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特開2025-18304自己炎症性疾患における炎症増悪期、及び、軽快期を予測する方法
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  • 特開-自己炎症性疾患における炎症増悪期、及び、軽快期を予測する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018304
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】自己炎症性疾患における炎症増悪期、及び、軽快期を予測する方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6869 20180101AFI20250130BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20250130BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20250130BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20250130BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20250130BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
C12Q1/02 ZNA
G01N33/68
G01N33/50 P
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121894
(22)【出願日】2023-07-26
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】駒井 浩一郎
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA25
2G045CA26
2G045CB03
2G045CB07
2G045DA13
2G045DA14
2G045DA36
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ13
4B063QQ52
4B063QQ79
4B063QR51
4B063QS10
4B063QS14
4B063QS25
4B063QS38
4B063QS39
4B063QX02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】自己炎症性疾患における炎症の増悪期と軽快期を予測するためのバイオマーカーおよび方法を提供する。
【解決手段】インビトロにおいて、生体試料中のIL-1βタンパク質、及び、ASCタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質量、及び/又は、ASC、MASCRNA、DDT、C3、CD99、RNA28SN5、RNA28SN4、RNA28SN2、RNA28SN3、RNA28SN1、RN7SL1、EEF1A1、MIR922、MIR4775、SNORA5C、SNORD143、SNORD4B、MIR612、MIR6502、DDAH2、CXCL10、RNVU1-3、MIR5001、LOC107984935、MIR6721、RNVU1-14、MIR760、及び、SNORD19Bからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを指標として測定する工程を含む、予測方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インビトロにおいて、生体試料中のIL-1βタンパク質、及び、ASCタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質量、並びに/又は、ASC、MASCRNA、DDT、C3、CD99、RNA28SN5、RNA28SN4、RNA28SN2、RNA28SN3、RNA28SN1、RN7SL1、EEF1A1、MIR922、MIR4775、SNORA5C、SNORD143、SNORD4B、MIR612、MIR6502、DDAH2、CXCL10、RNVU1-3、MIR5001、LOC107984935、MIR6721、RNVU1-14、MIR760、及び、SNORD19Bからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを指標として測定する工程を含む、
自己炎症性疾患における炎症増悪期、及び、軽快期を予測する方法。
【請求項2】
前記指標において、以下の変動が確認された場合、自己炎症性疾患における軽快期に向かう可能性が高いと判定する、請求項1に記載の方法:
IL-1βタンパク質、及び、野生型ASCタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質量の増加;並びに/又は
野生型ASC、MASCRNA、DDT、C3、CD99、RNA28SN5、RNA28SN4、RNA28SN2、RNA28SN3、RNA28SN1、RN7SL1、EEF1A1、MIR922、MIR4775、SNORA5C、SNORD143、SNORD4B、MIR612、MIR6502、DDAH2、CXCL10、RNVU1-3、MIR5001、LOC107984935、MIR6721、RNVU1-14、MIR760、及び、SNORD19Bからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルの亢進。
【請求項3】
更に、生体試料中のrs8056505(A→G)SNPを測定する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記生体試料が、血清、血球、唾液、又は、尿である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記自己炎症性疾患は、インフラマソームが病態形成に関わる疾患である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記インフラマソームが病態形成に関わる疾患が、回帰性リウマチ、周期性発熱症候群、地中海熱、痛風、ベーチェット病、VEXAS症候群、SAPHO症候群、掌蹠膿疱症、膿疱乾癬、多発性硬化症、アルツハイマー型認知症、パーキンソン病、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病、肥満、高血圧、喘息、アレルギー性鼻炎、炎症性腸疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患(NASH)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、感染症、又は、骨髄異形成症候群である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記軽快期が、インフラマソームの抑制に伴う軽快期である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
インビトロにおいて、生体試料中のIL-1βタンパク質、及び、ASCタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質量を指標として測定する手段を含む、自己炎症性疾患における炎症増悪期、及び、軽快期を予測するための検査キット。
【請求項9】
前記タンパク質量を指標として測定する手段が、前記タンパク質に特異的な抗体である、請求項8に記載の検査キット。
【請求項10】
インビトロにおいて、自己炎症性疾患患者由来細胞、及び/又は、ヒト単球由来細胞に候補物質を作用させる工程、
