IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウッド・ハブ合同会社の特許一覧

特開2025-18256木質構造材の接合補強構造及び接合補強具
<>
  • 特開-木質構造材の接合補強構造及び接合補強具 図1
  • 特開-木質構造材の接合補強構造及び接合補強具 図2
  • 特開-木質構造材の接合補強構造及び接合補強具 図3
  • 特開-木質構造材の接合補強構造及び接合補強具 図4
  • 特開-木質構造材の接合補強構造及び接合補強具 図5
  • 特開-木質構造材の接合補強構造及び接合補強具 図6
  • 特開-木質構造材の接合補強構造及び接合補強具 図7
  • 特開-木質構造材の接合補強構造及び接合補強具 図8
  • 特開-木質構造材の接合補強構造及び接合補強具 図9
  • 特開-木質構造材の接合補強構造及び接合補強具 図10
  • 特開-木質構造材の接合補強構造及び接合補強具 図11
  • 特開-木質構造材の接合補強構造及び接合補強具 図12
  • 特開-木質構造材の接合補強構造及び接合補強具 図13
  • 特開-木質構造材の接合補強構造及び接合補強具 図14
  • 特開-木質構造材の接合補強構造及び接合補強具 図15
  • 特開-木質構造材の接合補強構造及び接合補強具 図16
  • 特開-木質構造材の接合補強構造及び接合補強具 図17
  • 特開-木質構造材の接合補強構造及び接合補強具 図18
  • 特開-木質構造材の接合補強構造及び接合補強具 図19
  • 特開-木質構造材の接合補強構造及び接合補強具 図20
  • 特開-木質構造材の接合補強構造及び接合補強具 図21
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018256
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】木質構造材の接合補強構造及び接合補強具
(51)【国際特許分類】
   E04C 5/01 20060101AFI20250130BHJP
   E04B 1/26 20060101ALI20250130BHJP
   E04C 3/18 20060101ALI20250130BHJP
   E04B 1/58 20060101ALN20250130BHJP
【FI】
E04C5/01
E04B1/26 Z
E04C3/18
E04B1/58 507L
E04B1/58 507T
E04B1/58 507Z
E04B1/58 506L
E04B1/58 506T
E04B1/58 506Z
E04B1/58 511L
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121812
(22)【出願日】2023-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】517325065
【氏名又は名称】ウッド・ハブ合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092691
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 勇治
(74)【代理人】
【識別番号】100199543
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 隆史
(72)【発明者】
【氏名】實成 康治
【テーマコード(参考)】
2E125
2E163
2E164
【Fターム(参考)】
2E125AA04
2E125AA14
2E125AA32
2E125AA33
2E125AB01
2E125AB12
2E125AB16
2E125AC01
2E125AC13
2E125AC23
2E125AG03
2E125AG08
2E125AG12
2E125AG41
2E125AG43
2E125BA41
2E125BB01
2E125BB08
2E125BB19
2E125BB22
2E125BB27
2E125BB34
2E125BB36
2E125BC09
2E125BD01
2E125BE03
2E125BE05
2E125BE07
2E125BF03
2E125CA01
2E125CA14
2E125CA78
2E125CA79
2E163FA02
2E163FA12
2E163FC02
2E163FC03
2E163FC31
2E163FC41
2E163FF02
2E163FF43
2E164EA03
(57)【要約】
【課題】木質構造材の外周面に嵌着された枠部材により木質構造材の割裂を抑制することができ、枠部材は木質構造材の外周面に構造用ビスにより止着されているので、木質構造材に対する枠部材の位置ずれを防ぐことができ、木質構造材の外周面を確実に拘束することができ、木質構造材の割裂破壊を抑制することができ、木質構造材と被接合構造材との接合強度を維持することができる。
【解決手段】ドリフトピンDPは木質構造材Wの長手方向に対して直交状に配置され、木質構造材の外周面に枠部材Fが嵌着され、枠部材は木質構造材の木口面WKに近接する位置に嵌着され、枠部材は木質構造材の外周面に構造用ビスBにより止着され、構造用ビスは木質構造材の木口面に近接する位置のドリフトピンDPの軸方向に対して直交状に配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木造建築物の木質構造材と被接合構造材とをドリフトピン及び接合金物を用いて接合する接合構造において、上記ドリフトピンは上記木質構造材の長手方向に対して直交状に配置され、該木質構造材の外周面に枠部材が嵌着され、該枠部材は該木質構造材の木口面に近接する位置に嵌着され、該枠部材は該木質構造材の外周面に構造用ビスにより止着され、該構造用ビスは該木質構造材の木口面に近接する位置のドリフトピンの軸方向に対して直交状に配置されていることを特徴とする木質構造材の接合補強構造。
【請求項2】
上記木質構造材は四角柱状に形成され、上記枠部材は該木質構造材の外周面としての4個の木端面を囲む四角枠状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の木質構造材の接合補強構造。
【請求項3】
上記木質構造材は四角柱状に形成され、上記枠部材は該木質構造材の外周面としての4個の木端面のうちの3個の木端面を囲むコ字枠状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の木質構造材の接合補強構造。
【請求項4】
上記枠部材は金属製であることを特徴とする請求項1記載の木質構造材の接合補強構造。
【請求項5】
上記枠部材は合成樹脂製であることを特徴とする請求項1記載の木質構造材の接合補強構造。
【請求項6】
上記構造用ビスは複数個配置され、該複数個の構造用ビスのうち、少なくとも2個の構造用ビスは互いに反対方向からねじ込まれていることを特徴とする請求項1記載の木質構造材の接合補強構造。
【請求項7】
上記構造用ビスは頭部を除く軸部の全周部が雄ネジとなっている全ネジ構造であることを特徴とする請求項1記載の木質構造材の接合補強構造。
【請求項8】
木造建築物の木質構造材と被接合構造材とをドリフトピン及び接合金物を用いて接合するための接合具において、上記ドリフトピンは上記木質構造材の長手方向に対して直交状に配置され、該木質構造材の外周面に嵌着される枠部材と、該枠部材を該木質構造材の外周面に止着する構造用ビスとからなり、上記枠部材は該木質構造材の木口面に近接する位置に嵌着され、上記構造用ビスは該木質構造材の木口面に近接する位置のドリフトピンの軸方向に対して直交状に配置されていることを特徴とする木質構造材の接合補強具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築物の木質構造材と被接合構造材とをドリフトピン及び接合金物を用いて接合する接合補強構造及び接合補強具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、木造建築物の柱、間柱、束等の垂直材、梁、桁等の横架材、筋交い、火打ち等の斜材、補強材等の木質構造材と、この木質構造材と同様な木質系構造材や鋼構造の鉄骨構造材、鉄筋コンクリート構造の構造材等の木質系以外の各種の被接合構造材とをドリフトピン及び接合金物を用いて接合する接合構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6727615号
