(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018147
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】接着芯地、及び、接着芯地の使用方法
(51)【国際特許分類】
A41D 27/06 20060101AFI20250130BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20250130BHJP
C09J 133/06 20060101ALI20250130BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20250130BHJP
A41H 43/04 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
A41D27/06 H
C09J7/35
C09J133/06
C09J11/06
A41H43/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121619
(22)【出願日】2023-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】朝稲 翔平
【テーマコード(参考)】
3B035
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
3B035AA25
3B035AB06
3B035AB15
3B035AC10
4J004AA10
4J004AA13
4J004AB05
4J004BA02
4J004DB02
4J004EA05
4J004FA08
4J040DF031
4J040EC002
4J040GA11
4J040JA09
4J040JB02
4J040KA16
4J040LA06
4J040MA09
4J040MB02
4J040NA10
(57)【要約】
【課題】布帛製品の衣料用生地に感圧接着させて仮止め可能な貼り適性を備え、基布フリーの接着芯地を提供する。
【解決手段】布帛製品の型崩れを防止して保型性を高めるために用いられる接着芯地(10)であって、エポキシ基を有するアクリル重合体(a)及び熱硬化剤(b)を含有し、熱硬化性を有する、接着芯地(10)。接着芯地(10)を、衣料用生地に感圧接着させる工程と、感圧接着された接着芯地(10)を加熱して熱硬化させる工程と、を含む、接着芯地の使用方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛製品の型崩れを防止して保型性を高めるために用いられる接着芯地であって、
エポキシ基を有するアクリル重合体(a)及び熱硬化剤(b)を含有し、熱硬化性を有する、接着芯地。
【請求項2】
更に、エポキシ樹脂(d)を含有する、請求項1に記載の接着芯地。
【請求項3】
前記アクリル重合体(a)において、エポキシ基を有するモノマー由来の構成単位の含有量が、構成単位の全量に対して、1~35質量%である、請求項1又は2に記載の接着芯地。
【請求項4】
前記アクリル重合体(a)において、アクリル酸2-エチルヘキシルに由来する構成単位の含有量が、構成単位の全量に対して、30質量%以上である、請求項1又は2に記載の接着芯地。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の接着芯地を、衣料用生地に感圧接着させる工程と、感圧接着された前記接着芯地を加熱して熱硬化させる工程と、を含む、接着芯地の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着芯地、及び、接着芯地の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジャケット、ブレザー、スラックス、スカート等の布帛製品には、型崩れを防止して保型性を高めるために接着芯地が用いられている。接着芯地は、通常、基布の表面に、ホットメルトと呼ばれる熱溶融性の樹脂部が固着されており、加熱プレス機等により衣料用生地に簡単に接着できる構成となっている。
【0003】
特許文献1には、支持体層と、粘着剤を被覆した被覆層とを含む接着芯地が開示されている。
【0004】
特許文献2には、基布と、前記基布の一方の主面に常温にて固体かつ熱溶融性を有する第一樹脂部と、前記基布の一方の主面に常温にて粘着性を有する第二樹脂部と、を備え、前記第二樹脂部は、前記基布の一方の主面において、前記第一樹脂部の少なくとも一部が露出するように、前記基布及び前記第一樹脂部を被覆している、接着芯地が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2013-543544号公報
【特許文献2】特開2021-042515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記に挙げた接着芯地では、芯地として必要な強度を備える基布(特許文献1の支持体層、特許文献2の基布)の少なくとも一方の主面に、布帛製品の衣料用生地に接着芯地を感圧接着させて仮止めすることができる仮止め層(特許文献1の粘着剤を被覆した被覆層、特許文献2の第二樹脂部)が設けられている。
