(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018284
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】内視鏡的縫合装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/04 20060101AFI20250130BHJP
A61B 17/94 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
A61B17/04
A61B17/94
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121858
(22)【出願日】2023-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】兼政 賢一
(72)【発明者】
【氏名】浅野 励音
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160BB01
4C160BB11
4C160MM32
(57)【要約】
【課題】操作にワイヤを用いつつ、アーム部への縫合針の固定操作をより確実に行うことのできる内視鏡的縫合装置を提供する。
【解決手段】内視鏡の管状挿入部の遠位端に設けられる内視鏡的縫合装置は、アーム一端側にて縫合針の保持部をそれぞれ有する第1アーム部および第2アーム部を有し、アーム一端側を開閉させて組織を縫合する際に縫合針を保持するアーム部を切り替え可能に構成される。また、内視鏡的縫合装置は、管状挿入部に沿って並設され、一方の動作に他方の反対側への動作が連動する一対の操作線と、一対の操作線の一方を装置本体部に対して近位側に牽引したときに、第1アーム部の保持部に縫合針を固定する第1固定部と、一対の操作線の他方を装置本体部に対して近位側に牽引したときに、第2アーム部の保持部に縫合針を固定する第2固定部と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の管状挿入部の遠位端に設けられる内視鏡的縫合装置であって、
アーム一端側にて縫合針の保持部をそれぞれ有する第1アーム部および第2アーム部を有し、前記アーム一端側を開閉させて組織を縫合する際に前記縫合針を保持するアーム部を切り替え可能に構成され、
前記管状挿入部に沿って並設され、一方の動作に他方の反対側への動作が連動する一対の操作線と、
前記一対の操作線の一方を装置本体部に対して近位側に牽引したときに、前記第1アーム部の前記保持部に前記縫合針を固定する第1固定部と、
前記一対の操作線の他方を装置本体部に対して近位側に牽引したときに、前記第2アーム部の前記保持部に前記縫合針を固定する第2固定部と、を備える
内視鏡的縫合装置。
【請求項2】
前記一対の操作線は、前記第1アーム部の前記アーム一端側および前記第2アーム部の前記アーム一端側を経てアーム部内を周回する1本の線状部材で構成され、
前記第1固定部は、前記第1アーム部内で前記線状部材に固定され、
前記第2固定部は、前記第2アーム部内で前記線状部材に固定される
請求項1に記載の内視鏡的縫合装置。
【請求項3】
前記一対の操作線は、前記第1アーム部および前記2アーム部の基端側で折り返して配置された1本の線状部材で構成され、
前記第1固定部は、前記折り返された前記線状部材の他方側に接続されて前記第1アーム部の長手方向に摺動可能な部材であり、
前記第2固定部は、前記折り返された前記線状部材の一方側に接続されて前記第2アーム部の長手方向に摺動可能な部材である
請求項1に記載の内視鏡的縫合装置。
【請求項4】
前記第1アーム部の前記アーム一端側および前記第2アーム部の前記アーム一端側に両端が配置され、前記第1アーム部および前記第2アーム部の基端側で折り返すように配置された屈曲部材をさらに備え、
前記第1固定部は、前記屈曲部材の前記第1アーム部側に設けられ、
前記第2固定部は、前記屈曲部材の前記第2アーム部側に設けられ、
前記一対の操作線の一方は、前記折り返された前記屈曲部材の前記第2アーム部側に接続され、
前記一対の操作線の他方は、前記折り返された前記屈曲部材の前記第1アーム部側に接続され、
前記屈曲部材は、装置本体部に対するいずれかの前記操作線の近位側への牽引により、前記第1アーム部および前記第2アーム部を摺動する
請求項1に記載の内視鏡的縫合装置。
【請求項5】
前記第1アーム部および前記2アーム部の基端側には、前記屈曲部材の折り返し部位を受ける支持体が配置されている
請求項4に記載の内視鏡的縫合装置。
【請求項6】
前記一対の操作線は、前記アーム部を開閉動作させる開閉ワイヤと独立して操作可能である
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の内視鏡的縫合装置。
【請求項7】
前記内視鏡的縫合装置は、前記内視鏡の管状挿入部に着脱可能である
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の内視鏡的縫合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡的縫合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、切開後の偶発症の発生リスクを抑制するために切開部の縫合を内視鏡下で行う手技が知られており、内視鏡下で切開部の縫合を行うための内視鏡的縫合装置も提案されている。例えば、特許文献1には、先端部で縫合針を保持する一対のアーム部を有し、開閉時に縫合針を保持するアーム部を切り替えて縫合を行う縫合装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の内視鏡的縫合装置では、内視鏡の近位側に設けられた操作部から長尺のワイヤを介して遠位側の縫合装置が操作される。ワイヤでの力の伝達は近位側に牽引する場合は比較的良好であるが、ワイヤに遠位側に押す力をかける場合にはワイヤの撓みなどで遠位側への力の伝達性が低下する。そのため、アーム部に縫合針を固定する操作が比較的に困難であった。