該細胞において、IL-1βタンパク質、及び、ASCタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質量、及び/又は、ASC、MASCRNA、DDT、C3、CD99、RNA28SN5、RNA28SN4、RNA28SN2、RNA28SN3、RNA28SN1、RN7SL1、及び、EEF1A1、MIR922、MIR4775、SNORA5C、SNORD143、SNORD4B、MIR612、MIR6502、DDAH2、CXCL10、RNVU1-3、MIR5001、LOC107984935、MIR6721、RNVU1-14、MIR760、及び、SNORD19Bからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを指標として測定する工程を含む、
前記候補物質が自己炎症性疾患の軽快剤であるか否かをスクリーニングする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己炎症性疾患における炎症増悪期、及び、軽快期を予測する方法、検査キット、及び、自己炎症性疾患の軽快剤のスクリーニング方法に関するものである。
【0002】
自己炎症性疾患は、原発性免疫不全症の一種に分類されており、全身性の慢性炎症が特徴であり、原因として自己免疫疾患を有しない疾患をいう。
【0003】
自己炎症性疾患では、いくつかの病態が知られているが、数時間~数週間など持続的な発熱等の炎症による症状が持続する炎症の増悪期があり、その後、当該炎症症状が治まる軽快期とが繰り返されることが多い。
【0004】
例えば、自己炎症性疾患の一種である家族性地中海熱では、12~72時間(約1日~3日)の周期で発熱等の炎症症状が繰り返される。発熱発作とも呼ばれる炎症症状には、定まった周期はなく不安定であり、特に誘引される理由なく生じることや、ストレス等の身体的、精神的な状態により誘引されることもある。
【0005】
また、回帰性リウマチでは、関節において炎症を伴う疼痛発作が、数時間から数日持続した後に消失する。このような疼痛発作が、不定期に複数の関節で生じる(非特許文献1)。
【0006】
さらに、自己炎症性疾患の一種であるTRAPS(TNF Receptor-Associated Periodic Syndrome)では、発熱発作が、3日~数週間持続する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Sanmarti et al. Palindromic Rheumatism: Justa Pre-rheumatoid Stage or Something Else? Front. Med. 8:657983. doi: 10.3389/fmed.2021.657983
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、それぞれの自己炎症性疾患には、炎症が持続する増悪期と、炎症が消失する軽快期とが存在するが、増悪期にある患者にとっては、どの程度の間、炎症症状が持続するのかを不安に感じ、QOL(生活の質)を低下させる一因となっている。
【0009】
しかしながら、自己炎症性疾患における炎症の増悪期と軽快期とは、定まった周期はなく不規則であり、その周期を予測するためのバイオマーカーや予測するための方法は未だに報告されていない。例えば、自己炎症性疾患における炎症の増悪期を予測可能なバイオマーカーが見出されれば、炎症増悪期の開始前や初期において適切な治療を開始することができるため有用である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題に鑑み、鋭意検討を行った結果、本発明者は、生体試料中の特定のタンパク質量や、特定の遺伝子の発現レベルを指標として評価することで、自己炎症性疾患における炎症増悪期、及び、軽快期を予測することが可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、下記に掲げる方法を提供する。
[1]
インビトロにおいて、生体試料中のIL-1βタンパク質、及び、ASCタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質量、並びに/又は、ASC、MASCRNA、DDT、C3、CD99、RNA28SN5、RNA28SN4、RNA28SN2、RNA28SN3、RNA28SN1、RN7SL1、EEF1A1、MIR922、MIR4775、SNORA5C、SNORD143、SNORD4B、MIR612、MIR6502、DDAH2、CXCL10、RNVU1-3、MIR5001、LOC107984935、MIR6721、RNVU1-14、MIR760、及び、SNORD19Bからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを指標として測定する工程を含む、
自己炎症性疾患における炎症増悪期、及び、軽快期を予測する方法。
【0012】
[2]
前記指標において、以下の変動が確認された場合、自己炎症性疾患における軽快期に向かう可能性が高いと判定する、[1]に記載の方法:
IL-1βタンパク質、及び、野生型ASCタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質量の増加;並びに/又は
野生型ASC、MASCRNA、DDT、C3、CD99、RNA28SN5、RNA28SN4、RNA28SN2、RNA28SN3、RNA28SN1、RN7SL1、EEF1A1、MIR922、MIR4775、SNORA5C、SNORD143、SNORD4B、MIR612、MIR6502、DDAH2、CXCL10、RNVU1-3、MIR5001、LOC107984935、MIR6721、RNVU1-14、MIR760、及び、SNORD19Bからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルの亢進。
【0013】
[3]
更に、生体試料中のrs8056505(A→G)SNPを測定する工程を含む、[1]又は[2]に記載の方法。
【0014】
[4]
前記生体試料が、血清、血球、唾液、又は、尿である、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
【0015】
[5]
前記自己炎症性疾患は、インフラマソームが病態形成に関わる疾患である、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
【0016】
[6]
前記インフラマソームが病態形成に関わる疾患が、回帰性リウマチ、周期性発熱症候群、地中海熱、痛風、ベーチェット病、VEXAS症候群、SAPHO症候群、掌蹠膿疱症、膿疱乾癬、多発性硬化症、アルツハイマー型認知症、パーキンソン病、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病、肥満、高血圧、喘息、アレルギー性鼻炎、炎症性腸疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患(NASH)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、感染症、又は、骨髄異形成症候群である、[5]に記載の方法。
【0017】
[7]
前記軽快期が、インフラマソームの抑制に伴う軽快期である、[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
【0018】
[8]
また、本発明は、下記に掲げる検査キットを提供する。
インビトロにおいて、生体試料中のIL-1βタンパク質、及び、ASCタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質量を指標として測定する手段を含む、自己炎症性疾患における炎症増悪期、及び、軽快期を予測するための検査キット。
【0019】
[9]
前記タンパク質量を指標として測定する手段が、前記タンパク質に特異的な抗体である、[8]に記載の検査キット。
【0020】
[10]
また、本発明は、下記に掲げるスクリーニング方法を提供する。
インビトロにおいて、自己炎症性疾患患者由来細胞、及び/又は、ヒト単球由来細胞に候補物質を作用させる工程、