【0007】
本発明は、布帛製品の衣料用生地に感圧接着させて仮止め可能な貼り適性を備え、基布フリーの接着芯地を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来、布帛製品の衣料用生地のような粗い表面に接着芯地を仮止めするために、接着芯地は、芯地として必要な強度を備える基布に仮止め層が設けられていることが一般的である。しかし、本発明者らの検討により、意外なことに、熱圧着後に熱硬化するアクリル粘着剤を使用することで、熱圧着前は感圧接着性を有するが、熱圧着後に圧着した生地のコシを向上させることができ、接着芯地に利用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の態様を有する。
【0009】
[1] 布帛製品の型崩れを防止して保型性を高めるために用いられる接着芯地であって、
エポキシ基を有するアクリル重合体(a)及び熱硬化剤(b)を含有し、熱硬化性を有する、接着芯地。
[2] 更に、エポキシ樹脂(d)を含有する、[1]に記載の接着芯地。
[3] 前記アクリル重合体(a)において、エポキシ基を有するモノマー由来の構成単位の含有量が、構成単位の全量に対して、1~35質量%である、[1]又は[2]に記載の接着芯地。
[4] 前記アクリル重合体(a)において、アクリル酸2-エチルヘキシルに由来する構成単位の含有量が、構成単位の全量に対して、30質量%以上である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の接着芯地。
[5] [1]~[4]のいずれか一項に記載の接着芯地を、衣料用生地に感圧接着させる工程と、感圧接着された前記接着芯地を加熱して熱硬化させる工程と、を含む、接着芯地の使用方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、布帛製品の衣料用生地に感圧接着させて仮止め可能な貼り適性を備え、基布フリーの接着芯地を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態の接着芯地の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
≪接着芯地≫
実施形態に係る接着芯地は布帛製品の型崩れを防止して保型性を高めるために用いられる接着芯地であって、エポキシ基を有するアクリル重合体(a)及び熱硬化剤(b)を含有し、熱硬化性を有する。
図1は、実施形態に係る接着芯地10の一例を模式的に示す断面図である。
図1に示す接着芯地10は、その一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)10a上に第1剥離ライナー201を備え、前記第1面10aとは反対側の他方の面10b上に第2剥離ライナー202を備えている。
このような接着芯地10は、例えば、ロール状として保管するのに好適である。
なお、第1剥離ライナー201及び第2剥離ライナー202は、接着芯地10の使用時に剥離されるものであり、本発明の接着芯地における必須の構成ではない。
【0013】
実施形態に係る接着芯地は熱硬化性を有する。熱硬化前、被着体である衣料用生地に感圧接着させることで、接着芯地を衣類等に仮止め可能な様に、接着芯地は、感圧接着性を有することが好ましい。「感圧接着性」とは、接着芯地に圧力をかけることで、被着体に対して接着させることが可能な性質をいう。なお、感圧接着と粘着とは、同様の意味で用いられる。
接着芯地が感圧接着性を有することにより、接着芯地を布帛製品の衣料用生地に仮止めする貼り適性が付与される。仮止めが可能となることにより、接着芯地を接着する布帛製品の衣料用生地に対し、目的とする位置に正確に接着させることが容易となる。
【0014】
実施形態の接着芯地は、熱硬化性を有するので、芯地として必要な強度(すなわち、コシ)を付与できる。また、被着体である衣料用生地に接着芯地を加圧することにより、被着体に沿って接着芯地の変形が生じ、被着体との間にアンカー効果が生じて、被着体と強固に接着できると考えられる。
【0015】
接着芯地は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよいが、製造工程の簡略化の観点から1層からなることが好ましい。複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0016】
接着芯地の厚さは、特に限定されないが、1~1000μmであることが好ましく、5~500μmであることがより好ましく、10~100μmであることがさらに好ましく、20~80μmであることが特に好ましい。
【0017】
ここで、接着芯地の厚さとは、接着芯地全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる接着芯地の厚さとは、接着芯地を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0018】
≪接着芯地形成用組成物≫
