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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018351
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】車載充電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20250130BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20250130BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20250130BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20250130BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20250130BHJP
   B60L 53/20 20190101ALI20250130BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20250130BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
H02J7/00 L
H02M7/48 E
H02M3/28 H
H02M3/155 H
H02J7/00 J
H02J7/00 P
H02J7/02 J
B60L53/20
B60L50/60
B60L9/18 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121968
(22)【出願日】2023-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】サハ スブラタ
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭輔
(72)【発明者】
【氏名】田口 真
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
5H730
5H770
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA02
5G503BB01
5G503DA07
5G503FA06
5G503GB04
5G503GB06
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC22
5H125BB00
5H125BB07
5H125BC21
5H125DD02
5H125FF16
5H730AA15
5H730AA18
5H730AS01
5H730AS05
5H730AS17
5H730BB13
5H730BB27
5H730CC01
5H730CC02
5H730CC04
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE04
5H730EE07
5H730EE13
5H730EE73
5H730FG01
5H770BA01
5H770BA02
5H770BA20
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA10
5H770DA22
5H770DA41
5H770EA19
5H770HA02Y
5H770HA02Z
5H770HA03W
5H770HA03Z
5H770HA07Z
5H770JA10X
5H770JA17Z
(57)【要約】
【課題】外部交流電源からの電力により車載の直流電源を充電する車載充電装置を、システムコストを抑制して構成する。
【解決手段】車載充電装置10は、交流電力と第1の直流電力との間で電力を変換すると共に、交流電力と第2の直流電力との間で電力を変換する交流直流変換器1を備え、交流直流変換器1は、一次側コイルT1と二次側第1コイルT21と二次側第2コイルT22とを備えたトランスTと、一次側コイルT1に接続された一次側ブリッジ回路111と、二次側第1コイルT21に接続された二次側第1ブリッジ回路112と、二次側第2コイルT22に接続された二次側第2ブリッジ回路113とを備えたトリプル・アクティブ・ブリッジ回路であり、一次側ブリッジ回路111は、双方向型スイッチング素子により構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1直流電源と、前記第1直流電源とは電気的に絶縁された第2直流電源とを、外部交流電源から供給される電力によって充電する車載充電装置であって、
前記外部交流電源の側の交流電力と前記第1直流電源の側の第1の直流電力との間で電力を変換すると共に、前記外部交流電源の側の交流電力と前記第2直流電源の側の第2の直流電力との間で電力を変換する交流直流変換器を備え、
前記交流直流変換器は、
一次側コイルと二次側第1コイルと二次側第2コイルとを備えたトランスと、
前記一次側コイルに接続された一次側ブリッジ回路と、
前記二次側第1コイルに接続された二次側第1ブリッジ回路と、
前記二次側第2コイルに接続された二次側第2ブリッジ回路と、
を備えたトリプル・アクティブ・ブリッジ回路であり、
前記一次側ブリッジ回路は、双方向型スイッチング素子により構成されている、車載充電装置。
【請求項2】
第1スイッチング回路と第1チョークコイルと第1出力キャパシタとを備え、前記第1の直流電力を第3の直流電力に変換する第1チョッパ回路と、
第2スイッチング回路と第2チョークコイルと第2出力キャパシタとを備え、前記第2の直流電力を第4の直流電力に変換する第2チョッパ回路と、を備え、
前記第1直流電源を前記第3の直流電力により充電し、
前記第2直流電源を前記第4の直流電力により充電する、請求項1に記載の車載充電装置。
【請求項3】
中性点で互いに接続された複数相の第1ステータコイルを備えた第1回転電機に、直流と交流との間で電力を変換する第1インバータを介して前記第1直流電源が接続され、
中性点で互いに接続された複数相の第2ステータコイルを備えた第2回転電機に、直流と交流との間で電力を変換する第2インバータを介して前記第2直流電源が接続され、
前記第1チョッパ回路は、
前記第1インバータを用いて構成された前記第1スイッチング回路と、
複数相の前記第1ステータコイルを用いて構成された前記第1チョークコイルと、
複数相の前記第1ステータコイルの中性点に接続された前記第1出力キャパシタと、を備えて構成され、
前記第2チョッパ回路は、
前記第2インバータを用いて構成された前記第2スイッチング回路と、
複数相の前記第2ステータコイルを用いて構成された前記第2チョークコイルと、
複数相の前記第2ステータコイルの中性点に接続された前記第2出力キャパシタと、を備えて構成されている、
請求項2に記載の車載充電装置。
【請求項4】
スイッチング回路とチョークコイルと出力キャパシタとを備え、前記第1の直流電力を第3の直流電力に変換する、又は、前記第2の直流電力を第4の直流電力に変換するチョッパ回路を備え、
前記チョッパ回路が前記第1の直流電力を前記第3の直流電力に変換する場合は、
前記第1直流電源を前記第3の直流電力により充電し、
前記第2直流電源を前記第2の直流電力により充電し、
前記チョッパ回路が前記第2の直流電力を前記第4の直流電力に変換する場合は、
前記第1直流電源を前記第1の直流電力により充電し、
前記第2直流電源を前記第4の直流電力により充電する、請求項1に記載の車載充電装置。
【請求項5】
中性点で互いに接続された複数相のステータコイルを備えた回転電機に、直流と交流との間で電力を変換するインバータを介して、前記第1直流電源及び前記第2直流電源の内、前記チョッパ回路を介して充電される直流電源が接続され、
前記チョッパ回路は、
前記インバータを用いて構成された前記スイッチング回路と、
複数相の前記ステータコイルを用いて構成された前記チョークコイルと、
