(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025183000
(43)【公開日】2025-12-16
(54)【発明の名称】光学装置、及び光学システム
(51)【国際特許分類】
H01S 5/02253 20210101AFI20251209BHJP
H01S 5/0239 20210101ALI20251209BHJP
H01S 5/02255 20210101ALI20251209BHJP
H01S 5/02325 20210101ALI20251209BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20251209BHJP
【FI】
H01S5/02253
H01S5/0239
H01S5/02255
H01S5/02325
G02B5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024090840
(22)【出願日】2024-06-04
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和5年度、環境省、革新的な省CO2実現のための部材や素材の社会実装・普及展開加速化事業委託業務、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大森 弘治
(72)【発明者】
【氏名】大野 啓
【テーマコード(参考)】
2H042
5F173
【Fターム(参考)】
2H042AA15
2H042AA22
5F173MC30
5F173MD04
5F173ME23
5F173ME64
5F173ME85
5F173MF03
5F173MF39
(57)【要約】
【課題】シロキサンによる汚染を抑制した光学装置、及び光学システムの提供に資する。
【解決手段】レーザ発光部と、シリコーン成分を含む部材と、前記部材を、前記レーザ発光部から射出されるレーザ光から遮光する遮光部と、を備えた。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ発光部と、
シリコーン成分を含む部材と、
前記部材を前記レーザ発光部から射出されるレーザ光から遮光する遮光部と、
を備えた光学装置。
【請求項2】
前記部材は接着剤である請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記部材は、前記レーザ発光部が射出するレーザ光の配光を制御する配光制御レンズを固定する接着剤である請求項2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記部材は接着剤であり、
前記遮光部は、前記レーザ発光部が射出するレーザ光の配光を制御する配光制御レンズにおいてレーザ光の射出方向と垂直な方向に漏れるレーザ光を遮光するレンズホルダであり、前記レンズホルダは、当該レンズホルダにより遮光される領域に前記接着剤により固定され、前記レンズホルダの大きさによりレーザ光の光軸位置を調整可能である請求項2に記載の光学装置。
【請求項5】
前記レーザ発光部は、下部電極ブロックに半導体素子が実装され、前記下部電極ブロックと上部電極ブロックとで、前記半導体素子を挟持して通電し、前記下部電極ブロックと前記上部電極ブロックには、それぞれに端子電極が取り付けられる請求項1に記載の光学装置。
【請求項6】
前記レーザ発光部は、450nm未満のレーザ光を発振する請求項1に記載の光学装置。
【請求項7】
請求項1に記載の光学装置と、
前記レーザ発光部から射出するレーザ光を集光する集光レンズと、
前記集光レンズを光軸方向に可動させる可動部と、を備え、
前記可動部は、シリコーン成分を含む材料が塗布されている部材を含み、
前記材料をレーザ光から遮光する他の遮光部を備えた光学システム。
【請求項8】
前記他の遮光部は、前記集光レンズの動きに合わせて伸縮し、前記材料を光から遮光する蛇腹である請求項7に記載の光学システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学装置、及び光学システムに関する。
【背景技術】
【0002】
有機シリコーン(シロキサン)類は、さまざまなものに含まれる。有機シリコーン類が含まれるものとして、電気部品や機械製品の内部で使用されるシリコーン製のゴム、オイル、接着剤、及びシャンプー・リンスなどが挙げられる。
