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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018409
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】食感改良剤及び食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 15/00 20160101AFI20250130BHJP
   A23L 17/60 20160101ALI20250130BHJP
   A23L 13/60 20160101ALI20250130BHJP
   A23L 17/00 20160101ALI20250130BHJP
   A23L 13/00 20160101ALI20250130BHJP
   A23L 7/109 20160101ALI20250130BHJP
   A23L 13/40 20230101ALI20250130BHJP
   A23J 3/14 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
A23L15/00 Z
A23L17/60 Z
A23L13/60 Z
A23L17/00 Z
A23L13/00 Z
A23L7/109 A
A23L13/40
A23J3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122091
(22)【出願日】2023-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000199441
【氏名又は名称】千葉製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 崇文
(72)【発明者】
【氏名】藤原 達也
【テーマコード(参考)】
4B019
4B042
4B046
【Fターム(参考)】
4B019LE04
4B019LK02
4B019LK03
4B019LK07
4B019LK08
4B019LK12
4B019LK14
4B019LP01
4B019LP04
4B019LP07
4B019LP15
4B042AC05
4B042AD20
4B042AD37
4B042AD39
4B042AG02
4B042AG03
4B042AG34
4B042AH01
4B042AH11
4B042AK01
4B042AK04
4B042AK06
4B042AK08
4B042AK09
4B042AK10
4B042AK11
4B042AK12
4B042AK13
4B042AK14
4B042AK17
4B042AP03
4B042AP21
4B046LA05
4B046LC01
4B046LG02
4B046LG03
4B046LG04
4B046LG09
4B046LG20
4B046LG29
4B046LG44
4B046LG51
(57)【要約】
【課題】食品に卵白様の食感を付与可能な食感改良剤及び食品の製造方法を提供する。
【解決手段】食感改良剤は、石化海藻粉末と、有機酸粉末と、を含む。食感改良剤において、有機酸粉末の酸度をX(質量%)としたときに、石化海藻粉末の配合比Aが、1≦A≦20を満たし、有機酸粉末の配合比Bが、5/X≦B≦200/Xを満たし、石化海藻粉末と有機酸粉末との質量比がA:Bを満たす。食品の製造方法は、畜肉、魚肉、及び、植物性たん白のうちの少なくとも一種を含む食品生地、または、麺類の主原料に対して、石化海藻粉末と、有機酸粉末と、を添加する。食品の製造方法において、有機酸粉末の酸度をX(質量%)としたときに、100質量部の食品生地または麺類の主原料に対して、石化海藻粉末の添加量が0.01質量部以上0.2質量部以下であり、有機酸粉末の添加量が0.05/X質量部以上2/X質量部以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石化海藻粉末と、有機酸粉末と、を含み、
前記有機酸粉末の酸度をX(質量%)としたときに、
前記石化海藻粉末の配合比Aが、1≦A≦20を満たし、
前記有機酸粉末の配合比Bが、5/X≦B≦200/Xを満たし、
前記石化海藻粉末と前記有機酸粉末との質量比がA:Bを満たす
食感改良剤。
【請求項2】
クエン酸三ナトリウムをさらに含む
請求項1に記載の食感改良剤。
【請求項3】
前記クエン酸三ナトリウムの配合比Cが、0.5≦C≦20を満たし、
前記石化海藻粉末と、前記有機酸粉末と、前記クエン酸三ナトリウムとの質量比が、A:B:Cを満たす
請求項2に記載の食感改良剤。
【請求項4】
グルテンをさらに含む
請求項3に記載の食感改良剤。
【請求項5】
前記有機酸粉末は、粉末酢である
請求項1ないし4のうち何れか一項に記載の食感改良剤。
【請求項6】
畜肉、魚肉、及び、植物性たん白のうちの少なくとも一種を含む食品生地、または、麺類の主原料に対して、石化海藻粉末と、有機酸粉末と、を添加し、
前記有機酸粉末の酸度をX(質量%)としたときに、
100質量部の前記食品生地または前記麺類の主原料に対して、
前記石化海藻粉末の添加量が0.01質量部以上0.2質量部以下であり、
前記有機酸粉末の添加量が0.05/X質量部以上2/X質量部以下である
食品の製造方法。
【請求項7】
前記食品生地または前記麺類の主原料に対して、さらにクエン酸三ナトリウムを添加する
請求項6に記載の食品の製造方法。
【請求項8】
100質量部の前記食品生地または前記麺類の主原料に対して、0.005質量部以上0.2質量部以下の前記クエン酸三ナトリウムを添加する
請求項7に記載の食品の製造方法。
【請求項9】
前記有機酸粉末は、粉末酢である
請求項6ないし8のうち何れか一項に記載の食品の製造方法。
【請求項10】
石化海藻粉末と、有機酸粉末と、クエン酸三ナトリウムと、を含む
食感改良剤。
【請求項11】
畜肉、魚肉、及び、植物性たん白のうちの少なくとも一種、または、麺類の主原料に対して、石化海藻粉末と、有機酸と、クエン酸三ナトリウムと、を添加する
食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食感改良剤、及び、食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
畜肉、魚肉、または、植物性たん白を用いた加工食品や、麺類の生地には、食感及び品質を改良する目的で卵白が使用される。一方で、卵白がアレルゲンであることや卵白の供給の不安定さから、卵白様の食感を付与するための卵白代替材料が検討されている。例えば、特許文献1には、膨潤抑制澱粉、及び小麦たん白を含有することを特徴とする食感改良組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-67336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
卵白様の食感を付与するための卵白代替材料の分野では、卵白を添加した場合の食感により近づけるために、さらなる改善が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための食感改良剤は、石化海藻粉末と、有機酸粉末と、を含み、前記有機酸粉末の酸度をX(質量%)としたときに、前記石化海藻粉末の配合比Aが、1≦A≦20を満たし、前記有機酸粉末の配合比Bが、5/X≦B≦200/Xを満たし、前記石化海藻粉末と前記有機酸粉末との質量比がA:Bを満たす。
【0006】
上記の質量比の石化海藻粉末と有機酸粉末とを含む食感改良剤を食品生地や麺類の主原料等に適量添加することで、食品に対して硬さや崩壊感といった卵白様の食感を付与できる。したがって、アレルゲンとなる卵白の使用を避けつつ、卵白様の食感を付与できる。
【0007】
上記食感改良剤は、クエン酸三ナトリウムをさらに含んでもよい。石化海藻粉末と有機酸粉末とに加えて、さらに、クエン酸三ナトリウムを含む食感改良剤によれば、卵白を用いた場合の硬さや崩壊感により近づけることができる。
【0008】
上記食感改良剤において、前記クエン酸三ナトリウムの配合比Cが、0.5≦C≦20を満たし、前記石化海藻粉末と、前記有機酸粉末と、前記クエン酸三ナトリウムとの質量比が、A:B:Cを満たしてもよい。上記の質量比の石化海藻粉末と有機酸粉末とクエン酸三ナトリウムとを含む食感改良剤を食品生地や麺類の主原料等に適量添加することで、食品に対して硬さや崩壊感といった卵白様の食感を好適に付与できる。
【0009】
上記食感改良剤は、グルテンをさらに含んでもよい。石化海藻粉末と有機酸粉末とに加えて、さらに、クエン酸三ナトリウムとグルテンとを含む食感改良剤によれば、特に顕著な硬さや崩壊感の向上効果が発現することで、卵白を用いた場合と同等の硬さや崩壊感が得られる。
【0010】
上記食感改良剤において、前記有機酸粉末は、粉末酢であってもよい。食感改良剤において有機酸粉末として粉末酢を用いることで、食品添加物として表示される成分の種類を増加させずに卵白様の食感を付与できる。
【0011】
上記課題を解決するための食品の製造方法は、畜肉、魚肉、及び、植物性たん白のうちの少なくとも一種を含む食品生地、または、麺類の主原料に対して、石化海藻粉末と、有機酸粉末と、を添加し、前記有機酸粉末の酸度をX(質量%)としたときに、100質量部の前記食品生地または前記麺類の主原料に対して、前記石化海藻粉末の添加量が0.01質量部以上0.2質量部以下であり、前記有機酸粉末の添加量が0.05/X質量部以上2/X質量部以下である。
【0012】
上記製造方法によれば、上記添加量の石化海藻粉末と有機酸粉末とによって、食品に対して硬さや崩壊感といった卵白様の食感を好適に付与できる。したがって、アレルゲンとなる卵白の使用を避けつつ、卵白様の食感を付与できる。