【特許文献2】特許第4809318号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来構造の場合、例えば、上記木質構造材に接合金物をドリフトピンを用いて固定し、被接合構造材にも接合金物を固定し、木質構造材側の接合金物と被接合構造材側の接合金物とを締結具により連結し、木質構造材と被接合構造材とを両接続金物を介して接合するようにしたり、あるいは、被接合構造材側には接合金物を用いず、木質構造材の接合金物を被接合構造材に直接接合したりすることになり、この際、これら木質構造材と被接合構造材との接合部分に大きな引張荷重及び圧縮荷重が加わると、上記接合金物の両端部から突出しているドラフトピンの突出部分が木質構造材の長手方向に折れ曲がり、ドラフトピンの突出部分の折れ曲がり変形により木質構造材を内部から押し広げる力が発生し、この過大な押広力により木質構造材がその木口から二つに分離する割裂現象が生ずることがあり、割裂現象の発生により木質構造材及び被接合構造材間の接合強度が著しく低下することがあるという不都合を有している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこのような不都合を解決することを目的とするもので、本発明のうちで、請求項1記載の発明は、木造建築物の木質構造材と被接合構造材とをドリフトピン及び接合金物を用いて接合する接合構造において、上記ドリフトピンは上記木質構造材の長手方向に対して直交状に配置され、該木質構造材の外周面に枠部材が嵌着され、該枠部材は該木質構造材の木口面に近接する位置に嵌着され、該枠部材は該木質構造材の外周面に構造用ビスにより止着され、該構造用ビスは該木質構造材の木口面に近接する位置のドリフトピンの軸方向に対して直交状に配置されていることを特徴とする木質構造材の接合補強構造にある。
【0006】
又、請求項2記載の発明は、上記木質構造材は四角柱状に形成され、上記枠部材は該木質構造材の外周面としての4個の木端面を囲む四角枠状に形成されていることを特徴とするものであり、又、請求項3記載の発明は、上記木質構造材は四角柱状に形成され、上記枠部材は該木質構造材の外周面としての4個の木端面のうちの3個の木端面を囲むコ字枠状に形成されていることを特徴とするものである。
【0007】
又、請求項4記載の発明は、上記枠部材は金属製であることを特徴とするものであり、又、請求項5記載の発明は、上記枠部材は合成樹脂製であることを特徴とするものであり、又、請求項6記載の発明は、上記構造用ビスは複数個配置され、該複数個の構造用ビスのうち、少なくとも2個の構造用ビスは互いに反対方向からねじ込まれていることを特徴とするものであり、又、請求項7記載の発明は、上記構造用ビスは頭部を除く軸部の全周部が雄ネジとなっている全ネジ構造であることを特徴とするものである。
【0008】
又、請求項8記載の発明は、木造建築物の木質構造材と被接合構造材とをドリフトピン及び接合金物を用いて接合するための接合具において、上記ドリフトピンは上記木質構造材の長手方向に対して直交状に配置され、該木質構造材の外周面に嵌着される枠部材と、該枠部材を該木質構造材の外周面に止着する構造用ビスとからなり、上記枠部材は該木質構造材の木口面に近接する位置に嵌着され、上記構造用ビスは該木質構造材の木口面に近接する位置のドリフトピンの軸方向に対して直交状に配置されていることを特徴とする木質構造材の接合補強具にある。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上述の如く、請求項1及び請求項8記載の発明にあっては、木造建築物の木質構造材と被接合構造材とをドリフトピン及び接合金物を用いて接合する接合構造において、上記ドリフトピンは上記木質構造材の長手方向に対して直交状に配置され、木質構造材の外周面に枠部材が嵌着され、枠部材は木質構造材の木口面に近接する位置に嵌着され、枠部材は木質構造材の外周面に構造用ビスにより止着され、構造用ビスは木質構造材の木口面に近接する位置のドリフトピンの軸方向に対して直交状に配置されることになり、したがって、木質構造材の外周面に嵌着された枠部材により木質構造材の割裂を抑制することができ、かつ、枠部材は木質構造材の木口面に近接する位置に嵌着されているから、割裂が開始する木質構造材の木口面からの割裂を確実に抑制することができ、さらに、上記枠部材は木質構造材の外周面に構造用ビスにより止着されているので、上記木質構造材に対する枠部材の位置ずれを防ぐことができ、木質構造材の外周面を確実に拘束することができ、加えて、構造用ビスは木質構造材の木口面に近接する位置のドリフトピンの軸方向に対して直交状に配置されていることにより、木質構造材の割裂方向の外周面と枠部材の内面とのクリアランスを可及的に少なく維持することができ、それだけ、木質構造材の外周面を確実に拘束することができ、木質構造材の割裂破壊を抑制することができ、ひいては、木質構造材と被接合構造材との接合強度を維持することができ、それだけ、建築設計構造の簡素化及び融通性を高めることができる。
【0010】
又、請求項2記載の発明にあっては、上記木質構造材は四角柱状に形成され、上記枠部材は木質構造材の外周面としての4個の木端面を囲む四角枠状に形成されているから、木質構造材の4個の木端面からなる外周面をすべて取り囲むことができ、木質構造材の外周面を確実に拘束することができ、木質構造材の割裂破壊を確実に抑制することができる。
【0011】
又、請求項3記載の発明にあっては、上記木質構造材は四角柱状に形成され、上記枠部材は木質構造材の外周面としての4個の木端面のうちの3個の木端面を囲むコ字枠状に形成されているから、木質構造材の割裂破壊を抑制することができ、ひいては、木質構造材と被接合構造材との接合強度を維持することができ、それだけ、建築設計構造の簡素化及び融通性を高めることができる。
【0012】
又、請求項4記載の発明にあっては、上記枠部材は金属製であるから、木質構造材の外周面を経年に亘り拘束維持することができ、木質構造材の使用の耐久性を向上することができ、又、請求項5記載の発明にあっては、上記枠部材は合成樹脂製であるから、枠部材を量産することができ、かつ、木質構造材の外周面を経年に亘り拘束維持することができ、木質構造材の使用の耐久性を向上することができる。
【0013】
又、請求項6記載の発明にあっては、上記構造用ビスは複数個配置され、複数個の構造用ビスのうち、少なくとも2個の構造用ビスは互いに反対方向からねじ込まれているから、木質構造材の割裂方向の互いに対向位置する各外周面と枠部材の内面とのクリアランスを可及的に少なく維持することができ、木質構造材の外周面と枠部材の内面との隙間によるガタや緩み現象を抑制することができ、それだけ、木質構造材の外周面を確実に拘束することができ、木質構造材の割裂破壊を抑制することができ、ひいては、木質構造材に加わる引張荷重、圧縮荷重及び曲げ荷重に対する接合強度を向上することができ、木質構造材と被接合構造材との接合強度を維持することができ、それだけ、建築設計構造の簡素化及び融通性を高めることもできる。
【0014】
又、請求項7記載の発明にあっては、上記構造用ビスは頭部を除く軸部の全周部が雄ネジとなっている全ネジ構造であるから、木質構造材と枠部材との接合強度を向上することができ、かつ、電動工具等のビットの回転により構造用ビスを木質構造材に下穴を開けずに直接ねじ込むことができ、一層、現場作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の第一形態例の部分正面図である。
図2】本発明の実施の第一形態例の部分側断面図である。
図3】本発明の実施の第一形態例の部分斜視図である。
図4】本発明の実施の第一形態例の部分斜視図である。
図5】本発明の実施の第一形態例の部分断面図である。
