上ジャーテスト器による処理水とスカムの分離方法を示す概略説明図である。
本発明の濁水処理設備に用いる浮上処理装置を常圧において運転する場合、その注薬量等を事前に把握する必要がある。この事前確認試験である「ジャーテスト」はメスシリンダーを用いて簡易的に行われている。従来のジャーテストでは、薬注量、フロックの浮上速度、処理時間、濁度などが計測されるが、これらの計測値は人によってバラツキがあり、正確な薬剤量が把握できていなかった。
【0030】
本発明の濁水処理設備において薬剤注入量を決定する際に、常圧浮上処理用ジャーテスト器(浮上ジャーテスト器)を用いて配合量を決定している。
図4の概略説明図に示すように浮上処理装置は、フロックが自ら浮上しようとする現象を応用して、水面上に浮いたフロックの塊(スカム)と水面下の処理水に分離する処理装置である。この処理装置において、処理水の下降平均速度をVL(一定)とした場合、フロックが浮上する条件は、式1の条件を満たす場合である。すなわち、VF>VLのときは、フロックはVF-VLの速度で水面上に浮上してスカムになる。一方、VF<VLのときは、フロックはVL-VFの速度で下降して処理水と共に放流される。濁水をスカムと処理水に分離する際にはこの条件を充足するように原水(濁水)の前処理が重要である。
【0031】
【数1】
【0032】
浮上ジャーテストは、浮上処理装置を稼働させる前に行う確認試験である。通常はメスシリンダーを用いて簡易的に行われる。この確認試験は、図5に示す浮上ジャーテスト器401を用いる。図6は浮上ジャーテスト器による処理水とスカムの分離法を示す概略説明図である。図6の右端に示す原理図は、原水と薬剤を投入して撹拌した後、台上に静置させたときのフロックの浮上状況を示した。フロック浮上速度VFをフロックが容器底面からバルブ402までの水深Hを一定速度(平均速度)で通過するとき、その浮上時間tcrfを用いて式2のように定義する。
【0033】
【数2】
【0034】
浮上ジャーテスト器401を用いて図6の浮上処理装置の状況を事前把握するには、式1の条件を満たす必要がある。式2を式1に代入すると、以下のような新しいフロック浮上平均時間の条件式である式3が得られる。
【0035】
【数3】
【0036】
フロック浮上平均時間tcrfは、浮上ジャーテスト器401と、浮上処理装置の寸法から計算できる。図6はtcrfを与えた場合に、フロックが上昇する状況を3パターンで示したものである。下記に3パターンを示す。
【0037】
(1)パターン1:VF<VL(=Q/AL)のとき、フロックはバルブ402の位置まで到達しない。
このパターンは、VLがVFより大きいので、浮上処理装置ではフロックは処理水として降下する。
(2)パターン2:VF=VL(=Q/AL)のとき、フロックはバルブ402の位置までに到達する。
(3)パターン3:VF>VL(=Q/AL)のとき、フロックはバルブ402の位置までを通過して上昇する。このパターンは、VFがVLより大きいので、浮上処理装置ではフロックはスカムとして浮上する。
以上により、浮上ジャーテスト器401を静置してtcrf経過後にバルブ402を閉めると、バルブ402より上がスカム、バルブ402の位置より下が処理水として分離することができる。
【0038】
<浮上ジャーテスト器の設計>
図5は浮上ジャーテスト器の一例を示す正面図である。
図示する浮上ジャーテスト器401に原水を500mL入れた位置(H=231mm)にバルブ402がある。この浮上ジャーテスト器401では原水注水目盛り403の位置まで原水を入れて試験を行う。
浮上ジャーテスト器401を用いて浮上ジャーテストに入る前準備として、現場で使用する浮上処理装置の使用条件を決める必要がある。表1は図4の設計流量が30m3/Hタイプの浮上処理装置の使用条件を示すものである。項目1、2は処理計画で予め分かる数値である。一方、項目3、4は備考で示しているような計算が必要である。特に項目4のフロック浮上平均時間の最大値tcrf(sec)の把握は、浮上ジャーテストを行う上で極めて重要な事項である。
【0039】
【表1】
【0040】
図7はフロック浮上平均時間と濁度の計測データの試験結果を示すグラフである。
今回は浮上ジャーテスト器(図5より一回り小さい既製のメスシリンダー)を用い、以下の条件で試験を行った。なお本テストでは浮上状況を確認するため、浮上時間を3段階に分けてデータを収集したものである。
(1)作り原水・・・原水濃度:濁度642度
(2)薬注量・・・・
ポリ塩化アルミニウムPAC:15ppm、
界面活性剤FA-3:2ppm、
カチオン系高分子凝集剤ZK:1ppm、
アニオン系高分子凝集剤ZA:2ppm
【0041】
図7は試験結果であり、フロック浮上平均時間と濁度の計測データである。フロック浮上平均時間は、原水と薬剤を攪拌した後、ジャーテスト器401を静置してからバルブを閉めるまでの経過時間である。また濁度(度)は、バルブ402を閉じたときの下層水(水深H=124mm)を取り出して計測した値である。
【0042】
図7の結果を基に、表1のフロック浮上時間の最大値tcrt=12秒を与えると、このときの処理水濁度は、図7に示すグラフにより14度(SS=14mg/L相当)となる。
【0043】
<高度処理する場合の方法>
目標濁度10度(SS=10mg/L相当)以下の高度処理を達成するためには2つの方法がある。
1つはtcrf=12秒のときに処理水濁度が目標濁度10度をクリアするまで薬注量を微調整する方法である。
他の方法は処理流量を下げて運転し目標濁度をクリアする方法である。すなわち、表1と図7の試験データで目標濁度10度以下を目指すには、tcrfが14秒くらい必要であると考えられる。tcrf=14秒に処理時間を延長した場合は、表1に示す内数値のように、処理可能な原水流量はQ=25m3/H以下になる。このように薬注量の調整が複雑な場合は、時間をかけてゆっくりと処理する方法も有効である。
【0044】
図5に示す浮上ジャーテスト器401の使用方法の注意点は次のとおりである。
(1)現場で使用する浮上処理装置の使用条件を決めること。
(2)処理水濁度がフロック浮上平均時間の最大値tcrfにおいて目標濁度をクリアできるような薬注量を決めること。
(3)薬注量の調整が複雑な場合は処理流量を下げて運転する方法(tcrfを延長させる)が有効になる場合がある。
【0045】
<薬剤の注入方法>
図8は通常の薬注混合パターンを示す概略説明図である。図9はダイヤフラムポンプにより配管内に薬注するパターンを示す概略説明図である。図10はスムーズフローポンプにより薬注するパターンを示す概略説明図である。
土木建築などの現場で採用されている薬液注入法としては、ダイヤフラムポンプにより配管内に薬注されるのが一般的である。ダイヤフラムポンプは薬液の吸入・吐出を1ストロークで繰り返すため、配管内の薬液の流れが脈動する。
【0046】
