IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サトーホールディングス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-プリンタ 図1
  • 特開-プリンタ 図2
  • 特開-プリンタ 図3
  • 特開-プリンタ 図4
  • 特開-プリンタ 図5
  • 特開-プリンタ 図6
  • 特開-プリンタ 図7
  • 特開-プリンタ 図8
  • 特開-プリンタ 図9
  • 特開-プリンタ 図10
  • 特開-プリンタ 図11
  • 特開-プリンタ 図12
  • 特開-プリンタ 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018235
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/355 20060101AFI20250130BHJP
   B41J 25/312 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
B41J2/355 B
B41J25/312
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121768
(22)【出願日】2023-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】京井 聡明
【テーマコード(参考)】
2C064
2C066
【Fターム(参考)】
2C064CC02
2C064CC07
2C064CC11
2C064CC13
2C064EE01
2C064FF09
2C066AA18
2C066AB09
2C066AC01
2C066AD05
(57)【要約】
【課題】発熱素子への印字用紙の固着に起因した不具合の抑制を可能とすることを目的とする。
【解決手段】プリンタは、複数の発熱素子が直線上に並んで配置されたサーマルヘッドと、発熱素子の並び方向に対して交差する方向へ印字用紙を搬送するプラテンローラと、を備え、発熱素子の発熱及び印字用紙の1ピッチ分の搬送からなる印字周期を繰り返して、サーマルヘッドとプラテンローラとの間に配置された印字用紙に印字するプリンタであって、発熱素子がプラテンローラの回転中心へ向けて付勢される通常位置よりも発熱素子が印字用紙の搬送方向の下流側に配置された状態で、印字周期の1ピッチの長さを発熱素子の搬送方向の長さよりも短くして印字する細分化印字モードを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発熱素子が直線上に並んで配置されたサーマルヘッドと、前記発熱素子の並び方向に対して交差する方向へ印字用紙を搬送するプラテンローラと、を備え、前記発熱素子の発熱及び前記印字用紙の1ピッチ分の搬送からなる印字周期を繰り返して、前記サーマルヘッドと前記プラテンローラとの間に配置された前記印字用紙に印字するプリンタであって、
前記発熱素子が前記プラテンローラの回転中心へ向けて付勢される通常位置よりも前記発熱素子が前記印字用紙の搬送方向の下流側に配置された状態で、前記印字周期の前記1ピッチの長さを前記発熱素子の前記搬送方向の長さよりも短くして印字する細分化印字モードを備える、
プリンタ。
【請求項2】
請求項1に記載のプリンタであって、
前記細分化印字モードにおいて、前記発熱素子は前記印字用紙に接触し、
前記プラテンローラは、前記発熱素子が接した前記印字用紙の表面の部位に対応する前記印字用紙の裏面の部位に接触しない、
プリンタ。
【請求項3】
請求項1に記載のプリンタであって、
前記細分化印字モードにおいて、前記発熱素子が前記印字用紙を押す圧力は、前記発熱素子が前記印字用紙を介して前記プラテンローラを押す圧力よりも大きい、
プリンタ。
【請求項4】
請求項1に記載のプリンタであって、
前記発熱素子を前記通常位置に配置した状態で、前記印字周期における前記1ピッチの長さを前記発熱素子の前記搬送方向の長さ以上にして印字する通常印字モードを備える、
プリンタ。
【請求項5】
請求項4に記載のプリンタであって、
前記細分化印字モードにおける前記印字周期の前記1ピッチの長さを、前記通常印字モードにおける前記印字周期の前記1ピッチの長さの1/N(Nは2以上の自然数)とした際に、発熱した前記発熱素子の発熱エネルギー量は、前記細分化印字モードで前記印字周期をN回繰り返す場合と前記通常印字モードで前記印字周期を一回行う場合とで等しい、
プリンタ。
【請求項6】
請求項4に記載のプリンタであって、
前記細分化印字モードで前記発熱素子が配置されるオフセット位置と前記通常位置との間で前記サーマルヘッドを移動する移動機構と、
前記サーマルヘッドが前記オフセット位置に配置されたことを検出する検出部と、
を備え、
前記検出部が前記オフセット位置であることを検出した状態において前記細分化印字モードで動作する、
プリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、印字用紙を低速搬送する際に、サーマルヘッドにおける発熱素子の通電を間欠的に行うことで発熱量を抑制してスティッキングを抑制するプリンタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-093267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなプリンタにあっては、発熱素子がプラテンローラの回転中心へ向けて付勢されており、印字用紙は、発熱素子とプラテンローラとによって挟まれる。このため、例えば発熱素子が所定時間連続通電される通常搬送において、インクリボン又はサーマル紙のインク材料が軟化して固化すると、印字用紙は固化したインク材料を介して発熱素子に固着し得る。
【0005】
この印字用紙を排出方向に搬送すると、印字用紙は、発熱素子から印字用紙の面に沿った方向に引き剥がされる。このとき、印字用紙には、振動が生ずるため大きな印刷音が発生する。また、インク材料が印字用紙から剥がれた場合、印字箇所には、欠落部が生ずる。
【0006】
このように、印字用紙が発熱素子とプラテンローラとで挟まれるプリンタにあっては、発熱素子への印字用紙の固着に起因した不具合が生じ得る。
