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特開2025-18314ビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩含有配合錠の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018314
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】ビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩含有配合錠の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/40 20060101AFI20250130BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20250130BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20250130BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20250130BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
A61K31/40
A61K31/155
A61P3/10
A61K9/20
A61K47/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121908
(22)【出願日】2023-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】307020615
【氏名又は名称】キョーリンリメディオ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡本 理瑚
(72)【発明者】
【氏名】南 眞太郎
(72)【発明者】
【氏名】谷川 舞
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076EE32
4C076GG14
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC07
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086NA03
4C086NA05
4C086ZC35
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA31
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA55
4C206NA03
4C206NA05
4C206ZC35
(57)【要約】
【課題】ビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩を含有する配合錠において、溶出遅延や不純物生成の問題がない、製造性、安定性に優れた錠剤の提供。
【解決手段】転動流動層造粒装置によりメトホルミン塩酸塩を流動化させながら結合剤を噴霧し造粒することで得たメトホルミン塩酸塩造粒物に、ビルダグリプチンと特定の滑沢剤を加えて混合し圧縮成形することで、上記課題を解決した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メトホルミン塩酸塩と結合剤を転動流動層造粒装置で造粒した後、当該造粒物とビルダグリプチン及びステアリン酸マグネシウムを混合して圧縮成形する工程を含む、ビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩含有配合錠の製造方法。
【請求項2】
ステアリン酸マグネシウムの含有量が錠剤質量の0.1重量%から1.5重量%であることを特徴とする請求項1に記載のビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩含有配合錠の製造方法。
【請求項3】
前記配合錠について日本薬局法の溶出試験に従い、パドル法50回転、試験液のpH1.2において溶出試験を行うとき、ビルダグリプチンとメトホルミン塩酸塩の30分後の溶出率が各々80%以上である請求項2に記載のビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩含有配合錠の製造方法。
【請求項4】
前記配合錠を25℃相対湿度75%で2週間保存した後、前記溶出試験を行うとき、ビルダグリプチンとメトホルミン塩酸塩の15分後の溶出率が保存前の溶出率と比較して各々15%以内の変化であることを特徴とする請求項3に記載のビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩含有配合錠の製造方法。
【請求項5】
