IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ルネサスエレクトロニクス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-半導体装置およびその製造方法 図1
  • 特開-半導体装置およびその製造方法 図2
  • 特開-半導体装置およびその製造方法 図3
  • 特開-半導体装置およびその製造方法 図4
  • 特開-半導体装置およびその製造方法 図5
  • 特開-半導体装置およびその製造方法 図6
  • 特開-半導体装置およびその製造方法 図7
  • 特開-半導体装置およびその製造方法 図8
  • 特開-半導体装置およびその製造方法 図9
  • 特開-半導体装置およびその製造方法 図10
  • 特開-半導体装置およびその製造方法 図11
  • 特開-半導体装置およびその製造方法 図12
  • 特開-半導体装置およびその製造方法 図13
  • 特開-半導体装置およびその製造方法 図14
  • 特開-半導体装置およびその製造方法 図15
  • 特開-半導体装置およびその製造方法 図16
  • 特開-半導体装置およびその製造方法 図17
  • 特開-半導体装置およびその製造方法 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018178
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10D 30/66 20250101AFI20250130BHJP
   H10D 12/00 20250101ALI20250130BHJP
   H10D 30/01 20250101ALI20250130BHJP
【FI】
H01L29/78 652C
H01L29/78 652Q
H01L29/78 655G
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 652M
H01L29/78 655B
H01L29/78 658G
H01L29/78 658A
H01L29/78 655E
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121670
(22)【出願日】2023-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松浦 仁
(57)【要約】
【課題】スイッチング特性が改善されたIGBTを有する半導体装置を提供する。
【解決手段】アクティブセルACの半導体基板SUB中に形成されたトレンチTR1およびトレンチTR2の内部には、ゲート絶縁膜GIを介してトレンチゲート電極GEおよびトレンチエミッタ電極EEが形成されている。トレンチTR1とトレンチTR2との間の半導体基板SUB中には、n型のホールバリア領域NHBが形成されている。ホールバリア領域NHB内には、p型のベース領域PBが形成されている。ベース領域PB内には、n型のエミッタ領域NEが形成されている。インアクティブセルIACの半導体基板SUB中には、p型のフローティング領域PFが形成されている。フローティング領域PFの深さは、トレンチTR1、TR2の深さよりも浅く、且つ、ベース領域PBの深さよりも深い。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面、および、前記上面と反対側の下面を有する第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板の前記上面から所定の深さに達するように、それぞれ前記半導体基板中に形成された第1トレンチ、第2トレンチおよび第3トレンチと、
第1絶縁膜を介して前記第1トレンチの内部に形成されたトレンチゲート電極と、
第2絶縁膜を介して前記第2トレンチの内部に形成された第1トレンチエミッタ電極と、
第3絶縁膜を介して前記第3トレンチの内部に形成された第2トレンチエミッタ電極と、
前記第1トレンチと前記第2トレンチとの間の前記半導体基板中に形成された前記第1導電型の第1ホールバリア領域と、
前記第1ホールバリア領域内に形成された、前記第1導電型と反対の第2導電型の第1ベース領域と、
前記第1ベース領域内に形成された前記第1導電型の第1エミッタ領域と、
前記第1トレンチと前記第3トレンチとの間の前記半導体基板中に形成された前記第1導電型の第2ホールバリア領域と、
前記第2ホールバリア領域内に形成された前記第2導電型の第2ベース領域と、
前記第2ベース領域内に形成された前記第1導電型の第2エミッタ領域と、
前記第2トレンチの両側面のうち前記第1ホールバリア領域が形成されている一方の側面と反対側の他方の側面側に位置する前記半導体基板中に形成された前記第2導電型の第1フローティング領域と、
前記第3トレンチの両側面のうち前記第2ホールバリア領域が形成されている一方の側面と反対側の他方の側面側に位置する前記半導体基板中に形成された前記第2導電型の第2フローティング領域と、
を備え、
前記半導体基板の前記上面からの前記第1フローティング領域および前記第2フローティング領域の各々の深さは、前記半導体基板の前記上面からの前記第1トレンチ、前記第2トレンチおよび前記第3トレンチの各々の深さよりも浅く、且つ、前記半導体基板の前記上面からの前記第1ベース領域および前記第2ベース領域の各々の深さよりも深い、半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1フローティング領域および前記第2フローティング領域の各々の不純物濃度は、前記第1ベース領域および前記第2ベース領域の各々の不純物濃度よりも高い、半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記半導体基板の前記上面からの前記第1ホールバリア領域および前記第2ホールバリア領域の各々の深さは、前記半導体基板の前記上面からの前記第1トレンチ、前記第2トレンチおよび前記第3トレンチの各々の深さよりも深い、半導体装置。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1トレンチ、前記第2トレンチおよび前記第3トレンチを覆うように、前記半導体基板の前記上面上に形成された層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜を貫通し、且つ、前記第1トレンチエミッタ電極、前記第1ベース領域および前記第1エミッタ領域に達する第1孔と、
前記層間絶縁膜を貫通し、且つ、前記第2トレンチエミッタ電極、前記第2ベース領域および前記第2エミッタ領域に達する第2孔と、
前記層間絶縁膜を貫通し、且つ、前記トレンチゲート電極に達する第3孔と、
前記第1孔の内部に形成された第1プラグと、
前記第2孔の内部に形成された第2プラグと、
前記第3孔の内部に形成された第3プラグと、
前記層間絶縁膜上に形成されたエミッタ配線およびゲート配線と、
を更に備え、
前記第1トレンチエミッタ電極、前記第1ベース領域および前記第1エミッタ領域は、前記第1プラグを介して前記エミッタ配線に電気的に接続され、
、前記第2トレンチエミッタ電極、前記第2ベース領域および前記第2エミッタ領域は、前記第2プラグを介して前記エミッタ配線に電気的に接続され、
前記トレンチゲート電極は、前記第3プラグを介して前記ゲート配線に電気的に接続され、
前記第1フローティング領域および前記第2フローティング領域は、それぞれ電気的にフローティング状態である、半導体装置。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体装置において、
前記第1フローティング領域上および前記第2フローティング領域上に位置する前記層間絶縁膜中には、孔が形成されていない、半導体装置。
【請求項6】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1トレンチ、前記第2トレンチおよび前記第3トレンチは、それぞれ平面視における第1方向に延在し、且つ、前記第1方向と直交する第2方向において互いに隣接し、