【0007】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、発熱素子への印字用紙の固着に起因した不具合の抑制を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様によれば、複数の発熱素子が直線上に並んで配置されたサーマルヘッドと、前記発熱素子の並び方向に対して交差する方向へ印字用紙を搬送するプラテンローラと、を備え、前記発熱素子の発熱及び前記印字用紙の1ピッチ分の搬送からなる印字周期を繰り返して、前記サーマルヘッドと前記プラテンローラとの間に配置された前記印字用紙に印字するプリンタであって、前記発熱素子が前記プラテンローラの回転中心へ向けて付勢される通常位置よりも前記発熱素子が前記印字用紙の搬送方向の下流側に配置された状態で、前記印字周期の前記1ピッチの長さを前記発熱素子の前記搬送方向の長さよりも短くして印字する細分化印字モードを備える、プリンタが提供される。
【発明の効果】
【0009】
上記の態様によれば、細分化印字モードにおいて、発熱素子は、通常位置よりも印字用紙の搬送方向の下流側に配置されており、発熱素子に固着した印字用紙は、発熱素子から離れる方向へ変位可能である。
【0010】
このため、発熱素子に固着した印字用紙は、搬送時において印字用紙の面に対して斜め方向に引き剥がし可能なので、印字用紙が発熱素子とプラテンローラとで挟まれる場合と比較して、発熱素子への印字用紙の固着に起因した不具合の抑制が可能となる。
【0011】
また、細分化印字モードでは、印字周期の1ピッチの長さを発熱素子の搬送方向の長さよりも短くして印字するので、発熱素子で発色される発色部を重ねることができる。このため、このプリンタは、印字用紙が発熱素子から離れる方向へ変位可能とすることで発色部の色が薄くなる場合であっても、発色部を重ねることによって、印字品質の低下の抑制が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るプリンタの概略構成図である。
図2】ヘッドユニットの概略構成図である。
図3】サーマルヘッドの要部を示す底面図である。
図4】通常印字モードでのサーマルヘッドの位置を示す説明図である。
図5】細分化印字モードでのサーマルヘッドの位置を示す説明図である。
図6】第一変形例の細分化印字モードでのサーマルヘッドの位置を示す説明図である。
図7】通常印字モードの印字周期で出力される信号を示す説明図である。
図8】通常印字モードでの印字パターンを示す説明図である。
図9】細分化印字モードの印字周期で出力される信号を示す説明図である。
図10】第二変形例の通電信号を示す説明図である。
図11】第三変形例の通電信号を示す説明図である。
図12】細分化印字モードでの印字パターンを示す説明図である。
図13】プリンタの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に記載する形態は、図面の簡単な説明により説明される図面に限定されるものではない。
【0014】
(1)本発明のある態様は、複数の発熱素子が直線上に並んで配置されたサーマルヘッドと、前記発熱素子の並び方向に対して交差する方向へ印字用紙を搬送するプラテンローラと、を備え、前記発熱素子の発熱及び前記印字用紙の1ピッチ分の搬送からなる印字周期を繰り返して、前記サーマルヘッドと前記プラテンローラとの間に配置された前記印字用紙に印字するプリンタであって、前記発熱素子が前記プラテンローラの回転中心へ向けて付勢される通常位置よりも前記発熱素子が前記印字用紙の搬送方向の下流側に配置された状態で、前記印字周期の前記1ピッチの長さを前記発熱素子の前記搬送方向の長さよりも短くして印字する細分化印字モードを備える、プリンタである。
【0015】
本発明のある態様によれば、細分化印字モードにおいて、発熱素子は、通常位置よりも印字用紙の搬送方向の下流側に配置されており、発熱素子に固着した印字用紙は、発熱素子から離れる方向へ変位可能である。
【0016】
このため、発熱素子に固着した印字用紙は、搬送時において印字用紙の面に対して斜め方向に引き剥がし可能なので、印字用紙が発熱素子とプラテンローラとで挟まれる場合と比較して、発熱素子への印字用紙の固着に起因した不具合の抑制が可能となる。
【0017】
また、細分化印字モードでは、印字周期の1ピッチの長さを発熱素子の搬送方向の長さよりも短くして印字するので、発熱素子で発色される発色部を重ねることができる。このため、このプリンタは、印字用紙が発熱素子から離れる方向へ変位可能とすることで発色部の色が薄くなる場合であっても、発色部を重ねることによって、印字品質の低下の抑制が可能となる。
【0018】
(2)本発明のある態様は、(1)に記載のプリンタであって、前記細分化印字モードにおいて、前記発熱素子は前記印字用紙に接触し、前記プラテンローラは、前記発熱素子が接した前記印字用紙の表面の部位に対応する前記印字用紙の裏面の部位に接触しない、プリンタである。
【0019】
本発明のある態様によれば、プラテンローラは、発熱素子が接した部位に対応する印字用紙の裏面の部位に接触しない。このため、プラテンローラが印字用紙の下部に配置される場合であっても、印字用紙に発熱素子が接した部位は、自重による変位が許容されるので、印字用紙の斜め下方へ向けた移動の促進が可能となる。
【0020】
(3)本発明のある態様は、(1)又は(2)に記載のプリンタであって、前記細分化印字モードにおいて、前記発熱素子が前記印字用紙を押す圧力は、前記発熱素子が前記印字用紙を介して前記プラテンローラを押す圧力よりも大きい、プリンタである。
【0021】
本発明のある態様によれば、発熱素子は、プラテンローラと共に印字用紙を挟持しつつ、発熱素子と印字用紙との接触が可能となる。これにより、印字用紙の搬送に生じ得るプラテンローラの空回りを抑制しつつ、発熱素子による印字を可能とすることができる。
【0022】
(4)本発明のある態様は、(1)から(3)のいずれか一つに記載のプリンタであって、前記発熱素子を前記通常位置に配置した状態で、前記印字周期における前記1ピッチの長さを前記発熱素子の前記搬送方向の長さ以上にして印字する通常印字モードを備える、プリンタである。
【0023】
本発明のある態様のプリンタは、通常印刷モードにおいて、印字周期における1ピッチの長さを発熱素子の搬送方向の長さ以上として印字する。このため、印字周期の1ピッチの長さを発熱素子の搬送方向の長さよりも短くして印字する場合と比較して、印字用紙の搬送をスムーズに行うことが可能となる。
【0024】
