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特開2025-18416異常原因推定システム、及び異常原因推定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018416
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】異常原因推定システム、及び異常原因推定方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/38 20180101AFI20250130BHJP
   F24F 11/49 20180101ALI20250130BHJP
   F25B 49/02 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
F24F11/38
F24F11/49
F25B49/02 520A
F25B49/02 520Z
F25B49/02 570Z
F25B49/02 570A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122100
(22)【出願日】2023-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岡 恵子
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 久恵
(72)【発明者】
【氏名】有冨 陽子
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 規和
(72)【発明者】
【氏名】戸倉 伯之
(72)【発明者】
【氏名】緒方 英治
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB04
3L260BA54
3L260BA57
3L260BA75
3L260CA50
3L260CB70
3L260DA10
3L260EA01
3L260EA19
3L260EA22
3L260FB80
3L260FC40
3L260GA17
(57)【要約】
【課題】空調システムにおいて、異常原因を高精度に推定する異常原因推定システム、及び異常原因推定方法を提供する。
【解決手段】正常動作時の特徴量を検出して、特徴量(学習データ)を求める特徴量(学習データ)算出手段と、異常動作時の特徴量を検出して、特徴量(異常データ)を求める特徴量(異常データ)算出手段と、異常動作時の異常原因を推定する異常原因推定手段を備える。異常原因推定手段は、異常特徴量状態(マップ)が予め設定されると共に、異常原因と特徴量の適合性を含む評価値が設定された異常原因推定マップと、異常動作時の異常特徴量状態(異常データ)と異常特徴量状態(マップ)とが一致した場合に、異常原因と特徴量とが適合すると評価値を加算し、異常原因と特徴量とが適合しないと評価値を減算して、異常原因推定評価値を求める異常原因指数算出手段を備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の機器種類より構成された空調機器の動作を監視する異常原因推定システムであって、
前記異常原因推定システムは、
前記空調機器の正常動作時の前記機器種類の動作状態を表す複数の特徴量を検出して、特徴量(学習データ)を求める特徴量(学習データ)算出手段と、
前記空調機器の異常動作時の前記機器種類の動作状態を表す複数の特徴量を検出して、特徴量(異常データ)を求める特徴量(異常データ)算出手段と、
前記特徴量(正常データ)と前記特徴量(異常データ)から前記異常動作時の異常原因を推定する異常原因推定手段を備えており、
更に前記異常原因推定手段は、
前記特徴量毎に、前記異常原因に関する前記特徴量の状態(以下、異常特徴量状態(マップ)という)が予め設定されていると共に、前記異常原因と前記特徴量の適合性を含む評価値が予め設定されている異常原因推定マップと、
前記特徴量毎に、前記異常動作時の前記特徴量(異常データ)から求まる異常特徴量状態(異常データ)と前記異常原因推定マップの前記異常特徴量状態(マップ)とが一致するか否かを判断し、一致した場合は、前記特徴量毎に、前記異常原因と前記特徴量とが適合すると、適合すると判断された前記特徴量の前記評価値を加算処理し、前記異常原因と前記特徴量とが適合しないと、適合しないと判断された前記特徴量の前記評価値を減算処理して、前記異常原因を推定するための異常原因推定評価値を求める異常原因指数算出手段を備える
ことを特徴とする異常原因推定システム。
【請求項2】
請求項1に記載の異常原因推定システムであって、
前記異常原因は複数の前記異常原因からなり、
前記異常原因推定手段は、それぞれの前記異常原因毎に複数の前記特徴量を検出し、それぞれの前記異常原因毎に、複数の前記特徴量に基づいて新たな前記評価値を求める
ことを特徴とする異常原因推定システム。
【請求項3】
請求項2に記載の異常原因推定システムであって、
前記異常原因推定手段は異常原因特定手段を備えており、前記異常原因特定手段は、複数の前記異常原因の内で前記評価値が最も大きい前記異常原因を最終的な前記異常原因として特定する
ことを特徴とする異常原因推定システム。
【請求項4】
請求項1に記載の異常原因推定システムであって、
前記評価値は、重み係数であり
前記異常原因推定手段は異常関連特徴量特定手段を備えており、前記異常関連特徴量特定手段は、二つの前記特徴量から二次元分布密度を生成し、前記特徴量(異常データ)が前記特徴量(学習データ)から乖離した頻度を前記特徴量の異常寄与度値として算出し、
前期異常原因指数算出手段は、前記重み係数と前記異常寄与度値とを乗算して、新たな前記評価値を求める
ことを特徴とする異常原因推定システム。
【請求項5】
請求項4に記載の異常原因推定システムであって、