該細胞において、IL-1βタンパク質、及び、ASCタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質量、及び/又は、ASC、MASCRNA、DDT、C3、CD99、RNA28SN5、RNA28SN4、RNA28SN2、RNA28SN3、RNA28SN1、RN7SL1、及び、EEF1A1、MIR922、MIR4775、SNORA5C、SNORD143、SNORD4B、MIR612、MIR6502、DDAH2、CXCL10、RNVU1-3、MIR5001、LOC107984935、MIR6721、RNVU1-14、MIR760、及び、SNORD19Bからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを指標として測定する工程を含む、
前記候補物質が自己炎症性疾患の軽快剤であるか否かをスクリーニングする方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、インビトロにおいて、生体試料中のIL-1βタンパク質、及び、ASCタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質量、及び/又は、ASC、MASCRNA、DDT、C3、CD99、RNA28SN5、RNA28SN4、RNA28SN2、RNA28SN3、RNA28SN1、RN7SL1、EEF1A1、MIR922、MIR4775、SNORA5C、SNORD143、SNORD4B、MIR612、MIR6502、DDAH2、CXCL10、RNVU1-3、MIR5001、LOC107984935、MIR6721、RNVU1-14、MIR760、及び、SNORD19Bからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを指標として測定することで、自己炎症性疾患における炎症増悪期、及び、軽快期を予測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、自己炎症性疾患における、周期的な炎症の増悪期、又は、軽快期の予測に関連するスプライシングサイクルの概念図である。
図2図2は、試験例1における、ASC遺伝子変異解析の結果である。
図3図3は、試験例2における、エクソントラッピングアッセイの結果である。
図4図4は、試験例3及び4における、ボルケーノプロットの結果である。
図5図5は、試験例3及び4における、ボルケーノプロットにおいて変動が確認された遺伝子を示す。
図6図6は、試験例3及び4における、ボルケーノプロットにおいて変動が確認されたDEGを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[自己炎症性疾患における炎症増悪期、及び、軽快期を予測する方法]
一つの実施態様において、本発明は、インビトロにおいて、生体試料中のIL-1βタンパク質、及び、ASCタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質量、及び/又は、ASC、MASCRNA、DDT、C3、CD99、RNA28SN5、RNA28SN4、RNA28SN2、RNA28SN3、RNA28SN1、RN7SL1、EEF1A1、MIR922、MIR4775、SNORA5C、SNORD143、SNORD4B、MIR612、MIR6502、DDAH2、CXCL10、RNVU1-3、MIR5001、LOC107984935、MIR6721、RNVU1-14、MIR760、及び、SNORD19Bからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを指標として測定する工程を含む、
自己炎症性疾患における炎症増悪期、及び、軽快期を予測する方法を提供する。
【0024】
本明細書において、「自己炎症性疾患」とは、原発性免疫不全症の一種に分類されており、全身性又は局所的に生じる慢性炎症が特徴であり、原因として自己免疫疾患を有しない疾患をいう。
【0025】
自己炎症性疾患は、自己免疫疾患とは区別されており、自己反応性Tリンパ球または自己抗体が主因となる疾患は含まれない。
【0026】
自己炎症性疾患の種類は、特に限定されず、自己炎症性疾患として公知の具体的な疾患が含まれる。自己炎症性疾患の種類は、遺伝子異常と病態との関連が認められる疾患に限られず、病態から自己炎症性疾患として推測されている疾患をも含む。限定はされないが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、自己炎症性疾患は、炎症の増悪期と軽快期とを生じる疾患が挙げられる。炎症の増悪期では、炎症に起因する発熱や疼痛等が、少なくとも数時間、少なくとも数日間、又は少なくとも数週間生じ得る。また、炎症の軽快期では、炎症に起因する発熱や疼痛等が消失又は軽減し得る。
【0027】
自己炎症性疾患としては、例えば、回帰性リウマチ、周期性発熱症候群、地中海熱、痛風、ベーチェット病、VEXAS症候群、SAPHO症候群、掌蹠膿疱症、膿疱乾癬、多発性硬化症、アルツハイマー型認知症、パーキンソン病、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病、肥満、高血圧、喘息、アレルギー性鼻炎、炎症性腸疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患(NASH)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、感染症、骨髄異形成症候群、高IgD症候群、Muckle-Wells症候群、家族性寒冷自己炎症症候群、慢性乳児神経皮膚関節炎症候群、新生児発症多臓器炎症性疾患、NLRC4-MAS、PLAID(PLCγ2 associated antibody deficiency and immune dysregulation)、APLAID(autoinflammation and PLCγ2 associated antibody deficiency and immune dysregulation)、TRAPS(TNF Receptor-Associated Periodic Syndrome)、化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群(PAPA症候群)、Blau症候群、ADAM17欠失、Chronic recurrent multifocal osteomyelitis and congenital dyserythropoietic anemia(Majeed症候群)、DIRA(Deficiency of the Interleukin 1 Receptor Antagonist)、DITRA(IL-36 受容体アンタゴニスト欠損症)、SLC29A3変異、CAMPS(CARD14 mediated psoriasis)、ケルビム症、CANDLE(chronic atypical neutrophilic dermatitis with lipodystrophy)、COPA(Coatamer protein complex,subunit alpha)欠損、クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)、NLRP12 関連周期熱症候群(NAPS12)、中條―西村症候群/JMP症候群/CANDLE症候群、フォスフォリパーゼCγ2関連抗体欠損免疫異常症(PLAID)、HOIL-1欠損症、周期性発熱・アフタ性口内炎・咽頭炎・頸部リンパ節炎症候群(PFAPA)、全身型若年性特発性関節炎、成人発症Still病、クローン病、石綿肺、Schnitzler症候群等が挙げられる。
【0028】