複数相の前記ステータコイルの中性点に接続された前記出力キャパシタと、を備えて構成されている、請求項4に記載の車載充電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載充電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特表2022-503713号公報には、電気自動車やハイブリッド自動車などの車輪の駆動力源として回転電機を備えた車両に搭載された直流電源を、車両に搭載された状態で充電する車載充電装置(オンボードチャージャー、Onboard Charger)が開示されている。この文献の図1には、外部交流電源(110)から電力の供給を受けて、車載の直流電源(140)を充電する車載充電装置の模式的なブロック図が示されている。この車載充電装置は、外部交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換する交流直流変換器(120)と、変換された直流電力に含まれる脈動成分を低減させつつ変圧して直流電源に供給する直流直流変換器(130)とを備えている。
【0003】
図8は、そのような車載充電装置の1つの形態を例示している。交流直流変換器(1)は、入力インダクタ(Li)と、フルブリッジ回路(111)とを備えて構成することができる。また、直流直流変換器(2)は、トランス(T)と、トランス(T)の一次側に配置されたフルブリッジ回路(211)と、トランス(T)の二次側に配置されたフルブリッジ回路(212)とを備えたデュアル・アクティブ・ブリッジ(DAB:Dual Active Bridge)回路として構成することができる。フルブリッジ回路(111)を備えた交流直流変換器(1)は、交流電力から変換される直流電力の力率を改善する力率改善(PFC:Power Factor Correction)回路としても機能する。また、フルブリッジ回路(111)は、交流電力の周波数の2倍高調波の脈動を抑制するようにもスイッチング制御される。直流直流変換器(2)は、デュアル・アクティブ・ブリッジ回路により直流電力の脈動成分をさらに低減させて充電電流を直流電源(3)に提供する。
【0004】
また、近年普及が著しい電気自動車では、車輪の駆動力源となる回転電機(走行モータ)以外にも、比較的高い出力(仕事量)が要求されるモータが搭載される場合がある。例えば、車室内の冷房及び暖房を行うエアコンディショナを構成する装置(コンプレッサ等)を駆動するモータ、車輪の駆動装置(走行モータ、ギヤ機構等)の潤滑、冷却を行うための流体(例えば油)を循環させるポンプを駆動するモータなどである。そして、これらのモータに電力を供給するために、走行モータに接続される直流電源(第1直流電源)の他に、第2直流電源が備えられる場合もある。図9に例示するように、第1直流電源(3)だけでなく、第2直流電源(30)も外部交流電源(4)から充電可能であることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2022-503713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8に例示した形態では、車載充電装置として3つのフルブリッジ回路を備えており、車載充電装置の全体として多くのスイッチング素子を必要とする。図9に例示した形態のように、複数の直流電源を充電する場合には、さらにスイッチング素子の数が増加する。また、近年、充電可能な二次電池の性能の向上も著しく、充電の際にも従来よりも振幅の大きい脈動を有する充電電流が許容可能となる可能性がある。従って、交流から直流への電力変換の際に生じる脈動を抑制する必要性が現在よりも低下する可能性もある。
【0007】
上記背景に鑑みて、外部交流電源からの電力により車載の直流電源を充電する車載充電装置を、システムコストを抑制して構成することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記に鑑みた車載充電装置は、第1直流電源と、前記第1直流電源とは電気的に絶縁された第2直流電源とを、外部交流電源から供給される電力によって充電する車載充電装置であって、前記外部交流電源の側の交流電力と前記第1直流電源の側の第1の直流電力との間で電力を変換すると共に、前記外部交流電源の側の交流電力と前記第2直流電源の側の第2の直流電力との間で電力を変換する交流直流変換器を備え、前記交流直流変換器は、一次側コイルと二次側第1コイルと二次側第2コイルとを備えたトランスと、前記一次側コイルに接続された一次側ブリッジ回路と、前記二次側第1コイルに接続された二次側第1ブリッジ回路と、前記二次側第2コイルに接続された二次側第2ブリッジ回路と、を備えたトリプル・アクティブ・ブリッジ回路であり、前記一次側ブリッジ回路は、双方向型スイッチング素子により構成されている。
【0009】
この構成によれば、トランスを備えて交流直流変換器が構成されるので、外部交流電源と第1直流電源との間、外部直流電源と第2直流電源との間、第1直流電源と第2直流電源との間、それぞれの絶縁を確保することができる。このように絶縁が確保された状態で、別途直流と直流との間で電力を変換する変換器を備えることなく、交流直流変換器により変換された第1の直流電力及び第2の直流電力によって、それぞれ第1直流電源及び第2直流電源が充電されるので車載充電装置を小規模に構成することができる。また、一次側ブリッジ回路が双方向型スイッチング素子により構成されているため、キャパシタを用いた電圧制御ではなく、インダクタを用いた電流制御によって一次側ブリッジ回路をスイッチング制御することができる。大きな容量のキャパシタは体格も大きくなる傾向があるため、車載充電装置の大型化を抑制し易い。また、双方向型スイッチング素子は、スイッチングの際にスイッチング素子を流れる電流をゼロにするゼロ電流スイッチング(Zero Current Switching)を伴うソフトスイッチングを実現し易い。従って、車載充電装置の損失を低減させ易く、システムコストの低減が図り易い。このように、本構成によれば、外部交流電源からの電力により車載の直流電源を充電する車載充電装置を、システムコストを抑制して構成することができる。
【0010】
車載充電装置のさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する例示的且つ非限定的な実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】車載充電装置の第1の例を示す回路ブロック図
図2】車載充電装置の第2の例を示す回路ブロック図
図3】車載充電装置の第3の例を示す回路ブロック図
図4】車載充電装置の第4の例(第3の例に回転電機の駆動制御システムを利用した車載充電装置の一例)を示す回路ブロック図
図5】車載充電装置の第5の例を示す回路ブロック図
図6】車載充電装置の第6の例(第5の例に回転電機の駆動制御システムを利用した車載充電装置の例)を示す回路ブロック図
図7】第1回転電機の駆動制御システムの模式的な回路ブロック図
図8】従来の車載充電装置の一例を示す回路ブロック図
図9】従来の車載充電装置の他の例を示す回路ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、車載充電装置の実施形態を図面も参照して説明する。図1の回路ブロック図は、車載充電装置10の第1の例を示している。車載充電装置10は、第1直流電源3及び第2直流電源30が車両に搭載された状態で、外部交流電源4から供給される電力によって第1直流電源3及び第2直流電源30を充電する装置であり、いわゆるオンボードチャージャー(Onboard Charger)と称される装置である。尚、本実施形態では、第1直流電源3と第2直流電源30とは、互いに電気的に独立した直流電源であり、互いに絶縁されている。また、車載充電装置10は、双方向型の電力変換装置であり、例えば第1直流電源3又は第2直流電源30から供給される直流電力を商用周波数の交流電力に変換して出力することも可能である。第1直流電源3と、第2直流電源30とは、定格電圧が異なる電圧であっても同じ電圧であってもよく、蓄電容量についても、同じ容量であっても異なる容量であってもよい。但し、本実施形態では、第1直流電源3が定格電圧が200から400ボルト程度のいわゆる高圧直流電源であり、第2直流電源30が定格電圧が12から50ボルト程度のいわゆる低圧直流電源である形態を例示している。
