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<図1>
  • 特開-洗掘防止ユニットの撤去方法 図1
  • 特開-洗掘防止ユニットの撤去方法 図2
  • 特開-洗掘防止ユニットの撤去方法 図3
  • 特開-洗掘防止ユニットの撤去方法 図4
  • 特開-洗掘防止ユニットの撤去方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018149
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】洗掘防止ユニットの撤去方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/08 20060101AFI20250130BHJP
【FI】
E02B3/08 301
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121622
(22)【出願日】2023-07-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000201490
【氏名又は名称】前田工繊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】山口 忠和
【テーマコード(参考)】
2D118
【Fターム(参考)】
2D118AA05
2D118AA28
2D118BA01
2D118BA07
2D118BA14
2D118BA18
2D118FA04
2D118GA51
(57)【要約】
【課題】長期間経過しても洗掘防止ユニットの吊り部を簡単に摘出できて、容易に洗掘防止ユニットを吊り上げ撤去できる、洗掘防止ユニットの撤去方法を提供すること。
【解決手段】吊り部25を具備した洗掘防止ユニット10を海底に平置きまたは複数層に段積みして敷設してあり、洗掘防止ユニット10の吊り部25に、フロート30が取り付けてあり、水中で浮遊するフロート30を目印として洗掘防止ユニット10の吊り部25を吊り上げ可能とした。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り部を具備した網製の袋体に塊状の中詰材を封入した洗掘防止ユニットを使用し、水底に平置きまたは複数層に段積みして敷設してある洗掘防止ユニットの撤去方法であって、
前記洗掘防止ユニットの吊り部に、浮力を受けて浮遊可能なフロートが取り付けてあり、
水中で浮遊する前記フロートを目印として前記洗掘防止ユニットの吊り部を吊り上げ可能としたことを特徴とする、
洗掘防止ユニットの撤去方法。
【請求項2】
係留ロープを介して洗掘防止ユニットの吊り部に前記フロートが取り付けてあることを特徴とする、請求項1に記載の洗掘防止ユニットの撤去方法。
【請求項3】
洗掘防止ユニットの吊り部に前記フロートが直接取り付けてあることを特徴とする、請求項1に記載の洗掘防止ユニットの撤去方法。
【請求項4】
前記洗掘防止ユニットの吊り部が吊りロープであることを特徴とする、請求項1乃至3の何れか一項に記載の洗掘防止ユニットの撤去方法。
【請求項5】
前記洗掘防止ユニットを複数層に段積みしてあるとき、上層から下層へ向けて順次洗掘防止ユニットを撤去することを特徴とする、請求項1に記載の洗掘防止ユニットの撤去方法。
【請求項6】
前記フロートに洗掘防止ユニットに対応したナンバリングが表示されていることを特徴とする、請求項1に記載の洗掘防止ユニットの撤去方法。
【請求項7】
前記フロートに防藻剤を混ぜた蛍光塗料を塗布してあることを特徴とする、請求項1に記載の洗掘防止ユニットの撤去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り部を具備した袋体に塊状の中詰材を封入した洗掘防止ユニットの撤去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洋上風力発電施設の基礎形式は、多くの場合においてモノパイル(単杭)が採用されている。
一般に、モノパイル型の基礎は基礎径が大口径となることから、波浪や潮流等による基礎周囲の洗掘を防止する洗掘防止工が施される。
洗掘防止工のひとつとして、例えば、モノパイルの周囲の地盤に複数の洗掘防止ユニットを平置きまたは段積みして敷設することが知られている(特許文献1)。
洗掘防止ユニットとは、網製の袋体に塊状の中詰材を封入した透水性を有する構造体であり、根固材や洗堀防止材として機能する(特許文献2)。