これらの自己炎症性疾患のうち、例えば、インフラマソームが病態形成に関わる疾患に対して、本発明は好ましく用いられる。後述の実施例にて示されるように、本発明者は、apoptosis-associated speck-like protein containing a CARD(本明細書において、ASCともいう)におけるエクソン2の欠損が、インフラマソームを活性化し、炎症増悪期においてIL-1βの産生が高まることを確認している。更に、IL-1βタンパク質、及び、野生型ASCタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質量の増加、及び/又は、特定の遺伝子群(ASC(例えば、野生型ASC)、MASCRNA、DDT、C3、CD99、RNA28SN5、RNA28SN4、RNA28SN2、RNA28SN3、RNA28SN1、RN7SL1、EEF1A1、MIR922、MIR4775、SNORA5C、SNORD143、SNORD4B、MIR612、MIR6502、DDAH2、CXCL10、RNVU1-3、MIR5001、LOC107984935、MIR6721、RNVU1-14、MIR760、及び、SNORD19Bからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子)の発現レベルの亢進が確認されると、インフラマソームの抑制に繋がり、自己炎症性疾患の炎症増悪期が軽快期に転じる傾向を見出している。また、炎症軽快期では、野生型ASCの影響を受けて、IL-1βの産生が減少し、エクソン2を欠損したASC(エクソン2欠損型ASC)が野生型ASCに対して相対的に増加し、再度インフラマソームの活性化に繋がり得る(図1のサイクルモデル参照)。このように、インフラマソームが病態形成に関わる疾患群においては、特に、自己炎症性疾患における炎症の軽快期への転換が、IL-1βタンパク質や野生型ASCタンパク質の産生と、上記特定の遺伝子群の発現レベルの亢進によりもたらされることが示唆されている。
【0029】
生体試料としては、IL-1βタンパク質、及び、ASCタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質量、及び/又は、上記の特定の遺伝子群の発現レベルを評価し得るものであれば、特に制限されない。
【0030】
生体試料としては、例えば、腹水;血液;血液細胞(単球等の血球);体液;骨髄またはその構成成分(例えば、造血細胞、骨髄脂肪組織、間質細胞等);脳脊髄液(CSF);糞便;毛髪;免疫浸潤物質;リンパ液;腹膜流体;血漿;唾液;皮膚またはその構成部分(例えば、毛包等);痰;外科的に得られた組織;皮膚または粘膜(例えば、鼻、口または膣内)から掻き取った、又は、拭いとった組織;生検試料;尿;乳管洗浄または気管支肺胞洗浄などの洗液または洗浄液;その他の体液、組織、分泌物および/または排出液等が挙げられる。生体試料としては、脾臓およびリンパ節を含めた、多数の組織および臓器に見出される、NK細胞および/またはマクロファージなどの免疫細胞を含んでいてもよい。
【0031】
これらの生体試料のうち、本発明の効果を顕著に奏する観点から、例えば、血液、血球、唾液、糞便、又は、尿が好ましく、血清、血球、唾液、又は、尿がより好ましい。
【0032】
IL-1βのタンパク質、及び、ASCタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質量、及び/又は、上記の特定の遺伝子群の発現レベルを評価する方法は、特に限定されず、公知の方法により行われ得る。
【0033】
タンパク質量を評価するための方法としては、例えば、ウェスタンブロット、ELISA(enzyme linked immunosorbent assay)、放射免疫分析(RIA:Radioimmunoassay)、放射免疫拡散法(radioimmunodiffusion)、オクタロニー(Ouchterlony)免疫拡散法、ロケット(rocket)免疫電気泳動、組織免疫染色、免疫沈降分析法(Immunoprecipitation Assay)、補体固定分析法(Complement Fixation Assay)、FACSおよびタンパク質チップ(protein chip)等があるが、これに制限されるものではない。
【0034】
これらの方法のうち、IL-1β、及び、ASCタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質量の評価としては、例えば、ウェスタンブロット、又は、ELISAを用いることが好ましく、ELISAを用いることがより好ましい。IL-1βのタンパク質量の評価には、公知の抗IL-1β抗体や、IL-1β定量用 ELISAキットを用いることが可能である。
【0035】
また、ASCタンパク質のように、細胞内タンパク質量を評価する場合には、必要に応じて、公知の細胞破砕手段、タンパク質精製手段、タンパク質検出手段等を組み合わせて用いることも可能である。
【0036】
遺伝子の発現レベルを評価する方法としては、例えば、RNAシーケンス法、逆転写酵素ポリメラーゼ反応(RT-PCR)、競争的逆転写酵素ポリメラーゼ反応(competitive RT-PCR)、リアルタイムポリメラーゼ反応(real time RT-PCR)、リアルタイム逆転写酵素ポリメラーゼ反応(real time quantitative RT-PCR)、RNase保護分析法(RNase protection method)、ノーザンブロッティング(Northern blotting)および遺伝子チップ(マイクロアレイ)等があるが、これに制限されるものではない。
【0037】
これらの方法のうち、上記の特定の遺伝子群の発現レベルの評価としては、例えば、RNAシーケンス法、又は、リアルタイムポリメラーゼ反応(real time RT-PCR)が好ましく、RNAシーケンス法を用いることがより好ましい。
【0038】
上記の特定の遺伝子群について、配列情報や識別番号等の情報は公知のデータベース、例えばNCBI (URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から取得し得る。
【0039】
上記の特定の遺伝子群について、MASCRNA、DDT、C3、CD99、RNA28SN5、RNA28SN4、RNA28SN2、RNA28SN3、RNA28SN1、RN7SL1、EEF1A1、MIR922、MIR4775、SNORA5C、SNORD143、SNORD4B、MIR612、MIR6502、DDAH2、CXCL10、RNVU1-3、MIR5001、LOC107984935、MIR6721、RNVU1-14、MIR760、及び、SNORD19Bのいずれか1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種、11種、12種、13種、14種、15種、16種、17種、18種、19種、20種、21種、22種、23種、24種、25種、26種、又は、27種の任意の組み合わせを測定してもよく、或いは全27種を測定してもよい。
【0040】
各遺伝子の名称と、それぞれ対応するINSD アクセッション番号、Refseq(Reference Sequence)とアクセッション番号とを以下の表に纏める。各遺伝子の塩基配列は、それぞれの対応するデータベースに登録されたアクセッション番号で示される配列により特定される。
【0041】
【表1】
【0042】
上記の特定の遺伝子群のうち、本発明の効果を顕著に奏する観点から、例えば、ASC、MASCRNA、DDT、C3、CD99、RNA28SN5、RNA28SN4、RNA28SN2、RNA28SN3、RNA28SN1、RN7SL1、EEF1A1、RNVU1-3、及び、RNVU1-14からなる群より選択される少なくとも1種を評価することが好ましく、
IL-1β刺激を受けたTHP-1細胞において遺伝子発現が亢進する観点から、野生型ASC、exon2欠損型ASC、MASCRNA、DDT、C3、CD99、RNA28SN5、RNA28SN4、RNA28SN2、RNA28SN3、RNA28SN1、RN7SL1、及び、EEF1A1からなる群より選択される少なくとも1種を評価することがより好ましい。
【0043】
別の実施態様において、上記の特定の遺伝子群のうち、本発明の効果を顕著に奏する観点から、例えば、スプライシング関連遺伝子であるMASCRNAを含むことが好ましい。
【0044】
別の実施態様において、上記の特定の遺伝子群のうち、本発明の効果を顕著に奏する観点から、例えば、RNVU1-3(RNA, variant U1 small nuclear 3)及び/又はRNVU1-14(RNA, variant U1 small nuclear 14)を含むことが好ましい。
【0045】
IL-1βのタンパク質量の増加、及び/又は、上記の特定の遺伝子群の発現レベルの亢進が、同一対象者の経時的な評価において確認された場合、自己炎症性疾患における軽快期に向かう可能性が高いと判定し得る。
【0046】
一つの実施形態では、同一対象者において、少なくとも24時間の間隔にて、2回以上の評価を行った場合に、前回の評価値と比較して、IL-1βタンパク質、及び、野生型ASCタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質量の増加;並びに/又は
