IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本サーモスタット株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電動弁 図1
  • 特開-電動弁 図2
  • 特開-電動弁 図3
  • 特開-電動弁 図4
  • 特開-電動弁 図5
  • 特開-電動弁 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018201
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】電動弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 5/06 20060101AFI20250130BHJP
   F16K 31/04 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
F16K5/06 A
F16K31/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121710
(22)【出願日】2023-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000228741
【氏名又は名称】日本サーモスタット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】熊代 毅
【テーマコード(参考)】
3H054
3H062
【Fターム(参考)】
3H054AA03
3H054BB24
3H054BB30
3H054CB09
3H054DD04
3H054EE01
3H054GG02
3H062AA05
3H062AA15
3H062BB05
3H062BB26
3H062CC01
3H062FF40
(57)【要約】
【課題】電動弁において、弁体が回転し冷却液の流出口と弁孔とが連通する際の冷却液の前記流出口への急激な流出を防止し、冷却液の微小流量を制御し、異物の詰まりを抑制する。
【解決手段】一端に開口を有し、周面に連通口11bを有するハウジング11と、前記ハウジング内に回転可能に挿入されて前記連通口を開閉する弁体12と、前記連通口に装着されて前記弁体の周面に摺接する筒状のシール部材14と、前記弁体を回転駆動する駆動装置と、を備え、前記弁体は、筒状の弁本体12bを有し、前記弁本体には、前記連通口を閉塞可能な外壁と、前記連通口と連通可能な弁孔と、前記弁本体の一端に形成されて前記開口と連通する弁開口と、が形成され、前記筒状のシール部材は、開口が形成された該シール部材の一端部が前記弁体の周面に摺接し、前記シール部材の一端部には、前記開口に繋がる溝部14cが形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に開口を有し、周面に連通口を有するハウジングと、前記ハウジング内に回転可能に挿入されて前記連通口を開閉する弁体と、前記連通口に装着されて前記弁体の周面に摺接する筒状のシール部材と、前記弁体を回転駆動する駆動装置と、を備え、
前記弁体は、筒状の弁本体を有し、
前記弁本体には、
前記ハウジングの連通口を閉塞可能な外壁と、前記連通口と連通可能な弁孔と、前記弁本体の一端に形成されて前記ハウジングの開口と連通する弁開口と、が形成され、
前記筒状のシール部材は、開口が形成された該シール部材の一端部が前記弁体の周面に摺接し、前記シール部材の一端部には、前記開口に繋がる溝部が形成されていることを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記開口が形成された前記シール部材の一端部における少なくとも前記溝部よりも径方向外側の領域は、前記弁体の周面と摺接可能に形成されていることを特徴とする請求項1に記載された電動弁。
【請求項3】
前記シール部材は、