ダイヤフラムポンプ2台を用いて2種類の薬剤(A薬剤とB薬剤)を注入混合し、それらを撹拌する場合には、図8のような混合パターンが考えられる。この従来のダイヤフラムポンプ方式では次のような問題がある。
配管内の混合部分が少なくなる。図8で示す状態は、薬剤Aと薬剤Bのダイヤフラムポンプの同期が取れず、位相差が大きい例であり、2つの薬剤の混合部分(A+Bの斜線部分)が比較的少なくなる。
また2薬剤の注入制御が行われないので、ダイヤフラムポンプを動かす度に2薬剤の混合部分(A+Bの斜線部分)の割合が変化する。このため不安定な運転結果になり易かった。
【0047】
2種類の薬剤を混合処理する場合に次のような2つの方法が考えられる。
事前に2薬剤の混合液を薬注する方法がある。事前に2つの薬剤(A薬剤とB薬剤)を混合しておき、これを1台のダイヤフラムポンプで薬注する方法がある。これにより薬剤タンクやダイヤフラムポンプの節約が可能となる。ただし、ダイヤフラムポンプは図9のように吸入と吐出を繰り返すため、配管内の薬注部分は半分のみであり、それが撹拌される。換言すると管内の残り半分は無薬注のまま撹拌されることになり、この方法は混合むらが生じやすかった。
【0048】
次に、スムーズフローポンプによる連続薬注法がある。この連続薬注法は、スムーズフローポンプを用いた薬注方法である。このスムーズフローポンプは、2つのダイヤフラムを対向配置することで無脈動連続流が可能となった薬注ポンプである。これを用いると、図9の状態が図10の状態のように配管内で連続薬注することが可能となる。
また、図8で示した薬剤Aと薬剤Bをそれぞれスムーズフローポンプで薬注するとした場合も、各々連続薬注ができるため、AとBの混合部分が連続し、良好な混合結果が得られる。
【0049】
<急速撹拌機>
図11は配管流速を利用した急速撹拌機を示す平面図である。図12は急速撹拌機の内部状態を示す説明図である。図13は原水(濁水)と薬剤との混合状態を示す説明図である。
常圧浮上処理装置6では、原水を配管でこの処理槽へ送る前に薬注を実施しておく必要がある。薬注においては、配管内に薬剤を注入し、直ちに管内で撹拌する管内撹拌方式を採用することによって装置のコンパクト化を図っている。管内撹拌方式では、薬剤の種類によって急速撹拌する場合と緩速撹拌する場合がある。
【0050】
急速撹拌機3は、薬注タンク2と共に薬注機4を構成する。急速撹拌機3は、筒体301の上流側に薬剤注入口302が開けられ、この薬剤注入口302に隣接する下流側にクロスミキサー303が設けられたものである。図示例では薬剤注入口302を黒丸で表現している。この薬剤注入口302に薬注タンク2からの管が連結されている。またクロスミキサー303も筒体301内に数か所に取り付けられたものである。この急速撹拌機3は、濁水中の微粒子を電荷させて小さな固まりにするために行う。薬剤(薬液)としては、例えば、
ポリ塩化アルミニウム(PAC)、
界面活性剤(FA-3)、
カチオン系高分子凝集剤(ZK)、
アニオン系高分子凝集剤(ZA)などを用いる。
【0051】
これらの薬剤と空気は、薬注タンク2内のポンプによって急速撹拌機3内に連続注入され、直ちに流速によって高速回転するクロスミキサー303で急速撹拌される。なお、クロスミキサー303の代わりに、羽根車を用いて撹拌することも可能である。
また薬注する薬剤の種類、量、注入順序は、浮上ジャーテストで決めたものを採用する。この急速撹拌機3においては、薬剤と空気を連続注入したら直ちにクロスミキサー303で急速撹拌することが重要である。
【0052】
なお、図12に示す急速撹拌機3ではクロスミキサー303を5個用いた例を示しているが、この5個に限定されない。撹拌が不十分な場合はクロスミキサー303の数を多くする必要がある。
【0053】
この急速撹拌機3において、原水が配管内を通過するとき、薬注と急速撹拌による混合のメカニズムを表したのが図13である。例えば、最初はポリ塩化アルミニウム(PAC)から界面活性剤(FA-3)の順に薬注し、その都度クロスミキサー303で撹拌する。次に空気をエアーコンプレッサーで注入し撹拌する。引き続きカチオン系高分子凝集剤(ZK)からアニオン系高分子凝集剤(ZA)の順に注薬・撹拌を実施する。最後は全薬剤と空気が原水と完全に混合する。その後、次の緩速撹拌機5へ移動させる。
【0054】
ここで各薬剤がタイムリーに供給・撹拌される必要がある。そのためには各薬剤はスムーズフローポンプ等の無脈動型の薬注ポンプによって連続注入することが好ましい。また空気もエアーコンプレッサー(図示していない)で連続注入する必要がある。
【0055】
<緩速撹拌機(反応管)>
図14は緩速撹拌機(反応管)を示し、(a)は正面図、(b)は平面図である。
急速撹拌した後は、最後に注入したアニオン系高分子凝集剤(ZA)により、濁水中の微粒子の固まりは、さらに大きいフロックになる。フロックはFA-3や空気と混ざるので水面に向かって浮上する。
図示する撹拌機は管を数回に巻いた緩速撹拌機5の一例である。薬注された濁水はこの反応管の中で遠心力によってゆっくり混ぜられる。また薬注濁水が余分な空気等で乱れないように、図14(a)に示すように最下部の入口から注水し、最上部の出口で排出するような上向き傾斜配管構造としている。適切なフロックを形成するには、ある程度の反応時間が必要になる。図示例の緩速撹拌機5は、反応時間は反応管の長さで調整するようになっている。反応時間が長い場合は反応管の長さを長くし、反応時間が短い場合は反応管の長さを短くする。図14(a)の正面図に示す緩速撹拌機5では4巻回したものを示すが、これは一例であってこの4巻回しに限定されないことは勿論である。
【0056】
図15は簡易組立て配管の一例を示し、(a)は直管、(b)はエルボ管(曲管)、(c)は連結状態の断面図、(d)、(e)、(f)は連結した状態の概略図である。
緩速撹拌機(反応管)5には、コンパクトで、容易に運搬でき、現場で容易に組み立て易く、しかも汎用性を上げたユニット管を用いる。図15(a)は直管501のユニット管である。(b)はエルボ管(曲管)502のユニット管である。図15(c)に示すように、各ユニット管は両端にフランジ部503を有し、このフランジ部503同士を接合し、この部分を包み込むように挟持する連結具504を用いて連結するようになっている。この直管501とエルボ管(曲管)502を組合わせて(d)、(e)、(f)に示すようないろいろな形状の配管にする。
【0057】
<常圧浮上処理装置の構成>
図16は本発明の濁水処理設備を構成する常圧浮上処理装置を示す断面図である。図17は本発明の濁水処理設備を構成する常圧浮上処理装置を示す平面図である。
本発明の濁水処理設備を構成する常圧浮上処理装置(浮上処理装置)6は、直方体の水槽601の内部に四角形状の内筒602をその下端縁602aが水槽601の底板603から離れた状態で配置されたものである。内筒602の上端縁602bは水槽601の側板の上端縁602bと同じ高に配置した。