野生型ASC、MASCRNA、DDT、C3、CD99、RNA28SN5、RNA28SN4、RNA28SN2、RNA28SN3、RNA28SN1、RN7SL1、EEF1A1、MIR922、MIR4775、SNORA5C、SNORD143、SNORD4B、MIR612、MIR6502、DDAH2、CXCL10、RNVU1-3、MIR5001、LOC107984935、MIR6721、RNVU1-14、MIR760、及び、SNORD19Bからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルの亢進
が確認された場合に、自己炎症性疾患における軽快期に向かう可能性が高いと判定し得る。
【0047】
一つの実施形態では、同一対象者において、少なくとも24時間の間隔にて、2回以上の評価を行った場合に、前回の評価値と比較して、IL-1βタンパク質、及び、野生型ASCタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質量の増加;
エクソン2欠損型ASCタンパク質量の低下;並びに/又は
野生型ASC、MASCRNA、DDT、C3、CD99、RNA28SN5、RNA28SN4、RNA28SN2、RNA28SN3、RNA28SN1、RN7SL1、EEF1A1、MIR922、MIR4775、SNORA5C、SNORD143、SNORD4B、MIR612、MIR6502、DDAH2、CXCL10、RNVU1-3、MIR5001、LOC107984935、MIR6721、RNVU1-14、MIR760、及び、SNORD19Bからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルの亢進
が確認された場合に、自己炎症性疾患における軽快期に向かう可能性が高いと判定し得る。
【0048】
一方で、同一対象者において、少なくとも24時間の間隔にて、2回以上の評価を行った場合に、前回の評価値と比較して、IL-1βタンパク質の低下;
エクソン2欠損型ASCタンパク質量の増加;並びに/又は
野生型ASC、MASCRNA、DDT、C3、CD99、RNA28SN5、RNA28SN4、RNA28SN2、RNA28SN3、RNA28SN1、RN7SL1、EEF1A1、MIR922、MIR4775、SNORA5C、SNORD143、SNORD4B、MIR612、MIR6502、DDAH2、CXCL10、RNVU1-3、MIR5001、LOC107984935、MIR6721、RNVU1-14、MIR760、及び、SNORD19Bからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルの低下
が確認された場合に、自己炎症性疾患における増悪期に向かう可能性が高いと判定し得る。
【0049】
一つの実施形態では、同一対象者において、少なくとも24時間以上の間隔にて、2回以上の評価を行った場合に、前回の評価値と比較して、上記タンパク質のタンパク質量の変動、及び/又は、上記の特定の遺伝子群の発現レベルの変動が、例えば、少なくとも1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、11%以上、12%以上、13%以上、14%以上、15%以上、16%以上、17%以上、18%以上、19%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上等で確認された場合に、自己炎症性疾患における上記の判定を行い得る。限定はされないが、同一対象者において、少なくとも24時間以上の間隔にて、2回以上の評価を行った場合に、前回の評価値と比較して、上記タンパク質量の変動、及び/又は、上記の特定の遺伝子群の発現レベルの変動が、好ましくは、少なくとも5%以上で確認された場合に、自己炎症性疾患における上記の判定を行い得る。
【0050】
上記の他、生体試料中のrs8056505(A→G)SNP(一塩基多型)を測定する工程を含んでいてもよい。当該一塩基多型は、対象者のASC遺伝子の5’非翻訳領域において、その存在を確認することが好ましい。
【0051】
後述の実施例にて示されるように、本発明者は、ASC遺伝子の5’非翻訳領域において、rs8056505(A→G)SNPを有する場合、ASCにおけるエクソン2の欠損を誘導し得ることを見出している。よって、ASC遺伝子の5’非翻訳領域において、rs8056505(A→G)SNPを有する場合は、ASCにおけるエクソン2の欠損を生じやすく、インフラマソームを活性化し、図1に示すサイクルモデルがより一層生じやすいことが推測される。
【0052】
[自己炎症性疾患における炎症増悪期、及び、軽快期を予測するための検査キット]
別の実施態様において、本発明は、インビトロにおいて、生体試料中のIL-1βタンパク質、及び、ASCタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質量を指標として測定する手段を含む、自己炎症性疾患における炎症増悪期、及び、軽快期を予測するための検査キットを提供する。
【0053】
上述のように、生体試料中のIL-1βタンパク質、野生型ASCタンパク質、及び、exon2欠損型ASCタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質量を指標として測定することにより、図1に示すサイクルモデルにおいて、生体試料を提供した対象者が、自己炎症性疾患の炎症増悪期から軽快期へと転じること、又は、自己炎症性疾患の炎症軽快期から増悪期へと転じることを予測すること等が可能である。
【0054】
例えば、当該検査キットを用いて、経時的に生体試料中のIL-1βタンパク質、野生型ASCタンパク質、及び、exon2欠損型ASCタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質量を測定した場合、IL-1βタンパク質量、及び/又は、野生型ASCタンパク質量が増加傾向、及び/又は、エクソン2欠損型ASCタンパク質量が低下傾向であると評価されれば、自己炎症性疾患の炎症増悪期から軽快期へと転じることを予測することが可能である。
【0055】
例えば、当該検査キットを用いて、経時的に生体試料中のIL-1βタンパク質、野生型ASCタンパク質、及び、exon2欠損型ASCタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質量を測定した場合、IL-1βタンパク質量、及び/又は、野生型ASCタンパク質量が低下傾向、及び/又は、エクソン2欠損型ASCタンパク質量が増加傾向であると評価されれば、自己炎症性疾患の炎症軽快期から増悪期へと転じることを予測することが可能である。
【0056】
一つの実施形態では、同一対象者において、少なくとも24時間以上の間隔にて、2回以上の評価を行った場合に、前回の評価値と比較して、IL-1βのタンパク質量の増加が、例えば、少なくとも1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、11%以上、12%以上、13%以上、14%以上、15%以上、16%以上、17%以上、18%以上、19%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上等で確認された場合に、自己炎症性疾患における上記の予測を行い得る。限定はされないが、同一対象者において、少なくとも24時間以上の間隔にて、2回以上の評価を行った場合に、前回の評価値と比較して、IL-1βのタンパク質量の増加が、好ましくは、少なくとも5%以上で確認された場合に、自己炎症性疾患における上記の予測を行い得る。
【0057】
当該検査キットには、上記タンパク質量を測定し得る抗体を含んでいることが好ましい。当該抗体に加えて、本発明の上記方法を実施するのに必要な1種又は2種以上の試薬、検出用装置若しくはその構成部材、及び/又は、本発明の上記方法を実施するための手順を記載した指示書を含み得る。当該試薬の種類や指示書の記載内容、更には本発明のキットに含まれる他の構成要素は、使用される具体的な免疫学的測定法の種類等に応じて適宜決定すればよい。
【0058】