前記二次元分布密度は、グレースケールのニ次元分布密度画像で表され、前記特徴量(学習データ)は、「黒」~「灰色」の画素であり、前記特徴量(異常データ)は、「白」の画素であり、
前記異常寄与度値は、前記「白」の画素の数である
ことを特徴とする異常原因推定システム。
【請求項6】
請求項1に記載の異常原因推定システムであって、
前記異常原因推定マップにおける複数の特徴量は、前記異常原因に適合する前記特徴量が重複しない形態で設定されている
ことを特徴とする異常原因推定システム。
【請求項7】
複数の機器種類より構成された空調機器の動作を監視する異常原因推定システムにおける異常原因推定方法であって、
前記異常原因推定方法は、
前記空調機器の正常動作時の前記機器種類の動作状態を表す複数の特徴量を検出して、特徴量(学習データ)を求める特徴量(学習データ)算出工程と、
前記空調機器の異常動作時の前記機器種類の動作状態を表す複数の特徴量を検出して、特徴量(異常データ)を求める特徴量(異常データ)算出工程と、
前記特徴量(正常データ)と前記特徴量(異常データ)から前記異常動作時の異常原因を推定する異常原因推定工程を実行するものであり、
更に前記異常原因推定工程は、
前記特徴量毎に、前記異常原因に関する前記特徴量の状態(以下、異常特徴量状態(マップ)という)が予め設定されていると共に、前記異常原因と前記特徴量の適合性を含む評価値が予め設定されている異常原因推定マップを用いて、
前記特徴量毎に、前記異常動作時の前記特徴量(異常データ)から求まる異常特徴量状態(異常データ)と前記異常原因推定マップの前記異常特徴量状態(マップ)とが一致するか否かを判断し、一致した場合は、前記特徴量毎に、前記異常原因と前記特徴量とが適合すると、適合すると判断された前記特徴量の前記評価値を加算処理し、前記異常原因と前記特徴量とが適合しないと、適合しないと判断された前記特徴量の前記評価値を減算処理する行程と、
前記加算処理と前記減算処理を行って前記異常原因を推定するための異常原因推定評価値を求める工程とを実行する
ことを特徴とする異常原因推定方法。
【請求項8】
請求項7に記載の異常原因推定方法であって、
前記異常原因は複数の前記異常原因からなり、
前記異常原因推定工程は、前記異常原因毎に複数の前記特徴量を検出し、前記異常原因毎に、複数の前記特徴量に基づいて新たな前記評価値を求める工程を実行する
ことを特徴とする異常原因推定方法。
【請求項9】
請求項8に記載の異常原因推定方法であって、
前記異常原因推定工程は、複数の前記異常原因の内で前記評価値が最も大きい前記異常原因を最終的な前記異常原因として特定する行程を実行する
ことを特徴とする異常原因推定方法。
【請求項10】
請求項7に記載の異常原因推定方法であって、
前記評価値は、重み係数であり
前記異常原因推定工程は、二つの前記特徴量からニ次元分布密度を生成し、前記特徴量(異常データ)が前記特徴量(学習データ)から乖離した頻度を前記特徴量の異常寄与度値として算出し、前記重み係数と前記異常寄与度値とを乗算して、前記評価値を求める工程を実行する
ことを特徴とする異常原因推定方法。
【請求項11】
請求項7に記載の異常原因推定方法であって、
前記異常原因推定マップにおける複数の特徴量は、前記異常原因に適合する前記特徴量が重複しない形態で設定されている
ことを特徴とする異常原因推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は異常原因推定システム、及び異常原因推定方法に係り、特に空調システムの異常を検知した後に、その異常に対する対策や原因調査等といった次の行動を決めるために有効な異常原因推定システム、及びその異常原因推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空調システムの異常や故障(以下、代表して異常と表記する)、及びその異常の発生の兆候を検知(異常検知)することは、空調システムの点検作業やメンテナンスのコスト低減のために極めて重要である。また、最近では顧客へ空調設備を提供するだけではなく、提供された空調設備の運用や保守を一括して請け負うサービスが、事業化される動きがある。
【0003】
そして、業務用空調システムや冷凍冷蔵機器においては、2015年4月から環境省より「フロン排出抑制法」が施行され、企業が保有するフロンガスを使用する機器に対して“簡易点検”と“定期点検”が義務化されている。このため、空調システムの異常を早期に正確に把握することが、サービス事業を運営する上で重要となってきている。
【0004】
更に、冷媒が循環する配管で連結された、室外機(一台、或いは複数台)と室内機(複数台)で構成される空調システムの異常を検知し、その異常原因を特定して何れの機器に異常を発生しているか特定することが、保守・修理の観点から重要である。このような異常検知を活用することにより、以下に示す「環境価値」、「経済価値」、「社会価値」を提供することができる。
【0005】
つまり、「環境価値」においては、冷媒(フロン)漏洩の早期検知による漏洩量削減で温暖化防止に寄与できる。また、「経済価値」においては、空調設備の突発故障による顧客の事業損失を抑制(生産停止・歩留まり・食品廃棄損等)し、また保守メンテナンスを時間基準から状態基準に変更することで、ライフサイクルコストの削減に寄与できる。更に、「社会価値」においては、医療現場等のミッションクリティカルな空調設備の安定稼動、及び保守人材不足(保守作業員の作業効率向上)の解消に寄与できる。
【0006】
特に、異常予兆を検知するだけでは、異常に対する対策や原因調査といった次の行動を決められないため、異常原因を推定することが必須であり、このニースが高まっている。そして、異常原因に感度のある特徴量が重複する場合に、異常原因推定精度が低くなるという課題があった。ここで、異常原因の推定精度が低いとは、推定正解率が低い(誤推定が多い)ことと、正解の場合でも識別余裕が小さいことの2つの意味を含む。そこで、異常原因を高精度に推定する手法を開発する必要がある。