【0013】
第1直流電源3及び第2直流電源30は、例えば、リチウムイオン電池などの充電可能な二次電池(バッテリ)や、電気二重層キャパシタなどにより構成されている。例えば、第2直流電源30の定格電圧が12から24ボルト程度の場合には、第2直流電源30が鉛蓄電池であってもよい。
【0014】
図示は省略するが、例えば第1直流電源3や第2直流電源30がリチウムイオンバッテリなどの場合には、バッテリマネジメントシステム(BMS:Battery Management System)が備えられていることが多い。リチウムイオンバッテリなどの二次電池は、複数のセル(バッテリセル)により構成されている。バッテリマネジメントシステムは、(1)セルの過充電、過放電の防止、(2)セルに過電流が流れることの防止、(3)セルの温度管理、(4)充電状態(SOC:State of Charge)の算出、(5)セル電圧の均一化、等を行うバッテリの管理制御システムである。図7を参照して後述するように、バッテリ電流センサ31やバッテリ電圧センサ32を備える場合には、これらのセンサがバッテリマネジメントシステムの一部として構成されていてもよい。
【0015】
車載充電装置10と第1直流電源3とは第1メインコンタクタ11により電気的接続を断接可能に構成され、車載充電装置10と第2直流電源30とは第2メインコンタクタ14により電気的接続を断接可能に構成されている。また、車載充電装置10と外部交流電源4とは、グリッドコンタクタ13により電気的接続を断接可能に構成されている。第1メインコンタクタ11、第2メインコンタクタ14、グリッドコンタクタ13は、例えばリレーである。リレーは、メカニカル・リレーでもよいし、半導体リレー(ソリッド・ステート・リレー:Solid State Relay)でもよい。後述する他のコンタクタについても同様である。
【0016】
図1に示すように車載充電装置10は、外部交流電源4の側の交流電力と第1直流電源3の側の第1の直流電力との間で電力を変換すると共に、外部交流電源4の側の交流電力と第2直流電源30の側の第2の直流電力との間で電力を変換する交流直流変換器1を備えている。交流直流変換器1における外部交流電源4との接続部(後述する一次側ブリッジ回路111と外部交流電源4との間)には、フィルタインダクタLfとフィルタキャパシタCfとにより構成されたLCフィルタ回路1fが備えられている。尚、LCフィルタ回路1fを備えない形態を妨げるものではない。
【0017】
交流直流変換器1は、一次側コイルT1と二次側コイルT2とを備えたトランスTを備えている。二次側コイルT2は、二次側第1コイルT21と二次側第2コイルT22を備えている。トランスTの一次側には、一次側コイルT1を含む一次側回路1aが構成されている。トランスTの二次側には、二次側第1コイルT21と二次側第2コイルT22とを含む二次側回路1bが構成されている。一次側回路1aには、一次側コイルT1に接続された一次側ブリッジ回路111と、LCフィルタ回路1fとを含む。二次側回路1bには、二次側第1コイルT21に接続された二次側第1ブリッジ回路112と、二次側第2コイルT22に接続された二次側第2ブリッジ回路113と、二次側第1コイルT21と二次側第1ブリッジ回路112との間に配置された二次側第1インダクタLs1と、二次側第2コイルT22と二次側第2ブリッジ回路113との間に配置された二次側第2インダクタLs2とを含む。即ち、交流直流変換器1は、一次側コイルT1と二次側第1コイルT21と二次側第2コイルT22を備えたトランスTと、一次側コイルT1に接続された一次側ブリッジ回路111と、二次側第1コイルT21に接続された二次側第1ブリッジ回路112と、二次側第2コイルT22に接続された二次側第2ブリッジ回路113とを備えたトリプル・アクティブ・ブリッジ(TAB:Triple Active Bridge)回路である。
【0018】
二次側第1ブリッジ回路112における二次側第1コイルT21とは反対側には、第1出力キャパシタCs1が配置されている。第1出力キャパシタCs1は、第1メインコンタクタ11が閉成されている場合に、第1直流電源3に並列に接続され、交流直流変換器1(二次側第1ブリッジ回路112)からの出力電圧を平滑する平滑コンデンサとして機能する。交流直流変換器1から出力される電圧には、外部交流電源4の周波数の高調波成分の脈動が重畳されていることがあるが、第1出力キャパシタCs1は、この脈動成分の振幅を低減させる。同様に、二次側第2ブリッジ回路113における二次側第2コイルT22とは反対側には、第2出力キャパシタCs2が配置されている。第2出力キャパシタCs2は、第2メインコンタクタ14が閉成されている場合に、第2直流電源30に並列に接続され、交流直流変換器1(二次側第2ブリッジ回路113)からの出力電圧を平滑する平滑コンデンサとして機能する。
【0019】
本実施形態では、一次側ブリッジ回路111を構成するスイッチング素子11Sが、双方向型スイッチング素子(Bidirectional Switching Device)である。即ち、一次側ブリッジ回路111は双方向型スイッチング素子により構成されている。双方向型スイッチング素子は、双方向に電流を流すことのできる素子であり、素子に対して正負両極性の電圧に対して同等の耐圧を有する。このため、交流直流変換器1における一次側回路1aとして、インダクタ(フィルタインダクタLf)を用いた電流制御型の交流直流変換器を構築し易い。このインダクタは一定の電流を流すように作用する。電圧制御型の交流直流変換器では、大容量のキャパシタが必要となるが、電流制御型の交流直流変換器とすることで、大容量のキャパシタが不要となり、部品コストの低減や装置の大規模化の抑制を図ることができる。尚、フィルタキャパシタCfは小容量のキャパシタである。また、双方向型スイッチング素子は、スイッチングの際にスイッチング素子を流れる電流をゼロにするゼロ電流スイッチング(Zero Current Switching)を伴うソフトスイッチングを実現し易い。従って、車載充電装置10の損失を低減させ易く、システムコストの低減を図り易い。
【0020】
尚、二次側第1ブリッジ回路112を構成するスイッチング素子12S、二次側第2ブリッジ回路113を構成するスイッチング素子13Sは、双方向型スイッチング素子でなくてもよい。本実施形態では、スイッチング素子12S及びスイッチング素子13Sとして、FET(Field Effect Transistor)を例示している。各スイッチング素子には、負極から正極へ向かう方向(下段側から上段側へ向かう方向)を順方向として、並列にフリーホイールダイオードが接続されている。当然ながら、ボディダイオードを用いる場合や、エンハンスメントモード窒化ガリウム(E-GaN)で構成されたワイドバンドギャップ半導体のトランジスタにおける逆導通を用いる場合などでは、このような形態のフリーホイールダイオードを備えていなくてもよい。
【0021】
本実施形態では、トランスTを備えて交流直流変換器1が構成されることで、外部交流電源4と第1直流電源3との間、外部交流電源4と第2直流電源30との間、第1直流電源3と第2直流電源30との間、それぞれの絶縁を確保することができる。第1直流電源3及び第2直流電源30に対して外部交流電源4が電気的に独立していない場合、グラウンドが共通となるため、グラウンドに比較的高い漏れ電流が流れるおそれがある。第1直流電源3及び第2直流電源30の充電中には、当該車両の近傍にユーザーが存在する可能性があるため、このような漏れ電流についても考慮されていることが好ましい。また、第1直流電源3及び第2直流電源30に対して外部交流電源4が電気的に独立していない構成では、外部交流電源4に短絡故障等が生じた場合に、第1直流電源3及び第2直流電源30、さらには、第1直流電源3に接続された車載装置及び第2直流電源30に接続された車載装置に大きな短絡電流が流れるおそれもある。本実施形態の車載充電装置10は、トランスTを用いたデュアル・アクティブ・ブリッジ回路を備えて構成されていることにより、第1直流電源3及び第2直流電源30に対して外部交流電源4が絶縁される。従って、第1直流電源3及び第2直流電源30の充電中におけるユーザーの安全を確保し易く、第1直流電源3及び第2直流電源30の充電中における外部交流電源4の短絡故障が車両に与える影響も抑制できる。