前記配合錠を60℃ガラス瓶密栓の条件に4週間保存した後、ビルダグリプチンとメトホルミン塩酸塩に由来する個々の不純物の最大量が0.5%以下である請求項1から4のいずれか1項に記載のビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩含有配合錠の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩を含有する配合錠、特に加湿又は加温条件下で保存しても溶出遅延や不純物生成の問題がない、製造性、安定性に優れた錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルダグリプチンは、グルコースなどの栄養素の摂取に伴い消化管から血中に分泌されるインクレチンの分解酵素であるジペプチジルペプチダーゼ-4(dipeptidyl peptidase-4、 DPP-4)を、選択的かつ可逆的に阻害する。この阻害作用により、内因性インクレチンの濃度を高めることで血糖依存性にインスリン分泌を促進させるとともに、グルカゴンの分泌を抑制し血糖降下作用を発揮する。一方、メトホルミンは、肝の糖産生及び消化管からの糖吸収を抑制し、末梢組織のインスリン感受性及びグルコース消費を増加させインスリン抵抗性を改善することによって血糖降下作用を示す。よって、インスリン分泌不全とインスリン抵抗性により高血糖を呈している2型糖尿病患者にビルダグリプチンとメトホルミンを投与することで、インスリン分泌不全とインスリン抵抗性の両要因を改善することが可能となる。そこで、ビルダグリプチン及びメトホルミン両薬剤の作用機序を有する配合錠が開発され、患者の服用数を減らし、服薬アドヒアランスの向上に貢献している。(非特許文献1)
【0003】
しかし、ビルダグリプチンは吸湿性であり、安定性の問題が存在し、尚且つ本質的に圧縮不可能であることから、錠剤化するためには特別の工夫が必要とされる。そのため、ビルダグリプチンを有効成分として含有する錠剤の技術が知られている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【0004】
また、メトホルミンは通常塩酸塩が用いられ、1錠中の含有量が、250mg又は500mgと多く、錠剤化に必要とする添加剤を加えると錠剤が大きくなり服用が困難になる。そのため、メトホルミンを含有する錠剤の小型化技術が知られている(特許文献4)。
【0005】
このように、ビルダグリプチンとメトホルミン塩酸塩は錠剤化に各々課題を有する成分であるため、この2成分を含有する配合錠を得るには、特段の工夫や技術が必要となる。そこで、ビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩を含有する配合錠に関する技術が知られている。
【0006】
例えば、メトホルミン塩酸塩と結合剤成分を加熱しながら溶融造粒する技術が開示されている(特許文献5)。しかしこの技術では、特殊で高価な2軸押し出し機という溶融造粒装置が必要になること、また溶融造粒時には、温度を段階的に上昇させ、最終的にはメトホルミン塩酸塩の融点を超えない温度域に制御する等、厳密で繁雑な温度管理が必要となっている。
【0007】
また、ビルダグリプチンとビルダグリプチンの安定性に及ぼす影響が少ない医薬品添加物、及びメトホルミン又はその薬理上許容される塩を含有してなる錠剤の安定化に関する技術も知られている(特許文献6)。しかし、この技術は、ビルダグリプチンを含有する組成物とメトホルミンを含有する組成物を、各々異なる層に分離して圧縮成型する多層錠に関するものであり、多層錠を製造するための特殊で高価な打錠機を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5122144号公報
【特許文献2】特許第5739835号公報
【特許文献3】特許第5147399号公報
【特許文献4】特許第4848558号公報
【特許文献5】特許第5415762号公報
【特許文献6】特開2021-104988公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】医薬品インタビューフォーム「エクメット配合錠LD/HD」、2022年11月改訂(第10版)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩を含有する配合錠に関する公知技術は、錠剤化や安定化のために特殊で高価な装置を必要とする。そこで、本発明はビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩を含有する配合錠を一般的な製造装置で安価に製造でき、製造性が良好であり、且つ、溶出性、安定性にも優れた錠剤を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、転動流動層造粒装置によりメトホルミン塩酸塩を流動化させながら、結合剤の水溶液を噴霧し造粒することでメトホルミン塩酸塩の造粒物を得て、このメトホルミン塩酸塩造粒物にビルダグリプチンと滑沢剤のステアリン酸マグネシウムの一定量を加えて混合し圧縮成形するという簡便で安価な方法により、製造性が良好で、保存後の溶出遅延や不純物の生成の問題が無い、安定なビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩含有配合錠が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
本発明は以下の発明を含む。
(1)メトホルミン塩酸塩と結合剤を転動流動層造粒装置で造粒した後、当該造粒物とビルダグリプチン及びステアリン酸マグネシウムを混合して圧縮成形する工程を含む、ビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩含有配合錠の製造方法。
(2)ステアリン酸マグネシウムの含有量が錠剤質量の0.1重量%から1.5重量%であることを特徴とする(1)に記載のビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩含有配合錠の製造方法。
(3)前記配合錠について日本薬局方の溶出試験に従い、パドル法50回転、試験液のpH1.2において溶出試験を行うとき、ビルダグリプチンとメトホルミン塩酸塩の30分後の溶出率が各々80%以上である(2)に記載のビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩含有配合錠の製造方法。