【0005】
そこで、本発明は上記の状況に鑑みてなされたものであって、操作にワイヤを用いつつ、アーム部への縫合針の固定操作をより確実に行うことのできる内視鏡的縫合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、内視鏡の管状挿入部の遠位端に設けられる内視鏡的縫合装置である。内視鏡的縫合装置は、アーム一端側にて縫合針の保持部をそれぞれ有する第1アーム部および第2アーム部を有し、アーム一端側を開閉させて組織を縫合する際に縫合針を保持するアーム部を切り替え可能に構成される。また、内視鏡的縫合装置は、管状挿入部に沿って並設され、一方の動作に他方の反対側への動作が連動する一対の操作線と、一対の操作線の一方を装置本体部に対して近位側に牽引したときに、第1アーム部の保持部に縫合針を固定する第1固定部と、一対の操作線の他方を装置本体部に対して近位側に牽引したときに、第2アーム部の保持部に縫合針を固定する第2固定部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、操作にワイヤを用いつつ、アーム部への縫合針の固定操作をより確実に行うことのできる内視鏡的縫合装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る縫合装置の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図4】第1実施形態の開閉機構部の構成例を示す図である。
【
図5】第1実施形態の針固定機構を模式的に示す図である。
【
図6】第1実施形態での第1固定部および第2固定部の動作例を示す図である。
【
図7】第1実施形態の縫合装置の動作例を示す図である。
【
図9】第2実施形態の針固定機構を模式的に示す図である。
【
図10】第2実施形態の針固定機構の動作例を示す図である。
【
図11】第3実施形態の針固定機構を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、実施形態に係る内視鏡的縫合装置(以下、縫合装置とも称する)の構成例について説明する。なお、図面における各部の形状、寸法等は模式的に示したもので、実際の形状や寸法等を示すものではない。
【0010】
また、以下の説明では、内視鏡のオペレータからみて遠い方を遠位側と称し、オペレータからみて近い方を近位側と称する。図面では、内視鏡の長手方向(軸方向)を適宜矢印Axで示す。また、長手方向に略直交する方向を径方向と定義し、長手方向を中心とする回転方向を周方向と定義する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る縫合装置の一例を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1の縫合装置の平面図である。
図3は、
図1の縫合装置の側面図である。
【0012】
縫合装置1は、内視鏡において生体管腔に挿入される管状挿入部2の遠位端に着脱可能に設けられる。縫合装置1は、内視鏡の管状挿入部2に対して着脱可能であるため、交換や殺菌消毒などのメンテナンスが容易である。なお、縫合装置1は、ディスポーザブルの製品として供給されてもよい。
【0013】
例えば、内視鏡は管状挿入部2が屈曲可能な軟性鏡であり、近位側からオペレータによって操作される。また、内視鏡の管状挿入部2の遠位端には、撮像部の対物レンズ3と、照明部4と、鉗子口5が設けられている。
【0014】
内視鏡は、広角の対物レンズ3を介して撮像部で生体管腔内を撮像し、生体管腔内の映像を不図示の表示装置にリアルタイムで表示出力できる。また、照明部4は、光ファイバーにより光源から導かれた光で生体管腔内を照らす。また、鉗子口5は、鉗子6などの処置具の出し入れや処置具による生体組織の採取のために設けられている。内視鏡は、
図3に示すように、管状挿入部2の鉗子口5から長手方向に鉗子6を進退させて、生体組織を鉗子6で把持することが可能である。
【0015】
縫合装置1は、取付部11と、第1アーム部12および第2アーム部13からなる一対のアーム部と、開閉機構部14と、開閉ワイヤ15と、操作線16a,16bとを備えている。取付部11、第1アーム部12、第2アーム部13および開閉機構部14は、管状挿入部2の遠位端に配置される。
【0016】
第1アーム部12および第2アーム部13は、遠位側の端部に縫合針17を保持する保持部18をそれぞれ有している。また、第1アーム部12および第2アーム部13は、縫合針17が保持部18に固定されているロック状態と、縫合針17が保持部18に固定されていないロック解除状態とを切替可能な針固定機構30をそれぞれ内部に有している。上記の針固定機構30の構成については後述する。
【0017】
取付部11は、管状挿入部2の外径に対応する環状の部材である。取付部11の内側には、管状挿入部2の遠位端が着脱可能に挿入されて取付部11に保持される。また、取付部11の外周には、開閉機構部14を介して第1アーム部12および第2アーム部13が取り付けられる。
【0018】
第1アーム部12および第2アーム部13は、取付部11の遠位側に突出するようにV字状に開閉機構部14に支持され、内視鏡外周の接線方向と略平行な方向に開閉可能である。