【0003】
シリコーン素材からは、低分子シロキサンが揮発する。揮発した低分子シロキサンが電気部品(例えばリレーやモータなど)に付着すると接点障害を起こすという問題がある。同様に、半導体レーザを用いた光源装置においても、レーザ発光点にSiO2(二酸化ケイ素)が付着堆積することで、レーザ特性を劣化させ、半導体レーザの寿命が短くなる問題がある。
【0004】
こうしたシロキサン等の汚染物質の付着を抑制するために、ケースで外部環境から遮断したり、光源装置内に気体を流したりすることで、汚染物質が半導体レーザチップ端面に付着することを抑制する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に開示された光学装置は、レーザ光が射出される光出射面に対向して、且つ、光出射面と離間して配置された光学部品と、半導体レーザ素子及び光学部品を収容し、気体を導入するための導入口及び気体を排出するための排気口を有するケースと、半導体レーザ素子に、導入口から導入された気体を吹き付けるための吹付口を有する流路部(筒体)と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2020/054593号
【特許文献2】特表2022-523725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記光学装置では、ケース内に低シロキサン分子が存在し、対流があると、シロキサン分子の分子運動が加速され、光出射面への衝突が増えることとになるため、結果的にシロキサンの付着堆積を抑えることはできない。また、気体を導入するために、ポンプ等が必要となるが、ポンプの潤滑剤には、直鎖シロキサンを含むオイルやシリコングリスが用いられている。このシリコングリスに対し、青色レーザ光が照射されることで、直鎖シロキサンが分解され、それらがケース内に侵入してSiO2の付着堆積を起こす可能性がある。
【0008】
特許文献2に開示されたレーザーシステムでは、内部キャビティにはシリコンベースの汚染源がない。そして、内部キャビティでは、外部にある環境から隔離されるようにしたハウジングによって、固体デバイスの動作中に内部キャビティ内でのSiO2の生成が回避される。これにより、内部キャビティはSiO2の蓄積が回避される。
【0009】
しかしながら、シリコーン成分を含む可能性があるものは、上述したシリコングリスの他にも、接着剤、プリプレグ、フラックス、レジスト、樹脂、及び半導体部品など、非常に多いため、そのすべてを隔離することは困難である。具体的には、
図12に示されるような光学部品の場合、汚染源として、例えばレンズやミラーを固定する接着剤、半導体レーザに用いられるプリント基板、及び密閉のためのゴムやプラスチック部品の離型剤等、多くのものが挙げられる。さらに、レーザ光を測定する測定装置内の可動部には、シリコングリス、オイル類が使用されており、その中には、大量のシロキサンが含有されている。
【0010】
そのため、例えば青色のレーザ光を射出する光学装置では、照射時間とともにレーザ光の出力が徐々に低下する。
図13は、レーザ光の出力変化を示すグラフである。このグラフは、横軸がレーザ光の照射時間を示し、縦軸がレーザ光の出力変化を示す。また、このグラフは、密閉された光学装置内で、環状シロキサン0.1mgを60度で揮発させた場合(以下、「事例A」とする)、環状シロキサン0.1mgを25度で揮発させた場合(以下、「事例B」とする)、直鎖シロキサン1mgを25度で揮発させた場合(以下、「事例C」とする)の3つの事例での出力変化を示す。なお、直鎖シロキサンが常温では揮発しないことが確認されている。
【0011】
図13に示されるように、事例Aの場合は、約112時間で出力が約20%低下し、SiO2の堆積量は、129nmとなった。事例Bの場合は、約112時間で出力が約5%程度低下し、SiO2の堆積量は、68.5nmとなった。
【0012】
事例Aの方が事例Bよりも低下していることについては、環状シロキサンの場合、揮発条件により、揮発した環状シロキサン分子の分子運動を活発化になり、装置内壁面における環状シロキサン分子の停滞が減少し、実際の装置内の環状シロキサン濃度が高くなったことと、分子運動が大きくなったことで、レーザの出射端面の環状シロキサンの衝突が増えたことによるものと推定できる。
【0013】