内筒602の上端縁602bは、後述する排水管604の集水口604aより高い位置に配置する必要がある。濁水から分離したスカムが処理水に混ざるおそれがあるからである。
【0058】
図示した常圧浮上処理装置6は、直方体の水槽601と四角形状の内筒602とを示している。これは運搬するトレーラー、トラックの車幅に収めて積載できる大きさ、容量を考慮したものである。この常圧浮上処理装置6は四角形状の形状に限定されない。円筒形、多角形状にすることができる。
【0059】
常圧浮上処理装置6は、原水(濁水)を投入する投入管605をその噴出口605aが平面視で内筒602の中央に位置するように配置した。この噴出口605aが上方に向くように、かつ水槽601の上下方向の中間位置に配置した。
【0060】
噴出口605aには、この噴出口605aから出る濁水の流路を噴出方向に対して直角方向に向けてじゃま板606を取り付けている。じゃま板606は、噴出される濁水の流速を極力下げ、スカムを噴出口605aの周辺に集めることによって、スカムと処理水とに分離しやすくする役目がある。
【0061】
図示例では、薄い逆円錐形状のじゃま板606を示しているが、逆に厚い逆円錐形状の板材のものでもよい。また、単なる円板を用いてもよい。円板に限定されず、六角形板、その他の多角形状の板材を用いることができる。
更に、じゃま板606は、内筒602に送られた濁水が上方に噴出することを防止すると共に、濁水が内筒602の「中央分離領域」内に集積される形状であればよい。例えば、球形状、「碁石」のような扁平楕円体、「そろばんの駒」のような扁平な紡錘形状等の部材をじゃま板606とすることが可能である。
【0062】
この水槽601には、清浄に処理した水(処理水)を排水管604から集水し、排出する。この集水管604は、水槽601の側壁と内筒602との間に、集水口604aが水槽601の上面位置に来るように常圧浮上処理装置6の上部位置に配置した。
【0063】
<常圧浮上処理装置の処理方法>
本発明の常圧浮上処理装置6では、投入管605の噴出口605aから上方に向けて噴出される懸濁処理水は、じゃま板606に当たり減速される。固形物であるスカムは、表面張力の作用で、物体(じゃま板606)に触れながら移動する性質を有する、そこで、じゃま板606に当たったスカムは、このじゃま板606の外形の形状に沿って移動する傾向にある。このスカムは、円形形状に浮上する。この浮上したスカムはそのまますくい取る。このとき浮上したスカムは、内筒602内に浮上する。このようにしてスカムと処理水とに分離される。
【0064】
薬注された原水Qは内筒602の中央部から上方へ放出され、じゃま板606によって減速された後、水面に到達する。このとき軽いフロックはVFの速度で水面に浮きスカムとなる。またスカムはじゃま板606の作用により水面の中央付近(円状)に集められるので、容易に掻き寄せることができる。このためスカムの除去効率が上がる。
【0065】
一方分離した処理水は、内筒602の周囲に移動する。広範囲に処理水が、内筒602の下端縁602aからその外周の水槽601内を移動する。この時内筒602の底面積に比して、水槽601の処理水を移動させる平面積が広いので、内筒602内の下部にある処理水の移動速度を遅くすることができる。その結果スカムとの分離する時間に余裕ができ、分離効率を高めることができる。
【0066】
その後、スカムが分離した処理水は排水管604の集水口604aに移動する。処理水は、内筒602の4辺から水槽601の内壁面と内筒602の隙間を通って上昇し、水面に設けられた排水管604の集水口604aによって排出させる。これによって開口高がh=330mmと低くできるので、水槽601の高さも体積も小さくなる。このように常圧浮上処理装置6の小型化は、輸送制限や現地作業の発生、広い敷地確保などの諸問題を解決できる。
【0067】
このように本発明の濁水処理設備を構成する常圧浮上処理装置6と、図18、19に示した従来タイプの浮上処理装置とを比較した結果を表2に示す。表2の(1)に示すように、従来タイプは面積が若干小さくなるが、体積が非常に大きくなり不経済である。一方、表2の(2)に示すように、本発明の常圧浮上処理装置6は、従来の処理装置と比べると面積はほぼ同等であるが、体積においては59%も縮小できているので、コンパクトになっている。トレーラー、トラックで運搬できる処理装置としては優れている。
【0068】
【表2】
【0069】
なお、本発明の濁水処理設備を構成する常圧浮上処理装置6は、薬品を用いる常圧浮上処理方式を採用しているのでランニングコストはある程度必要とするが、薬品により気泡と固形物を電気化学的に吸着させ、清澄度の高い処理水が得られる。また、装置、設備をコンパクトな形状にすることで、トレーラー、トラックによる槽の分割輸送や、現地での組み立て作業を容易に実施できる構成であれば、上述した発明の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の濁水処理設備及びその処理方法は、建設工事以外に工場や各種事業場等で生じる濁水を処理する際にも利用できる。
【符号の説明】
【0071】
1 原水槽
2 薬注タンク
3 急速撹拌機
301 筒体
302 薬剤注入口
303 クロスミキサー
4 薬注機
401 浮上ジャーテスト器
5 緩速撹拌機(反応管)
6 浮上処理装置(常圧浮上処理装置)
601 水槽
602 内筒
602a 内筒の下端縁
602b 内筒の上端縁
603 底板
604 排水管
604a 排水管の集水口
605 原水投入管
605a 原水投入管の噴出口
606 じゃま板

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【手続補正書】
【提出日】2023-09-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砕石場、建設工事現場、工場、農業・漁業関連施設、廃棄物処理事業等で生じる濁水を清浄に処理する技術に係り、特に濁水について常圧で浮上処理する濁水処理設備を用いた常圧浮上処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地下水の高い建設工事ではほぼ例外なく濁水が排出される。排出される濁水については、水質汚濁防止法ならびに各都道府県が設ける条例が定める基準を遵守することが必要である。水質汚濁防止法や条例による濁水の規制により厳しく規制されている。
【0003】
従来では濁水等を処理する際に、浮上処理設備(装置)と、凝集沈降処理設備(装置)の2段階の処理設備(装置)を用いていた。浮上処理方法(装置)は、水より比重が軽い懸濁物質(油など)を水面に浮かせて分離する技術である。一般的に浮上処理方法(装置)は加圧浮上方式が主流である。この方式は効率や経済性に優れているために広く用いられている。