図6】本発明の実施の第一形態例の部分分解斜視図である。
図7】本発明の実施の第一形態例の部分分解斜視図である。
図8】本発明の実施の第一形態例の部分平断面図である。
図9】本発明の実施の第一形態例の部分平断面図である。
図10】本発明の実施の第二形態例の部分平断面図である。
図11】本発明の実施の第二形態例の部分平断面図である。
図12】本発明の実施の第三形態例の部分正面図である。
図13】本発明の実施の第三形態例の部分側断面図である。
図14】本発明の実施の第三形態例の部分斜視図である。
図15】本発明の実施の第三形態例の部分平断面図である。
図16】本発明の実施の第三形態例の部分平断面図である。
図17】本発明の実施の第四形態例の部分正面図である。
図18】本発明の実施の第四形態例の部分側面図である。
図19】本発明の実施の第四形態例の部分斜視図である。
図20】本発明の実施の第四形態例の部分平断面図である。
図21】本発明の実施の第四形態例の部分平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1乃至図21は本発明の実施の形態例であって、図1乃至図9は実施の第一形態例、図10及び図11は実施の第二形態例、図12乃至図16は実施の第三形態例、図17乃至図21は実施の第四形態例である。
【0017】
図1乃至図9の実施の第一形態例にあっては、木造建築物の木質構造材W・Wと被接合構造材Mとを金属製のドリフトピンDP及び接合金物JW・JWを用いて接合する接合構造において、図1図2図5図7図8の如く、上記ドリフトピンDPは上記木質構造材W・Wの長手方向WLに対して直交状に配置され、木質構造材W・Wの外周面に枠部材F・Fが嵌着され、この場合、図7の如く、枠部材Fの対向面に二対の通穴Fが計4個形成され、枠部材F・Fは木質構造材W・Wの木口面WK・WKに近接する位置に嵌着され、枠部材F・Fは木質構造材W・Wの外周面に構造用ビスBにより止着され、この場合、図2図4の如く、構造用ビスBをいずれかの通穴Fに貫通して木質構造材W・Wの外周面に止着され、かつ、構造用ビスBは木質構造材W・Wの木口面WK・WKに近接する位置のドリフトピンDPの軸方向DPに対して直交状に配置され、すなわち、この場合、図1図2の如く、ドリフトピンDPは複数個配置されているから、ここでいう「木口面WK・WKに近接する位置のドリフトピンDP」とは、これら複数個のドリフトピンDP・・のうち最も木口面WK・WKに近接する位置のドリフトピンDPを指すことになる。
【0018】
ここで、上記木質構造材Wとしては、例えば、木造建築物の柱、間柱、束等の垂直材V、梁、桁等の横架材、筋交い、火打ち等の斜材I、あるいは、補強材に用いられ、また、上記被接合構造材Mとしては、木質構造材Wと同様な木質系構造材や鋼構造の鉄骨構造材、鉄筋コンクリート構造の構造材等の木質系以外の各種の被接合構造材Mに用いられる。
【0019】
この場合、図1図2の如く、木造建築物の垂直材V及び斜材Iとされる2個の木質構造材W・Wと、横架材としての被接合構造材Mとの接合構造に適用されている。
【0020】
この場合、図6の如く、上記木質構造材W・W側の接合金物JW・JWは基板部JW、一対の接合片部JW・JW、パイプ金具JW、連結穴JW及びドリフトピンDPからなる構造のものが用いられ、パイプ金具JWは木質構造材Wのパイプ穴WHに挿通され、一方、図1図2図3の如く、被接合構造材Mに接続金具JMが固定され、この被接合構造材M側の接続金具JMは基板部JM、一対の吊下筒部JM・JM、吊下筒部JM・JMに連結される連結軸JM、吊下板部JM、ピンJM(この「ピン」には上記ドリフトピンDPと同様なピンも含まれるが、ドリフトピンDPと峻別する意味で単に「ピン」と称している。)、連結穴JM及びピン穴MHからなる構造のものが用いられ、接合金物JWと接続金具JMとを2個のボルト及びナットからなる2個の締結具C・Cにより連結するように構成している。
【0021】
又、この場合、図1図4図6の如く、上記木質構造材W・W側の2個の各接合金物JW・JWのパイプ金具JW・JWには複数個のピン穴PH・・が形成され、上記木質構造材W・Wには複数個のピン穴WH・・が形成され、ピン穴PH・・及びピン穴WH・・に複数個のドリフトピンDP・・を木質構造材W・Wの長手方向WLに対して直交状にして多段状に交互に反対向きに打ち込むように構成している。
【0022】
そして、図2図8図9の如く、木質構造材W・Wの木口面WK・WKに近接する位置に枠部材F・Fが嵌着され、複数個のドリフトピンDP・・のうち、木質構造材W・Wの木口面WK・WKに近接する位置のドリフトピンDPの軸方向DPに対して直交状にして上記構造用ビスBにより上記枠部材F・Fを木質構造材W・Wの外周面に止着するように構成している。
【0023】
又、この場合、図1図7図8の如く、上記2個の木質構造材W・Wはそれぞれ四角柱状に形成され、上記枠部材F・Fは木質構造材W・Wの外周面としての4個の木端面WS・・を囲む四角枠状に形成されている。
【0024】
又、この場合、上記枠部材Fは鉄鋼、合金鋼、アルミニウム等の金属製となっており、この枠部材Fとして、合成樹脂、繊維強化樹脂等の合成樹脂製とすることもある。
【0025】
又、この場合、図7図8の如く、上記構造用ビスBは2個配置され、2個の構造用ビスB・Bは互いに反対方向からねじ込まれており、又、上記構造用ビスBを複数個配置し、複数個の構造用ビスB・・のうち、少なくとも2個の構造用ビスB・Bは互いに反対方向からねじ込まれるように構成することもある。例えば、木質構造材Wの大きさに応じ、構造用ビスBを4個乃至6個配置し、4個乃至6個の構造用ビスB・・のうち、少なくとも2個の構造用ビスB・Bは互いに反対方向からねじ込まれるように構成することもある。
【0026】
又、この場合、図7の如く、上記構造用ビスBは頭部Bを除く軸部Bの全周部が雄ネジTとなっている全ネジ構造となっており、頭部Bに図示省略の電動工具等のビットが嵌脱可能な十字溝、六角溝、ヘックス等の溝凹部Bが形成され、電動工具等のビットの回転により構造用ビスB・・を木質構造材Wに下穴を開けずに直接ねじ込める構造とされている。
【0027】
この実施の第一形態例は上記構成であるから、図1図2図5図7図8の如く、木造建築物の木質構造材W・Wと被接合構造材MとをドリフトピンDP及び接合金物JW・JWを用いて接合する接合構造において、上記ドリフトピンDPは上記木質構造材W・Wの長手方向WLに対して直交状に配置され、木質構造材W・Wの外周面に枠部材F・Fが嵌着され、枠部材F・Fは木質構造材W・Wの木口面WK・WKに近接する位置に嵌着され、枠部材F・Fは木質構造材W・Wの外周面に構造用ビスBにより止着され、構造用ビスBは木質構造材W・Wの木口面WK・WKに近接する位置のドリフトピンDPの軸方向DPに対して直交状に配置されることになり、したがって、木質構造材W・Wの外周面に嵌着された枠部材F・Fにより木質構造材W・Wの割裂を抑制することができ、かつ、枠部材F・Fは木質構造材W・Wの木口面WK・WKに近接する位置に嵌着されているから、割裂が開始する木質構造材W・Wの木口面WK・WKからの割裂を確実に抑制することができ、さらに、上記枠部材F・Fは木質構造材W・Wの外周面に構造用ビスBにより止着されているので、上記木質構造材W・Wに対する枠部材F・Fの位置ずれを防ぐことができ、木質構造材W・Wの外周面を確実に拘束することができ、加えて、構造用ビスBは木質構造材W・Wの木口面WK・WKに近接する位置のドリフトピンDPの軸方向DPに対して直交状に配置されていることにより、木質構造材W・Wの割裂方向CKの外周面と枠部材F・Fの内面とのクリアランスを可及的に少なく維持することができ、それだけ、木質構造材W・Wの外周面を確実に拘束することができ、木質構造材W・Wの割裂破壊を抑制することができ、ひいては、木質構造材W・Wと被接合構造材Mとの接合強度を維持することができ、それだけ、建築設計構造の簡素化及び融通性を高めることができる。
【0028】