図3に示すように、縫合装置1を管状挿入部2に取り付けたときには、第1アーム部12および第2アーム部13の先端は管状挿入部2よりも遠位側に位置する。また、
図3に示すように、各アーム部の先端は、各アーム部が閉じた状態で鉗子6の動線上に配置されている。
【0019】
第1アーム部12および第2アーム部13は、近位側よりも遠位側が径方向内側に向けて傾いて取り付けられている。例えば、各アーム部は、長手方向と略平行な位置から径方向内側に0.5°から50°、より好ましくは3°から35°傾けて取り付けられる。各アーム部を内向きに傾けて取り付けることで、縫合装置1が径方向外側のものと干渉しにくくなり、内視鏡をオーバーチューブや体内に挿入するときの通過性を向上させることができる。また、各アーム部を内向きに傾けて取り付けることで、内視鏡の撮像部の視野角中心に各アーム部の先端が近づき、縫合時の視認性を向上させることができる。また、内視鏡が動いたり屈曲部に位置したり、アーム位置が挿入後に少しズレたりしてもアーム部が視野の中心に映りやすくなり、内視鏡下でアーム部全体の確認が容易となる。
【0020】
また、各アーム部の先端に設けられる保持部18は、内視鏡の撮像部の視野角中心から100%の範囲内に配置される。具体的には、管状挿入部2の遠位端を基準として、撮像部の視野角をθ1とし、視野角中心から各アーム部の先端が配置される範囲をθ2としたときに、θ2はθ1の90%以内にあることが好ましく、またθ2はθ1の80%以内にあることがより好ましく、さらにθ2はθ1の70%以内であることが特に好ましい。上記の条件で各アーム部の先端を配置することで、縫合箇所が撮像部の視野角から外れることや、撮像部の収差の影響で縫合時の視認性が低下することを抑制できる。
【0021】
また、例えば全層縫合のように生体組織を大きく巻き込んで縫合を行う場合、内視鏡の鉗子6で縫合する生体組織を内視鏡側に十分に引き込む必要が生じる。そのため、管状挿入部2の遠位端から保持部18までの長手方向寸法にある程度のマージンが必要となる。
【0022】
かかる観点から、例えば、管状挿入部2の遠位端から各アーム部の先端までの長手方向寸法は、例えば1mm以上80mm以下とすることが好ましく、3mm以上60mm以下とすることがより好ましい。例えば、管状挿入部2の遠位端から各アーム部の先端までを3mm以上とすることで、アーム部の先端が内視鏡の視野に入るため内視鏡下での縫合がより容易となる。また、管状挿入部2の遠位端から各アーム部の先端までを60mm以下とすることで、アームの先端をオーバーチューブに引っ掛けずに挿入することが容易となる。
【0023】
開閉ワイヤ15は、管状挿入部2に沿って長手方向に配置され、遠位側が開閉機構部14に接続されている。縫合装置1では、開閉ワイヤ15を近位側に牽引操作することで、開閉機構部14を介して縫合針17を保持する第1アーム部12および第2アーム部13を開閉させることができる。
【0024】
操作線16aは、管状挿入部2に沿って長手方向に配置され、遠位側が針固定機構30の第1アーム部12側に接続されている。また、操作線16bは、管状挿入部2に沿って長手方向に配置され、遠位側が針固定機構30の第2アーム部13側に接続されている。
【0025】
操作線16bを近位側に牽引操作することで、第1アーム部12の保持部18で縫合針17が固定された状態と当該ロックが解除された状態を切り替えることができる。また、操作線16aを近位側に牽引操作することで第2アーム部13の針固定機構30が動作し、第2アーム部13の保持部18で縫合針17が固定されたロック状態と当該ロックが解除された状態を切り替えることができる。
【0026】
上記の開閉ワイヤ15,操作線16a,16bはそれぞれ独立に操作できる。開閉機構部14の操作と、針固定機構30の操作をそれぞれ別々のワイヤで行うことで、縫合装置1の精密な操作が可能となる。
【0027】
取付部11、第1アーム部12、第2アーム部13および開閉機構部14の材料としては、それぞれ生体適合性を有する金属などを適用することができ、例えばステンレスやチタン、ニチノールなどが挙げられる。また、開閉ワイヤ15および操作線16a,16bは、例えば、ステンレスやチタン、銅、ニチノールなどの金属細線のほか、高分子ファイバーの細線、フッ素チューブ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロンなどを用いることができる。なお、開閉ワイヤ15と操作線16a,16bは同じ材料で形成されていてもよく、異なる部材で形成されていてもよい。
【0028】
図4は、第1実施形態の開閉機構部14の構成例を模式的に示す図である。なお、開閉機構部14は、
図4の構成に限定されず、開閉ワイヤ15の牽引で開閉可能な他の機構によるものでもよい。
【0029】
第1実施形態の開閉機構部14は、第1アーム部12および第2アーム部13を駆動させるリンク機構であり、本体部21と、原動節22と、第1中間節23と、第2中間節24とを有する。開閉機構部14のリンク機構は、中心軸線Cを基準とする平面上で線対称である。なお、中心軸線Cは、管状挿入部2の長手方向に対し径方向に傾く成分を含む。
【0030】
本体部21は、第1アーム部12および第2アーム部13を回動可能に支持するとともに、リンク機構の要素を収容する薄箱状の筐体である。本体部21は、リンク機構の要素を覆うカバーとしても機能する。本体部21でリンク機構が覆われることで、縫合糸の絡まりや、体液などの付着によってリンク機構に動作不良が生じる可能性を抑制できる。なお、
図4では、開閉機構部14の構造を理解しやすくするため、本体部21を平板状に描画している。
【0031】