前記第1エミッタ領域および前記第2エミッタ領域は、前記第1トレンチに接しながら前記第1方向に断続的に延在している、半導体装置。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体装置において、
前記半導体基板の前記下面に形成された前記第2導電型のコレクタ領域と、
を更に備え、
IGBTのアクティブセルは、前記トレンチゲート電極、前記第1トレンチエミッタ電極、前記第2トレンチエミッタ電極、前記第1ホールバリア領域、前記第2ホールバリア領域、前記第1ベース領域、前記第2ベース領域、前記第1エミッタ領域、前記第2エミッタ領域および前記コレクタ領域を含む、半導体装置。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体装置において、
複数の前記アクティブセルを更に備え、
前記複数の前記アクティブセルは、前記第2方向で互いに隣接し、
前記第1フローティング領域または前記第2フローティング領域は、前記複数の前記アクティブセルの間に位置する前記半導体基板中に形成されている、半導体装置。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体装置において、
前記複数の前記アクティブセルの各々に含まれる前記第1トレンチ、前記第2トレンチおよび前記第3トレンチは、前記第2方向において同一ピッチで形成されている、半導体装置。
【請求項10】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1フローティング領域および前記第2フローティング領域は、それぞれ、前記半導体基板とpn接合を成す、半導体装置。
【請求項11】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第2トレンチの前記他方の側面は、前記第1ホールバリア領域に接せず、
前記第3トレンチの前記他方の側面は、前記第2ホールバリア領域に接しない、半導体装置。
【請求項12】
(a)上面、および、前記上面と反対側の下面を有する第1導電型の半導体基板を用意する工程、
(b)前記半導体基板の前記上面に、前記第1導電型の第1ホールバリア領域および前記第1導電型の第2ホールバリア領域を形成する工程、
(c)前記(b)工程後、平面視において前記第1ホールバリア領域を挟むように、前記半導体基板中に、第1トレンチおよび第2トレンチを形成し、平面視において前記第2ホールバリア領域を前記第1トレンチと挟むように、前記半導体基板中に、第3トレンチを形成する工程、
(d)前記(c)工程後、前記第1トレンチの内部に第1絶縁膜を形成し、前記第2トレンチの内部に第2絶縁膜を形成し、前記第3トレンチの内部に第3絶縁膜を形成する工程、
(e)前記(d)工程後、前記第1絶縁膜を介して前記第1トレンチの内部にトレンチゲート電極を形成し、前記第2絶縁膜を介して前記第2トレンチの内部に第1トレンチエミッタ電極を形成し、前記第3絶縁膜を介して前記第3トレンチの内部に第2トレンチエミッタ電極を形成する工程、
(f)前記(e)工程後、前記第1ホールバリア領域内に、前記第1導電型と反対の第2導電型の第1ベース領域を形成し、前記第2ホールバリア領域内に前記第2導電型の第2ベース領域を形成し、前記第2トレンチの両側面のうち前記第1ホールバリア領域が形成されている一方の側面と反対側の他方の側面側に位置する前記半導体基板中に、前記第2導電型の第1フローティング領域を形成し、前記第3トレンチの両側面のうち前記第2ホールバリア領域が形成されている一方の側面と反対側の他方の側面側に位置する前記半導体基板中に、前記第2導電型の第2フローティング領域を形成する工程、
(g)前記(f)工程後、前記第1ベース領域内に前記第1導電型の第1エミッタ領域を形成し、前記第2ベース領域内に前記第1導電型の第2エミッタ領域を形成する工程、
を備え、
前記半導体基板の前記上面からの前記第1フローティング領域および前記第2フローティング領域の各々の深さは、前記半導体基板の前記上面からの前記第1トレンチ、前記第2トレンチおよび前記第3トレンチの各々の深さよりも浅く、且つ、前記半導体基板の前記上面からの前記第1ベース領域および前記第2ベース領域の各々の深さよりも深い、半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1フローティング領域および前記第2フローティング領域の各々の不純物濃度は、前記第1ベース領域および前記第2ベース領域の各々の不純物濃度よりも高い、半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項11に記載の半導体装置の製造方法において、
(h)前記(b)工程と前記(c)工程との間で、熱処理を行う工程、
を更に備え、
前記第1ホールバリア領域および前記第2ホールバリア領域は、前記熱処理によって拡散され、
前記(c)工程後、前記半導体基板の前記上面からの前記第1ホールバリア領域および前記第2ホールバリア領域の各々の深さは、前記半導体基板の前記上面からの前記第1トレンチ、前記第2トレンチおよび前記第3トレンチの各々の深さよりも深い、半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項11に記載の半導体装置の製造方法において、
(i)前記(g)工程後、前記第1トレンチ、前記第2トレンチおよび前記第3トレンチを覆うように、前記半導体基板の前記上面上に層間絶縁膜を形成する工程、
(j)前記(i)工程後、前記層間絶縁膜を貫通し、且つ、前記第1トレンチエミッタ電極、前記第1ベース領域および前記第1エミッタ領域に達する第1孔と、前記層間絶縁膜を貫通し、且つ、前記第2トレンチエミッタ電極、前記第2ベース領域および前記第2エミッタ領域に達する第2孔とを形成する工程、
(k)前記(i)工程後、前記層間絶縁膜を貫通し、且つ、前記トレンチゲート電極に達する第3孔を形成する工程、
(l)前記(k)工程後、前記第1孔の内部に第1プラグを形成し、前記第2孔の内部に第2プラグを形成し、前記第3孔の内部に第3プラグを形成する工程、
(m)前記(l)工程後、前記層間絶縁膜上に、エミッタ配線およびゲート配線を形成する工程、
を更に備え、
前記第1トレンチエミッタ電極、前記第1ベース領域および前記第1エミッタ領域は、前記第1プラグを介して前記エミッタ配線に電気的に接続され、
前記第2トレンチエミッタ電極、前記第2ベース領域および前記第2エミッタ領域は、前記第2プラグを介して前記エミッタ配線に電気的に接続され、
前記トレンチゲート電極は、前記第3プラグを介して前記ゲート配線に電気的に接続され、
前記第1フローティング領域および前記第2フローティング領域は、それぞれ電気的にフローティング状態である、半導体装置の製造方法。
【請求項16】
複数のセルを有するIGBTを備えた半導体装置であって、
前記複数のセルの各々は、
n型の半導体基板に形成されたトレンチゲート電極、第1トレンチエミッタ電極および第2トレンチエミッタ電極と、
前記トレンチゲート電極と前記第1トレンチエミッタ電極との間に位置する前記半導体基板中に形成されたp型の第1ベース領域と、
前記トレンチゲート電極と前記第2トレンチエミッタ電極との間に位置する前記半導体基板中に形成されたp型の第2ベース領域と、
を有し、
前記複数のセルの各々の間に位置する前記半導体基板中には、p型のフローティング領域が形成され、
前記フローティング領域の深さは、前記トレンチゲート電極、前記第1トレンチエミッタ電極および前記第2トレンチエミッタ電極の各々の深さよりも浅く、且つ、前記第1ベース領域および前記第2ベース領域の各々の深さよりも深い、半導体装置。
【請求項17】
請求項16に記載の半導体装置において、
前記複数のセルの各々は、
前記第1ベース領域内に形成されたn型の第1エミッタ領域と、
前記第2ベース領域内に形成されたn型の第2エミッタ領域と、
前記トレンチゲート電極と前記第1トレンチエミッタ電極との間に位置する前記半導体基板中に形成されたn型の第1ホールバリア領域と、