熱硬化性の接着芯地は、接着芯地を構成する成分を含有する接着芯地形成用組成物を用いて形成できる。
接着芯地の前記成分同士の含有量の比率は、通常、接着芯地形成用組成物中の、溶媒を除いた成分同士の含有量の比率と同じとなる。
【0019】
接着芯地において、接着芯地の総質量に対する、接着芯地の1種又は2種以上の後述する含有成分の合計含有量の割合は、100質量%を超えない。
同様に、接着芯地形成用組成物において、接着芯地形成用組成物の総質量に対する、接着芯地形成用組成物の1種又は2種以上の後述する含有成分の合計含有量の割合は、100質量%を超えない。
以下、接着芯地及び接着芯地形成用組成物の含有成分について、詳細に説明する。
【0020】
接着芯地及び接着芯地形成用組成物は、エポキシ基を有するアクリル重合体(a)と熱硬化剤(b)を含有し、熱硬化性を有する。
接着芯地及び接着芯地形成用組成物は、アクリル重合体(a)と、熱硬化剤(b)と、熱硬化促進剤(c)と、を含有していることが好ましく、アクリル重合体(a)と、熱硬化剤(b)と、熱硬化促進剤(c)と、エポキシ樹脂(d)と、を含有していることがより好ましい。
【0021】
<アクリル重合体(a)>
接着芯地及び接着芯地形成用組成物はエポキシ基を有するアクリル重合体(a)を含有する。アクリル重合体(a)としては、例えば、エポキシ基を有するモノマー由来の構成単位、及び、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を含有するアクリル共重合体が挙げられる。
【0022】
エポキシ基を有するモノマー由来の構成単位としては、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸が挙げられ、(メタ)アクリル酸グリシジルが好ましい。
【0023】
前記アクリル重合体(a)において、エポキシ基を有するモノマー由来の構成単位の含有量が、構成単位の全量に対して、1~35質量%であることが好ましく、2~32質量%であることがより好ましく、3~30質量%であることが特に好ましい。
【0024】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念とする。(メタ)アクリル酸と類似の用語についても同様である。
【0025】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アルキルエステルを構成するアルキル基の炭素数が1~20であるものが挙げられ、前記アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、より具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸イコシル等が挙げられる。
【0026】
熱硬化性の接着芯地の粘着力が向上する点から、前記アクリル重合体は、前記アルキル基の炭素数が4以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を有することが好ましい。そして、熱硬化性の接着芯地の粘着力がより向上する点から、前記アルキル基の炭素数は、4~12であることが好ましく、4~8であることがより好ましい。また、前記アルキル基の炭素数が4以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。
【0027】
前記アクリル重合体(a)において、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位の含有量が、構成単位の全量に対して、35~99質量%であることが好ましく、50~98質量%であることがより好ましく、65~95質量%であることが特に好ましい。
【0028】
前記アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位以外に、さらに、エポキシ基以外の官能基含有モノマー由来の構成単位を有することが好ましい。
【0029】
官能基含有モノマー中の前記官能基としては、エポキシ基以外の、例えば、水酸基、アミノ基等が挙げられる。
すなわち、官能基含有モノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー、アミノ基含有モノマー等が挙げられる。
【0030】
前記水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;ビニルアルコール、アリルアルコール等の非(メタ)アクリル系不飽和アルコール((メタ)アクリロイル骨格を有しない不飽和アルコール)等が挙げられる。
【0031】
前記アクリル系重合体を構成する官能基含有モノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0032】
前記アクリル重合体(a)において、エポキシ基を有するモノマー由来の構成単位以外の、官能基含有モノマー由来の構成単位の含有量が、構成単位の全量に対して、1~35質量%であることが好ましく、2~32質量%であることがより好ましく、3~30質量%であることが特に好ましい。
【0033】