(4)前記配合錠を25℃相対湿度75%で2週間保存した後、前記溶出試験を行うとき、ビルダグリプチンとメトホルミン塩酸塩の15分後の溶出率が保存前の溶出率と比較して各々15%以内の変化であることを特徴とする(3)に記載のビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩含有配合錠の製造方法。
(5)前記配合錠を60℃ガラス瓶密栓の条件に4週間保存した後、ビルダグリプチンとメトホルミン塩酸塩に由来する個々の不純物の最大量が0.5%以下である(1)から(4)のいずれか1つに記載のビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩含有配合錠の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明におけるビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩含有配合錠は、メトホルミン塩酸塩と結合剤を一般的な転動流動層造粒装置で造粒した造粒物にビルダグリプチンと滑沢剤のステアリン酸マグネシウムを混合して得た打錠末を、一般的な打錠機で錠剤化できるため、簡便であり安価に製造できる。さらに、保存後の溶出遅延や不純物の生成の問題が無いため、高品質で安全性の高い医薬製剤が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩含有配合錠について説明する。ただし、本発明のビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩含有配合錠は、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0015】
本発明において、ビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩含有配合錠とは、ビルダグリプチンとメトホルミン塩酸塩の2成分を各々50mgと250mg又は50mgと500mg含有しており、各成分は多層錠や有核錠のように個別の層や分画に分離されておらず、錠剤中に無作為に分散された状態で配合されている。
【0016】
本発明において、転動流動層造粒法とは、流動層造粒装置の下部に回転する円盤又は羽根が装着された転動流動層装置を用いて造粒する方法であり、この装置の特徴は、流動層下部から供給される気流により上下に流動化する造粒物に旋回運動を加えることである。
【0017】
本発明における溶出試験は、第18改正日本薬局方に基づき、試験液には溶出試験第1液(pH1.2)又は第2液(pH6.8)900mLを用いパドル法50回転で実施し、ビルダグリプチンとメトホルミン塩酸塩の試験開始30分後の溶出率を各々液体クロマトグラフ法により求める。また、溶出性が良好とは、試験開始30分後におけるビルダグリプチンとメトホルミン塩酸塩が各々70%以上溶出している時であり、更に好ましくは80%以上溶出している時である。
【0018】
本発明において溶出遅延の問題が無いとは、本発明に係るビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩含有配合錠を25℃相対湿度75%の条件下に開放状態で2週間保存した後に、溶出試験第1液(pH1.2)で試験時間15分後におけるビルダグリプチンとメトホルミン塩酸塩の溶出率を各々液体クロマトグラフ法により求めた時、保存開始前と2週間保存後のビルダグリプチンとメトホルミン塩酸塩の溶出率の変化が各々15%以内であることをいう。
【0019】
本発明において不純物の生成の問題が無いとは、本発明に係るビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩含有配合錠を60℃ガラス瓶密栓の条件下に4週間保存し、錠剤中の不純物を液体クロマトグラフ法により求める時、ビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩に由来する個々の不純物の最大量が0.5%以下であり、より好ましくは個々の不純物の最大量が0.2%以下である。
【0020】
本発明に関わる造粒装置は流動層造粒装置が好ましく、更に好ましい造粒装置は転動流動層造粒装置である。
【0021】
本発明に係わるステアリン酸マグネシウムの錠剤中の添加量は0.1重量%から1.5重量%が好ましく、更に好ましい添加量は0.3重量%から0.7重量%である。
【0022】
ビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩含有配合錠は、結合剤およびステアリン酸マグネシウム以外にも、種々の添加剤を含有しても良い。添加剤としては、例えば、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤およびコーティング剤などが挙げられる。
【0023】
(結合剤)
本発明に係るビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩含有配合錠において、結合剤はヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、マクロゴール等から選択することができる。これらの結合剤は、単体または適宜組み合わせて使用することができる。
【0024】
(賦形剤)