本体部21の全体形状は、遠位側の辺が近位側の辺よりも長い台形状に形成され、本体部21の近位側が取付部11に固定される。上記のように、本体部21は、近位側よりも遠位側が径方向内側(
図4の紙面奥行側)に向けて傾くように取付部11に固定されている。
【0032】
また、本体部21の遠位側には、第1アーム部12が一方の端部(
図4の左側)に取り付けられ、第1アーム部12に対して間隔をあけて他方の端部(
図4の右側)に第2アーム部13が取り付けられている。第1アーム部12は、アームの基端側が第1支軸25で本体部21に回動自在に支持される。また、第2アーム部13は、アームの基端側が第2支軸26で本体部21に回動自在に支持される。なお、第1アーム部12および第2アーム部13は、不図示のばねにより開方向に付勢されている。
【0033】
原動節22は、細長の矩形状部材であり、中心軸線Cに沿って本体部21内に配置されている。原動節22の近位側端部には開閉ワイヤ15が接続されている。また、原動節22の遠位側端部には、第1中間節23の近位側端部および第2中間節24の近位側端部がそれぞれ連結されている。原動節22は、開閉ワイヤ15の牽引により中心軸線Cに沿って本体部22内を摺動し、これにより管状挿入部2の長手方向に相対的に変位する。
【0034】
第1中間節23および第2中間節24は、それぞれ細長の矩形状部材である。第1中間節23の近位側端部および第2中間節24の近位側端部は、いずれも原動節22の遠位側端部にピン22aにより回動自在に支持されている。
【0035】
また、第1中間節23の遠位側端部は、第1アーム部12にピン27を介して回動自在に連結されている。第1アーム部12のピン27の位置は、アームの先端側と第1支軸25の間に配置され、アームの先端側よりも第1支軸25に近い位置にある。
【0036】
同様に、第2中間節24の遠位側端部は、第2アーム部13にピン28を介して回動自在に連結されている。第2アーム部13のピン28の位置は、アームの先端側と第2支軸26の間に配置され、アームの先端側よりも第2支軸26に近い位置にある。
【0037】
ここで、上記のように第1アーム部12と第2アーム部13は不図示のばねの力で開方向に付勢されている。開閉ワイヤ15が牽引されていない状態では、第1アーム部12および第2アーム部13には閉方向の力が作用しないため、縫合装置1はアーム部が開いた状態を保つ(
図4(a))。
【0038】
上記の状態から開閉ワイヤ15が牽引されると、開閉機構部14の原動節22は長手方向の近位側に変位する。すると、原動節22の変位に伴って第1中間節23の近位側端部および第2中間節24の近位側端部の位置が近位側に移動し、第1中間節23および第2中間節24がそれぞれ近位側に引き込まれる。
【0039】
本体部21に第1支軸25で回動自在に支持された第1アーム部12は、第1中間節23の変位により、第1支軸25を中心として閉方向に回動する。同様に、本体部21に第2支軸26で回動可能に支持された第2アーム部13は、第2中間節24の変位により、第2支軸26を中心として閉方向に回動する。
以上のようにして、縫合装置1のアーム部は、開閉ワイヤ15の牽引によって開いた状態から閉じた状態に変化する(
図4(b))。
【0040】
図4に示す開閉機構部14は、リンク機構を介して開閉ワイヤ15の運動をアーム部に直接的に伝達し、開閉ワイヤ15の牽引による原動節22の変位をアーム部の先端側の開閉動作に変換できる。そのため、開閉機構部14は力の損失を抑制しつつアーム部を強い力で開閉でき、例えば全層縫合に適した縫合装置1を実現できる。また、開閉機構部14は、開閉ワイヤ15の牽引による簡易な操作でアーム部の開閉を切り替えることができる。
【0041】
次に、第1実施形態の針固定機構30の構成例を説明する。
図5は、第1実施形態の針固定機構30を模式的に示す図である。針固定機構30は、第1アーム部12、第2アーム部13および上記の本体部21をケーシングとして組み立てられている。
【0042】
第1アーム部12および第2アーム部13の先端(遠位側の端部)には、縫合針17の保持部18が内側面にそれぞれ設けられている。保持部18は、それぞれのアーム部の内側面に開口された穴であり、アーム部に挿入される縫合針17の一端を収容できる。
【0043】
ここで、縫合針17は、両端に針先17aが形成され、中央部には縫合糸を通す穴(不図示)を有している。また、縫合針17の両側には、針先17aよりも内側の位置に、縫合針17の延長方向と交差方向に延び、周方向に環状にくぼんだくびれ状の溝17bが形成されている。
【0044】
また、第1実施形態の針固定機構30において、操作線16a,16bは、第1アーム部12および第2アーム部13内を周回する1本の線状部材16で構成されており、互いに接続されている。
【0045】
線状部材16は、第1アーム部12内の先端部に設けられた第1係止部19aと、第2アーム部13内の先端部に設けられた第2係止部19bと、本体部21内に設けられた基端側係止部19cにそれぞれ摺動可能に掛け止めされている。第1アーム部12において、第1係止部19aは保持部18の位置よりも先端側に設けられている。同様に、第2アーム部13において、第2係止部19bは保持部18の位置よりも先端側に設けられている。
【0046】
第1アーム部12内において、基端側係止部19cに掛け止めされた線状部材16は、第1アーム部12の内側面に沿って第1アーム部12の長手方向に配設され、第1係止部19aに掛け止めされて第1アーム部12内を折り返す。第1係止部19aから近位側に折り返す線状部材16は、第1アーム部12の外側面に沿って第1アーム部12の長手方向に配設され、操作線16aとして針固定機構30から外側に引き出される。