また、事例Cの場合、約112時間で出力が約24%低下し、SiO2の堆積量は、210nmとなった。事例Cは、3つの事例の中で最もSiO2の付着堆積の影響を受けた事例となった。
【0014】
これまでは、直鎖シロキサンは、約300℃以上の高温で分解揮発し、常温では分解揮発しないため、シロキサンの付着堆積の問題には関係ないものと考えられてきた。しかしながら、今回の検証のように、直鎖シロキサンに青色のレーザ光を照射することより、直鎖シロキサンが常温でも分解し、青色レーザの出射端面にSiO2が付着堆積することが証明された。
【0015】
本開示の非限定的な実施例は、シロキサンによる汚染を抑制した光学装置、及び光学システムの提供に資する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本開示の一実施例に係る光学装置は、レーザ発光部と、シリコーン成分を含む部材と、前記部材を前記レーザ発光部から射出されるレーザ光から遮光する遮光部と、を備えた。
【0017】
本開示の一実施例に係る光学システムは、レーザ発光部と、シリコーン成分を含む部材と、前記部材を前記レーザ発光部から射出されるレーザ光から遮光する遮光部と、を備えた光学装置と、前記レーザ発光部から射出するレーザ光を集光する集光レンズと、前記集光レンズを光軸方向に可動させる可動部と、を備え、前記可動部は、シリコーン成分を含む材料が塗布されている部材を含み、前記材料をレーザ光から遮光する他の遮光部を備えた。
【発明の効果】
【0018】
本開示の非限定的な実施例は、シロキサンによる汚染を抑制可能とする。
【0019】
本開示の一実施例における更なる利点及び効果は、明細書及び図面から明らかにされる。かかる利点及び/又は効果は、いくつかの実施形態並びに明細書及び図面に記載された特徴によってそれぞれ提供されるが、1つ又はそれ以上の同一の特徴を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態に係る光学装置の構成例を示す図
【
図2A】遮光部を設けていない場合の構成例を示す図
【
図2B】遮光部を設けていない場合の構成例を示す図
【
図4A】塗装済みレンズを接着剤で固定する構成例を示す図
【
図4B】塗装済みレンズを接着剤で固定する構成例を示す図
【
図5A】塗料を遮光部とする場合の組み立て工程例を示す図
【
図5B】塗料を遮光部とする場合の組み立て工程例を示す図
【
図5C】塗料を遮光部とする場合の組み立て工程例を示す図
【
図6A】遮光板により遮光部を構成する場合の組み立て工程例を示す図
【
図6B】遮光板により遮光部を構成する場合の組み立て工程例を示す図
【
図6C】遮光板により遮光部を構成する場合の組み立て工程例を示す図
【
図7】第2実施形態に係る光学装置の構成例を示す図
【
図8】光学装置において遮光部を設けていない構成例を示す図
【
図9】光学装置において遮光部を設けた構成例を示す図
【
図10】第3実施形態に係る光学システムの構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0022】
<第1実施形態>
第1実施形態では、シリコーン成分を含む部材として、接着剤を例にした実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る光学装置10の構成例を示す図である。光学装置10は、半導体レーザチップ100、サブマウント120、配光制御レンズ130、光アイソレータ140、フォトダイオード150、温度センサ160、及び筐体170を含む。この光学装置10は、ピグテール型のレーザモジュールである。また、光学装置10は、光通信を行うために光ファイバにレーザ光を射出するものであってもよいし、レーザ加工装置であってもよい。また、光学装置10は、光路を調整するミラーや回折格子などを備えているが、
図1ではこれらを省略している。
【0023】
以下の説明において、図面に示されるX軸の正方向を前方向と表現することがある。X軸の負方向を後方向と表現することがある。Y軸の正方向を左方向と表現することがある。Y軸の負方向を右方向と表現することがある。Z軸の正方向を上方向と表現することがある。Z軸の負方向を下方向と表現することがある。この表現を用いると、
図1は、光学装置10を上方向から見た図である。またレーザ光は、前方向に射出される。
【0024】
