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  • 特開-構造体の製造方法及び接着フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018393
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】構造体の製造方法及び接着フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 5/04 20060101AFI20250130BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20250130BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20250130BHJP
【FI】
C09J5/04
C09J11/06
C09J7/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122065
(22)【出願日】2023-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(74)【代理人】
【識別番号】100185845
【弁理士】
【氏名又は名称】穂谷野 聡
(72)【発明者】
【氏名】松原 真
(72)【発明者】
【氏名】林 直樹
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA11
4J004AA17
4J004AB05
4J004FA08
4J040EC001
4J040HD30
4J040HD43
4J040JA13
4J040JB02
4J040KA14
4J040PA25
(57)【要約】
【課題】2液硬化型接着剤を用いて優れた接着強度を得ることができる構造体の製造方法及び接着フィルムを提供する。
【解決手段】第1剤と第2剤とを含む2液硬化型接着剤を用いる構造体の製造方法において、第1の部品と第2の部品との間に、第1剤を含有し、厚みが1μm以上5μm未満である第1の樹脂層と、第2剤を含有し、厚みが1μm以上5μm未満である第2の樹脂層とを交互に2層以上配置する配置工程と、第1の部品と第2の部品とを押圧する押圧工程とを有する。これにより、押圧時に第1の部品及び第2の部品の近傍で第1剤と第2剤との反応が開始されるため、優れた接着強度を得ることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1剤と第2剤とを含む2液硬化型接着剤を用いる構造体の製造方法において、
第1の部品と第2の部品との間に、第1剤を含有し、厚みが1μm以上5μm未満である第1の樹脂層と、第2剤を含有し、厚みが1μm以上5μm未満である第2の樹脂層とを交互に2層以上配置する配置工程と、
前記第1の部品と前記第2の部品とを押圧する押圧工程と
を有する構造体の製造方法。
【請求項2】
前記配置工程では、前記第1の樹脂層と前記第2の樹脂層とを交互に2層以上積層した接着フィルムを作製した後、前記第1の部品と第2の部品との間に、前記接着フィルムを配置する請求項1記載の構造体の製造方法。
【請求項3】
前記配置工程では、前記第1の部品及び前記第2の部品の少なくとも一方に前記第1の樹脂層又は前記第2の樹脂層を貼付した後、前記第1の樹脂層と前記第2の樹脂層とが交互に2層以上となるように配置する請求項1記載の構造体の製造方法。
【請求項4】
前記配置工程では、前記第1の樹脂層と前記第2の樹脂層とを交互に3層以上配置する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の構造体の製造方法。
【請求項5】
前記第1剤が、アルミニウムキレート化合物と反応してアルミキレート-シラノール活性種を発生させるシラン系化合物であり、
前記第2剤が、シラン系化合物と反応してアルミキレート-シラノール活性種を発生させるアルミニウムキレート化合物であり、
前記第1の樹脂層が、カチオン重合性化合物をさらに含有し、
前記第2の樹脂層が、カチオン重合性化合物をさらに含有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の構造体の製造方法。
【請求項6】
前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層の少なくとも1層が、導電粒子を含有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の構造体の製造方法。
【請求項7】
前記配置工程では、40℃以下の温度で前記第1の樹脂層と前記第2の樹脂層とを配置する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の構造体の製造方法。
【請求項8】
前記押圧工程では、40℃以下の温度で前記第1の部品と前記第2の部品とを押圧する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の構造体の製造方法。
【請求項9】
前記配置工程の前に、前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層をそれぞれ常温で保管する保管工程をさらに有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の構造体の製造方法。
【請求項10】
前記アルミニウムキレート化合物が、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)を含み、
前記シラン系化合物が、トリス(tert-ペントキシ)シラノール、トリス(tert?ブトキシ)シラノールを含む請求項5記載の構造体の製造方法。
【請求項11】
第1剤と第2剤とを含む2液硬化型接着剤を用いる接着フィルムにおいて、
第1剤を含有し、厚みが1μm以上5μm未満である接着フィルム。
【請求項12】
前記第1剤が、アルミニウムキレート化合物と反応してアルミキレート-シラノール活性種を発生させるシラン系化合物であり、
カチオン重合性化合物をさらに含有する請求項11記載の接着フィルム。
【請求項13】
第1剤と第2剤とを含む2液硬化型接着剤を用いる接着フィルムにおいて、
第2剤を含有し、厚みが1μm以上5μm未満である接着フィルム。
【請求項14】
前記第2剤が、シラン系化合物と反応してアルミキレート-シラノール活性種を発生させるアルミニウムキレート化合物であり、
カチオン重合性化合物をさらに含有する請求項13記載の接着フィルム。
【請求項15】