【0004】
浮上処理方法(装置)では、先ず、原水(濁水)を、原水槽に流入させて貯留する。原水(濁水)を均一にするために、原水調整槽に移す。なお、この原水調整槽は必須の設備(装置)ではない。
次に、薬品を投入してこの薬注した原水(濁水)を浮上分離槽に投入する。この浮上分離槽では、濁水中の浮遊物質に微細な気泡を付着させて浮遊物質の見かけの比重を小さくして浮遊物質は水面に浮かし、スカムとして排出する。
【0005】
図18は従来の浮上処理装置の一例を示す断面図である。図19は従来の浮上処理装置の一例を示す平面図である。図示する従来型の浮上処理装置901は原水流量Q=50m3/Hタイプの処理槽を示している。この浮上処理装置901は直方体の水槽902である。この水槽902の左半分に原水(濁水)を投入する投入管903をその噴出口904が上方に向くように、水槽902の上下方向の中間位置に配置した。水槽902の右半分に処理した水(処理水)を集水する排水管905を配置した。排水管905の集水口906が水槽902の上面位置に来るように水槽902に配置した。原水と処理後の処理水が混濁しないように、水槽902を右半分と左半分に仕切るように仕切板907が取り付けられている。この仕切板907は、投入管903と排水管905との間に配置される。仕切板907はその下部が水槽902の底板902aから離れているので、ここを処理水が移動するようになっている。
【0006】
この従来の浮上処理装置901では、投入管903の噴出口904から水面に向かって噴出される懸濁処理水は、スカムが上方に浮上し、スカムが分離した処理水は右半分の排水管905側に移動する。このとき浮上したスカムは仕切板907によって排水管905に集まらないようになっている。このスカムをすくい取り、濁水をスカムと処理水とに分離処理する。
【0007】
このように濁水を処理する技術は多数提案されている。例えば、特許文献1の特開2008-119563号「濁水処理装置」には、可搬式の架台に、原水槽と、緩速攪拌槽と、前記原水槽内の原水を、緩速攪拌槽へ送給する第1送給手段と、この第1送給手段の途中の凝集剤注入部に凝集剤を供給する凝集剤供給手段と、緩速攪拌槽内の処理水を、沈降分離槽その他に送給する第2送給手段とを設けた濁水処理装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008-119563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、図18の断面図と図19の平面図に示した従来の浮上処理装置901では、図18の断面図に示すように、投入管903の噴出口904から水面に向かって噴出される懸濁処理水は、スカムと処理水に分離される際に、スカムは水の流れに乗って水面全体に広がり、渦巻いたりするため、スカムの掻き寄せが困難になる。その結果、スカムの除去率が低下するという問題を有していた。
【0010】
また、浮上処理装置901は、例えば図18の断面図のように処理水の流速VLを一定にするため、水槽902の中央下部では開口高をh=1300mmとし、分離面積A(1.7m2=1300mm×1300mm)と同等の面積を確保している。これにより、浮上処理装置901の高さが増すばかりか、体積も大きくなるという問題を有している。
【0011】
原水流量Q=200m3/Hのような大型処理装置では、浮上処理装置901の体積が増し、輸送が困難になることがある。トレーラー、トラック輸送する場合には、槽の分割輸送や、現地での組み立て作業およびヤードの確保ができないという問題も有していた。
【0012】
従来の薬剤の注入方法では、貯留した原水に気泡を付着させるなどの薬剤を投入したあとに、均一に混ざらないことがあり、そのまま浮上分離処理をすると、処理水の清澄度が劣ったりすることがある。また、分離処理の処理速度をおそくする必要があり、処理時間が長くなるという問題を有していた。
【0013】
従来の薬剤注入量の決定方法は、浮上処理する際に用いる薬剤を、工事現場において濁水を採取し、現場で使用する浮上処理装置の使用条件により決定していた。適正な薬剤の注入量を決定しないと、気泡付着が不十分な場合が多く、処理水の清澄度が劣りやすいという問題を有していた。また、薬注量の調整が複雑な場合は処理流量を下げて運転するために、時間単位の処理量が低下するという問題を有していた。
【0014】
特許文献1に記載の「濁水処理装置」は、原水槽と、緩速攪拌槽と、沈降分離槽とこれらにそれぞれ送給手段が必要となり処理設置場所が広くなりやすいという問題を有していた。
【0015】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、薬品を用いる常圧浮上処理方式は、ランニングコストはある程度必要とするが、薬品により気泡と固形物を電気化学的に吸着させ、清澄度の高い処理水が得られる。また、装置、設備をコンパクトな形状にすることで、トレーラー、トラックによる槽の分割輸送や、現地での組み立て作業を容易に実施できる濁水処理設備を用いた常圧浮上処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の常圧浮上処理方法は、砕石場、建設工事現場、工場、農業・漁業関連施設、廃棄物処理事業の現場で生じる濁水について、処理する水量を調節する濁水(原水)を貯留する原水槽(1)と、原水に薬剤を注入する急速撹拌機(3)と、薬剤が注入された原水を化学反応させる緩速撹拌機(5)と、水槽(601)の内側に内筒(602)をその下部を水槽(601)の底板(603)から離した状態で配置した浮上処理装置(6)とを備えた濁水処理設備を用いた常圧浮上処理方法であって、
先ず、前記原水槽(1)からポンプで原水を輸送する量を決定する際に、現場において浮上ジャーテスト器(401)に原水と薬剤とを入れ、所定時間後にスカムが浮上する時間を測定して、浮上処理装置(6)の容量から時間当たりの原水処理量と添加する薬剤量を算出し、原水槽(1)のポンプ(7)の流量を決定し、
急速撹拌機(3)において原水に、前記浮上ジャーテスト器(401)で決定された量の薬剤を添加し、その後緩速撹拌機(5)において原水と薬剤とを化学反応させ、
次に、薬剤と化学反応した原水を、前記浮上処理装置(6)の内筒(602)に噴射させ、この内筒(602)内においてスカムを浮上させ、そのまま掬い排出し、
内筒(602)内においてスカムを分離して清浄になった処理水を沈降させ、この処理水は内筒(602)の下部から内筒(602)と水槽(601)の間に上昇移動させて、溢流するように集水し、排出して処理を完了させる、ことを特徴とする。
【0017】