【0003】
洋上風力発電施設には耐用年数(約30年)があり、耐用年数に達したときは、原状復帰のために洗掘防止ユニットを含めた発電施設の撤去が求められている。
一般的に重量物である洗掘防止ユニットの撤去方法としては、クレーン等を搭載した海上作業船を使用し、洗掘防止ユニットに設けた吊りロープにフックを掛止して吊上げ移動する方法が採用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-169625号公報
【特許文献2】特開平11-131447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の洗掘防止ユニットにはつぎのような解決すべき課題を内包している。
<1>洗掘防止ユニットを撤去するには、洗掘防止ユニットの吊りロープにクレーンのフックを掛止して吊り上げる必要がある。
しかしながら、水中または海中で非常に長い年月が経過すると、洗掘防止ユニットに組み付けたロープ類や編地が水底または海底の堆積土砂等に埋没し易く、さらに水深が深くなるほど視界が悪くなる。
そのため、洗掘防止ユニットの吊り部を潜水士の目視により見つけ出すことは極めて困難である。
<2>例えば、潜水士が堆積土砂を手掘りして埋没した洗掘防止ユニットの吊り部を探し出すことが考えられるが、潜水士の作業負担が膨大なものとなる。
<3>洗掘防止ユニットを撤去するための潜水士による潜水時間が長くなる。
潜水時間が長くなるほど、潜水士の危険度(潜水病)が増すだけでなく、最終的な洗掘防止ユニットの撤去費用が増大する。
<4>従来は、30年ほどの長期間が経過した後に洗掘防止ユニットを簡易に撤去することを想定していないため、その対応技術の提案が求められている。
【0006】
本発明は既述した課題を解決するためになされた発明であり、本発明の課題は長期間経過しても洗掘防止ユニットの吊り部を簡単に摘出できて、容易に洗掘防止ユニットを吊り上げ撤去できる、洗掘防止ユニットの撤去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、吊り部を具備した網製の袋体に塊状の中詰材を封入した洗掘防止ユニットを使用し、水底に平置きまたは複数層に段積みして敷設してある洗掘防止ユニットの撤去方法であって、前記洗掘防止ユニットの吊り部に、浮力を受けて浮遊可能なフロートが取り付けてあり、水中で浮遊する前記フロートを目印として前記洗掘防止ユニットの吊り部を吊り上げ可能とした。
本発明の他の形態において、係留ロープを介して洗掘防止ユニットの吊り部に前記フロートが取り付けてあってもよいし、洗掘防止ユニットの吊り部に前記フロートが直接取り付けてあってもよい。
本発明の他の形態において、前記洗掘防止ユニットの吊り部が吊りロープである。
本発明の他の形態において、前記洗掘防止ユニットを複数層に段積みしてあるとき、上層から下層へ向けて順次洗掘防止ユニットを撤去する。
本発明の他の形態において、前記フロートに洗掘防止ユニットに対応したナンバリングが表示されていてもよい。
本発明の他の形態において、前記フロートに防藻剤を混ぜた蛍光塗料を塗布してあってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明は少なくともつぎのひとつの効果を奏する。
<1>洗掘防止ユニットの吊り部にフロートを付設することによって、水中で浮遊するフロートを目印として洗掘防止ユニットの吊り部の位置を把握できるので、洗掘防止ユニットを簡易に撤去することができる。
<2>敷設後に数十年ほどの長期間が経過して、洗掘防止ユニットの吊りロープや袋体の編地に藻や貝等が付着したり、洗掘防止ユニットが堆積土砂等に埋没したりして敷設環境が変化していても、洗掘防止ユニットの上方に浮遊するフロートを目印にして、洗掘防止ユニットの吊り部を探し出すことができる。
そのため、洋上風力設備の耐用年数(約30年)が経過したときに、洗掘防止ユニットを撤去して効率よく原状復旧を行うことができる。
<3>洗掘防止ユニットの撤去時に潜水士による潜水時間を短縮して、潜水士のリスクを低減しつつ、洗掘防止ユニットの撤去費用を低減できる。
<4>洗掘防止ユニットに接続したフロートが、海中で浮遊して可動し続けるため、フロートに藻や貝等が付着し難い。
<5>係留ロープを介して洗掘防止ユニットの吊り部にフロートを取り付けた場合は、係留ロープを介してフロートが浮遊するため、フロートが見つけやすくなる。
<6>係留ロープの長さを調整することで、フロートが堆積土砂等に埋没しても埋もれる心配がない。