ASCタンパク質のように、細胞内タンパク質量を評価する場合には、必要に応じて、公知の細胞破砕手段、タンパク質精製手段、タンパク質検出手段に必要な試薬等を組み合わせて含んでいてもよい。
【0059】
免疫学的測定法の例としては、限定されるものではないが、抗体を担持させたマイクロタイタープレートを用いるELISA(酵素結合免疫吸着)法;抗体を担持させたラテックス粒子(例えばポリスチレンラテックス粒子等)を用いるラテックス粒子凝集測定法;抗体を担持させたメンブレン等を用いるイムノクロマトグラム法;着色粒子又は発色能を有する粒子、酵素若しくは蛍光体等で標識した検出用抗体と、磁気微粒子等の固相担体に固定化した捕捉用抗体とを用いるサンドイッチアッセイ法、1つの抗体を用いるELISA法、バイオセンサ法等、種々の公知の免疫学的測定法が挙げられる。
【0060】
当該検査キットにおいては、上述した[自己炎症性疾患における炎症増悪期、及び、軽快期を予測する方法]の記載が適宜参照される。
【0061】
[自己炎症性疾患の軽快剤のスクリーニング方法]
別の実施態様において、本発明は、インビトロにおいて、自己炎症性疾患患者由来細胞、及び/又は、ヒト単球由来細胞に候補物質を作用させる工程、
該細胞において、IL-1βタンパク質、及び、ASCタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質量、、及び/又は、ASC、MASCRNA、DDT、C3、CD99、RNA28SN5、RNA28SN4、RNA28SN2、RNA28SN3、RNA28SN1、RN7SL1、及び、EEF1A1、MIR922、MIR4775、SNORA5C、SNORD143、SNORD4B、MIR612、MIR6502、DDAH2、CXCL10、RNVU1-3、MIR5001、LOC107984935、MIR6721、RNVU1-14、MIR760、及び、SNORD19Bからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを指標として測定する工程を含む、
前記候補物質が自己炎症性疾患の軽快剤であるか否かをスクリーニングする方法を提供する。
【0062】
本明細書において、「候補物質」は、特に限定されず、例えば、ヌクレオチド、DNA、RNA、アミノ酸、アプタマー、タンパク質、化合物、天然物、天然抽出物等が挙げられる。
【0063】
候補物質を作用させる細胞としては、自己炎症性疾患患者由来細胞であってもよく、ヒト単球由来細胞であってもよい。
【0064】
ヒト単球由来細胞としては、例えば、THP-1細胞(JCRB細胞バンクJCRB0112)、U937細胞(JCRB細胞バンクJCRB9021)等が挙げられる。
【0065】
例えば、候補物質を作用させた細胞において、IL-1βタンパク質、及び、野生型ASCタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質量の増加;
エクソン2欠損型ASCタンパク質量の低下;並びに/又は
野生型ASC、MASCRNA、DDT、C3、CD99、RNA28SN5、RNA28SN4、RNA28SN2、RNA28SN3、RNA28SN1、RN7SL1、EEF1A1、MIR922、MIR4775、SNORA5C、SNORD143、SNORD4B、MIR612、MIR6502、DDAH2、CXCL10、RNVU1-3、MIR5001、LOC107984935、MIR6721、RNVU1-14、MIR760、及び、SNORD19Bからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルの亢進
が経時的な評価において確認された場合、自己炎症性疾患における軽快期を誘導し得る物質であると判定し得る。
【0066】
限定はされないが、少なくとも24時間以上の間隔にて、2回以上の評価を行った場合に、前回の評価値と比較して、上記タンパク質量の変動、及び/又は、上記の特定の遺伝子群の発現レベルの変動が、好ましくは、少なくとも5%以上で確認された場合に、候補物質における上記の判定を行い得る。
【0067】
上記判定により選別された候補物質は、自己炎症性疾患における軽快剤として用いられ得る。
【0068】
上記軽快剤は、医薬品、食品、飲料等に添加又はこれらと混合して使用することができる。または、そのままで医薬品、食品、飲料等として使用することができる。また、上記軽快剤は、自己炎症性疾患による炎症に起因する発熱や疼痛症状の予防又は改善等を機能性としてその旨を明示又は暗示した飲食品、すなわち、健康食品、機能性表示食品、病者用食品及び特定保健用食品として使用することができる。また、上記機能性を明示又は暗示していなくとも、病院及び/又は医院における、内科や外科や動物病院等にて、医師から推薦又は提示されるいわゆるドクターズサプリメントとして使用することができる。
【0069】
医薬品、健康食品、機能性表示食品、病者用食品及び特定保健用食品は、具体的には、固形製剤(錠剤、口腔内崩壊錠、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤、チュアブル錠、飴剤など)や液剤(シロップ剤、懸濁剤)、流動食等の各種製剤形態として使用することができる。
【0070】
例えば、錠剤であれば、選別された候補物質を粉末状として、製薬上許容される担体成分(賦形剤など)とを混合して圧縮成形することにより調製でき、錠剤は型に注入する方法で調製してもよい。錠剤には、糖衣コーティングを施し、糖衣錠としてもよい。さらに、錠剤は単層錠であってもよく、二層錠などの積層錠であってもよい。
【0071】
顆粒剤などの粉粒剤は、種々の造粒法(押出造粒法、粉砕造粒法、乾式圧密造粒法、流動層造粒法、転動造粒法、高速攪拌造粒法など)により調製してもよく、錠剤は、上記造粒法、打錠法(湿式打錠法、直接打錠法)などを適当に組み合わせて調製できる。
【0072】
カプセル剤は、慣用の方法により、カプセル(軟質又は硬質カプセル)内に粉粒剤(粉剤、顆粒剤など)を充填することにより調製できる。
【0073】
液剤は、各成分を担体成分である水性媒体(精製水、エタノール含有精製水など)に溶解又は分散させ、必要により濾過又は滅菌処理し、所定の容器に充填し、滅菌処理することにより調製できる。本発明の固形製剤の好ましい剤形は、カプセル剤又は錠剤であり、軟質カプセル(軟カプセル剤、ソフトカプセル)であることがより好ましい。
【0074】
軟カプセル剤は表面が滑らかで飲み込みやすく、使用者に好まれる。一般的な軟カプセル剤の製造方法として、平板式、ロータリー方式、シームレス方式が例示される。
【0075】
ロータリー方式(打ち抜き法)の製造は、シート状カプセル皮膜が、流動する充填内容物を挟み込み、回転する円筒型の金型の穴に沿ってカプセル形状に形成する。一方で、シームレス方式(滴下法)の製造は、同心円の多重ノズルからカプセル皮膜組成物と内容物が同時に吐出され、継ぎ目の無いカプセル形状に形成される。
【0076】
軟カプセル剤の皮膜の基剤は、特に限定はされないが、デンプン、プルラン、セルロース、ポリビニルアルコール、ゼラチン、コハク化ゼラチン等を用いることができ、デンプン、ゼラチン、コハク化ゼラチンが好ましく、ゼラチン、コハク化ゼラチンが更に好ましい。これらは単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0077】
また、スープ類、ジュース類、果汁飲料、牛乳、乳飲料、乳清飲料、乳酸菌飲料、茶飲料、アルコール飲料、コーヒー飲料、炭酸飲料、清涼飲料水、水飲料、ココア飲料、ゼリー状飲料、スポーツ飲料、ダイエット飲料等の液状飲料、プリン、ヨーグルトなどの半固形食品、麺類、菓子類、スプレッド類等として、上記製剤を製造することができる。
【0078】
食品として調製する場合は、種々の食品添加物を配合してもよい。食品添加物としては、例えば、酸化防止剤、色素、香料、調味料、甘味料、酸味料、pH調整剤、品質安定剤、保存剤等が挙げられる。
【0079】
医薬品として調製する場合は、有効成分である、選別された候補物質と、好ましくは薬学的に許容される担体を含む製剤として調製する。薬学的に許容される担体とは、一般的に、前記有効成分とは反応しない、不活性の、無毒の、固体若しくは液体の、増量剤、希釈剤又はカプセル化材料等をいい、例えば、水、エタノール、ポリオール類、適切なそれらの混合物、植物性油等の溶媒又は分散媒体等が挙げられる。