前記急速撹拌機(3)において、原水に複数の薬剤を添加する際に、2つのダイヤフラムを対向配置することで無脈動連続流できるポンプを用いて薬注する、ことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、装置、設備をコンパクトな形状にすることで、トレーラー、トラックによる装置の分割輸送や、現地での組み立て作業を容易に実施できる。特に、浮上処理装置(6)において、薬注された原水(濁水)は内筒(602)の中央部から上方へ放出され、じゃま板(606)によって減速された後、水面に到達する。このとき軽いフロックは水面に浮きスカムとなる。またスカムはじゃま板(606)の作用により、内筒(602)内の狭い範囲内かつ、水面の中央付近(円形状)に集められるので、掻き寄せが容易になり、スカムの除去効率が上がる。
薬品により気泡と固形物を電気化学的に吸着させ、常圧浮上処理方式による清澄度の高い処理水が得られる。
【0019】
スカムが分離された処理水は、内筒(602)の下部から水槽(601)側に沈降移動する。その後内筒(602)と水槽(601)の内壁の間に移動し、水面に設けられた集水口(604a)から排出される。このように浮上処理装置(6)の小型化は、輸送制限や現地作業の発生、広い敷地確保などの諸問題を解決できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の常圧浮上処理方法に用いる濁水処理設備の全体構成を示す正面図であり、一部縦断面図で表現している。
図2】本発明の常圧浮上処理方法に用いる濁水処理設備の全体構成を示す平面図である。
図3】本発明の常圧浮上処理方法に用いる濁水処理設備の各種機械を用いて水処理を実施する際のフロー図である。
図4】一般的な浮上処理装置内におけるスカムと処理水の移動速度を示す概略説明図である。
図5】浮上ジャーテスト器を示す概略正面図である。
図6】浮上ジャーテスト器による処理水とスカムの分離方法を示す概略説明図である。
図7】フロック浮上平均時間と濁度の計測データの試験結果を示すグラフである。
図8】通常の薬注混合パターンを示す概略説明図である。
図9】ダイヤフラムポンプにより配管内に薬注するパターンを示す概略説明図である。
図10】ポンプにより薬注するパターンを示す概略説明図である。
図11】配管流速を利用した急速撹拌機を示す平面図である。
図12】急速撹拌機の内部状態を示す説明図である。
図13】原水(濁水)と薬剤との混合状態を示す説明図である。
図14】緩速薬注撹拌機を示し、(a)は正面図、(b)は平面図である。
図15】簡易組立て配管の一例を示し、(a)は直管、(b)はエルボ管(曲管)、(c)は連結状態の断面図、(d)、(e)、(f)は連結した状態の概略図である。
図16】本発明の処理方法に用いる濁水処理設備を構成する常圧浮上処理装置を示す断面図である。
図17】本発明の処理方法に用いる濁水処理設備を構成する常圧浮上処理装置を示す平面図である。
図18】従来の浮上処理装置の一例を示す断面図である。
図19】従来の浮上処理装置の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、砕石場、建設工事現場、工場、農業・漁業関連施設、廃棄物処理事業等の現場で生じる原水(濁水)について、特に水より比重が軽い懸濁物質(油など)を水面に浮かせて浮上処理をするコンパクトな水処理装置であり、主に浮上処理する濁水処理設備を用いた常圧浮上処理方法である。
【実施例0022】
<濁水処理装置の全体構成>
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の常圧浮上処理方法に用いる濁水処理設備の全体構成を示す正面図であり、一部縦断面図で表現している。図2は本発明の常圧浮上処理方法に用いる濁水処理設備の全体構成を示す平面図である。図3は本発明の常圧浮上処理方法に用いる濁水処理設備の各種機械を用いて水処理を実施する際のフロー図である。
本発明の常圧浮上処理方法に用いる濁水処理設備は、砕石場、建設工事現場、工場、農業・漁業関連施設、廃棄物処理事業等の現場にトレーラー、トラックで運搬し、現地で組み立てて濁水を清浄な水に処理する設備である。本発明の常圧浮上処理方法に用いる濁水処理設備は、主に原水を一定量確保するため原水槽1と、薬剤(薬品)を貯留する薬注タンク(2)と急速撹拌機3とから成る薬注機4を備える。この急速撹拌機3の下流には管内撹拌方式となる緩速撹拌機(反応管)5と、この緩速撹拌機(反応管)5の下流に浮上処理装置6を備える。浮上処理装置6において、処理水と分離したスカムについては、掻き寄せ機をこの装置の上部に設けて除去する(図示せず)。
【0023】
本発明の処理方法に用いる濁水処理設備に備える浮上処理装置6、原水槽1、薬注タンク2、急速撹拌機3、緩速撹拌機(反応管)5などの材質は、処理する濁水の腐食性などが高いかどうかで決められる。例えば鉄、鋼又はステンレス鋼のような鉄を主成分とした合金、その他の非鉄金属が用いられる。更には、ポリエチレン(PE)、繊維強化プラスチック(FRP)のような合成樹脂、コンクリートを用いることも可能である。
【0024】
スカムは、浮き汚泥と称され、原水(濁水)中の有機物が腐敗、発酵することにより発生するガスによって、濁水中の懸濁物質、繊維質、油脂質、細菌が浮上して、水表面にできるスポンジ質の厚い膜状の浮きかすである。処理装置の水面に浮いたもので、細かい粒子状のものから、30cmを超える大きな塊まで様々ある。
浮上処理装置6により清浄な処理水とする。処理水は、主に原水(濁水)からスカムを分離した処理水である。この処理水は、そのまま公共水域に放流する場合と、再度処理してから公共水域に放流する場合とがある。
【0025】
<原水槽>
原水槽1は、原水即ち砕石場、建設工事現場、工場、農業・漁業関連施設、廃棄物処理事業等の現場で発生する濁水を一時貯留する水槽である。浮上処理装置6へ供給する際に水量調整を行うための水槽である。ポンプ7を用いて下流の急速撹拌機3へ原水を輸送する。なお、本発明はトレーラー、トラックで、工事現場へ搬送できるように、その水槽の開口の1辺の長さは1.5m~2.0m程度以内に、水槽の高さは2,0m~2.5m程度以内が好ましい。
【0026】
<薬剤注入量の決定方法>
図4は一般的な浮上処理装置内におけるスカムと処理水の移動速度を示す概略説明図である。図5は浮上ジャーテスト器を示す概略正面図である。図6は浮上ジャーテスト器による処理水とスカムの分離方法を示す概略説明図である。
濁水処理設備に用いる浮上処理装置を常圧において運転する場合、その注薬量等を事前に把握する必要がある。この事前確認試験である「ジャーテスト」はメスシリンダーを用いて簡易的に行われている。従来のジャーテストでは、薬注量、フロックの浮上速度、処理時間、濁度などが計測されるが、これらの計測値は人によってバラツキがあり、正確な薬剤量が把握できていなかった。
【0027】