【0047】
一方、第2アーム部13内において、基端側係止部19cに掛け止めされた線状部材16は、第2アーム部13の内側面に沿って第2アーム部13の長手方向に配設され、第2係止部19bに掛け止めされて第2アーム部13内を折り返す。第2係止部19bから近位側に折り返す線状部材16は、第2アーム部13の外側面に沿って第2アーム部13の長手方向に配設され、操作線16bとして針固定機構30から外側に引き出される。
【0048】
上記のように、第1アーム部12内および第2アーム部13内を周回して配設される線状部材16では、操作線16aの動作に操作線16bの反対側への動作が連動する。例えば、操作線16aを近位側に牽引したときには、操作線16bには遠位側への引く力が作用する。一方で、操作線16bを近位側に牽引したときには、操作線16aには遠位側への引く力が作用する。
【0049】
また、線状部材16には、第1固定部31aと、第2固定部31bとがそれぞれ固定されている。
図6は、第1実施形態での第1固定部31aおよび第2固定部31bの動作例を示す図である。
【0050】
第1固定部31aは、第1アーム部12の内周側で保持部18と対応する位置に配置された板状の部材であり、線状部材16の操作により第1アーム部12内を長手方向に摺動可能である。縫合針17の挿抜方向での第1固定部31aの厚さは、縫合針17の溝17bの幅よりも小さく形成されている。
【0051】
第2固定部31bは、第2アーム部13の内周側で保持部18と対応する位置に配置された板状の部材であり、線状部材16の操作により第2アーム部13内を長手方向に摺動可能である。縫合針17の挿抜方向での第2固定部31bの厚さは、第1固定部31aと同様に、縫合針17の溝17bの幅よりも小さく形成されている。
【0052】
図6に示すように、第1固定部31a、第2固定部31bには、それぞれ縫合針17を挿抜可能な幅寸法の穴32が形成されている。各々の穴32には、アーム部の先端側に向けて延びるスリット状の針支持部32aが形成されている。針支持部32aの幅は、縫合針17の外径よりも小さく、縫合針17の溝17bの部分の径より大きい寸法にいずれも形成されている。
【0053】
第1固定部31a、第2固定部31bは、それぞれ穴32の位置では縫合針17を挿抜方向に移動させることができる。また、第1固定部31a、第2固定部31bは、縫合針17の溝17bに針支持部32aを差し込むことで縫合針17と係合する。縫合針17の溝17bに針支持部32aが差し込まれた状態では縫合針17の外周部分と針支持部32aが干渉し、縫合針17の移動が規制される。これにより、第1固定部31a、第2固定部31bにより、縫合針17を保持部18に固定できる。
【0054】
また、第1固定部31aおよび第2固定部31bは、一方が保持部18に対して穴32が重なり、他方が保持部18に対して針支持部32aが重なる位置関係で線状部材16に取り付けられている。
【0055】
例えば、操作線16bが近位側に牽引されると、第1アーム部12の内側面では線状部材16が近位側に移動し、第2アーム部13の内側面では線状部材16が遠位側に移動する。すると、
図6(a)に示すように、第1アーム部12の保持部18に対して第1固定部31aの針支持部32aが重なり、第2アーム部13では、保持部18に対して第2固定部31bの穴32が重なる。
図6(a)の状態では、第1アーム部12において針支持部32aで縫合針17が固定される一方、第2アーム部13では保持部18に縫合針17が挿抜可能である。
【0056】
また、操作線16aが近位側に牽引されると、第1アーム部12の内側面では線状部材16が遠位側に移動し、第2アーム部13の内側面では線状部材16が近位側に移動する。すると、
図6(b)に示すように、第2アーム部13の保持部18に対して第2固定部31bの針支持部32aが重なり、第1アーム部12では、保持部18に対して第1固定部31aの穴32が重なる。
図6(b)の状態では、第2アーム部13において針支持部32aで縫合針17が固定される一方、第1アーム部12では保持部18に縫合針17が挿抜可能である。なお、
図6(a)、(b)のいずれの場合も、両方のアーム部で保持部18に穴32が同時に重ならないため、アーム部から縫合針17が脱落することを防止できる。
【0057】
以下、
図7、
図8を参照しつつ、第1実施形態の縫合装置1の動作例を説明する。
生体管腔の切開部を縫合する際には、一方のアーム部に縫合針17が片持ちで保持される。
図7(a)では、最初に第1アーム部12の保持部18に縫合針17が保持されている状態を示している。
【0058】
図7(a)では、操作線16bが近位側に牽引されている。これにより、第1アーム部12では、保持部18に対して第1固定部31aの針支持部32aが重なる。このとき、第1アーム部12の保持部18では縫合針17の溝17bに針支持部32aが係合し、縫合針17は第1アーム部12に固定される。一方、第2アーム部13では、保持部18に対して第2固定部31bの穴32が重なる。このとき、第2アーム部13の保持部18では、縫合針17が挿抜方向に移動可能である。
【0059】
次に、
図7(b)に示すように、
図7(a)の状態から開閉ワイヤ15を牽引して第1アーム部12と第2アーム部13を閉状態にすると、露出している縫合針17の針先17aが他方のアーム部(第2アーム部13)の保持部18に収容される。
【0060】
その後、
図7(b)の状態で操作線16aが近位側に牽引される。すると、