【0013】
上記製造方法において、前記食品生地または前記麺類の主原料に対して、さらにクエン酸三ナトリウムを添加してもよい。石化海藻粉末と有機酸粉末とに加えて、さらに、クエン酸三ナトリウムを添加することで、卵白を用いた場合の硬さや崩壊感により近づけることができる。
【0014】
上記製造方法において、100質量部の前記食品生地または前記麺類の主原料に対して、0.005質量部以上0.2質量部以下の前記クエン酸三ナトリウムを添加してもよい。石化海藻粉末と有機酸粉末とに加えて、さらに、上記添加量のクエン酸三ナトリウムを添加することで、食品に対して硬さや崩壊感といった卵白様の食感をより好適に付与できる。
【0015】
上記製造方法において、前記有機酸粉末は、粉末酢であってもよい。有機酸粉末として粉末酢を用いることで、食品添加物として表示される成分の種類を増加させずに卵白様の食感を付与できる。
【0016】
上記課題を解決するための食感改良剤は、石化海藻粉末と、有機酸粉末と、クエン酸三ナトリウムと、を含む。
石化海藻粉末と有機酸粉末とを含む食感改良剤によれば、食品に対して硬さや崩壊感といった卵白様の食感を付与できる。したがって、アレルゲンとなる卵白の使用を避けつつ、卵白様の食感を付与できる。石化海藻粉末と有機酸粉末とに加えて、さらに、クエン酸三ナトリウムを含む食感改良剤によれば、卵白を用いた場合の硬さや崩壊感により近づけることができる。
【0017】
上記課題を解決するための食品の製造方法は、畜肉、魚肉、及び、植物性たん白のうちの少なくとも一種、または、麺類の主原料に対して、石化海藻粉末と、有機酸と、クエン酸三ナトリウムと、を添加する。
【0018】
上記製造方法によれば、石化海藻粉末と有機酸とによって、食品に対して硬さや崩壊感といった卵白様の食感を付与できる。したがって、アレルゲンとなる卵白の使用を避けつつ、卵白様の食感を付与できる。石化海藻粉末と有機酸とに加えて、さらに、クエン酸三ナトリウムを添加することで、卵白を用いた場合の硬さや崩壊感により近づけることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、食品に卵白様の食感を付与できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、試験例1での各試料の組成及び評価結果を示す表である。
図2図2は、試験例2での各試料の組成及び評価結果を示す表である。
図3図3は、試験例3での各試料の組成及び評価結果を示す表である。
図4図4は、試験例4での各試料の組成及び評価結果を示す表である。
図5図5は、試験例5での各試料の組成及び評価結果を示す表である。
図6図6は、試験例6での各試料の組成及び評価結果を示す表である。
図7図7は、試験例7での各試料の組成及び評価結果を示す表である。
図8図8は、試験例8での各試料の組成及び評価結果を示す表である。
図9図9は、試験例9での各試料の組成及び評価結果を示す表である。
図10図10は、試験例10での各試料の組成及び評価結果を示す表である。
図11図11は、試験例11での各試料の組成及び評価結果を示す表である。
図12図12は、試験例12での各試料の組成及び評価結果を示す表である。
図13図13は、試験例13での各試料の組成及び評価結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、食感改良剤、及び、食品の製造方法の一実施形態について説明する。
[食感改良剤:用途]
食感改良剤は、粉末状の製剤である。食感改良剤は、畜肉、魚肉、及び、植物性たん白のうち少なくとも一種を用いた加工食品、または、麺類のうち何れかの食品において、卵白の代替として添加される。
【0022】
畜肉は、例えば、牛肉、豚肉、鶏肉、及び、羊肉等であるが、任意の畜種の畜肉を用いることができる。畜肉を用いた加工食品は、挽肉様の畜肉を主原料とする蓄肉加工食品であって、例えば、ハンバーグ、ミートボール、つくね、ソーセージ、成型から揚げ、成型豚カツ、及び、成型ハム等の畜肉練り製品である。
【0023】
魚肉は、任意の白身魚や赤身魚を用いることができる。魚肉を用いた加工食品は、魚肉のすり身を主原料とする魚肉加工食品であって、例えば、魚肉ソーセージ、蒲鉾、ちくわ、はんぺん、つみれ、薩摩揚げ等の魚肉練り製品である。
【0024】
植物性たん白は、大豆、小麦、エンドウ豆等の任意の植物由来の原材料から製造されたものを用いることができる。植物性たん白は、粉末状でもよいし、ペースト状でもよいし、粒状でもよいし、繊維状でもよい。植物性たん白は、畜肉練り製品において、畜肉の一部または全部の代替として用いられてもよいし、魚肉練り製品において、魚肉の一部または全部の代替として用いられてもよい。
【0025】
麺類は、うどん、そば、冷麦、そうめん、中華そば、スパゲッティ、マカロニ、ビーフン、春雨等の任意の種類であってよい。麺類の主原料は、例えば、小麦粉、そば粉、豌豆でん粉、緑豆でん粉、ばれいしょ(ジャガイモ)でん粉、かんしょ(サツマイモ)でん粉、及び、米粉からなる群から選択される少なくとも一種である。
【0026】
[食感改良剤:成分]
食感改良剤は、少なくとも石化海藻粉末と、有機酸粉末とを含む。
石化海藻粉末は、海藻の石灰質残渣である石化海藻を粉末状に加工したものである。石化海藻は、海藻が海中のカルシウムやマグネシウム等のミネラル成分を吸着して得られるものであれば特に限定されないが、例えば、紅藻類海藻の石灰質残渣、好ましくはサンゴモ科海藻の石灰質残渣である。サンゴモ科海藻が枯れた後に残る石灰質残渣は、主に炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムによって構成される。サンゴモ科海藻の石灰質残渣は、例えば、90質量%以上が無機質の成分で構成される。石化海藻粉末は、一例として、30質量%以上のカルシウム成分を含む。
【0027】
食感改良剤に含まれる石化海藻粉末は、一例として、海底より浚渫された石化海藻から洗浄や篩別、手作業による選別等の手段によって砂や貝殻等の夾雑物を除去した後、さらに殺菌及び乾燥させた状態のものを粉砕して粉末化することで得ることができる。石化海藻の乾燥手段は特に限定されないが、例えば、日干しや熱風乾燥等である。乾燥の程度は、石化海藻の水分含有量が十分に低下する程度であればよく、例えば、水分含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるまでの程度である。石化海藻を粉末化する方法は、例えば、ボールミル、ハンマーミル、ローラーミル等である。なお、乾燥及び粉末化の順序を入れ替えてもよく、例えば、乾燥前の石化海藻を予め粉砕した後、この粉砕物を乾燥して石化海藻粉末としてもよい。
【0028】
石化海藻粉末は、市販品でもよく、市販の石化海藻粉末としては、例えば、Aquamin(登録商標、Marigot社製)、海藻カルシウムIT-1(太陽化学株式会社製)、アクアミネラル(日本バイオコン株式会社製)等が挙げられる。
【0029】
食感改良剤に含まれる有機酸粉末は、粉末酢のように有機酸と有機酸以外の物質とを含む粉体でもよいし、有機酸が精製された粉体でもよい。食感改良剤に含まれる有機酸粉末は、液体酢が粉末状に加工されたものでもよい。有機酸粉末は、例えば、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、コハク酸、酒石酸、酪酸、フマル酸、プロピオン酸、フィチン酸、及び、ギ酸からなる群から選択される少なくとも一種を含む。有機酸粉末は、例えば、酢酸及びクエン酸からなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、特に、酢酸を含む粉末酢であることが好ましい。
【0030】
粉末酢は、食酢を粉末状に加工したものである。食酢は、全国食酢公正取引協議会が定めた「食酢の表示に関する公正競争規約」(令和4年2月1日一部変更)に規定されるものを用いることができる。すなわち、食酢は、酢酸または氷酢酸を使用せずに原材料を醸造発酵させた醸造酢、または、酢酸または氷酢酸を希釈して製造される合成酢である。粉末酢は、醸造酢を粉末状に加工した粉末醸造酢であってもよいし、合成酢を粉末状に加工した粉末合成酢であってもよい。
【0031】
醸造酢は、例えば、穀物酢または果実酢であるが、原料として野菜やその他の農産物、またはアルコールやはちみつを用いたものでもよい。穀物酢は、例えば、米酢、米黒酢、または大麦黒酢である。果実酢は、例えば、りんご酢、または、ぶどう酢である。
【0032】
粉末酢の酸度は、「食酢の表示に関する公正競争規約の施行規則」(令和4年1月12日一部変更承認、全国食酢公正取引協議会)に規定されるように、100gの粉末酢中に含まれる総酸量(g)を質量比(g/100g)で表した値である。粉末酢の酸度は、一例として、10質量%以上30質量%以下である。なお、総酸量とは、酢酸に加えて酢酸以外の有機酸を含めた酸の質量を指す。また、粉末酢以外の有機酸粉末においても同様の酸度の考え方を採用することができる。
【0033】
なお、食感改良剤は、さらに、粉末状のクエン酸三ナトリウムを含んでもよい。食感改良剤は、さらに、粉末状のグルテンを含んでもよい。食感改良剤は、上記成分に加えて賦形剤や各種の調味料を含んでもよい。賦形剤や調味料は、食感改良剤としての機能を阻害しないものであれば限定されない。賦形剤は、例えば、デキストリン、澱粉、糖類等である。調味料は、例えば、食塩または胡椒を含む各種香辛料等である。
【0034】
[食感改良剤:組成]
有機酸粉末の酸度をX(質量%)として表すとともに、石化海藻粉末の質量をA、有機酸粉末の質量をBとすると、A及びBが0.25B/X≦A≦200B/Xを満たす。例えば、有機酸粉末の酸度が10質量%(X=10)であるとき、Aの範囲は、0.025B≦A≦20Bである。
【0035】