前記トレンチゲート電極と前記第2トレンチエミッタ電極との間に位置する前記半導体基板中に形成されたn型の第2ホールバリア領域と、
を更に有し、
前記第1ベース領域は、前記第1ホールバリア領域内に形成され、
前記第2ベース領域は、前記第2ホールバリア領域内に形成され、
前記第1ホールバリア領域および前記第2ホールバリア領域の各々の不純物濃度は、前記半導体基板の不純物濃度よりも高く、
前記第1ベース領域は、前記第1エミッタ領域および前記第1ホールバリア領域とpn接合を成し、
前記第2ベース領域は、前記第2エミッタ領域および前記第2ホールバリア領域とpn接合を成し、
前記フローティング領域は、前記半導体基板とpn接合を成す、半導体装置。
【請求項18】
請求項17に記載の半導体装置において、
前記フローティング領域の不純物濃度は、前記第1ベース領域および前記第2ベース領域の各々の不純物濃度よりも高い、半導体装置。
【請求項19】
請求項17に記載の半導体装置において、
前記トレンチゲート電極、前記第1トレンチエミッタ電極および前記第2トレンチエミッタ電極を覆うように、前記半導体基板上に形成された層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜を貫通し、且つ、前記第1トレンチエミッタ電極、前記第1ベース領域および前記第1エミッタ領域に達する第1孔と、
前記層間絶縁膜を貫通し、且つ、前記第2トレンチエミッタ電極、前記第2ベース領域および前記第2エミッタ領域に達する第2孔と、
前記層間絶縁膜を貫通し、且つ、前記トレンチゲート電極に達する第3孔と、
前記第1孔の内部に形成された第1プラグと、
前記第2孔の内部に形成された第2プラグと、
前記第3孔の内部に形成された第3プラグと、
前記層間絶縁膜上に形成されたエミッタ配線およびゲート配線と、
を更に備え、
前記第1トレンチエミッタ電極、前記第1ベース領域および前記第1エミッタ領域は、前記第1プラグを介して前記エミッタ配線に電気的に接続され、
、前記第2トレンチエミッタ電極、前記第2ベース領域および前記第2エミッタ領域は、前記第2プラグを介して前記エミッタ配線に電気的に接続され、
前記トレンチゲート電極は、前記第3プラグを介して前記ゲート配線に電気的に接続され、
前記第1フローティング領域および前記第2フローティング領域は、それぞれ電気的にフローティング状態である、半導体装置。
【請求項20】
請求項16に記載の半導体装置において、
前記複数の前記セルの各々に含まれる前記トレンチゲート電極、前記第1トレンチエミッタおよび前記第2トレンチエミッタは、同一ピッチで形成されている、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、特に、トレンチの内部に形成されたゲート電極を備えた半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのパワー半導体素子を備えた半導体装置が広く使用されている。また、オン抵抗の低いIGBTとして、トレンチの内部にゲート電極を埋め込んだ構造を用いたIGBTが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、IE(Injection Enhancement)効果を利用したGGEE構造およびEGE構造のIGBTが開示されている。IE効果とは、IGBTがオン状態の際に、エミッタ配線EW側に正孔が排出され難くすることで、ドリフト領域に蓄積される電荷の濃度を高める技術である。
【0004】
なお、GGEE構造の「G」は、ゲート絶縁膜を介してトレンチの内部に埋め込まれ、且つ、ゲート電位に接続されたトレンチゲート電極を意味する。また、GGEE構造の「E」は、ゲート絶縁膜を介してトレンチの内部に埋め込まれ、且つ、エミッタ電位に接続されたトレンチエミッタ電極を意味する。従って、GGEE構造とは、一対のトレンチゲート電極からある程度離れた位置に、一対のトレンチエミッタ電極が形成された構造である。
【0005】
また、特許文献2には、GGEE構造のセルピッチがシュリンクされたGGEEs構造のIGBTが開示されている。GGEEs構造では、一対のトレンチエミッタ電極の間の距離が、一対のトレンチゲート電極の間の距離よりも短くされ、トレンチエミッタ電極およびベース領域が同じ孔によって接続されている。すなわち、GGEEs構造の「s」とは、一対のトレンチエミッタ電極の間の距離がシュリンクされていることを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-140885号公報
【特許文献2】特開2017-157733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
GGEE構造のIGBTは、例えば大電流を必要とするインバータに用いられている。この場合、負荷短絡耐量を確保するために、飽和電流密度は必要以上に高めることができない。また、このIGBTの設計では、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)成分を増やさず、伝導度変調を促進することで、オン電圧を下げることに重点が置かれている。
【0008】
一方で、エアコンなどの製品には、PFC(Power Factor Correction)用途のIGBTが用いられている。PFC用途のIGBTでは、スイッチング速度の高速化およびスイッチング損失の低減化が重要になる。また、負荷短絡耐量の確保についての優先度は低いので、飽和電流密度を高くすることができる。
【0009】
GGEE構造の製造工程を用いてPFC用途のIGBTを製造できれば、開発期間の短縮が図れ、新規の製造設備などが不要になり、製造コストの削減を図れる。その場合、オン電圧を低く維持すると共に、スイッチング速度の高速化およびスイッチング損失の低減化を図れるように、IGBTの設計を行う必要がある。
【0010】
本願の主な目的は、スイッチング特性が改善されたIGBTを有する半導体装置を提供することにある。その他の課題および新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0012】
一実施の形態に係る半導体装置は、上面、および、前記上面と反対側の下面を有する第1導電型の半導体基板と、前記半導体基板の前記上面から所定の深さに達するように、それぞれ前記半導体基板中に形成された第1トレンチ、第2トレンチおよび第3トレンチと、第1絶縁膜を介して前記第1トレンチの内部に形成されたトレンチゲート電極と、第2絶縁膜を介して前記第2トレンチの内部に形成された第1トレンチエミッタ電極と、第3絶縁膜を介して前記第3トレンチの内部に形成された第2トレンチエミッタ電極と、前記第1トレンチと前記第2トレンチとの間の前記半導体基板中に形成された前記第1導電型の第1ホールバリア領域と、前記第1ホールバリア領域内に形成された、前記第1導電型と反対の第2導電型の第1ベース領域と、前記第1ベース領域内に形成された前記第1導電型の第1エミッタ領域と、前記第1トレンチと前記第3トレンチとの間の前記半導体基板中に形成された前記第1導電型の第2ホールバリア領域と、前記第2ホールバリア領域内に形成された前記第2導電型の第2ベース領域と、前記第2ベース領域内に形成された前記第1導電型の第2エミッタ領域と、前記第2トレンチの両側面のうち前記第1ホールバリア領域が形成されている一方の側面と反対側の他方の側面側に位置する前記半導体基板中に形成された前記第2導電型の第1フローティング領域と、前記第3トレンチの両側面のうち前記第2ホールバリア領域が形成されている一方の側面と反対側の他方の側面側に位置する前記半導体基板中に形成された前記第2導電型の第2フローティング領域と、を備える。前記半導体基板の前記上面からの前記第1フローティング領域および前記第2フローティング領域の各々の深さは、前記半導体基板の前記上面からの前記第1トレンチ、前記第2トレンチおよび前記第3トレンチの各々の深さよりも浅く、且つ、前記半導体基板の前記上面からの前記第1ベース領域および前記第2ベース領域の各々の深さよりも深い。