(5)本発明のある態様は、(4)に記載のプリンタであって、前記細分化印字モードにおける前記印字周期の前記1ピッチの長さを、前記通常印字モードにおける前記印字周期の前記1ピッチの長さの1/N(Nは2以上の自然数)とした際に、発熱した前記発熱素子の発熱エネルギー量は、前記細分化印字モードで前記印字周期をN回繰り返す場合と前記通常印字モードで前記印字周期を一回行う場合とで等しい、プリンタである。
【0025】
本発明のある態様のプリンタは、細分化印字モードで印字周期をN回繰り返す場合の発熱エネルギー量が通常印字モードで印字周期を一回行う場合の発熱エネルギー量よりも大きい場合と比較して、消費電力の抑制が可能となる。
【0026】
(6)本発明のある態様は、(4)又は(5)に記載のプリンタであって、前記細分化印字モードで前記発熱素子が配置されるオフセット位置と前記通常位置との間で前記サーマルヘッドを移動する移動機構と、前記サーマルヘッドが前記オフセット位置に配置されたことを検出する検出部と、を備え、前記検出部が前記オフセット位置であることを検出した状態において前記細分化印字モードで動作する、プリンタである。
【0027】
本発明のある態様によれば、移動機構による通常位置からオフセット位置への移動が完了した際に細分化印字モードを実行することができる。これにより、発熱素子への印字用紙の固着に起因した不具合を確実に抑制することが可能となる。
【0028】
(7)本発明のある態様は、(6)に記載のプリンタであって、発熱した前記発熱素子の発熱エネルギー量が前記細分化印字モードで前記印字周期をN回繰り返す場合と前記通常印字モードで前記印字周期を一回行う場合とで等しくなるように、前記細分化印字モードにおいて前記発熱素子に通電される通電時間及び前記発熱素子に加えられる電力が設定される、プリンタである。
【0029】
本発明のある態様によれば、発熱素子の通電時間及び発熱素子への電力供給を調整することで、細分化印字モードと通常印字モードとで発熱エネルギー量が等しくなるように設定することが可能となる。
【0030】
(8)本発明のある態様は、(1)から(7)のいずれか一つに記載のプリンタであって、前記印字周期における前記発熱素子への通電は間欠的に行われる、プリンタである。
【0031】
本発明のある態様によれば、発熱素子の通電を間欠的に行うことで、発熱素子の発熱量を抑制することができるので、さらなるスティッキングの抑制が可能となる。
【0032】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。
【0033】
図1は、本発明の実施形態に係るプリンタ10の概略構成図である。
【0034】
プリンタ10は、サーマル紙である印字用紙Mに印字を行う感熱発色方式のプリンタ10である。プリンタ10は、発熱素子42(図3参照)の発熱と印字用紙Mの搬送とからなる印字周期140を繰り返して印字を行う通常印字モード100(図7参照)を備える。また、プリンタ10は、通常印字モード100よりも印字周期160での印字用紙Mの搬送量が小さい細分化印字モード102(図9参照)を備える。
【0035】
印字用紙Mとしては、例えば、ロール紙や、帯状の台紙に複数のラベルを所定の間隔で連続して仮着してロール状にしたロールラベル、表面に剥離剤を設けた帯状のラベルをロール状にした台紙なしラベル等が用いられる。
【0036】
始めにプリンタ10の構成について説明する。プリンタ10は、印字機構20と、媒体供給部22と、カッター24と、コントローラ26と、位置検出センサ28と、を備える。
【0037】
(印字機構)
印字機構20は、ヘッドユニット30と、プラテンローラ32と、プラテン駆動モータ34と、を備え、印字用紙Mへの印字と印字用紙Mの搬送とを行う機構である。
【0038】
ヘッドユニット30は、サーマルヘッド40の発熱素子42(図3参照)を下面から露出させた状態でサーマルヘッド40を保持する。プラテンローラ32は、サーマルヘッド40よりも下方に配置され、印字用紙Mに印字を行う印字機構20をサーマルヘッド40と共に構成する。
【0039】
ヘッドユニット30は、支持軸44によって支持され、ヘッドユニット30は、プリンタ10の筐体に対して図1の矢印の方向に揺動可能である。また、ヘッドユニット30は、図示しないスプリングによって自由端部が下方へ所定量変位可能に付勢されている。
【0040】
ヘッドユニット30は、図1に二点鎖線で示すサーマルヘッド40がプラテンローラ32から離間するヘッドオープン位置と、図1に実線で示すサーマルヘッド40がプラテンローラ32に当接可能なヘッドクローズ位置と、に移動させることができる。
【0041】
プラテン駆動モータ34は、ベルト、ギヤ等を介してプラテンローラ32を駆動する。プラテン駆動モータ34は、例えばステッピングモータで構成される。プラテン駆動モータ34は、コントローラ26に接続されている。
【0042】
プラテン駆動モータ34は、コントローラ26からの駆動信号に従って動作する。コントローラ26は、出力する駆動信号を制御することで、プラテンローラ32によって搬送される印字用紙Mの搬送量を制御する。
【0043】
(媒体供給部)
媒体供給部22は、印字機構20に供給される印字用紙Mをロール状に保持する。印字用紙Mは、ガイド軸46よって印字機構20へと案内され、サーマルヘッド40とプラテンローラ32との間を通過するようにセットされる。
【0044】
印字用紙Mがサーマルヘッド40とプラテンローラ32との間に挟持された状態でサーマルヘッド40の発熱素子42(図3参照)への通電が行われると、発熱素子42の熱によって印字用紙Mが発色し、印字用紙Mへの印字が行われる。
【0045】
プラテン駆動モータ34によってプラテンローラ32が正回転すると、印字用紙Mが搬送方向Hの下流側48へと搬送されて印字用紙Mが排出口50からプリンタ10の外部に排出される。排出口50の近傍にはカッター24が設けられ、連続状に形成された印字用紙Mを切断することができる。
【0046】
(位置検出センサ)
位置検出センサ28は、反射型光電センサであって、印字用紙Mに所定ピッチで予め印刷されているタイミングマーク(図示せず)を検出することで、連続して印字発行するときに、印字機構20に対する印字用紙Mの相対的位置を検出する。
【0047】
(ヘッドユニット)
次に、図2及び図3を用いてヘッドユニット30の構成について説明する。
【0048】
図2は、ヘッドユニット30の概略構成図である。図3は、サーマルヘッド40の要部を示す底面図である。
【0049】
(移動機構)