前記請求項11又は12記載の接着フィルムの個片が設けられている部材。
【請求項16】
前記請求項13又は14記載の接着フィルムの個片が設けられている部材。
【請求項17】
前記請求項11又は12記載の接着フィルムの個片、及び前記請求項13又は14記載の接着フィルムの個片が分離して設けられている部材。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、2液硬化型接着剤を用いて第1の部品と第2の部品とを接着させる構造体の製造方法及び接着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子部品の実装において、対向する電子部品間に接着フィルムを挟持し、ツールで加熱押圧することで硬化させるものがある(例えば、特許文献1を参照。)。このような実装方法は、電子部品が小型化したり薄くなったりすることで熱によるダメージが忌避され易いため、低温化が強く望まれている。
【0003】
低温で接着する1液硬化型接着剤を用いる場合、例えば冷凍庫での保管が必要となり、取り扱いが難しい。一方、2液硬化型接着剤は、2つの液剤を混ぜなければ反応が起こらないため、低温で接着する特性を持ちつつ、長期間の保管が可能である。
【0004】
しかしながら、2液硬化型接着剤は、液状のまま使用すると、シリンジ等で接着箇所に設けることになるため、面状の領域に使用する場合、塗布や塗工が必要になる。また、2液硬化型接着剤は、2つの液剤を精確な配合比で均一に混ぜ合わせなければ、安定した性能を出すことができず、優れた接着強度を得ることが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-056274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本技術は、前述した課題を解決するものであり、2液硬化型接着剤を用いて優れた接着強度を得ることができる構造体の製造方法及び接着フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題につき鋭意検討した結果、下記技術によって上記課題を解決できることを見出し、本技術を完成するに至った。
【0008】
[1]
第1剤と第2剤とを含む2液硬化型接着剤を用いる構造体の製造方法において、
第1の部品と第2の部品との間に、第1剤を含有し、厚みが1μm以上5μm未満である第1の樹脂層と、第2剤を含有し、厚みが1μm以上5μm未満である第2の樹脂層とを交互に2層以上配置する配置工程と、前記第1の部品と前記第2の部品とを押圧する押圧工程とを有する構造体の製造方法。
[2]
前記配置工程では、前記第1の樹脂層と前記第2の樹脂層とを交互に2層以上積層した接着フィルムを作製した後、前記第1の部品と第2の部品との間に、前記接着フィルムを配置する[1]記載の構造体の製造方法。
[3]
前記配置工程では、前記第1の部品及び前記第2の部品の少なくとも一方に前記第1の樹脂層又は前記第2の樹脂層を貼付した後、前記第1の樹脂層と前記第2の樹脂層とが交互に2層以上となるように配置する[1]記載の構造体の製造方法。
[4]
前記配置工程では、前記第1の樹脂層と前記第2の樹脂層とを交互に3層以上配置する[1]乃至[3]のいずれか1項に記載の構造体の製造方法。
[5]
前記第1剤が、アルミニウムキレート化合物と反応してアルミキレート-シラノール活性種を発生させるシラン系化合物であり、
前記第2剤が、シラン系化合物と反応してアルミキレート-シラノール活性種を発生させるアルミニウムキレート化合物であり、
前記第1の樹脂層が、カチオン重合性化合物をさらに含有し、
前記第2の樹脂層が、カチオン重合性化合物をさらに含有する[1]乃至[3]のいずれか1項に記載の構造体の製造方法。
[6]
前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層の少なくとも1層が、導電粒子を含有する[1]乃至[3]のいずれか1項に記載の構造体の製造方法。
[7]
前記配置工程では、40℃以下の温度で前記第1の樹脂層と前記第2の樹脂層とを配置する[1]乃至[3]のいずれか1項に記載の構造体の製造方法。
[8]
前記押圧工程では、40℃以下の温度で前記第1の部品と前記第2の部品とを押圧する[1]乃至[3]のいずれか1項に記載の構造体の製造方法。
[9]
前記配置工程の前に、前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層をそれぞれ常温で保管する保管工程をさらに有する[1]乃至[3]のいずれか1項に記載の構造体の製造方法。
[10]
前記アルミニウムキレート化合物が、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)を含み、
前記シラン系化合物が、トリス(tert-ペントキシ)シラノール、トリス(tert?ブトキシ)シラノールを含む[5]記載の構造体の製造方法。
[11]
第1剤と第2剤とを含む2液硬化型接着剤を用いる接着フィルムにおいて、
第1剤を含有し、厚みが1μm以上5μm未満である接着フィルム。
[12]
前記第1剤が、アルミニウムキレート化合物と反応してアルミキレート-シラノール活性種を発生させるシラン系化合物であり、
カチオン重合性化合物をさらに含有する[11]記載の接着フィルム。
[13]
第1剤と第2剤とを含む2液硬化型接着剤を用いる接着フィルムにおいて、
第2剤を含有し、厚みが1μm以上5μm未満である接着フィルム。
[14]
前記第2剤が、シラン系化合物と反応してアルミキレート-シラノール活性種を発生させるアルミニウムキレート化合物であり、
カチオン重合性化合物をさらに含有する[13]記載の接着フィルム。
[15]
前記[11]又は[12]記載の接着フィルムの個片が設けられている部材。
[16]
前記[13]又は[14]記載の接着フィルムの個片が設けられている部材。
[17]
前記[11]又は[12]記載の接着フィルムの個片、及び前記[13]又は[14]記載の接着フィルムの個片が分離して設けられている部材。
【発明の効果】
【0009】
本技術によれば、接触すると硬化反応を開始する第1剤および第2剤について、第1剤を含有する所定厚みの樹脂層と第2剤を含有する所定厚みの樹脂層とを予め形成し、圧着時にこれらを交互に2層以上配置した接着フィルムとすることにより、押圧時に第1の部品及び第2の部品の近傍で第1剤と第2剤との反応が開始されるため、優れた接着強度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本技術の一実施の形態に係る接着フィルムの構成例を示す断面図である。