該シール部材の外周面に形成され、前記連通口側に形成された凸部または凹部と係合する凹形状または凸形状の係合部を備えることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用冷却装置に用いられるロータリ式の流量制御弁では、バルブハウジング(弁体収容部)内に外壁が球面、あるいは直胴に形成された円筒状の弁体を、外部から回転操作可能に収容配置したものがある。このロータリ式の流量制御弁では、球体状あるいは円筒状の弁体を用いるとともに、バルブハウジング内に接続させて設けられている通路に対し、弁体の回転動作により前記通路への流出口を適宜開閉することにより所望の動作が得られるように構成されている。即ち、前記弁体の側面には弁孔が形成されており、弁体の回転動作により前記弁孔をバルブハウジングの内面に形成された流出口の位置に重ね、冷却液を前記流出口に流すようにしている。
【0003】
ところで、このような流量制御弁にあっては、弁体の回転によって前記流出口と弁孔との連通状態が切り換えられる。そして、弁体の回転による連通状態の切り換えが急激に行われると、流出口を流れる冷却液の流量が急激に変化し、流出口側の圧力変動や温度変化が大きくなり易い。
その対策として、特許文献1には、流出口と弁孔とが連通を開始する連通開始初期等に、弁孔側からの冷却液の流入量を漸増させるようにした構造が開示されている。
【0004】
特許文献1に開示される流量制御弁は、図6に模式的に示すように筒状の弁体50の周壁部51に形成された弁孔52の縁部のうち、弁体50の回転方向の前方側に、周壁部を貫通するスリット52aが形成されている。スリット52aは、弁孔52から弁体50の回転方向に沿って延び、流出口が弁孔52と直接連通する前段階で、弁体50の内側領域の冷却液を、スリット52aを通して流出口に誘導する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-138452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されるように弁孔52の縁部に壁部を貫通するスリット52aを形成した場合、微小流量を流そうとするとスリットの幅が狭くなる。これにより、スリットに異物が詰まる虞があった。
【0007】
本発明は、前記した点に着目してなされたものであり、電動弁において、弁体が回転し、冷却液の流出口と弁孔とが連通する際の冷却液の前記流出口への急激な流出を防止し、冷却液の微小流量を制御することができ、異物の詰まりを抑制できる電動弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決するために、本発明に係る電動弁は、一端に開口を有し、周面に連通口を有するハウジングと、前記ハウジング内に回転可能に挿入されて前記連通口を開閉する弁体と、前記連通口に装着されて前記弁体の周面に摺接する筒状のシール部材と、前記弁体を回転駆動する駆動装置と、を備え、前記弁体は、筒状の弁本体を有し、前記弁本体には、前記ハウジングの連通口を閉塞可能な外壁と、前記連通口と連通可能な弁孔と、前記弁本体の一端に形成されて前記ハウジングの開口と連通する弁開口と、が形成され、前記筒状のシール部材は、開口が形成された該シール部材の一端部が前記弁体の周面に摺接し、前記シール部材の一端部には、前記開口に繋がる溝部が形成されていることに特徴を有する。
【0009】
このような構成によれば、電動弁において、前記弁体の回転により前記溝部が弁孔と最初に重なるようにすることによって、冷却液は、前記溝部から連通口(流出口)へと流れ始める。このため、冷却液の前記連通口への急激な流出を防止し、冷却液の微小流量を制御することができる。また、従来のような幅の狭いスリットから微小流量を流す構造ではないため、異物の詰まりを抑制することができる。
【0010】
また、前記開口が形成された前記シール部材の一端部における少なくとも前記溝部よりも径方向外側の領域は、前記弁体の周面と摺接可能に形成されていることが望ましい。
このように構成すれば、弁孔と連通口とが重ならないときのシール作用の低下を抑制することができる。
【0011】
また、前記シール部材は、該シール部材の外周面に形成され、前記連通口側に形成された凸部または凹部と係合する凹形状または凸形状の係合部を備えることが望ましい。
このようにシール部材の外周面に、回転抑止用の係合部を設けることによって、シール部材の周方向への回転を抑止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る電動弁によれば、弁体が回転し、冷却液の流出口と弁孔とが連通する際の冷却液の前記流出口への急激な流出を防止し、冷却液の微小流量を制御することができ、異物の詰まりを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本実施形態の電動弁の構成例を示す断面図である。