図8(a)に示すように、線状部材16が移動することで、第1アーム部12では保持部18に対して第1固定部31aの穴32が重なり、第2アーム部13では保持部18に対して第2固定部31bの針支持部32aが重なる状態に移行する。これにより、第2アーム部13の保持部18では縫合針17の溝17bに針支持部32aが係合し、縫合針17は第2アーム部13に固定される。また、第1アーム部12の保持部18では、第1固定部31aと縫合針17の溝17bの係合が解除され、縫合針17が挿抜方向に移動可能となる。
【0061】
そして、
図8(a)の状態から開閉ワイヤ15の牽引を停止して開閉ワイヤ15を開放すると、第1アーム部12と第2アーム部13は不図示のばねの力で開方向に付勢されて縫合装置1のアーム部は開いた状態となる。これにより、
図8(b)に示すように、第1アーム部12の保持部18から縫合針17が離れ、第2アーム部13の保持部18に縫合針17が片持ちで保持された状態となる。縫合装置1では、生体管腔内の切開部を挟んで第1アーム部12および第2アーム部13を開閉し、上記の動作を繰り返す。これにより、縫合針17を保持するアーム部を交互に切り替えて切開部の縫合を行うことができる。
【0062】
以下、第1実施形態の縫合装置1の効果を述べる。
縫合装置1の針固定機構30は、第1アーム部12の先端側および第2アーム部13の先端側を経てアーム部内を周回する1本の線状部材16で操作線16a,16bが構成されている。そして、線状部材16には、操作線16bを近位側に牽引したときに第1アーム部12の保持部18に縫合針17を固定する第1固定部31aと、操作線16aを近位側に牽引したときに第2アーム部13の保持部18に縫合針17を固定する第2固定部31bがそれぞれ固定されている。
第1実施形態では、1本の線状部材16で操作線16a,16bを構成するため、操作線16a,16bの一方の動きが他方の反対側の動きに連動する。そのため、第1実施形態では、力の伝達性が低い操作線16a,16bを押す方向の操作によらず、いずれかの操作線16a,16bを引く操作で縫合針17の固定を行うことができるので、縫合針17の固定操作をより確実に行うことができる。
【0063】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態の針固定機構30aを模式的に示す図である。以下の各実施形態の説明では、第1実施形態と共通の要素には同じ符号を付して重複説明を適宜省略する。
【0064】
針固定機構30aは、第1アーム部12、第2アーム部13および上記の本体部21をケーシングとして組み立てられている。針固定機構30aにおいて、操作線16a,16bは1本の線状部材16で構成され、互いに接続されている。線状部材16は、第1アーム部12および第2アーム部13の基端側の本体部21内で、基端側係止部19cに掛け止めされて折り返して配設されている。また、線状部材16の一方側は、第1アーム部12側で操作線16aとして外側に引き出され、線状部材16の他方側は、第2アーム部13側で操作線16bとして外側に引き出されている。
【0065】
これにより、針固定機構30aの線状部材16においても、操作線16aの動作に操作線16bの反対側への動作が連動する。例えば、操作線16aを近位側に牽引したときには、操作線16bには遠位側への引く力が作用する。一方で、操作線16bを近位側に牽引したときには、操作線16aには遠位側への引く力が作用する。
【0066】
また、針固定機構30aは、第1アーム部12に収容される第1固定部33aと、第2アーム部13に収容される第2固定部33bとを有している。
【0067】
第1固定部33aは、第1アーム部12の長手方向に沿って配置され、第1アーム部12内を摺動可能な板状の部材である。縫合針17の挿抜方向での第1固定部33aの厚さは、縫合針17の溝17bの幅よりも小さく形成されている。また、第1固定部33aの基端側は、基端側係止部19cよりも一方側で線状部材16に接続されている。
【0068】
第2固定部33bは、第2アーム部13の長手方向に沿って配置され、第2アーム部13内を摺動可能な板状の部材である。縫合針17の挿抜方向での第2固定部33bの厚さは、縫合針17の溝17bの幅よりも小さく形成されている。また、第2固定部33bの基端側は、基端側係止部19cよりも他方側で線状部材16に接続されている。
【0069】
図10に示すように、第1固定部33a、第2固定部33bの各先端側には、縫合針17の溝17bと係合する針支持部34が形成されている。針支持部34は、アーム部の長手方向および縫合針17の挿抜方向と交差する幅方向において、第1固定部33aまたは第2固定部33bの中央部分を切り欠いてスリット状に形成されている。各々の針支持部34の切り欠き幅は、縫合針17の溝17bの部分の径より大きく、縫合針17の外径よりも小さい寸法に形成されている。
【0070】
図10(a)に示すように、第1固定部33a、第2固定部33bは、アーム部の先端側に位置しているときには、保持部18に収容された縫合針17の溝17bに針支持部34を差し込んで縫合針17を固定できる。一方、
図10(b)に示すように、第1固定部33a、第2固定部33bが近位側に退避すると、針支持部34と縫合針17の溝17bの係合が解除され、縫合針17は挿抜方向に自由に移動できるようになる。
【0071】
図9(a)に戻って、縫合装置1のアーム部が閉じた状態で、操作線16aを近位側に牽引すると、第1固定部33aは基端側に退避する。これにより、第1アーム部12の第1固定部33aは保持部18の縫合針17と干渉せず、第1アーム部12では縫合針17は挿抜方向に自由に移動できる。一方、線状部材16が一方側に引き込まれることで第2固定部33bは先端側に向けて摺動する。すると、第2アーム部13の保持部18において、第2固定部33bの針支持部34が縫合針17の溝17bに差し込まれて係合し、縫合針17は第2アーム部13に固定される。