図2図2は、第1の電子部品の端子に第1の樹脂層を設け、第2の電子部品の端子に第2の樹脂層を設けた状態を模式的に示す断面図である。
図3図3は、第1の樹脂層上に第3の樹脂層を設けた状態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本技術の実施の形態について、図面を参照しながら下記順序にて詳細に説明する。
1.構造体の製造方法、及び接着フィルム
2.第1の実施の形態
3.第2の実施の形態
4.実施例
【0012】
<1.構造体の製造方法、及び接着フィルム>
[構造体の製造方法]
本技術に係る構造体の製造方法は、第1剤と第2剤とを含む2液硬化型接着剤を用いる構造体の製造方法において、第1の部品と第2の部品との間に、第1剤を含有し、厚みが1μm以上5μm未満である第1の樹脂層と、第2剤を含有し、厚みが1μm以上5μm未満である第2の樹脂層とを交互に2層以上配置する配置工程と、第1の部品と第2の部品とを押圧する押圧工程と有するものである。これにより、押圧時に第1の部品及び第2の部品の近傍で第1剤と第2剤との反応が開始されるため、優れた接着強度を得ることができる。また、本技術は、接触すると硬化反応を開始する第1剤および第2剤について、第1剤を含有する所定厚みの樹脂層と第2剤を含有する所定厚みの樹脂層とを予め形成することにより、圧着時に面状の領域に均一な厚みを有する接着剤として機能させることができる。また、本技術は、従来の液状の2液硬化型接着剤では困難な作業性となる面積や設置箇所への使用時にも効果を発揮することができる。
【0013】
2液硬化型接着剤は、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、シリコーンゴム系など、化学反応によって硬化する接着剤であり、一般に、第1剤としての主剤と第2剤としての硬化剤とを使用する直前に計量及び混合して用いる液状接着剤である。これらの中でも、2液硬化型エポキシ接着剤は、硬化剤や添加剤と組み合わせることにより、接着性や電気絶縁性、耐熱性、耐薬品性等に優れる硬化物を得ることができる。
【0014】
エポキシ化合物としては、例えば、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、グリシジルアミン型、酸化型などが挙げられる。また、エポキシ硬化剤としては、例えば、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ポリアミドアミン、酸無水物系硬化剤、フェノール樹脂系硬化剤、ポリメルカプタン系硬化剤、触媒系硬化剤などが挙げられる。
【0015】
これらの中でも、アルミニウム錯体-シラノール化合物系複合触媒を用い、第1剤が、シラン系化合物であり、第2剤が、アルミニウムキレート化合物であることが好ましい。これにより、第1の樹脂層及び第2の樹脂層の両者にエポキシ化合物などのカチオン重合性化合物を配合することができ、第1剤と第2剤とを精確な配合比で均一に混ぜ合わせることができる。
【0016】
アルミニウムキレート化合物は、3つのβ-ケトエノラート陰イオンがアルミニウムに配位した錯体化合物であり、シラノール化合物と共に用いることで、カチオン重合化合物を低温速硬化することが可能なブレンステッド酸を形成する。ブレンステッド酸は、非常に活性が高く、カチオン重合化合物を室温下で速硬化させることができる。
【0017】
配置工程において、第1の樹脂層と第2の樹脂層とを交互に2層以上配置する構成は、例えば、第1の樹脂層と第2の樹脂層との2層、第1の樹脂層と第2の樹脂層と第1の樹脂層とがこの順番に配置された3層、第2の樹脂層と第1の樹脂層と第2の樹脂層とがこの順番に配置された3層、第1の樹脂層と第2の樹脂層と第1の樹脂層と第2の樹脂層とがこの順番に配置された4層、第1の樹脂層と第2の樹脂層と第1の樹脂層と第2の樹脂層と第1の樹脂層とがこの順番に配置された5層などが挙げられる。
【0018】
また、配置工程では、23℃以下の温度環境下で、第1の樹脂層と第2の樹脂層との面同士が最初に接触してから60秒以内に本圧着が開始されることが好ましい。これにより、第1の樹脂層と第2の樹脂層との界面における反応に対する接着強度の影響を抑制することができる。
【0019】
第1の樹脂層及び第2の樹脂層の厚みは、5μm未満であり、好ましくは4μm以下、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは2μm以下である。また、第1の樹脂層及び第2の樹脂層の厚みの下限は、成膜できれば特に制限はないが、取り扱い性の観点から好ましくは1.0μm以上、より好ましくは1.2μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上である。1.0μm未満の場合、膜厚が均一ではないなどの不具合が生じる虞があるが、使用に問題なければ使っても構わない。なお、第1の樹脂層又は第2の樹脂層は、第1の樹脂層同士又は第2の樹脂層同士を積層させたものであってもよく、この場合、第1の樹脂層同士又は第2の樹脂層同士の厚みが、前述した第1の樹脂層及び第2の樹脂層の厚みと同様の範囲であればよい。樹脂層の厚みは、公知のマイクロメータやデジタルシックネスゲージ(例えば、株式会社ミツトヨ:MDE-25M、最小表示量0.0001mm)を用いて測定することができる。また、樹脂層の厚みは、例えば10箇所以上を測定し、平均して求めてもよい。
【0020】
また、接着フィルムは、各樹脂層の厚みを5μm未満と極めて薄くしていることから低温でも熱が伝わり易くなるため、電子部品の熱によりダメージを忌避し易くできる。また、各樹脂層の厚みが極めて薄いために、端子の低背化に極めて有効である。また、薄いフィルムを電子部品に複数設けるため、電子部品の端子高さが複数に異なっている場合にも対応可能になる。近年では、一つの第1電子部品(例えば基板)上に、複数の第2の電子部品を設けることがある。この場合、第2の電子部品の外形や端子高さ、端子レイアウト(電極の形状、L/Sなども含む)は、一つの種類に限定されず、複数種類になることもある。即ち、載置する場所によってフィルムの外形や寸法が異なる場合がある。この場合、外形の寸法が共通していれば同じフィルムを裁断して設けることができ、共通していない場合は予め個片状にしておけばよい。すなわち、1つの部材に、第1剤を含有する接着フィルムの個片や第2剤を含有する接着フィルムの個片が分離して設けられていてもよく、また、1つの基材に、第1剤を含有する接着フィルムの個片や第2剤を含有する接着フィルムの個片が分離して設けられていてもよい。また、電子部品が複数種類であっても、接着フィルムの各樹脂層の保管ライフは配置工程前までに余裕があることから、従来の接着フィルムよりも構造体の製造時における複雑な要請に応え易くなる。また、本技術によれば、樹脂層の組み合わせを構造体の製造時に選択できるため、構造体の製造設備の軽微な仕様変更により、様々な構造体の製造に寄与でき、構造体の製造設備の投資コストを抑制することができる。