【0007】
異常原因の推定に関して、例えば特開2020-16358号公報(特許文献1)には、異常原因と異常特徴量の状態(以下、異常特徴量状態という)の関係を表す異常原因推定マップを使用し、この異常原因推定マップの異常特徴量状態とサンプリングされた異常データの特徴量状態が一致した場合、適合する(該当する)異常原因のスコア(いわゆる評価値)を加算し、この加算されたスコアの大きさによって、異常原因を推定する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2020-16358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1に記載の異常検知システムは、取得されるセンサ信号について、空調機の冷媒に応じた空調機能力を表す演算式を複数選択して能力値を計算し、学習した正常な能力値データを基に異常検知する。そして、異常を検知した場合、異常関連能力値(特徴量)を特定し、その異常状態に関する情報を出力するシステムである。
【0010】
そして、異常原因と異常特徴量状態の関係を表す異常原因推定マップを使用し、異常原因推定マップと異常データの特徴量状態が一致した場合、適合する異常原因のスコアを加算し、その大きさから異常原因を推定している。
【0011】
この特許文献1の異常検知システムでは、異常原因と異常特徴量状態の関係を表す異常原因推定マップを使用し、この異常原因推定マップの特徴量状態と異常データの特徴量状態が一致した場合、適合する異常原因の評価値(スコア)を単に加算しているだけで、各異常原因に感度のある特徴量が重複する場合に、異常原因推定精度が悪くなるという課題を抱えている。
【0012】
例えば、或る特徴量に注目した場合、本来の異常原因と異なる他の異常原因であるにもかかわらず、本来の異常原因の特徴量として出現する場合がある。したがって、この不要な特徴量の影響を低減することが必要である。
【0013】
本発明の目的は、空調システムにおいて、異常原因を高精度に推定する異常原因推定システム、及び異常原因推定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、複数の機器種類より構成された空調機器の動作を監視する異常原因推定システムであって、異常原因推定システムは、空調機器の正常動作時の機器種類の動作状態を表す複数の特徴量を検出して、特徴量(学習データ)を求める特徴量(学習データ)算出手段と、空調機器の異常動作時の機器種類の動作状態を表す複数の特徴量を検出して、特徴量(異常データ)を求める特徴量(異常データ)算出手段と、特徴量(正常データ)と特徴量(異常データ)から異常動作時の異常原因を推定する異常原因推定手段を備えており、更に異常原因推定手段は、特徴量毎に、異常原因に関する特徴量の状態(以下、異常特徴量状態(マップ)という)が予め設定されていると共に、異常原因と特徴量の適合性を含む評価値が予め設定されている異常原因推定マップと、特徴量毎に、異常動作時の特徴量(異常データ)から求まる異常特徴量状態(異常データ)と異常原因推定マップの異常特徴量状態(マップ)とが一致するか否かを判断し、一致した場合は特徴量毎に、異常原因と特徴量とが適合すると、適合すると判断された特徴量の評価値を加算処理し、前記異常原因と前記特徴量とが適合しないと、適合しないと判断された前記特徴量の前記評価値を減算処理して、前記異常原因を推定するための異常原因推定評価値を求める異常原因指数算出手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、異常原因に適合しない特徴量に対して評価値を減算処理することにより、誤検知を低減できるため、異常原因を高精度に推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明が適用される空調システムの異常検知システムの基本構成を示す構成図である。
図2】本発明の実施形態になる空調システムにおける異常検知システムの処理ブロックを示す制御ブロック図である。
図3】異常に関係する特徴量を特定するための二次元分布密度を説明する説明図である。
図4】異常原因に関係する特徴量の異常寄与度値を説明する説明図である。
図5A】異常原因に関係する第1の異常特徴量状態を説明する説明図である。
図5B】異常原因に関係する第2の異常特徴量状態を説明する説明図である。
図6】異常原因の異常特徴量状態と異常原因の関係を表す異常原因推定マップを説明する説明図である表である。
図7】異常原因指数の算出処理を説明するフローチャート図である。
図8A】異常予兆検知部における解析結果例を説明する説明図である。
図8B図2における異常原因指数算出部における解析結果例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
【0018】
図1は、空調システムにおける異常検知システムの基本構成を示している。空調システムにおける異常検知システムは、空調を行う複数の機器や、動作状態等を検知するセンサを有する空調設備システム100と、空調設備システム100の動作を監視する監視計算機200とで構成されている。
【0019】
空調設備システム100における空調システムは、基本的には室外機と室内機とで構成されており、これらは冷媒配管によって連結されている。室外機は、圧縮機、熱交換機、膨張弁、送風ファン等の機器を備え、また室内機は、熱交換機、膨張弁、送風ファン等の機器を備えている。更に、夫々の機器には、機器の動作状態量(例えば、温度、圧力、電流等)を検出するセンサが設けられている。
【0020】
空調システムは、1台以上の室外機と1台以上の室内機とから構成されているので、夫々の室外機、室内機を構成する複数の機器は、機器種類として把握される。ここで機器種類とは、或る機能を実行する機器の種類である。例えば、機器種類として圧縮機に着目すると、異なる室外機の圧縮機は、圧縮機としてみると「同種機器」であり、同様に、機器種類として膨張弁、送風ファンに着目すると、異なる室外機の膨張弁、送風ファンは、夫々が「同種機器」となる。もちろん室内機についても同様である。