<7>洗掘防止ユニットを多段的に積層した場合には、上層から撤去すれば次層の洗掘防止ユニットに設けたフロートが浮力で浮遊する。
そのため、上下の洗掘防止ユニットの間にフロートが挟み込まれても問題がないので、洗掘防止ユニットの敷設作業をラフに行うことができる。
<8>フロートに洗掘防止ユニットに対応したナンバリングを表示しておくと、撤去時における洗掘防止ユニットの個数管理を容易に行える。
<9>フロートにナンバリングを表示して洗掘防止ユニットを段積みした場合には、各層毎の敷設数を番号で管理できる。各層毎の洗掘防止ユニットの敷設数を管理できることで、撤去時に間違えて次層の洗掘防止ユニットを間違えて吊上げることがなくなる。
<10>フロートに防藻剤を混ぜた蛍光塗料を塗布すると、フロートの視認性がよくなるだけでなく、海藻の付着に起因してフロートが沈降するのを効果的に防止できる。
<11>係留ロープの長さを調整することで、近くを航行する船舶、調査を行う船舶、点検業務を行う船舶等の航行に影響なく設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明で使用する洗掘防止ユニットの斜視図
図2】洗掘防止ユニットを構成する袋体の側面図
図3】洗掘防止ユニットの敷設方法の説明図
図4】段積みした敷設後の洗掘防止ユニットの説明図
図5】洗掘防止ユニットの撤去方法の説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照しながら本発明について説明する。
本例では、洋上風力発電施設のモノパイルの周囲の海底地盤に洗掘防止ユニット10を敷設する形態について説明する。
【0011】
<1>洗掘防止ユニット
図1を参照して本発明が前提とする洗掘防止ユニット10は、袋体20と、袋体20に収容した中詰材26とにより構成する。
本発明では、洗掘防止ユニット10の吊り部の一部に単数または複数のフロート30を設けることによって洗掘防止ユニット10の撤去時に潜水士が吊り部を発見し易くするようにした。
【0012】
<2>袋体
袋体20は、中詰材26を充填するメッシュ状の袋本体21と、袋本体21の開口部23の近くの位置に周回して取り付けた口絞りロープ24と吊りロープ25とを具備する。
【0013】
<2.1>袋本体
袋本体21は開口部23を有する有底袋である。
袋本体21は、可撓性および通水性を有するメッシュ(編地)構造を呈する繊維製の編地からなる。
編地の無駄を減らすため、中詰材26の収容量(例えば1m~10m)に応じて製作した袋本体21を使用し、袋本体21は中詰材26の収容量に対応した必要最小面積の編地を用いて製作する。
【0014】
袋本体21の編地の編糸としては、例えばポリエステル繊維糸、ポリアミド繊維糸、ポリアクリル繊維糸等の合成繊維糸、又は綿糸、麻糸等の天然繊維糸等を単独又は混繊して使用できる。実用上はポリエステル等の合成繊維糸を二重に編成したラッセル網を使用できる。
【0015】
この編地は六角形または菱形形の網目22を有する。網目22は中詰材26が抜け出ない寸法に設定してある。
【0016】
<2.2>ロープ材
袋本体21の開口部23の近くには、少なくとも口絞りロープ24と無端構造の吊りロープ25の2本のロープ材が周回して取り付けてある。
【0017】
口絞りロープ24は開口部23を閉じるためのロープ材であり、バックホウ等を用いて袋本体21に中詰材26を投入した後に、口絞りロープ24を絞り込んで袋体20に中詰材26を封入する。
【0018】
吊りロープ25は洗掘防止ユニット10を吊り上げるための無端構造のロープ材であり、袋本体21の網目に挿通したロープの途中を袋本体21の複数箇所(例えば6箇所)からループ状に引出し、引き出した吊りロープ25の複数箇所をクレーン等のフック50に吊り掛けて使用する。
【0019】
<2.3>吊り部
洗掘防止ユニット10の吊り部とは、クレーンのフック50を掛止して吊上げるための部位を意味する。
本例では吊り部が吊りロープ25である形態について説明するが、吊り部は吊りロープ25以外に口絞りロープ24や別途のロープ類であってもよい。
【0020】
<3>中詰材
中詰材26は、例えば玉石等の自然骨材、コンクリートガラ、各種廃棄物の焼成体等を使用できる。
根固工に使用する場合、直径150mm程度の中詰材26を使用するが、中詰材26の大きさは使途に応じて適宜選択が可能である。
【0021】
<4>フロート
フロート30は洗掘防止ユニット10の吊り部(吊りロープ25)の位置を示すための目印用の浮体であり、洗掘防止ユニット10の敷設前に予め取り付けておく。