石化海藻粉末の配合比をAとし、有機酸粉末の配合比をBとする。この場合、配合比Aが1≦A≦20を満たし、かつ、配合比Bが5/X≦B≦200/Xを満たし、かつ、石化海藻粉末と有機酸粉末との質量比がA:Bを満たすことが好ましい。例えば、有機酸粉末の酸度が10質量%(X=10)であるとき、配合比Bの範囲は、0.5≦B≦20である。
【0036】
石化海藻粉末と有機酸粉末とクエン酸三ナトリウムとを含む食感改良剤において、クエン酸三ナトリウムの配合比をCとする。この場合、配合比A、Bが上記範囲を満たし、かつ、配合比Cが0.5≦C≦20を満たし、かつ、石化海藻粉末と有機酸粉末とクエン酸三ナトリウムとの質量比がA:B:Cを満たすことが好ましい。
【0037】
石化海藻粉末と有機酸粉末とクエン酸三ナトリウムとグルテンと含む食感改良剤において、グルテンの配合比をDとする。この場合、配合比A、B、Cが上記範囲を満たし、かつ、配合比Dが10≦D≦250を満たし、かつ、上記4成分の質量比がA:B:C:Dを満たすことが好ましい。
【0038】
なお、石化海藻粉末と有機酸粉末とグルテンと含む食感改良剤においては、配合比A、Bが上記範囲を満たし、かつ、配合比Dが10≦D≦250を満たし、かつ、石化海藻粉末と有機酸粉末とグルテンとの質量比がA:B:Dを満たすことが好ましい。
【0039】
[食感改良剤:食品への添加量]
食感改良剤は、例えば、畜肉、魚肉、及び、植物性たん白のうち少なくとも一種を用いた加工食品における食品生地に添加される。食品生地は、例えば、畜肉、及び、植物性たん白のうちの少なくとも一種を含む畜肉生地でもよいし、魚肉、及び、植物性たん白のうちの少なくとも一種を含む魚肉生地でもよい。または、食品生地は、例えば、畜肉、魚肉、及び、植物性たん白が混合された生地でもよい。
【0040】
食品生地は、10質量%以上100質量%未満の畜肉または魚肉を含むことが好ましく、10質量%以上90質量%以下の畜肉または魚肉を含むことがより好ましい。例えば、餃子の生地は、10質量%以上60質量%以下の畜肉を含む。鶏つくねの生地は、20質量%以上90質量%以下の畜肉を含む。ハンバーグの生地は、10質量%以上90質量%以下の畜肉を含む。魚肉を用いた焼売の生地は、40質量%以上80質量%以下の魚肉を含む。また、卵白様の食感をより好適に付与する観点から、食品生地は、30質量%以上90質量%以下の畜肉または魚肉を含むことがより好ましい。なお、上記の食品生地のうち、畜肉または魚肉の一部が、植物性たん白に置き換えられてもよい。
【0041】
食感改良剤が添加される食品生地の質量を100質量部とすると、食品生地に対する石化海藻粉末の添加量は、例えば、0.01質量部以上0.2質量部以下が好ましい。
有機酸粉末の酸度をX(質量%)として表した場合、100質量部の食品生地に対する有機酸粉末の添加量は、例えば、0.05/X質量部以上2/X質量部以下が好ましい。例えば、有機酸粉末の酸度が10質量%(X=10)であるとき、100質量部の食品生地に対する有機酸粉末の添加量は、0.005質量部以上0.2質量部以下が好ましい。
【0042】
100質量部の食品生地に対するクエン酸三ナトリウムの添加量は、例えば、0.005質量部以上0.2質量部以下が好ましい。
100質量部の食品生地に対するグルテンの添加量は、例えば、0.1質量部以上2.5質量部以下が好ましい。
【0043】
食感改良剤は、例えば、小麦粉等の麺類の主原料に添加される。100質量部の麺類の主原料に食感改良剤を添加する場合、石化海藻粉末、有機酸粉末、クエン酸三ナトリウム、及び、グルテンの添加量は、100質量部の食品生地に食感改良剤を添加する場合と同様の添加量を採用できる。
【0044】
[食感改良剤を用いた食品の製造方法]
食感改良剤を用いた食品の製造方法は、畜肉、魚肉、及び、植物性たん白のうちの少なくとも一種を含む食品生地、または、麺類の原材料に対して食感改良剤を添加する。例えば、畜肉、魚肉、及び、植物性たん白のうち少なくとも一種を用いた加工食品の一例である練り製品の場合では、原材料が混合された食品生地に食感改良剤を添加する。例えば、主原料として小麦粉を含む麺類の場合では、小麦粉に対して予め食感改良剤を添加した混合物を作成し、当該混合物にかんすい(かん粉)や水を添加する。なお、食感改良剤は、何れの製造方法においても、食感改良剤の各成分が混合された製剤の状態で添加されてもよいし、食感改良剤の各成分を各別に添加してもよい。
【0045】
食感改良剤中の石化海藻粉末、有機酸粉末、クエン酸三ナトリウム、及び、グルテンの含有率(質量%)は、賦形剤や他の成分の含有率に応じて変わる。したがって、原材料に対する食感改良剤の添加量は、原材料の質量に対する石化海藻粉末、有機酸粉末、クエン酸三ナトリウム、及び、グルテンの添加量が適切になるように、食感改良剤中の各成分の組成に応じて適宜決定すればよい。例えば、100質量部の食品生地に対する食感改良剤の添加量が0.5質量部以上3質量部以下、好ましくは0.5質量部以上2質量部以下となるように、食感改良剤中の各成分の含有率を決定してもよい。
【0046】
[実施形態の作用]
畜肉、魚肉、及び、植物性たん白のうちの少なくとも一種を含む食品生地に対して石化海藻粉末及び有機酸粉末を含む食感改良剤を添加すると、食品生地中の水分に食感改良剤が溶解する。または、麺類の主原料に対して石化海藻粉末及び有機酸粉末を含む食感改良剤を添加した後に水を加えると、食感改良剤が溶解する。石化海藻粉末は、一般的に水にほとんど不溶であるが、有機酸粉末を同時に添加することで、石化海藻粉末が一部可溶化する。そして、溶解した石化海藻粉末によって、食品に対して硬さや崩壊感(噛み込んだ時のほぐれ易さ)といった卵白様の食感を付与できるものと考えられる。
【0047】
また、食感改良剤がクエン酸三ナトリウムを含む場合では、卵白を用いた場合の硬さや崩壊感により近づく。これは、クエン酸三ナトリウムが石化海藻粉末の溶解を促進させることによるものと考えられる。そして、食感改良剤がクエン酸三ナトリウムに加えて、さらにグルテンを含む場合では、硬さや崩壊感がさらに高められることによって、実際の卵白を用いた場合の食感により近づく。
【0048】
[試験例]
以下、図1図13を参照して試験例1~13を説明する。なお、各試験例で採用した試験条件は、本実施形態の効果を説明するための実施例もしくは比較例であって、本発明を限定するものではない。
【0049】
[試験例1]
図1に示すように、試験例1では、石化海藻粉末、有機酸粉末、クエン酸三ナトリウム、及び、グルテンの各成分の組み合わせを変えて畜肉生地に添加した試料A1~A10を作製した。畜肉生地は、100質量部の豚うで肉(5mm挽)、0.7質量部の食塩、及び、15質量部の冷水を含む。なお、畜肉生地の組成を質量%に換算すると、畜肉生地は、86.4質量%の豚うで肉、0.6質量%の食塩、及び、13質量%の冷水を含む。
【0050】
石化海藻粉末は、「海藻カルシウムIT-1」(太陽化学株式会社製)を用いた。有機酸粉末は、粉末酢のうち粉末醸造酢の一例である粉末米酢(佐藤食品工業株式会社製)を用いた。粉末米酢は、酸度が10質量%のものを用いた。なお、石化海藻粉末、及び、有機酸粉末については、以下の試験例2~13においても、特に言及しない限り試験例1と同種の成分を用いた。
【0051】
試料A1~A10では、畜肉生地と食感改良剤の各成分とをフードカッターで1分間混合した後、団子状にしたものをスチームオーブンにて98℃、7分間の条件で加熱した。その後、50℃程度になるまで粗熱を取ることで試料A1~A10を作製した。また、試験例1では、比較のために食感改良剤の何れの成分も加えずに畜肉生地のみで調理したブランクの試料X1と、食感改良剤の成分に代えて乾燥卵白を畜肉生地に加えて調理した試料Y1とを作製した。
【0052】
試料A1では、豚うで肉と食塩と冷水との総量を100質量部とした畜肉生地に対して、0.05質量部の石化海藻粉末を添加した。試料A2では、0.05質量部の粉末酢を添加した。試料A3では、0.05質量部のクエン酸三ナトリウムを添加した。試料A4では、1質量部のグルテンを添加した。試料A5では、0.05質量部の石化海藻粉末と、0.05質量部の粉末酢とを添加した。試料A6では、0.05質量部の石化海藻粉末と、0.05質量部のクエン酸三ナトリウムとを添加した。試料A7では、0.05質量部の石化海藻粉末と、1質量部のグルテンとを添加した。試料A8では、0.05質量部の粉末酢と、0.05質量部のクエン酸三ナトリウムとを添加した。試料A9では、0.05質量部の粉末酢と、1質量部のグルテンとを添加した。試料A10では、0.05質量部のクエン酸三ナトリウムと、1質量部のグルテンとを添加した。なお、試料X1では、100質量部の畜肉生地のみを用いた。試料Y1では、100質量部の畜肉生地に対して、1質量部の乾燥卵白を添加した。
【0053】
試験例1では、試料A1~A10を喫食することで、各試料の硬さを官能評価で評価した。採点については、訓練された10名のパネラーが1~5点の1点刻みで採点した。採点基準として、まず、畜肉生地のみで調理した試料X1を「2点」、畜肉生地に乾燥卵白を加えた試料Y1を「5点」とした。そして、試料X1よりも硬さが感じられなかったものを「1点」とした。試料X1と同等のものを「2点」とした。硬さが試料X1よりもやや向上したものを「3点」とした。硬さが試料X1よりも顕著に向上したものを「4点」とした。硬さが試料X1よりも特に顕著に向上し、試料Y1と同等であるものを「5点」とした。
【0054】
なお、点数は、各パネラーの採点結果の平均点が、1点以上1.25点未満の場合を1点、1.25点以上1.75点未満の場合を1.5点、1.75点以上2.25点未満の場合を2点、2.25点以上2.75点未満の場合を2.5点、2.75点以上3.25点未満の場合を3点、3.25点以上3.75点未満の場合を3.5点、3.75点以上4.25点未満の場合を4点、4.25点以上4.75点未満の場合を4.5点、4.75点以上5点以下の場合を5点として、0.5点刻みに換算した。評価においては、硬さが4点以上のものを、有意な硬さの向上効果が得られた状態として、好ましい水準であると判定した。試料A1~A10に対する硬さの評価結果を図1に示す。