図2に示すように、ヘッドユニット30のユニット筐体60には、サーマルヘッド40を移動する移動機構62が設けられている。
【0050】
移動機構62は、サーマルヘッド40を支持するヘッド支持部64と、ヘッド支持部64を支持する支持ブロック66と、サーマルヘッド40を移動する移動機構部68と、を備える。
【0051】
ヘッド支持部64は、先端が支持ブロック66に固定されたネジ部70を備える。ネジ部70には、サーマルヘッド40を備えた可動部72が外嵌しており、可動部72は、ネジ部70に沿って移動可能である。ネジ部70の頭部70Aと可動部72との間には、コイルスプリング74が配置されており、可動部72は、支持ブロック66の方向へ向けて付勢されている。
【0052】
可動部72の端部側には、スペーサ76を介してナット部78が設けられている。ナット部78の雌ネジ部78Aは、ネジ部70に設けられた雄ネジ部70Bと螺合する。ナット部78の外周部には、ギヤ部78Bが形成されている。
【0053】
移動機構部68は、ユニット筐体60から延びる固定ブラケット80に固定されたサーボモータ82と、サーボモータ82の回転軸に設けられた駆動ギヤ84と、を備えている。サーボモータ82は、検出部86を備えている。検出部86は、例えばエンコーダで構成される。
【0054】
駆動ギヤ84のギヤ部84Aは、ヘッド支持部64のナット部78のギヤ部78Bと噛合する。サーボモータ82が駆動ギヤ84を回動すると、ナット部78が回転する。ナット部78が回転するとナット部78は、可動部72と共にネジ部70に沿って移動する。これに伴って可動部72に設けられたサーマルヘッド40が印字用紙Mの搬送方向Hに沿って移動する。
【0055】
サーボモータ82は、コントローラ26(図1参照)に接続されている。サーボモータ82は、コントローラ26からの移動信号に従って作動する。移動機構部68は、コントローラ26からの移動信号に応じて、サーマルヘッド40の発熱素子42がプラテンローラ32の回転中心Cの真上に配置される通常位置90(図4参照)へサーマルヘッド40を移動する。また、移動機構部68は、コントローラ26からの移動信号に応じて、サーマルヘッド40の発熱素子42が通常位置90よりも発熱素子42が印字用紙Mの搬送方向Hの下流側48に配置されたオフセット位置92(92A)(図5及び6参照)へサーマルヘッド40を移動する。
【0056】
これにより、移動機構62は、コントローラ26からの移動信号に従って、通常位置90とオフセット位置92(92A)との間でサーマルヘッド40を移動する。
【0057】
なお、本実施形態では、サーボモータ82によってサーマルヘッド40を移動する場合を例に挙げて説明するが、本実施形態のプリンタ10は、この構成に限定されるものではない。本実施形態のプリンタ10は、例えば、手動操作によってサーマルヘッド40を通常位置90とオフセット位置92との間で移動する構成としてもよい。
【0058】
(通常位置)
図4は、通常印字モード100でのサーマルヘッド40の位置を示す説明図である。
【0059】
図4に示すように、通常位置90において、サーマルヘッド40の発熱素子42は、プラテンローラ32の回転中心Cの真上に配置される。この通常位置90において、サーマルヘッド40の発熱素子42は、ヘッドユニット30(図1参照)を付勢するスプリングの力によって、プラテンローラ32の回転中心Cへ向けて付勢される。これにより、サーマルヘッド40とプラテンローラ32との間に配置された印字用紙Mは、サーマルヘッド40とプラテンローラ32とによって挟持される。
【0060】
(オフセット位置)
図5は、細分化印字モード102でのサーマルヘッド40の位置を示す説明図である。図6は、第一変形例の細分化印字モード102(102A)でのサーマルヘッド40の位置を示す説明図である。
【0061】
図5に示すように、細分化印字モード102で発熱素子42が移動されるオフセット位置92は、通常位置90よりもオフセット量110分、搬送方向Hの下流側48に設定される。オフセット量110は、発熱素子42の搬送方向Hの長さ42A(図3参照)を一例として0.25mmとした場合に、1.0mm以上2.0mm以下の範囲で定められる。
【0062】
オフセット位置92において、サーマルヘッド40の発熱素子42は印字用紙Mに接触する。また、オフセット位置92において、プラテンローラ32は、発熱素子42が接した印字用紙Mの表面の接触部位112に対応する印字用紙Mの裏面の対応部位114に接触しない。
【0063】
これにより、発熱素子42が接した印字用紙Mの接触部位112は、発熱素子42から離れる方向である下方への変位が許容される。
【0064】
ここで、オフセット位置92におけるサーマルヘッド40の発熱素子42とプラテンローラ32との位置関係は、これに限定されるものではない。発熱素子42とプラテンローラ32との位置関係は、例えば、図6の第一変形例に示すような位置関係としてもよい。
【0065】
すなわち、図6には、第一変形例に係る細分化印字モード102Aにおいて、発熱素子42とプラテンローラ32との位置関係を示す他のオフセット位置92Aが示されている。この細分化印字モード102Aにおける他のオフセット位置92Aでは、サーマルヘッド40の発熱素子42の端部が印字用紙Mを介してプラテンローラ32に接するように、サーマルヘッド40がプラテンローラ32に対して配置される。
【0066】
この細分化印字モード102Aにおいて、発熱素子42が印字用紙Mを押す圧力P1は、発熱素子42が印字用紙Mを介してプラテンローラ32を押す圧力P2より大きくなる。
【0067】
そして、図1及び図2に示すように、コントローラ26は、サーボモータ82の検出部86からの検出信号をカウントするなどしてサーマルヘッド40の発熱素子42の位置を取得する。これにより、コントローラ26は、サーマルヘッド40の発熱素子42が通常位置90にあるかオフセット位置92(92A)にあるかを判断することができる。
【0068】
なお、本実施形態では、検出部86をエンコーダで構成する場合について説明するが、本実施形態は、これに限定されるものではない。検出部86は、例えば、発熱素子42がオフセット位置92(92A)に配置された際に可動部72の端部に当接してオン作動するマイクロスイッチで構成してもよい。
【0069】
(サーマルヘッド)
図3に示すように、サーマルヘッド40は、複数の発熱素子42を備える。発熱素子42は、例えば長方形状の発熱抵抗体で構成される。各発熱素子42は、仮想直線K上に並んで配置されている。各発熱素子42は、プラテンローラ32によって搬送される印字用紙Mの搬送方向Hに対して交差した交差方向Xに並んで配置されている。