半導体レーザチップ100は、レーザ発光部の一例であり、波長が350nm~450nm程度の青色光~紫外線光のレーザ光を射出する。半導体レーザチップ100のP電極面は、サブマウント120を介してN電極面と電気的に接続され、N電極面はワイヤーボンドなどによってサブマウント120と電気的接続される。半導体レーザチップ100は、発光点が1つのシングルエミッタレーザーダイオードでもよいし、発光点が複数のバーエミッタレーザダイオードでもよい。
【0025】
サブマウント120は、半導体レーザチップ100を実装する基板である。サブマウント120には、熱伝導性に優れ、かつ、半導体レーザチップ100の実装時の応力回避のため、半導体レーザチップ100の線膨張係数に合わせた材料が採用され、たとえば、CuW、Cuダイヤ、又はALN等のセラミックス材料が採用される。
【0026】
配光制御レンズ130は、例えばコリメーションレンズであり、半導体レーザチップ100が射出する光の配光を制御する。光アイソレータ140は、順方向にのみレーザ光を通し、逆方向の光は遮断するような特性をもっている。この光アイソレータ140により、例えば、半導体レーザチップ100が射出したレーザ光を光ファイバに通して出力する時に、逆に外部からの迷光や反射光が光ファイバを通って半導体レーザチップ100へ入射することが回避される。以下の説明において、配光制御レンズ130及び光アイソレータ140をまとめて光学部品135と表現することがある。
【0027】
光学部品135の材料は、ガラス材料、樹脂材料等である。また、光学部品135は、半導体レーザチップ100の光出射面に対向して、かつ、半導体レーザチップ100から離間して不図示の搭載基板に、シリコーン成分を含む接着剤により固定配置される。以下の説明において種々の部品を接着するために用いられる接着剤はシリコーン成分が含まれるものとする。
【0028】
また、半導体レーザチップ100から射出したレーザ光のすべてが光学部品135を透過することはなく、透過できないレーザ光が迷光となる。迷光は、散乱光として、光源装置10の筐体170内を照射する。
【0029】
温度センサ160は、半導体レーザチップ100の温度を検出する。フォトダイオード150は、半導体レーザチップ100の後方端面出力の電流を測定する。温度センサ160及び半導体レーザチップ100は接着剤によって筐体170に固定される。
【0030】
このように、光学装置10には、種々の部品を固定するために接着剤が用いられている。上述したように、筐体170内には散乱光が照射されるため、何らかの対策をしない限り、接着剤からシロキサンが大量に揮発し、半導体レーザチップ100に悪影響を及ぼす。
【0031】
そこで、シロキサンの揮発を抑制するために、光学装置10において、接着剤をレーザ光から遮光する遮光部を設けた構成について説明する。なお、第1実施形態では、一例として、配光制御レンズ130を固定するための接着剤をレーザ光から遮光する遮光部を設ける2種類の構成例について説明する。構成例の1つは、レンズホルダを用いる構成例であり、もう1つは、配光制御レンズ130が接着剤と接する面に透過率の低い色の塗料を塗布し、塗布された塗料を遮光部とする構成例である。後者の構成例では、透過率の低い色の塗料が塗布された塗料面が遮光部の一部又は全部を構成する。以下の説明において、「塗料」は、レーザ光の透過率の低い色の塗料を示すものとする。また、以下の説明では、遮光部を設けていない場合と設けた場合との違いを分かりやすくするために、遮光部を設けていない場合の構成例も説明される。
【0032】
図2A、
図2Bは、遮光部を設けていない場合の構成例を示す図である。
図3A、
図3Bは、遮光部(レンズホルダ)を設けた場合の構成例を示す図である。また、
図2A、
図3Aは、光学装置10を右方向から見た図である。
図2B、
図3Bは、光学装置10を前方向から見た図である。いずれの図も、光アイソレータ140、フォトダイオード150、及び温度センサ160は省略されている。筐体170は底面のみ示されている。なお、
図2B、
図3Bに示される十字型の中央は光軸を示す。
【0033】
図2A、
図2Bにおいて、配光制御レンズ130は、接着剤200に直接触れた状態で筐体170に固定されている。
図2A、
図2Bに示される構成では、遮光部が設けられていないことから、接着剤200に散乱光が照射されるため、シロキサンが揮発し、半導体レーザチップ100に悪影響を及ぼす。
【0034】
図3A、