【0080】
医薬品は、経口により、非経口により、例えば、口腔内に、消化管内に、又は鼻腔内に投与される。経口投与製剤としては、固形製剤(錠剤、口腔内崩壊錠、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤、チュアブル錠、飴剤など)や、液剤(シロップ剤、懸濁剤、吸入剤)等が挙げられる。非経口投与製剤としては、点眼剤、点滴剤、点鼻剤及び注射剤等が挙げられる。製剤形態としては、限定はされないが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、口腔内崩壊錠、チュアブル錠、飴剤、顆粒剤、散剤又は液剤であることが好ましい。
【0081】
医薬品は、さらに医薬分野において慣用されている添加剤を含んでいてもよい。そのような添加剤には、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、抗酸化剤、着色剤、矯味剤等があり、必要に応じて適宜使用できる。長時間作用できるように徐放化するため、既知の遅延剤等でコーティングすることもできる。医薬組成物は、さらに必要に応じてその他の添加剤や薬剤、例えば制酸剤、胃粘膜保護剤を加えてもよい。
【0082】
医薬品は、口腔用、内服用などの形態で適用することができる。また医薬品を治療的に使用してもよいし、非治療的に使用してもよい。
【0083】
選別された候補物質の成人1日あたりの経口による摂取量又は投与量は、個体の状態、体重、性別、年齢、素材の活性、摂取又は投与経路、摂取又は投与スケジュール、製剤形態又はその他の要因により適宜決定することができる。
【0084】
なお、上記軽快剤の成人1日あたりの経口による摂取量又は投与量は、剤形に合わせて、例えばカプセル剤であれば、1~6カプセル、1~4カプセル、1~3カプセル、又は1~2カプセルに分けて服用してもよい。
【0085】
上記軽快剤は、1日1回~数回に分け、通常、1日1~6回、1日1~3回、1日1~2回又は任意の期間及び間隔で摂取若しくは投与され得るが、1日1回が好ましい。
【実施例0086】
次に、実施例や試験例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例や試験例に限定されるものではない。
【0087】
[試験例1.ASC遺伝子変異解析]
回帰性リウマチ患者(3名)由来のゲノムDNAは、PAXgene Blood DNA Kit(QIAGEN社製)を用いて末梢血から単離した。ゲノムASCのDNAフラグメントは、PCR法により5つの別々のフラグメントとして得た。
【0088】
各フラグメントの増幅に用いたプライマー名とその塩基配列は以下の通りである。
(フラグメント1)
hPYCARD3313F forward:5'-TTCAGCAGGGTAGCAGAGC-3'(配列番号1)
hPYCARD4445R reverse:5'-CCGAAACCTTGCCAGATGCT-3'(配列番号2)
【0089】
(フラグメント2)
hPYCARD4129F forward:5'-ACAGTTAAGGTCTCCGATGC-3'(配列番号3)
hPYCARD4927R reverse:5'-TTACTACACCCTTGGTCCCCT-3'(配列番号4)
【0090】
(フラグメント3)
hPYCARD4770F forward:5'-CAAGCCCAGAGACAAGCAGG-3'(配列番号5)
hPYCARD5767R reverse:5'-CAGGGTGTGGGTTGGTGG-3'(配列番号6)
【0091】
(フラグメント4)
hPYCARD5634F forward:5'-AGGCCTCCACACCCAG-3'(配列番号7)
hPYCARD6627R reverse:5'-ATGTGGAAGGTAGGGGAGC-3'(配列番号8)
【0092】
(フラグメント5)
hPYCARD6339F forward:5'-CTATGCTTCAGAGGCCACCC-3'(配列番号9)
hPYCARD7854R reverse:5'-GGGAGGACAAGTAGGAGGT-3'(配列番号10)
【0093】
プライマー名における数字は、NCBI アクセッション番号:NG_029446に従い、アニールする5’位置を示す。得られたPCR産物をQIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社製)を用いて精製し、配列の分析に用いた。結果を図2に示す。
【0094】
図2に示す通り、3名の患者全員の5’-UTR(1st ATGから888bp上流)にヘテロ接合性SNP(rs8056505 A/G)が確認された(図2)。
【0095】
[試験例2.エクソントラッピングアッセイ]
rs8056505 SNPのASCスプライシングにおける影響を確認するために、エクソントラッピングアッセイを行った。野生型ASC rs8056505 A対立遺伝子および変異型ASC rs8056505 G対立遺伝子は、ヘテロ接合性rs8056505 A→G一塩基多型(SNP)を含む回帰性リウマチ患者の末梢血単核細胞由来のゲノムDNAからPCR法により増幅した。
【0096】
増幅に用いたプライマー名とその塩基配列は以下の通りである。
hPYCARD4129F _Fusion forward:
5'-GGGATCACCAGAATTCACAGTTAAGGTCTCCGATGC-3'(配列番号11)
hPYCARD6480R_Fusion reverse:
5'-TCGAGCTCCAGAATTCCTTTAGGGAGCACTGGAGGA-3'(配列番号12)
【0097】
得られたPCR産物を、In-Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ社製)を用いて、EcoRIで消化したpSPL3エクソントラップベクター(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、USA)に挿入した。
【0098】
JCRB細胞バンクから入手したTHP-1細胞を、100U/mLペニシリン(Thermo Fisher Scientific社製)、100μg/mLストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientific社製)、および10%Equa FETALを添加したRPMI 1640培地(Fujifilm Wako社製)に1.5×10cells/mLの密度で播種し、37°Cで一晩インキュベートした。
【0099】
pSPL3 コントロールベクター、野生型ASC rs8056505 A対立遺伝子を含むpSPL3ベクター、または変異型ASC rs8056505 G対立遺伝子を含むpSPL3ベクターを、jetOPTIMUS in vitro DNA トランスフェクション試薬(Polyplus-transfection社製)を製造元のガイドラインに従って使用し、THP-1細胞にトランスフェクトし、48時間インキュベートした。
【0100】
インキュベーション後、トランスフェクトされた細胞を洗浄し、50、100、または200pg/mL IL-1β(R&D Systems社製)および 5または20μM C6-ピリジニウム-セラミド(Avanti Polar Lipids社製)で24時間刺激した。
【0101】
THP-1細胞からの全RNA画分をRNAiso Plus(タカラバイオ社製)を用いて抽出し、PrimeScript II 1st strand cDNA Synthesis Kit(タカラバイオ社製)を用いてcDNAに逆転写した。mRNAの発現は、0.2mMの各dNTP、1×Gflex PCR Buffer(タカラバイオ社製)、0.2μMの各プライマー、および1.25UのTks Gflex DNA Polymerase(タカラバイオ社製)の反応混合物を使用したRT-PCRによって確認した。
【0102】
増幅に用いたプライマー名とその塩基配列は以下の通りである。
pSPL3 SD6 forward:5'-TCTGAGTCACCTGGACAACC-3'(配列番号13)
pSPL3 SA2 reverse:5'-ATCTCAGTGGTATTTGTGAGC-3’(配列番号14)
【0103】
2回目のnested PCRに用いたプライマー名とその塩基配列は以下の通りである。