【0070】
発熱素子42は、通電される通電信号120(図7参照)に応じて発熱する。発熱素子42の発熱量を変化させる方法としては、通電信号120のパルス幅を変化する方法と、通電信号120のパルス数を増減する方法と、通電信号120の電圧を昇降する方法と、がある。通電信号120の電圧を昇降する方法は、通電信号120の電圧を高精度に制御する必要がある。
【0071】
(コントローラ)
コントローラ26は、サーボモータ82へ出力する移動信号を制御してサーマルヘッド40の発熱素子42の位置を制御する。
【0072】
例えばプリンタ10に設けられた細分化印字スイッチ(図示省略)がオフ操作され通常印字モード100が設定された場合に、コントローラ26は、移動信号を制御してサーマルヘッド40の発熱素子42を通常位置90へ移動する。また、コントローラ26は、例えばプリンタ10に設けられた細分化印字スイッチがオン操作され細分化印字モード102(102A)が設定された際に、移動信号を制御してサーマルヘッド40の発熱素子42をオフセット位置92(92A)へ移動する。
【0073】
また、コントローラ26は、サーマルヘッド40の発熱素子42へ出力する通電信号120(図7及び図9参照)を制御して発熱素子42の発熱を制御する。さらに、コントローラ26は、プラテン駆動モータ34へ出力する搬送信号126(図7及び図9参照)を制御してプラテンローラ32が搬送する印字用紙Mの搬送量を制御する。
【0074】
これにより、コントローラ26は、通常印字モード100と細分化印字モード102(102A)とにおいて、発熱素子42の発熱と印字用紙Mの搬送とからなる印字周期140、160(図7及び図9参照)における発熱素子42の発熱時間と印字用紙Mの搬送量とを制御する。
【0075】
(通常印字モード)
通常印字モード100について図7及び図8を用いて具体的に説明する。
【0076】
図7は、通常印字モード100の印字周期140で出力される信号を示す説明図である。図8は、通常印字モード100での印字パターン146を示す説明図である。
【0077】
通常印字モード100は、サーマルヘッド40の発熱素子42がプラテンローラ32の回転中心Cへ向けて付勢される通常位置90(図4参照)で、発熱素子42の発熱及び印字用紙Mの1ピッチ分の搬送からなる印字周期140を繰り返して印字するモードである。
【0078】
図7に示すように、通常印字モード100において、コントローラ26は、印字データに従って発熱素子42へ出力する通電信号120を通常加熱時間122オンにして発熱素子42を発熱する。これにより、発熱素子42が接した印字用紙Mの部分を通常加熱時間122加熱する。
【0079】
また、コントローラ26は、発熱素子42を発熱後、所定時間124経過した後にプラテン駆動モータ34へ出力する搬送信号126を通常搬送時間128制御してプラテンローラ32を駆動する。これにより、コントローラ26は、印字用紙Mを、1ピッチ分である通常搬送量130(図8参照)分、下流側48へ搬送する。
【0080】
ここで、通常印字モード100での1ピッチの長さを示す通常搬送量130は、発熱素子42の搬送方向Hの長さ42A(図3参照)以上に設定されている。
【0081】
本実施形態における通常搬送量130は、発熱素子42の搬送方向Hの長さ42Aと同じ長さに設定されている。一例として発熱素子42の搬送方向Hの長さ42Aを0.25mmとした本実施形態において、通常搬送量130は、0.25mmに設定される。
【0082】
そして、コントローラ26は、発熱素子42の発熱から印字用紙Mの搬送までを印字周期140とするとともに、この印字周期140を所定間隔142毎に繰り返して印字用紙Mに印字を行う。
【0083】
図8には、通常印字モード100で印字用紙Mに印字された印字パターン146の一例が示されている。
【0084】
印字用紙Mには、印字周期140において、各発熱素子42の熱で発色された発色部148が印字用紙Mの搬送方向Hと交差する交差方向Xに並んで配置されている。また、各印字周期140を繰り返すことで、印字用紙Mに形成された発色部148が印字用紙Mの搬送方向Hに並んで配置される。各発色部148は、一例として長方形で示されている。
【0085】
印字周期140毎に形成された一方の発色部148Aと他方の発色部148Bとは、通常搬送量130分、搬送方向Hへ離れた位置に形成されている。通常搬送量130は、発熱素子42の搬送方向Hの長さ42Aと同じである。これにより、印字周期140毎に形成された一方の発色部148Aと他方の発色部148Bとは、搬送方向Hにおいて連続する。
【0086】
(細分化印字モード)
細分化印字モード102(102A)について図9から図12を用いて具体的に説明する。
【0087】
図9は、細分化印字モード102の印字周期160で出力される信号を示す説明図である。図10は、第二変形例の通電信号120を示す説明図である。図11は、第三変形例の通電信号120を示す説明図である。図12は、細分化印字モード102での印字パターン146を示す説明図である。
【0088】
細分化印字モード102(102A)は(図5及び図6参照)、通常位置90よりも発熱素子42が下流側48に配置された状態で、発熱素子42の発熱及び印字用紙Mの1ピッチ分の搬送からなる印字周期160を繰り返して印字するモードである。
【0089】
細分化印字モード102(102A)では、印字周期160の1ピッチの長さが発熱素子42の搬送方向Hの長さ42Aよりも短く設定される。例えば、細分化印字モード102(102A)における印字周期160の1ピッチの長さは、通常印字モード100における印字周期140の1ピッチの長さの1/N(Nは2以上の自然数)に設定される。
【0090】
この「N」の値は、2以上5以下が望ましい。本実施形態のプリンタ10は、「N」の値が「3」に設定されている。
【0091】
図9に示すように、細分化印字モード102(102A)において、コントローラ26は、印字データに従って発熱素子42へ出力する通電信号120を細分化加熱時間150オンにして当該発熱素子42を発熱する。これにより、当該発熱素子42が接した印字用紙Mの部分を細分化加熱時間150加熱する。
【0092】
ここで、細分化印字モード102(102A)での細分化加熱時間150は、通常印字モード100での通常加熱時間122の1/Nに設定されている。「N」の値が「3」に設定された本実施形態において、細分化加熱時間150は、通常加熱時間122の1/3に設定されている。