この場合、図1図7図8の如く、上記木質構造材W・Wは四角柱状に形成され、上記枠部材F・Fは木質構造材W・Wの外周面としての4個の木端面WS・・を囲む四角枠状に形成されているから、木質構造材W・Wの4個の木端面WS・・からなる外周面をすべて取り囲むことができ、木質構造材W・Wの外周面を確実に拘束することができ、木質構造材W・Wの割裂破壊を確実に抑制することができ、又、この場合、上記枠部材Fは鉄鋼、合金鋼、アルミニウム等の金属製であるから、木質構造材Wの外周面を経年に亘り拘束維持することができ、木質構造材Wの使用の耐久性を向上することができ、又、この場合、上記枠部材Fを合成樹脂製とすることにより、枠部材Fを量産することができ、かつ、木質構造材Wの外周面を経年に亘り拘束維持することができ、木質構造材Wの使用の耐久性を向上することができる。
【0029】
又、この場合、図7図8の如く、上記構造用ビスBは2個配置され、2個の構造用ビスB・Bは互いに反対方向からねじ込まれているから、木質構造材W・Wの割裂方向CKの互いに対向位置する各外周面と枠部材F・Fの内面とのクリアランスを可及的に少なく維持することができ、木質構造材W・Wの外周面と枠部材F・Fの内面との隙間によるガタや緩み現象を抑制することができ、それだけ、木質構造材W・Wの外周面を確実に拘束することができ、木質構造材W・Wの割裂破壊を抑制することができ、ひいては、木質構造材W・Wに加わる引張荷重、圧縮荷重及び曲げ荷重に対する接合強度を向上することができ、木質構造材W・Wと被接合構造材Mとの接合強度を維持することができ、それだけ、建築設計構造の簡素化及び融通性を高めることもできる。
【0030】
又、この場合、図7の如く、上記構造用ビスBは頭部Bを除く軸部Bの全周部が雄ネジTとなっている全ネジ構造であるから、木質構造材W・Wと枠部材F・Fとの接合強度を向上することができ、かつ、電動工具等のビットの回転により構造用ビスBを枠部材F・Fの通穴Fに貫通して木質構造材W・Wに下穴を開けずに直接ねじ込むことができ、一層、現場作業性を向上することができる。
【0031】
図10及び図11の実施の第二形態例は別例構造を示し、上記第一形態例と同一態様部分に同符号を付して説明すると、この場合、上記第一形態例とは枠部材Fの構造のみが相違しており、すなわち、上記木質構造材Wは四角柱状に形成され、枠部材Fは木質構造材Wの外周面としての4個の木端面WS・・のうちの3個の木端面WS・・を囲むコ字枠状に形成され、コ字枠状の枠部材Fにより木質構造材Wの外周面としての4個の木端面WS・・のうちの割裂方向CKに対向する2個の木端面WS・WSを拘束するように構成されている。
【0032】
この第二形態例にあっても、上記木質構造材Wは四角柱状に形成され、上記枠部材Fは木質構造材Wの外周面としての4個の木端面WS・・のうちの3個の木端面WS・・を囲むコ字枠状に形成されているから、上記コ字枠状の枠部材Fの非拘束部位の開きを防ぐ拘束強度を考慮することにより、木質構造材Wの割裂破壊を抑制することができ、ひいては、木質構造材Wと被接合構造材Mとの接合強度を維持することができ、それだけ、建築設計構造の簡素化及び融通性を高めることができ、上記第一形態例と同様な作用効果を得ることができる。
【0033】
図12乃至図16の実施の第三形態例も別例構造を示し、上記第一形態例と同一態様部分に同符号を付して説明すると、この場合、図12の如く、木造建築物の垂直材Vとされる木質構造材Wと、横架材としての被接合構造材Mとの接合構造に適用されている。
【0034】
この場合、図12図13の如く、上記木質構造材W側の接合金物JWは基板部JW、接合片部JW及びドリフトピンDPからなる構造のものが用いられ、この接合片部JWが挿入される嵌挿溝部WGが木質構造材Wの木口面WKから長手方向WLに延びて形成され、一方、被接合構造材Mは木質構造材W側の接合金物JWの基板部JWを基板部JM、2個のボルト及びナットからなる一対の締結具C・Cにより直接連結するように構成している。
【0035】
又、この場合、図12図14の如く、上記木質構造材W側の接合金物JWの接合片部JWには4個のピン穴PH・・が形成され、上記木質構造材Wには4個のピン穴WH・・が形成され、ピン穴PH・・及びピン穴WH・・に4個のドリフトピンDP・・を打ち込むように構成している。
【0036】
そして、上記第一形態例と同様に、図12図13図15図16の如く、木質構造材Wの外周面に枠部材Fが嵌着され、枠部材Fは木質構造材Wの木口面WKに近接する位置に嵌着され、枠部材Fは木質構造材Wの外周面に構造用ビスBにより止着され、構造用ビスBは木質構造材Wの木口面WKに近接する位置のドリフトピンDPの軸方向DPに対して直交状に配置され、すなわち、この場合、図12図13の如く、ドリフトピンDPは4個配置されているから、ここでいう「木口面WKに近接する位置のドリフトピンDP」とは、これら4個のドリフトピンDP・・のうち最も木口面WKに近接する位置に並列する2個のドリフトピンDP・DPを指すことになる。
【0037】
この第三形態例にあっても、図12図13の如く、木質構造材Wと被接合構造材Mとの接合において、木質構造材Wの外周面に嵌着された枠部材Fにより木質構造材Wの割裂を抑制することができ、かつ、枠部材Fは木質構造材Wの木口面WKに近接する位置に嵌着されているから、割裂が開始する木質構造材Wの木口面WKからの割裂を確実に抑制することができ、さらに、上記枠部材Fは木質構造材Wの外周面に構造用ビスBにより止着されているので、上記木質構造材Wに対する枠部材Fの位置ずれを防ぐことができ、木質構造材Wの外周面を確実に拘束することができ、加えて、構造用ビスBは木質構造材Wの木口面WKに近接する位置のドリフトピンDPの軸方向DPに対して直交状に配置されていることにより、木質構造材Wの割裂方向CKの外周面と枠部材Fの内面とのクリアランスを可及的に少なく維持することができ、それだけ、木質構造材Wの外周面を確実に拘束することができ、木質構造材Wの割裂破壊を抑制することができ、ひいては、木質構造材Wと被接合構造材Mとの接合強度を維持することができ、それだけ、建築設計構造の簡素化及び融通性を高めることができ、上記第一形態例と同様な作用効果を得ることができる。
【0038】
図17乃至図21の実施の第四形態例も別例構造を示し、上記第一形態例と同一態様部分に同符号を付して説明すると、この場合、図17の如く、木造建築物の垂直材V及び斜材Iとされる2個の木質構造材W・Wと、コンクリート基礎としての被接合構造材Mとの接合構造に適用されている。
【0039】
この場合、図17図18の如く、上記2個の木質構造材W・W側の各接合金物JW・JWは、上記第三形態例と同様な基板部JW、接合片部JW、斜板部JW及びドリフトピンDPからなる構造のものが用いられ、この接合片部JWが挿入される嵌挿溝部WGが木質構造材Wの木口面WKから長手方向WLに延びて形成され、一方、被接合構造材Mは木質構造材W・W側の接合金物JW・JWの基板部JWを接合枠部JM、基板部JM、2個のボルト及びナットからなる一対の締結具C・Cにより直接連結するように構成している。
【0040】
又、この場合、図17図19の如く、上記2個の木質構造材W・W側の各接合金物JW・JWの各接合片部JW・JWにはそれぞれ4個のピン穴PH・・が形成され、上記木質構造材W・Wにはそれぞれ4個のピン穴WH・・が形成され、ピン穴PH・・及びピン穴WH・・にそれぞれ4個のドリフトピンDP・・を打ち込むように構成している。
【0041】
そして、上記第一形態例と同様に、図17図18図20図21の如く、上記2個の木質構造材W・Wの外周面にそれぞれ枠部材F・Fが嵌着され、各枠部材F・Fは木質構造材W・Wの木口面WK・WKに近接する位置に嵌着され、各枠部材F・Fは木質構造材W・Wの外周面に構造用ビスBにより止着され、構造用ビスBは上記2個の木質構造材W・Wの木口面WK・WKに近接する位置のドリフトピンDPの軸方向DPに対して直交状に配置され、すなわち、この場合、図17図18の如く、2個の木質構造材W・Wには、ドリフトピンDPはそれぞれ4個配置されているから、ここでいう「木口面WK・WKに近接する位置のドリフトピンDP」とは、これら4個のドリフトピンDP・・のうち最も木口面WKに近接する位置に並列する2個のドリフトピンDP・DPを指すことになる。
【0042】