【0022】
図2の回路ブロック図は、車載充電装置10の第2の例を示している。第1の例は外部交流電源4が単相交流電源であったのに対して、第3の例では外部交流電源4が複数相の交流電源である。ここでは外部交流電源4が、中性点4Nで接続され、それぞれ2π/3ずつ位相の異なる3つの交流電源により構成されている形態を例示している。3つの交流電源に対応して、グリッドコンタクタ13も3つの接点を備えて構成されている。
【0023】
第2の例の一次側回路1aは3相交流から直流へ電力を変換するために、3相交流直流変換器として構成されている。一次側ブリッジ回路111は、3相各相に対応した3本のアームを有して構成されている。尚、第2の例においても、一次側ブリッジ回路111は、双方向型スイッチング素子を用いて構成されている。各相のアームにおけるスイッチング素子11Sの接続点には、それぞれフィルタインダクタLf及びフィルタキャパシタCfが接続されてLCフィルタ回路1fが形成されている。その他の構成については、第1の例と同様であるから詳細な説明は省略する。
【0024】
図3の回路ブロック図は、車載充電装置10の第3の例を示している。第3の例の車載充電装置10は、第1の例に対して、交流直流変換器1に加えて、さらに直流直流変換器2を備えて構成されている。近年、充電可能な二次電池の性能の向上も著しく、充電の際にも従来よりも振幅の大きい脈動を有する電流が二次電池に流れ込むことが許容可能となる可能性がある。しかし、第1直流電源3及び第2直流電源30として、より安価な二次電池が用いられる場合には、当該脈動成分の振幅にも考慮することが好ましい場合がある。そこで、第3の例では、直流直流変換器2を備えることによって、第1の例に比べて車載充電装置10から第1直流電源3及び第2直流電源30に印加される充電電圧(バッテリ電圧)、第1直流電源3及び第2直流電源30に供給される充電電流(バッテリ電流)の脈動をさらに低減可能に構成されている。
【0025】
第1の例と第3の例とは、交流直流変換器1の構成は同一であるから詳細な説明は省略する。直流直流変換器2は、第1の直流電力を第3の直流電力に変換する第1チョッパ回路21と、第2の直流電力を第4の直流電力に変換する第2チョッパ回路22とを備えて構成されている。第1直流電源3は第3の直流電力により充電され、第2直流電源30は第4の直流電力により充電される。第1の例において交流直流変換器1と第1直流電源3との間に配置されて平滑キャパシタとして機能していた第1出力キャパシタCs1は、直流直流変換器2の出力キャパシタとして直流直流変換器2と第1直流電源3との間に配置されている。同様に、第2出力キャパシタCs2も、直流直流変換器2の出力キャパシタとして直流直流変換器2と第2直流電源30との間に配置されている。尚、第1の例において第1出力キャパシタCs1が配置されていた箇所(交流直流変換器1の直流側)には、交流直流変換器1と直流直流変換器2(第1チョッパ回路21)との間の直流電圧(直流リンク電圧)を平滑する第1直流リンクキャパシタ6が配置されている。同様に、第1の例において第2出力キャパシタCs2が配置されていた箇所(交流直流変換器1の直流側)には、交流直流変換器1と直流直流変換器2(第2チョッパ回路22)との間の直流電圧(直流リンク電圧)を平滑する第2直流リンクキャパシタ60が配置されている。
【0026】
第1チョッパ回路21は、第1スイッチング回路211と第1チョークコイルLe1と第1出力キャパシタCs1とを備えた降圧チョッパとして構成され、第1の直流電力を第3の直流電力に変換する。第2チョッパ回路22は、第2スイッチング回路212と第2チョークコイルLe2と第2出力キャパシタCs2とを備えた降圧チョッパとして構成され、第2の直流電力を第4の直流電力に変換する。
【0027】
第1スイッチング回路211は、上段側と下段側とにスイッチング素子21Sが直列接続された1本のアームを備えたハーフブリッジの構成を有する。当該アームの中点、即ち、上段側のスイッチング素子21Sと下段側のスイッチング素子21Sとの接続点に第1チョークコイルLe1の一端が接続されている。第1チョークコイルLe1の他端は第1出力キャパシタCs1の正極側端子に接続されている。そして、第1出力キャパシタCs1は第1メインコンタクタ11が閉成された状態で第1直流電源3に並列接続される。
【0028】
同様に、第2スイッチング回路212は、上段側と下段側とにスイッチング素子22Sが直列接続された1本のアームを備えたハーフブリッジの構成を有する。当該アームの中点、即ち、上段側のスイッチング素子22Sと下段側のスイッチング素子22Sとの接続点に第2チョークコイルLe2の一端が接続されている。第2チョークコイルLe2の他端は第2出力キャパシタCs2の正極側端子に接続されている。そして、第2出力キャパシタCs2は第2メインコンタクタ14が閉成された状態で第2直流電源30に並列接続される。
【0029】
第3の例によれば、第1の直流電力、第2の直流電力に外部交流電源4の周波数の高調波成分の脈動が残っていても、当該高調波成分を第1チョッパ回路21、第2チョッパ回路22により低減することができる。
【0030】
ところで、近年普及している電気自動車やハイブリッド自動車には、車輪の駆動力源として交流回転電機(走行モータ(Traction Motor))が搭載されている。また、従来の内燃機関を車輪の駆動力源とした自動車とは異なり、電気自動車やハイブリッド自動車では従来内燃機関の駆動力を利用して駆動していたオイルポンプやエアコンディショナのコンプレッサなどの補機についても、別の交流回転電機(補機用モータ)によって駆動されることが多い。鉄道のように架線から電力が供給される車両とは異なり、自動車においては、交流回転電機は、車両に搭載されたバッテリなどの直流電源からインバータを介して供給される交流電力により駆動される。交流回転電機は、回転磁界を生成するために複数相のコイルを備えている。また、直流と交流との間で電力を変換するインバータは、スイッチング素子を用いたブリッジ回路として構成されている。回転電機に電力を供給する直流電源が、外部交流電源から電力の供給を受けて充電される際には、車両は停車している(駐車している)ため、回転電機のコイルや、回転電機を駆動するインバータは回転電機を駆動するために用いられていない。従って、車載充電装置10に、回転電機のコイルや、回転電機を駆動するインバータを利用することで、車載充電装置10を車両に搭載することによるシステムコストの増加を抑制することができる。
【0031】
図4の回路ブロック図は、回転電機の駆動制御システムを利用した車載充電装置10の一例であり、車載充電装置10の第4の例を示している。図3図4との比較より明らかなように、第1チョッパ回路21における第1スイッチング回路211は、後述する第1インバータ5を用いて構成されている。また、第1チョッパ回路21における第1チョークコイルLe1は、後述する第1回転電機70の第1ステータコイル7を用いて構成されている。第1出力キャパシタCs1は、第1ステータコイル7の中性点7Nに接続されている。同様に、第2チョッパ回路22における第2スイッチング回路212は、後述する第2インバータ50を用いて構成されている。また、第2チョッパ回路22における第2チョークコイルLe2は、後述する第2回転電機8Mの第2ステータコイル8を用いて構成されている。第2出力キャパシタCs2は、第2ステータコイル8の中性点8Nに接続されている。
【0032】
上述したように、車両に搭載される回転電機は、車輪を駆動する走行モータ(Traction Motor)に限らず、エアコンディショナのコンプレッサを駆動するモータ、電動オイルポンプを駆動するモータ、冷却水を循環させるための電動ウォーターポンプを駆動するモータなどもある。尚、ここでは「駆動」に着目しているため「モータ」と称しているが、ここでの「モータ」と「回転電機」とは同義である。車載エアコンディショナや電動オイルポンプは、主機としての車両用駆動装置9に対して補機と称されるため、以下の説明では、車輪の駆動力源となるモータを走行モータ、車載エアコンディショナや電動オイルポンプの駆動力源となるモータを補機の駆動力源となる補機用モータと称する場合がある。上述した第1回転電機70は、走行モータに相当する。そして、第2回転電機8Mは、補機用モータに相当する。