【0013】
一実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、(a)上面、および、前記上面と反対側の下面を有する第1導電型の半導体基板を用意する工程、(b)前記半導体基板の前記上面側において、前記半導体基板中に、前記第1導電型の第1ホールバリア領域および前記第1導電型の第2ホールバリア領域を形成する工程、(c)前記(b)工程後、平面視において前記第1ホールバリア領域を挟むように、前記半導体基板中に、第1トレンチおよび第2トレンチを形成し、平面視において前記第2ホールバリア領域を前記第1トレンチと挟むように、前記半導体基板中に、第3トレンチを形成する工程、(d)前記(c)工程後、前記第1トレンチの内部に第1絶縁膜を形成し、前記第2トレンチの内部に第2絶縁膜を形成し、前記第3トレンチの内部に第3絶縁膜を形成する工程、(e)前記(d)工程後、前記第1絶縁膜を介して前記第1トレンチの内部にトレンチゲート電極を形成し、前記第2絶縁膜を介して前記第2トレンチの内部に第1トレンチエミッタ電極を形成し、前記第3絶縁膜を介して前記第3トレンチの内部に第2トレンチエミッタ電極を形成する工程、(f)前記(e)工程後、前記第1ホールバリア領域内に、前記第1導電型と反対の第2導電型の第1ベース領域を形成し、前記第2ホールバリア領域内に前記第2導電型の第2ベース領域を形成し、前記第2トレンチの両側面のうち前記第1ホールバリア領域が形成されている一方の側面と反対側の他方の側面側に位置する前記半導体基板中に、前記第2導電型の第1フローティング領域を形成し、前記第3トレンチの両側面のうち前記第2ホールバリア領域が形成されている一方の側面と反対側の他方の側面側に位置する前記半導体基板中に、前記第2導電型の第2フローティング領域を形成する工程、(g)前記(f)工程後、前記第1ベース領域内に前記第1導電型の第1エミッタ領域を形成し、前記第2ベース領域内に前記第1導電型の第2エミッタ領域を形成する工程、を備える。前記半導体基板の前記上面からの前記第1フローティング領域および前記第2フローティング領域の各々の深さは、前記半導体基板の前記上面からの前記第1トレンチ、前記第2トレンチおよび前記第3トレンチの各々の深さよりも浅く、且つ、前記半導体基板の前記上面からの前記第1ベース領域および前記第2ベース領域の各々の深さよりも深い。
【0014】
一実施の形態に係る半導体装置は、複数のセルを有するIGBTを備える。前記複数のセルの各々は、n型の半導体基板に形成されたトレンチゲート電極、第1トレンチエミッタ電極および第2トレンチエミッタ電極と、前記トレンチゲート電極と前記第1トレンチエミッタ電極との間に位置する前記半導体基板中に形成されたp型の第1ベース領域と、前記トレンチゲート電極と前記第2トレンチエミッタ電極との間に位置する前記半導体基板中に形成されたp型の第2ベース領域と、を有する。前記複数のセルの各々の間に位置する前記半導体基板中には、p型のフローティング領域が形成されている。前記フローティング領域の深さは、前記トレンチゲート電極、前記第1トレンチエミッタ電極および前記第2トレンチエミッタ電極の各々の深さよりも浅く、且つ、前記第1ベース領域および前記第2ベース領域の各々の深さよりも深い。
【発明の効果】
【0015】
一実施の形態によれば、スイッチング特性が改善されたIGBTを有する半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態1における半導体装置を示す平面図である。
図2】実施の形態1における半導体装置を示す要部平面図である。
図3】実施の形態1における半導体装置を示す断面図である。
図4】実施の形態1における半導体装置を示す断面図である。
図5】実施の形態1における半導体装置を示す要部断面図である。
図6】実施の形態1におけるアクティブセルおよびインアクティブセルの不純物濃度のプロファイルを示すグラフである。
図7】実施の形態1、検討例1および検討例2の構造を示す要部断面図である。
図8】実施の形態1、検討例1および検討例2の性能を示すグラフである。
図9】実施の形態1における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図10図9に続く製造工程を示す断面図である。
図11図10に続く製造工程を示す断面図である。
図12図11に続く製造工程を示す断面図である。
図13図12に続く製造工程を示す断面図である。
図14図13に続く製造工程を示す断面図である。
図15図14に続く製造工程を示す断面図である。
図16図15に続く製造工程を示す断面図である。
図17図16に続く製造工程を示す断面図である。
図18図17に続く製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0018】
また、本願において説明されるX方向、Y方向およびZ方向は、互いに交差し、互いに直交している。本願では、Z方向をある構造体の上下方向、高さ方向、深さ方向または厚さ方向として説明する。また、本願で用いられる「平面図」または「平面視」などの表現は、X方向およびY方向によって構成される面を「平面」とし、この「平面」をZ方向から見ることを意味する。
【0019】
(実施の形態1)
<半導体装置の構造>
以下に図1から図4を用いて、実施の形態1における半導体装置100の構造について説明する。
【0020】
図1は、半導体装置100である半導体チップを示す平面図である。図1に示されるように、半導体装置100の大部分はエミッタ配線EWで覆われている。ゲート配線GWは、平面視においてエミッタ配線EWを囲んでいる。
【0021】
ここでは図示していないが、エミッタ配線EWおよびゲート配線GWは、ポリイミド膜のような保護膜によって覆われている。エミッタ配線EW上およびゲート配線GW上において、上記保護膜の一部には開口部が設けられ、上記開口部で露出している領域が、エミッタパッドEPおよびゲートパッドGPになる。エミッタパッドEP上およびゲートパッドGP上に、外部接続用部材が接続されることで、半導体装置100が、他の半導体チップ、リードフレームまたは配線基板などに電気的に接続される。なお、外部接続用部材は、例えば、アルミニウム、金または銅からなるワイヤであるか、銅板からなるクリップなどである。
【0022】
図2は、図1に示される領域1Aに対応した要部平面図である。半導体装置100は、半導体基板SUBに形成されたIGBTを備える。このIGBTは、IE効果を利用したEGE構造のIGBTである。EGE構造のIGBTは、IGBTの主動作を行うための複数のアクティブセルACと、各アクティブセルACの間に設けられた複数のインアクティブセルIACとを有する。1つのアクティブセルACは、1つのトレンチゲート電極GEおよび2つのトレンチエミッタ電極EEを含む。複数のアクティブセルACは、X方向で互いに隣接する。各アクティブセルACの間に位置する半導体基板SUB中には、p型のフローティング領域PFが設けられている。
【0023】
図2に示されるように、複数のトレンチTR1、TR2は、Y方向に延在し、X方向で互いに隣接している。複数のトレンチTR1、TR2は、X方向において同一ピッチで形成されている。トレンチTR1の内部には、ゲート絶縁膜GIを介してトレンチゲート電極GEが形成されている。トレンチTR2の内部には、ゲート絶縁膜GIを介してトレンチエミッタ電極EEが形成されている。
【0024】
アクティブセルACの半導体基板SUB中には、p型のベース領域PBが形成されている。ベース領域PB内には、n型のエミッタ領域NEが形成されている。インアクティブセルIACの半導体基板SUB中には、フローティング領域PFが形成されている。エミッタ領域NEは、トレンチTR1に接しながらY方向に断続的に延在しているが、トレンチTR1の終端部付近(孔CH2の付近)には、エミッタ領域NEは、形成されていない。
【0025】
トレンチゲート電極GEには、孔CH2の内部に形成されたプラグPGを介してゲート配線GWが電気的に接続され、IGBTの動作時にゲート電位が供給される。トレンチエミッタ電極EE、ベース領域PBおよびエミッタ領域NEには、孔CH1の内部に形成されたプラグPGを介してエミッタ配線EWが電気的に接続され、IGBTの動作時にエミッタ電位が供給される。