この第四形態例にあっても、図17図18の如く、木質構造材W・Wと被接合構造材Mとの接合において、木質構造材W・Wの外周面に嵌着された各枠部材F・Fにより木質構造材W・Wの割裂を抑制することができ、かつ、各枠部材F・Fは木質構造材W・Wの木口面WK・WKに近接する位置に嵌着されているから、割裂が開始する木質構造材W・Wの木口面WK・WKからの割裂を確実に抑制することができ、さらに、上記各枠部材F・Fは木質構造材W・Wの外周面に構造用ビスBにより止着されているので、上記木質構造材W・Wに対する各枠部材F・Fの位置ずれを防ぐことができ、木質構造材W・Wの外周面を確実に拘束することができ、加えて、構造用ビスBは木質構造材W・Wの木口面WK・WKに近接する位置のドリフトピンDPの軸方向DPに対して直交状に配置されていることにより、木質構造材W・Wの割裂方向CKの外周面と各枠部材F・Fの内面とのクリアランスを可及的に少なく維持することができ、それだけ、木質構造材W・Wの外周面を確実に拘束することができ、木質構造材W・Wの割裂破壊を抑制することができ、ひいては、木質構造材W・Wと被接合構造材Mとの接合強度を維持することができ、それだけ、建築設計構造の簡素化及び融通性を高めることができ、上記第一形態例と同様な作用効果を得ることができる。
【0043】
尚、本発明は上記実施の形態例に限られるものではなく、木質構造材W、被接合構造材M、構造用ビスBの構造等は適宜変更して設計される。
【0044】
以上、所期の目的を充分達成することができる。
【符号の説明】
【0045】
W 木質構造材
WL 長手方向
WK 木口面
WS 木端面
M 被接合構造材
JW 接合金物
F 枠部材
T 雄ネジ
B 構造用ビス
頭部
軸部
DP ドリフトピン
DP ドリフトピン
DP 軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【手続補正書】
【提出日】2024-12-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木造建築物の木質構造材と被接合構造材とをドリフトピン及び接合金物を用いて接合する接合構造において、上記ドリフトピンは上記木質構造材の長手方向に対して直交状に配置され、該木質構造材の外周面に枠部材が嵌着され、該枠部材は該木質構造材の木口面に近接する位置に嵌着され、該枠部材は該木質構造材の外周面に構造用ビスにより止着され、該構造用ビスは該木質構造材の木口面に近接する位置のドリフトピンの軸方向に対して直交状に配置されてなり、上記構造用ビスは上記ドリフトピンの折れ曲がり変形により生ずる上記木質構造材の木口面からの割裂を抑制可能な長さ寸法に形成され、該構造用ビスは複数個配置され、該複数個の構造用ビスのうち、少なくとも2個の構造用ビスは互いに反対方向からねじ込まれていることを特徴とする木質構造材の接合補強構造。
【請求項2】
上記木質構造材は四角柱状に形成され、上記枠部材は該木質構造材の外周面としての4個の木端面を囲む四角枠状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の木質構造材の接合補強構造。
【請求項3】
上記木質構造材は四角柱状に形成され、上記枠部材は該木質構造材の外周面としての4個の木端面のうちの3個の木端面を囲むコ字枠状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の木質構造材の接合補強構造。
【請求項4】
上記枠部材は金属製であることを特徴とする請求項1記載の木質構造材の接合補強構造。
【請求項5】
上記枠部材は合成樹脂製であることを特徴とする請求項1記載の木質構造材の接合補強構造。
【請求項6】
上記構造用ビスは頭部を除く軸部の全周部が雄ネジとなっている全ネジ構造であることを特徴とする請求項1記載の木質構造材の接合補強構造。
【請求項7】
木造建築物の木質構造材と被接合構造材とをドリフトピン及び接合金物を用いて接合するための接合具において、上記ドリフトピンは上記木質構造材の長手方向に対して直交状に配置され、該木質構造材の外周面に嵌着される枠部材と、該枠部材を該木質構造材の外周面に止着する構造用ビスとからなり、上記枠部材は該木質構造材の木口面に近接する位置に嵌着され、上記構造用ビスは該木質構造材の木口面に近接する位置のドリフトピンの軸方向に対して直交状に配置され、該構造用ビスは上記ドリフトピンの折れ曲がり変形により生ずる上記木質構造材の木口面からの割裂を抑制可能な長さ寸法に形成され、該構造用ビスは複数個配置され、該複数個の構造用ビスのうち、少なくとも2個の構造用ビスは互いに反対方向からねじ込まれていることを特徴とする木質構造材の接合補強具。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築物の木質構造材と被接合構造材とをドリフトピン及び接合金物を用いて接合する接合補強構造及び接合補強具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、木造建築物の柱、間柱、束等の垂直材、梁、桁等の横架材、筋交い、火打ち等の斜材、補強材等の木質構造材と、この木質構造材と同様な木質系構造材や鋼構造の鉄骨構造材、鉄筋コンクリート構造の構造材等の木質系以外の各種の被接合構造材とをドリフトピン及び接合金物を用いて接合する接合構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6727615号
【特許文献2】特許第4809318号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来構造の場合、例えば、上記木質構造材に接合金物をドリフトピンを用いて固定し、被接合構造材にも接合金物を固定し、木質構造材側の接合金物と被接合構造材側の接合金物とを締結具により連結し、木質構造材と被接合構造材とを両接続金物を介して接合するようにしたり、あるいは、被接合構造材側には接合金物を用いず、木質構造材の接合金物を被接合構造材に直接接合したりすることになり、この際、これら木質構造材と被接合構造材との接合部分に大きな引張荷重及び圧縮荷重が加わると、上記接合金物の両端部から突出しているドリフトピンの突出部分が木質構造材の長手方向に折れ曲がり、ドリフトピンの突出部分の折れ曲がり変形により木質構造材を内部から押し広げる力が発生し、この過大な押広力により木質構造材がその木口から二つに分離する割裂現象が生ずることがあり、割裂現象の発生により木質構造材及び被接合構造材間の接合強度が著しく低下することがあるという不都合を有している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこのような不都合を解決することを目的とするもので、本発明のうちで、請求項1記載の発明は、木造建築物の木質構造材と被接合構造材とをドリフトピン及び接合金物を用いて接合する接合構造において、上記ドリフトピンは上記木質構造材の長手方向に対して直交状に配置され、該木質構造材の外周面に枠部材が嵌着され、該枠部材は該木質構造材の木口面に近接する位置に嵌着され、該枠部材は該木質構造材の外周面に構造用ビスにより止着され、該構造用ビスは該木質構造材の木口面に近接する位置のドリフトピンの軸方向に対して直交状に配置されてなり、上記構造用ビスは上記ドリフトピンの折れ曲がり変形により生ずる上記木質構造材の木口面からの割裂を抑制可能な長さ寸法に形成され、該構造用ビスは複数個配置され、該複数個の構造用ビスのうち、少なくとも2個の構造用ビスは互いに反対方向からねじ込まれていることを特徴とする木質構造材の接合補強構造にある。
【0006】
又、請求項2記載の発明は、上記木質構造材は四角柱状に形成され、上記枠部材は該木質構造材の外周面としての4個の木端面を囲む四角枠状に形成されていることを特徴とするものであり、又、請求項3記載の発明は、上記木質構造材は四角柱状に形成され、上記枠部材は該木質構造材の外周面としての4個の木端面のうちの3個の木端面を囲むコ字枠状に形成されていることを特徴とするものである。
【0007】
又、請求項4記載の発明は、上記枠部材は金属製であることを特徴とするものであり、又、請求項5記載の発明は、上記枠部材は合成樹脂製であることを特徴とするものであり、又、請求項6記載の発明は、上記構造用ビスは頭部を除く軸部の全周部が雄ネジとなっている全ネジ構造であることを特徴とするものである。