【0033】
ここで、回転電機の駆動制御システムについて説明する。図7の模式的回路ブロック図は、第1回転電機70の駆動制御システムの一例を示している。第2回転電機8Mの駆動制御システムについては、第1回転電機70の駆動制御システムについての説明から容易に理解可能であるから、ここでは、第1回転電機70の駆動制御システムを代表例として説明し、第2回転電機8Mの駆動制御システムについては説明を省略する。
【0034】
図7に示すように、車両用駆動装置9は、ハイブリッド自動車や電気自動車等の車輪の駆動力源となる第1回転電機70と、第1回転電機70及び第1直流電源3に接続されて直流と複数相(ここでは3相)の交流との間で電力を変換する第1インバータ5とを備えている。尚、車両用駆動装置9が、第1回転電機70に加えて不図示の内燃機関などの他の駆動力源も備えていることを妨げるものではない。
【0035】
図7に示すように、車両用駆動装置9は、車両の駆動力源となる第1回転電機70を制御対象とする制御装置80を備え、制御装置80は、電流フィードバック制御を行うことによって第1回転電機70を駆動制御する。駆動対象の第1回転電機70は、ステータコアに複数相(Nを任意の自然数としてN相、本実施形態ではN=3の3相の形態を例示する)の第1ステータコイル7が配置されたステータと、ロータコアに永久磁石が配置されたロータとを有する埋め込み永久磁石型回転電機(IPMSM : Interior Permanent Magnet Synchronous Motor)である。このような構成は公知であり、本実施形態では、ステータコア、ステータ、ロータコア、ロータ、永久磁石等の図示は省略している。本実施形態では、3相の第1ステータコイル7が中性点7Nで短絡されたY型(スター型)の形態を例示している。しかし、第1回転電機70は、例えば3相の第1ステータコイル7を2組備え、6相の交流により駆動される形態であってもよい。尚、第1回転電機70は、電動機としても発電機としても機能することができる。第1回転電機70が電動機として機能するとき、第1回転電機70は力行状態であり、第1回転電機70が発電機として機能するとき、第1回転電機70は回生状態である。
【0036】
第1インバータ5は、交流の第1回転電機70及び第1直流電源3に接続されて、複数相の交流と直流との間で電力を変換する。第1インバータ5の一対の直流側端子は、第1直流電源3の正極端子及び負極端子に接続されている。また、第1インバータ5の複数相の交流側端子は、複数相の第1ステータコイル7のそれぞれに接続されている。本実施形態では、第1インバータ5が、複数相のアームとして、U相アーム、V相アーム、W相アームを備えている。それぞれのアームは、正極側に配置された上段側スイッチング素子5Uと、負極側に配置された下段側スイッチング素子5Lとが直列接続されて形成されている。それぞれのアームの中点、即ち上段側スイッチング素子5Uと下段側スイッチング素子5Lとの接続点がそれぞれの第1ステータコイル7に接続されている。具体的には、U相アームの中点とU相コイル7uとが接続され、V相アームの中点とV相コイル7vとが接続され、W相アームの中点とW相コイル7wとが接続される。
【0037】
第1インバータ5の直流側には、正極と負極との間の電圧(直流リンク電圧)を平滑する平滑キャパシタ(第1直流リンクキャパシタ6)が備えられている。また、第1インバータ5の直流側には、直流リンク電圧を検出する電圧センサ(直流リンク電圧センサ61)も備えられている。
【0038】
第1インバータ5は、複数のスイッチング素子5Sを有して構成されている。本実施形態では、スイッチング素子5SとしてFETが用いられる形態を例示している。FETの他、スイッチング素子5Sには、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が用いられていてもよい。
【0039】
第1インバータ5は、制御装置80により制御される。制御装置80は、マイクロコンピュータ等の論理回路を中核部材として構築されている。例えば、制御装置80は、上位の制御装置の1つである車両制御装置90等の他の制御装置等から要求信号として提供される第1回転電機70の目標トルク(トルク指令)に基づいて、電流フィードバック制御を行って、第1インバータ5を介して第1回転電機70を駆動する。尚、マイクロコンピュータ等の論理回路素子の動作電圧は一般的に5ボルト以下である。本実施形態では、簡略化のため、図示を省略しているが、当該論理回路素子で生成された制御信号はドライブ回路を介して第1インバータ5に伝達される。或いは、制御装置80にドライブ回路が含まれると考えてもよい。
【0040】
第1回転電機70の各相の第1ステータコイル7を流れる実電流は電流センサ(モータ電流センサ81)により検出され、制御装置80はその検出結果を取得する。また、第1回転電機70のロータの各時点での磁極位置(電気角)やロータの回転速度(角速度)は、例えばレゾルバ、誘導性位置センサ(Inductive Position Sensor)などの回転センサ82により検出され、制御装置80はその検出結果を取得する。制御装置80は、モータ電流センサ81及び回転センサ82の検出結果を用いて、電流フィードバック制御を実行する。制御装置80は、電流フィードバック制御のために種々の機能部を有して構成されており、各機能部は、マイクロコンピュータ等のハードウエアとソフトウエア(プログラム)との協働により実現される。
【0041】
上述したように、第1インバータ5を介して第1直流電源3に接続される第1回転電機70は、第1直流電源3から供給される電力により電動機として機能すると共に、発電機として機能して第1直流電源3を充電することもできる。例えば、ハイブリッド自動車では内燃機関などの動力により、第1回転電機70に機械エネルギーを供給して第1回転電機70に発電させることも可能であるが、発電の機会が少なく第1直流電源3を充分に充電できない場合がある。また、駆動力源として第1回転電機70しか搭載されていない電気自動車では、慣性走行等における車輪からの機械エネルギーによる発電に留まり、第1直流電源3を充分に充電できないことが多い。また、ハイブリッド自動車においても、第1回転電機70に発電させるよりも外部から電力を供給する方が、エネルギー効率がよい場合がある。このため、第1直流電源3が車両に搭載された状態で、第1直流電源3を外部電源によって充電可能に構成されていると好ましい。
【0042】
第1直流電源3を外部交流電源4によって充電する場合、車両には本実施形態のように車載充電装置10が搭載されると好適である。第1の例から第3の例を示して上述したように、電力変換回路を備えた車載充電装置10は、回路規模も大きくなる傾向があるが、車輪を駆動する機会に比べて、第1直流電源3を充電する機会は少ない。外部交流電源4によって第1直流電源3を充電する際には、車両は停止(駐車)している。第4の例では、第1インバータ5や第1ステータコイル7を利用して、車載充電装置10が構成されている。
【0043】
上述したように、本実施形態の車載充電装置10は、第1直流電源3及び第2直流電源30を充電可能に構成されている。また、第1回転電機70及び第1インバータ5は、トランスTによって交流直流変換器1の一次側回路1aとは絶縁されている。同様に、第2回転電機8M及び第2インバータ50は、トランスTによって交流直流変換器1の一次側回路1aとは絶縁されている。一方、第1回転電機70及び第1インバータ5は、第1チョッパ回路21に接続される第1直流電源3に接続され、第2回転電機8M及び第2インバータ50は、第2チョッパ回路22に接続される第2直流電源30に接続されている。換言すれば、中性点7Nで互いに接続された複数相の第1ステータコイル7を備えた第1回転電機70に、直流と交流との間で電力を変換する第1インバータ5を介して第1直流電源3が接続されている。また、中性点8Nで互いに接続された複数相の第2ステータコイル8を備えた第2回転電機8Mに、直流と交流との間で電力を変換する第2インバータ50を介して第2直流電源30が接続されている。