【0021】
動作状態量は、センサから直接的に計測できるセンサ信号や、センサで計測できずセンサ信号に基づいて演算によって求める特徴量があるが、基本的には、以下では両方を含めて特徴量として説明を行う。尚、センサ信号、或いは特徴量として、特別に取り扱う場合は、その旨の記載を行う。
【0022】
また、監視計算機200は、入出力機能を備えるインターフェースと、演算機能を備えるプロセッサ(演算手段)を備えており、プロセッサは、制御プログラムにしたがって以下に述べる本実施形態に係る演算を実行することができる。また、プロセッサの一例としては、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)が考えられるが、所定の演算処理を実行する主体であれば、他の半導体デバイスを使用することも可能である。
【0023】
監視計算機200は、空調設備システムに一体的に結合されていても良いし、有線/無線によって接続されたクラウドシステムであっても良い。また、制御プログラムは、制御機能を備えているので、制御機能ブロックとして捉えることができる。
【0024】
図2は、空調システムにおける異常予兆検知、及び異常原因推定システムの構成を示している。空調設備システム100は、複数の顧客サイトに設置され、ネットワークを介してセンサ情報等が監視計算機200に転送される。顧客サイトは、建築物(ビル等の建物)に対応し、例えば、建築物に備えられたPAC空調システム、及びVRF空調システム等が対応する。
【0025】
空調設備システム100は、1つ、又は複数の空調システム101と、空調システム101に設置されている複数の機器のセンサ信号Ssigを入力し、監視計算機200へ転送するセンサ信号入力部102から構成されている。空調システム101には、1つ、又は複数の種々の機器にセンサが設置されている。尚、複数の機器のセンサ信号Ssigは、例えば、温度、電流、圧力等に関するものである。
【0026】
監視計算機200は、空調システム101の異常を検知し、その異常原因(冷媒不足、膨張弁異常、圧縮機異常、室内熱交換器異常、室外熱交換器異常等)を推定する。これらは、プロセッサの制御プログラムで実行される機能である。これらの制御プログラムで実行される処理フローの詳細については、図3図6で説明することになる。
【0027】
監視計算機200は、空調設備システム100から転送された複数の機器のセンサ信号Ssigを、センサ信号加工部300に入力し、このセンサ信号加工部300で作成された機器の特徴量Sstaを用いて、異常予兆を検知して異常原因を推定するものである。
【0028】
次に、監視計算機200の制御機能について説明する。監視計算機200においては、空調設備システム100から転送された複数の機器のセンサ信号Ssigが、センサ信号加工部300によってセンサ信号Ssigに対応した機器の特徴量Sstaに加工される。ここで、機器の特徴量Sstaとは、センサから直接的に計測できるセンサ信号や、センサで計測できずセンサ信号に基づいて演算によって求める特徴量がある。
【0029】
これらの加工された特徴量Sstaは、後段の異常予兆検知部400に入力される。異常予兆検知部400では、空調設備システム100が正常に稼動している期間に得られた機器の特徴量Sstaを学習して記憶される。これは、正常な学習データとして取り扱われる。
【0030】
そして、空調設備システム100が稼動している評価時に、サンプリングによって抽出された特徴量が、学習された特徴量Sstaと比較され、学習された正常な範囲から乖離した際に、これを基にして異常予兆として検出される。異常予兆検知部400からの異常予兆の情報は、後続の異常原因推定システム500に入力される。
【0031】
空調設備システム100が正常に稼動している期間に得られた機器の特徴量Ssta(学習データ)、及び異常予兆検知部400で異常検知された機器の特徴量Ssta(異常データ)は、異常原因推定システム500を構成する後段の異常関連特徴量特定部501に入力される。
【0032】
異常関連特徴量特定部501では、特徴量Ssta(学習データ)と特徴量Ssta(異常データ)を比較して、少なくとも(1)特徴量の「異常寄与度値(ACN)」(異常頻度で表すことができる)と、(2)特徴量の「異常特徴量状態(DFS)」(正常時の場合より大きい、或いは小さいといった状態を表すパラメータ)とを求めて、異常原因指数算出部503に入力する。
【0033】
異常寄与度値(ACN)は、図3に示す特徴量を基礎にしたグレースケールの画像情報から求められ、異常特徴量状態(DFS)は、図5に示す特徴量を基礎にしたグレースケールの画像情報から求められるが、これらについては後述する。尚、図3図5の画像情報は、共通の画像情報を使用できる。
【0034】
異常原因指数算出部503には、上述した異常寄与度値(ACN)と異常特徴量状態(DFS)の入力の他に、異常発生時に想定される冷凍サイクルの変化から、稼働条件や冷凍サイクルの構成機器の性能等によって予め決められた異常特徴量状態(MFS)や評価値を異常原因毎にデータベース化した、異常原因推定マップ502のデータが入力されている。異常原因推定マップ502については、図6に示しているが、これについても後述する。
【0035】
異常原因指数算出部503では、異常関連特徴特定部501の異常データの異常特徴量状態(DFS)と各特徴量の異常寄与度値(ACN)、及び異常原因推定マップ502の異常特徴量状態(MFS)や評価値を用いて、各異常原因に対する異常原因指数(CI)を算出する。
【0036】