hPYCARD225F forward:5'-ATGGACGCCTTGGACCTCA-3'(配列番号15)
hPYCARD696R reverse:5'-GGAGTGTTGCTGGGAAGGA-3'(配列番号16)
【0104】
上述の通り、rs8056505 SNPのASCスプライシングにおける影響を確認するために、エクソントラッピングアッセイを行った。結果を図3に示す。
【0105】
図3に示す通り、exon2欠損型ASCの発現は、THP-1細胞のA対立遺伝子で観察されたものと比較して、rs8056505 G対立遺伝子によって誘導された。また、IL-1βまたはセラミドによる細胞の共刺激の効果を評価した。セラミドは、IL-1βの下流分子の1つであり、スプライシング制御因子として機能する。exon2欠損型ASCの発現は、50~200pg/mLのIL-1βおよび20μMのセラミドによる刺激によって抑制されることが確認された(図3)。
【0106】
[試験例3.Total RNAシーケンス(RNA-seq)]
THP-1細胞を、100U/mLペニシリン(Thermo Fisher Scientific社製)、100μg/mLストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientific社製)、および10%Equa FETAL(Atlas Biologicals社製)を添加したRPMI1640培地(Fujifilm Wako社製)に1.0×10cells/mLの密度で播種し、50pg/mL IL-1β(R&D Systems社製)の存在又は非存在にて37℃で24時間刺激した。
【0107】
RNAiso Plus(Takara Bio社製)を使用してTHP-1細胞から全RNAを抽出し、DNase Iで処理し、PureLink RNA Mini Kit(Thermo Fisher Scientific社製)を用いて精製した。
【0108】
精製したRNAを、NovaSeq 6000ハイスループット シーケンサー(Illumina社製)を用いてトータルRNAシーケンス(RNA-seq、Eurofin Genomics社製)に供した。ライブラリーインサートのサイズは200bpであり、150bpペアエンドリード法を用いて配列を決定した。
【0109】
割り当てられたインデックスはCTTAGGAC-CTTCACTGおよびATCTGACC-CTCGACTTであり、DDBJ(DNA Databank of Japan)DRAアクセッション番号はDRA014002である。
【0110】
[試験例4.RNA-seqデータ解析]
RNA-seqデータは、下記に従い解析を行った。始めに、FastQC(クオリティチェックツール、http://www.bioinformatics.babraham.ac.uk/projects/fastqc/)を用いて各サンプルの品質チェックを行い、Trimmomatic(アダプタートリミングツール、http://www.usadellab.org/cms/?page=trimmomatic)を用いて低品質のリードをトリミングした。トリミング後、再度品質チェックを行い、低品質のリードが除去されていることを確認した。
【0111】
トリミングされたサンプルは、HISAT2(http://daehwankimlab.github.io/ hisat2/)とhg38参照ゲノムを用いてマッピングされ、続いてStringTie(http://ccb.jhu.edu/software/stringtie/)を用いて正規化および遺伝子発現レベルの計算が行われた。また、TCC-GUIを用いてデータを分析し、0.05 未満の偽発見率 (FDR)の遺伝子は、DEG (Differentially Expressed Gene)、すなわち、対照区に対して実験区において有意に発現が増大している遺伝子であるとみなした。
【0112】
exon2欠損型ASCの発現はIL-1β刺激によって抑制されたため、IL-1βの影響を受けるいくつかの遺伝子が、ASCのスプライシング制御に関与している可能性が示唆された。
【0113】
トータルRNA-seq解析を実行し、IL-1β刺激を受けたTHP-1細胞において発現レベルが変化した遺伝子を単離した。対照細胞およびIL-1β刺激細胞において、リード数はそれぞれ44,797,770種および59,862,218種であり、コールされた塩基の数はそれぞれ6,720Mbpおよび8,979Mbpであり、Q30スコアは、それぞれ92.18%および92.25%であった。
【0114】
得られたデータは上述の解析ツールを使用して処理され、TCC-GUIを使用して対照細胞とIL-1β処理細胞間の遺伝子発現レベルを比較した。131,426個の転写物を検出し、それらをボルケーノプロット上にプロットして傾向を確認した。結果を図4に示す。
【0115】
図4に示す通り、対照細胞とIL-1β刺激細胞との間で、2倍を超える発現変化と、0.05未満のP値を示す35個の遺伝子を発見した(IL-1β刺激後の16個の下方制御された遺伝子と19個の上方制御された遺伝子を含む)(表1、図2b)。結果を表2-1、表2-2、表3及び図5に示す。表2-1及び表2-2では、ボルケーノプロットにおいて下方制御された遺伝子を示す。表3では、ボルケーノプロットにおいて上方制御された遺伝子を示す。
【0116】
【表2-1】
【0117】
【表2-2】
【0118】
【表3】
【0119】
下方制御された遺伝子の7/16(43.8%)は非コードまたはマイクロRNAであり、6/16(37.5%)はSNORD(C/Dボックス小型核小体RNA)やscaRNA(カハール小体特異的小型RNA)などの核内小型RNAであり、1/16(6.3%)は転写因子であった。
【0120】
対照的に、上方制御された遺伝子の3/19(15.8%)は、SRタンパク質モジュレーターMASCRNA(MALAT1関連低分子細胞質RNA)やRNVU(U1低分子RNA変異体)などの典型的なスプライシング因子であり、12/19(63.2%)は非コードまたはマイクロRNAであった。また、FDR<0.05の遺伝子もDEGであると決定された。
【0121】
以上により、IL-1β刺激後に、41個の下方制御された遺伝子と11個の上方制御された遺伝子を含む52個の遺伝子が確認された(表4-1、表4-2、表4-3、図6)。表4-1及び表4-2では、下方制御されたDEGを示し、表4-3では、上方制御されたDEGを示す。
【0122】
【表4-1】
【0123】
【表4-2】
【0124】
【表4-3】
【0125】
表4-1、表4-2、表4-3、図6に示す通り、スプライシング因子として、SNORD141Aが有意に下方制御される遺伝子として検出され、MASCRNAが最も有意に上方制御される遺伝子として検出されました。
【0126】
MASCRNAの前駆体である長鎖ノンコーディングRNA MALAT1はSRスプライシング因子のモジュレーターとして報告されており、IL-1βによって上方制御されたMASCRNAが野生型ASCの発現に寄与している可能性を強く示唆している。
【0127】
上記の結果に基づいて、野生型ASCの発現と、rs8056505 G対立遺伝子およびIL-1βによって誘導されるスプライシング調節因子によって調節されるexon2欠損型ASCの発現とを交互に繰り返すスプライシングサイクルを発明者は提案している(図1)。
【0128】
始めに、exon2欠損型ASCは rs8056505 G対立遺伝子によって誘導される。次に、exon2欠損型ASCは、野生型と比較してインフラマソームを活性化し、IL-1β産生を増加させる。IL-1βはスプライシング調節因子の発現に影響を及ぼし、ASCのスプライシングを改善し、その後野生型ASCが優勢となる。ASCのスプライシング修復により、野生型ASCによるIL-1β産生の減少が生じ、スプライシング調節因子の干渉が弱まり、exon2欠損型ASCが再び優勢となる。このサイクルは、回帰性リウマチ等の自己炎症性疾患における、周期的な炎症の増悪期、又は、軽快期を予測することにつながる可能性が示唆された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
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