【0072】
また、
図9(b)に示すように、縫合装置1のアーム部が閉じた状態で、操作線16bを近位側に牽引すると、第2固定部33bは基端側に退避する。これにより、第2アーム部13の第2固定部33bは保持部18の縫合針17と干渉せず、第2アーム部13では縫合針17は挿抜方向に自由に移動できる。一方、線状部材16が他方側に引き込まれることで第1固定部33aは先端側に向けて摺動する。すると、第1アーム部12の保持部18において、第1固定部33aの針支持部34が縫合針17の溝17bに差し込まれて係合し、縫合針17は第1アーム部12に固定される。
【0073】
以上のように、第2実施形態の針固定機構30aでは、操作線16a,16bの近位側の牽引で、縫合針17を保持するアーム部を切り替えることができる。また、第2実施形態の針固定機構30aも、1本の線状部材16で操作線16a,16bが構成されている。そして、線状部材16には、操作線16bを近位側に牽引したときに第1アーム部12の保持部18に縫合針17を固定する第1固定部31aと、操作線16aを近位側に牽引したときに第2アーム部13の保持部18に縫合針17を固定する第2固定部31bがそれぞれ固定されている。
第2実施形態では、1本の線状部材16で操作線16a,16bを構成するため、操作線16a,16bの一方の動きが他方の反対側の動きに連動する。そのため、第2実施形態では、力の伝達性が低い操作線16a,16bを押す方向の操作によらず、いずれかの操作線16a,16bを引く操作で縫合針17の固定を行うことができるので、縫合針17の固定操作をより確実に行うことができる。
【0074】
(第3実施形態)
図11は、第3実施形態の針固定機構30bを模式的に示す図である。
針固定機構30bは、第1アーム部12、第2アーム部13および上記の本体部21をケーシングとして組み立てられている。針固定機構30bは、可撓性の板状部材であるスライダ部材35と、支持体36とを有している。
【0075】
スライダ部材35は、屈曲部材の一例であって、第1アーム部12の先端側および第2アーム部13の先端側に両端が配置され、各アーム部の基端側にある本体部21内で折り返すように屈曲して配置されている。スライダ部材35は、第1アーム部12の長手方向および第2アーム部13の長手方向に摺動可能に構成されている。
【0076】
また、本体部21には、スライダ部材35の折り返し部位を近位側で受ける支持体36が配置されている。支持体36は、近位側に向けてくぼむ曲面部36aを有し、アーム部の長手方向に摺動するスライダ部材35を曲面部36aで受ける。支持体36は、本体部21内でスライダ部材35を案内し、スライダ部材35を円滑に摺動させる機能を担う。
【0077】
第1アーム部12内に配置されるスライダ部材35の一方側の端部には、第1固定部の一例として、縫合針17の溝17bと係合する針支持部35aが形成されている。同様に、第2アーム部13内に配置されるスライダ部材35の他方側の端部には、第2固定部の一例として、縫合針17の溝17bと係合する針支持部35bが形成されている。針支持部35a,35bの構成は、第2実施形態の針支持部34とそれぞれ同様である。
【0078】
つまり、針支持部35a,35bは、アーム部の先端側に位置しているときには、保持部18に収容された縫合針17の溝17bに差し込まれて縫合針17を固定する機能を担う。一方、針支持部35a,35bがアーム部の近位側に退避すると、縫合針17の溝17bの係合が解除され、縫合針17は挿抜方向に自由に移動できるようになる。
【0079】
スライダ部材35は、支持体36の一方側(第1アーム部12側)で操作線16aと接続され、支持体36の他方側(第2アーム部13側)で操作線16bと接続されている。つまり、操作線16a,16bは、スライダ部材35を介して互いに接続されており、操作線16aの動作に操作線16bの反対側への動作が連動する。
【0080】
例えば、操作線16aを近位側に牽引したときには、スライダ部材35の一方側の端部は第1アーム部12の近位側に退避する。このとき、スライダ部材35は支持体36の曲面部36aに当接してガイドされ、スライダ部材35の他方側の端部は第2アーム部13内で遠位側(先端側)に摺動する。そして、スライダ部材35の他方側に接続されている操作線16bには遠位側に引かれる力が作用する。
【0081】
また、操作線16bを近位側に牽引したときには、スライダ部材35の他方側の端部は第2アーム部13の近位側に退避する。このとき、スライダ部材35は支持体36の曲面部36aに当接してガイドされ、スライダ部材35の一方側の端部は第1アーム部12内で遠位側(先端側)に摺動する。そして、スライダ部材35の一方側に接続されている操作線16aには遠位側に引かれる力が作用する。
【0082】
ここで、
図11(a)に示すように、縫合装置1のアーム部が閉じた状態で操作線16aを近位側に牽引すると、スライダ部材35の一方側の端部は第1アーム部12の近位側に退避し、スライダ部材35の他方側の端部は先端側に摺動する。これにより、第1アーム部12では針支持部35aが保持部18の縫合針17と干渉せず、第1アーム部12では縫合針17は挿抜方向に自由に移動できる。一方、第2アーム部13では針支持部35bが縫合針17の溝17bに差し込まれて係合し、縫合針17は第2アーム部13に固定される。
【0083】
また、
図11(b)に示すように、縫合装置1のアーム部が閉じた状態で操作線16bを近位側に牽引すると、スライダ部材35の他方側の端部は第2アーム部13の近位側に退避し、スライダ部材35の一方側の端部は先端側に摺動する。これにより、第2アーム部13では針支持部35bが保持部18の縫合針17と干渉せず、第2アーム部13では縫合針17は挿抜方向に自由に移動できる。一方、第1アーム部12では針支持部35aが縫合針17の溝17bに差し込まれて係合し、縫合針17は第1アーム部12に固定される。