異常原因指数(CI)は、異常の発生に関する指標として用いられる。この異常原因指数(CI)は、異常原因特定部504に入力される。尚、この異常原因指数算出部503、異常原因特定部504の具体的な処理に関しては、図7に示すフローチャートで説明する。異常原因特定部504では、異常原因毎に異常原因指数(CI)が入力されるので、最大の異常原因指数(CI)を持つ異常原因を、最も確からしい異常と推定して異常原因を特定する。
【0037】
尚、異常予兆検知部400は、機械学習のみならず、AI(Artificial Intelligence)やディープラーニングに置き換えて対応することも可能である。ただし、異常を検知した日時とデータ(特徴量)を抽出できることが必要である。
【0038】
次に、異常関連特徴量特定部501における異常寄与度値(ACN)、及び異常特徴量状態(DFS)について説明する。
【0039】
図3は、異常に関係する特徴量を特定するための二次元分布密度画像を示している。尚、この画像は周知の手法で求めることができる。二次元分布密度画像は、特徴量の学習時に、特徴量Ssta(学習データ)の二次元分布密度を、2種類の特徴量の総当たりで計算し、グレースケールの画像形式で保存している。二次元分布密度とは、2種類の特徴量を横軸と縦軸にとった二次元ヒストグラムのことである。
【0040】
これらの画像は、正常な学習データである特徴量Ssta(学習データ)が存在しないところが「白」の画素、つまり、異常が生じているところを表し、特徴量Ssta(学習データ)が存在するところが「黒」~「灰色」の画素で表され、濃い灰色ほど密度が高い、つまり、異常が生じていないことを表しているため、分布密度画像と呼ばれている。
【0041】
そして図3においては、空調システムの或る稼動状態下で異常データがサンプリングされた状態を示している。図中で「○」印で示す部分が異常データのプロット位置であり、このプロット位置でのグレースケールの色の濃淡で異常状態を判別することができる。
【0042】
したがって、空調システムが稼動している評価時に、正常な学習データである特徴量Ssta(学習データ)の分布から乖離している特徴量が、異常発生に寄与する特徴量であると見做せる。つまり、正常な特徴量Ssta(学習データ)の分布から乖離している特徴量から、異常寄与度値(ACN)と異常特徴量状態(DFS)とが導き出される。
【0043】
図4は、異常に関係する特徴量の異常寄与度値(ACN)を示している。図3の二次元分布密度画像を用いて、検知した異常データの各分布密度画像上のプロット位置に応じて異常寄与度値(ACN)を算出する。異常寄与度値(ACN)は、異常データのプロット位置に対応する二次元分布密度画像の画素が「白」(特徴量Ssta(学習データ)が存在しないことを意味する)である数を、特徴量毎に集計することにより算出する。
【0044】
図4においては、異常検知した任意期間における複数の特徴量(A)~特徴量(J)でのプロット位置の「白」の画素数を示している。このため、「白」の画素数が多いほど異常である可能性が高いと見做せる。図4では、特徴量(I)が異常寄与度1位であり、これに続いて特徴量(C)が異常寄与度2位、特徴量(D)が異常寄与度3位となっている。このように、異常寄与度値(ACN)が大きいほど、異常に関係した特徴量と見做すことができる。本実施形態では、この異常寄与度値(ACN)を用いて異常推定することも大きな特徴となっている。
【0045】
次に、異常特徴量状態(DFS)について説明する。図5A図5Bは、異常に関係する特徴量状態を示している。異常特徴量状態(DFS)は、図3に示す二次元分布密度画像を用いて求めることができる。異常特徴量状態(DFS)は、特徴量Ssta(学習データ)に対して、サンプリングされた特徴量の方が大きいか、或いは小さいかで判断されている。
【0046】
図5Aは、横軸、及び縦軸とも特徴量(I)の二次元分布密度画像を示しており、サンプリングされた特徴量が、領域Aに示す位置に存在する時、特徴量(I)は特徴量Ssta(学習データ)から大きい方に乖離しているので、特徴量(I)は異常特徴量状態(DFS)が正常より大きい状態と判断される。
【0047】
同様に図5Bは、横軸が特徴量(C)、及び縦軸が特徴量(D)の二次元分布密度画像を示しており、サンプリングされた特徴量が、領域Bに示す位置に存在する時、特徴量(D)は特徴量Ssta(学習データ)から大きい方に乖離しているので、特徴量(D)は異常特徴量状態(DFS)が正常より大きい状態と判断されている。一方、特徴量(C)は特徴量Ssta(学習データ)からそれほど乖離していないので、特徴量(C)は異常特徴量状態(DFS)が正常な状態と判断されている。
【0048】
次に、異常原因指数算出部503に入力される異常原因推定マップ502について説明する。図6は、異常原因毎の異常特徴量状態(MFS:正常時の場合より大きい、或いは小さいといった状態を表すパラメータ)と、異常原因との相互関係(適合/非適合)を表す異常原因推定マップ502を示す表である。
【0049】
図6に示す異常原因推定マップ502(図2参照)は、異常発生時に想定される冷凍サイクルの変化から、稼働条件や構成機器の性能等の機器の異常特徴量状態(MFS)や評価値を異常原因毎に予め求めてデータベース化したものである。
【0050】
この異常特徴量状態(MFS)は、上述のサンプリングされた異常特徴量状態(DFS)とのマッチングのために使用され、マッチングすると異常状態と認識される。また、異常原因推定マップ502は、後述する異常原因指数(CI)の算出に用いる特徴量の評価値である重み係数(MFW)が設定されてデータベース化されている。
【0051】
ここで、異常特徴量状態(MFS)や特徴量の重み係数(MFW)は、経験的、実験的、或いは設計的に求められ、予め準備されて記憶素子にマップ形式やテーブル形式で記憶されている。つまり、異常原因毎、及び特徴量毎に異常特徴量状態(MFS)が事前に把握でき、また、異常原因と特徴量の出現の関係性(異常原因と特徴量の適合/不適合の関係)も事前に把握できる。このため、異常原因と特徴量の出現が適合しない場合は、重み係数(MFW)を無視する情報を付与している。これらのデータ処理については、図7のフローチャートで説明する。