【0008】
又、請求項記載の発明は、木造建築物の木質構造材と被接合構造材とをドリフトピン及び接合金物を用いて接合するための接合具において、上記ドリフトピンは上記木質構造材の長手方向に対して直交状に配置され、該木質構造材の外周面に嵌着される枠部材と、該枠部材を該木質構造材の外周面に止着する構造用ビスとからなり、上記枠部材は該木質構造材の木口面に近接する位置に嵌着され、上記構造用ビスは該木質構造材の木口面に近接する位置のドリフトピンの軸方向に対して直交状に配置され、該構造用ビスは上記ドリフトピンの折れ曲がり変形により生ずる上記木質構造材の木口面からの割裂を抑制可能な長さ寸法に形成され、該構造用ビスは複数個配置され、該複数個の構造用ビスのうち、少なくとも2個の構造用ビスは互いに反対方向からねじ込まれていることを特徴とする木質構造材の接合補強具にある。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上述の如く、請求項1及び請求項記載の発明にあっては、木造建築物の木質構造材と被接合構造材とをドリフトピン及び接合金物を用いて接合する接合構造において、上記ドリフトピンは上記木質構造材の長手方向に対して直交状に配置され、木質構造材の外周面に枠部材が嵌着され、枠部材は木質構造材の木口面に近接する位置に嵌着され、枠部材は木質構造材の外周面に構造用ビスにより止着され、構造用ビスは木質構造材の木口面に近接する位置のドリフトピンの軸方向に対して直交状に配置され、上記構造用ビスは上記ドリフトピンの折れ曲がり変形により生ずる上記木質構造材の木口面からの割裂を抑制可能な長さ寸法に形成されていることになり、したがって、木質構造材の外周面に嵌着された枠部材により木質構造材の割裂を抑制することができ、かつ、枠部材は木質構造材の木口面に近接する位置に嵌着されているから、割裂が開始する木質構造材の木口面からの割裂を確実に抑制することができ、さらに、上記枠部材は木質構造材の外周面に構造用ビスにより止着されているので、上記木質構造材に対する枠部材の位置ずれを防ぐことができ、木質構造材の外周面を確実に拘束することができ、加えて、構造用ビスは木質構造材の木口面に近接する位置のドリフトピンの軸方向に対して直交状に配置されていることにより、木質構造材の割裂方向の外周面と枠部材の内面とのクリアランスを可及的に少なく維持することができ、それだけ、木質構造材の外周面を確実に拘束することができ、木質構造材の割裂破壊を抑制することができ、ひいては、木質構造材と被接合構造材との接合強度を維持することができ、それだけ、建築設計構造の簡素化及び融通性を高めることができ、かつ、上記構造用ビスは複数個配置され、複数個の構造用ビスのうち、少なくとも2個の構造用ビスは互いに反対方向からねじ込まれているから、木質構造材の割裂方向の互いに対向位置する各外周面と枠部材の内面とのクリアランスを可及的に少なく維持することができ、木質構造材の外周面と枠部材の内面との隙間によるガタや緩み現象を抑制することができ、それだけ、木質構造材の外周面を確実に拘束することができ、木質構造材の割裂破壊を抑制することができ、ひいては、木質構造材に加わる引張荷重、圧縮荷重及び曲げ荷重に対する接合強度を向上することができ、木質構造材と被接合構造材との接合強度を維持することができ、それだけ、建築設計構造の簡素化及び融通性を高めることもできる。
【0010】
又、請求項2記載の発明にあっては、上記木質構造材は四角柱状に形成され、上記枠部材は木質構造材の外周面としての4個の木端面を囲む四角枠状に形成されているから、木質構造材の4個の木端面からなる外周面をすべて取り囲むことができ、木質構造材の外周面を確実に拘束することができ、木質構造材の割裂破壊を確実に抑制することができる。
【0011】
又、請求項3記載の発明にあっては、上記木質構造材は四角柱状に形成され、上記枠部材は木質構造材の外周面としての4個の木端面のうちの3個の木端面を囲むコ字枠状に形成されているから、木質構造材の割裂破壊を抑制することができ、ひいては、木質構造材と被接合構造材との接合強度を維持することができ、それだけ、建築設計構造の簡素化及び融通性を高めることができる。
【0012】
又、請求項4記載の発明にあっては、上記枠部材は金属製であるから、木質構造材の外周面を経年に亘り拘束維持することができ、木質構造材の使用の耐久性を向上することができ、又、請求項5記載の発明にあっては、上記枠部材は合成樹脂製であるから、枠部材を量産することができ、かつ、木質構造材の外周面を経年に亘り拘束維持することができ、木質構造材の使用の耐久性を向上することができる。
【0013】
又、請求項記載の発明にあっては、上記構造用ビスは頭部を除く軸部の全周部が雄ネジとなっている全ネジ構造であるから、木質構造材と枠部材との接合強度を向上することができ、かつ、電動工具等のビットの回転により構造用ビスを木質構造材に下穴を開けずに直接ねじ込むことができ、一層、現場作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の第一形態例の部分正面図である。
図2】本発明の実施の第一形態例の部分側断面図である。
図3】本発明の実施の第一形態例の部分斜視図である。
図4】本発明の実施の第一形態例の部分斜視図である。
図5】本発明の実施の第一形態例の部分断面図である。
図6】本発明の実施の第一形態例の部分分解斜視図である。
図7】本発明の実施の第一形態例の部分分解斜視図である。
図8】本発明の実施の第一形態例の部分平断面図である。
図9】本発明の実施の第一形態例の部分平断面図である。
図10】本発明の実施の第二形態例の部分平断面図である。
図11】本発明の実施の第二形態例の部分平断面図である。
図12】本発明の実施の第三形態例の部分正面図である。
図13】本発明の実施の第三形態例の部分側断面図である。
図14】本発明の実施の第三形態例の部分斜視図である。
図15】本発明の実施の第三形態例の部分平断面図である。
図16】本発明の実施の第三形態例の部分平断面図である。
図17】本発明の実施の第四形態例の部分正面図である。
図18】本発明の実施の第四形態例の部分側面図である。
図19】本発明の実施の第四形態例の部分斜視図である。
図20】本発明の実施の第四形態例の部分平断面図である。
図21】本発明の実施の第四形態例の部分平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1乃至図21は本発明の実施の形態例であって、図1乃至図9は実施の第一形態例、図10及び図11は実施の第二形態例、図12乃至図16は実施の第三形態例、図17乃至図21は実施の第四形態例である。
【0016】
図1乃至図9の実施の第一形態例にあっては、木造建築物の木質構造材W・Wと被接合構造材Mとを金属製のドリフトピンDP及び接合金物JW・JWを用いて接合する接合構造において、図1図2図5図7図8図9の如く、上記ドリフトピンDPは上記木質構造材W・Wの長手方向WLに対して直交状に配置され、木質構造材W・Wの外周面に枠部材F・Fが嵌着され、この場合、図7の如く、枠部材Fの対向面に二対の通穴Fが計4個形成され、枠部材F・Fは木質構造材W・Wの木口面WK・WKに近接する位置に嵌着され、枠部材F・Fは木質構造材W・Wの外周面に構造用ビスBにより止着され、この場合、図2図4の如く、構造用ビスBをいずれかの通穴Fに貫通して木質構造材W・Wの外周面に止着され、かつ、構造用ビスBは木質構造材W・Wの木口面WK・WKに近接する位置のドリフトピンDPの軸方向DPに対して直交状に配置され、上記構造用ビスBは上記ドリフトピンDPの折れ曲がり変形により生ずる上記木質構造材W・Wの木口面WK・WKからの割裂を抑制可能な長さ寸法に形成され、すなわち、この場合、図1図2の如く、ドリフトピンDPは複数個配置されているから、ここでいう「木口面WK・WKに近接する位置のドリフトピンDP」とは、これら複数個のドリフトピンDP・・のうち最も木口面WK・WKに近接する位置のドリフトピンDPを指すことになる。
【0017】
