IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電気硝子株式会社の特許一覧

特開2025-18306ガラス繊維製造用ノズル、ガラス繊維製造装置及びガラス繊維製造方法
<>
  • 特開-ガラス繊維製造用ノズル、ガラス繊維製造装置及びガラス繊維製造方法 図1
  • 特開-ガラス繊維製造用ノズル、ガラス繊維製造装置及びガラス繊維製造方法 図2
  • 特開-ガラス繊維製造用ノズル、ガラス繊維製造装置及びガラス繊維製造方法 図3
  • 特開-ガラス繊維製造用ノズル、ガラス繊維製造装置及びガラス繊維製造方法 図4
  • 特開-ガラス繊維製造用ノズル、ガラス繊維製造装置及びガラス繊維製造方法 図5
  • 特開-ガラス繊維製造用ノズル、ガラス繊維製造装置及びガラス繊維製造方法 図6
  • 特開-ガラス繊維製造用ノズル、ガラス繊維製造装置及びガラス繊維製造方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018306
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】ガラス繊維製造用ノズル、ガラス繊維製造装置及びガラス繊維製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/083 20060101AFI20250130BHJP
【FI】
C03B37/083
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121896
(22)【出願日】2023-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】松浦 禅
【テーマコード(参考)】
4G021
【Fターム(参考)】
4G021MA02
4G021MA03
(57)【要約】
【課題】ノズル先端部における溶融ガラスの這い上がりに起因する、ガラス繊維の糸切れを防止する。
【解決手段】先端部8xから溶融ガラスGを流出させる管状部8を有するガラス繊維製造用ノズル5であって、管状部8の先端部8xにおいて、管状部8の外周面を囲むように、溶融ガラスGの流出方向に沿ってガスCを供給するガス供給部9を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部から溶融ガラスを流出させる管状部を有するガラス繊維製造用ノズルであって、
前記管状部の先端部において、前記管状部の外周面を囲むように、前記溶融ガラスの流出方向に沿ってガスを供給するガス供給部を備えることを特徴とするガラス繊維製造用ノズル。
【請求項2】
前記ガスが、前記管状部を冷却可能な冷却ガスである請求項1に記載のガラス繊維製造用ノズル。
【請求項3】
前記ガス供給部は、前記管状部の先端部を内部に収容する外管を備え、前記管状部の外周面と前記外管の内周面との間に前記ガスが供給される請求項1又は2に記載のガラス繊維製造用ノズル。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のノズルが底部に複数設けられたブッシングを備えることを特徴とするガラス繊維製造装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のノズルを用いて、ガラス繊維を製造することを特徴とするガラス繊維製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維の製造技術の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維は、樹脂と混合して複合化した場合に高い補強効果を実現できることから、さまざまな分野で利用されている。
【0003】
この種のガラス繊維は、ノズルから溶融ガラスを引き出しながら冷却することにより製造されるのが一般的である。この際、ノズル先端部の形状が製造されるガラス繊維の断面形状の基礎を形作ることから、要求されるガラス繊維の断面形状に応じて、種々の形状を有するノズル先端部が提案されるに至っている(例えば、特許文献1を参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-228806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ノズルから溶融ガラスを引き出しながらガラス繊維を安定して製造するためには、ノズルに連なったガラス繊維が所定の切断位置とは異なる位置で不当に切れる、いわゆる糸切れを防止する必要がある。
【0006】
しかしながら、図6及び図7に示すように、ガラス繊維の製造中に、ノズル先端部101xから引き出された溶融ガラスGxがノズル先端部101xの外周面に沿って、矢印Zのように這い上がり、ビーズ状のガラス溜りが形成される場合がある。このような溶融ガラスGxの這い上がり(上向きの動き)は、ノズル先端部101xから正常に流出する溶融ガラスGxの動き(下向きの動き)を阻害するため、ノズル先端部101xにおいて糸切れが生じる原因となる。なお、図6及び図7では、すでにノズル先端部101xにおいて糸切れが生じた状態を図示している。
【0007】
そして、糸切れの原因となる溶融ガラスGxの這い上がりは、図6に示すように、1本のノズル101のノズル先端部101xにおいて生じる場合もあるが、図7に示すように、隣接する2本以上のノズル101のノズル先端部101xに跨って生じる場合もある。後者の現象は、ガラス繊維の製造効率を上げるために、ノズル101の配置密度を高めた場合に特に生じやすい。
【0008】