【0022】
<4.1>係留ロープ
フロート30は係留ロープ31を介して吊りロープ25に取り付けてある。
係留ロープ31は吊りロープ25とフロート30との間を連結するための耐久性に優れたロープ材である。
係留ロープ31の全長は調整可能であり、敷設現場に応じて係留ロープ31の全長を適宜選択する。
係留ロープ31の全長は海底土砂にフロート30が埋没しないだけの長さを有していればよい。
【0023】
係留ロープ31は必須ではなく、係留ロープ31を省略してフロート30を吊りロープ25に直接設けることも可能である。
【0024】
<4.2>フロートの素材
フロート30は、長期間に亘って浮力を保持可能な素材からなり、例えばポリエチレン(PE)、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)等の防水性があり吸水性がない素材を使用できる。
フロート30は密実構造または中空構造の何れでもよい。
フロート30には押し潰されて形状が復元可能な素材が望ましい。
【0025】
<4.3>フロートの浮力
フロート30の浮力についは、係留ロープ31を介してフロート30を間接的に取り付ける形態では、フロート30が単独で浮遊可能な浮力を確保しておく。
【0026】
フロート30を吊りロープ25に直接的に取り付ける形態では、吊りロープ25を持ち上げ可能な浮力を確保しておく。
フロート30の浮力は素材または体積等を選択することで調整が可能である。
【0027】
<4.4>フロートの形状構造
フロート30の形状は特に制約がなく、図示した楕円形に限定されず、球体、円柱体、角柱体等の他の立体形状でもよい。
【0028】
本例ではフロート30の中央に形成した貫通穴に係留ロープ31の一端部を挿通して固定した形態を示しているが、係留ロープ31の一端部は貫通穴に限定されず、フロート30の一部に接続してあればよい。
【0029】
<4.5>フロートの他の形態
フロート30に蛍光色の色彩を塗布してフロート30の視認性を高めたり、蛍光塗料に防藻剤を混ぜて塗布してフロート30に藻を付着し難くしたりしてもよい。
【0030】
さらに、フロート30に番号を付して敷設することで、洗掘防止ユニット10の敷設時および撤去時の個数管理をし易くすることも可能である。
【0031】
[洗掘防止ユニットの敷設作業から撤去業まで]
洗掘防止ユニット10の製作、洗掘防止ユニット10の敷設作業から撤去作業までの一連の作業について説明する。
【0032】
<1>洗掘防止ユニットの製作
袋本体21に中詰材26を投入した後に、口絞りロープ24を絞り込んで袋体20に中詰材26を封入して洗掘防止ユニット10を製作する。
洗掘防止ユニット10の製作工程は公知であるので、詳しい説明を省略する。
本発明では、洗掘防止ユニット10の吊り部にフロート30を取り付けておく。
【0033】
<2>洗掘防止ユニットの敷設作業
図3を参照して洗掘防止ユニットの敷設作業について説明する。
洗掘防止ユニット10を単数単位でまたは複数単位で海底40に敷設する。
洗掘防止ユニット10の敷設作業にあたっては、吊りロープ25の途中を袋本体21の複数箇所(例えば6箇所)からループ状に引出し、引き出した吊りロープ25の複数箇所をクレーン等のフック50に掛止する。
【0034】
海底40に洗掘防止ユニット10を着床させると、吊りロープ25に接続したフロート30が真上に浮遊する。
洗掘防止ユニット10を段積みする場合、次層(下層)の洗掘防止ユニット10に設けたフロート30を上下層の洗掘防止ユニット10の間に挟み込んでもよい。
【0035】
フロート30は洗掘防止ユニット10の敷設時につぎのように機能する。
先行して敷設した洗掘防止ユニット10の真上にはフロート30が浮遊していて、敷設済みの洗掘防止ユニット10の位置を示している。
そのため、水深が深く視界の悪い現場であっても、フロート30を目印に敷設済みの洗掘防止ユニット10に隣接させて別途の洗掘防止ユニット10を短時間のうちに簡易に敷設できる。
【0036】
<3>洗掘防止ユニットの敷設中
図4は洗掘防止ユニット10の敷設後に長時間を経過した状態を示している。
敷設後に長時間が経過すると、洗掘防止ユニット10の吊りロープ25や袋体21の編地に藻や貝等が付着したり、洗掘防止ユニット10が堆積土砂等の被覆層41に埋もれたりする。
洗掘防止ユニット10の吊りロープ25に接続したフロート30は、海中で浮遊して可動しているため、藻や貝等が付着し難く、フロート30本体が被覆層41に埋もれる心配がない。
【0037】
<4>洗掘防止ユニットの撤去