【0093】
また、コントローラ26は、発熱素子42を発熱後、所定時間152経過した後にプラテン駆動モータ34へ出力する搬送信号126を細分化搬送時間156制御してプラテンローラ32を駆動する。これにより、コントローラ26は、印字用紙Mを、1ピッチ分である細分化搬送量158(図12参照)、下流側48へ搬送する。
【0094】
ここで、細分化印字モード102(102A)における印字周期160の1ピッチ分の長さである細分化搬送量158は、通常印字モード100における印字周期140の1ピッチの長さである通常搬送量130の1/Nに設定されている。「N」の値が「3」に設定された本実施形態において、細分化搬送量158は、通常搬送量130の1/3に設定されている。
【0095】
一例として通常印字モード100での通常搬送量130を0.25mmとした本実施形態において、細分化搬送量158は、約0.083mmに設定される。
【0096】
そして、コントローラ26は、発熱素子42の発熱から印字用紙Mの搬送までを印字周期160とするとともに、この印字周期160を所定間隔162毎に繰り返して印字用紙Mに印字を行う。
【0097】
また、コントローラ26は、この印字周期160をN回である三回繰り返すことで、一ライン分の印字を行う。一ライン分の印字とは、発熱素子42の搬送方向Hの長さ42A分の印字を行うことをいう。
【0098】
ここで、細分化印字モード102(102A)では、通常位置90よりも発熱素子42が下流側48に配置されている。このため、細分化印字モード102(102A)では、発熱素子42とプラテンローラ32とで印字用紙Mを挟持する通常印字モード100と比較して、発熱素子42で加熱され発色する発色部148の色は薄くなりがちである。
【0099】
しかし、一ライン分の印字において、前述した印字周期160を三回繰り返すことで、各印字周期160の細分化加熱時間150の間に残存する余熱によって印字用紙Mを発色させることができる。これにより、印字品質の低下の抑制が可能となる。
【0100】
また、細分化印字モード102(102A)で印字周期160を三回繰り返す場合の細分化加熱時間150の合計時間と、通常印字モード100で印字周期140を一回行う場合の通常加熱時間122とは等しい。また、発熱素子42に印加する電圧は、通常印字モード100と細分化印字モード102(102A)とで同じである。このため、発熱した発熱素子42の発熱エネルギー量は、細分化印字モード102(102A)で印字周期160を三回繰り返す場合と、通常印字モード100で印字周期140を一回行う場合とで等しい。
【0101】
また、細分化印字モード102(102A)の所定時間152は、通常印字モード100の所定時間124の1/3である。また、細分化印字モード102(102A)の各印字周期160の間の所定間隔162は、通常印字モード100の各印字周期140の間の所定間隔142の1/3である。このため、細分化印字モード102(102A)で一ライン分の印字を行う時間と、通常印字モード100で一ライン分の印字を行う時間とは同じになる。
【0102】
なお、本実施形態のプリンタ10は、細分化加熱時間150が通常印字モード100での通常加熱時間122の1/3に設定されている。これにより、発熱素子42の発熱エネルギー量が、細分化印字モード102(102A)で印字周期160を三回繰り返す場合と通常印字モード100で印字周期140を一回行う場合とで等しくなるように構成した。
【0103】
しかし、本実施形態は、この構成に限定されるものではない。本実施形態のプリンタ10は、例えば、図11に示す第一変形例のように構成してもよい。
【0104】
すなわち、図11に示すように、第一変形例において、発熱素子42へ出力する通電信号120の他の細分化加熱時間200は、図9に示した細分化加熱時間150よりも短い。また、他の細分化加熱時間200において発熱素子42へ出力する通電信号120の電圧は、前述した細分化加熱時間150において発熱素子42へ出力する通電信号120の電圧よりも高い。これにより、発熱した発熱素子42の発熱エネルギー量は、細分化印字モード102(120A)で印字周期160を三回繰り返す場合と通常印字モード100で印字周期140を一回行う場合とで等しくなるように設定されている。
【0105】
このように、細分化加熱時間150と発熱素子42に加えられる電力を定める電圧とを調整することで、細分化印字モード102(102A)で印字周期160を三回繰り返す場合と通常印字モード100で印字周期140を一回行う場合とで、発熱エネルギー量が等しくなるようにしてもよい。
【0106】
また、本実施形態のプリンタ10は、図11に示すように、各印字周期140、160における発熱素子42への通電を間欠的に行い、発熱素子42による加熱を間欠的に行ってもよい。
【0107】
図12には、細分化印字モード102(102A)で印字用紙Mに印字された印字パターン146の一例が示されている。
【0108】
印字用紙Mには、印字周期160において、各発熱素子42の熱で発色された発色部148が印字用紙Mの搬送方向Hと交差する交差方向Xに並んで配置されている。また、各印字周期160を繰り返すことで、印字用紙Mに形成された発色部148が印字用紙Mの搬送方向Hに並んで配置されている。各発色部148は、一例として長方形で示されている。
【0109】
これにより、印字周期160毎に形成された一方の発色部148Aと他方の発色部148Bとは、搬送方向Hにおいて互いに重なる。
【0110】
具体的に説明すると、第一回目の印字周期160で印字された発色部148Aの2/3の部分には、第二回目の印字周期160で印字された発色部148Bが重ねられる。第一回目の印字周期160で印字された発色部148Aの1/3の部分には、第二回目の印字周期160で印字された発色部148Bと、第三回目の印字周期160で印字された発色部148Cとが重ねられる。
【0111】
ここで、細分化印字モード102(102A)における細分化加熱時間150は、通常印字モード100における通常加熱時間122の1/3であり、発色部148の色は薄くなりがちである。しかし、第一回目の印字周期160で印字された発色部148Aと、第二回目の印字周期160で印字された発色部148Bと、第三回目の印字周期160で印字された発色部148Cと、が重なる部分は、濃い色で発色するので、印字品質の低下が抑制される。
【0112】
(コントローラ)