【0052】
図6に戻って、縦軸に異常原因(i)である(1)冷媒不足、(2)冷媒過剰、(3)膨張弁1異常、(4)膨張弁2異常、(5)圧縮機異常、(6)室内熱交換器異常、(7)室外熱交換器1異常、(8)室外熱交換器2異常といった異常原因が、データベースとして設定されている。尚、これらの異常原因とは異なった他の異常原因(i)を設定できることはいうまでもない。
【0053】
また、横軸に上述した夫々の異常原因(i)に関係する特徴量(j)である特徴量(1)~(10)が、データベースとして設定されている。これらの特徴量(j)は、或る一つの異常原因(i)に関係する複数の特徴量であるが、全ての特徴量(j)が同一の異常原因に関係するものではない。言い換えれば、一つの異常原因(i)に対して、感度が高い典型的な特徴量(j)が割り振られている。
【0054】
図6に示すように、一つの異常原因(i)に対する異常特徴量状態(MFS)が、表中の上段に設定されている。表中上段の記号は、異常原因に適合する異常特徴量状態(MFS)を示している。ここで、適合するとは、検知した異常原因(i)で、その特徴量状態が観測される場合に、対応する異常原因の可能性があることを意味している。
【0055】
「H」は、サンプリングされた特徴量(j)が、異常原因(i)に応答(感度が高い)して正常な特徴量(j)より大きい値をとる場合を示し、「L」は、サンプリングされた特徴量(j)が、異常原因(i)に応答(感度が高い)して正常な特徴量(j)より小さい値をとる場合を示している。「0」は正常な特徴量の範囲内、或は異常原因(i)に応答しない特徴量(j)であることを示している。
【0056】
例えば図6において、異常原因(i)が(1)冷媒不足という異常が生じると、特徴量(9)が、(1)冷媒不足に対して応答して正常な特徴量より大きい値をとるので「H」という評価が割り振られている。これらの異常特徴量状態(MFS)を表す記号は、先に述べたように、経験的、実験的、或いは設計的に求められている。
【0057】
次に表中下段の数字は、後述する異常原因指数(CI)の算出に用いる特徴量の重み係数(MFW)である。異常原因(i)と適合する特徴量(j)の重み係数(MFW)は「+」(プラス)の属性が付与されている。ここで、重み係数(MFW)の値は、一つの異常原因(i)に対して総和が「1」になるよう設定されている。
【0058】
例えば、(1)冷媒不足の異常原因に対して、特徴量(9)だけが、異常特徴量状態(MFS)として「H」とされているので、重み係数(MFW)は「1.0」とされている。また(2)冷媒過剰、(5)圧縮機異常~(8)室外熱交換器2異常においても、重み係数(MFW)は「1.0」とされている。
【0059】
一方、(3)膨張弁1の異常原因に対して、特徴量(4)と特徴量(8)の二つが、異常特徴量状態(MFS)として「H」とされているので、重み係数(MFW)は按分されて、それぞれ「0.5」とされている。また(4)膨張弁2においても同様である。
【0060】
尚、重み係数(MFW)は、異常原因と適合する特徴量の数によって、総和が「1」になるように按分されても良いし、総和が「1」になるように異なった係数とされても良い。
【0061】
これに対して、異常原因(i)に適合しない特徴量(j)の重み係数(MFW)は「-」(マイナス)の属性が付与されている。この場合、重み係数(MFW)は一律に「-1」とされる。
【0062】
ここで、異常原因に適合しない特徴量とは、次のことを想定している。つまり、異なった異常原因であるにもかかわらず、同様の特徴量が重複して出現することがある。このため、本来の異常原因に基づく特徴量であれば重み係数(評価値)を加算しても問題ないが、異なった異常原因に基づく特徴量であれば重み係数(評価値)を加算することは、異常原因の推定誤差を招くことになる。
【0063】
したがって、事前に、異常原因と特徴量の出現の適合性を把握することができるので、異常原因推定マップ502に、この適合性を「+」或いは「-」で反映させている。「+」の場合は、異常原因と特徴量とが本来の関係にあって適合していることを示し、「-」の場合は、異常原因と特徴量とが本来の関係になく適合していないことを示している。
【0064】
例えば、(5)圧縮機異常における特徴量(6)は、本来は圧縮機異常に関係しない特徴量であるにもかかわらず、特徴量として出現している。したがって、この特徴量は圧縮機異常における特徴量では無いとして、重み係数(評価値)は「-1」とされて減算処理しているものである。つまり、特徴量の評価値を無視することにしている。
【0065】
このように、異常原因に適合しない特徴量に対しては、重み係数(評価値)に「-」の属性を与えて減算処理を行うことにより、異常原因の推定誤差を低減できるようになる。
【0066】
ここで、実施形態では重み係数(MFW)で説明しているが、重み係数(MFW)ではなく評価値として表すこともできる。本実施形態では重み係数(MFW)で説明を行っているが、考え方としては重み係数(MFW)を含む評価値として捉えることができる。
【0067】
また、特徴量(j)は、異常原因に関係する特徴量が重複しないように設定されている。これによって抽出される異常原因の特徴量の数を少なくでき、異常原因の推定が容易となる。例えば、それぞれの異常原因に適合する特徴量のみを多数設定すると、他の異常原因と重複する特徴量が多くなり、どの異常原因も同等の推定レベルとなって異常原因の推定が難しくなるという課題がある。
【0068】
次に、検出された異常特徴量状態(DFS)、異常寄与度値(ACN)、予め設定された異常特徴量状態(MFS)、及び予め設定された特徴量の重み係数(MFW)を用いて、異常原因指数(CI)を求める処理を図7に基づき説明する。
【0069】