図2図2は、図1の電動弁が備える弁体の斜視図である。
図3図3は、本実施形態のシール部材の斜視図である。
図4図4は、図3のシール部材の断面図である。
図5図5(a)は、図3のシール部材が有する溝部の平面図であり、図5(b)は溝部の変形例を示す平面図である。
図6図6は、従来の弁孔の形状を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明にかかる電動弁の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、本願の明細書および図面において、同様に説明することが可能な要素については、同一の符号を付すことにより重複説明を省略する場合がある。
【0015】
図1は、一実施形態の電動弁の構成例を示す断面図である。なお、本実施形態においては、説明の便宜上、図1中の上下を単に「上」「下」という。
【0016】
本実施形態の電動弁1は、たとえば、エンジン(シリンダヘッド側)から流出した冷却液がラジエータを経由してエンジン(シリンダブロック側)へ戻る冷却路と、エンジンから流出した冷却液がラジエータを経由せずに(迂回して)エンジンへ戻るバイパス路と、を備えた自動車の冷却回路(冷却液の循環システム)において使用することを想定する。そして、この電動弁1は、弁体に形成された弁孔を開閉制御することにより、エンジンを通り流入した冷却液を冷却路およびバイパス路へ向けてそれぞれ放出するとともに、その流量を制御する。
【0017】
<電動弁の基本構造>
本実施形態の電動弁1は、冷却液の流入口11aおよび複数の流出口11b(11b1,11b2)が形成されたハウジング11と、ハウジング11の内部空間に収容されかつ当該内部空間で軸線を中心に回転可能な弁体12と、流出口11bに接続されるアダプタ13(131,132)と、弁体12に形成された弁孔12f(12f,12f)を通過してアダプタ13側に放出する冷却液の漏れを阻止するためのシール部材14(141,142)とを備える。この電動弁1は、車両に搭載された制御装置(図示せず)からの指示で弁体12の回転を制御することによって、たとえば、冷却路およびバイパス路へ向けて冷却液を適切に放出する。
【0018】
以下、本実施形態の電動弁1の構造をさらに具体的に説明する。なお、本実施形態においては、弁体12の回転中心となる軸線に沿う方向を「軸方向」、軸線に直交する方向を「径方向」、軸線回りの方向を「周方向」と記述する。
【0019】
ハウジング11は、弁体12を収容する内部空間(弁体収容部20)を有する本体部11cと、本体部11cの上部面との間に減速機15を収容するための空間を形成する有底形状の蓋部11dと、を備え、本体部11cの上部面に蓋部11dの開口端部(周縁)を取り付け、蓋部11dの内部空間を閉塞する。また、蓋部11dの空間に収容された減速機15は、複数の歯車を備え、制御装置からの指令により動作するモータ(駆動装置:図示せず)の回転を減速して弁体12へ伝える機能を有する。
【0020】
また、ハウジング11において、本体部11cの上部には、弁体12の回転軸として機能するシャフト12aを挿通させた状態で回転自在に支持する円筒状の挿通筒部11eが設けられる。挿通筒部11eの内周には、シャフト12aの上部を回転自在に支持する軸受け11fが設けられている。
【0021】
また、ハウジング11において、本体部11cの周面(弁体収容部20の内壁20a)には、連通口である略円筒状の流出口11b(11b1,11b2)が、径方向外方へ突設されている。そして、図1に示す流出口11b1,11b2は、軸方向および周方向において、それぞれ異なる位置に設けられている。さらに、流出口11bには、上述した冷却路およびバイパス路と連通する円筒状のアダプタ13(131,132)がそれぞれ嵌挿され固定される。
【0022】
なお、図1(断面図)においては、本体部11cの2か所に流出口11bが設けられているが、これに限るものではなく、流出口11bについては、冷却液を放出する流路の数や方向に応じて、図1以外の位置にさらに形成されていてもよい。