濁水処理設備において薬剤注入量を決定する際に、常圧浮上処理用ジャーテスト器(浮上ジャーテスト器)を用いて配合量を決定している。
図4の概略説明図に示すように浮上処理装置は、フロックが自ら浮上しようとする現象を応用して、水面上に浮いたフロックの塊(スカム)と水面下の処理水に分離する処理装置である。この処理装置において、処理水の下降平均速度をVL(一定)とした場合、フロックが浮上する条件は、1の条件を満たす場合である。すなわち、VF>VLのときは、フロックはVF-VLの速度で水面上に浮上してスカムになる。一方、VF<VLのときは、フロックはVL-VFの速度で下降して処理水と共に放流される。濁水をスカムと処理水に分離する際にはこの条件を充足するように原水(濁水)の前処理が重要である。
【0028】
【数1】
【0029】
浮上ジャーテストは、浮上処理装置を稼働させる前に行う確認試験である。通常はメスシリンダーを用いて簡易的に行われる。この確認試験は、図5に示す浮上ジャーテスト器401を用いる。図6は浮上ジャーテスト器による処理水とスカムの分離法を示す概略説明図である。図6の右端に示す原理図は、原水と薬剤を投入して撹拌した後、台上に静置させたときのフロックの浮上状況を示した。フロック浮上速度VFをフロックが容器底面からバルブ402までの水深Hを一定速度(平均速度)で通過するとき、その浮上時間tcrfを用いて2のように定義する。
【0030】
【数2】
【0031】
浮上ジャーテスト器401を用いて図6の浮上処理装置の状況を事前把握するには、式1の条件を満たす必要がある。2を1に代入すると、以下のような新しいフロック浮上平均時間の条件式である3が得られる。
【0032】
【数3】
【0033】
フロック浮上平均時間tcrfは、浮上ジャーテスト器401と、浮上処理装置の寸法から計算できる。図6はtcrfを与えた場合に、フロックが上昇する状況を3パターンで示したものである。下記に3パターンを示す。
【0034】
(1)パターン1:VF<VL(=Q/AL)のとき、フロックはバルブ402の位置まで到達しない。
このパターンは、VLがVFより大きいので、浮上処理装置ではフロックは処理水として降下する。
(2)パターン2:VF=VL(=Q/AL)のとき、フロックはバルブ402の位置までに到達する。
(3)パターン3:VF>VL(=Q/AL)のとき、フロックはバルブ402の位置までを通過して上昇する。このパターンは、VFがVLより大きいので、浮上処理装置ではフロックはスカムとして浮上する。
以上により、浮上ジャーテスト器401を静置してtcrf経過後にバルブ402を閉めると、バルブ402より上がスカム、バルブ402の位置より下が処理水として分離することができる。
【0035】
<浮上ジャーテスト器の設計>
図5は浮上ジャーテスト器の一例を示す正面図である。
図示する浮上ジャーテスト器401に原水を500mL入れた位置(H=231mm)にバルブ402がある。この浮上ジャーテスト器401では原水注水目盛り403の位置まで原水を入れて試験を行う。
浮上ジャーテスト器401を用いて浮上ジャーテストに入る前準備として、現場で使用する浮上処理装置の使用条件を決る必要がある。表1は図4の設計流量が30m3/Hタイプの浮上処理装置の使用条件を示すものである。項目1,2は処理計画で予め分かる数値である。一方、項目3、4は備考で示しているような計算が必要である。特に項目4のフロック浮上平均時間の最大値tcrf(sec)の把握は、浮上ジャーテストを行う上で極めて重要な事項である。
【0036】
【表1】
【0037】
図7はフロック浮上平均時間と濁度の計測データの試験結果を示すグラフである。
今回は浮上ジャーテスト器(図5より一回り小さい既製のメスシリンダー)を用い、以下の条件で試験を行った。なお本テストでは浮上状況を確認するため、浮上時間を3段階に分けてデータを収集したものである。
(1)作り原水・・・原水濃度:濁度642度
(2)薬注量・・・・
ポリ塩化アルミニウムPAC:15ppm、
界面活性剤FA-3:2ppm、
カチオン系高分子凝集剤ZK:1ppm、
アニオン系高分子凝集剤ZA:2ppm
【0038】
図7は試験結果であり、フロック浮上平均時間と濁度の計測データである。フロック浮上平均時間は、原水と薬剤を攪拌した後、ジャーテスト器401を静置してからバルブを閉めるまでの経過時間である。また濁度(度)は、バルブ402を閉じたときの下層水(水深H=124mm)を取り出して計測した値である。
【0039】
図7の結果を基に、表1のフロック浮上時間の最大値tcrt=12秒を与えると、このときの処理水濁度は、図7に示すグラフにより14度(SS=14mg/L相当)となる。
【0040】
<高度処理する場合の方法>
目標濁度10度(SS=10mg/L相当)以下の高度処理を達成するためには2つの方法がある。
1つはtcrf=12秒のときに処理水濁度が目標濁度10度をクリアするまで薬注量を微調整する方法である。
他の方法は処理流量を下げて運転し目標濁度をクリアする方法である。すなわち、表2と図7の試験データで目標濁度10度以下を目指すには、tcrfが14秒くらい必要であると考えられる。tcrf=14秒に処理時間を延長した場合は、表1に示す内数値のように、処理可能な原水流量はQ=25m3/H以下になる。このように薬注量の調整が複雑な場合は、時間をかけてゆっくりと処理する方法も有効である。
【0041】
図5に示す浮上ジャーテスト器401の使用方法の注意点は次のとおりである。
(1)現場で使用する浮上処理装置の使用条件を決めること。
(2)処理水濁度がフロック浮上平均時間の最大値tcrfにおいて目標濁度をクリアできるような薬注量を決めること。
(3)薬注量の調整が複雑な場合は処理流量を下げて運転する方法(tcrfを延長させる)が有効になる場合がある。
【0042】
<薬剤の注入方法>
図8は通常の薬注混合パターンを示す概略説明図である。図9はダイヤフラムポンプにより配管内に薬注するパターンを示す概略説明図である。図10はポンプにより薬注するパターンを示す概略説明図である。
土木建築などの現場で採用されている薬液注入法としては、ダイヤフラムポンプにより配管内に薬注されるのが一般的である。ダイヤフラムポンプは薬液の吸入・吐出を1ストロークで繰り返すため、配管内の薬液の流れが脈動する。
【0043】
ダイヤフラムポンプ2台を用いて2種類の薬剤(A薬剤とB薬剤)を注入混合し、それらを撹拌する場合には、図8のような混合パターンが考えられる。この従来のダイヤフラムポンプ方式では次のような問題がある。
配管内の混合部分が少なくなる。図8で示す状態は、薬剤Aと薬剤Bのダイヤフラムポンプの同期が取れず、位相差が大きい例であり、2つの薬剤の混合部分(A+Bの斜線部分)が比較的少なくなる。
また2薬剤の注入制御が行われないので、ダイヤフラムポンプを動かす度に2薬剤の混合部分(A+Bの斜線部分)の割合が変化する。このため不安定な運転結果になり易かった。