【0044】
従って、第4の例では、第1インバータ5及び第1ステータコイル7を利用して第1チョッパ回路21が構成され、第2インバータ50及び第2ステータコイル8を利用して第2チョッパ回路22が構成されている。具体的には、第1チョッパ回路21は、第1インバータ5を用いて構成された第1スイッチング回路と、複数相の第1ステータコイル7を用いて構成された第1チョークコイルと、複数相の第1ステータコイル7の中性点7Nに接続された第1出力キャパシタCs1とを備えて構成されている。また、前記第2チョッパ回路22は、第2インバータ50を用いて構成された第2スイッチング回路と、複数相の第2ステータコイル8を用いて構成された第2チョークコイルと、複数相の第2ステータコイル8の中性点8Nに接続された第2出力キャパシタCs2とを備えて構成されている。
【0045】
第1インバータ5は、上段側スイッチング素子5Uと下段側スイッチング素子5Lとが直列接続された1相分のアームを複数相の交流の相の数に応じた本数(ここでは3相に対応して3本)、並列に備えて構成されている。同様に、第2インバータ50は、上段側スイッチング素子50Uと下段側スイッチング素子50Lとが直列接続された1相分のアームを複数相の交流の相の数に応じた本数(ここでは3相に対応して3本)、並列に備えて構成されている。第1インバータ5が第1チョッパ回路21のスイッチング回路として機能する際には、複数相のアームの全ての上段側スイッチング素子5Uが同時に同じようにオンオフ制御され、複数相のアームの全ての下段側スイッチング素子5Lが同時に同じようにオンオフ制御される。従って、複数本のアームを有した第1インバータ5は、見かけ上、上段側スイッチング素子5Uと下段側スイッチング素子5Lとが直列接続された1本のアームにより構成された第1スイッチング回路211として機能する。第2インバータ50も同様に、見かけ上、上段側スイッチング素子50Uと下段側スイッチング素子50Lとが直列接続された1本のアームにより構成された第2スイッチング回路212として機能する。
【0046】
複数相の各相の第1ステータコイル7及び第2ステータコイル8は、それぞれ一端がそれぞれの相に対応するアームの中点に接続され、他端がそれぞれの中性点7N及び中性点8Nに接続されている。上述したように、複数相の各アームは同様にスイッチング制御されるため、各相の第1ステータコイル7には、アームと中性点7Nとの間で、同じように電流が流れ、各相の第2ステータコイル8には、アームと中性点8Nとの間で、同じように電流が流れる。従って、複数相の第1ステータコイル7を1つのコイルと見なすことができ、第1ステータコイル7は、チョッパ回路において一端側がスイッチング回路の中点に接続され、他端側が出力キャパシタCsに接続された第1チョークコイルLe1として機能する。複数相の第2ステータコイル8も同様に、1つのコイルと見なすことができ、第2チョークコイルLe2として機能する。
【0047】
図4に示すように、第4の例の車載充電装置10は、第1メインコンタクタ11と、第2メインコンタクタ14と、グリッドコンタクタ13とに加えて、回転電機の制御機能と直流電源の充電機能とを切り替えるための第1機能切替コンタクタ12と、第2機能切替コンタクタ15とも備えている。これらのコンタクタは、制御装置80、或いは制御装置80及び車両制御装置90、或いはこれらに加えて第2回転電機8Mを制御する不図示の制御装置によって制御される。尚、第1の例から第3の例のコンタクタについても、同様に、車両制御装置90や、車載充電装置10を制御する不図示の制御装置によって制御される。図7を参照して上述したように、制御装置80及び車両制御装置90も回転電機の駆動制御システムに含まれており、制御装置80、車両制御装置90、並びに第2回転電機8Mを制御する不図示の制御装置も回転電機の駆動制御と車載充電装置10による充電制御とに共用されるということができる。また、図3図4図7から明らかなように、第1直流リンクキャパシタ6及び第2直流リンクキャパシタ60も、回転電機の駆動制御と車載充電装置10による充電制御とに共用されるということができる。
【0048】
図7を参照して上述したように、第1メインコンタクタ11は、第1直流電源3と、第1インバータ5との電気的接続を断接可能に設置されている。第1インバータ5及び第1回転電機70の第1ステータコイル7が車載充電装置10としても用いられる場合には、第1直流電源3に対する接続形態が切り替えられる。このため、第1メインコンタクタ11は、第1メインコンタクタ第1接点11aと、第1メインコンタクタ第2接点11bとを有している。第1インバータ5が車両用駆動装置9として機能する場合には、第1メインコンタクタ第1接点11aが閉成され、第1メインコンタクタ第2接点11bが開放される。第1インバータ5が車載充電装置10として機能する場合には、第1メインコンタクタ第2接点11bが閉成され、第1メインコンタクタ第1接点11aが開放される。第1直流電源3が充電されることなく、車両が駐車している場合には、第1メインコンタクタ第1接点11a、第1メインコンタクタ第2接点11bの双方を開放状態とすることで、第1メインコンタクタ11を開放状態とすることができる。
【0049】
第1機能切替コンタクタ12は、閉状態で直流直流変換器2としての第1チョッパ回路21の出力と第1直流電源3とを電気的に接続する。具体的には、第1機能切替コンタクタ12は、閉状態で中性点7Nと第1直流電源3の正極とを接続すると共に、第1出力キャパシタCs1の正極側端子と第1直流電源3の正極とを接続する。また、上述したように、グリッドコンタクタ13は、交流直流変換器1と外部交流電源4との電気的接続を断接する。
【0050】
第1インバータ5が第1回転電機70の駆動制御に用いられる場合には、第1メインコンタクタ第1接点11aが閉成されると共に、第1機能切替コンタクタ12及びグリッドコンタクタ13が開放された状態に制御され、第1インバータ5を介して第1直流電源3と第1回転電機70との間で電力が変換される。第1インバータ5が車載充電装置10として用いられる場合には、第1メインコンタクタ第2接点11bが閉成されると共に、第1機能切替コンタクタ12及びグリッドコンタクタ13が閉成された状態に制御され、外部交流電源4により第1直流電源3が充電される。
【0051】
図4に示すように、第2メインコンタクタ14は、第2直流電源30と、第2インバータ50との電気的接続を断接可能に設置されている。第2インバータ50及び第2回転電機8Mの第2ステータコイル8が車載充電装置10としても用いられる場合には、第2直流電源30に対する接続形態が切り替えられる。このため、第2メインコンタクタ14は、第2メインコンタクタ第1接点14aと、第2メインコンタクタ第2接点14bとを有している。第2インバータ50が車両用駆動装置9として機能する場合には、第2メインコンタクタ第1接点14aが閉成され、第2メインコンタクタ第2接点14bが開放される。第2インバータ50が車載充電装置10として機能する場合には、第2メインコンタクタ第2接点14bが閉成され、第2メインコンタクタ第1接点14aが開放される。第2直流電源30が充電されることなく、例えば車両のメインスイッチ(イグニッションスイッチ)がオフ状態とされて補機も停止しているような場合には、第2メインコンタクタ第1接点14a、第2メインコンタクタ第2接点14bの双方を開放状態とすることで、第2メインコンタクタ14を開放状態とすることができる。
【0052】
第2機能切替コンタクタ15は、閉状態で直流直流変換器2としての第2チョッパ回路22の出力と第2直流電源30とを電気的に接続する。具体的には、第2機能切替コンタクタ15は、閉状態で中性点8Nと第2直流電源30の正極とを接続すると共に、第2出力キャパシタCs2の正極側端子と第2直流電源30の正極とを接続する。また、上述したように、グリッドコンタクタ13は、交流直流変換器1と外部交流電源4との電気的接続を断接する。
【0053】