そして、コントローラ26は、一つ又は複数のマイクロプロセッサ、ROMやRAM等の記憶装置、入出力インターフェース、これらを接続するバス等で構成される。コントローラ26には、入出力インターフェースを介して、図示しない外部のコンピュータからの印字データ、位置検出センサ28の検出信号等が入力される。
【0113】
コントローラ26は、記憶装置に記憶されている各種プログラムをマイクロプロセッサによって実行することで、プリンタ10を動作する。
【0114】
(動作説明)
プリンタ10の動作を、図13を用いて説明する。
【0115】
図13は、プリンタ10の動作を示すフローチャートである。
【0116】
プリンタ10におけるコントローラ26のマイクロプロセッサ(以下プロセッサとする)が記憶装置に記憶されたプログラムに従って動作すると、プロセッサは、例えばプリンタ10に設けられた細分化印字スイッチ(図示省略)の状態を入力し(ステップS10)、細分化印字モード102(102A)が設定されているか否かを判断する(ステップS12)。
【0117】
ステップS12で細分化印字スイッチがオフであり細分化印字モード102(102A)が設定されていない場合、プロセッサは、通常印字モード100で印字するために、サーボモータ82への移動信号を制御してサーマルヘッド40の発熱素子42を通常位置90に移動して(ステップS14)、ステップS18へ移行する。なお、ステップS14において、サーマルヘッド40の発熱素子42が通常位置90にある場合、プロセッサは、サーマルヘッド40の発熱素子42の位置を動かさない。
【0118】
ステップS12で細分化印字スイッチがオンであり細分化印字モード102(102A)が設定されている場合、プロセッサは、細分化印字モード102(102A)で印字を行うために、サーボモータ82への移動信号を制御する。これにより、プロセッサは、サーマルヘッド40の発熱素子42をオフセット位置92(92A)に移動する(ステップS16)。なお、ステップS16において、サーマルヘッド40の発熱素子42がオフセット位置92(92A)にある場合、プロセッサは、サーマルヘッド40の発熱素子42の位置を動かさない。
【0119】
次に、プロセッサは、検出部86からの検出信号からサーマルヘッド40の発熱素子42がプラテンローラ32の回転中心Cの真上に位置する通常位置90にあるか否かを判断する(ステップS18)。
【0120】
ステップS18で通常位置90であると判断した場合、プロセッサは、前述した通常印字モード100で印字を実行した後(ステップS20)、当該処理を終了する。
【0121】
ステップS18で通常位置90でないと判断した場合、プロセッサは、検出部86からの検出信号に基づいてサーマルヘッド40の発熱素子42が通常位置90よりも下流側48のオフセット位置92(92A)にあるか否かを判断する(ステップS22)。
【0122】
ステップS22でオフセット位置92(92A)でないと判断した場合、サーマルヘッド40は移動中なので、プロセッサは、ステップS18へ分岐して、各ステップS18、S22を繰り返す。
【0123】
ステップS22でオフセット位置92(92A)であると判断した場合、プロセッサは、前述した細分化印字モード102(102A)で印字を実行する(ステップS24)。これにより、プリンタ10は、検出部86がオフセット位置92(92A)であることを検出した状態において細分化印字モード102(102A)で動作する。
【0124】
そして、プロセッサは、細分化印字モード102(102A)での印字が終了したら当該処理を終了する。
【0125】
(作用及び効果)
以上のように構成されたプリンタ10の主な作用効果についてまとめて説明する。
【0126】
本実施形態のプリンタ10は、複数の発熱素子42が仮想直線K上に並んで配置されたサーマルヘッド40と、発熱素子42の並び方向に対して交差する方向へ印字用紙Mを搬送するプラテンローラ32と、を備え、発熱素子42の発熱及び印字用紙Mの1ピッチ分の搬送からなる印字周期140、160を繰り返して、サーマルヘッド40とプラテンローラ32との間に配置された印字用紙Mに印字するプリンタ10であって、発熱素子42がプラテンローラ32の回転中心Cへ向けて付勢される通常位置90よりも発熱素子42が印字用紙Mの搬送方向Hの下流側48に配置された状態で、印字周期160の1ピッチの長さとしての細分化搬送量158を発熱素子42の搬送方向Hの長さ42Aよりも短くして印字する細分化印字モード102(102A)を備える。
【0127】
これによれば、細分化印字モード102(102A)において、発熱素子42は、通常位置90よりも印字用紙Mの搬送方向Hの下流側48に配置されている。このため、発熱素子42で軟化後に固化されたインク材料によって発熱素子42に印字用紙Mが固着した場合であっても、当該印字用紙Mは、発熱素子42から離れる方向へ変位可能である。
【0128】
そして、発熱素子42に固着した印字用紙Mは、搬送時において印字用紙Mの面に対して斜め方向に引き剥がされる。このため、印字用紙Mが発熱素子42とプラテンローラ32とで挟まれた通常印字モード100と比較して、発熱素子42への印字用紙Mの固着に起因した不具合の抑制が可能となる。
【0129】
印字用紙Mの固着に起因した不具合の抑制について具体的に説明する。印字用紙Mが発熱素子42とプラテンローラ32とで挟まれた通常印字モード100において、印字用紙Mを排出方向に搬送すると、印字用紙Mは発熱素子42から印字用紙Mの面に沿った方向に引き剥がされる。このとき、印字用紙Mには、大きな振動が生ずるため、大きな印刷音が発生する。
【0130】
しかし、本実施形態では、発熱素子42に固着した印字用紙Mは、搬送時において印字用紙Mの面に対して斜め方向に引き剥がされる。このため、本実施形態のプリンタ10は、印字用紙Mを発熱素子42から印字用紙Mの面に沿った方向に引き剥がす場合と比較して、印字用紙Mに生ずる振動を抑制することができ、印刷音の抑制が可能となる。
【0131】
また、本実施形態では、印字用紙Mを印字用紙Mの面に対して斜め方向に引き剥がすことができるので、印字用紙Mを印字用紙Mの面に沿った方向に引き剥がす場合と比較して、印字用紙Mに形成されたインク材料の剥離が抑制される。これにより、印字品質の向上が可能となる。
【0132】
このように、本実施形態のプリンタ10は、印字音が静かでかつインク材の剥離が低減されるので、病院やオフィスなど静かな環境が求められる場所での使用に適している。
【0133】