【0021】
また、第1の部品及び第2の部品が電子部品である場合、第1の樹脂層と第2の樹脂層とが交互に2層以上配置された合計厚みの上限は、対向するバンプ・電極高さの合計の1.5倍以下であることが好ましく、1.3倍以下であることがより好ましく、1.1倍以下であることがさらに好ましい。若しくは、第1の樹脂層と第2の樹脂層とが交互に2層以上配置された合計厚みの上限は、好ましくは対向するバンプ・電極高さに5μmを追加した厚み以下、より好ましくは対向するバンプ・電極高さに3μmを追加した厚み以下、さらに好ましくは対向するバンプ・電極高さに2μm以下を追加した厚み以下である。また、第1の樹脂層と第2の樹脂層とが交互に2層以上配置された合計厚みの下限は、バンプ・電極高さの合計の0.5倍以上であることが好ましい。合計厚みが薄くなるとリペアが容易になるため、実用上、合計厚みの下限は、バンプ・電極高さの合計の1倍以上であることが好ましい。これにより、押圧時に第1剤と第2剤との反応が開始され、硬化を促進させることができるため、優れた接着強度(接着性・密着性)を得ることができる。
【0022】
第1の樹脂層及び第2の樹脂層の厚みが大き過ぎると、第1の部品及び第2の部品の近傍で第1剤と第2剤との反応が開始されないため、接着強度が低下し、高いダイシェア強度を得るのが困難となる傾向にある。一方、第1の樹脂層及び第2の樹脂層の厚みが小さ過ぎると、フィルム状の樹脂層を成形することが困難となる傾向にある。
【0023】
第1の部品及び第2の部品は、特に限定されるものではないが、例えば、金属、プラスチック、ガラスなど電子部品に用いられる材質が挙げられる。また、第1の部品及び第2の部品が、電子部品である場合、第1の電子部品としては、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)パネル用途、有機ELディスプレイ(OLED)パネル用途などのプラスチック基板、ガラス基板、プリント配線板(PWB)などが挙げられる。また、第2の電子部品としては、例えば、IC(Integrated Circuit)、COF(Chip On Film)などのフレキシブル基板(FPC:Flexible Printed Circuits)、テープキャリアパッケージ(TCP)基板などが挙げられる。本技術は、これら以外に、電子部品用途以外にも接着性能を満たせば適用できるため、第1の部品及び第2の部品として、例えば、金属、プラスチック(樹脂製品)、ガラス、陶磁器、セメントコンクリート、木材およびこれらを組み合わせてなる部材を用いてもよい。
【0024】
また、第1の樹脂層及び第2の樹脂層の少なくとも1層は、導電粒子を含有してもよい。導電粒子は、樹脂層に分散されていてもよく、規則性を持っていてもよく、平面視で格子状、千鳥状等の規則的に配列されていてもよい。格子状としては、斜方格子、六方格子、正方格子、矩形格子、平行体格子などが挙げられる。これにより、導電粒子の粒子面密度が均一となり、接続信頼性を向上させることができる。
【0025】
導電粒子としては、導電性フィルムにおいて使用されている公知の導電粒子を用いることができる。例えば、ニッケル、鉄、銅、アルミニウム、錫、鉛、クロム、コバルト、銀、金等の各種金属や金属合金の粒子、金属酸化物、カーボン、グラファイト、ガラス、セラミック、プラスチック等の粒子の表面に金属をコートしたもの、これらの粒子の表面に更に絶縁薄膜をコートさせる、絶縁性微粒子を付着させる、といった絶縁処理をしたもの等が挙げられる。これらの中から2種以上を混在させてもよい。樹脂粒子の表面に金属をコートしたものである場合、樹脂粒子としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂、スチレン系樹脂等の粒子を用いることができる。
【0026】
導電粒子を含有する樹脂層の厚みは、塗布により樹脂層を形成する観点から、導電粒子の平均粒径の好ましくは0.6倍以上、より好ましくは0.8倍以上である。すなわち、導電粒子の平均粒径の上限は、好ましくは6.7μm以下、より好ましくは6μm以下、さらに好ましくは5μm以下であり、実用上、第1の樹脂層及び第2の樹脂層の厚み以下であることが望ましい。また、導電粒子の平均粒径の下限は、好ましくは1μm以上、より好ましくは1.5μm以上、さらに好ましくは2μm以上である。なお、平均粒径は、画像型粒度分布計(一例として、FPIA-3000:マルバーン社製)により測定した積算値50%での粒径とすることができる。
【0027】
導電粒子を含有する樹脂層は、1層であることが好ましく、2層以上であっても構わない。また、導電粒子を含有する樹脂層は、接続時の導電粒子の捕捉の観点から、第1の電子部品又は第2の電子部品に貼り付けられる第1層か、第1層上に設けられる第2層であることが好ましい。
【0028】
第1の樹脂層又は第2の樹脂層からなる接着フィルムは、特開2020-198422号公報記載の方法などを応用し、所定形状に加工された個片フィルムであってもよい。加工方法としては、第1の樹脂層又は第2の樹脂層のフィルムを打ち抜く打ち抜き加工、離型処理フィルムに形成された第1の樹脂層又は第2の樹脂層のフィルムの不要部をレーザで弾き飛ばすレーザ加工、離型処理フィルム上に均一に第1の樹脂層又は第2の樹脂層の樹脂組成物を塗布する印刷などが挙げられる。
【0029】
また、第1の樹脂層又は第2の樹脂層からなる接着フィルムは、個片か否かに関わらず、離型処理された基材フィルム上に設けられることが好ましく、接着フィルム及び基材フィルムをリールに巻いた巻装体としてもよい。基材フィルムの厚みの下限は、好ましくは12μm以上であり、基材フィルムの厚み上限は好ましくは100μm以下である。本技術では、接着フィルムの厚みは、基材フィルムの厚みに比べて薄くなるため、巻装体(ロールに巻き付けた状態)にしてもブロッキングやはみ出しの影響が極めて少なくなる。これは製造時の不良要因を避けることになるため、生産性に高く寄与できる。出荷や取り扱い、製造装置への取り付けなどの要因から、巻装体は、5m以上の長尺であることが好ましい。また、巻装体の長さは、長すぎても取り扱いが難しいことから、その上限は、5000m以下、好ましくは1000m以下である。
【0030】