【0055】
石化海藻粉末、粉末酢、クエン酸三ナトリウムをそれぞれ単体で加えた試料A1~A3では、ブランクの試料X1と同等の硬さであり、硬さの向上効果は確認されなかった(2点)。グルテンを単体で加えた試料A4では、ブランクの試料X1と比較して硬さがやや向上していることが確認された(3点)。
【0056】
石化海藻粉末と粉末酢とを加えた試料A5では、ブランクの試料X1と比較して顕著に硬さが向上していることが確認された(4点)。これに対して、石化海藻粉末とクエン酸三ナトリウムとを加えた試料A6、粉末酢とクエン酸三ナトリウムとを加えた試料A8では、ブランクの試料X1と同等の硬さであった。すなわち、試料A6、A8では、硬さの向上効果は確認されなかった(2点)。また、石化海藻粉末、粉末酢、クエン酸三ナトリウムのうちの何れか1つとグルテンとを加えた試料A7、A9、A10では、ブランクの試料X1と比較して硬さがやや向上していることが確認された(3点)。
【0057】
以上より、畜肉生地に対して石化海藻粉末と粉末酢とを加えることで、顕著な硬さの向上効果が確認された。なお、試料A4、A7、A9、A10の結果では、畜肉生地に対してグルテンを加えることで硬さがやや向上するが、さらに石化海藻粉末、粉末酢、クエン酸三ナトリウムの何れか1つを添加しても、硬さのさらなる向上効果は見られなかった。
【0058】
[試験例2]
図2に示すように、試験例2では、石化海藻粉末及び有機酸粉末を畜肉生地に添加した試料B1と、石化海藻粉末及び有機酸粉末に加えてクエン酸三ナトリウム及びグルテンのうち少なくとも一種を畜肉生地に添加した試料B2~B4とを作製した。なお、試験例2では、試験例1と同様の畜肉生地を用いるとともに、試験例1と同様の工程で調理を行った。試験例2では、試験例1と同様に試料X1と試料Y1とを作製した。
【0059】
試料B1では、豚うで肉と食塩と冷水との総量を100質量部とした畜肉生地に対して、0.05質量部の石化海藻粉末と、0.05質量部の粉末酢とを添加した。試料B2では、0.05質量部の石化海藻粉末と、0.05質量部の粉末酢と、0.05質量部のクエン酸三ナトリウムとを添加した。試料B3では、0.05質量部の石化海藻粉末と、0.05質量部の粉末酢と、1質量部のグルテンとを添加した。試料B4では、0.05質量部の石化海藻粉末と、0.05質量部の粉末酢と、0.05質量部のクエン酸三ナトリウムと、1質量部のグルテンとを添加した。なお、試料B1は、試験例1における試料A5と同様の組成である。
【0060】
試験例2では、試料B1~B4、X1、Y1の各試料を喫食することで、硬さ及び崩壊感(噛み込んだ際のほぐれ易さ)を官能評価で評価した。採点は、訓練された10名のパネラーが1~5点の1点刻みで採点した。
【0061】
硬さの採点基準は、試験例1と同様の基準を採用した。崩壊感の採点基準は、まず、畜肉生地のみで調理した試料X1を「2点」、畜肉生地に乾燥卵白を加えた試料Y1を「5」とした。そして、試料X1よりも崩壊感が感じられなかったものを「1点」とした。試料X1と同等のものを「2点」とした。崩壊感が試料X1よりもやや向上したものを「3点」とした。崩壊感が試料X1よりも顕著に向上したものを「4点」とした。崩壊感が試料X1よりも特に顕著に向上し、試料Y1と同等であるものを「5点」とした。なお、崩壊感の点数は、各パネラーの採点結果の平均点を硬さの点数と同様の方法で0.5点刻みに換算した値を用いた。
【0062】
硬さについては、石化海藻粉末と粉末酢とを加えた試料B1では、試料A5と同様に試料X1と比較して顕著に硬さが向上していることが確認された(4点)。石化海藻粉末と粉末酢とに加えてクエン酸三ナトリウムを加えた試料B2、及び、石化海藻粉末と粉末酢とに加えてグルテンを加えた試料B3では、試料B1よりもさらに硬さが向上していることが確認された(4.5点)。石化海藻粉末と粉末酢とに加えてクエン酸三ナトリウムとグルテンとを加えた試料B4では、硬さが試料X1よりも特に顕著に向上し、試料Y1と同等であることが確認された(5点)。
【0063】
崩壊感については、石化海藻粉末と粉末酢とを加えた試料B1、及び、石化海藻粉末と粉末酢とに加えてグルテンを加えた試料B3では、試料X1と比較して崩壊感がやや向上していることが確認された(3点)。石化海藻粉末と粉末酢とに加えてクエン酸三ナトリウムを加えた試料B2では、試料X1と比較して顕著に崩壊感が向上していることが確認された(4.5点)。石化海藻粉末と粉末酢とに加えてクエン酸三ナトリウムとグルテンとを加えた試料B4では、崩壊感が試料X1よりも特に顕著に向上し、試料Y1と同等であることが確認された(5点)。
【0064】
以上より、石化海藻粉末と粉末酢とに加えて、さらにクエン酸三ナトリウム及びグルテンのうち少なくとも一種を畜肉生地に対して加えることで、石化海藻粉末と粉末酢とを添加する場合よりも硬さの向上効果がより高まることが確認された。また、石化海藻粉末と粉末酢とに加えて、さらにクエン酸三ナトリウムを畜肉生地に対して加えた場合、石化海藻粉末と粉末酢とを添加する場合よりも、卵白を添加した場合の崩壊感の食感に近づくことが確認された。そして、石化海藻粉末と粉末酢とに加えて、さらにクエン酸三ナトリウム及びグルテンの両方を畜肉生地に対して加えることで、卵白を添加した場合と同等の硬さ及び崩壊感が得られることが確認された。
【0065】
[試験例3]
図3に示すように、試験例3では、有機酸粉末、クエン酸三ナトリウム、及び、グルテンを含み、かつ、石化海藻粉末の添加量が異なる食感改良剤を畜肉生地に添加した試料C1~C9を作製した。試験例3では、試験例1と同様の畜肉生地を用いるとともに、試験例1と同様の工程で調理を行った。試験例3では、試料C1~C9の各試料を喫食することで、硬さ及び崩壊感を試験例2と同様の官能評価で評価した。
【0066】
試料C1~C9では、100質量部の畜肉生地に対して、0.05質量部の粉末酢と、0.05質量部のクエン酸三ナトリウムと、1質量部のグルテンとを含み、かつ、石化海藻粉末の添加量を変えた食感改良剤を添加した。なお、試料C1では、石化海藻粉末を添加しなかった。
【0067】
試料C2~C9の石化海藻粉末の添加量は、試料C2~C9の順に、0.001質量部、0.005質量部、0.01質量部、0.05質量部、0.1質量部、0.15質量部、0.2質量部、0.3質量部とした。なお、図3には、試料X1、Y1の評価結果を合わせて示す。
【0068】
硬さについては、石化海藻粉末の添加量が0質量部以上0.005質量部以下の試料C1~C3、及び、石化海藻粉末の添加量が0.3質量部の試料C9では、試料X1よりも硬さがやや向上していた(3点)。これは、畜肉生地に対してグルテン単体を加えた試験例1の試料A4と同等の水準であることから、石化海藻粉末と有機酸粉末(粉末酢)とによる硬さの向上ではなく、グルテンによる硬さの向上であるものと考えられる。
【0069】
石化海藻粉末の添加量が0.01質量部の試料C4、及び、0.2質量部の試料C8では、試料X1よりも硬さが顕著に向上していた(4点)。石化海藻粉末の添加量が0.05質量部以上0.15質量部以下の試料C5~C7では、硬さが試料X1よりも特に顕著に向上し、試料Y1と同等であることが確認された(5点)。
【0070】
崩壊感については、石化海藻粉末が添加されていない試料C1、及び、石化海藻粉末の添加量が0.001質量部の試料C2では、試料X1と同等の崩壊感が確認された(2点)。すなわち、試料C1、C2では、石化海藻粉末による崩壊感の向上が見られなかった。石化海藻粉末の添加量が0.005質量部の試料C3では、崩壊感が試料X1よりも顕著に向上したことが確認された(4点)。石化海藻粉末の添加量が0.01質量部以上0.3質量部以下の試料C4~C9では、崩壊感が試料X1よりも特に顕著に向上し、試料Y1と同等であることが確認された(5点)。
【0071】
以上より、100質量部の畜肉生地に対して石化海藻粉末の添加量が0.01質量部以上0.2質量部以下の場合では、硬さの顕著な向上効果が確認された。特に、100質量部の畜肉生地に対して石化海藻粉末の添加量が0.05質量部以上0.15質量部以下の場合では、卵白を添加した場合と同等の特に顕著な硬さの向上効果が確認された。100質量部の畜肉生地に対して石化海藻粉末の添加量が0.005質量部以上の場合では、崩壊感の顕著な向上効果が確認された。特に、100質量部の畜肉生地に対して石化海藻粉末の添加量が0.01質量部以上の場合では、卵白を添加した場合と同等の特に顕著な崩壊感の向上効果が確認された。
【0072】
したがって、100質量部の畜肉生地に対して、石化海藻粉末の添加量が0.01質量部以上0.2質量部以下の場合では、硬さ及び崩壊感の顕著な向上効果が得られることが確認された。特に、100質量部の畜肉生地に対して、石化海藻粉末の添加量が0.05質量部以上0.1質量部以下の場合では、卵白を添加した場合と同等の特に顕著な硬さ及び崩壊感の向上効果が得られることが確認された。
【0073】
[試験例4]
図4に示すように、試験例4では、石化海藻粉末、クエン酸三ナトリウム、及び、グルテンを含み、かつ、有機酸粉末の添加量が異なる食感改良剤を畜肉生地に添加した試料D1~D9を作製した。なお、試験例4では、有機酸粉末として、試験例1~3と同様に10質量%の酸度を有する粉末酢を用いた。試験例4では、試験例1と同様の畜肉生地を用いるとともに、試験例1と同様の工程で調理を行った。試験例4では、試料D1~D9の各試料を喫食することで、硬さ及び崩壊感を試験例2と同様の官能評価で評価した。
【0074】