第2インバータ50が第2回転電機8Mの駆動制御に用いられる場合には、第2メインコンタクタ第1接点14aが閉成されると共に、第2機能切替コンタクタ15及びグリッドコンタクタ13が開放された状態に制御され、第2インバータ50を介して第2直流電源30と第2回転電機8Mとの間で電力が変換される。第2インバータ50が車載充電装置10として用いられる場合には、第2メインコンタクタ第2接点14bが閉成されると共に、第2機能切替コンタクタ15及びグリッドコンタクタ13が閉成された状態に制御され、外部交流電源4により第2直流電源30が充電される。
【0054】
このように、インバータ及びステータコイルへの接続形態を変更するだけで、回転電機を駆動制御する機能と、直流電源を外部交流電源4により充電する機能とを切り替え可能な回路を実現することができる。即ち、回転電機に接続される直流電源を、当該回転電機が備えるコイル、及び当該回転電機を駆動制御するインバータを兼用して充電することができる。これらが兼用されることで、車載充電装置10を小規模に構成することができる。
【0055】
尚、第2直流電源30については、第1直流電源3或いは第1回転電機70から供給される電力によって充電されることも可能である。例えば、外部交流電源4が接続されず、第1直流電源3が充電されていない状態(グリッドコンタクタ13及び第1機能切替コンタクタ12が開放状態)において、第1直流電源3に対しては第1メインコンタクタ第1接点11aが閉成され、第2直流電源30に対しては、第2メインコンタクタ第2接点14b及び第2機能切替コンタクタ15が閉成される。この状態で第1回転電機70は、第1直流電源3から供給される電力で力行運転する、或いは、車輪又は内燃機関等を備えている場合には当該内燃機関から伝達される動力により発電して回生運転して第1直流電源3に電力を供給する。
【0056】
交流直流変換器1の二次側第1ブリッジ回路112は第1直流リンクキャパシタ6、第1直流電源3及び第1インバータ5の直流側と接続されている。第1直流リンクキャパシタ6、第1直流電源3及び第1インバータ5からの電力は、二次側第1ブリッジ回路112が接続される二次側第1コイルT21、及び一次側コイルT1を介して二次側第2コイルT22に伝送可能である。二次側第2コイルT22は、二次側第2ブリッジ回路113に接続されており、二次側第2ブリッジ回路113は第2直流リンクキャパシタ60、及び第2チョッパ回路22に接続されている。二次側第2ブリッジ回路113から供給された電力は、上述したように第2チョッパ回路22を介して第2直流電源30に供給される。
【0057】
第2回転電機8Mがエアコンディショナ用の補機モータである場合、エアコンディショナが使用されていない状態であれば、上記のように、外部交流電源4を接続することなく、第1直流電源3の電力(第1直流電源3から供給される電力、及び第1直流電源3に回生される電力の双方を含む)により、第2直流電源30を充電することができる。ここでは、エアコンディショナ用の補機モータを例示したが、当然ながら第2回転電機8Mが他の補機モータである場合も同様である。
【0058】
また、ここでは図4に例示した車載充電装置10において、第1直流電源3の電力により、第2直流電源30を充電する形態について説明したが、回転電機を用いない図1から図3に示す車載充電装置10においても、外部交流電源4を接続することなく、第1直流電源3の電力(この場合は、第1直流電源3から供給される電力)により、第2直流電源30を充電することができる。コンタクタの開閉状態、電力の流れについては、図4を参照して上述した通りであるから、詳細な説明は省略する。
【0059】
また、本実施形態では、第1直流電源3が高圧直流電源であり、第2直流電源30が低圧直流電源である形態を例としているため、第1直流電源3の電力により第2直流電源30を充電する形態を例示した。しかし、上述したように、第1直流電源3と、第2直流電源30とは、定格電圧が同じ電圧であってもよく、同じ蓄電容量であってもよい。また、第1回転電機70及び第2回転電機8Mが、例えば共に走行用モータであったり(2モータの自動車、オープン巻線型でインバータを2組備えた回転電機など)、共に補機用モータであったりすることを妨げるものでもない。従って、第1直流電源3の電力により第2直流電源30を充電する形態に限らず、第2直流電源30の電力により第1直流電源3を充電する形態であってもよい。当然ながら、第1直流電源3の電力により第2直流電源30を充電する場合と、第2直流電源30の電力により第1直流電源3を充電する場合とに、切替可能であってもよい。
【0060】
上述したように、第2直流電源30は、第1直流電源3或いは第1回転電機70から供給される電力によって充電されることも可能であり、第1直流電源3は、第2直流電源30或いは第2回転電機8Mから供給される電力によって充電されることも可能である。従って、車載充電装置10は、図3に示す第3の例が図5に示す第5の例のように構成されてもよく、図4に示す第4の例が図6に示す第6の例のように構成されてもよい。
【0061】
図5に示す第5の例の車載充電装置10は、第1の例の車載充電装置10に対して、スイッチング回路(第1スイッチング回路211)とチョークコイル(第1チョークコイルLe1)と出力キャパシタ(第1出力キャパシタCs1)とを備え、第1の直流電力を第3の直流電力に変換するチョッパ回路(第1チョッパ回路21)をさらに備えている。第1の例において第1出力キャパシタCs1が配置されていた箇所には、第3の例と同様に第1直流リンクキャパシタ6が配置されている。第5の例の車載充電装置10は、第3の例の車載充電装置10との関係では第2チョッパ回路22を備えることなく構成されているということができる。そして、第5の例の車載充電装置10は、第1直流電源3を第3の直流電力により充電し、第2直流電源30を第2の直流電力により充電する。
【0062】
チョッパ回路(例えば第1チョッパ回路21)を有した直流直流変換器2を備えることによって、第1の直流電力に比べて第3の直流電力における脈動成分を抑制することができる。また、第3の直流電力と、第2の直流電力とは、共にトランスTの二次側の電力である。一次側コイルT1と二次側第1コイルT21とが電磁結合し、二次側第1コイルT21に接続された第1チョッパ回路21における第3の直流電力の脈動が抑制されることで、一次側コイルT1と電磁結合する二次側第2コイルT22に現れる直流電力(第2の直流電力)の脈動も抑制される。
【0063】
図5を参照して上述した第5の例の車載充電装置10では、第1直流電源3が、交流直流変換器1及び直流直流変換器2を介して、交流電力から2段階の電力変換がされた直流電力により充電され、第2直流電源30が、交流直流変換器1のみを介して、交流電力から1段階の電力変換がされた直流電力により充電される形態を例示した。しかし、図示は省略するが、第1直流電源3ではなく、第2直流電源30が、交流直流変換器1及び直流直流変換器2を介して、交流電力から2段階の電力変換がされた直流電力により充電され、第1直流電源3が、交流直流変換器1のみを介して、交流電力から1段階の電力変換がされた直流電力により充電される形態であってもよい。
【0064】
即ち、車載充電装置10は、第1の例の形態に対して、スイッチング回路(第2スイッチング回路212)とチョークコイル(第2チョークコイルLe2)と出力キャパシタ(第2出力キャパシタCs2)とを備え、第2の直流電力を第4の直流電力に変換するチョッパ回路(第2チョッパ回路22)をさらに備えていてもよい。第1の例において第2出力キャパシタCs2が配置されていた箇所には、第3の例と同様に第2直流リンクキャパシタ60が配置される。第3の例の形態との関係では第1チョッパ回路21を備えることなく構成されているということができる。この場合、車載充電装置10は、第1直流電源3を第1の直流電力により充電し、第2直流電源30を第4の直流電力により充電する。
【0065】
このように第5の例の車載充電装置10は、スイッチング回路(第1スイッチング回路211又は第2スイッチング回路212)とチョークコイル(第1チョークコイルLe1又は第2チョークコイルLe2)と出力キャパシタ(第1出力キャパシタCs1又は第2出力キャパシタCs2)とを備え、第1の直流電力を第3の直流電力に変換する、又は、第2の直流電力を第4の直流電力に変換するチョッパ回路(第1チョッパ回路21又は第2チョッパ回路22)を備える。そして、チョッパ回路(第1チョッパ回路21)が第1の直流電力を第3の直流電力に変換する場合は、第1直流電源3を第3の直流電力により充電し、第2直流電源30を第2の直流電力により充電する。チョッパ回路(第2チョッパ回路22)が第2の直流電力を第4の直流電力に変換する場合は、第1直流電源3を第1の直流電力により充電し、第2直流電源30を第4の直流電力により充電する。