個片フィルムの形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、第1の部品及び第2の部品の形状に合わせてもよく、第1の部品及び第2の部品が電子部品の場合、電子部品の端子列の形状に合わせてもよい。具体例としては、例えば、端子列に対応する矩形の形状、部品の周囲を囲む開口部を有する形状など挙げられる。
【0031】
また、離型処理フィルムに形成された第1の樹脂層又は第2の樹脂層の個片フィルムは、レーザーリフトオフ(LLO:Laser Lift Off)装置を用いて、第1の部品又は第2の部品上に転写してもよく、個片フィルム上に転写して積層するようにしてもよい。また、スタンプ材を用いて積層してもよい。これにより、構造体の生産性を向上させることができる。
【0032】
[接着フィルム]
次に、接着フィルムの各樹脂層を構成する樹脂組成物について説明する。第1の樹脂層を構成する樹脂組成物は、カチオン重合性化合物と、第1剤としてのシラン系化合物と、膜形成樹脂とを備える。また、第2の樹脂層を構成する樹脂組成物は、カチオン重合性化合物と、第2剤としてのアルミニウムキレート化合物と、膜形成樹脂とを備える。
【0033】
(カチオン重合性化合物)
カチオン重合性化合物としては、エポキシ化合物、オキセタン化合物から選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0034】
エポキシ化合物としては、5官能以下のものを用いることが好ましい。5官能以下のエポキシ化合物としては、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、脂環型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、ノボラックフェノール型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物などが挙られ、これらの中から1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。市場で入手可能な脂環式エポキシ樹脂の具体例としては、(株)ダイセルの商品名「セロキサイド8000」などを挙げることができる。
【0035】
オキセタン化合物としては、例えば、ビフェニル型オキセタン化合物、キシリレン型オキセタン化合物、シルセスキオキサン型オキセタン化合物、エーテル型オキセタン化合物、フェノールノボラック型オキセタン化合物、シリケート型オキセタン化合物などが挙げられ、これらの中から1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。市場で入手可能なビフェニル型のオキセタン化合物の具体例としては、UBE(株)の商品名「OXBP」などを挙げることができる。
【0036】
カチオン重合性化合物の含有量は、好ましくは10~70wt%、より好ましくは20~50wt%である。カチオン重合性化合物の含有量が多すぎると硬化収縮が大きくなる傾向にある。
【0037】
(アルミニウムキレート化合物)
アルミニウムキレート化合物としては、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビスオレイルアセトアセテート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートなどが挙げられる。市場で入手可能なアルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)の具体例としては、川研ファインケミカル(株)の商品名「アルミキレートD」などを挙げることができる。
【0038】
アルミニウムキレート化合物の含有量は、好ましくは1~50wt%、より好ましくは1~20wt%である、さらに好ましくは1~5wt%である。また、アルミニウムキレート化合物の含有量は、アルミニウムキレート化合物を除く樹脂層を構成する樹脂組成物の合計100質量部に対して2~4質量部であることが好ましい。アルミニウムキレート化合物の含有量は、少なすぎると十分に硬化せず、多すぎるとその組成物の硬化物の樹脂特性(例えば、可撓性)が低下する傾向にある。
【0039】
(シラン系化合物)
シラン系化合物は、アルミニウムキレート化合物と共働してカチオン重合を開始させ、硬化を促進させることができる。シラン系化合物としては、高立体障害性のシラノール化合物、分子中に1~3の低級アルコキシ基を有するシランカップリング剤などを挙げることができる。
【0040】
シラノール化合物の具体例としては、トリス(tert-ペントキシ)シラノール、トリス(tert-ブトキシ)シラノール、ビス(tert-ブトキシ)(イソプロポキシ)シラノールなどが挙げられる。また、シランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-スチリルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0041】
シラン系化合物の含有量は、好ましくは1~50wt%、より好ましくは1~20wt%、さらに好ましくは3~10wt%である。また、シラン系化合物の含有量は、シラン系化合物を除く樹脂層を構成する樹脂組成物の合計100質量部に対して4~8質量部であることが好ましい。シラン系化合物の含有量は、少なすぎると硬化不足となり、多すぎると硬化後の樹脂特性が低下する傾向にある。
【0042】
(膜形成樹脂)
また、樹脂組成物は、膜形成樹脂を含有することが好ましい。膜形成樹脂は、例えば平均分子量が10000以上の高分子量樹脂に相当し、フィルム形成性の観点から、10000~80000程度の平均分子量であることが好ましい。膜形成樹脂としては、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ブチラール樹脂等の種々の樹脂が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、膜形成状態、接続信頼性等の観点からフェノキシ樹脂を好適に用いることが好ましい。膜形成樹脂の含有量は、好ましくは20~80wt%、より好ましくは30~60wt%である。
【0043】
(他の添加物)
また、樹脂組成物は、無機フィラーを含有してもよい。無機フィラーとしては、シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等を用いることができる。無機フィラーは、単独でも2種類以上を併用してもよい。無機フィラーの含有量は、好ましくは1~50wt%、より好ましくは3~20wt%である。また、熱カチオン重合型樹脂組成物は、必要に応じて、顔料、帯電防止剤などを含有させてもよい。