【0044】
2種類の薬剤を混合処理する場合に次のような2つの方法が考えられる。
事前に2薬剤の混合液を薬注する方法がある。事前に2つの薬剤(A薬剤とB薬剤)を混合しておき、これを1台のダイヤフラムポンプで薬注する方法がある。これにより薬剤タンクやダイヤフラムポンプの節約が可能となる。ただし、ダイヤフラムポンプは図9のように吸入と吐出を繰り返すため、配管内の薬注部分は半分のみであり、それが撹拌される。換言すると管内の残り半分は無薬注のまま撹拌されることになり、この方法は混合むらが生じやすかった。
【0045】
次に、ポンプによる連続薬注法がある。このポンプは、2つのダイヤフラムを対向配置することで無脈動連続流が可能となった薬注ポンプである。これを用いると、図9の状態が図10の状態のように配管内で連続薬注することが可能となる。
また、図8で示した薬剤Aと薬剤Bをそれぞれポンプで薬注するとした場合も、各々連続薬注ができるため、AとBの混合部分が連続し、良好な混合結果が得られる。
【0046】
<急速撹拌機>
図11は配管流速を利用した急速撹拌機を示す平面図である。図12は急速撹拌機の内部状態を示す説明図である。図13は原水(濁水)と薬剤との混合状態を示す説明図である。
常圧浮上処理装置6では、原水を配管でこの処理槽へ送る前に薬注を実施しておく必要がある。薬注においては、配管内に薬剤を注入し、直ちに管内で撹拌する管内撹拌方式を採用することによって装置のコンパクト化を図っている。管内撹拌方式では、薬剤の種類によって急速撹拌する場合と緩速撹拌する場合がある。
【0047】
急速撹拌機3は、薬注タンク2と共に薬注機4を構成する。急速撹拌機3は、筒体301の上流側に薬剤注入口302が開けられ、この薬剤注入口302に隣接する下流側にミキサー303が設けられたものである。図示例では薬剤注入口302を黒丸で表現している。この薬剤注入口302に薬注タンク2からの管が連結されている。またミキサー303も筒体301内に数か所に取り付けられたものである。この急速撹拌機3は、濁水中の微粒子を電荷させて小さな固まりにするために行う。薬剤(薬液)としては、例えば、
ポリ塩化アルミニウム(PAC)、
界面活性剤(FA-3)、
カチオン系高分子凝集剤(ZK)、
アニオン系高分子凝集剤(ZA)などを用いる。
【0048】
これらの薬剤と空気は、薬注タンク2内のポンプによって急速撹拌機3内に連続注入され、直ちに流速によって高速回転するミキサー303で急速撹拌される。なお、ミキサー303の代わりに、羽根車を用いて撹拌することも可能である。
また薬注する薬剤の種類、量、注入順序は、浮上ジャーテストで決めたものを採用する。この急速撹拌機3においては、薬剤と空気を連続注入したら直ちにミキサー303で急速撹拌することが重要である。
【0049】
なお、図12に示す急速撹拌機3ではミキサー303を5個用いた例を示しているが、この5個に限定されない。撹拌が不十分な場合はミキサー303の数を多くする必要がある。
【0050】
この急速撹拌機3において、原水が配管内を通過するとき、薬注と急速撹拌による混合のメカニズムを表したのが図13である。例えば、最初はポリ塩化アルミニウム(PAC)から界面活性剤(FA-3)の順に薬注し、その都度ミキサー303で撹拌する。次に空気をエアーコンプレッサーで注入し撹拌する。引き続きカチオン系高分子凝集剤(ZK)からアニオン系高分子凝集剤(ZA)の順に注薬・撹拌を実施する。最後は全薬剤と空気が原水と完全に混合する。その後、次の緩速撹拌機5へ移動させる。
【0051】
ここで各薬剤がタイムリーに供給・撹拌される必要がある。そのためには各薬剤は無脈動型の薬注ポンプによって連続注入することが好ましい。また空気もエアーコンプレッサー(図示していない)で連続注入する必要がある。
【0052】
<緩速撹拌機(反応管)>
図14は緩速撹拌機(反応管)を示し、(a)は正面図、(b)は平面図である。
急速撹拌した後は、最後に注入したアニオン系高分子凝集剤(ZA)により、濁水中の微粒子の固まりは、さらに大きいフロックになる。フロックはFA-3や空気と混ざるので水面に向かって浮上する。
図示する撹拌機は管を数回に巻いた緩速撹拌機5の一例である。薬注された濁水はこの反応管の中で遠心力によってゆっくり混ぜられる。また薬注濁水が余分な空気等で乱れないように、図14(a)に示すように最下部の入口から注水し、最上部の出口で排出するような上向き傾斜配管構造としている。適切なフロックを形成するには、ある程度の反応時間が必要になる。図示例の緩速撹拌機5は、反応時間は反応管の長さで調整するようになっている。反応時間が長い場合は反応管の長さを長くし、反応時間が短い場合は反応管の長さを短くする。図14(a)の正面図に示す緩速撹拌機5では4巻回したものを示すが、これは一例であってこの4巻回しに限定されないことは勿論である。
【0053】
図15は簡易組立て配管の一例を示し、(a)は直管、(b)はエルボ管(曲管)、(c)は連結状態の断面図、(d)、(e)、(f)は連結した状態の概略図である。
緩速撹拌機(反応管)5には、コンパクトで、容易に運搬でき、現場で容易に組み立て易く、しかも汎用性を上げたユニット管を用いる。図15(a)は直管501のユニット管である。(b)はエルボ管(曲管)502のユニット管である。図15(c)に示すように、各ユニット管は両端にフランジ部503を有し、このフランジ部503同士を接合し、この部分を包み込むように挟持する連結具504を用いて連結するようになっている。この直管501とエルボ管(曲管)502を組合わせて(d)、(e)、(f)に示すようないろいろな形状の配管にする。
【0054】
<常圧浮上処理装置の構成>
図16は本発明の処理方法に用いる濁水処理設備を構成する常圧浮上処理装置を示す断面図である。図17は本発明の濁水処理設備を構成する常圧浮上処理装置を示す平面図である。
本発明の処理方法に用いる濁水処理設備を構成する常圧浮上処理装置(浮上処理装置)6は、直方体の水槽601の内部に四角形状の内筒602をその下端縁602aが水槽601の底板603から離れた状態で配置されたものである。内筒602の上端縁602bは水槽601の側板の上端縁602bと同じ高に配置した。
内筒602の上端縁602bは、後述する排水管604の集水口604aより高い位置に配置する必要がある。濁水から分離したスカムが処理水に混ざるおそれがあるからである。
【0055】
図示した常圧浮上処理装置6は、直方体の水槽601と四角形状の内筒602とを示している。これは運搬するトレーラー、トラックの車幅に収めて積載できる大きさ、容量を考慮したものである。この常圧浮上処理装置6は四角形状の形状に限定されない。円筒形、多角形状にすることができる。
【0056】