図7に示す異常原因指数の算出処理フローは、監視計算機200のプロセッサの異常原因推定システム500によって実行されるものであり、所定の時間インターバルで起動される。時間インターバルは、例えば、1分毎、5分毎、10分毎、1時間毎、1日毎等の任意のインターバルに設定される。
【0070】
≪ステップS701≫
ステップS701においては、複数の異常原因(I)毎に、ループ処理1を開始しし、異常原因(i)の数が終了するまで以下の処理を繰り返して実行する。これによって、全ての異常原因(i)における異常原因推定作業を順番に実行でき、異常原因を推定することができる。ループ処理1が開始されると、ステップS702の処理を実行する。
【0071】
≪ステップS702≫
ステップS702においては、ステップS701で設定した異常原因(I)の数に対応した異常原因指数(CIi)を設定し、初期化(0値)する。この処理が終了すると、ステップS703の処理を実行する。
【0072】
≪ステップS703≫
ステップS703においては、複数の特徴量(J)毎に、ループ処理2を開始し、特徴量(j)の数が終了するまで以下の処理を繰り返して実行する。ループ処理2が開始されると、ステップS704の処理を実行する。
【0073】
≪ステップS704≫
ステップS704においては、二次元分布密度画像を用いて各特徴量の異常寄与度値(ACN)を抽出する。この異常寄与度値(ACN)は、図3に示す異常データのプロット位置に対応する二次元分布密度画像の画素が、白(学習データが存在しないことを意味する)である数を特徴量毎に集計することにより、図4に示すような異常寄与度値(ACN)が算出される。異常寄与度値(ACN)が大きいほど、異常に関係した特徴量となる。この処理が終了すると、ステップS705の処理を実行する。
【0074】
≪ステップS705≫
ステップS705においては、図5に示すような手法で二次元分布密度を用いて異常原因に基づく特徴量の状態から特徴量状態(DFS)を抽出する。異常原因に基づく特徴量の特徴量状態は、学習された特徴量Ssta(学習データ)に対して、サンプリングされ異常原因の特徴量の方が大きい、或いは小さいかで判断される。この処理が終了すると、ステップS706の処理を実行する。
【0075】
≪ステップS706≫
ステップS706においては、異常原因推定マップ502から、予め求められている異常原因毎の異常特徴量状態(MFS)を抽出する。この処理が終了すると、ステップS707の処理を実行する。
【0076】
≪ステップS707≫
ステップS707においては、異常原因推定マップ502から異常原因毎の特徴量の重み係数(MFW)を抽出する。この処理が終了すると、ステップS708の処理を実行する。
【0077】
≪ステップS708≫
ステップS708においては、図5に基づいて求められた異常原因毎の特徴量状態(DFS)と、図6の異常原因推定マップ502にある異常原因毎の異常特徴量状態(MFS)との一致度を確認する。
【0078】
これは、予め定められた異常原因の特徴量の状態と、現時点での異常原因の特徴量の状態が一致しているならば、異常原因が確からしいと見做すことができる。逆に、一致していなければ、異常原因が確からしいと見做すことができない。
【0079】
異常原因毎の特徴量状態(DFS)と異常原因推定マップにある異常原因毎の異常特徴量状態(MFS)とが一致する場合は、ステップS709の処理を実行する。一方、異常特徴量状態(MFS)と異常特徴量状態(DFS)が一致しない場合は、ステップS710の処理を実行する。
【0080】
≪ステップS709≫
ステップS708で異常特徴量状態(MFS)と異常特徴量状態(DFS)が一致していると判断された場合、ステップS709においては、異常特徴量状態適合値(FSF)として「1」を設定する。「FSF=1」の場合は、異常が生じている可能性が高いので、次のステップの乗算形式の異常原因指数(CI)を求める式(1)を有効にする。この処理が終了すると、ステップS711の処理を実行する。
【0081】
≪ステップS710≫
一方、ステップS708で異常特徴量状態(MFS)と異常特徴量状態(DFS)が一致していないと判断された場合、ステップS710においては、異常特徴量状態適合値(FSF)として「0」を設定する。「FSF=0」の場合は、異常が生じている可能性が低いので、次のステップの乗算形式の異常原因指数(CI)を求める式(1)を無効にする。この処理が終了すると、ステップS711の処理を実行する。
【0082】
≪ステップS711≫
ステップS711においては、異常原因毎の特徴量の異常寄与度値(ACN)、特徴量状態適合値(FSF)、異常原因毎の特徴量の重み係数(MFW)の積を、以下の式(1)を用いて異常原因毎の異常原因指数(CI)に加算する。
CIi+=(ACNj × FSFij × MFWij)…式(1)
この式(1)が意味するものは、一つの異常原因(例えば、図6の(1)冷媒不足)に対する複数の特徴量毎(例えば、図6の特徴量(1)~(10)毎)に、異常寄与度値(ACN)と重み係数(MFW)を乗算し、これらの乗算値を加え合せることで、一つの異常原因の異常原因指数(CIi)が求まるものである。
【0083】
例えば、図6の(1)冷媒不足に着目すると、図4に示す特徴量(A)~(J)の寄与度値(ACN)に対応する図6の特徴量(1)~(8)、(10)の重み係数(MFW)は「0」であるため、積算される異常原因指数(CIi)は「0」である。ただ、図4に示す特徴量(I)の異常寄与度値(ACN)は「74」であり、これ対応する図6の特徴量(9)の重み係数(MFW)は「1.0」であるため、積算された異常原因指数(CIi)は「74」となる。
【0084】
尚、式(1)では、異常寄与度値(ACN)に重み係数(MFW)を乗算しているが、重み係数(MFW)だけを使用して異常原因指数(CIi)を求めることもできる。この場合、上述したように、重み係数(MFW)は評価値の位置付けとなる。