【0044】
このような第1の樹脂層と第2の樹脂層とを含む接着フィルムによれば、アルミニウムキレート化合物を含有する層とシラン系化合物を含有する層とが分離されているため、優れた保存安定性を得ることができる。また、接着フィルムの押圧時にアルミニウムキレート化合物とシラン系化合物との反応が開始されるため、低温条件で優れた接着強度を得ることができる。
【0045】
また、第1の樹脂層又は第2の樹脂層の最低溶融粘度は、好ましくは100Pa・s以上である。この最低溶融粘度は、一例として回転式レオメータ(TA instrument社製)を用い、測定圧力5gで一定に保持し、直径8mmの測定プレートを使用し求めることができ、より具体的には、温度範囲30~200℃において、昇温速度10℃/分、測定周波数10Hz、前記測定プレートに対する荷重変動5gとすることにより求めることができる。導電粒子を接続時に挟持して用いる場合、導電粒子を含有する導電粒子含有層は、不要な樹脂流動を抑制するために、導電粒子含有層以外よりも流動性を低く設計することが行われている。本技術において、樹脂層を多数に積層化する場合、導電粒子含有層の直上の層のみの流動性を低く設定し、樹脂流動による捕捉の影響を最小限にすることが可能になる(例えば、特開2023-051504号公報と同様の層を設けることができるため、導電粒子の不要な移動は同等程度に抑えられると見込まれる)。これにより、導電粒子を挟持する際の樹脂による抵抗を低下させることができ、接続時に導電粒子含有層を所定温度以上まで熱を加え、樹脂の流動性を付与する必要をなくすことができる。また、導電粒子含有層に限らず、樹脂層の厚みが基材に対して薄いことから、はみ出しやブロッキングの問題も発生し難く、接続構造体の製造における生産性を向上させことができる。
【0046】
また、樹脂層は、第1剤と第2剤が接触して反応することから、フィルムの製造時からライフを計算する必要はなく、優れた保管安定性を有することになる。これは接続工程時における利点でもある。接続工程の前段階までが、各フィルムの保管期間になるため、接触して反応が開始しないことは接続工程時の部材管理に関わる工数を削減できることになる。このような樹脂層の高度な設計は、従来、フィルム製造時に行っていたが、本技術では接続工程の前工程であるフィルムの配置工程で行うことになる。即ち、従来、フィルム製造時に予め設計していた樹脂層の層構成を設定するのと異なり、本技術では、配置工程時にフィルムの層構成を複数の組み合わせから選択できることになる。また、本技術では、軽度な仕様変更(例えば、ツール温度や環境温度などの外的諸条件から、厚みを増減させる、など)を工程で都度変更可能になり、安定した接続構造体の生産体制を構築することができる。
【0047】
以下では、アルミニウム錯体-シラノール化合物系複合触媒を用い、第1剤としてシラン系化合物を含有する第1の樹脂層、及び第2剤としてアルミニウムキレート化合物を含有する第2の樹脂層を例に挙げて、第1の実施の形態及び第2の実施の形態について説明する。
【0048】
<2.第1の実施の形態>
第1の実施の形態に係る構造体の製造方法は、第1の樹脂層と第2の樹脂層とを交互に2層以上積層した接着フィルムを作製した後、第1の部品と第2の部品との間に、接着フィルムを配置する配置工程と、第1の部品と第2の部品とを押圧する押圧工程と有するものである。すなわち、第1の実施の形態における配置工程では、予め第1の樹脂層及び第2の樹脂層を積層した接着フィルムを作製し、接着フィルムを第1の部品又は第2の部品に貼り付けるものである。
【0049】
配置工程では、40℃以下の温度で第1の樹脂層と第2の樹脂層とを配置することが好ましい。具体的には、仮貼りするツールの温度もしくは積層するラミネータの温度が40℃以下であることが好ましい。低温で第1の樹脂層と第2の樹脂層とを積層させることにより、アルミキレート-シラノール活性種によるカチオン重合反応を第1の樹脂層と第2の樹脂層との間の界面のみに抑えることができる。
【0050】
また、配置工程の前に、第1の樹脂層及び第2の樹脂層をそれぞれ常温で保管する保管工程をさらに有することが好ましい。第1の樹脂層及び第2の樹脂層を予めそれぞれ常温で保管することにより、配置工程における第1の樹脂層と第2の樹脂層との積層をアルミキレート-シラノール活性種によるカチオン重合反応の開始と考えればよいため、第1の部品と第2の部品とを押圧するまでの時間を簡単に逆算することができる。ここで、常温とは、試験場所の標準状態に係るJIS Z 8703で規定される5~35℃の温度範囲を意味する。第1の樹脂層及び第2の樹脂層は、保管に最小限の設備で済むため、総合的に経済的、環境的な優位性がある。
【0051】
また、押圧工程では、好ましくは230℃以下、より好ましくは180℃以下、さらに好ましくは130℃以下の温度で第1の部品と第2の部品とを押圧することが好ましい。低温で第1の部品と第2の部品とを押圧することにより、第1の部品及び第2の部品の熱によるダメージを防ぐことができる。
【0052】
図1は、本技術の一実施の形態に係る接着フィルムの構成例を示す断面図である。図1に示すように、接着フィルムは、最外層である樹脂層A1及び樹脂層A2と、樹脂層A1と樹脂層A2との間に積層された樹脂層B3とを備える。
【0053】
接着フィルムの第1の構成例では、樹脂層A1及び樹脂層A2が、カチオン重合性化合物と、アルミニウムキレート化合物とを含有するとともに、樹脂層B3が、カチオン重合性化合物と、シラン系化合物とを含有する。すなわち、第1の構成例では、樹脂層A1及び樹脂層A2が、前述した第1の樹脂層であり、樹脂層B3が、前述した第2の樹脂層である。
【0054】
また、接着フィルムの第2の構成例では、樹脂層A1及び樹脂層A2が、カチオン重合性化合物と、シラン系化合物とを含有するとともに、樹脂層B3が、カチオン重合性化合物と、アルミニウムキレート化合物とを含有する。すなわち、第2の構成例では、樹脂層A1及び樹脂層A2が、前述した第2の樹脂層であり、樹脂層B3が、前述した第1の樹脂層である。
【0055】
樹脂層A1、樹脂層A2、及び樹脂層B3の厚みは、前述した第1の樹脂層及び第2の樹脂層の厚みと同様、5μm未満であり、好ましくは4μm以下、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは2μm以下である。また、樹脂層A1、樹脂層A2、及び樹脂層B3の厚みの下限は、前述した第1の樹脂層及び第2の樹脂層の厚みと同様、好ましくは1.0μm以上、より好ましくは1.2μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上である。