前記したように、長時間経過しても敷設した一部の洗掘防止ユニット10に接続したフロート30が洗掘防止ユニット10から離隔して浮遊している。
洗掘防止ユニット10の全体が被覆層41で覆われていても、被覆層41から延出した係留ロープ31を通じてフロート30が海中で浮遊する。
そのため、海中で浮遊するフロート30を目印にして洗掘防止ユニット10の吊り部である吊りロープ25を発見することができる。
【0038】
潜水士の着底時や撤去時に堆積物が巻上げられて懸濁していても、浮遊するフロート30を目印にして、吊りロープ25の位置を特定することができる。
【0039】
図5に示すように、フロート30を手掛かりに吊りロープ25を手繰り出し、吊りロープ25にクレーン等のフック50を掛止して洗掘防止ユニット10を撤去する。
【0040】
フロート30の発見作業は、潜水士が行うだけでなく、水中ドローン等のロボットを用いて行うことも可能である。
同様に吊りロープ25にフック50を掛止する作業も、潜水士が行うだけでなく、作業ロボットを用いて行うことも可能である。
【0041】
上層の洗掘防止ユニット10を撤去した後、左右に隣接する各洗掘防止ユニット10も同様の手順で撤去する。
【0042】
上層の洗掘防止ユニット10を撤去したことで次層の洗掘防止ユニット10の上面が露出する。
次層の洗掘防止ユニット10の上面が露出したことでフロート30が浮遊する。
浮遊したフロート30を手掛かりに吊りロープ25を見つけ出し、クレーン等のフック50を掛止して次層の洗掘防止ユニット10を撤去する。
【0043】
以上のように、浮遊したフロート30を目印として洗掘防止ユニット10の吊りロープ25を容易に見つけ出すことができるので、洋上風力設備の耐用年数経過により設備撤去に伴う原状復旧が行われる際に、何層にも重なった洗掘防止ユニット10であっても上層から容易に撤去することができる。
【0044】
撤去時において、フロート30を通じて吊りロープ25の位置を明確に把握できる。
それにより潜水士は、安全な位置(クレーンのフックに挟まれない位置)に身をおいて、クレーンのフック50を誘導して玉掛を行えるので作業の安全性が向上する。
吊りロープ25の位置を早期に発見できることで、潜水士による潜水時間を短縮できて、潜水病のリスクが低減し、作業の安全性が向上する。
潜水士により一連の海中作業を行う場合は、潜水時間を大幅に短縮できるので作業効率が著しく向上して、洗掘防止ユニット10の撤去コストを削減できる。
【0045】
[他の利用方法]
以降に洗掘防止ユニットの他の敷設現場について説明する。
【0046】
<1>洗掘防止ユニットの積み直し作業
フロート30は洗掘防止ユニット10の積み直し作業においても活用することができる。
海中での海流、潮流等により洗掘防止ユニット10が損傷または変形した場合は、洗掘防止ユニット10の吊り部に接続したフロート30を目印に活用して洗掘防止ユニット10の吊りロープ25の位置を特定できるので、洗掘防止ユニット10の積み直し(補修・改修)作業を迅速に行うことができる。
海中だけでなく、河川における増水、急激な流れの変化による洗掘防止ユニット10の損傷または変形した場合も、フロート30を活用して洗掘防止ユニット10の積み直し(補修・改修)作業を迅速に行うことができる。
【0047】
<2>フロートのナンバリング
フロート30に番号を付けて設置することで、洗掘防止ユニット10の撤去時における個数管理を容易に行える。
さらに、フロート30に番号を付けて洗掘防止ユニット10を敷設することで、各層ごとの据え付け個数を番号で管理できる。
その据え付け番号が管理できることで、撤去時に、誤って次層の洗掘防止ユニット10を引き揚げることがなくなる。
【0048】
<3>洗掘防止ユニットの他の適用可能な工事
以上は、洋上風力発電施設のモノパイルの周囲の海底地盤に洗掘防止ユニット10を敷設する形態について説明したが、洗掘防止ユニット10は以下の各種工事に適用することができる。
【0049】
ア)橋脚回りの根固め工。
イ)港湾施設(防波堤、防潮堤)の根固め工。
ウ)河川工事の仮締切工(洗堀防止工)。
エ)撤去を必要とする仮設工事。
オ)災害復旧等の緊急応急仮設工事。
【符号の説明】
【0050】
10・・・・洗掘防止ユニット
20・・・・袋体
21・・・・袋本体
22・・・・網目
23・・・・開口部
24・・・・口絞りロープ
25・・・・吊りロープ(吊り部)
26・・・・中詰材
30・・・・フロート
31・・・・係留ロープ
40・・・・海底
41・・・・被覆層
図1
図2
図3
図4
図5