図3Bにおいて、配光制御レンズ130は、レンズホルダ300に保持され、レンズホルダ300が接着剤200に直接触れた状態で筐体170に固定されている。レンズホルダ300の色は、当該レンズホルダ300による反射やレーザ光の透過を防ぐため、例えば黒など、反射率及び透過率が低い色とされる。また、レンズホルダ300の大きさ(例えば筐体170から配光制御レンズ130がセットされる位置の高さ)によりレーザ光の光軸位置を調整可能である。
【0035】
図3A、
図3Bに示される構成では、レンズホルダ300は、少なくともレーザ光の射出方向(前方向、光軸方向)と垂直な方向に漏れるレーザ光を遮光する。また、レンズホルダ300は、当該レンズホルダ300により遮光される領域に接着剤300により固定される。この「レンズホルダ300により遮光される領域」は、上述したようにレンズホルダ300は光軸と垂直な方向に漏れるレーザ光を遮光することから、レンズホルダ300において光軸の垂直方向を法線ベクトルとする面上の領域である。この領域は、
図3A、
図3Bの場合、X軸と垂直な方向(上方向、下方向、左方向、右方向など)にある面にある領域であり、筐体170が下方向にあることから、レンズホルダ300の下方向の面の領域を接着剤200と接する領域としている。そして、
図3A、
図3Bに示されるように、接着剤200の大きさが
図2A、
図2Bの場合と比較して小さくなり、また薄くなっていることから、接着剤200の露出領域の大きさも抑制できる。その結果、レンズホルダ300を設けない場合と比較して、シロキサンの揮発を抑制することができる。
【0036】
次に、接着剤200と接する面に塗料が塗布された配光制御レンズ130を接着剤200で固定する構成について説明する。以下の説明において、接着剤200と接する面に塗料が塗布された配光制御レンズ130を、塗装済みレンズと表現する。
【0037】
図4A、
図4Bは、塗装済みレンズ500を接着剤200で固定する構成例を示す図である。
図4A、
図4Bは、塗装済みレンズ500、遮光部600A、600B、筐体170を示す図である。
図4A、
図4Bにおいて、塗装済みレンズ500は遮光部600Aを有する。その遮光部600Aは、塗料が塗布された塗料面であり、遮光部600Aは接着剤200との接触面となる。塗装済みレンズ500は、接着剤200に直接触れた状態で筐体170に固定される。接着剤200における、塗装済みレンズ500との非接触面には、遮光部600Bが設けられる。
【0038】
これにより、接着剤200は、塗装済みレンズ500との接触面と非接触面の両方(すなわち全面)において遮光される。
図4A、
図4Bにおける遮光部600Bには、2種類の形態がある。そのうちの1つは塗布された塗料を遮光部600Bとする形態で、もう1つは筒状遮光板により遮光部600Bを構成する形態である。
【0039】
図5A乃至
図5Cは、塗布された塗料を遮光部600Bとする場合の組み立て工程例を示す図である。
図5Aに示されるように、まず遮光部600Aを備えた塗装済みレンズ500を用意し、筐体170に接着剤200を塗布する。次に、
図5Bに示されるように、塗装済みレンズ500を接着剤200に載せて、位置決めする。最後に、
図5Cに示されるように、凝固した接着剤200のうちの非接触面に塗料を塗布することで、遮光部600Bが仕上がる。
【0040】
図6A乃至
図6Cは、遮光板により遮光部600Bを構成する場合の組み立て工程例を示す図である。
図6Aに示されるように、まず筒状遮光板により構成された遮光部600Bを筐体170にセットする。筒状遮光板は、例えばアルミ箔のようなフレキシブルな素材で、筒状遮光板の外側は、塗料が塗布され、塗装済みレンズ500との接着時には変形することが望ましい。
【0041】
次に、
図6Bに示されるように、遮光部600Aを備えた塗装済みレンズ500を用意し、筒状遮光板の筒の中に接着剤200を注入する。最後に、
図6Cに示されるように、塗装済みレンズ500を接着剤200に載せて、位置決めし、接着剤200を凝固させる。
【0042】
接着剤200に含有されているシロキサン成分のうち、環状シロキサンは、常温で拡散するが、光学装置10の組み立て工程時に、拡散した環状シロキサンを除去すれば、問題はない。しかしながら、直鎖シロキサンは、青色のレーザ光で分解し、拡散するため、光学装置10の接着剤200や、他の直鎖シロキサン含有の構成部材を青色のレーザ光から遮光することで、直鎖シロキサンの分解を防ぐことができる。