前記アクリル重合体(a)は、エポキシ基を有するモノマー由来の構成単位、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位、及び官能基含有モノマー由来の構成単位以外に、さらに、他のモノマー由来の構成単位を有していてもよい。
前記他のモノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等と共重合可能なものであれば特に限定されない。
前記他のモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド等が挙げられる。
【0034】
前記アクリル重合体(a)を構成する前記他のモノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0035】
前記アクリル重合体(a)の重量平均分子量(Mw)は、10000~2000000であることが好ましく、例えば、10000~1000000、1000000~2000000及び200000~1200000のいずれかであってもよい。アクリル重合体(a)の重量平均分子量がこのような範囲内であることで、熱硬化性の接着芯地の粘着力を好ましい範囲に調節することが容易となる。
【0036】
本明細書において、「重量平均分子量(Mw)」及び「数平均分子量(Mn)」とは、特に断りのない限り、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
【0037】
前記アクリル重合体(a)100質量%に対して、アクリル酸2-エチルヘキシルに由来する構成単位の含有量が30質量%以上であることが好ましく、30~70質量%であることがより好ましく、35~65質量%であることがさらに好ましい。アクリル酸2-エチルヘキシルはガラス転移温度が低いものであるので、アクリル重合体(a)におけるアクリル酸2-エチルヘキシルに由来する構成単位の含有量が前記下限値以上とすることで、熱硬化性の接着芯地の粘着性を、効果的に高めることができる。
【0038】
前記アクリル重合体(a)が有する構成単位は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0039】
接着芯地の総質量に対する、アクリル重合体(a)の含有量の割合は、40~99質量%であってよく、43~99質量%であってよく、45~99質量%であってよい。
前記アクリル重合体(a)の含有量の割合が前記下限値以上であることにより、接着芯地の構造がより安定化し、前記効果が奏し易くなり、前記アクリル樹脂(a)の含有量が前記上限値以下であることにより、接着芯地としての感熱接着性が良好となる。
【0040】
<熱硬化剤(b)>
接着芯地及び接着芯地形成用組成物は、熱硬化剤(b)を含有する。
熱硬化剤(b)はエポキシ基を有するアクリル重合体(a)に対する熱硬化剤である。
接着芯地及び接着芯地形成用組成物が含有する熱硬化剤(b)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0041】
熱硬化剤(b)としては、例えば、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。前記官能基としては、例えば、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシ基、酸基が無水物化された基等が挙げられ、フェノール性水酸基、アミノ基、又は酸基が無水物化された基であることが好ましく、フェノール性水酸基又はアミノ基であることがより好ましい。
【0042】
熱硬化剤(b)のうち、フェノール性水酸基を有するフェノール系硬化剤としては、例えば、多官能フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等が挙げられる。
熱硬化剤(b)のうち、アミノ基を有するアミン系硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド等が挙げられる。
【0043】
熱硬化剤(b)は、不飽和炭化水素基を有していてもよい。
不飽和炭化水素基を有する熱硬化剤(b)としては、例えば、フェノール樹脂の水酸基の一部が、不飽和炭化水素基を有する基で置換されてなる化合物、フェノール樹脂の芳香環に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合してなる化合物等が挙げられる。
【0044】
熱硬化剤(b)のうち、例えば、多官能フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等の樹脂成分の数平均分子量は、300~30000であることが好ましく、400~10000であることがより好ましく、500~3000であることが特に好ましい。
熱硬化剤(b)のうち、例えば、ビフェノール、ジシアンジアミド等の非樹脂成分の分子量は、特に限定されないが、例えば、60~500であることが好ましい。
熱硬化剤(b)は、下記一般式(1)で表される、より具体的には、o-クレゾール型ノボラック樹脂であることが好ましい。
【0045】
【0046】
一般式(1)中、nは1以上の整数であり、例えば、2以上、4以上、及び6以上のいずれかであってもよい。