本発明に係るビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩含有配合錠において、錠剤化に用いる賦形剤を添加することも可能であり、例えば、乳糖、D-マンニトール、エリスリトール、ソルビトールおよびキシリトールなどの糖アルコール、トレハロース、ショ糖などを単体又は適宜組み合わせて使用することができる。
【0025】
(崩壊剤)
本発明に係るビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩含有配合錠において、崩壊剤を添加することも可能であり、例えば低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン等を単体又は適宜組み合わせて使用することができる。
【0026】
(滑沢剤)
本発明に係るビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩含有配合錠において、滑沢剤はステアリン酸マグネシウム以外の成分を添加することも可能であり、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、水素添加植物油、マイクロクリスタリンワックス、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール等から選択することができる。これらの滑沢剤は、単体または適宜組み合わせて使用することができる。
【0027】
(コーティング剤)
本発明に係るビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩含有配合錠において、コーティング剤を含有してもよく、医薬用途で使用可能なコーティング剤であればよい。例えば、ヒプロメロース、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルメロース、カルメロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、PVAコポリマー、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、オパドライ、カルナウバロウ、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸コポリマー等が挙げられる。また、遮光剤や着色剤等の成分を添加しても良い。
【0028】
以上説明したように、本発明に係るビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩含有配合錠は、簡便で安価な製造方法で得られ、製造性に優れ、尚且つ、溶出性及び保存中の錠剤の安定性も良好な、優れた品質の医薬製剤が得られる。
【0029】
次に実施例を挙げて、本発明を詳しく説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
【0030】
(試験例1)
製造方法の違いによる配合錠の製造性及び安定性への影響
【0031】
実施例1 転動流動層造粒法
転動盤を装着した流動層造粒装置(マルチプレックス MP―01 パウレック社製)にメトホルミン塩酸塩300gを入れ、60℃に温めた気流で転動流動させた。これにヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L 分子量140000 日本層達)の8%水溶液を毎分7.0gで352.5g噴霧し、噴霧終了後45℃まで乾燥した。この乾燥品を0.813mmのスクリーンを装着した調粒機(コーミル QC197S パウレック社製)で調粒した。この調粒品328.2gとビルダグリプチン30gをビニール袋に入れて3分間混合した後、ステアリン酸マグネシウム3.6gを加えて1分間混合し打錠末とした。この打錠末を長径16.9mm 短径6.6mmの楕円形杵を装着した打錠機(HT―EX18SS2 畑鐵工所社製)で、1錠の質量が603mgで錠剤の厚さが6.0mmになるように圧縮成形し、錠剤を得た。
【0032】
比較例1 乾式造粒法
メトホルミン塩酸塩400gとヒドロキシプロピルセルロース35.1g及びステアリン酸マグネシウム2.43gをビニール袋に入れて混合し、乾式造粒装置(ローラーコンパクター TF-LABO フロイント産業社製)で、ロール圧力7.0MPa、ロール回転数1.5rpm、スクリュー回転数15rpmの条件で圧縮し成形物を得た。この成形物を1mmの網目のスクリーンを装着したオシレーターで調粒した。この調粒物437.53gにビルダグリプチン40.0gをビニール袋に入れて3分間混合した、この混合物にステアリン酸マグネシウム7.27gを入れて1分間混合し打錠末とした。この打錠末を長径16.3mm、短径7.6mmの楕円形杵を装着した打錠機(HT―EX18SS2 畑鐵工所社製)で、1錠の質量が606mgで錠剤の厚さが6.1mmになるように圧縮成形し、錠剤を得た。
【0033】
比較例2 撹拌造粒法
メトホルミン塩酸塩300gとヒドロキシプロピルセルロース27.2gを撹拌造粒装置(バーチカルグラニュレーター VG-01型 パウレック社製)に入れてブレードの回転数250rpm、クロススクリューの回転数1600rpmの条件で撹拌しながらヒドロキシプロピルセルロースの4%水溶液を24g添加し、3分間造粒した後、3.962mmのスクリーンを装着した整粒機(コーミル QC197S パウレック社製)で整粒した。この整粒品を流動層乾燥装置(マルチプレックス MP-01 パウレックス社製)で80℃の条件で乾燥した。得られた乾燥品を1.575mmのスクリーンを装着した整粒機(コーミル QC197S パウレック社製)で調粒した。この調粒品328.2gとビルダグリプチン30gをビニール袋に入れて3分間混合した後、更にステアリン酸マグネシウム3.6gを加えて1分間混合し打錠末とした。この打錠末を長径16.9mm、短径6.6mmの楕円形杵を装着した打錠機(HT―EX18SS2 畑鐵工所社製)で、1錠の質量が603mgで錠剤の厚さが6.0mmになるように圧縮成形し、錠剤を得た。