試料D1~D9では、0.05質量部の石化海藻粉末と、0.05質量部のクエン酸三ナトリウムと、1質量部のグルテンとを含み、かつ、粉末酢の添加量を変えた食感改良剤を100質量部の畜肉生地に対して添加した。なお、試料D1では、粉末酢を添加しなかった。
【0075】
試料D2~D9の粉末酢の添加量は、試料D2~D9の順に、0.001質量部、0.005質量部、0.01質量部、0.05質量部、0.1質量部、0.15質量部、0.2質量部、0.3質量部とした。なお、図4には、試料X1、Y1の評価結果を合わせて示す。
【0076】
硬さについては、粉末酢が添加されていない試料D1、粉末酢の添加量が0.001質量部の試料D2、及び、添加量が0.3質量部の試料D9では、試料X1よりも硬さがやや向上していた(3点)。これは畜肉生地に対してグルテン単体を加えた試験例1の試料A4と同等の水準であることから、石化海藻粉末と有機酸粉末(粉末酢)とによる硬さの向上ではなく、グルテンによる硬さの向上であるものと考えられる。
【0077】
粉末酢の添加量が0.005質量部の試料D3、及び、0.1質量部以上0.2質量部以下の試料D6~D8では、試料X1よりも硬さが顕著に向上していた(試料D3:4.5点、試料D6~D8:4点)。粉末酢の添加量が0.01質量部の試料D4、及び、添加量が0.05質量部の試料D5では、硬さが試料X1よりも特に顕著に向上し、試料Y1と同等であることが確認された(5点)。
【0078】
崩壊感については、石化海藻粉末が添加されていない試料D1では、試料X1と同等の崩壊感が確認された(2点)。すなわち、試料D1では、石化海藻粉末による崩壊感の向上が見られなかった。石化海藻粉末の添加量が0.001質量部の試料D2では、崩壊感が試料X1よりもやや向上したことが確認された(3点)。石化海藻粉末の添加量が0.005質量部以上0.3質量部以下の試料D3~D9では、崩壊感が試料X1よりも特に顕著に向上し、試料Y1と同等であることが確認された(5点)。
【0079】
以上より、100質量部の畜肉生地に対して10質量%の酸度を有する粉末酢の添加量が0.005質量部以上0.2質量部以下の場合では、硬さの顕著な向上効果が確認された。特に、100質量部の畜肉生地に対して粉末酢の添加量が0.01質量部以上0.05質量部以下の場合では、卵白を添加した場合と同等の特に顕著な硬さの向上効果が確認された。100質量部の畜肉生地に対して粉末酢の添加量が0.005質量部以上の場合では、卵白を添加した場合と同等の特に顕著な崩壊感の向上効果が確認された。
【0080】
したがって、100質量部の畜肉生地に対して、粉末酢の添加量が0.005質量部以上0.2質量部以下の場合では、硬さ及び崩壊感の顕著な向上効果が確認された。特に、100質量部の畜肉生地に対して、粉末酢の添加量が0.01質量部以上0.05質量部以下の場合では、卵白を添加した場合と同等の特に顕著な硬さ及び崩壊感の向上効果が確認された。
【0081】
また、有機酸粉末における酸度をX(質量%)で表すと、100質量部の畜肉生地に対して、有機酸粉末の添加量が0.05/X質量部以上2/X質量部以下の場合では、硬さ及び崩壊感の顕著な向上効果が確認された。100質量部の畜肉生地に対して、有機酸粉末の添加量が0.1/X質量部以上0.5/X質量部以下の場合では、硬さ及び崩壊感の顕著な向上効果が確認された。
【0082】
[試験例5]
図5に示すように、試験例5では、石化海藻粉末、有機酸粉末、及び、グルテンを含み、かつ、クエン酸三ナトリウムの添加量が異なる食感改良剤を畜肉生地に添加した試料E1~E8を作製した。試験例5では、試験例1と同様の畜肉生地を用いるとともに、試験例1と同様の工程で調理を行った。試験例5では、試料E1~E8の各試料を喫食することで、硬さ及び崩壊感を試験例2と同様の官能評価で評価した。
【0083】
試料E1~E8では、0.05質量部の石化海藻粉末と、0.05質量部の粉末酢と、1質量部のグルテンとを含み、かつ、クエン酸三ナトリウムの添加量を変えた食感改良剤を100質量部の畜肉生地に対して添加した。
【0084】
試料E1~E8のクエン酸三ナトリウムの添加量は、試料E1~E8の順に、0.001質量部、0.005質量部、0.01質量部、0.05質量部、0.1質量部、0.15質量部、0.2質量部、0.3質量部とした。なお、図5には、0.05質量部の石化海藻粉末と、0.05質量部の粉末酢と、1質量部のグルテンとを含み、かつ、クエン酸三ナトリウムを含まない試験例2の試料B3、及び、試料X1、Y1の評価結果を合わせて示す。
【0085】
硬さについては、クエン酸三ナトリウムの添加量が0.001質量部の試料E1、及び、0.005質量部の試料E2では、試料X1よりも硬さが顕著に向上していた(4.5点)。これは、試験例2の試料B3と同等の水準であることから、クエン酸三ナトリウムによる硬さの向上ではなく、石化海藻粉末、有機酸粉末(粉末酢)、及び、グルテンによる硬さの向上であるものと考えられる。
【0086】
クエン酸三ナトリウムの添加量が0.01質量部以上0.15質量部以下の試料E3~E6では、硬さが試料X1よりも特に顕著に向上し、試料Y1と同等であることが確認された(5点)。
【0087】
クエン酸三ナトリウムの添加量が0.2質量部の試料E7では、試料X1よりも硬さが顕著に向上していた(4点)。クエン酸三ナトリウムの添加量が0.3質量部の試料E8では、試料X1よりも硬さがやや向上していた(3点)。クエン酸三ナトリウムを含まない試験例2の試料B3の評価結果(4.5点)と比較すると、試料E7、E8の何れにおいても硬さの向上効果が低下していた。
【0088】
崩壊感については、クエン酸三ナトリウムの添加量が0.001質量部の試料E1では、崩壊感が試料X1よりもやや向上したことが確認された(3点)。これは、試験例2の試料B1(図2参照)及び試料B3と同等の水準であることから、クエン酸三ナトリウムによる崩壊感の向上ではなく、石化海藻粉末及び有機酸粉末(粉末酢)による崩壊感の向上であるものと考えられる。
【0089】
クエン酸三ナトリウムの添加量が0.005質量部の試料E2では、試料X1よりも崩壊感が顕著に向上したことが確認された(4点)。クエン酸三ナトリウムの添加量が0.01質量部以上0.3質量部以下の試料E3~E8では、崩壊感が試料X1よりも特に顕著に向上し、試料Y1と同等であることが確認された(5点)。
【0090】
以上より、100質量部の畜肉生地に対してクエン酸三ナトリウムの添加量が0.01質量部以上0.15質量部以下の場合では、卵白を添加した場合と同等の特に顕著な硬さの向上効果が確認された。100質量部の畜肉生地に対してクエン酸三ナトリウムの添加量が0.005質量部以上の場合では、崩壊感の顕著な向上効果が確認された。特に、クエン酸三ナトリウムの添加量が0.01質量部以上の場合では、卵白を添加した場合と同等の特に顕著な崩壊感の向上効果が確認された。また、クエン酸三ナトリウムの添加量を0質量部以上0.2質量部以下とすることで、硬さの向上効果の低下を抑えられることが確認された。
【0091】
したがって、100質量部の畜肉生地に対して、クエン酸三ナトリウムの添加量が0.005質量部以上0.2質量部以下の場合では、硬さ及び崩壊感の顕著な向上効果が得られることが確認された。特に、100質量部の畜肉生地に対して、クエン酸三ナトリウムの添加量が0.01質量部以上0.15質量部以下の場合では、卵白を添加した場合と同等の特に顕著な硬さ及び崩壊感の向上効果が得られることが確認された。
【0092】
[試験例6]
図6に示すように、試験例6では、石化海藻粉末、有機酸粉末、及び、クエン酸三ナトリウムを含み、かつ、グルテンの添加量が異なる食感改良剤を畜肉生地に添加した試料F1~F8を作製した。試験例6では、試験例1と同様の畜肉生地を用いるとともに、試験例1と同様の工程で調理を行った。試験例6では、試料F1~F8の各試料を喫食することで、硬さ及び崩壊感を試験例2と同様の官能評価で評価した。
【0093】
試料F1~F8では、0.05質量部の石化海藻粉末と、0.05質量部の粉末酢と、0.05質量部のクエン酸三ナトリウムとを含み、かつ、グルテンの添加量を変えた食感改良剤を100質量部の畜肉生地に対して添加した。
【0094】
試料F1~F8のクエン酸三ナトリウムの添加量は、試料F1~F8の順に、0.1質量部、0.5質量部、1質量部、1.5質量部、2質量部、2.5質量部、3質量部、3.5質量部とした。なお、図6には、0.05質量部の石化海藻粉末と、0.05質量部の粉末酢と、0.05質量部のクエン酸三ナトリウムとを含み、かつ、グルテンを含まない試験例2の試料B2、及び、試料X1、Y1の評価結果を合わせて示す。
【0095】
硬さについては、グルテンの添加量が0.1質量部の試料F1では、試料X1よりも硬さが顕著に向上していた(4.5点)。これは、試験例2の試料B2と同等の水準であることから、グルテンによる硬さの向上ではなく、石化海藻粉末、有機酸粉末(粉末酢)、及び、クエン酸三ナトリウムによる硬さの向上であるものと考えられる。また、グルテンの添加量が0.5質量部以上3.5質量部以下の試料F2~F8では、硬さが試料X1よりも特に顕著に向上し、試料Y1と同等であることが確認された(5点)。
【0096】
崩壊感については、グルテンの添加量が0.1質量部以上2質量部以下の試料F1~F5では、卵白を添加した場合と同等の特に顕著な崩壊感の向上効果が確認された(5点)。グルテンの添加量が2.5質量部の試料F6では、試料X1よりも崩壊感が顕著に向上していた(4点)。グルテンの添加量が3質量部の試料F7、及び、3.5質量部の試料F8では、試料X1よりも崩壊感がやや向上していた(3点)。
【0097】
グルテンを含まない試験例2の試料B2の評価結果(4.5点)と比較すると、試料F6~F8の何れにおいても崩壊感の向上効果が低下していた。グルテンの添加量が増加すると、噛み込んだ際のねばつき(ねちゃつき)が増加する傾向が確認された。特に、グルテンの添加量が2.5質量部超、詳細には3質量部以上の試料F7、F8では、崩壊感の顕著な向上効果が失われた。