本発明は、ノズル先端部における溶融ガラスの這い上がりに起因する、ガラス繊維の糸切れを防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 上記課題を解決するために創案された本発明に係るガラス繊維製造用ノズルは、先端部から溶融ガラスを流出させる管状部を有し、管状部の先端部において、管状部の外周面を囲むように、溶融ガラスの流出方向に沿ってガスを供給するガス供給部を備えることを特徴とする。
【0010】
このようにすれば、管状部の先端部において、管状部の外周面に沿った溶融ガラスの這い上がりを、ガス供給部から供給されるガスによって阻止できる。したがって、管状部の先端部における溶融ガラスの這い上がりに起因する、ガラス繊維の糸切れを防止できる。
【0011】
(2) 上記(1)の構成において、ガスが、管状部を冷却可能な冷却ガスであることが好ましい。
【0012】
このようにすれば、ガス供給部から供給されるガスによって管状部の先端部が冷却される。したがって、溶融ガラスの這い上がりによるガラス繊維の糸切れを防止しつつ、管状部の熱による損耗を抑制できる。その結果、長期間にわたってガラス繊維を安定的に製造できる。
【0013】
(3) 上記(1)又は(2)の構成において、ガス供給部は、管状部の先端部を内部に収容する外管を備え、管状部の外周面と外管の内周面との間にガスが供給されることが好ましい。
【0014】
このようにすれば、管状部の外周面の全周囲にガスを供給できるため、管状部の先端部における溶融ガラスの這い上がりをより確実に防止できる。
【0015】
(4) 上記課題を解決するために創案された本発明に係るガラス繊維製造装置は、上記(1)~(3)のいずれかの構成のノズルが底部に複数設けられたブッシングを備えることを特徴とする。
【0016】
このようにすれば、上述の対応する構成と同様の作用効果を享受できる。
【0017】
(5) 上記課題を解決するために創案された本発明に係るガラス繊維製造方法は、上記(1)~(3)のいずれかの構成のノズルを用いて、ガラス繊維を製造することを特徴とする。
【0018】
このようにすれば、上述の対応する構成と同様の作用効果を享受できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ノズル先端部における溶融ガラスの這い上がりに起因するガラス繊維の糸切れを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第一実施形態に係るガラス繊維製造装置を示す断面図である。
図2】本発明の第一実施形態に係るノズルを示す断面図である。
図3図2のA-A断面図である。
図4図2のB-B断面図である。
図5】本発明の第二実施形態に係るノズルを示す断面図である。
図6】従来のノズルの問題点を説明するための断面図である。
図7】従来のノズルの問題点を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、添付図面に基づいて説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。
【0022】
<第一実施形態>
(ガラス繊維製造装置)
図1に示すように、第一実施形態に係るガラス繊維製造装置は、ガラス溶融炉1と、ガラス溶融炉1に接続されたフォアハース2と、フォアハース2に接続されたフィーダー3とを備えている。
【0023】
フィーダー3の底部は、ブッシング4によって構成されている。ブッシング4は、ブッシングブロック等を介してフィーダー3に取り付けられている。ブッシング4の底部には、複数のノズル5が設けられている。
【0024】
ガラス溶融炉1、フォアハース2、フィーダー3、ブッシング4及びノズル5は、少なくとも一部が白金又は白金合金(例えば、白金ロジウム合金)により形成されている。なお、ノズル5の詳細構造については後述する。
【0025】
本実施形態では、各ノズル5に随伴気流が当たるのを防止するための防風板6が設けられている。防風板6の上下方向寸法は、ノズル5の上下方向寸法よりも長くなっている。
【0026】
(ガラス繊維製造方法)
第一実施形態に係るガラス繊維製造方法では、上記のガラス繊維製造装置を用いる。詳細には、図1に示すように、本製造方法では、溶融ガラスGが、ガラス溶融炉1からフォアハース2を通じてフィーダー3に供給されると共に、フィーダー3内に貯留される。フィーダー3内に貯留された溶融ガラスGは、ブッシング4に設けられた複数のノズル5から下方に引き出され、ガラス繊維(モノフィラメント)Gmが製造される。この際、成形温度における溶融ガラスGの粘度は、102.0~103・5dPa・s(好ましくは102.5~103・3dPa・s)の範囲内に設定される。なお、成形温度における溶融ガラスGの粘度は、ノズル5に流入する位置における溶融ガラスGの粘度とする。ガラス繊維Gmの表面には、図示しないアプリケータにより集束剤が塗布されると共に、100~10000本のガラス繊維Gmが、1本のストランドGsに紡糸される。紡糸されたストランドGsは、巻き取り装置のボビン7に繊維束Grとして巻き取られる。ストランドGsは、例えば、1~20mm程度の所定長に切断され、チョップドストランドとして利用される。
【0027】
溶融ガラスGの粘度を調整するために、フォアハース2、フィーダー3及びブッシング4の中から選ばれた一つ又は複数の要素を通電加熱などで加熱してもよい。
【0028】
溶融ガラスGのガラス材質は特に限定されるものではないが、例えば、Eガラス、Dガラス、Sガラス、ARガラス、Cガラスなどを用いることができる。
【0029】
(ノズル)
図2図4に示すように、第一実施形態に係るノズル5は、管状部8と、ガス供給部9とを備える。なお、図1では、ガス供給部9の図示は省略している。