【0023】
さらに、ハウジング11の下端には、シリンダヘッド側と連通して冷却液を弁体12側に取り込むための開口である流入口11aが形成されている。そして、この流入口11aには、フレーム17が装着される。このフレーム17の中心部に形成された円筒部17aは、シャフト12aの下端を回転自在に支持する。冷却液は、このフレーム17を通過してハウジング11内へと流入できるようになっている。
【0024】
<弁体>
弁体12は、回転軸として機能するシャフト12a、および外部との連通状態を切り替え可能な外壁を有しかつシャフト12aと一体回転可能に接合する弁本体12b、を有する。このシャフト12aには、減速機15の構成部品としての歯車が一体的に取り付けられている。これにより、モータの駆動によって歯車が回転すると、これに連動して、弁体12(シャフト12a,弁本体12b)が一体的に軸回転する。
【0025】
また、弁体12において、弁本体12bには、中心部に、シャフト12aが貫通した状態でシャフト12aの外周部分と接合する接合部12c(回転軸保持部)が設けられている。また、弁本体12bは、筒状で上下に弁開口を有しかつ外壁が球面形状を有する2つの弁部が上下に連設する。前記弁開口は、ハウジング11の流入口11a(開口)と連通する。本実施形態においては、下部に形成された一方の弁部を第1弁部12b1とし、その上に形成された他方の弁部を第2弁部12b2とする。
【0026】
より具体的に説明すると、弁体12は、樹脂により略筒状に形成され、弁体収容部20内に収容されている。弁体12の中心軸上には、シャフト12aが位置する。図2は、弁体12の斜視図である。上記したように、弁体12の弁本体12bは、上下に開口する第1弁部12b1と、同様に上下に開口し第1弁部12b1の一端(図1において上端)から軸方向に連通して形成された第2弁部12b2とを有する。弁体12は、内部に第1弁部12b1及び第2弁部12b2によって形成され、流入口11a(開口)と連通する冷却液の連通路Rを有する。
【0027】
なお、第1弁部12b1の外壁12mは、シャフト12aの外周部分と接合する接合部12cとの間で、所望の強度を得るために図示しない複数(例えば3つ)の橋部によって連結され支持される。連通路Rは、第1弁部12bにおいては、前記複数の橋部の間を通る冷却液の流路となる。
【0028】
第1弁部12b1及び第2弁部12b2の外壁12m、12n(弁外壁)は、図示するように軸方向中央が最も径の大きい球面状(所謂ボール弁)に形成されており、冷却液が通る連通路Rを形成する弁部内壁12i、12jは、軸方向に平行に形成されている。
【0029】
また、第2弁部12b2内には、例えば3つの補強部材45が周方向に均等配置され、弁体12を補強する。これら補強部材45は、挿通筒部11eと干渉しないようになっている。シャフト12aは、挿通筒部11eにガイドされ、弁本体12bと一体となって回転する。
【0030】
また、シャフト12aとハウジング11の挿通筒部11eとの間は、シールリング12dによって閉塞される。これにより、本体部11c内の冷却液が挿通筒部11eから蓋部11d内へ流入しない。また、第1弁部12b1の下端開口は、シリンダヘッド側からフレーム17(流入口11a)を介して流入する冷却液を弁体12の内部空間に取り込む導入口12eとして機能する。
【0031】
また、第1弁部12b1と第2弁部12b2には、それぞれ弁孔12f1と弁孔12f2が設けられている。弁孔12fは、第1弁部12b1および第2弁部12b2の肉厚を径方向に貫通する。弁体12が回転し、弁孔12fがシール部材14の開口と重なり合うと、この重なり合う部分から冷却液が流出する。このように、各弁孔12fは、シャフト12aの回転に連動して弁本体12bが回転することにより開閉し、この開閉動作によって流入口11aと流出口11b(11b1,11b2)との連通状態を各々切り換える。すなわち、弁体12に設けられた各弁孔12fは、回転に伴い、それぞれ対応する流出口11b(11b1,11b2)と弁体12の内部空間との連通状態が切り換えられるように形成される。これにより、導入口12eを介して弁体12(第1弁部12b1,第2弁部12b2)の内部空間に取り込まれた冷却液は、各弁孔12fの開閉動作に応じて冷却路およびバイパス路へ向けて放出されるとともに、その流出量が制御される。