【0056】
これにより、接着フィルムの押圧時に被着体の近傍である最外層の樹脂層A1及び樹脂層A2と樹脂層B3とが混合し、アルミニウムキレート化合物とシラン系化合物との反応が開始されるため、接着強度を向上させることができる。
【0057】
<3.第2の実施の形態>
第2の実施の形態に係る構造体の製造方法は、第1の部品及び第2の部品の少なくとも一方に第1の樹脂層又は第2の樹脂層を貼付した後、第1の樹脂層と第2の樹脂層とが交互に2層以上となるように配置する配置工程と、第1の部品と第2の部品とを押圧する押圧工程と有するものである。すなわち、第2の実施の形態における配置工程では、先ず、第1の部品及び第2の部品の少なくとも一方に第1の樹脂層又は第2の樹脂層を貼付し、3層以上の場合には、さらに第1の樹脂層又は第2の樹脂層を積層するものである。例えば、第1の樹脂層及び第2の樹脂層の2層の場合、第1の部品に第1の樹脂層を貼付し、第2の部品に第2の樹脂層を貼付してもよく、第1の部品に第1の樹脂層を貼付し、第1の樹脂層上に第2の樹脂層を積層させてもよい。また、例えば、3層の場合、第1の部品に第1の樹脂層を貼付し、第2の部品に第1の樹脂層を貼付し、第1の樹脂層上に第2の樹脂層を積層させてもよい。
【0058】
配置工程では、40℃以下の温度で第1の樹脂層と第2の樹脂層とを配置することが好ましい。具体的には、仮貼りするツールの温度もしくは積層するラミネータの温度が40℃以下であることが好ましい。低温で第1の樹脂層と第2の樹脂層とを配置させることにより、アルミキレート-シラノール活性種によるカチオン重合反応を第1の樹脂層と第2の樹脂層との間の界面のみに抑えることができる。
【0059】
また、配置工程の前に、第1の樹脂層及び第2の樹脂層をそれぞれ常温で保管する保管工程をさらに有することが好ましい。第1の樹脂層及び第2の樹脂層を予めそれぞれ常温で保管することにより、配置工程における第1の樹脂層と第2の樹脂層との配置をアルミキレート-シラノール活性種によるカチオン重合反応の開始と考えればよいため、第1の部品と第2の部品とを押圧するまでの時間を簡単に逆算することができる。ここで、常温とは、試験場所の標準状態に係るJIS Z 8703で規定される5~35℃の温度範囲を意味する。
【0060】
また、押圧工程では、40℃以下の温度で第1の部品と第2の部品とを押圧することが好ましい。低温で第1の部品と第2の部品とを押圧することにより、第1の部品及び第2の部品の熱によるダメージを防ぐことができる。
【0061】
以下、図2及び図3を参照して、樹脂層A及び樹脂層Bを形成する形成工程(A)、及び第1の電子部品と第2の電子部品とを押圧する押圧工程(B)について説明する。図2は、第1の電子部品の端子に樹脂層A21を設け、第2の電子部品の端子に樹脂層A22を設けた状態を模式的に示す断面図であり、図3は、樹脂層A21上に樹脂層B23を設けた状態を模式的に示す断面図である。
【0062】
樹脂層A21、樹脂層A22、及び樹脂層B23は、それぞれ前述した樹脂層A1、樹脂層A2、及び樹脂層B3と同様であるため、ここでは説明を省略する。すなわち、第1の構成例では、樹脂層A21及び樹脂層A22が、前述した第1の樹脂層であり、樹脂層B23が、前述した第2の樹脂層であり、第2の構成例では、樹脂層A21及び樹脂層A22が、前述した第2の樹脂層であり、樹脂層B23が、前述した第1の樹脂層である。
【0063】
[形成工程(A)]
図2に示すように、形成工程(A)では、第1の電子部品11の端子に樹脂層A21を設け、第2の電子部品12の端子に樹脂層A22を設ける。形成工程(A)は、接続前に第1の電子部品11上及び第2の電子部品12上にそれぞれ樹脂層A21を構成する樹脂組成物及び樹脂層B22を構成する樹脂組成物をフィルム状にする工程であってもよい。また、前述した樹脂層A1のフィルム及び樹脂層A2のフィルムをそれぞれ第1の電子部品11上及び第2の電子部品12上に低温低圧で貼着する仮貼り工程であってもよい。また、樹脂層A21のフィルム及び樹脂層A22のフィルムをそれぞれ第1の電子部品11上及び第2の電子部品12上にラミネートするラミネート工程であってもよい。これらの中でも、仮貼り工程は、公知の使用条件で第1の電子部品11上及び第2の電子部品12上にそれぞれ樹脂層A21及び樹脂層A22を設けることができ、従前の装置からツールの変更といった最低限の変更だけですむため、経済的なメリットを得ることができる。
【0064】
樹脂層A21、及び樹脂層A22の厚みは、前述した第1の樹脂層及び第2の樹脂層の厚みと同様、5μm未満であり、好ましくは4μm以下、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは2μm以下である。また、樹脂層A21、及び樹脂層A22の厚みの下限は、前述した第1の樹脂層及び第2の樹脂層の厚みと同様、好ましくは1.0μm以上、より好ましくは1.2μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上である。
【0065】
[押圧工程(B)]
押圧工程(B)では、先ず、図3に示すように、樹脂層A21上に樹脂層B23を設ける。樹脂層B23を設ける方法は、形成工程(A)と同様、接続前に樹脂層A21上に樹脂層B23を構成する樹脂組成物をフィルム状にする工程であってもよい。また、前述した樹脂層B23のフィルムを樹脂層A21上に低温低圧で貼着する仮貼り工程であってもよい。また、樹脂層B23のフィルムを樹脂層A21上にラミネートするラミネート工程であってもよい。これらの中でも、仮貼り工程は、公知の使用条件で樹脂層A21上に接着フィルムを設けることができ、従前の装置からツールの変更や搬送機構の改造といった最低限の変更だけですむため、経済的なメリットを得ることができる。
【0066】
次に、第2の電子部品12上から、所定温度に加温された圧着ツールによって、所定の圧力及び所定の時間、熱加圧され、第1の電子部品11の端子と第2の電子部品12の端子とが接続される。また、樹脂層A21、樹脂層A22、及び樹脂層B23の少なくとも1層が導電粒子を含有する場合、導電粒子が第1の電子部品11の端子と第2の電子部品12の端子との間に挟持されて押し潰され、この状態でバインダーが硬化する。
【0067】
熱加圧時の所定の圧力は、電子部品の配線クラックを防止する観点から、1MPa以上150MPa以下であることが好ましい。また、所定温度は、230℃以下であることが好ましく、180℃以下であることがより好ましく、130℃以下であることがさらに好ましい。また、UVなどの光照射を併用してもよい。本実施の形態では、各樹脂層の厚みが薄いため、低温で圧着しても各樹脂層の樹脂を十分に溶融させることができる。