【0030】
管状部8は、円筒状の筒状部材であり、管状部8の先端部8xにおける管状部8の内周面8aで区画される流出孔8aaは円形状である。なお、流出孔8aaの形状は、これに限定されず、扁平形状の断面を有するガラス繊維を製造する場合には、長円形や、長方形などであってもよい。
【0031】
ガス供給部9は、管状部8の先端部8xにおいて、管状部8の外周面8bを囲むように、溶融ガラスGの流出方向(下方)に沿って冷却ガスCを供給するものである。ここで、「管状部8の外周面8bを囲む」とは、管状部8の外周面8bを連続的に囲む場合と、管状部8の外周面8bを断続的に囲む場合とを含む。なお、本実施形態では、管状部8の外周面8bを連続的に囲むように、冷却ガスCを供給する場合を例示する。
【0032】
本実施形態では、ガス供給部9は、外管10と、接続管11と、ガス供給源12とを備える。
【0033】
外管10は、管状部8の先端部8xを内部に収容するように配置される。つまり、図3に示すように、管状部8の先端部8xでは、外管10と管状部8とで二重管構造が構成されている。換言すれば、ブッシング4側に位置する管状部8の基端部8yには、外管10は配置されていない。
【0034】
図2及び図4に示すように、接続管11は、隣接する外管10同士、又は、外管10とガス供給源12とを接続するように複数配置される。接続管11の内部S1と外管10の内部(詳細には、外管10の内周面10aと管状部8の外周面8bとの間の空間)S2とは、互いに連通されており、冷却ガスCを流通するための流路を構成する。
【0035】
ガス供給源12は、接続管11を介して、外管10の内周面10aと管状部8の外周面8bとの間の空間S2に冷却ガスCを供給する。
【0036】
冷却ガスCとしては、例えば、空気、酸素、窒素、不活性ガスなどが利用できる。ただし、管状部8、外管10、接続管11等の構成材料(例えば白金)の酸化による揮発抑制等を考慮すれば、窒素、二酸化炭素、アルゴン等の冷却ガスCを用いることが好ましい。冷却ガスCの温度は、例えば、20~40℃程度の常温付近でよいが、ガラス繊維Gmの製造中は当該温度を大きく変化させないことが好ましい。冷却ガスCの温度が変化することで、ノズル5直下のガラス生地温度に影響を与え、生産性を阻害するおそれがあるためである。
【0037】
ガス供給源12から供給される冷却ガスCは、図4に示すように、接続管11によって、各ノズル5の外管10の内周面10aと管状部8の外周面8bとの間の空間S2に順に供給されるとともに、図2に示すように、各空間S2から溶融ガラスGの流出方向(下方)に沿って排出される。このようにすれば、各管状部8の外周面8bの全周囲から冷却ガスCを排出できるため、管状部8の先端部8xにおいて、管状部8の外周面8bに沿って溶融ガラスGが這い上がるのを確実に防止できる。その結果、ガラス繊維Gmの糸切れを抑制し、ガラス繊維Gmを安定して製造できる。
【0038】
また、冷却ガスCによって管状部8の先端部8xが冷却されるため、管状部8の熱による損耗を抑制できる。なお、本実施形態では、管状部8の先端部8xにのみ外管10が設けられているため、冷却ガスCを用いても、管状部8全体が冷却されすぎる事態は生じにくい。つまり、管状部8の内部の溶融ガラスGの粘度は、ガラス繊維Gmの製造に適した値に維持される。
【0039】
<第二実施形態>
(ノズル)
図5に示すように、第二実施形態に係るノズル5のガス供給部9は、管状部8の先端部8xにおいて、管状部8の外側に、管状部8の外周面8bに沿って間隔を置いて配置された複数のガス供給管21を備えている。各々のガス供給管21は、溶融ガラスGの流出方向(下方)に沿って冷却ガスCを供給する。そのため、複数のガス供給管21からは、管状部8の外周面8bを断続的に囲むように、冷却ガスCが供給される。このような構成でも、管状部8の先端部8xにおいて、管状部8の外周面8bに沿って溶融ガラスGが這い上がるのを防止できる。
【0040】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の形態において実施することができる。
【0041】
上記の実施形態では、ガス供給部9によって、冷却ガスCを供給する場合を説明したが、これに限定されない。溶融ガラスGの這い上がりを防止する観点からは、ガス供給部9から冷却機能を有さないガスを供給してもよい。
【0042】
上記の実施形態では、ガス供給部9によって、管状部8の先端部8xのみで、管状部8の外周面8bを囲むように、溶融ガラスGの流出方向に沿ってガスCを供給する場合を説明したが、これに限定されない。例えば、管状部8が過度に冷却されない場合には、ガス供給部9は、管状部8の先端部8x及び基端部8yの両方で、管状部8の外周面8bを囲むように、溶融ガラスGの流出方向に沿ってガスCを供給してもよい。具体的には、本発明の第一実施形態に係るノズルにおいて、管状部8の先端部8xから基端部8yにわたって、外管10と管状部8とで二重管構造が構成されていてもよい。あるいは、本発明の第二実施形態に係るノズルにおいて、管状部8の先端部8xから基端部8yにわたって、管状部8の外側に、管状部8の外周面8bに沿って間隔を置いて配置された複数のガス供給管21を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 ガラス溶融炉
2 フォアハース
3 フィーダー
4 ブッシング
5 ノズル
6 防風板
7 ボビン
8 管状部
9 ガス供給部
10 外管
11 接続管
12 ガス供給源
21 ガス供給管
C 冷却ガス
G 溶融ガラス
Gm ガラス繊維
Gr 繊維束
Gs ストランド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7