【0032】
前記弁孔12f、12fと流出口11bとの連通構造について、より詳しく説明する。弁体12と円筒状のアダプタ13(13、13)との間にシール部材14(14、14)が介在する。図3は、シール部材14の斜視図であり、図4は、シール部材14の断面図である。図示するようにシール部材14は、互いに径の異なる大径部14A(第一筒部)と小径部14B(第二筒部)とからなる筒状体であって、小径部14Bがアダプタ13端部に挿入される。図1に示すように、小径部14Bの端部にはアダプタ13内に設けられたコイルスプリング19(19,19)の一端が当接し、シール部材14は、コイルスプリング19の付勢力により弁体12の外壁12m(12n)に押し付けられている。
【0033】
図1に示すように大径部14Aは、その一端に開口14A1を有し、この開口14A1が形成された大径部14Aの一端部14A2は、弁体12の周面、即ち外壁12m(12n)に摺接し、アダプタ13側に放出する冷却液の漏れを阻止するようになされている。また、弁体12の周面(外壁12m、12n)には、軸回転により流出口11bと重合するように、流出口11bに対応して個別に形成された複数の弁孔(12f、12f)が設けられている。
【0034】
ここで、弁体12の回転により、シール部材14の一端部14A2が弁体12の弁孔(12f、12f)に重なる際、連通状態の切り換えが急激に行われると、流出口11bを流れる冷却液の流量が急激に変化し、流出口11b側の圧力変動と温度変化が大きくなり易い。そこで、本実施の形態においては、図3図4に示すようにシール部材14の大径部14Aの一端部14A2において、弁体12の回転により弁孔12f、12fと最初に重なる位置に、径方向に、開口14A1に繋がる有底の溝部14Cが設けられる。
また、シール部材14の一端部14A2における、少なくとも溝部14Cよりも径方向外側の領域14A2は、弁体12の外壁12m(12n)と摺接可能に形成され、開口14A1が弁孔12f、12fと重ならないときにシール作用が低下しないようになされている。
【0035】
溝部14Cの形状は、図5(a)に平面視で示すように、溝側面14C1、14C2が径内側に向かって幅広になる扇形、或いは、図5(b)に平面視で示すように溝側面14C1、14C2間の距離、即ち横幅が径方向に一定の形状でもよい。溝底面14C3は、径方向に対し所定の角度をもって傾斜する面形状、或いは軸方向に対し直交する面形状でもよい。また、溝背面14C4の深さは、任意に設定してよい。これら溝形状の設計は、要求される仕様や制御方法等に応じて決定してよい。
【0036】
このように弁体12に接するシール部材14の開口14A1が形成された一端部14A2に、溝部14Cを形成することによって、連通開始時における流出口11bへの冷却液の流入を緩やかにして、急激な圧力変動を抑制し、流出口11bに供給される冷却液の流量を精度良く変化させることができる。
【0037】
また、上記のように溝部14Cは、シール部材14の大径部14Aの開口14A1が形成された一端部14A2において、弁体12の回転により弁孔12f、12fと最初に重なる位置に設けられる。しかしながら、シール部材14が、アダプタ13に対し回転してしまうと、弁孔12f、12fと流入口11aとの連通開始時における流出口11bへの冷却液の流入を緩やかにすることができない。
そこで、本実施の形態においては、図3に示すように小径部14Bの外周面に、回転防止用の係合溝14D(係合部)が設けられる。一方、小径部14Bが挿入されるアダプタ13の内周面には(連通口側には)、係合溝14Dに係合するように形成された図示しないリブ(凸部)が設けられている。
これにより、シール部材14は、コイルスプリング19の付勢力により軸方向(弁体12に向かう方向)には移動可能となり、周方向の回転が抑止される。
【0038】
このような構成において、例えば、シャフト12a(回転軸)の駆動により弁体12が回転し、第1弁部12b(第2弁部12b)の弁孔12f(12f)が流出口11b(流出口11b)と連通開始すると、エンジン側から流入する冷却液は、最初に、シール部材14(14)の開口14A1側に形成された溝部14Cから流出口11b(流出口11b)へと流れ始める。即ち、連通開始時における流出口11bへの冷却液の流入が緩やかになり、急激な圧力変動が抑制される。