【0085】
式(1)に示す演算を、ループ処理1を実行することによって夫々の異常原因(i)毎に実行して、異常原因指数(CIi)を求める。このように、異常原因指数(CIi)の大きさは、その異常原因の可能性の大きさを示すことになる。この処理が終了すると、ステップS712の処理を実行する。
【0086】
≪ステップS712≫
ステップS712においては、任意の数の特徴量(j)のループ処理2が終了される。この処理が終了すると、ステップS713の処理を実行する。
【0087】
≪ステップS713≫
ステップS713においては、任意の数の異常原因(i)のループ処理1が終了される。この処理が終了すると、ステップS714の処理を実行する。
【0088】
≪ステップS714≫
ステップS714においては、ステップS712、S713のループ処理1、ループ処理2の終了で求められた、夫々の異常原因(i)に対する異常原因指数(CIi)の中で、最大の異常原因指数(CIi)に対応する異常原因を最も確からしい異常原因として推定して、推定処理フローを終了する。
【0089】
尚、異常原因毎の異常原因指数(CIi)は、特徴量の重み係数(MFW)と異常寄与度(ACN)を乗算した乗算値を積算した積算値としているが、積算しないで単に特徴量の重み係数(MFW)と異常寄与度(ACN)を乗算した乗算値の最大値とすることもできる。
【0090】
ここで、上述した推定処理フローは、上述したように所定の時間インターバル、例えば1分、5分、10分、1時間、1日等で実行される。更に任意の期間、例えば1日、5日、1週間、1カ月、6カ月、1年、1年以上等を評価期間として実行することもできる。
【0091】
また、異常原因の推定の安定性を向上させるため、各異常原因指数の経時変動を移動平均により平滑化することもできる。例えば、1日平均、1週間平均、1カ月平均等を求めることができる。また、例えば、1日移動平均、1週間移動平均、1カ月移動平均等を求めることができる。
【0092】
次に監視計算機200の異常予兆検知部400、及び異常原因指数算出部503の解析結果例についてそれぞれ図8A図8Bで説明する。
【0093】
図8Aは、異常予兆検知部400による異常予兆検知の解析結果例を示している。異常予兆検知グラフ(Grp)において、横軸は時間(日付)の経過を表し、「AM」は異常予兆検知部400による異常測度、すなわち異常度を示し、「SL」は異常予兆検知部400により設定した閾値(SL)を示し、「AD」は異常の有無を示している。そして、異常測度、すなわち異常度(AM)が閾値(SL)を超える場合には、異常有り(AD=1)と判断する。一方で、異常測度、すなわち異常度(AM)が閾値(SL)を超えない場合には、異常無し(AD=0)と判断する。
【0094】
図8Bは、異常原因指数算出部503による異常原因推定の解析結果例を示している。異常原因推定グラフ(Gmp)において、横軸は時間(日付)の経過を表し、「CI1」「CI2」は異常原因指数算出部503による異常原因指数を示している。尚、「CI1」は冷媒不足に関する異常原因指数であり、「CI2」は膨張弁1異常に関する異常原因指数である。また、異常原因指数(CI)は異常原因の数に応じて複数設定することができる。
【0095】
更に、監視計算機200に接続される表示装置の画面には、図8Aの異常予兆検知グラフ(Grp)や図8Bの異常原因推定グラフ(Gmp)を表示することができる。これによれば、異常予兆検知、及び異常原因指数の時間的な推移が読み取れるので、異常発生の予兆、或は異常原因を読み取ることが可能となる。
【0096】
以上述べたように、本発明は、
複数の機器種類より構成された空調機器の動作を監視する異常原因推定システムであって、
異常原因推定システムは、
空調機器の正常動作時の機器種類の動作状態を表す複数の特徴量を検出して、特徴量(学習データ)を求める特徴量(学習データ)算出手段と、
空調機器の異常動作時の機器種類の動作状態を表す複数の特徴量を検出して、特徴量(異常データ)を求める特徴量(異常データ)算出手段と、
特徴量(正常データ)と特徴量(異常データ)から異常動作時の異常原因を推定する異常原因推定手段を備えており、
更に異常原因推定手段は、
特徴量毎に、異常原因に関する特徴量の状態(以下、異常特徴量状態(マップ)という)が予め設定されていると共に、異常原因と特徴量の適合性を含む評価値が予め設定されている異常原因推定マップと、
特徴量毎に、異常動作時の特徴量(異常データ)から求まる異常特徴量状態(異常データ)と異常原因推定マップの異常特徴量状態(マップ)とが一致するか否かを判断し、一致した場合は、特徴量毎に、異常原因と特徴量とが適合すると、適合する判断された特徴量の評価値を加算処理し、前記異常原因と前記特徴量とが適合しないと、適合しないと判断された前記特徴量の前記評価値を減算処理して、前記異常原因を推定するための異常原因推定評価値を求める異常原因指数算出手段を備える
ことを特徴とする。
【0097】
これによれば、異常原因に適合しない特徴量に対して評価値を減算処理することにより、誤検知を低減できるため、異常原因を高精度に推定することが可能となる。
【0098】
尚、本発明は上記したいくつかの実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。各実施例の構成について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0099】
100…空調設備システム、Ssig…複数機器のセンサ信号、101…空調システム、102…センサ信号入力部、200…監視計算機、300…センサ信号加工部、400…異常予兆検知部、500…異常原因推定システム、501…異常関連特徴量特定部、502…異常原因推定マップ、503…異常原因指数算出部、504…異常原因特定部。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B