nの上限値は、本発明の効果を損なわない範囲で、特に限定されない。例えば、nが10以下であるo-クレゾール型ノボラック樹脂は、その製造又は入手がより容易である。
【0047】
一般式(1)中、o-クレゾール-ジイル基(-C6H4(-OH)(-CH3)-)同士を連結しているメチレン基(-CH2-)の、これらo-クレゾール-ジイル基に対する結合位置は、特に限定されない。
【0048】
接着芯地及び接着芯地形成用組成物において、熱硬化剤(b)の含有量は、アクリル重合体(a)の含有量100質量部に対して、0.05~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましく、0.5~4質量部であることがさらに好ましい。熱硬化剤(b)の前記含有量が前記下限値以上であることで、熱硬化剤(b)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。
【0049】
<熱硬化促進剤(c)>
熱硬化促進剤(c)は、接着芯地の感熱接着時の硬化速度を調節するための成分である。
好ましい熱硬化促進剤(c)としては、例えば、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第3級アミン;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類(1個以上の水素原子が水素原子以外の基で置換されたイミダゾール);トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類(1個以上の水素原子が有機基で置換されたホスフィン);テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
【0050】
接着芯地及び接着芯地形成用組成物が含有する熱硬化促進剤(c)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0051】
熱硬化促進剤(c)を用いる場合、接着芯地及び接着芯地形成用組成物において、熱硬化促進剤(c)の含有量は、アクリル重合体(a)の含有量100質量部に対して、0.05~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましく、0.5~4質量部であることがさらに好ましい。熱硬化促進剤(c)の前記含有量が前記下限値以上であることで、熱硬化促進剤(c)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。
【0052】
<エポキシ樹脂(d)>
接着芯地及び接着芯地形成用組成物は、更に、エポキシ樹脂(d)を含有することが好ましい。エポキシ樹脂(d)として、エポキシ基を有するアクリル重合体(a)は除かれる。
エポキシ樹脂(d)としては、公知のものが挙げられ、例えば、多官能系エポキシ樹脂、ビフェニル化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその水添物、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等、2官能以上のエポキシ化合物が挙げられる。本明細書において、エポキシ樹脂(d)とは、硬化性を有する、すなわち、未硬化のエポキシ樹脂を云う。
【0053】
エポキシ樹脂(d)の数平均分子量は、特に限定されないが、接着芯地の硬化性、並びに接着芯地の熱硬化物の強度及び耐熱性の点から、300~30000であることが好ましく、400~10000であることがより好ましく、500~3000であることが特に好ましい。
【0054】
エポキシ樹脂(d)のエポキシ当量は、100~1000g/eqであることが好ましく、150~800g/eqであることがより好ましい。
【0055】
接着芯地及び接着芯地形成用組成物が含有するエポキシ樹脂(d)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0056】
接着芯地及び接着芯地形成用組成物がエポキシ樹脂(d)を含有するとき、前記アクリル重合体(a)100質量部に対して、前記エポキシ樹脂(d)の含有量が15~150質量部であることが好ましく、30~135質量部であることがより好ましく、45~115質量部であることが特に好ましい。
エポキシ樹脂(d)は、常温で液状のエポキシ樹脂であってもよく、常温で固形のエポキシ樹脂であってもよい。
【0057】
<剥離ライナー>
実施形態の接着芯地10は、一枚の剥離ライナー上に形成することができる。また、
図1に示されるように、第1剥離ライナー201及び第2剥離ライナー202の二枚の剥離ライナーの間に積層された形態で提供することもできる。
【0058】
剥離ライナーとしては、特に限定されず、一般的には、シートの片面に剥離処理が施された公知の剥離ライナーを適宜選択して用いることができる。剥離ライナーに用いることのできるライナーとしては、例えば、グラシン紙、上質紙、クラフト紙等の紙、これらの紙にポリエチレンなどの熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム等が挙げられる。