ここで、上記木質構造材Wとしては、例えば、木造建築物の柱、間柱、束等の垂直材V、梁、桁等の横架材、筋交い、火打ち等の斜材I、あるいは、補強材に用いられ、また、上記被接合構造材Mとしては、木質構造材Wと同様な木質系構造材や鋼構造の鉄骨構造材、鉄筋コンクリート構造の構造材等の木質系以外の各種の被接合構造材Mに用いられる。
【0018】
この場合、図1図2の如く、木造建築物の垂直材V及び斜材Iとされる2個の木質構造材W・Wと、横架材としての被接合構造材Mとの接合構造に適用されている。
【0019】
この場合、図6の如く、上記木質構造材W・W側の接合金物JW・JWは基板部JW、一対の接合片部JW・JW、パイプ金具JW、連結穴JW及びドリフトピンDPからなる構造のものが用いられ、パイプ金具JWは木質構造材Wのパイプ穴WHに挿通され、一方、図1図2図3の如く、被接合構造材Mに接続金具JMが固定され、この被接合構造材M側の接続金具JMは基板部JM、一対の吊下筒部JM・JM、吊下筒部JM・JMに連結される連結軸JM、吊下板部JM、ピンJM(この「ピン」には上記ドリフトピンDPと同様なピンも含まれるが、ドリフトピンDPと峻別する意味で単に「ピン」と称している。)、連結穴JM及びピン穴MHからなる構造のものが用いられ、接合金物JWと接続金具JMとを2個のボルト及びナットからなる2個の締結具C・Cにより連結するように構成している。
【0020】
又、この場合、図1図4図6の如く、上記木質構造材W・W側の2個の各接合金物JW・JWのパイプ金具JW・JWには複数個のピン穴PH・・が形成され、上記木質構造材W・Wには複数個のピン穴WH・・が形成され、ピン穴PH・・及びピン穴WH・・に複数個のドリフトピンDP・・を木質構造材W・Wの長手方向WLに対して直交状にして多段状に交互に反対向きに打ち込むように構成している。
【0021】
そして、図2図8図9の如く、木質構造材W・Wの木口面WK・WKに近接する位置に枠部材F・Fが嵌着され、複数個のドリフトピンDP・・のうち、木質構造材W・Wの木口面WK・WKに近接する位置のドリフトピンDPの軸方向DPに対して直交状にして上記構造用ビスBにより上記枠部材F・Fを木質構造材W・Wの外周面に止着するように構成している。
【0022】
又、この場合、図1図7図8の如く、上記2個の木質構造材W・Wはそれぞれ四角柱状に形成され、上記枠部材F・Fは木質構造材W・Wの外周面としての4個の木端面WS・・を囲む四角枠状に形成されている。
【0023】
又、この場合、上記枠部材Fは鉄鋼、合金鋼、アルミニウム等の金属製となっており、この枠部材Fとして、合成樹脂、繊維強化樹脂等の合成樹脂製とすることもある。
【0024】
又、この場合、図7図8の如く、上記構造用ビスBは2個配置され、2個の構造用ビスB・Bは互いに反対方向からねじ込まれており、又、上記構造用ビスBを複数個配置し、複数個の構造用ビスB・・のうち、少なくとも2個の構造用ビスB・Bは互いに反対方向からねじ込まれるように構成することもある。例えば、木質構造材Wの大きさに応じ、構造用ビスBを4個乃至6個配置し、4個乃至6個の構造用ビスB・・のうち、少なくとも2個の構造用ビスB・Bは互いに反対方向からねじ込まれるように構成することもある。
【0025】
又、この場合、図7の如く、上記構造用ビスBは頭部Bを除く軸部Bの全周部が雄ネジTとなっている全ネジ構造となっており、頭部Bに図示省略の電動工具等のビットが嵌脱可能な十字溝、六角溝、ヘックス等の溝凹部Bが形成され、電動工具等のビットの回転により構造用ビスB・・を木質構造材Wに下穴を開けずに直接ねじ込める構造とされている。
【0026】
この実施の第一形態例は上記構成であるから、図1図2図5図7図8図9の如く、木造建築物の木質構造材W・Wと被接合構造材MとをドリフトピンDP及び接合金物JW・JWを用いて接合する接合構造において、上記ドリフトピンDPは上記木質構造材W・Wの長手方向WLに対して直交状に配置され、木質構造材W・Wの外周面に枠部材F・Fが嵌着され、枠部材F・Fは木質構造材W・Wの木口面WK・WKに近接する位置に嵌着され、枠部材F・Fは木質構造材W・Wの外周面に構造用ビスBにより止着され、構造用ビスBは木質構造材W・Wの木口面WK・WKに近接する位置のドリフトピンDPの軸方向DPに対して直交状に配置され、上記構造用ビスBは上記ドリフトピンDPの折れ曲がり変形により生ずる上記木質構造材W・Wの木口面WK・WKからの割裂を抑制可能な長さ寸法に形成されていることになり、したがって、木質構造材W・Wの外周面に嵌着された枠部材F・Fにより木質構造材W・Wの割裂を抑制することができ、かつ、枠部材F・Fは木質構造材W・Wの木口面WK・WKに近接する位置に嵌着されているから、割裂が開始する木質構造材W・Wの木口面WK・WKからの割裂を確実に抑制することができ、さらに、上記枠部材F・Fは木質構造材W・Wの外周面に構造用ビスBにより止着されているので、上記木質構造材W・Wに対する枠部材F・Fの位置ずれを防ぐことができ、木質構造材W・Wの外周面を確実に拘束することができ、加えて、構造用ビスBは木質構造材W・Wの木口面WK・WKに近接する位置のドリフトピンDPの軸方向DPに対して直交状に配置されていることにより、木質構造材W・Wの割裂方向CKの外周面と枠部材F・Fの内面とのクリアランスを可及的に少なく維持することができ、それだけ、木質構造材W・Wの外周面を確実に拘束することができ、木質構造材W・Wの割裂破壊を抑制することができ、ひいては、木質構造材W・Wと被接合構造材Mとの接合強度を維持することができ、それだけ、建築設計構造の簡素化及び融通性を高めることができる。
【0027】
この場合、図1図7図8の如く、上記木質構造材W・Wは四角柱状に形成され、上記枠部材F・Fは木質構造材W・Wの外周面としての4個の木端面WS・・を囲む四角枠状に形成されているから、木質構造材W・Wの4個の木端面WS・・からなる外周面をすべて取り囲むことができ、木質構造材W・Wの外周面を確実に拘束することができ、木質構造材W・Wの割裂破壊を確実に抑制することができ、又、この場合、上記枠部材Fは鉄鋼、合金鋼、アルミニウム等の金属製であるから、木質構造材Wの外周面を経年に亘り拘束維持することができ、木質構造材Wの使用の耐久性を向上することができ、又、この場合、上記枠部材Fを合成樹脂製とすることにより、枠部材Fを量産することができ、かつ、木質構造材Wの外周面を経年に亘り拘束維持することができ、木質構造材Wの使用の耐久性を向上することができる。
【0028】
又、この場合、図7図8の如く、上記構造用ビスBは2個配置され、2個の構造用ビスB・Bは互いに反対方向からねじ込まれているから、木質構造材W・Wの割裂方向CKの互いに対向位置する各外周面と枠部材F・Fの内面とのクリアランスを可及的に少なく維持することができ、木質構造材W・Wの外周面と枠部材F・Fの内面との隙間によるガタや緩み現象を抑制することができ、それだけ、木質構造材W・Wの外周面を確実に拘束することができ、木質構造材W・Wの割裂破壊を抑制することができ、ひいては、木質構造材W・Wに加わる引張荷重、圧縮荷重及び曲げ荷重に対する接合強度を向上することができ、木質構造材W・Wと被接合構造材Mとの接合強度を維持することができ、それだけ、建築設計構造の簡素化及び融通性を高めることもできる。
【0029】
又、この場合、図7の如く、上記構造用ビスBは頭部Bを除く軸部Bの全周部が雄ネジTとなっている全ネジ構造であるから、木質構造材W・Wと枠部材F・Fとの接合強度を向上することができ、かつ、電動工具等のビットの回転により構造用ビスBを枠部材F・Fの通穴Fに貫通して木質構造材W・Wに下穴を開けずに直接ねじ込むことができ、一層、現場作業性を向上することができる。
【0030】
図10及び図11の実施の第二形態例は別例構造を示し、上記第一形態例と同一態様部分に同符号を付して説明すると、この場合、上記第一形態例とは枠部材Fの構造のみが相違しており、すなわち、上記木質構造材Wは四角柱状に形成され、枠部材Fは木質構造材Wの外周面としての4個の木端面WS・・のうちの3個の木端面WS・・を囲むコ字枠状に形成され、コ字枠状の枠部材Fにより木質構造材Wの外周面としての4個の木端面WS・・のうちの割裂方向CKに対向する2個の木端面WS・WSを拘束するように構成されている。