【0098】
以上より、100質量部の畜肉生地に対してグルテンの添加量が0.5質量部以上の場合では、卵白を添加した場合と同等の特に顕著な硬さの向上効果が確認された。100質量部の畜肉生地に対してグルテンの添加量が0.1質量部以上2質量部以下の場合では、卵白を添加した場合と同等の特に顕著な崩壊感の向上効果が確認された。また、グルテンの添加量を0質量部以上2.5質量部以下とすることで、崩壊感の向上効果の低下を抑えられることが確認された。
【0099】
したがって、100質量部の畜肉生地に対して、グルテンの添加量が0.1質量部以上2.5質量部以下の場合では、硬さと崩壊感の顕著な向上効果が得られることが確認された。特に、グルテンの添加量が0.5質量部以上2質量部以下の場合では、卵白を添加した場合と同等の特に顕著な硬さと崩壊感の向上効果が確認された。なお、グルテンの添加量が0.1質量部以上0.5質量部未満の場合では、グルテンが添加されない場合よりも崩壊感が向上する。また、グルテンの添加量が2質量部超2.5質量部以下の場合では、グルテンが添加されない場合よりも硬さが向上する。
【0100】
[試験例7]
図7に示すように、試験例7では、石化海藻粉末及び有機酸粉末を畜肉生地に添加した試料G1を作製した。試料G1では、有機酸粉末として、粉末酢に代えてクエン酸粉末を用いた。なお、試験例7では、試験例1と同種の石化海藻粉末を用いた。試験例7では、試験例1と同様の畜肉生地を用いるとともに、試験例1と同様の工程で調理を行った。また、クエン酸粉末は、ほぼ100%の酸度(純度)を有する精製剤を用いた。
【0101】
試料G1では、100質量部の畜肉生地に対して、0.05質量部の石化海藻粉末と、0.005質量部のクエン酸粉末とを添加した。なお、図7には、100質量部の畜肉生地に対して0.05質量部の石化海藻粉末と、0.05質量部の粉末酢とを添加した試料B1、及び、試料X1、Y1の評価結果を合わせて示す。また、クエン酸粉末の添加量は、有機酸粉末の酸度から算出される総酸量が試料B1と等しくなるように決定した。試験例7では、試料G1を喫食することで、硬さ及び崩壊感を試験例2と同様の官能評価で評価した。
【0102】
石化海藻粉末とクエン酸粉末とを添加した試料G1では、試料B1と同様に試料X1と比較して顕著に硬さが向上していることが確認された(4点)。また、試料G1では、試料B1と同様に試料X1と比較してやや崩壊感が向上していることが確認された(3点)。以上より、粉末酢に代えて、有機酸粉末の一例であるとしてクエン酸粉末を用いた場合でも、粉末酢を用いた場合と同様の効果が得られることが確認された。
【0103】
[試験例8]
図8に示すように、試験例8では、畜肉と、粒状大豆たん白とを用いたハンバーグの試料H1~H4を作製した。
【0104】
試料H1~H3では、グループ1の材料に対して、グループ3、4の材料をこの順に混合した。試料H1では、グループ4の材料として、玉ねぎと乾燥パン粉とを加えた。試料H2では、グループ4の材料として、1質量部の乾燥卵白をさらに加えた。試料H3では、比較のために、グループ4の材料として、2.5質量部のリン酸架橋デンプンをさらに加えた。なお、リン酸架橋デンプンは、従来の卵白代替材料の一例である。
【0105】
試料H4では、グループ1の材料に対して、グループ2~4の材料をこの順に混合した。試料H4では、グループ2の材料として、0.05質量部の石化海藻粉末と、0.05質量部の粉末酢と、0.05質量部のクエン酸三ナトリウムと、1質量部のグルテンとを含む食感改良剤を添加した。また、試料H4では、グループ4の材料として、試料H1と同様に、玉ねぎと乾燥パン粉とを加えた。なお、試料H2の乾燥卵白、試料H3のリン酸架橋デンプン、及び、試料H4の食感改良剤の添加量は、試料H1で用いた畜肉生地を100質量部としたときの各成分の添加量を表す。
【0106】
試験例8では、図8に示す試料H1~H4の生地を1つあたり60gのハンバーグ型に成形した。そして、コンベクションオーブンにて175℃、7分の条件で加熱した後、放冷して一度冷凍した。その後、真空パックした冷凍ハンバーグをスチームオーブンにて98℃、10分の条件で加熱した後、50℃程度になるまで粗熱を取った。
【0107】
試験例8では、試料H1~H4を喫食することで、硬さ及び崩壊感の食感を官能評価で評価した。なお、試験例8では、試験例2と同様に、乾燥卵白、リン酸架橋デンプン、及び食感改良剤の何れも添加していない試料H1の硬さ及び崩壊感を「2点」、乾燥卵白を添加した試料H2の硬さ及び崩壊感を「5点」とした。そして、試料H1よりも硬さ(または崩壊感)が感じられなかったものを「1点」とした。試料H1と同等の硬さ(または崩壊感)のものを「2点」とした。試料H1よりも硬さ(または崩壊感)がやや向上したものを「3点」とした。試料H1よりも硬さ(または崩壊感)が顕著に向上したものを「4点」とした。試料H1よりも硬さ(または崩壊感)が特に顕著に向上し、試料H2と同等であるものを「5点」とした。
【0108】
リン酸架橋デンプンを用いた試料H3では、試料H1と同等の硬さで、硬さの向上効果が確認されなかった(2点)。また、試料H3では、試料H1よりも崩壊感が低下して、噛み込んだ際のねばつき(ねちゃつき)が増加する傾向が確認された(1点)。リン酸架橋デンプンを用いた場合、一般的に室温程度まで冷めると硬さが向上する傾向にあるが、試験例8のように温かい状態(50℃程度)では、硬さの向上効果が得られにくく、崩壊感については試料H1よりも悪化する傾向が確認された。
【0109】
食感改良剤を用いた試料H4では、試料H2と同等の硬さ及び崩壊感が確認された(各5点)。すなわち、試料H4では、硬さ及び崩壊感の特に顕著な向上効果が確認された。
以上より、畜肉と粒状大豆たん白とを組み合わせた畜肉生地に対して食感改良剤を添加することで、卵白を添加した場合と同等の特に顕著な硬さ及び崩壊感の向上効果が得られることが確認された。また、従来の卵白代替材料の一例であるリン酸架橋デンプンと比較して、温かい状態でも硬さ及び崩壊感の向上効果が確認された。
【0110】
[試験例9]
図9に示すように、試験例9では、石化海藻粉末を用いた場合と、石化海藻粉末に類似の成分を用いた場合と比較するために試料I1~I4を作製した。試料I1は、有機酸粉末、クエン酸三ナトリウム、及び、グルテンを含み、かつ、石化海藻粉末を含まない。試料I2は、試料I1の3つの成分に加えてさらに石化海藻粉末を含む。試料I3は、試料I2の4つの成分のうち、石化海藻粉末に代えてドロマイトを含む。試料I4は、試料I2の4つの成分のうち、石化海藻粉末に代えて炭酸カルシウム粉末及び炭酸マグネシウム粉末を含む。試験例9では、試験例1と同様の畜肉生地を用いるとともに、試験例9と同様の工程で調理を行った。
【0111】
なお、ドロマイトは、石灰岩の主成分である炭酸カルシウムのうち、カルシウムの一部がマグネシウムに置き換わったCaMg(COで表される。ドロマイトは、鉱物の状態では苦灰石、岩石の状態では苦灰岩と呼ばれる。ドロマイトのカルシウム(Ca)含有量は、例えば、20質量%以上である。
【0112】
試料I1~I4では、試料I1~I4に共通する成分として、100質量部の畜肉生地に対して、0.03質量部の粉末酢と、0.05質量部のクエン酸三ナトリウムと、0.7質量部のグルテンとを添加した。試料I2では、上記3成分に加えて、0.05質量部の石化海藻粉末を添加した。試料I3では、上記3成分に加えて、0.054質量部のドロマイトを添加した。試料I4では、上記3成分に加えて、0.0425質量部の炭酸カルシウム粉末と、0.00545質量部の炭酸マグネシウム粉末とを添加した。
【0113】
なお、図9には、試料X1、Y1の評価結果を合わせて示す。また、試料I3におけるドロマイトの添加量は、カルシウムとマグネシウムとの総量が試料I2の石化海藻粉末と等しくなるように決定した。同様に、試料I4における炭酸カルシウム粉末及び炭酸マグネシウム粉末の添加量は、カルシウムとマグネシウムとの総量が試料I2の石化海藻粉末と等しくなるように決定した。試験例9では、試料I1~I4を喫食することで、硬さを試験例2と同様の官能評価で評価した。
【0114】
石化海藻粉末を添加していない試料I1では、試料X1と比較してやや硬さが向上していたものの(3点)、崩壊感が試料X1と同等程度で、崩壊感の向上効果は確認されなかった(2点)。石化海藻粉末を添加した試料I2では、卵白を添加した場合と同等の特に顕著な硬さ及び崩壊感の向上効果が確認された(各5点)。
【0115】
これに対して、石化海藻粉末に代えてドロマイトを添加した試料I3、及び、石化海藻粉末に代えて炭酸カルシウム粉末及び炭酸マグネシウム粉末を添加した試料I4では、試料X1と比較して硬さ及び崩壊感の両方がやや向上していた(各3点)。
【0116】
以上より、石化海藻粉末に代えてドロマイト、または、炭酸カルシウム粉末及び炭酸マグネシウム粉末を添加した場合では、石化海藻粉末を添加した場合に得られる顕著な硬さ及び崩壊感の向上効果が得られなかった。したがって、ドロマイト、または、炭酸カルシウム粉末及び炭酸マグネシウム粉末ではなく、石化海藻粉末を用いることで、顕著な硬さ及び崩壊感の向上効果が得られることが確認された。
【0117】
[試験例10]
図10に示すように、試験例10では、小麦粉を主原料とする麺類の一例である中華麺の試料J1~J4を作製した。試料J1~J4では、グループ1の材料に対してグループ2の材料を添加した。試料J1では、グループ1の材料として、100質量部の小麦粉のみを用いた。試料J2では、グループ1の材料として、100質量部の小麦粉と1質量部の卵白とを用いた。試料J3では、グループ1の材料として、100質量部の小麦粉と1質量部のグルテン製剤とを用いた。グルテン製剤は、従来の卵白代替材料の一例である。試料J4では、グループ1の材料として、100質量部の小麦粉と、0.05質量部の石化海藻粉末、0.05質量部の粉末酢、0.05質量部のクエン酸三ナトリウム、及び、1質量部のグルテンを含む食感改良剤とを用いた。