【0059】
また、離型処理を行うための離型処理剤としては、シリコーン、長鎖アルキル系樹脂、フッ素系樹脂等を例示することができる。
剥離ライナーの厚さは、特に限定されないが、10~150μmであることが好ましく、20~130μmであることが好ましい。
【0060】
≪接着芯地の製造方法≫
前記接着芯地は、接着芯地形成用組成物により形成できる。
【0061】
例えば、第1剥離ライナー201の上に、接着芯地を構成する成分と、所望によりさらに溶媒とを含む接着芯地形成用組成物を、例えば、ロールコーター、ナイフコーター、ロールナイフコーター、エアナイフコーター、ダイコーター、バーコーター、グラビアコーター、カーテンコーター等の各種コーターによって塗布して乾燥させ、第1剥離ライナー201及び接着芯地10が積層された積層体Aを得る。
【0062】
接着芯地形成用組成物の乾燥条件は、特に限定されないが、接着芯地形成用組成物は、溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましい。溶媒を含有する接着芯地形成用組成物は、例えば、70~100℃で10秒間~5分間の条件で乾燥させることが好ましい。
【0063】
次いで、上記で製造した積層体Aの接着芯地10の面10bに、第2剥離ライナー202の剥離処理面を圧着させ、第1剥離ライナー201と、接着芯地10と、第2剥離ライナー202と、がこの順に積層された接着芯地積層体を製造することができる。
【0064】
≪接着芯地の使用方法≫
本発明の接着芯地の使用方法は、上述の実施形態に係る接着芯地を、衣料用生地に感圧接着させる工程と、感圧接着された前記接着芯地を加熱して熱硬化させる工程と、を含む。
【0065】
被着体である衣料用生地としては、ジャケット、ブレザー、スラックス、スカート等の布帛製品の衣料用生地を例示できる。
【0066】
接着芯地を衣料用生地に感圧接着させる工程において、被着体である衣料用生地に接着芯地を接触させて圧着する。
【0067】
次に、感圧接着された前記接着芯地を加熱して熱硬化させる工程では、アイロンやプレス機等による加熱圧着(熱及び圧力をかけて接着させること)を採用することができる。熱硬化させる温度は、粘着剤層の組成に応じて適宜定めることができ、粘着剤層の熱硬化温度以上の温度で加熱して、感熱接着を発揮させることができる。接着芯地に対する圧力としては、0.1~10kgf/cm2程度を例示できる。
【実施例0068】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0069】
<モノマー>
本実施例及び比較例において略記している、アクリル共重合体の製造原料モノマーの正式名称を、以下に示す。
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
BA:アクリル酸n-ブチル
MMA:メタクリル酸メチル
GMA:メタクリル酸グリシジル
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
【0070】
<接着芯地形成用組成物の製造原料>
本実施例及び比較例において、接着芯地形成用組成物の製造に用いた原料を以下に示す。
【0071】
[アクリル重合体(a)]
(a)-1:2EHA(40質量部)、BA(40質量部)、MMA(10質量部)、GMA(5質量部)及びHEA(5質量部)を共重合して得られたアクリル重合体(重量平均分子量400000、ガラス転移温度-47℃)。
(a)-2:2EHA(40質量部)、BA(40質量部)、MMA(15質量部)及びHEA(5質量部)を共重合して得られたアクリル重合体(重量平均分子量400000、ガラス転移温度-46℃)。
【0072】
[熱硬化剤(b)]
(b)-1:o-クレゾール型ノボラック樹脂(DIC株式会社製「フェノライト(登録商標)KA-1160」、水酸基当量117g/eq、軟化点81~90℃
【0073】
[熱硬化促進剤(c)]
(c)-1:2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製「キュアゾール(登録商標)2PHZ-PW」、融点230℃)
【0074】
[エポキシ樹脂(d)]
(d)-1:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロンHP-7200HH」、軟化点88~98℃、エポキシ当量274~286g/eq)
(d)-2:o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製「EOCN-102S」、エポキシ当量205~217g/eq、軟化点55~77℃)
【0075】
<接着芯地の作製>
[実施例1]
アクリル重合体(a)-1(組成:2EHA/BA/MMA/GMA/HEA=40/40/10/5/5)100質量部、熱硬化剤(b)-1(o-クレゾール型ノボラック樹脂、水酸基当量117g/eq)1質量部、熱硬化促進剤(c)-1(2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール)1質量部を混合し、トルエンで希釈して、上述のすべての成分の合計濃度が20質量%の接着芯地形成用組成物を得た。