常圧浮上処理装置6は、原水(濁水)を投入する投入管605をその噴出口605aが平面視で内筒602の中央に位置するように配置した。この噴出口605aが上方に向くように、かつ水槽601の上下方向の中間位置に配置した。
【0057】
噴出口605aには、この噴出口605aから出る濁水の流路を噴出方向に対して直角方向に向けてじゃま板606を取り付けている。じゃま板606は、噴出される濁水の流速を極力下げ、スカムを噴出口605aの周辺に集めることによって、スカムと処理水とに分離しやすくする役目がある。
【0058】
図示例では、薄い逆円錐形状のじゃま板606を示しているが、逆に厚い逆円錐形状の板材のものでもよい。また、単なる円板を用いてもよい。円板に限定されず、六角形板、その他の多角形状の板材を用いることができる。
更に、じゃま板606は、内筒602に送られた濁水が上方に噴出することを防止すると共に、濁水が内筒602の「中央分離領域」内に集積される形状であればよい。例えば、球形状、「碁石」のような扁平楕円体、「そろばんの駒」のような扁平な紡錘形状等の部材をじゃま板606とすることが可能である。
【0059】
この水槽601には、清浄に処理した水(処理水)を排水管604から集水し、排出する。この集水管604は、水槽601の側壁と内筒602との間に、集水口604aが水槽601の上面位置に来るように常圧浮上処理装置6の上部位置に配置した。
【0060】
<常圧浮上処理装置の処理方法>
本発明の常圧浮上処理装置6では、投入管605の噴出口605aから上方に向けて噴出される懸濁処理水は、じゃま板606に当たり減速される。固形物であるスカムは、表面張力の作用で、物体(じゃま板606)に触れながら移動する性質を有する、そこで、じゃま板606に当たったスカムは、このじゃま板606の外形の形状に沿って移動する傾向にある。このスカムは、円形形状に浮上する。この浮上したスカムはそのまますくい取る。このとき浮上したスカムは、内筒602内に浮上する。このようにしてスカムと処理水とに分離される。
【0061】
薬注された原水Qは内筒602の中央部から上方へ放出され、じゃま板606によって減速された後、水面に到達する。このとき軽いフロックはVFの速度で水面に浮きスカムとなる。またスカムはじゃま板606の作用により水面の中央付近(円状)に集められるので、容易に掻き寄せることができる。このためスカムの除去効率が上がる。
【0062】
一方分離した処理水は、内筒602の周囲に移動する。広範囲に処理水が、内筒602の下端縁602aからその外周の水槽601内を移動する。この時内筒602の底面積に比して、水槽601の処理水を移動させる平面積が広いので、内筒602内の下部にある処理水の移動速度を遅くすることができる。その結果スカムとの分離する時間に余裕ができ、分離効率を高めることができる。
【0063】
その後、スカムが分離した処理水は排水管604の集水口604aに移動する。処理水は、内筒602の4辺から水槽601の内壁面と内筒602の隙間を通って上昇し、水面に設けられた排水管604の集水口604aによって排出させる。これによって開口高がh=330mmと低くできるので、水槽601の高さも体積も小さくなる。このように常圧浮上処理装置6の小型化は、輸送制限や現地作業の発生、広い敷地確保などの諸問題を解決できる。
【0064】
このように本発明の処理方法に用いる濁水処理設備を構成する常圧浮上処理装置6と、図18、19に示した従来タイプの浮上処理装置とを比較した結果を表2に示す。表2の(1)に示すように、従来タイプは面積が若干小さくなるが、体積が非常に大きくなり不経済である。一方、表2の(2)に示すように、本発明の常圧浮上処理装置6は、従来の処理装置と比べると面積はほぼ同等であるが、体積においては59%も縮小できているので、コンパクトになっている。トレーラー、トラックで運搬できる処理装置としては優れている。
【0065】
【表2】
【0066】
なお、本発明の処理方法に用いる濁水処理設備を構成する常圧浮上処理装置6は、薬品を用いる常圧浮上処理方式を採用しているのでランニングコストはある程度必要とするが、薬品により気泡と固形物を電気化学的に吸着させ、清澄度の高い処理水が得られる。また、装置、設備をコンパクトな形状にすることで、トレーラー、トラックによる槽の分割輸送や、現地での組み立て作業を容易に実施できる構成であれば、上述した発明の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の濁水処理設備を用いた常圧浮上処理方法は、建設工事以外に工場や各種事業場等で生じる濁水を処理する際にも利用できる。
【符号の説明】
【0068】
1 原水槽
2 薬注タンク
3 急速撹拌機
301 筒体
302 薬剤注入口
303 ミキサー
4 薬注機
401 浮上ジャーテスト器
5 緩速撹拌機(反応管)
6 浮上処理装置(常圧浮上処理装置)
601 水槽
602 内筒
602a 内筒の下端縁
602b 内筒の上端縁
603 底板
604 排水管
604a 排水管の集水口
605 原水投入管
605a 原水投入管の噴出口
606 じゃま板
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
砕石場、建設工事現場、工場、農業・漁業関連施設、廃棄物処理事業の現場で生じる濁水について、処理する水量を調節する濁水(原水)を貯留する原水槽(1)と、原水に薬剤を注入する急速撹拌機(3)と、薬剤が注入された原水を化学反応させる緩速撹拌機(5)と、水槽(601)の内側に内筒(602)をその下部を水槽(601)の底板(603)から離した状態で配置した浮上処理装置(6)とを備えた濁水処理設備を用いた常圧浮上処理方法であって、
先ず、前記原水槽(1)からポンプで原水を輸送する量を決定する際に、現場において浮上ジャーテスト器(401)に原水と薬剤とを入れ、所定時間後にスカムが浮上する時間を測定して、浮上処理装置(6)の容量から時間当たりの原水処理量と添加する薬剤量を算出し、原水槽(1)のポンプ(7)の流量を決定し、
急速撹拌機(3)において原水に、前記浮上ジャーテスト器(401)で決定された量の薬剤を添加し、その後緩速撹拌機(5)において原水と薬剤とを化学反応させ、
次に、薬剤と化学反応した原水を、前記浮上処理装置(6)の内筒(602)に噴射させ、この内筒(602)内においてスカムを浮上させ、そのまま掬い排出し、
内筒(602)内においてスカムを分離して清浄になった処理水を沈降させ、この処理水は内筒(602)の下部から内筒(602)と水槽(601)の間に上昇移動させて、溢流するように集水し、排出して処理を完了させる、ことを特徴とする濁水処理設備を用いた常圧浮上処理方法。
【請求項2】
前記急速撹拌機(3)において、原水に複数の薬剤を添加する際に、2つのダイヤフラムを対向配置することで無脈動連続流できるポンプを用いて薬注する、ことを特徴とする請求項に記載された濁水処理設備を用いた常圧浮上処理方法。