【0026】
図3は、図2に示されるA-A線に沿った断面図である。半導体装置100は、上面、および、上面と反対側の下面を有するn型の半導体基板SUBを備える。半導体基板SUBは、n型のシリコンからなり、低濃度のn型のドリフト領域NVを有する。ここでは、n型の半導体基板SUB自体がドリフト領域NVを構成している。なお、半導体基板SUBは、n型のシリコン基板と、シリコン基板上にエピタキシャル成長法によって燐(P)を導入しながら成長させたn型のシリコン層との積層体であってもよい。その場合、n型のシリコン基板よりも低い不純物濃度を有するn型のシリコン層が、ドリフト領域NVを構成する。
【0027】
半導体基板SUBの下面には、n型のフィールドストップ領域(不純物領域)NSが形成されている。フィールドストップ領域NSの不純物濃度は、ドリフト領域NVの不純物濃度よりも高い。フィールドストップ領域NSは、IGBTのターンオフ時に、半導体基板SUBの上面側のpn接合から延びる空乏層が、p型のコレクタ領域PCに達することを抑制するために設けられている。
【0028】
半導体基板SUBの下面には、p型のコレクタ領域(不純物領域)PCが形成されている。コレクタ領域PCは、フィールドストップ領域NSの下方に位置している。
【0029】
半導体基板SUBの下面上には、コレクタ電極CEが形成されている。コレクタ電極CEは、コレクタ領域PCに電気的に接続され、コレクタ領域PCにコレクタ電位を供給する。コレクタ電極CEは、例えばAu膜、Ni膜、Ti膜またはAlSi膜のような単層の金属膜であるか、これらを適宜積層させた積層の金属膜である。
【0030】
なお、コレクタ電極CE、コレクタ領域PCおよびフィールドストップ領域NSは、アクティブセルACおよびインアクティブセルIACの半導体基板SUB全体に渡って形成されている。
【0031】
半導体基板SUBの上面から所定の深さに達するように、アクティブセルACの半導体基板SUB中には、それぞれトレンチTR1、TR2が形成されている。トレンチTR1、TR2は、後述するエミッタ領域NE、ベース領域PBおよびフローティング領域PFを貫通している。トレンチTR1、TR2の深さは、例えば2μm以上且つ6μm以下である。
【0032】
トレンチTR1、TR2の内部には、ゲート絶縁膜(絶縁膜)GIが形成されている。トレンチTR1の内部には、ゲート絶縁膜GIを介してトレンチゲート電極GEが形成されている。トレンチTR2の内部には、ゲート絶縁膜(絶縁膜)GIを介してトレンチエミッタ電極EEが形成されている。ゲート絶縁膜GIは、例えば酸化シリコン膜のような絶縁膜である。トレンチゲート電極GEおよびトレンチエミッタ電極EEは、導電性膜であり、例えばn型の不純物が導入された多結晶シリコン膜である。ゲート絶縁膜GIの厚さは、例えば70nm以上且つ150nm以下である。
【0033】
アクティブセルACにおいて、トレンチTR1とトレンチTR2との間(トレンチゲート電極GEとトレンチエミッタ電極EEとの間)の半導体基板SUB中には、n型のホールバリア領域(不純物領域)NHBが形成されている。ホールバリア領域NHBの不純物濃度は、ドリフト領域NVの不純物濃度よりも高く、かつ、エミッタ領域NEの不純物濃度よりも低い。半導体基板SUBの上面からのホールバリア領域NHBの深さは、半導体基板SUBの上面からのトレンチTR1、TR2の深さよりも深い。ホールバリア領域NHBは、IGBTの動作時に、正孔がベース領域PBに達して排出されることを抑制する。すなわち、正孔に対しバリアとして機能する。
【0034】
ホールバリア領域NHB内には、p型のベース領域(不純物領域)PBが形成されている。p型のベース領域PB内には、n型のエミッタ領域(不純物領域)NEが形成されている。エミッタ領域NEの不純物濃度は、ドリフト領域NVの不純物濃度よりも高い。半導体基板SUBの上面からのベース領域PBの深さは、半導体基板SUBの上面からのトレンチTR1、TR2の深さよりも浅い。トレンチTR1に接し、且つ、エミッタ領域NEの下方に位置するベース領域PBが、チャネル領域として使用される。
【0035】
IGBTの1つのアクティブセルACは、1つのトレンチTR1、2つのトレンチTR2、各トレンチTR1、TR2内の各ゲート絶縁膜GI、1つのトレンチゲート電極GE、2つのトレンチエミッタ電極EE、2つのホールバリア領域NHB、2つのベース領域PB、2つのエミッタ領域NEおよびコレクタ領域PCを含む。
【0036】
半導体基板SUBの上面側において、各アクティブセルACの間の半導体基板SUB中(インアクティブセルIACの半導体基板SUB中)には、p型のフローティング領域(不純物領域)PFが形成されている。フローティング領域PFは、ゲート配線GWおよびエミッタ配線EWに電気的に接続されておらず、電位が供給されておらず、電気的にフローティング状態である。
【0037】
アクティブセルACおよびインアクティブセルIACの半導体基板SUBの上面上には、トレンチTR1、TR2を覆うように、層間絶縁膜ILが形成されている。層間絶縁膜ILは、例えば酸化シリコン膜である。層間絶縁膜ILの厚さは、例えば600nm以上且つ1500nm以下である。
【0038】
層間絶縁膜IL中には、孔CH1が形成されている。孔CH1は、層間絶縁膜ILを貫通し、エミッタ領域NEよりも深い位置まで形成され、ベース領域PBを貫通しないように形成されている。言い換えれば、孔CH1は、層間絶縁膜ILに形成されている開口部と、半導体基板SUB中においてトレンチエミッタ電極EEとエミッタ領域NEとの間に跨るように形成されているリセス部とを含む。すなわち、孔CH1は、層間絶縁膜ILを貫通し、トレンチエミッタ電極EE、ベース領域PBおよびエミッタ領域NEに達している。言い換えれば、孔CH1は、平面視においてトレンチエミッタ電極EE、ベース領域PBおよびエミッタ領域NEに重なるように形成されている。
【0039】
また、孔CH1の底部の周囲のベース領域PBには、p型の高濃度拡散領域(不純物領域)PRが形成されている。高濃度拡散領域PRの不純物濃度は、ベース領域PBの不純物濃度よりも高い。高濃度拡散領域PRは、主に、プラグPGとの接触抵抗を低くするため、およびラッチアップを防止するために設けられている。
【0040】
孔CH1の内部には、プラグPGが埋め込まれている。プラグPGは、トレンチエミッタ電極EE、ベース領域PB、エミッタ領域NEおよび高濃度拡散領域PRに接触している。プラグPGは、バリアメタル膜と、上記バリアメタル膜上に形成された導電性膜とを含む。上記バリアメタル膜は、例えばチタン膜と、上記チタン膜上に形成された窒化チタン膜との積層膜である。上記導電性膜は、例えばタングステン膜である。
【0041】
孔CH1の上部では、層間絶縁膜ILが後退している。すなわち、半導体基板SUBの上面よりも上に位置する孔CH1の開口の大きさは、半導体基板SUBの上面よりも下に位置する孔CH1の開口の大きさよりも大きい。このため、エミッタ領域NEおよびトレンチエミッタ電極EEの各々の上面の一部が、層間絶縁膜ILから露出している。従って、プラグPGは、孔CH1の内部において、エミッタ領域NEおよびトレンチエミッタ電極EEの各々の側面に接触するだけでなく、エミッタ領域NEおよびトレンチエミッタ電極EEの各々の上面の一部にも接触する。これにより、プラグPGと、エミッタ領域NEおよびトレンチエミッタ電極EEとの接触抵抗を低減することができる。
【0042】
ここでは図示していないが、層間絶縁膜IL中には、図2に示される孔CH2も形成されている。孔CH2は、平面視においてトレンチゲート電極GEに重なるように形成され、層間絶縁膜ILを貫通し、トレンチゲート電極GEに達している。孔CH2の内部にも、プラグPGが形成されている。また、孔CH2の上部でも、層間絶縁膜ILが後退している。すなわち、半導体基板SUBの上面よりも上に位置する孔CH2の開口の大きさは、半導体基板SUBの上面よりも下に位置する孔CH2の開口の大きさよりも大きい。