弁体12の回転が進み、弁孔12f(12f)が流出口11b(流出口11b)と連通すると、エンジン側から流入する冷却液は、所望の流量で弁孔12f(弁孔12f)から流出口11b(流出口11b)へ導かれることになる。
【0039】
以上のように本実施の形態によれば、シール部材14の大径部14Aの開口14A1が形成された一端部14A2において、弁体12の回転により弁孔12f、12fと最初に重なる位置に、溝部14Cが設けられる。これにより、冷却液は、溝部14Cから流出口11bへと流れ始めるため、冷却液の流出口11bへの急激な流出を防止し、冷却液の微小流量を制御することができる。また、従来のような幅の狭いスリットから微小流量を流す構造ではないため、異物の詰まりを抑制することができる。
また、シール部材14が周方向に回転すると、大径部14Aに形成した溝部14Cによる効果を得ることができないが、小径部14Bの外周面に、回転抑止用の係合溝14Dを設けることによって、シール部材14の周方向への回転を抑止することができる。
また、上記構成により、急激な圧力変動及び温度変化を抑制し、部品点数を増やすことなく、流出口11bに繋がる各コア部品の耐久性を向上することができる。
【0040】
なお、本実施の形態においては、シール部材14の大径部14Aの開口14A1側に1つの溝部14Cを設けた例を示したが、本発明にあっては、その形態に限定されるものではなく、開口14A1が形成されたシール部材14の一端部14A2の周方向に沿って複数の溝部14Cを設けてもよい。
【0041】
また、本実施の形態においては、シール部材14の小径部14Bの外周面に1つの係合溝14Dを設けた例を示したが、本発明にあっては、その形態に限定されるものではなく、小径部14Bの周方向に沿って複数の係合溝14Dを設けてもよい。
また、本発明において、係合部としての係合溝14Dは溝形状(凹形状)でなくともリブなどの凸形状であってもよく、その場合は、小径部14Bが挿入されるアダプタ13の内周面に、小径部14Bに形成された係合部としての凸部に係合するように、図示しない溝などの凹部を設ければよい。
【0042】
また、本実施の形態においては、第1弁部12bと第2弁部12bとが軸方向に連結された弁体12を例に説明したが、本発明に係る弁体にあっては、その形態に限定されるものではない。例えば、弁部は一つでもよく、3つ以上の球面状の弁部が軸方向に連結されていてもよい。
また、本実施の形態においては、外壁が球面状の弁体(所謂ボール弁)について説明したが、本発明にあっては、その形態に限定されず、直胴状の外壁面を有する筒状の弁体であってもよい。
【0043】
また、本実施形態においては、一例として、流入口11a(フレーム17側)から流入した冷却液を冷却路およびバイパス路へ向けて放出する電動弁1について説明したが、電動弁1と連通する流路の接続構成についてはこれに限るものではなく、自動車の冷却回路(冷却液の循環システム)の仕様(例えば、ハウジング11の本体部11cの周面(弁体収容部20の内壁20a)に形成された流入口(上流側)からフレーム17側の流出口(下流側)へ流れる流路など)に応じて適宜変更可能である。
【0044】
また、本実施形態において、シール部材14(141,142)は、図1に示すようにコイルスプリングの付勢力により弁体12の外壁に押し付けられる構造としたが、これに限るものではなく、流出口11bを通過してアダプタ13側に放出する冷却液の漏れを阻止できればよく、その他の構造により実現することとしてもよい。
【0045】
また、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 電動弁
11 ハウジング
11a 流入口(開口)
11b 流出口(連通口)
12 弁体
12a シャフト
12b1 第1弁部(弁本体)
12b 第2弁部(弁本体)
12f 弁孔
12f 弁孔
12m 外壁(弁外壁)
12n 溝部
14 シール部材
14A 大径部(第一筒部)
14A1 開口
14A2 一端部
14B 小径部(第二筒部)
14C 溝部
14D 係合溝(係合部)
20 弁体収容部
20a 内壁
R 連通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6