【0066】
交流直流変換器1と第1直流電源3との間にチョッパ回路(第1チョッパ回路21)を有した直流直流変換器2を備えることによって、第1の直流電力に比べて第3の直流電力における脈動成分を抑制することができる。第3の直流電力と、第2の直流電力とは、共にトランスTの二次側の電力である。一次側コイルT1と二次側第1コイルT21とが電磁結合し、二次側第1コイルT21に接続された第1チョッパ回路21における第3の直流電力の脈動が抑制されることで、一次側コイルT1と電磁結合する二次側第2コイルT22に現れる直流電力(第2の直流電力)の脈動も抑制される。同様に、交流直流変換器1と第2直流電源30との間にチョッパ回路(第2チョッパ回路22)を有した直流直流変換器2を備えることによって、第2の直流電力に比べて第4の直流電力における脈動成分を抑制することができる。第4の直流電力と、第1の直流電力とは、共にトランスTの二次側の電力である。一次側コイルT1と二次側第1コイルT21とが電磁結合し、二次側第2コイルT22に接続された第2チョッパ回路22における第4の直流電力の脈動が抑制されることで、一次側コイルT1と電磁結合する二次側第1コイルT21に現れる直流電力(第1の直流電力)の脈動も抑制される。即ち、二次側第1ブリッジ回路112と第1直流電源3との間、二次側第2ブリッジ回路113と第2直流電源30との間の、何れか一方に、チョッパ回路を有する直流直流変換器2を備えることによって、第1直流電源3及び第2直流電源30の双方に供給される充電のための直流電力の脈動を適切に抑制することができる。
【0067】
第3の例と第4の例との関係と同様に、第5の例においても、例えば図6を参照して後述する第6の例の車載充電装置10のように、チョッパ回路を構成するスイッチング回路及びチョークコイルに、回転電機のステータコイル及び回転電機を駆動するインバータを利用することができる。即ち、中性点(7N又は8N)で互いに接続された複数相のステータコイル(第1ステータコイル7又は第2ステータコイル8)を備えた回転電機(第1回転電機70又は第2回転電機8M)に、直流と交流との間で電力を変換するインバータ(第1インバータ5又は第2インバータ50)を介して、第1直流電源3及び第2直流電源30の内、チョッパ回路(第1チョッパ回路21又は第2チョッパ回路22)を介して充電される直流電源が接続される場合に、チョッパ回路(第1チョッパ回路21又は第2チョッパ回路22)は、インバータ(第1インバータ5又は第2インバータ50)を用いて構成されたスイッチング回路(第1スイッチング回路211又は第2スイッチング回路212)と、複数相のステータコイル(第1ステータコイル7又は第2ステータコイル8)を用いて構成されたチョークコイル(第1チョークコイルLe1又は第2チョークコイルLe2)と、複数相のステータコイル(第1ステータコイル7又は第2ステータコイル8)の中性点(7N又は8N)に接続された出力キャパシタ(第1出力キャパシタCs1又は第2出力キャパシタCs2)とを備えて構成されることができる。
【0068】
図6は、車載充電装置10の第6の例を示している。第1チョッパ回路21を介して充電される第1直流電源3が、中性点7Nで互いに接続された複数相の第1ステータコイル7を備えた第1回転電機70に直流と交流との間で電力を変換する第1インバータ5を介して接続される場合に、第1チョッパ回路21が、第1インバータ5を用いて構成された第1スイッチング回路211と、複数相の第1ステータコイル7を用いて構成された第1チョークコイルLe1と、複数相の第1ステータコイル7の中性点7Nに接続された第1出力キャパシタCs1とを備えて構成されている形態を例示している。機能の切り替え方法などの詳細については、上記において図4及び図7を参照して第4の例の車載充電装置10について説明した通りであるので、詳細な説明は省略する。
【0069】
図示は省略するが、同様に、第2チョッパ回路22を介して充電される第1直流電源3が、中性点8Nで互いに接続された複数相の第2ステータコイル8を備えた第2回転電機8Mに、直流と交流との間で電力を変換する第2インバータ50を介して、接続される場合に、第2チョッパ回路22が、第2インバータ50を用いて構成された第2スイッチング回路212と、複数相の第2ステータコイル8を用いて構成された第2チョークコイルLe2と、複数相の第2ステータコイル8の中性点8Nに接続された第2出力キャパシタCs2とを備えて構成されていてもよい。
【0070】
即ち、回転電機に接続される直流電源を、当該回転電機が備えるコイル、及び当該回転電機を駆動制御するインバータを兼用して充電することができる。これらが兼用されることで、車載充電装置10を小規模に構成することができる。
【0071】
ところで、近年、災害時等において電動車両やハイブリッド車両の直流電源を非常用電源として用いることが提唱されている。第1チョッパ回路21及び第2チョッパ回路22は、双方向チョッパ回路であり、交流直流変換器1から第1直流電源3及び第2直流電源30に向かっては降圧コンバータとして機能すると共に、第1直流電源3及び第2直流電源30から交流直流変換器1(但しこの場合は、直流交流変換を行う)に向かっては昇圧コンバータとして機能する。そして、図1等に示すように、交流直流変換器1がフルブリッジ回路を備えることにより、交流直流変換器1を交流から直流に変換する機能に留まらず、直流から交流に変換する機能を持つ双方向の電力変換器として機能させることができる。即ち、交流直流変換器1により直流交流変換を行って、商用交流電力を交流直流変換器1から出力することができ、第1直流電源3及び第2直流電源30を非常用電源として利用することができる。
【0072】
車載充電装置10が、外部交流電源4により第1直流電源3及び第2直流電源30を充電する場合、交流直流変換器1はトリプル・アクティブ・ブリッジ交流直流昇圧変換器(AC/DC TAB Boost Converter)として機能し、直流直流変換器2は直流直流降圧変換器(DC/DC Buck Converter)として機能する。車載充電装置10が、第1直流電源3及び第2直流電源30が蓄えた電力により交流電力を出力する非常用の交流電源として機能する場合、直流直流変換器2は直流直流昇圧変換器(DC/DC Boost Converter)として機能し、交流直流変換器1はトリプル・アクティブ・ブリッジ直流交流降圧変換器(DC/AC TAB Buck Converter)として機能する。
【0073】
以上種々の態様を例示して説明したように、本実施形態によれば、外部交流電源からの電力により車載の直流電源を充電する車載充電装置を、システムコストを抑制して構成することができる。
【符号の説明】
【0074】
1:交流直流変換器、3:第1直流電源、4:外部交流電源、4N:中性点、5:第1インバータ(インバータ)、7:第1ステータコイル(ステータコイル)、7N:中性点、8:第2ステータコイル(ステータコイル)、8M:第2回転電機(回転電機)、8N:中性点、10:車載充電装置、21:第1チョッパ回路(チョッパ回路)、22:第2チョッパ回路(チョッパ回路)、30:第2直流電源(直流電源)、50:第2インバータ(インバータ)、70:第1回転電機(回転電機)、111:一次側ブリッジ回路、112:二次側第1ブリッジ回路、113:二次側第2ブリッジ回路、211:第1スイッチング回路(スイッチング回路)、212:第2スイッチング回路(スイッチング回路)、Cs1:第1出力キャパシタ(出力キャパシタ)、Cs2:第2出力キャパシタ(出力キャパシタ)、Le1:第1チョークコイル(チョークコイル)、Le2:第2チョークコイル(チョークコイル)、T:トランス、T1:一次側コイル、T21:二次側第1コイル、T22:二次側第2コイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9