【0043】
上述した実施形態において、遮光部600Aを塗料面として説明したが、遮光部600Aは配光制御レンズ130の下半分に装着されるレンズホルダであってもよい。
【0044】
以上説明したように、第1実施形態によれば、レンズホルダ300や遮光部600A、600Bによって接着剤200をレーザ光から遮光することで、シロキサンによる汚染を抑制することができる。
【0045】
<第2実施形態>
第2実施形態では、シリコーン成分を含む部材として、接着剤を例にした実施形態について説明する。
図7は、本発明の第2実施形態に係る光学装置20の構成例を示す図である。光学装置20は、半導体レーザチップ100、サブマウント120、配光制御レンズ130、光アイソレータ140、フォトダイオード150、P電極ブロック710、N電力ブロック720、温度センサ160、及び筐体170を含む。この光学装置10は、光通信を行うために光ファイバにレーザ光を射出するものであってもよいし、レーザ加工装置であってもよい。この光学装置20は、ピグテール型のレーザモジュールである。また、光学装置10は、光路を調整するミラーや回折格子などを備えているが、
図7ではこれらを省略している。
【0046】
第1実施形態の構成と大きく異なる点は、銅製のP電極ブロック710に、サブマウント120、半導体レーザチップ100がはんだ実装され、半導体レーザチップ100のN電力ブロック720とN電力ブロック720が、不図示のワイヤーボンドやバンプで接続されている点である。以下の説明では、遮光部を設けていない場合と設けた場合との違いを分かりやすくするために、遮光部を設けていない場合の構成例も説明される。
【0047】
図8は、光学装置20において遮光部を設けていない構成例を示す図である。
図8に示されるように、光学装置20では、P電極ブロック710と、N電力ブロック720とが接着剤200を用いて接着されている。接着剤200は、P電極ブロック710と、N電力ブロック720との間に側面から注入されるため、接着剤200の凝固後、接着剤200が外部に露出する。
【0048】
この露出している接着剤200に、青色のレーザ光による散乱光が照射されると、接着剤200からシロキサンが揮発するため、密閉された光学装置20の筐体170内に、シロキサンが拡散することになる。遮光部が設けられていない場合には、接着剤200に散乱光が照射されるため、シロキサンが揮発し、半導体レーザチップ100に悪影響を及ぼす。
【0049】
シロキサンの揮発を抑制するために、光学装置20において、接着剤をレーザ光から遮光する遮光部を設けた構成について説明する。
図9は、光学装置20において、遮光部800を設けた構成例を示す図である。
図9に示されるように、光学装置20では、外部に露出した接着剤200を遮光部800で覆うことにより、レーザ光を遮光する。第2実施形態における遮光部800は、レーザ光を遮光する板状の部材である。
【0050】
以上説明したように、第2実施形態によれば、遮光部800によって接着剤200をレーザ光から遮光することで、遮光部を設けない場合と比較して、シロキサンによる汚染を抑制することができる。
【0051】
<第3実施形態>
第3実施形態では、光学システムに用いられている、シリコーン成分を含む材料として、潤滑剤を例にした実施形態について説明する。
図10は、本発明の第3実施形態に係る光学システム30の構成例を示す図である。光学システム30は、レーザ光の形状を観察したり、レーザ光の強度分布を計測するためのシステムである。光学システム30は、第2実施形態で説明した光学装置20、光学部品910、CCD(Charge-Coupled Device)920、集光レンズ930、及びセンサ940を含む。なお、第3実施形態においては、レーザ光を射出可能な光学装置が設けられていると光学装置20に代えて、第1実施形態で説明した光学装置10であってもよい。
【0052】
光学装置20から射出されたレーザ光は、光学部品910で集光される。光学部品910は、CCD920と集光レンズ930の両方にレーザ光を射出する。レーザ光が入射したCCD920において、CCD920を構成する各々の受光素子がレーザ光を受光し、これらの受光素子の出力により、レーザ光の形状が観察可能となる。一方、レーザ光が入射した集光レンズ930は、センサ940にレーザ光を射出する。レーザ光が入射したセンサ940においてレーザ光の強さを検出することで、レーザ光の強度が計測可能となる。