【0084】
以上のように、第3実施形態の針固定機構30bでは、スライダ部材35に接続された操作線16a,16bの近位側の牽引で、縫合針17を保持するアーム部を切り替えることができる。また、第3実施形態の針固定機構30bにおいて、スライダ部材35は、操作線16bを近位側に牽引したときに第1アーム部12の保持部18に縫合針17を固定する針支持部35aと、操作線16aを近位側に牽引したときに第2アーム部13の保持部18に縫合針17を固定する針支持部35bを有する。
第3実施形態では、スライダ部材35に操作線16a,16bがそれぞれ接続されているため、操作線16a,16bの一方の動きが他方の反対側の動きに連動する。そのため、第3実施形態では、力の伝達性が低い操作線16a,16bを押す方向の操作によらず、いずれかの操作線16a,16bを引く操作で縫合針17の固定を行うことができるので、縫合針17の固定操作をより確実に行うことができる。
【0085】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
【0086】
上記の各実施形態では、縫合針17の溝17bと係合する針支持部がスリット状に形成される例を説明した。しかしながら、上記の針支持部の形状は、縫合針17を保持部18に固定できるものであれば他の形状であってもよい。例えば、上記の針支持部を溝17bの片側に挿入可能な片刃状や針状に形成し、針支持部と保持部18との間で縫合針17を挟み込んで固定するようにしてもよい。また、上記の針支持部を針状に形成し、縫合針17に係合部を受ける穴を形成して縫合針17と係合させてもよい。
【0087】
また、針支持部をスリット状に形成する場合、針支持部の先端側に縫合針17の溝17bの径よりも細幅部分が形成されていてもよい。この場合、針支持部の先端側を弾性変形させて広げることで針支持部と縫合針17の溝17bが係合し、針支持部の先端が弾性変形で狭まることで縫合針17がさらに脱落しにくくなる。
【0088】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0089】
なお、上記の実施形態の開示は以下の技術的思想を包含する。
(1)内視鏡の管状挿入部の遠位端に設けられる内視鏡的縫合装置であって、アーム一端側にて縫合針の保持部をそれぞれ有する第1アーム部および第2アーム部を有し、前記アーム一端側を開閉させて組織を縫合する際に前記縫合針を保持するアーム部を切り替え可能に構成され、前記管状挿入部に沿って並設され、一方の動作に他方の反対側への動作が連動する一対の操作線と、前記一対の操作線の一方を装置本体部に対して近位側に牽引したときに、前記第1アーム部の前記保持部に前記縫合針を固定する第1固定部と、前記一対の操作線の他方を装置本体部に対して近位側に牽引したときに、前記第2アーム部の前記保持部に前記縫合針を固定する第2固定部と、を備える内視鏡的縫合装置。
(2)前記一対の操作線は、前記第1アーム部の前記アーム一端側および前記第2アーム部の前記アーム一端側を経てアーム部内を周回する1本の線状部材で構成され、前記第1固定部は、前記第1アーム部内で前記線状部材に固定され、前記第2固定部は、前記第2アーム部内で前記線状部材に固定される上記(1)に記載の内視鏡的縫合装置。
(3)前記一対の操作線は、前記第1アーム部および前記2アーム部の基端側で折り返して配置された1本の線状部材で構成され、前記第1固定部は、前記折り返された前記線状部材の他方側に接続されて前記第1アーム部の長手方向に摺動可能な部材であり、前記第2固定部は、前記折り返された前記線状部材の一方側に接続されて前記第2アーム部の長手方向に摺動可能な部材である上記(1)に記載の内視鏡的縫合装置。
(4)前記第1アーム部の前記アーム一端側および前記第2アーム部の前記アーム一端側に両端が配置され、前記第1アーム部および前記第2アーム部の基端側で折り返すように配置された屈曲部材をさらに備え、前記第1固定部は、前記屈曲部材の前記第1アーム部側に設けられ、前記第2固定部は、前記屈曲部材の前記第2アーム部側に設けられ、前記一対の操作線の一方は、前記折り返された前記屈曲部材の前記第2アーム部側に接続され、前記一対の操作線の他方は、前記折り返された前記屈曲部材の前記第1アーム部側に接続され、前記屈曲部材は、装置本体部に対するいずれかの前記操作線の近位側への牽引により、前記第1アーム部および前記第2アーム部を摺動する上記(1)に記載の内視鏡的縫合装置。
(5)前記第1アーム部および前記2アーム部の基端側には、前記屈曲部材の折り返し部位を受ける支持体が配置されている上記(4)に記載の内視鏡的縫合装置。
(6)前記一対の操作線は、前記アーム部を開閉動作させる開閉ワイヤと独立して操作可能である上記(1)から上記(5)のいずれか1項に記載の内視鏡的縫合装置。
(7)前記内視鏡的縫合装置は、前記内視鏡の管状挿入部に着脱可能である上記(1)から上記(6)のいずれか一項に記載の内視鏡的縫合装置。
【符号の説明】
【0090】
1…縫合装置、2…管状挿入部、3…対物レンズ、4…照明部、5…鉗子口、6…鉗子、11…取付部、12…第1アーム部、13…第2アーム部、14…開閉機構部、15…開閉ワイヤ、16a,16b…操作線、17…縫合針、17a…針先、17b…溝、18…保持部、30,30a,30b…針固定機構、31a,33a…第1固定部、31b,33b…第2固定部、32…穴、32a,32b,34,35a,35b…針支持部、35…スライダ部材、36…支持体