【0118】
試験例10では、グループ1の材料に対してグループ2の材料を添加して10分間の混合工程を行うことで麺生地を作製した。そして、麺生地に対して4段階の圧延工程を施した後、#20の番手(麺幅:1.5mm)で最終麺厚が1.5mmとなるように切断することでストレート麺を作製した。茹で時間は、2分30秒以上3分以下とした。
【0119】
試験例10では、試料J1~J4を喫食することで、硬さの官能評価を行った。なお、試験例10では、試験例1と同様に、卵白、グルテン製剤、及び食感改良剤の何れも添加していない試料J1の硬さを「2点」、卵白を添加した試料J2の硬さを「5点」とした。そして、試料J1よりも硬さが感じられなかったものを「1点」とした。試料J1と同等の硬さのものを「2点」とした。試料J1よりも硬さがやや向上したものを「3点」とした。試料J1よりも硬さが顕著に向上したものを「4点」とした。試料J1よりも硬さが特に顕著に向上し、試料J2と同等であるものを「5点」とした。試料J1~J4に対する硬さの評価結果を図10に示す。
【0120】
グルテン製剤を用いた試料J3では、試料J1と比較すると硬さが顕著に向上していたものの、試料J2と比較すると硬さが感じられず、卵白を添加した場合よりも硬さの向上効果が小さいことが確認された(4点)。また、食感改良剤を用いた試料J4では、試料J1よりも硬さが特に顕著に向上し、試料J2と同等の硬さが確認された(5点)。すなわち、試料J4では、卵白を添加した場合と同等の硬さの向上効果が確認された。
【0121】
以上より、麺類の主原料に対して食感改良剤を添加することで、卵白を添加した場合と同等の硬さの向上効果が確認された。また、従来の卵白代替材料の一例であるグルテン製剤と比較して、より優れた硬さの向上効果が確認された。
【0122】
[試験例11]
図11に示すように、試験例11では、魚肉と、粉状大豆たん白とを用いた魚肉すり身(蒲鉾)の試料K1~K3を作製した。
【0123】
試料K1~K3では、まず、グループ1の材料に対して、グループ2、3の材料をこの順に混合した。詳細には、スケソウ(KA級)のすり身を-3℃で一晩解凍した後、グループ1のすり身と氷水とをカッターを用いて粗摺りした。次いで、グループ2の食塩を添加して塩摺した。そして、グループ3の各成分を添加して混合して魚肉生地を作製した。試料K2では、100質量部の魚肉生地に対して、さらにグループ4の成分として、1質量部の卵白を添加してミキサーで混合した。試料K3では、100質量部の魚肉生地に対して、さらにグループ4の成分として、0.05質量部の石化海藻粉末と、0.05質量部の粉末酢と、0.05質量部のクエン酸三ナトリウムと、0.7質量部のグルテンとを含む食感改良剤を添加して混合した。
【0124】
そして、試料K1~K3の各魚肉生地を、直径3cmのケースに充填した状態で、38℃、40分の条件で加熱した後、さらに、スチームオーブンで98℃、20分の条件で加熱した。そして、加熱後の試料K1~K3を氷水でおよそ10℃程度まで急冷した後、1cmの厚さにカットした。
【0125】
試験例11では、試料K1~K3を喫食することで、硬さの食感を官能評価で評価した。なお、試験例11では、試験例1と同様に、卵白及び食感改良剤の何れも添加していない試料K1の硬さを「2点」、卵白を添加した試料K2の硬さを「5点」とした。そして、試料K1よりも硬さが感じられなかったものを「1点」とした。試料K1と同等のものを「2点」とした。硬さが試料K1よりもやや向上したものを「3点」とした。硬さが試料K1よりも顕著に向上したものを「4点」とした。硬さが試料K1よりも特に顕著に向上し、試料K2と同等であるものを「5点」とした。
【0126】
食感改良剤を用いた試料K3では、卵白を用いた試料K2と同等の硬さが確認された(5点)。以上より、魚肉と粉状大豆たん白とを組み合わせた魚肉生地に対して食感改良剤を添加することで、卵白を添加した場合と同等の特に顕著な硬さの向上効果が確認された。
【0127】
[試験例12]
試験例12では、畜肉生地に食感改良剤を添加した場合の硬さの向上効果を、押し込み荷重の測定による定量評価にて評価した。なお、試験例12では、試験例1と同様の畜肉生地を用いた。
【0128】
図12に示すように、試験例12では、試料L1~L4を作製した。試料L1では、100質量部の畜肉生地のみを用いた。試料L2では、100質量部の畜肉生地に対して、1質量部の乾燥卵白を添加した。試料L3では、100質量部の畜肉生地に対して、2質量部のリン酸架橋デンプンを添加した。試料L4では、100質量部の畜肉生地に対して、0.05質量部の石化海藻粉末、0.05質量部の粉末酢、0.05質量部のクエン酸三ナトリウム、及び、1質量部のグルテンを含む食感改良剤を添加した。
【0129】
試験例12では、試料L1~L4の畜肉生地を直径3cmのケースに充填した状態で、98℃、11分30秒の条件でスチーム加熱した。加熱後、氷水で冷却することで粗熱を取った後に3cmの厚さでカットした。その後、一度冷凍した後に真空パックしてから98℃、8分の条件でスチーム加熱した。そして、各試料が50℃になるように15分以上調温した状態で押し込み荷重の測定に供した。
【0130】
押し込み荷重の測定では、試験機としてレオメータ(製品名:SUN RHEOMETER CR-500DX、株式会社サン科学製)を用いた。押し込み荷重の測定では、試料L1~L4を所定の押し込み深さまで押し込んだ際の押し込み荷重の最大値を測定した。測定条件は、押し込み速度を60mm/分、測定間隔を0.050秒、押し込み深さを12mm(定深度モード)、押し込み治具(アダプタ)を直径10mmの球形とした。
【0131】
図12に示すように、試料L1~L4の押し込み荷重の最大値は、試料L1~L4の順に904.24gf、1166.04gf、822.38gf、及び、1134.86gfであった。この結果から、食感改良剤を添加した試料L4では、畜肉生地のみで作製した試料L1と比較して、乾燥卵白を添加した試料L2と同等に硬さが向上することが確認された。
【0132】
また、加工デンプンを添加した試料L3では、畜肉生地のみで作製した試料L1と同等以下の硬さであった。従来の卵白代替材料の一例である加工デンプンでは、温かい状態(50℃程度)での硬さの向上効果が得られにくいことが確認された。このことから、試料L3では、試料L2と比較して、噛み込んだ際の食感の差異が大きいと考えられる。
【0133】
以上より、石化海藻粉末、粉末酢、クエン酸三ナトリウム、及び、グルテンを含む食感改良剤を添加することで、卵白を添加した場合と同等の硬さの向上効果を得られることが、定量評価によっても確認された。
【0134】
[試験例13]
図13に示すように、試験例13では、試験例8よりも少量の畜肉と、粉状大豆たん白及び粉状大豆たん白とを用いた肉団子の試料M1~M3を作製した。
【0135】
試料M1~M3では、グループ1の材料に対して、グループ2、3、4の材料をこの順に混合した。試料M2では、試料M1の材料に加えて、グループ4の材料として、1質量部の卵白をさらに添加した。試料M3では、試料M1の材料に加えて、グループ2の材料として、0.05質量部の石化海藻粉末と、0.05質量部の粉末酢と、0.05質量部のクエン酸三ナトリウムと、0.7質量部のグルテンとを含む食感改良剤をさらに添加した。なお、試料M2の卵白、及び、試料M3の食感改良剤の添加量は、試料M1で用いた畜肉生地を100質量部としたときの各成分の添加量を表す。
【0136】
試験例13では、図13に示す試料M1~M3の生地を1つあたり20gの団子型に成形した。そして、175℃、30秒の条件でプレフライした後、真空パックした状態で95℃、7分の条件でスチーム加熱した。その後、50℃程度になるまで粗熱を取った。
【0137】
試験例13では、試料M1~M3を喫食することで硬さ及び崩壊感の食感を官能評価で評価した。なお、試験例13では、試験例2と同様に、卵白及び食感改良剤の何れも添加していない試料M1の硬さ及び崩壊感を「2点」、卵白を添加した試料M2の硬さ及び崩壊感を「5点」とした。そして、試料M1よりも硬さ(または崩壊感)が感じられなかったものを「1点」とした。試料M1と同等の硬さ(または崩壊感)のものを「2点」とした。試料M1よりも硬さ(または崩壊感)がやや向上したものを「3点」とした。試料M1よりも硬さ(または崩壊感)が顕著に向上したものを「4点」とした。試料M1よりも硬さ(または崩壊感)が特に顕著に向上し、試料M2と同等であるものを「5点」とした。
【0138】
食感改良剤を用いた試料M3では、試料M2と同等の硬さ及び崩壊感が確認された(各5点)。すなわち、試料M3では、硬さ及び崩壊感の特に顕著な向上効果が確認された。
以上より、100質量部中25質量部程度の少量の畜肉を含む畜肉生地においても、食感改良剤を添加することで、卵白を添加した場合と同等の特に顕著な硬さ及び崩壊感の向上効果が得られることが確認された。
【0139】
[実施形態の効果]
上記実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)石化海藻粉末と有機酸粉末とを含む食感改良剤によれば、食品に対して硬さや崩壊感といった卵白様の食感を付与できる。したがって、アレルゲンとなる卵白の使用を避けつつ、卵白様の食感を付与できる。
【0140】
(2)石化海藻粉末と有機酸粉末とに加えて、さらに、クエン酸三ナトリウムを含む食感改良剤によれば、硬さや崩壊感といった食感を、卵白を用いた場合の食感により近づけることができる。
【0141】