得られた接着芯地形成用組成物を、ポリエチレンテレフタレート(PET)製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理されている剥離ライナー上に乾燥後の厚さが50μmとなるように塗布し、90℃で2分間乾燥させて、実施例1に係る接着芯地を形成した。得られた接着芯地の、剥離ライナーとは反対側の面に、更に別の剥離ライナーを貼合し、剥離ライナー、接着芯地及び剥離ライナーがこの順に積層された、接着芯地積層体を作製した。
【0076】
[実施例2]
実施例1で使用したアクリル重合体(a)-1(組成:2EHA/BA/MMA/GMA/HEA=40/40/10/5/5)100質量部、熱硬化剤(b)-1(1質量部)1質量部、熱硬化促進剤(c)-1(1質量部)に加え、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(d)-1(軟化点88~98℃、エポキシ当量274~286g/eq)110質量部を混合し、トルエンで希釈して得た濃度20質量%の接着芯地形成用組成物を使用した以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係る接着芯地及び接着芯地積層体を作製した。
【0077】
[実施例3]
実施例1で使用したアクリル重合体(a)-1(100質量部)、熱硬化剤(b)-1(1質量部)、熱硬化促進剤(c)-1(1質量部)に加え、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(d)-2(軟化点55~77℃、エポキシ当量205~217g/eq)110質量部を混合し、トルエンで希釈して、上述のすべての成分の合計濃度が20質量%の接着芯地形成用組成物を使用した以外は、実施例1と同様にして、実施例3に係る接着芯地及び接着芯地積層体を作製した。
【0078】
[実施例4]
実施例1で使用したアクリル重合体(a)-1(100質量部)、熱硬化剤(b)-1(1質量部)、熱硬化促進剤(c)-1(1質量部)に加え、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(d)-1(軟化点88~98℃、エポキシ当量274~286g/eq)55質量部、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(d)-2(軟化点55~77℃、エポキシ当量205~217g/eq)55質量部を混合し、トルエンで希釈して、上述のすべての成分の合計濃度が20質量%の接着芯地形成用組成物を使用した以外は、実施例1と同様にして、実施例4に係る接着芯地及び接着芯地積層体を作製した。
【0079】
[比較例1]
実施例1で使用したアクリル重合体(a)-1(100質量部)の代わりに、アクリル重合体(a)-2(組成:2EHA/BA/MMA/HEA=40/40/15/5)100質量部を使用した以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係る接着芯地及び接着芯地積層体を作製した。
【0080】
上記の実施例および比較例の接着芯地及び接着芯地形成用組成物の構成を表1に示す。表中の「-」は、該当の成分を含有しないことを表す。
【0081】
【0082】
[物性評価]
上記の実施例および比較例で製造した接着芯地について、以下の物性評価を行った。
【0083】
(感熱接着前の接着芯地を貼合した試験シートの剛軟度の測定)
23℃、50%RH条件下で、上記の実施例および比較例で得られた各接着芯地積層体を20mm×40mmに切り出し、一方の剥離ライナーを剥離した。露出した接着芯地と綿布(カナキン3号、日本規格協会より入手)とを重ね、質量2kgのゴムローラで一往復させて貼り合わせた後、もう一方の剥離ライナーを剥離し、露出した接着芯地と綿布(カナキン3号)とを重ね質量2kgのゴムローラで一往復させて貼り合わせ、綿布/接着芯地/綿布という構成の試験シートを作製した。
JIS L 1096:2010 8.22.1 A法(ガーレ法)に準拠して、得られた試験シートの剛軟度を測定した。
測定結果を表1に示す。
【0084】
(感熱接着後の接着芯地を貼合した試験シートの剛軟度の測定)
得られた試験シートを熱圧着機(ヒートシールテスターTP-701、テスター産業株式会社製)を用いて、荷重220gf/cm2、温度150℃で30秒間加熱し、感熱接着後の剛軟度測定用の試験片を得た。
JIS L 1096:2010 8.22.1 A法(ガーレ法)に準拠して、得られた試験片の剛軟度を測定した。剛軟度の数値が大きいほどコシが強いことを示す。
測定結果を表1に示す。
【0085】
実施例1~5の接着芯地は、基布フリーの接着芯地でありながら、感熱接着前よりも感熱接着後の剛軟度が大きく、芯地として好適な強度を備えていた。
【0086】
各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は各実施形態によって限定されることはなく、請求項(クレーム)の範囲によってのみ限定される。