【0053】
光学システム30は、上述した集光レンズ930を、光軸方向に可動する可動部を備える。
図11は、集光レンズ930と可動部950とを示す図である。可動部930は、支柱951、遮光部952、及びレール953を備える。レール653は、ボールねじであってもよい。支柱951は、集光レンズ930のレンズホルダと、それを支える柱と、レール653をスライドするためのレールブロックなどで構成される。レール953には、レールブロックをスライドさせるために、シリコーン成分を含む潤滑剤954が塗布されている。この潤滑剤954は、例えばシリコングリス・オイルである。
【0054】
シリコングリス・オイルは、大量の直鎖シロキサンを含有し、このシリコングリス・オイルに、青色のレーザ光、散乱光、又は紫外線光が照射されると、直鎖シロキサンが分解される。分解された直鎖シロキサン分子は分子量が大きい。低分子の環状シロキサンのように、空気中で分子運動をすることなく、さほど拡散せずに停滞するものと推測される。
【0055】
しかし、停滞している状態で、さらにレーザ光40や散乱光41が照射されると、直鎖シロキサンの一部が分解され、空気中に拡散浮遊する。この拡散浮遊した直鎖シロキサンが、光学装置20の半導体レーザチップの光出射面で酸素と結合し、光出射面に、SiO2が付着堆積することとなる。
【0056】
そこで、本実施形態では、潤滑剤954をレーザ光から遮光する遮光部952を設けた。遮光部952は、
図11に示されるように、集光レンズ930の動きに合わせてレール953を光から遮光するように蛇腹状に構成される遮光シートである。なお、レールブロックとレールをレーザ光から遮光するステージを設け、そのステージ下部にレールブロックとレールを配置して、レーザ光や紫外線光から遮光してもよい。
【0057】
図11に示されるような、安全扉やカバーなどのない開かれた装置の可動部に対して、この蛇腹状に構成される遮光部を用いてもよいが、光学装置10のような閉じられた装置や、安全・ダスト対策がなされた光学システムの場合には、蛇腹状に構成される遮光部は不要である。
【0058】
以上説明したように、第3実施形態によれば、遮光部952によってレール953をレーザ光から遮光することで、遮光部を設けない場合と比較して、シロキサンによる汚染を抑制することができる。
【0059】
<変形例>
上記実施形態では、シリコーン成分を含む部材や材料として接着剤や潤滑剤を用いて説明したが、これらに限るものではない。シリコーン成分を含む部材が樹脂のような固体の場合には、第2実施形態で説明したような遮光板により構成されたものを遮光部としてもよい。シリコーン成分を含む材料が液体やソフトマターのようなものの場合には、それらを包み込む容器や、第3実施形態で説明したような遮光シートを遮光部としてもよい。
【0060】
<実施の形態のまとめ>
本開示の一実施例に係る光学装置は、レーザ発光部と、シリコーン成分を含む部材と、前記部材を前記レーザ発光部から射出されるレーザ光から遮光する遮光部と、を備えた。
【0061】
本開示の一実施例に係る光学システムは、光学装置と、前記レーザ発光部から射出するレーザ光を集光する集光レンズと、前記集光レンズを光軸方向に可動させる可動部と、を備え、前記可動部は、シリコーン成分を含む材料が塗布されている部材を含み、前記材料をレーザ光から遮光する他の遮光部を備えた。
【0062】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0063】
以上、本開示の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本開示の一実施例は、レーザ光に晒される装置やシステムに好適である。
【符号の説明】
【0065】
10、20 光学装置
30 光学システム
100 半導体レーザチップ
120 サブマウント
130 配光制御レンズ
135、910 光学部品
140 光アイソレータ
150 フォトダイオード
160 温度センサ
170 筐体
180 周辺光量判定部
200 接着剤
210 照射制御部
220 照射体
300 レンズホルダ
500 塗装済みレンズ
600A、600B、800、952 遮光部
710 P電極ブロック
720 N電力ブロック
920 CCD
930 集光レンズ
940 センサ
950 可動部
951 支柱
953 レール
954 潤滑剤