(3)石化海藻粉末と有機酸粉末とに加えて、さらに、グルテンを含む食感改良剤によれば、卵白を用いた場合の硬さにより近づけることができる。特に、石化海藻粉末と有機酸粉末とに加えて、さらに、クエン酸三ナトリウムとグルテンとを含む食感改良剤によれば、特に顕著な硬さや崩壊感の向上効果が発現することで、卵白を用いた場合と同等の硬さや崩壊感が得られる。
【0142】
(4)食感改良剤において、石化海藻粉末の配合比をA、有機酸粉末の配合比をB、クエン酸三ナトリウムの配合比をC、グルテンの配合比をDとし、さらに、有機酸粉末の酸度をX(質量%)とする。上記4成分を含む食感改良剤では、配合比A~Dが1≦A≦20、かつ、5/X≦B≦200/X、かつ、0.5≦C≦20、かつ、10≦D≦250を満たし、かつ、上記4成分の質量比がA:B:C:Dを満たす。また、石化海藻粉末と有機酸粉末と含む食感改良剤では、配合比A、Bが上記範囲を満たし、かつ、石化海藻粉末と有機酸粉末との質量比がA:Bを満たす。石化海藻粉末と有機酸粉末とクエン酸三ナトリウムと含む食感改良剤では、配合比A~Cが上記範囲を満たし、かつ、石化海藻粉末と有機酸粉末とクエン酸三ナトリウムとの質量比がA:B:Cを満たす。石化海藻粉末と有機酸粉末とグルテンと含む食感改良剤では、配合比A、B、Dが上記範囲を満たし、かつ、石化海藻粉末と有機酸粉末とグルテンとの質量比がA:B:Dを満たす。このように構成された食感改良剤を食品生地や麺類の主原料等に適量添加することで、食品に卵白様の食感を好適に付与できる。また、予め各成分の質量比が好適な状態となるように調製された食感改良剤であるため、食感改良剤に含まれる各成分が適切な添加量となるように、食品生地や麺類の主原料等に対して容易に添加することができる。
【0143】
(5)100質量部の食品生地または麺類の主原料に対する石化海藻粉末の添加量は、例えば、0.01質量部以上0.2質量部以下に設定される。有機酸粉末の酸度をX(質量%)として表した場合、100質量部の食品生地または麺類の主原料に対する有機酸粉末の添加量は、例えば、0.05/X質量部以上2/X質量部以下に設定される。100質量部の食品生地または麺類の主原料に対して上記の添加量の石化海藻粉末と有機酸粉末とを添加することで、食品に卵白様の食感を好適に付与できる。
【0144】
(6)石化海藻粉末及び有機酸粉末に加えて、さらにクエン酸三ナトリウムを添加する場合、100質量部の食品生地または麺類の主原料に対するクエン酸三ナトリウムの添加量は、例えば、0.005質量部以上0.2質量部以下に設定される。100質量部の食品生地または麺類の主原料に対して、石化海藻粉末と有機酸粉末とに加えて、さらに上記の添加量のクエン酸三ナトリウムを添加することで、硬さや崩壊感といった卵白様の食感をより好適に付与できる。
【0145】
(7)石化海藻粉末及び有機酸粉末に加えて、さらにグルテンを添加する場合、100質量部の食品生地または麺類の主原料に対するグルテンの添加量は、例えば、0.1質量部以上2.5質量部以下に設定される。100質量部の食品生地または麺類の主原料に対して、石化海藻粉末と有機酸粉末とに加えて、さらに上記の添加量のグルテンを添加することで、硬さや崩壊感といった卵白様の食感をより好適に付与できる。特に、石化海藻粉末と有機酸粉末とに加えて、さらにクエン酸三ナトリウムと上記の添加量のグルテンとを添加することで、特に顕著な硬さや崩壊感の向上効果が発現することによって、卵白を用いた場合と同等の硬さや崩壊感が得られる。
【0146】
(8)石化海藻粉末及び粉末酢は、食品添加物ではなく食品として扱われる場合がある。したがって、食感改良剤において有機酸粉末として粉末酢を用いる場合は、食品添加物として表示される成分の種類を増加させずに卵白様の食感を付与できる。
【0147】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。また、以下に示す変更例は、技術的に矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0148】
・食感改良剤は、少なくとも石化海藻粉末と有機酸粉末とを含めばよい。この場合でも、顕著な硬さの向上効果が得られる。また、食品の製造方法としては、畜肉、魚肉、及び、植物性たん白のうちの少なくとも一種を含む食品生地、または、麺類の主原料に対して、少なくとも石化海藻粉末と有機酸粉末とを添加すればよい。
【0149】
・食感改良剤は、石化海藻粉末と有機酸粉末とに加えてクエン酸三ナトリウムを含み、かつ、グルテンを含まない構成でもよい。この場合、食感改良剤が石化海藻粉末と有機酸粉末とを含み、かつ、クエン酸三ナトリウム及びグルテンを含まない構成よりも、硬さ及び崩壊感が卵白を添加した場合の食感により近づく。また、食品の製造方法としては、畜肉、魚肉、及び、植物性たん白のうちの少なくとも一種を含む食品生地、または、麺類の主原料に対して、少なくとも石化海藻粉末と有機酸粉末とクエン酸三ナトリウムとを添加する態様としてもよい。
【0150】
・食感改良剤は、石化海藻粉末と有機酸粉末とに加えてグルテンを含み、かつ、クエン酸三ナトリウムを含まない構成でもよい。この場合、食感改良剤が石化海藻粉末と有機酸粉末とを含み、かつ、クエン酸三ナトリウム及びグルテンを含まない構成よりも、硬さが卵白を添加した場合の食感により近づく。また、食品の製造方法としては、畜肉、魚肉、及び、植物性たん白のうちの少なくとも一種を含む食品生地、または、麺類の主原料に対して、少なくとも石化海藻粉末と有機酸粉末とグルテンとを添加する態様としてもよい。
【0151】
・上記実施形態では、有機酸粉末として粉末酢を例示したが、粉末酢に代えて粉末酢以外の有機酸粉末を使用してもよい。
・食感改良剤の各成分の質量比をA:B:C:Dとした場合、配合比A、B、C、及び、Dが1≦A≦20、かつ、5/X≦B≦200/X、かつ、0.5≦C≦20、かつ、10≦D≦250を満たす構成を例示した。(Xは有機酸粉末の酸度(質量%)を表す。)しかし、卵白様の食感付与効果が得られるのであれば、配合比A、B、C、及び、Dの値は、上記範囲に限定されない。例えば、石化海藻粉末の配合比Aは、カルシウムやマグネシウムといった無機質の成分の含有率が相対的に多い石化海藻粉末を用いる場合にはA<1でもよいし、無機質の成分の含有率が相対的に少ない石化海藻粉末を用いる場合には20<Aでもよい。例えば、有機酸粉末の配合比Bは、調味料として液体酢を用いる場合等には、B<5/Xとして有機酸粉末の分量を減らしてもよいし、硬さが過剰に低下しない程度であれば、200/X<Bでもよい。例えば、クエン酸三ナトリウムの配合比Cは、上述したように0≦C<0.5でもよいし、硬さが過剰に低下しない程度であれば、20<Cでもよい。例えば、グルテンの配合比Dは、上述したように0≦D<10でもよいし、崩壊感が過剰に低下しない程度であれば、250<Dでもよい。なお、食感改良剤が石化海藻粉末と有機酸粉末と含む場合、石化海藻粉末と有機酸粉末とクエン酸三ナトリウムと含む場合、石化海藻粉末と有機酸粉末とグルテンと含む場合についても、同様の変更が可能である。
【0152】
・100質量部の食品生地または麺類の主原料に対する石化海藻粉末の添加量は、0.01質量部以上0.2質量部以下に限定されない。カルシウムやマグネシウムといった無機質の成分の含有率が相対的に多い石化海藻粉末を用いる場合には、石化海藻粉末の添加量が0.01質量部未満でもよい。無機質の成分の含有率が相対的に少ない石化海藻粉末を用いる場合には、石化海藻粉末の添加量が0.2質量部超でもよい。
【0153】
・有機酸粉末の酸度をX(質量%)として表した場合、100質量部の食品生地または麺類の主原料に対する有機酸粉末の添加量は、0.05/X質量部以上2/X質量部以下に限定されない。例えば、調味料として液体酢を用いる場合等には、有機酸粉末の添加量を0.05/X質量部未満として有機酸粉末の分量を減らしてもよいし、硬さが過剰に低下しない程度であれば、有機酸粉末の添加量が2/X質量部超でもよい。
【0154】
・100質量部の食品生地または麺類の主原料に対するクエン酸三ナトリウムの添加量は、0.005質量部以上0.2質量部以下に限定されない。例えば、上述したようにクエン酸三ナトリウムが添加されなくてもよいし、クエン酸三ナトリウムの添加量が0.005質量部未満でもよいし、硬さが過剰に低下しない程度であれば、クエン酸三ナトリウムの添加量が0.2質量部超でもよい。
【0155】
・100質量部の食品生地または麺類の主原料に対するグルテンの添加量は、0.1質量部以上2.5質量部以下に限定されない。例えば、上述したようにグルテンが添加されなくてもよいし、グルテンの添加量が0.1質量部未満でもよいし、崩壊感が過剰に低下しない程度であれば、グルテンの添加量が2.5質量部超でもよい。
【0156】
・食品の製造方法として、畜肉、魚肉、及び、植物性たん白のうちの少なくとも一種、または、麺類の主原料に対して、少なくとも石化海藻粉末と有機酸粉末とを添加する方法を例示した。例えば、有機酸粉末に代えて、液体状の有機酸を用いてもよい。例えば、有機酸粉末に代えて、液体状の有機酸の一例である液体酢を用いてもよい。この場合、液体酢によって添加される総酸量が、有機酸粉末(粉末酢)の場合に添加される総酸量と等しくなるように、液体酢の添加量を決定すればよい。したがって、食品の製造方法においては、粉末酢または液体酢から選択される何れかの酢を添加してもよい。液体酢は、全国食酢公正取引協議会が定めた「食酢の表示に関する公正競争規約」(令和4年2月1日一部変更)に規定される食酢を用いることができる。なお、粉末状の有機酸を用いる場合には、石化海藻粉末、有機酸粉末等の各成分が、食品生地や麺類の主原料に対して適切な添加量となるように配合された食感改良剤として取り扱うことができる。すなわち、食感改良剤に含まれる各成分が適切な添加量となるように容易に添加することができる。
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