【0043】
なお、フローティング領域PF上に位置する層間絶縁膜IL中には、孔CH1、CH2などのような孔が形成されていない。
【0044】
層間絶縁膜IL上には、エミッタ配線EWが形成されている。エミッタ配線EWは、孔CH1内のプラグPGを介して、トレンチエミッタ電極EE、ベース領域PB、エミッタ領域NEおよび高濃度拡散領域PRに電気的に接続され、これらにエミッタ電位を供給する。ここでは図示していないが、層間絶縁膜IL上には、エミッタ配線EWと同じ製造工程で形成されたゲート配線GWも形成されている。ゲート配線GWは、孔CH2内のプラグPGを介してトレンチゲート電極GEに電気的に接続され、トレンチゲート電極GEにゲート電位を供給する。
【0045】
このようなエミッタ配線EWおよびゲート配線GWは、バリアメタル膜と、上記バリアメタル膜上に形成された導電性膜とを含む。上記バリアメタル膜は、例えばTiW膜である。上記導電性膜は、例えば、銅またはシリコンが添加されたアルミニウム合金膜である。上記アルミニウム合金膜は、エミッタ配線EWおよびゲート配線GWの主導体膜であり、上記TiW膜よりも十分に厚い。
【0046】
<トレンチの周囲の不純物領域の詳細>
図4は、図3の断面構造のうち、トレンチTR1、トレンチTR2、および、それらの周囲の主要な不純物領域のみを示している。図5は、アクティブセルACの不純物濃度のプロファイルPacと、インアクティブセルIACの不純物濃度のプロファイルPiacとの断面方向を示している。図6は、図5に示される不純物濃度のプロファイルPac、Piacを示すグラフである。
【0047】
以下に図4から図6を用いて、1つのアクティブセルACに含まれる1つのトレンチTR1と、2つのトレンチTR2と、それらの周囲の不純物領域との詳細な関係について説明する。
【0048】
図4に示されるように、トレンチTR1は、側面SS1、側面SS1に対向する側面SS2、および、側面SS1と側面SS2とを繋ぐ底面BS1を有する。一方のトレンチTR2は、側面SS3、側面SS3に対向する側面SS4、および、側面SS3と側面SS4とを繋ぐ底面BS2を有する。他方のトレンチTR2は、側面SS5、側面SS5に対向する側面SS6、および、側面SS5と側面SS6とを繋ぐ底面BS3を有する。
【0049】
トレンチTR1および一方のトレンチTR2は、側面SS1と側面SS4とが隣接するように、離間して設けられている。トレンチTR1および他方のトレンチTR2は、側面SS2と側面SS5とが隣接するように、離間して設けられている。
【0050】
一方のホールバリア領域NHB、一方のベース領域PBおよび一方のエミッタ領域NEは、側面SS1と側面SS4との間の半導体基板SUBに設けられている。一方のホールバリア領域NHBは、側面SS1、側面SS4、底面BS1および底面BS2に接し、側面SS3には接しない。一方のベース領域PBは、側面SS1および側面SS4に接し、底面BS1および底面BS2には接しない。一方のエミッタ領域NEは、側面SS1に接する。
【0051】
他方のホールバリア領域NHB、他方のベース領域PBおよび他方のエミッタ領域NEは、側面SS2と側面SS5との間の半導体基板SUBに設けられている。他方のホールバリア領域NHBは、側面SS2、側面SS5、底面BS1および底面BS3に接し、側面SS6には接しない。他方のベース領域PBは、側面SS2および側面SS5に接し、底面BS1および底面BS3には接しない。他方のエミッタ領域NEは、側面SS2に接する。
【0052】
各フローティング領域PFは、側面SS3と側面SS6との間の半導体基板SUBに設けられ、側面SS3および側面SS6に接し、底面BS2および底面BS3には接しない。
【0053】
図4に示されるように、半導体基板SUBの上面からのベース領域PBの深さDpbと、半導体基板SUBの上面からのフローティング領域PFの深さDpfとは、半導体基板SUBの上面からのトレンチTR1およびトレンチTR2の各々の深さよりも浅い。
【0054】
また、図6の不純物濃度プロファイルから判るように、フローティング領域PFは、ベース領域PBよりも深い位置まで形成されている。すなわち、フローティング領域PFの深さDpfは、ベース領域PBの深さDpbよりも深い。また、フローティング領域PFの不純物濃度は、ベース領域PBの不純物濃度よりも実効的に高い。
【0055】
アクティブセルACの半導体基板SUB中には、ホールバリア領域NHBが形成されているが、インアクティブセルIACの半導体基板SUB中には、ホールバリア領域NHBのような、半導体基板SUB(ドリフト領域NV)よりも高濃度のn型の不純物領域が形成されていない。言い換えれば、アクティブセルACにおいて、ベース領域PBは、ホールバリア領域NHBおよびエミッタ領域NEとpn接合を成す。また、インアクティブセルIACにおいて、フローティング領域PFは、半導体基板SUB(ドリフト領域NV)とpn接合を成す。
【0056】
p型のベース領域PBが、半導体基板SUBよりも高濃度のn型のホールバリア領域NHB内に形成されているので、p型の導電性がn型の導電性に打ち消される割合が、ベース領域PBの方がフローティング領域PFよりも多くなる。従って、ホールバリア領域NHB内に形成されたベース領域PBの不純物濃度は、フローティング領域PFの不純物濃度よりも実効的に低くなる。また、ベース領域PBの深さDpbは、フローティング領域PFの深さDpfよりも浅くなる。
【0057】
<検討例と、実施の形態1の主な特徴>
以下に図7および図8を用いて、必要に応じて検討例1および検討例2の半導体装置との比較を行いながら、実施の形態1の半導体装置100の主な特徴について説明する。なお、検討例1および検討例2の半導体装置は、特許文献1または2に開示されている技術を基にして、本願発明者が検討を行ったものである。図8は、実施の形態1、検討例1および検討例2のターンオフ波形を示すグラフである。
【0058】
検討例1は、特許文献1などのGGEE構造の技術を参照したものである。図7に示されるように、インアクティブセルIACの半導体基板SUB中に、実施の形態1のフローティング領域PFの代わりに、p型の不純物領域PFaが形成されている。不純物領域PFaは、電気的にフローティング状態である。不純物領域PFaは、フローティング領域PFよりも深く形成され、トレンチTR2の底面(BS2、BS3)を覆うように形成されている。
【0059】
検討例2は、インアクティブセルIACの不純物構造を、エミッタ領域NEが無い点を除き、アクティブセルACの不純物構造と同様にしたものである。図7に示されるように、インアクティブセルIACの半導体基板SUB中に、n型のホールバリア領域NHBが形成され、ホールバリア領域NHB内にp型の不純物領域PFbが形成されている。不純物領域PFbは、ベース領域PBと同じ製造工程によって形成されているが、不純物領域PFbは、電気的にフローティング状態である。
【0060】
PFC用途のIGBTでは、負荷短絡耐量の確保についての優先度は低いので、飽和電流密度を高くすることができる。そのために、IGBTの単位面積当たりのMOSFET成分を増やす必要がある。GGEE構造では、2つのトレンチゲート電極GEの各々の一方の側面でMOSFET成分を構成していた。実施の形態1のEGE構造では、1つのトレンチゲート電極GEの両側面でMOSFET成分を構成できる。そのため、IGBTの単位面積当たりのMOSFET成分を増やせる。
【0061】
また、GGEE構造では、トレンチゲート電極GEとトレンチエミッタ電極EEとの間の距離が相対的に長くなっているが、実施の形態1の複数のトレンチTR1、TR2は、同一ピッチで形成されている。この点においても、IGBTの単位面積当たりのMOSFET成分を更に増やせる。
【0062】
また、トレンチエミッタ電極EE、ベース領域PBおよびエミッタ領域NEと、エミッタ配線EWとの接続を、1つの孔CH1(1つのプラグPG)で共通化させているので、IGBTの微細化を図れる。これにより、IGBTの単位面積当たりのMOSFET成分を更に増やせる。
【0063】