【0031】
この第二形態例にあっても、上記木質構造材Wは四角柱状に形成され、上記枠部材Fは木質構造材Wの外周面としての4個の木端面WS・・のうちの3個の木端面WS・・を囲むコ字枠状に形成されているから、上記コ字枠状の枠部材Fの非拘束部位の開きを防ぐ拘束強度を考慮することにより、木質構造材Wの割裂破壊を抑制することができ、ひいては、木質構造材Wと被接合構造材Mとの接合強度を維持することができ、それだけ、建築設計構造の簡素化及び融通性を高めることができ、上記第一形態例と同様な作用効果を得ることができる。
【0032】
図12乃至図16の実施の第三形態例も別例構造を示し、上記第一形態例と同一態様部分に同符号を付して説明すると、この場合、図12の如く、木造建築物の垂直材Vとされる木質構造材Wと、横架材としての被接合構造材Mとの接合構造に適用されている。
【0033】
この場合、図12図13の如く、上記木質構造材W側の接合金物JWは基板部JW、接合片部JW及びドリフトピンDPからなる構造のものが用いられ、この接合片部JWが挿入される嵌挿溝部WGが木質構造材Wの木口面WKから長手方向WLに延びて形成され、一方、被接合構造材Mは木質構造材W側の接合金物JWの基板部JWを基板部JM、2個のボルト及びナットからなる一対の締結具C・Cにより直接連結するように構成している。
【0034】
又、この場合、図12図14の如く、上記木質構造材W側の接合金物JWの接合片部JWには4個のピン穴PH・・が形成され、上記木質構造材Wには4個のピン穴WH・・が形成され、ピン穴PH・・及びピン穴WH・・に4個のドリフトピンDP・・を打ち込むように構成している。
【0035】
そして、上記第一形態例と同様に、図12図13図15図16の如く、木質構造材Wの外周面に枠部材Fが嵌着され、枠部材Fは木質構造材Wの木口面WKに近接する位置に嵌着され、枠部材Fは木質構造材Wの外周面に構造用ビスBにより止着され、構造用ビスBは木質構造材Wの木口面WKに近接する位置のドリフトピンDPの軸方向DPに対して直交状に配置され、上記構造用ビスBは上記ドリフトピンDPの折れ曲がり変形により生ずる上記木質構造材W・Wの木口面WK・WKからの割裂を抑制可能な長さ寸法に形成され、すなわち、この場合、図12図13の如く、ドリフトピンDPは4個配置されているから、ここでいう「木口面WKに近接する位置のドリフトピンDP」とは、これら4個のドリフトピンDP・・のうち最も木口面WKに近接する位置に並列する2個のドリフトピンDP・DPを指すことになる。
【0036】
この第三形態例にあっても、図12図13図15図16の如く、木質構造材Wと被接合構造材Mとの接合において、木質構造材Wの外周面に嵌着された枠部材Fにより木質構造材Wの割裂を抑制することができ、かつ、枠部材Fは木質構造材Wの木口面WKに近接する位置に嵌着されているから、割裂が開始する木質構造材Wの木口面WKからの割裂を確実に抑制することができ、さらに、上記枠部材Fは木質構造材Wの外周面に構造用ビスBにより止着されているので、上記木質構造材Wに対する枠部材Fの位置ずれを防ぐことができ、木質構造材Wの外周面を確実に拘束することができ、加えて、構造用ビスBは木質構造材Wの木口面WKに近接する位置のドリフトピンDPの軸方向DPに対して直交状に配置され、上記構造用ビスBは上記ドリフトピンDPの折れ曲がり変形により生ずる上記木質構造材W・Wの木口面WK・WKからの割裂を抑制可能な長さ寸法に形成されていることにより、木質構造材Wの割裂方向CKの外周面と枠部材Fの内面とのクリアランスを可及的に少なく維持することができ、それだけ、木質構造材Wの外周面を確実に拘束することができ、木質構造材Wの割裂破壊を抑制することができ、ひいては、木質構造材Wと被接合構造材Mとの接合強度を維持することができ、それだけ、建築設計構造の簡素化及び融通性を高めることができ、上記第一形態例と同様な作用効果を得ることができる。
【0037】
図17乃至図21の実施の第四形態例も別例構造を示し、上記第一形態例と同一態様部分に同符号を付して説明すると、この場合、図17の如く、木造建築物の垂直材V及び斜材Iとされる2個の木質構造材W・Wと、コンクリート基礎としての被接合構造材Mとの接合構造に適用されている。
【0038】
この場合、図17図18の如く、上記2個の木質構造材W・W側の各接合金物JW・JWは、上記第三形態例と同様な基板部JW、接合片部JW、斜板部JW及びドリフトピンDPからなる構造のものが用いられ、この接合片部JWが挿入される嵌挿溝部WGが木質構造材Wの木口面WKから長手方向WLに延びて形成され、一方、被接合構造材Mは木質構造材W・W側の接合金物JW・JWの基板部JWを接合枠部JM、基板部JM、2個のボルト及びナットからなる一対の締結具C・Cにより直接連結するように構成している。
【0039】
又、この場合、図17図19の如く、上記2個の木質構造材W・W側の各接合金物JW・JWの各接合片部JW・JWにはそれぞれ4個のピン穴PH・・が形成され、上記木質構造材W・Wにはそれぞれ4個のピン穴WH・・が形成され、ピン穴PH・・及びピン穴WH・・にそれぞれ4個のドリフトピンDP・・を打ち込むように構成している。
【0040】
そして、上記第一形態例と同様に、図17図18図20図21の如く、上記2個の木質構造材W・Wの外周面にそれぞれ枠部材F・Fが嵌着され、各枠部材F・Fは木質構造材W・Wの木口面WK・WKに近接する位置に嵌着され、各枠部材F・Fは木質構造材W・Wの外周面に構造用ビスBにより止着され、構造用ビスBは上記2個の木質構造材W・Wの木口面WK・WKに近接する位置のドリフトピンDPの軸方向DPに対して直交状に配置され、上記構造用ビスBは上記ドリフトピンDPの折れ曲がり変形により生ずる上記木質構造材W・Wの木口面WK・WKからの割裂を抑制可能な長さ寸法に形成され、すなわち、この場合、図17図18の如く、2個の木質構造材W・Wには、ドリフトピンDPはそれぞれ4個配置されているから、ここでいう「木口面WK・WKに近接する位置のドリフトピンDP」とは、これら4個のドリフトピンDP・・のうち最も木口面WKに近接する位置に並列する2個のドリフトピンDP・DPを指すことになる。
【0041】
この第四形態例にあっても、図17図18図20図21の如く、木質構造材W・Wと被接合構造材Mとの接合において、木質構造材W・Wの外周面に嵌着された各枠部材F・Fにより木質構造材W・Wの割裂を抑制することができ、かつ、各枠部材F・Fは木質構造材W・Wの木口面WK・WKに近接する位置に嵌着されているから、割裂が開始する木質構造材W・Wの木口面WK・WKからの割裂を確実に抑制することができ、さらに、上記各枠部材F・Fは木質構造材W・Wの外周面に構造用ビスBにより止着されているので、上記木質構造材W・Wに対する各枠部材F・Fの位置ずれを防ぐことができ、木質構造材W・Wの外周面を確実に拘束することができ、加えて、構造用ビスBは木質構造材W・Wの木口面WK・WKに近接する位置のドリフトピンDPの軸方向DPに対して直交状に配置され、上記構造用ビスBは上記ドリフトピンDPの折れ曲がり変形により生ずる上記木質構造材W・Wの木口面WK・WKからの割裂を抑制可能な長さ寸法に形成されていることにより、木質構造材W・Wの割裂方向CKの外周面と各枠部材F・Fの内面とのクリアランスを可及的に少なく維持することができ、それだけ、木質構造材W・Wの外周面を確実に拘束することができ、木質構造材W・Wの割裂破壊を抑制することができ、ひいては、木質構造材W・Wと被接合構造材Mとの接合強度を維持することができ、それだけ、建築設計構造の簡素化及び融通性を高めることができ、上記第一形態例と同様な作用効果を得ることができる。
【0042】
尚、本発明は上記実施の形態例に限られるものではなく、木質構造材W、被接合構造材M、構造用ビスBの構造等は適宜変更して設計される。
【0043】
以上、所期の目的を充分達成することができる。
【符号の説明】
【0044】
W 木質構造材
WL 長手方向
WK 木口面
WS 木端面
M 被接合構造材
JW 接合金物
F 枠部材
T 雄ネジ
B 構造用ビス
頭部
軸部
DP ドリフトピン
DP ドリフトピン
DP 軸方向