【0034】
比較例3 流動層造粒法
流動層造粒装置(マルチプレックス MP―01 パウレック社製)を用いて、60℃に温めた気流でメトホルミン塩酸塩400g流動化させ、これにヒドロキシプロピルセルロースの8%水溶液を毎分7gで495g噴霧し、噴霧終了後45℃まで乾燥した。この乾燥品を1.575mmのスクリーンを装着した調粒機(コーミル QC197S パウレック社製)で調粒した。この調粒品439.6gとビルダグリプチン40gをビニール袋に入れて3分間混合した後、ステアリン酸マグネシウム5.2gを加えて1分間混合し打錠末とした。この打錠末を長径16.3mm 短径7.6mmの楕円形杵を装着した打錠機(HT―EX18SS2 畑鐵工所社製)で、1錠の質量が606mgで錠剤の厚さが6.2mmになるように圧縮成形し、錠剤を得た。
【0035】
実施例1、比較例1~比較例3におけるビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩含有配合錠の製造性、安定性の結果を表1に示す。なお、表中、メトホルミンはメトホルミン塩酸塩を意味する。
【0036】
【表1】
造粒性の評価 :良好;〇、やや悪い;△、悪い;×
打錠性の評価 :良好;〇、やや悪い;△、悪い;×
溶出性の評価(pH1.2、試験開始30分後) :溶出率が80%以上;〇
:溶出率が80%未満;×
溶出遅延の評価(pH1.2、試験開始15分後):保存開始前と2週間保存後のビルダグリプチンとメトホルミン塩酸塩の溶出率の変化が15%以内;〇
:保存開始前と2週間保存後のビルダグリプチンとメトホルミン塩酸塩の溶出率の変化が15%を超える;×
【0037】
表1に示すように、転動流動層造粒法を使用した実施例1で得られたビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩配合錠は、メトホルミン塩酸塩造粒物の造粒性、錠剤成形時の打錠性等の製造性が良好で、得られた錠剤の溶出性及び保存後の安定性が非常に優れていた。
【0038】
(試験例2)
ステアリン酸マグネシウムの添加量と溶出遅延
【0039】
実施例2
転動盤を装着した流動層造粒装置(マルチプレックス MP―01 パウレック社製)にメトホルミン塩酸塩300gを入れ、60℃に温めた気流で転動流動させた。これにヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L 分子量140000 日本層達)の8%水溶液を毎分6.0gで352.5g噴霧し、噴霧終了後45℃まで乾燥した。この乾燥品を0.813mmのスクリーンを装着した調粒機(コーミル QC197S パウレック社製)で調粒した。この調粒品328.2gとビルダグリプチン30gをビニール袋に入れて3分間混合した後、ステアリン酸マグネシウム1.8gを加えて1分間混合し打錠末とした。この打錠末を長径16.9mm 短径6.6mmの楕円形杵を装着した打錠機(HT―EX18SS2 畑鐵工所社製)で、1錠の質量が600mgで錠剤の厚さが6.0mmになるように圧縮成形し、錠剤を得た。
【0040】
比較例4
転動盤を装着した流動層造粒装置(マルチプレックス MP―01 パウレック社製)にメトホルミン塩酸塩300gを入れ、60℃に温めた気流で転動流動させた。これにヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L 分子量140000 日本層達)の8%水溶液を毎分 6.0gで352.5g噴霧し、噴霧終了後45℃まで乾燥した。この乾燥品を0.813mmのスクリーンを装着した調粒機(コーミル QC197S パウレック社製)で調粒した。この調粒品328.2gとビルダグリプチン30gをビニール袋に入れて3分間混合した後、ステアリン酸マグネシウム7.2gを加えて1分間混合し打錠末とした。この打錠末を長径16.9mm 短径6.6mmの楕円形杵を装着した打錠機(HT―EX18SS2 畑鐵工所社製)で、1錠の質量が609mgで錠剤の厚さが6.0mmになるように圧縮成形し、錠剤を得た。
【0041】
実施例1、実施例2及び比較例4におけるビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩含有配合錠の製造性、溶出性、安定性の結果を表2に示す。なお、表中、メトホルミンはメトホルミン塩酸塩を意味する。
【0042】
【表2】
打錠性の評価 :良好;〇、やや悪い;△、悪い;×
溶出性の評価(pH1.2、試験開始30分後):溶出率が80%以上;〇
:溶出率が80%未満;×
溶出遅延の評価(pH1.2、試験開始15分後):保存開始前と2週間保存後のビルダグリプチンとメトホルミン塩酸塩の溶出率の変化が15%以内;〇
:保存開始前と2週間保存後のビルダグリプチンとメトホルミン塩酸塩の溶出率の変化が15%を超える;×
【0043】
表2に示すように、ステアリン酸マグネシウムをそれぞれ1.0重量%及び0.5重量%添加した実施例1及び実施例2のビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩配合錠は、錠剤成型時の打錠性が良好で、得られた錠剤の溶出性及び保存後の安定性が非常に優れていた。
【0044】
(試験例3)
フィルムコーティングした配合錠の例
【0045】
実施例3のコーティング液の調製
ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 846gとマクロゴール6000 78gを精製水5,400gに溶解する。この液にタルク78gと酸化チタン78g、三二酸化鉄2.58g及び三二酸化鉄0.39gを精製水750gで分散させた液を加えて撹拌混合し、140Mの篩で篩過しコーティング液とした。
【0046】
実施例4のコーティング液の調製
ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 1,152gとマクロゴール6000 96gを精製水7,296gに溶解する。この液にタルク96gと酸化チタン96g、黄色三二酸化鉄3.444g及び三二酸化鉄0.432gを精製水1,008gで分散させた液を加えて撹拌混合し、140Mの篩で篩過しコーティング液とした。
【0047】
実施例3
転動盤を装着した流動層造粒装置(フローコーター NFLO-15型 フロイント産業社製)にメトホルミン塩酸塩10,000gを入れ、80℃に温めた気流で転動流動させた。これにヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L、日本層達)の8%水溶液を毎分50gの速度で14,500g噴霧し、噴霧終了後45℃まで乾燥した。このメトホルミン塩酸塩の造粒と乾燥を2回繰り返した。得られた乾燥品を0.813mmのスクリーンを装着した調粒機(コーミル QC197S パウレック社製)で調粒し、この調粒品22,320gとビルダグリプチン2,000gを60LのV型混合機(TCV-60型 徳寿製作所社製)に入れて、毎分26回転で15分間混合した後、ステアリン酸マグネシウム120gを加えて更に1分間混合し打錠末とした。この打錠末を長径16.9mm、短径7.4mmの楕円形杵を装着した打錠機(HT―AP18SS-II 畑鐵工所社製)で、1錠の質量が611mgで錠剤の厚さが5.7mmになるように圧縮成形し、錠剤を得た。この錠剤をコーティング装置(ハイコーター HCT-80型 フロイント産業社製)を用いて上述のコーティング液を噴霧し、錠剤の平均質量が629mgのフィルムコーティング錠を得た。このフィルムコーティング錠に光沢化剤のカルナウバロウの粉末を微量用いて塗布し艶出しを行った。
【0048】
実施例4
転動盤を装着した流動層造粒装置(フローコーター NFLO-15型 フロイント産業社製)にメトホルミン塩酸塩10,000gを入れ、60℃に温めた気流で転動流動させた。これにヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L、日本層達)の8%水溶液を毎分50gの速度で17,600g噴霧し、噴霧終了後45℃まで乾燥した。このメトホルミン塩酸塩の造粒と乾燥を2回繰り返した。得られた乾燥品を0.813mmのスクリーンを装着した調粒機(コーミル QC197S パウレック社製)で調粒し、この調粒品22,816gとビルダグリプチン4,000gを60LのV型混合機(TCV-60型 徳寿工作所社製)に入れて、毎分26回転で15分間混合した後、ステアリン酸マグネシウム144gを加えて更に1分間混合し打錠末とした。この打錠末を長径14mm、短径6.3mmの楕円形杵を装着した打錠機(畑鐵工所社製 HT―AP18SS-II)で、1錠の質量が337mgで錠剤の厚さが4.6mmになるように圧縮成形し、錠剤を得た。この錠剤をコーティング装置(ハイコーター HCT-80型 フロイント産業社製)を用いて上述のコーティング液を噴霧・被覆し、錠剤の平均質量が349mgのフィルムコーティング錠を得た。このフィルムコーティング錠に光沢化剤のカルナウバロウの粉末を微量用いて塗布し艶出しを行った。
【0049】
実施例3及び実施例4のフィルムコーティングしたビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩含有配合錠の製造性、溶出性、安定性の結果を表3に示す。なお、表中、メトホルミンはメトホルミン塩酸塩を意味する。
【0050】
【表3】
造粒性の評価 :良好;〇、やや悪い;△、悪い;×
打錠性の評価 :良好;〇、やや悪い;△、悪い;×
コーティング性の評価 :良好;〇、やや悪い;△、悪い;×
溶出性の評価(pH1.2、試験開始30分後):溶出率が80%以上;〇
:溶出率が80%未満;×
溶出性の評価(pH6.8、試験開始30分後):溶出率が80%以上;〇
:溶出率が80%未満;×
溶出遅延の評価(pH1.2、試験開始15分後):保存開始前と2週間保存後のビルダグリプチンとメトホルミン塩酸塩の溶出率の変化が15%以内;〇
:保存開始前と2週間保存後のビルダグリプチンとメトホルミン塩酸塩の溶出率の変化が15%を超える;×
【0051】
本発明の転動流動層造粒法により製造したビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩配合錠は、フィルムコーティングを被覆した錠剤でも、製造性が良好であり、保存安定性にも優れていた。
【0052】
実施例5~10
実施例3および実施例4と同様に各結合剤(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール)を用いて造粒、乾燥、調粒、混合、打錠、フィルムコーティング液の調製、フィルムコーティングおよび艶出しを実施することで、表4および表5に記載の錠剤組成物を得ることができる。
【0053】
【表4】
【0054】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明により、簡便な製造方法により製造コストが安価であり、製造性が良好、且つ保存安定性に優れたビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩含有配合錠が提供される。