また、図2に示されるように、エミッタ領域NEは、トレンチTR1に接しながらY方向に断続的に延在している。これにより、MOSFET成分のゲート幅が広くなるので、飽和電流密度を更に高くすることができる。
【0064】
しかしながら、MOSFET成分を増やすと、トレンチゲート電極GEとドリフト領域NVとの間の寄生容量が増加し、スイッチング速度が低下し、スイッチング損失が高くなる。そのため、各トレンチエミッタ電極EEの間にフローティング領域PFを設けることで、半導体基板SUBの下面から注入される正孔を蓄積する。
【0065】
ここで、フローティング領域PFをソースとし、ベース領域PBをドレインとし、ドリフト領域NVおよびホールバリア領域NHBをチャネルとし、エミッタ電位にされているトレンチエミッタ電極EEをゲートとした寄生PMOSが構成されている。正孔がフローティング領域PFに十分に蓄積されて、電位が高くなると、寄生PMOSがオン状態になる。そうすると、正孔が、フローティング領域PFからベース領域PBへ移動し、エミッタ配線EWへ自動的に排出される。そのため、スイッチング速度の低下およびスイッチング損失の増加を抑制できる。また、寄生PMOSの上記機能により、フローティング領域PFの電位変動が抑制されるので、トレンチゲート電極GEの電位が安定し、スイッチング時のスイッチング損失を抑制できる。
【0066】
図7に示されるように、検討例1では、フローティング領域PFの代わりに、相対的に深い不純物領域PFaが形成されている。この場合、不純物領域PFaに正孔が蓄積されるが、不純物領域PFaの正孔が全て排出されるまで、トレンチエミッタ電極EEとトレンチゲート電極GEとの間で、空乏層が広がれない。それ故、図8に示されるように、検討例1では、実施の形態1よりも、コレクタ電圧Vcの立ち上がりが遅くなり、コレクタ電流Icが流れる時期が遅くなる。すなわち、検討例1では、ターンオフが遅れ、スイッチング速度が低下する。
【0067】
また、GGEE構造のように、トレンチエミッタ電極EEとトレンチゲート電極GEとの間の距離が相対的に長い場合、ブレークダウン電圧BVCES(コレクタ領域PCとエミッタ領域NEとの間の耐圧)が低下するので、不純物領域PFaのような深いp型不純物領域が必要になる。しかしながら、実施の形態1のように、複数のトレンチTR1、TR2が同一ピッチで形成されている場合、エミッタ電位のトレンチエミッタ電極EEが均一に並んでいるので、ブレークダウン電圧BVCESの低下を懸念する必要が無くなる。そのため、実施の形態1のフローティング領域PFの深さは、トレンチTR2の深さよりも浅くなっていてもよい。
【0068】
なお、フローティング領域PFを挟んで隣接する2つのトレンチTR2(トレンチエミッタ電極EE)の間の距離を、トレンチTR1(トレンチゲート電極GE)とトレンチTR2(トレンチエミッタ電極EE)との間の距離よりも狭くしてもよい。これにより、半導体装置100内におけるMOSFET成分の比率を増加できる。そのため、オン電圧の低減化またはスイッチング特性の改善を図れる場合がある。
【0069】
図7に示されるように、検討例2では、p型の不純物領域PFb下にホールバリア領域NHBが形成されている。この場合、半導体基板SUBの下面から注入される正孔が、ホールバリア領域NHBによって阻害され、図8に示されるように、検討例2では、実施の形態1よりも、コレクタ電圧Vcの立ち上がりが遅くなり、コレクタ電流Icが流れる時期が遅くなる。すなわち、検討例2では、ターンオフが遅れ、スイッチング速度が低下する。
【0070】
以上のように、実施の形態1では、アクティブセルACにEGE型のIGBTを適用し、インアクティブセルIACにフローティング領域PFを設けたことで、オン電圧を低く維持すると共に、スイッチング速度の高速化およびスイッチング損失の低減化を図れる。すなわち、実施の形態1によれば、スイッチング特性が改善されたIGBTを備えた半導体装置100を提供できる。
【0071】
<半導体装置の製造方法>
以下に図9から図18を用いて、実施の形態1における半導体装置100の製造方法に含まれる各製造工程について説明する。
【0072】
図9に示されるように、まず、上面および下面を有するn型の半導体基板SUBを用意する。半導体基板SUBはシリコンからなる。上述のように、半導体基板SUBは、n型のシリコン基板と、シリコン基板上にエピタキシャル成長法によって燐(P)を導入しながら成長させたn型のシリコン層との積層体であってもよい。
【0073】
次に、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法によって、半導体基板SUBの上面側において、半導体基板SUB中に、ホールバリア領域NHBを選択的に形成する。
【0074】
図10に示されるように、半導体基板SUBの上面側において、トレンチTR1とトレンチTR2との間にホールバリア領域NHBが位置するように、半導体基板SUB中に、トレンチTR1およびトレンチTR2を形成する。言い換えれば、平面視においてホールバリア領域NHBを挟むように、半導体基板SUB中に、トレンチTR1およびトレンチTR2を形成する。
【0075】
まず、半導体基板SUBの上面上に、例えばCVD法によって、例えば酸化シリコン膜を形成する。次に、上記酸化シリコン膜上に、開口部を有するレジストパターンを形成する。次に、上記レジストパターンをマスクとして異方性エッチング処理を行うことで、上記酸化シリコン膜をパターニングし、ハードマスクHMを形成する。次に、アッシング処理によって上記レジストパターンを除去する。
【0076】
次に、ハードマスクHMをマスクとして異方性エッチング処理を行うことで、半導体基板SUB中に、半導体基板SUBの上面から所定の深さに達するトレンチTR1およびトレンチTR2を形成する。その後、例えばフッ酸を含む溶液を用いたウェットエッチング処理によって、ハードマスクHMを除去する。
【0077】
図11に示されるように、トレンチTR1の内部、トレンチTR2の内部および半導体基板SUBの上面上に、犠牲酸化膜IF1を形成する。これにより、半導体基板SUB中に形成されたダメージ層が除去される。その後、例えばフッ酸を含む溶液を用いた等方性エッチング処理によって、上記犠牲酸化膜IF1を除去する。
【0078】
なお、犠牲酸化膜IF1は、半導体基板SUBに対して熱処理を行うことで形成される。この熱処理は、例えば1100℃、30分以上且つ60分以下の条件下で、酸素ガスが充満された雰囲気中で行われる。
【0079】
この熱処理によって、ホールバリア領域NHBに含まれる不純物は拡散される。半導体基板SUBの上面からのホールバリア領域NHBの深さは、半導体基板SUBの上面からのトレンチTR1およびトレンチTR2の各々の深さよりも深くなる。
【0080】
図12に示されるように、トレンチTR1、TR2の内部に、ゲート絶縁膜(絶縁膜)GIおよび導電性膜CF1を形成する。
【0081】
まず、例えば950℃、60分の条件下で、酸素ガスおよび水素ガスを用いた熱処理によって、トレンチTR1、TR2の内部および半導体基板SUBの上面上に、ゲート絶縁膜GIを形成する。
【0082】
次に、ゲート絶縁膜GIを介してトレンチTR1、TR2の内部を埋め込むように、ゲート絶縁膜GI上に、例えばCVD法によって、導電性膜CF1を形成する。導電性膜CF1は、例えばn型の不純物が導入された多結晶シリコン膜である。
【0083】
図13に示されるように、ゲート絶縁膜GIを介してトレンチTR1の内部にトレンチゲート電極GEを形成し、ゲート絶縁膜GIを介してトレンチTR2の内部にトレンチエミッタ電極EEを形成する。
【0084】
まず、異方性エッチング処理によって、トレンチTR1、TR2の外部に形成されていた導電性膜CF1を除去する。トレンチTR1の内部に形成されていた導電性膜CF1が、トレンチゲート電極GEとして残され、トレンチTR2の内部に形成されていた導電性膜CF1が、トレンチエミッタ電極EEとして残される。次に、等方性エッチング処理若しくは異方性エッチング処理、または、これらを組み合わせたエッチング処理によって、トレンチTR1、TR2の外部に形成されていたゲート絶縁膜GIを除去する。