【0068】
また、圧着ツールと第2の電子部品との間に緩衝材を介装して熱圧着してもよい。緩衝材を介装することにより、押圧ばらつきを低減できると共に、圧着ツールが汚れるのを防止することができる。緩衝材は、シート状の弾性材又は塑性体からなり、例えばテフロン(商標)、シリコンラバーなどが用いられる。
【0069】
第2の実施の形態に係る構造体の製造方法によれば、押圧工程(B)において、第1の樹脂層と第2の樹脂層とが接することになるため、接続フィルムとした場合の界面の反応を考慮することなく、優れた接着強度を得ることができる。
【0070】
本実施の形態に係る接続構造体は、第1の部品と、第2の部品と、第1の部品と第2の部品とを接着させる第1の樹脂層と第2の樹脂層とが交互に積層された2層以上が硬化した硬化膜とを備え、第1の樹脂層が、カチオン重合性化合物と、シラン系化合物とを含有し、厚みが1μm以上5μm未満であり、第2の樹脂層が、カチオン重合性化合物と、アルミニウムキレート化合物とを含有し、厚みが1μm以上5μm未満である。
【0071】
本実施の形態に係る構造体は、第1の部品と第2の部品とが低温条件で接続され、優れた接着強度を持つため、例えば熱ダメージを受け易い小型の電子部品や薄い電子部品を搭載した場合でも優れた信頼性を得ることができる。
【実施例0072】
<3.実施例>
本実施例では、第1剤と第2剤とを含む2液硬化型接着剤を用い、第1剤を含有する樹脂層と第2剤を含有する樹脂層とを交互に2層以上積層させた異方性導電フィルムを作製した。そして、異方性導電フィルムを用いて接続構造体を作製し、導通抵抗、接着強度、及び保存安定性について評価した。
【0073】
[接続構造体の作製]
下記に示す評価用ICと、ガラス基板を準備した。
(評価用IC)
外形 1.8×20.0mm
厚み 0.5mm
バンプ仕様 サイズ30×85μm、バンプ間距離50μm、バンプ高さ5μm、7μm、12μm
【0074】
(ガラス基板)
ガラス材質 コーニング社製1737F
外形 30×50mm
厚み 0.5mm
電極 ITO配線
【0075】
異方性導電フィルムを、接続に十分な面積で裁断し、評価用ICとガラス基板との間に挟み、温度130℃-圧力70MPa-時間5secの圧着条件で押圧し、評価用接続構造体を作製した。
【0076】
[導通抵抗の評価]
評価用接続構造体について、デジタルマルチメータ(34401A、アジレント・テクノロジー株式会社製)を用いて4端子法にて電流1mAを流したときの抵抗値(Ω)を測定した。導通抵抗の評価は、次の基準で行った。
A:抵抗値の最大値が2Ω未満
B:抵抗値の最大値が2Ω以上4Ω以下
C:抵抗値の最大値が4Ω超
【0077】
[接着強度の評価]
評価用接続構造体について、ダイシェアテスタ(4000series、ノードソン・アドバンスト・テクノロジー(株))を用いて、ツールスピード0.2mm/秒の条件で、評価用ICのダイシェア強度を測定した。ダイシェア強度の評価は、次の基準で行った。
AA:ダイシェア強度が900N超
A:ダイシェア強度が600N以上900N以下
B:ダイシェア強度が300N以上600N以下
C:ダイシェア強度が300N未満
【0078】
[保存安定性の評価]
温度40℃-時間8hの環境条件で積層を行う前の樹脂層をエージング処理した。そして、エージング処理した樹脂層を使用して作成した異方性導電フィルムを用いて接続した接続構造体について、ダイシェア強度を測定した。保存安定性の評価は、エージング処理していない初期の異方性導電フィルムを用いて接続した接続構造体のダイシェア強度に対し、次の基準で行った。
AA:ダイシェア強度の低下が10%未満
A:ダイシェア強度の低下が10%以上30%以下
B:ダイシェア強度の低下が30%以上50%以下
C:ダイシェア強度の低下が50%超
【0079】
[実施例及び比較例]
先ず、導電粒子を含有しない樹脂組成物A1~A5、及び導電粒子を含有する樹脂組成物B1~B5を調製し、樹脂組成物A1~A5、B1~B5を用いて、所定厚みの樹脂層を作製した。所定厚みの樹脂層を用いて第1の樹脂層と第2の樹脂層と積層させた2層構造の異方性導電フィルム、第1の樹脂層と第2の樹脂層と第3の樹脂層とをこの順に積層した3層構成の異方性導電フィルム、又は第1の樹脂層と第2の樹脂層と第3の樹脂層と第4の樹脂層と第5の樹脂層とをこの順に積層した5層構成の異方性導電フィルムを作製した。そして、異方性導電フィルムを、第1の樹脂層側がガラス基板となるように評価用ICとガラス基板との間に挟み、樹脂層を積層させてから60秒以内に押圧して接続構造体を作製した。
【0080】
表1に、導電粒子を含有しない樹脂組成物A1~A5の配合を示し、表2に、導電粒子を含有する樹脂組成物B1~B5の配合を示す。また、表3~5に、実施例及び比較例の異方性導電フィルムを用いて作成した接続構造体の導通抵抗、ダイシェア強度、及び保存安定性の評価結果を示す。
【0081】
フェノキシ樹脂:YP50、日鉄ケミカル&マテリアル(株)
エポキシ樹脂:YD-019、日鉄ケミカル&マテリアル(株)
シリカフィラー:アエロジル805、日本アエロジル(株)
脂環式エポキシ樹脂:セロキサイド8000、(株)ダイセル
オキセタン化合物:OXBP、UBE(株)
アルミニウムキレート化合物:アルミキレートD、川研ファインケミカル(株)
シラノール化合物:トリス(tert-ペントキシ)シラノール(TPS)
導電粒子(樹脂コア金属被覆導電粒子):AUL704、積水化学工業(株)、4μmφ
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【0086】
【表5】
【0087】
比較例1は、第1の樹脂層の厚みが大きいため、反応が十分に進行しない部分が生じ、結果として優れた接着強度(接着性・密着性)が得られなかった。比較例2は、第1の樹脂層の配合A5及び第2の樹脂層の配合B5が、アルミニウムキレート化合物及びシラノール化合物の両者を含むため、硬化反応が進行し、第1の樹脂層及び第2の樹脂層を作製することができなかった。
【0088】
一方、実施例1~12は、第1の樹脂層~第5の樹脂層の厚みが1μm以上5μm未満であり、アルミニウムキレート化合物とシラン系化合物とが、樹脂層に交互に配合されているため、低温条件で優れた接着強度を得ることができた。また、1μm以上5μm未満の厚みの樹脂層を積層させることにより、様々なバンプの高さにも対応することができることが分かった。
【符号の説明】
【0089】
1 樹脂層A、2 樹脂層A、3 樹脂層B、11 第1の電子部品、12 第2の電子部品、21 樹脂層A、22 樹脂層A、23 樹脂層B

図1
図2
図3