また、インク材料の剥離等が生ずるスティッキングについては、印字用紙M等の種類によって生じ易い条件があり、条件に合わせて印字フォーマットを調整する必要がある。しかし、本実施形態のプリンタ10は、これらの調整作業が不要となる。
【0134】
そして、細分化印字モード102(102A)では、印字周期160の1ピッチの長さとしての細分化搬送量158を発熱素子42の搬送方向Hの長さ42Aよりも短くして印字するので、発熱素子42で発色される発色部148を重ねることができる。このため、このプリンタ10は、印字用紙Mが発熱素子42から離れる方向へ変位可能とすることで発色部148の色が薄くなる場合であっても、発色部148を重ねることによって印字品質の低下の抑制が可能となる。
【0135】
また、本実施形態のプリンタ10は、細分化印字モード102(102A)において、発熱素子42は印字用紙Mに接触し、プラテンローラ32は、発熱素子42が接した印字用紙Mの表面の接触部位112に対応する印字用紙Mの裏面の対応部位114に接触しない。
【0136】
これによれば、プラテンローラ32は、発熱素子42が接した接触部位112に対応する印字用紙Mの対応部位114に接触しない。このため、プラテンローラ32が印字用紙Mの下部に配置される場合であっても、印字用紙Mに発熱素子42が接した部位は、自重による変位が許容されるので、印字用紙Mの斜め下方へ向けた移動の促進が可能となる。
【0137】
また、本実施形態のプリンタ10は、細分化印字モード102(102A)において、発熱素子42が印字用紙Mを押す圧力P1は、発熱素子42が印字用紙Mを介してプラテンローラ32を押す圧力P2よりも大きい(図6参照)。
【0138】
これによれば、発熱素子42は、プラテンローラ32と共に印字用紙Mを挟持しつつ、発熱素子42と印字用紙Mとの接触が可能となる。これにより、印字用紙Mの搬送に生じ得るプラテンローラ32の空回りを抑制しつつ、発熱素子42による印字を可能とすることができる。
【0139】
また、本実施形態のプリンタ10は、発熱素子42を通常位置90に配置した状態で、印字周期140における1ピッチの長さとしての通常搬送量130を発熱素子42の搬送方向Hの長さ42A以上にして印字する通常印字モード100を備える。
【0140】
これによれば、プリンタ10は、通常印字モード100において、印字周期140における1ピッチの長さとしての通常搬送量130を発熱素子42の搬送方向Hの長さ42A以上として印字する。このため、印字周期140の1ピッチの長さを発熱素子42の搬送方向Hの長さよりも短くして印字する場合と比較して、印字用紙Mの搬送をスムーズに行うことが可能となる。
【0141】
また、本実施形態のプリンタ10は、細分化印字モード102(102A)における印字周期160の1ピッチの長さとしての細分化搬送量158を、通常印字モード100における印字周期140の1ピッチの長さの1/N(Nは2以上の自然数)とした際に、発熱した発熱素子42の発熱エネルギー量は、細分化印字モード102(102A)で印字周期160をN回繰り返す場合と通常印字モード100で印字周期140を一回行う場合とで等しい。
【0142】
このプリンタ10は、細分化印字モード102(102A)で印字周期160をN回繰り返す場合の発熱エネルギー量が通常印字モード100で印字周期140を一回行う場合の発熱エネルギー量よりも大きい場合と比較して、消費電力の抑制が可能となる。
【0143】
また、本実施形態のプリンタ10は、細分化印字モード102(102A)で発熱素子42が配置されるオフセット位置92(92A)と通常位置90との間でサーマルヘッド40を移動する移動機構62と、サーマルヘッド40がオフセット位置92(92A)に配置されたことを検出する検出部86と、を備え、検出部86がオフセット位置92(92A)であることを検出した状態において細分化印字モード102(102A)で動作する。
【0144】
これによれば、移動機構62による通常位置90からオフセット位置92(92A)への移動が完了した際に細分化印字モード102(102A)を実行することができる。これにより、発熱素子42への印字用紙Mの固着に起因した不具合を確実に抑制することが可能となる。
【0145】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0146】
例えば、上記実施形態では、プリンタ10が感熱発色方式の装置の場合を例に挙げて説明しているが、プリンタ10は、インクリボンを熱してインクリボン上のインク材料を印字用紙Mに転写して印字する熱転写方式の装置であってもよい。
【0147】
また、プリンタ10は、コントローラ26に通信機能を設けて、インターネット上のクラウドサーバに接続できるように構成してもよい。この場合は、コントローラ26が実行主体である上記の各処理の実行主体をクラウドサーバとしてもよい。
【符号の説明】
【0148】
10 プリンタ
20 印字機構
22 媒体供給部
24 カッター
26 コントローラ
28 位置検出センサ
30 ヘッドユニット
32 プラテンローラ
34 プラテン駆動モータ
40 サーマルヘッド
42 発熱素子
42A 長さ
44 支持軸
46 ガイド軸
48 下流側
50 排出口
60 ユニット筐体
62 移動機構
64 ヘッド支持部
66 支持ブロック
68 移動機構部
70 ネジ部
70A 頭部
70B 雄ネジ部
72 可動部
74 コイルスプリング
76 スペーサ
78 ナット部
78A 雌ネジ部
78B ギヤ部
80 固定ブラケット
82 サーボモータ
84 駆動ギヤ
84A ギヤ部
86 検出部
90 通常位置
92 オフセット位置
92A オフセット位置
100 通常印字モード
102 細分化印字モード
102A 細分化印字モード
110 オフセット量
112 接触部位
114 対応部位
120 通電信号
122 通常加熱時間
124 所定時間
126 搬送信号
128 通常搬送時間
130 通常搬送量
140 印字周期
142 所定間隔
146 印字パターン
148 発色部
148A 発色部
148B 発色部
148C 発色部
150 細分化加熱時間
152 所定時間
156 細分化搬送時間
158 細分化搬送量
160 印字周期
162 所定間隔
200 細分化加熱時間
C 回転中心
H 搬送方向
K 仮想直線
M 印字用紙
P1 圧力
P2 圧力
X 交差方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13