【0085】
図14に示されるように、イオン注入法によって、ホールバリア領域NHB内に、p型のベース領域PBを形成する。同時に、トレンチTR2の両側面のうちホールバリア領域NHBが形成されている一方の側面と反対側の他方の側面側に位置する半導体基板SUB中に、p型のフローティング領域PFを形成する。なお、p型のベース領域PBおよびフローティング領域PFは、複数回のイオン注入によって形成されていても良い。各回の注入エネルギーを適切に調整することで、所望の深さのフローティング領域PFを形成することができる。
【0086】
すなわち、図4を参照すると、側面SS1と側面SS4との間および側面SS2と側面SS5との間に位置する半導体基板SUB中に、それぞれベース領域PBを形成すると共に、側面SS3と側面SS6との間に位置する半導体基板SUB中に、フローティング領域PFを形成する。言い換えれば、アクティブセルACの半導体基板SUB中に、ベース領域PBを形成すると共に、インアクティブセルIACの半導体基板SUB中に、フローティング領域PFを形成する。
【0087】
図15に示されるように、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法によって、ベース領域PB内に、n型のエミッタ領域NEを選択的に形成する。その後、ホールバリア領域NHB、フローティング領域PF、ベース領域PBおよびエミッタ領域NEに含まれる不純物を活性化させるための熱処理を行う。この熱処理は、例えば、900℃以上且つ1000℃以下、30秒以上且つ50秒以下の条件下で、窒素ガスのような不活性ガスが充満された雰囲気中で行われる。
【0088】
この時点で、図6に示される不純物濃度のプロファイルが構成される。ベース領域PBが形成される半導体基板SUB中には、ホールバリア領域NHBが形成されているが、フローティング領域PFが形成される半導体基板SUB中には、ホールバリア領域NHBのような、半導体基板SUB(ドリフト領域NV)よりも高濃度のn型の不純物領域が形成されていない。そのため、p型の導電性がn型の導電性に打ち消される割合が、ベース領域PBの方がフローティング領域PFよりも多くなる。従って、ベース領域PBおよびフローティング領域PFは同じイオン注入工程で形成されるが、ベース領域PBの不純物濃度は、フローティング領域PFの不純物濃度よりも実効的に低くなる。また、ベース領域PBの深さDpbは、フローティング領域PFの深さDpfよりも浅くなる。
【0089】
図16に示されるように、まず、トレンチTR1、TR2を覆うように、例えばCVD法によって、半導体基板SUBの上面上に、層間絶縁膜ILを形成する。層間絶縁膜ILは、例えば酸化シリコン膜である。
【0090】
次に、フォトリソグラフィ技術および異方性エッチング処理によって、層間絶縁膜IL中に孔CH1を形成する。孔CH1は、トレンチエミッタ電極EE、ベース領域PBおよびエミッタ領域NEに達している。次に、イオン注入法によって、孔CH1の底部に位置するベース領域PB内に、p型の高濃度拡散領域PRを選択的に形成する。
【0091】
次に、ここでは図示していないが、フォトリソグラフィ技術および異方性エッチング処理によって、層間絶縁膜IL中に、トレンチゲート電極GEに達する孔CH2を形成する。孔CH1を形成する工程と、孔CH2を形成する工程とは、何れが先であってもよい。
【0092】
孔CH1および孔CH2を形成する工程時だけでなく、以降の製造工程においても、フローティング領域PF上に位置する層間絶縁膜IL中には、孔が形成されない。従って、フローティング領域PFは、電位が供給されない領域になり、電気的にフローティング状態になる。
【0093】
図17に示されるように、層間絶縁膜ILに対して等方性エッチング処理を行うことで、層間絶縁膜ILを後退させる。これにより、半導体基板SUBの上面上に位置する孔CH1の開口幅は、それぞれ半導体基板SUBの内部に位置する孔CH1の開口幅よりも大きくなる。なお、この等方性エッチング処理によって、孔CH2の層間絶縁膜ILも後退する。
【0094】
図18に示されるように、孔CH1の内部にプラグPGを形成し、層間絶縁膜IL上にエミッタ配線EWを形成する。
【0095】
まず、孔CH1の内部および層間絶縁膜IL上に、バリアメタル膜を形成する。例えばスパッタリング法によって孔CH1の内部および層間絶縁膜IL上にチタン膜を形成し、例えばスパッタリング法によって上記チタン膜上に窒化チタン膜を形成することで、上記バリアメタル膜を形成できる。次に、孔CH1の内部を埋め込むように、例えばCVD法によって、上記バリアメタル膜上に、例えばタングステン膜からなる導電性膜を形成する。次に、異方性エッチング処理によって、孔CH1の外部に形成されている上記導電性膜および上記バリアメタル膜を除去する。これにより、孔CH1の内部を埋め込むように、プラグPGが形成される。なお、これらの製造工程時に、孔CH2の内部にもプラグPGが形成される。
【0096】
次に、層間絶縁膜IL上に、エミッタ配線EWを形成する。まず、例えばスパッタリング法によって、層間絶縁膜IL上にTiW膜を形成し、例えばスパッタリング法によって、上記TiW膜上にアルミニウム合金膜を形成する。次に、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング処理によって、上記TiW膜および上記アルミニウム合金膜をパターニングすることで、エミッタ配線EWを形成する。なお、これらの製造工程時に、層間絶縁膜IL上にゲート配線GWも形成される。
【0097】
その後、以下の製造工程を経て、図3の構造が得られる。まず、必要に応じてウェハを極薄に研削する。次に、半導体基板SUBの下面からイオン注入を行うことで、半導体基板SUB中に、n型のフィールドストップ領域NSおよびp型のコレクタ領域PCを形成する。これらのイオン注入の後に、レーザアニールを行うことで、フィールドストップ領域NSおよびコレクタ領域PCに含まれる不純物を活性化させる。次に、半導体基板SUBの下面上に、例えばスパッタリング法によって、例えばAu膜、Ni膜、Ti膜またはAlSi膜のような金属膜を形成する。この金属膜が、コレクタ電極CEとなる。コレクタ電極CEは、上記金属膜を適宜積層させた積層膜であってもよい。
【0098】
このように、実施の形態1の製造方法によれば、特許文献1に示されるようなGGEE構造およびEGE構造のIGBTを形成するための製造工程と同じ製造工程を用いて、半導体装置100を製造できる。従って、開発期間の短縮が図れ、新規の製造設備などが不要になり、製造コストの削減を図れる。
【0099】
更に、実施の形態1の製造方法によれば、ベース領域PBを形成する工程で、フローティング領域PFを形成できる。従って、特許文献1などに示される深いフローティング領域の形成を省略できるので、その分の製造コストの削減も図れる。
【0100】
以上、本発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0101】
100 半導体装置
1A 領域
AC アクティブセル
BS1、BS2、BS3 トレンチの底面
CE コレクタ電極
CF1 n型の導電性膜
CH1、CH2 孔
EE トレンチエミッタ電極
EP エミッタパッド
EW エミッタ配線
GE トレンチゲート電極
GI ゲート絶縁膜(絶縁膜)
GP ゲートパッド
GW ゲート配線
HM ハードマスク
IAC インアクティブセル
IF1 犠牲酸化膜
IL 層間絶縁膜
NE n型のエミッタ領域
NHB n型のホールバリア領域
NS n型のフィールドストップ領域
NV n型のドリフト領域
PB p型のベース領域
PC p型のコレクタ領域
PF p型のフローティング領域
PFa、PFb p型の不純物領域
PG プラグ
PR p型の高濃度拡散領域
SS1、SS2、SS3、SS4、SS5、SS6 トレンチの側面
SUB 半導体基板
TR1、TR2 トレンチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18